司法書士  橋本先生のブログ

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当事務所の無料法律相談会でおなじみ アイリス国際司法書士事務所 橋本 大輔 先生 のブログです。

令和6年4月1日から義務化された「相続登記」に関する話題を中心に、様々な角度から色々なお話をしてくださっています。

  

(論点)最近ネットで見かける相続不動産の高価買取広告

(論点)最近ネットで見かける相続不動産の高価買取広告

相続登記義務化が始まってから約半年が経過し、相続した不動産をどう扱うか悩む人々が増えているようです。その中でも、相続不動産を迅速に処分できる手段として不動産買取業者に依頼するケースが増え、SNS広告などでも多く見られるようになりました。しかし、不動産買取に関しては、様々なトラブルも報告されています。

ここでは、不動産買取における代表的なトラブル例について説明します。


目次


1. 相場より買取金額が低い

2. 高額な費用や手数料の請求

3. 契約後に査定価格を下げられる

4. 悪徳業者と契約してしまうリスク

まとめ

(論点)最近ネットで見かける相続不動産の高価買取広告

1. 相場より買取金額が低い


 不動産買取業者に依頼する際、多くの人が「市場価格に近い金額で買い取ってもらえる」と期待しますが、実際には買取業者が提示する金額は市場相場の6~7割程度に設定されることが業界の常識となっています。

 これは、不動産業者が買取後に転売するための利益を確保するためです。一般の消費者はこれを知らずに、想定よりもはるかに低い価格で契約してしまうことが多く見受けられます。

 そのため、売却を検討する際には、事前に市場相場を調べるか、複数の業者に見積もりを依頼することが推奨されます。

(論点)最近ネットで見かける相続不動産の高価買取広告

2. 高額な費用や手数料の請求


 通常、不動産買取においては仲介手数料や売主負担の経費がかかることはほとんどありません。しかし、悪徳業者によっては、手数料や名目の不明な経費を請求することがあります。

 たとえば、契約後や物件引渡し後に、不用品の処分費用や特別な手数料として高額な請求がくるケースがあります。これは売主が、事前に明確な契約条件を確認せずに契約を進めてしまうことが原因です。

 特に高齢者や不動産取引に慣れていない人々が狙われやすいため、契約前に慎重に確認する必要があります。

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3. 契約後に査定価格を下げられる


 契約直前、または契約後に買取業者が一方的に査定価格を下げるケースも多く報告されています。

 たとえば、初めに提示された査定額に合意して契約を進めた後、引渡し直前や契約直後に「物件に予想外の問題が見つかった」といった理由で価格の値下げを求められることがあります。これは、業者側が売主の弱みに付け込んで契約を不利な条件に変更しようとする手法です。

 このようなトラブルを避けるためには、契約内容を慎重に確認し、できれば弁護士や司法書士に相談することが推奨されます。


4. 悪徳業者と契約してしまうリスク


 全ての不動産買取業者が悪徳業者というわけではありませんが、一部には不誠実な手法で契約を進める業者が存在します。以下のような行為が典型的な悪徳業者の特徴として挙げられます:


① 手数料名目で不明瞭な費用を請求する

 通常の買取契約には発生しない手数料を請求し、売主に負担を強いるケースです。


② 査定価格よりも低い価格で引渡しを要求する

 契約後に「想定外の費用がかかる」などの理由で価格を下げ、売主が断りにくい状況を作り出します。


③ 不当に低い買取査定を行い、無理に契約させる

 高齢者や不動産知識の少ない売主に対し、相場を無視した低価格の査定を提示し、強引に契約を進めることがあります。


④ 代金を支払わずに所有権移転登記を要求する

 先に所有権移転手続きを進め、その後に代金を支払うと偽りながら、実際には代金を支払わないケースです。


⑤ 所有権移転に必要な書類を引渡し前に要求する

 書類を先に取得し、売主が撤回できない状況を作り、契約条件を変更することがあります。


⑥ 換金できない小切手や不明な決済手段で支払う

代金支払いの際に、現金ではなく、実際に換金できない小切手や仮想通貨などで支払いを行う業者もいます。


※ありえないようなことが、悪徳業者と取引すると起こります。

(論点)最近ネットで見かける相続不動産の高価買取広告

まとめ


 このようなリスクを避けるためには、契約書に記載された内容を細かく確認し、信頼できる業者と取引をすることが重要です。また、特に大規模な取引の場合、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、法的なサポートを受けることが推奨されます。


不動産買取業者を利用する際の注意点

不動産買取業者の利用は、相続した不動産を迅速に処分できる有効な手段ではありますが、業者選びに慎重さが求められます。以下の点を念頭に置いて取引を進めることが大切です。


1. 複数の業者に査定を依頼する

 一つの業者だけに依存せず、複数の見積もりを比較することで、適正価格を把握しやすくなります。


2. 契約内容を細部まで確認する

 特に費用や支払い方法に関する条項を注意深く確認し、疑問点があれば事前に質問しましょう。


3. 信頼できる専門家に相談する

 トラブルを未然に防ぐためにも、取引を進める前に専門家の助言を受けることが有効です。


以上のように、不動産買取にはさまざまなトラブルが存在しますが、事前に正しい知識を持っていれば、リスクを大幅に軽減できます。

断っておきますが、すべての業者が悪いわけではありません。


(論点)老老相続の現状と課題

(論点)老老相続の現状と課題

老老相続は、高齢者が亡くなり、その相続人もまた高齢者であるケースのことを指します。

日本では長寿化が進み、親から子への相続が高齢者同士で行われる「老老相続」が増加しています。

この現象が社会に与える影響や、相続手続きにおける課題について考察します。


目次


1. 増加する老老相続の背景

2. 認知症の相続人による問題

3. 数次相続による複雑化

4. 経済への影響

5. 遺言書の活用

結論

(論点)老老相続の現状と課題

1. 増加する老老相続の背景


 日本の平均寿命が延びるにつれ、相続人も高齢化しています。

 以前は、親の財産が子供世代に渡る際、その子供がまだ働き盛りであったり、現役世代であることが一般的でした。

 しかし現在では、80歳の親が亡くなり、60〜70歳の子がその財産を相続することが多くなっています。

 これが「老老相続」です​。

(論点)老老相続の現状と課題

2. 認知症の相続人による問題


 老老相続の最大の問題は、相続人が認知症や身体的に介護を必要とする状況にある場合です。認知症の相続人がいると、遺産分割協議が円滑に進まなくなり、相続手続きが遅れる可能性があります。この場合、成年後見制度を利用することができますが、後見人は被後見人の財産を保全する役割があるため、遺産分割が不利にならないよう慎重に進める必要があります​。


3. 数次相続による複雑化


 さらに、老老相続が発生することで「数次相続」の問題も増加しています。数次相続とは、一次相続が完了しないうちに次の相続が発生するケースで、例えば親が亡くなり、その直後に相続人である子供も亡くなるという場合です。このような場合、相続手続きが複雑化し、相続人の数が増えることで協議が難航するリスクが高まります​。



4. 経済への影響


 老老相続の増加は、経済にも悪影響を及ぼします。高齢者同士の相続では、相続された資産が消費に回らないケースが多く、経済の停滞を招くことがあります。また、相続によって資産が固定化され、次の世代に渡るまで長期間かかることも経済活性化の阻害要因となります​。



5. 遺言書の活用


 こうした問題を防ぐためには、被相続人が元気なうちに遺言書を作成し、財産の分割方法を明確にしておくことが有効です。遺言書によって、遺産分割協議をスムーズに進めることができ、相続トラブルを未然に防ぐことができます。また、成年後見制度の利用を見据えた準備も重要です​。


(論点)老老相続の現状と課題

結論


 老老相続は、相続手続きの遅延や経済停滞など、多くの社会的課題を抱えています。

 高齢化社会が進む中で、早めの相続対策、特に遺言書の活用や成年後見制度の利用を検討することが、これらの問題を軽減するために重要です。また、政策的にも、老老相続の影響を軽減するための法制度や社会的支援が求められています。

 実務で本当に多くの相続人の年齢が60代を超えています。

(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

相続の生前対策として、以下のような贈与制度を活用することが効果的です。これらの制度は、相続発生前に財産を有効に活用し、相続税の負担を軽減するための手段として広く利用されています。以下、各項目ごとに詳しく解説します。



目次


1. 相続時精算課税制度

2. 夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除

3. 教育資金の一括贈与

4. 住宅取得等資金の贈与

5. 結婚・子育て資金の一括贈与

6. 特定障碍者に対する贈与税

まとめ

(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

1. 相続時精算課税制度


 相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫に対して、財産を生前贈与する際に利用できる制度です。この制度では、贈与時には2500万円まで非課税で財産を移転でき、超過部分については一律20%の贈与税がかかります。ただし、相続時にはこの制度を利用して贈与した財産が相続財産に加算され、相続税の計算に反映されるため、最終的な税負担が確定します。

 この制度のメリットは、贈与を通じて早めに財産を移転できることにあります。また、大きな贈与を非課税で行えるため、将来的な相続税の負担を軽減する効果が期待されます。ただし、相続税の計算において、贈与財産が再度加算される点には注意が必要です。令和6年1月1日から、年間贈与の110万円控除が追加されています。

 ※相続時精算課税を登録すると途中でやめることはできなくなります。専門家と相談の上、利用の有無を検討してください。


2. 夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除


 「夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除」は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で利用できる制度です。この制度を活用することで、居住用不動産またはその購入資金について、最大2000万円までの贈与が非課税となります。この控除は、一生に一度しか利用できませんが、夫婦間で居住用の財産を早めに贈与できるため、相続時の財産総額を減少させることができます。

 この制度のメリットは、相続時に課税される財産を生前に減らせる点にあります。特に高額な不動産が夫婦の財産の一部である場合、将来の相続税対策として有効です。ただし、この制度を利用する際には、贈与後もその不動産に居住し続ける必要があるため、贈与後の生活設計を考慮することが重要です。

(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

3. 教育資金の一括贈与


「教育資金の一括贈与」は、30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括で贈与する際に、非課税枠を設ける制度です。

 贈与額が1500万円までであれば非課税で贈与でき、贈与された資金は教育にかかる費用(授業料や教材費、留学費用など)に使用されます。この制度を利用することで、相続発生前に教育資金を効率的に移転し、相続財産を減らすことができます。

 この制度のメリットは、教育費という将来の支出を前もって賄える点にあります。

 また、贈与者の財産を相続時に減少させることで、相続税の軽減にもつながります。ただし、教育資金として適切に利用されなかった場合には、贈与税が課せられる可能性があるため、資金の使途に注意が必要です。


4. 住宅取得等資金の贈与


 住宅取得等資金の贈与は、子や孫が自宅を購入する際に、その購入資金を贈与する場合に適用される非課税制度です。

 贈与税の非課税枠は、贈与の対象となる住宅の種類や省エネ性能などに応じて異なりますが、最大で1000万円までが非課税となります。

 この制度を活用することで、若い世代に対して住まいを確保する支援を行いながら、相続財産を減らすことができます。

 また、住宅購入のタイミングに合わせた贈与が可能であり、早めに相続対策を行うことができます。

 ただし、この制度も一度しか利用できないため、贈与のタイミングや金額について慎重に検討する必要があります。

(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

5. 結婚・子育て資金の一括贈与


 結婚・子育て資金の一括贈与は、子や孫が50歳未満の場合に、結婚や子育てに必要な資金を一括で贈与する際に利用できる制度です。最大で1000万円までが非課税で贈与でき、この資金は結婚式の費用や妊娠・出産費用、子育て費用などに充てることが可能です。

 この制度のメリットは、相続財産を減らしつつ、家族の生活を支援できる点にあります。

 また、子や孫が結婚や子育てのための資金を必要とするタイミングで贈与が可能なため、贈与者と受贈者双方にとって利便性の高い制度です。ただし、利用した資金が結婚・子育て以外の目的に使われた場合には贈与税が課せられるため、注意が必要です。


6. 特定障碍者に対する贈与税


 特定障碍者に対する贈与税の特例は、特定の障碍者(重度の障碍を持つ者)に対して信託や贈与を行う際に、贈与税が軽減される制度です。

 具体的には、障碍者の生活や医療費を賄うための信託を設定する場合、その信託財産のうち6000万円までが非課税となります。この制度を利用することで、障碍者の生活を安定させるための資金を確保しつつ、贈与税の負担を軽減できます。

 この制度のメリットは、障碍者の生活を財政的に支えることができる点にあります。また、贈与税が非課税となることで、贈与者も財産を相続前に効率的に移転でき、相続時の負担を軽減することができます。

(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

まとめ


 相続の生前対策として、これらの贈与制度を活用することは非常に有効です。

 各制度は、相続時の財産を減少させることで相続税の負担を軽減し、相続手続きの円滑化にもつながります。贈与を通じて早めに財産を移転することが、家族全体の経済的な安定にも寄与します。

 しかし、各制度には利用条件や一度しか適用できない制限があるため、慎重に検討した上で活用することが重要です。

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(論点)共有状態の農地を単有にする場合の問題点と解決方法

(論点)共有状態の農地を単有にする場合の問題点と解決方法

農地が共有で登記されているケースにおいて、相続が発生した場合、相続登記を行うだけでなく、最終的に所有者を一人にまとめたいという依頼が、ありました。この場合、特に農地が含まれている場合には、農地法の規定に従う必要があります。

相続に伴う農地の登記については、農地法3条の「届出」により、原則として許可を得ずに登記が可能ですが、持分を他の共有者に贈与する場合は、農地法3条の「許可」が必要となります。この許可の取得は、農地の引継ぎ先が農業に従事できるかどうかが重要な判断基準となります。

この場合どのように手続きを進めればいいのかについて解説いたします。


目次


1.農地法3条の許可制度とその要件

2.持分放棄による許可回避

3.民法上の持分放棄の解釈

4.持分放棄の実務的メリット

5.結論

(論点)共有状態の農地を単有にする場合の問題点と解決方法

1.農地法3条の許可制度とその要件


 農地法3条の許可は、農地の所有権や利用権を移転する場合に必要となるもので、農業委員会がその許可を与えるかどうかを判断します。

 特に、農地を譲渡する際には、受け手が適切に農地を管理し、農業を営む能力があるかどうかが重要視されます。この点で、県外に居住している者に対しては、実際に農業に従事できる可能性が低いため、許可が下りるのは難しいことが多いです。

 これが、農地所有権の移転を一筋縄では行えない理由の一つです。


2.持分放棄による許可回避


 しかし、持分を他の共有者に譲渡する際に農地法3条の許可を避ける手段として、「持分放棄」があります。これは、民法上の規定に基づき、持分を共有者に譲渡するのではなく、放棄するという手法です。

 持分放棄とは、自身の持分権を放棄することであり、その結果、他の共有者がその持分を当然に取得することとなります。持分放棄は一方的な意思表示であり、他の共有者の同意を必要としないため、スムーズに行える点が特徴です。


 農地法において、持分放棄に関する明確な規定はありませんが、通常の持分の譲渡とは異なり、対価が発生しないことや、移転が行われるわけではないため、許可を得る必要がないとされています。

 この解釈に基づき、持分放棄を利用することで、農地法3条の許可を回避することが可能となります。


(論点)共有状態の農地を単有にする場合の問題点と解決方法

3.民法上の持分放棄の解釈


 民法上、持分放棄は、共有者がその持分を放棄し、その結果として他の共有者が持分を引き継ぐという形をとります(民法255条)。持分放棄は、あくまでその権利を放棄する行為であり、譲渡や売買と異なり、対価を伴わない無償の行為です。

 放棄の意思表示をした時点で、その共有者の持分は消滅し、他の共有者に帰属します。したがって、持分放棄をすることで、他の共有者がその持分を取得することとなり、所有者を一人にするという最終目標に近づけることができます。


 また、持分放棄の意思表示があれば、農地法3条の許可について特段の手続きを必要としないため、登記手続き上も比較的簡便です。

 ただし、放棄の結果として生じる登記の変更は、速やかに行う必要があります。登記上の手続きを適切に行うことで、持分放棄による所有権の一元化が法律上確定されます。


4.持分放棄の実務的メリット


 持分放棄の最大のメリットは、農地法3条の許可を避けることができる点です。

 特に、県外に住んでいるために農地を維持できない場合や、そもそも農業を行う意思がない場合には、持分放棄を活用することで、許可取得の手間を省くことができます。また、放棄によって他の共有者に自動的に持分が移転するため、贈与税や譲渡所得税などの税金を回避できる可能性もあります。


 一方で、持分放棄を行った場合、放棄した者はその持分に対するいかなる権利も失うため、今後その土地の処分や利用に関して一切の関与ができなくなります。

 これにより、持分放棄をする際には、慎重に検討する必要があります。

 特に、将来的に土地の価値が上がる可能性がある場合や、他の共有者との関係が良好でない場合には、持分放棄が不利になることもあるため、事前にしっかりとした合意形成が重要です。

(論点)共有状態の農地を単有にする場合の問題点と解決方法

5.結論


 農地が含まれる相続案件において、共有者の一部が農地法3条の許可を得るのが難しい場合、持分放棄を利用することで許可を回避し、所有者を一人にまとめることが可能です。

 持分放棄は、民法上の一方的な意思表示による権利の放棄として認められ、無償で行われるため、他の共有者の同意が不要であり、農地法の許可要件を回避できる点で有効な手段です。

 しかし、放棄後の法的影響や、共有者間の関係性について十分に理解し、慎重な判断が求められます。

(論点)根抵当権について今一度見直してみる

(論点)根抵当権について今一度見直してみる

根抵当権とは、不動産を担保にして設定されるもので、特定の債権ではなく、一定範囲内で複数の不特定債権を担保します。元本確定前は、借入れや返済が自由に行えますが、元本確定事由が発生すると、債権が固定され、新たな借入れは担保されなくなります。元本確定事由には、相続や破産、競売などがありますが、法人の破産は登記されないこともあります。


目次


1.根抵当権についての概説

2.元本確定とは何か

3.元本確定登記

4.債務者の破産と元本確定

5.共用根抵当権と破産

6.まとめ

(論点)根抵当権について今一度見直してみる

1.根抵当権についての概説


 根抵当権とは、不動産などの資産に対して設定される担保権の一種であり、一定範囲内の不特定の債権を担保することを目的としています。

 通常の抵当権が特定の債権に対して設定されるのに対して、根抵当権ではその債権が不特定であり、定められた「極度額(上限金額)」と「債権の範囲」内であれば、何度でも借入や返済が可能です。

 これにより、ビジネスや取引の継続的な資金需要に柔軟に対応できる点が根抵当権の大きな特徴です。

(論点)根抵当権について今一度見直してみる

2.元本確定とは何か


 根抵当権において、担保される債権は通常、流動的であるため、どの時点でどれだけの返済義務が残っているかが確定していません。この流動的な性質が「元本未確定」と呼ばれる状態で、根抵当権の大きな特徴の一つです。しかし、「元本確定事由」が発生すると、その時点での債務が確定され、それ以降は新たな債権を担保することができなくなります。具体的には、以下のような状況が元本確定事由となります。


①元本の確定期日が到来

 根抵当権の契約で定められた期日が来た場合、元本が確定します。

➁相続が発生

 根抵当権者や債務者が死亡し、相続が発生した際、相続開始後6ヶ月以内に根抵当権者や債務者間での合意がなされない場合、元本が確定します。

③合併が発生

 根抵当権者または債務者が合併した際に、根抵当権設定者が確定請求を行うと元本が確定します。

④競売の申立てや差押え

 根抵当権者が担保不動産について競売を申し立てた場合、または滞納処分による差押えが行われた場合、元本が確定します。


 元本が確定すると、新たな貸付金はその根抵当権で担保されなくなり、流動性が失われ、元本確定時点での債権が確定します。これにより、根抵当権が普通の抵当権のように機能し、以後、新たな貸付には対応できなくなります。



3.元本確定登記


 元本確定事由が発生した場合、原則として「元本確定登記」を行います。これにより、元本が確定したことが公示され、債権の流動性が失われたことが記録されます。しかし、いくつかの事例では、元本確定登記をしなくても「登記簿上で確認できる」状況が存在します。たとえば、次のようなケースです。


破産手続き開始決定

 個人の根抵当権設定者が破産手続きを開始した場合、その事実は登記簿に記録され、これを見れば破産していることが分かるため、元本確定登記を行わずとも元本が確定したとみなされます。

 ただし、法人が設定者である場合、破産の登記は個別の不動産登記簿には記載されず、法人の商業登記簿で確認することになります。これにより、法人が設定者の場合には重複した登記を避けるため、不動産の登記簿には破産の記録がなされないのです。

(論点)根抵当権について今一度見直してみる

4.債務者の破産と元本確定


 債務者が破産手続開始決定を受けた場合、元本は確定します。

 ただし、ここで注意すべき点があります。それは、破産手続きの決定があっても、その後に効力が失われた場合、元本確定の効力も消滅する点です。具体的には、破産手続開始決定後、その手続きが中止されたり、無効になった場合には、元本確定も同時に解除されることがあります(民法398条の20第2項)。

 これにより、再び流動的な担保の状態が復活することもありえます。


5.共用根抵当権と破産


 根抵当権が設定されている場合、債務者が複数いるケースも存在します。

 このような場合を「共用根抵当権」と呼びます。共用根抵当権の下で、債務者の一人が破産手続きを開始しても、全体の根抵当権が自動的に元本確定となるわけではありません。他の債務者が引き続き債務を履行することが可能であれば、根抵当権全体の元本確定は行われない場合があります。

 この点において、共用根抵当権は通常の根抵当権よりも複雑な仕組みを持っており、個別の状況に応じて慎重な対応が求められます。

(論点)根抵当権について今一度見直してみる

6.まとめ


 根抵当権は、不動産を担保として柔軟な資金調達を可能にする重要な制度です。

 しかし、元本の確定や債務者の破産、相続といった状況に応じてその性質が大きく変化するため、正確な理解と適切な手続きを行うことが求められます。

 特に、複数の債務者が関与する共用根抵当権においては、個別の事例ごとの判断が必要です。

(論点)改めて相続登記義務化を考える

(論点)改めて相続登記義務化を考える

相続登記義務化がはじまりましたが、行政が取り組んできた施策にはいくつかの重要な要素があります。これらの取り組みは、相続登記の遅れや相続財産の管理が不明確になることによる社会的な問題(所有者不明土地問題)を解決するために行われています。特に、戸籍の集中管理や相続登記義務化に関する法整備が中心的な役割を果たしています。


目次


1. 相続登記義務化の背景

2. 戸籍の集中管理(法務省の取り組み)

3. 法務省によるその他の施策

4. 相続土地国庫帰属制度の導入

5. 相続登記義務化の施行と罰則

まとめ

(論点)改めて相続登記義務化を考える

1. 相続登記義務化の背景


 相続登記義務化が導入された背景には、相続登記が行われないまま放置される「未登記土地」の増加が深刻な問題となっていたことがあります。登記がされない土地は、相続人が複数いる場合に共有状態となり、管理や処分が難しくなります。また、長期間登記が放置されると、相続人の中にはすでに亡くなっている人も出てくるため、さらなる相続が発生し、権利関係が複雑化します。このような土地は「所有者不明土地」と呼ばれ、公共事業の進行や土地の適切な利用を阻害する要因となっていました。


 これらの問題に対処するため、政府は相続登記の義務化を進め、土地の権利関係を明確にし、土地の適切な管理と利用を促進しようとしています。

(論点)改めて相続登記義務化を考える

2. 戸籍の集中管理(法務省の取り組み)


 相続登記を進めるために不可欠なもののひとつが、相続人を確定するための戸籍情報の管理です。これまでは、戸籍は各市町村が管理しており、相続登記を行う際には相続人が必要な戸籍をそれぞれの市町村から取得しなければなりませんでした。しかし、これは時間と手間がかかる作業で、特に古い戸籍を探す場合には複数の自治体に問い合わせが必要になることも多々ありました。


 法務省はこの問題に対応するため、戸籍のデジタル化および集中管理を進めてきました。具体的には、以下の施策が行われています:


戸籍の電子化:各自治体が管理している紙の戸籍をデジタル化し、電子データとして管理できるようにする取り組みです。これにより、相続登記の際に戸籍をオンラインで取り寄せることが可能になり、登記手続きが効率化されました。


法務省の集中管理:戸籍情報を法務省のシステムで一元的に管理する仕組みを整備することで、相続登記に必要な戸籍の収集が容易になります。これにより、相続人が全国の自治体を回る手間を減らし、時間の短縮とコスト削減が実現されました。(広域制度の実現)


3. 法務省によるその他の施策


 法務省は相続登記義務化を円滑に進めるため、他にもさまざまな施策を実施しています。


相続登記の申請手続きの簡素化:相続登記を怠った場合でも、相続人が多数いる、遺産分割協議が難航しているなどの正当な理由があれば過料が免除されることがあります。相続登記の義務化に伴い、手続きの簡素化が進み、相続人申告登記制度や必要書類の簡略化(全部ではありません)により、不動産相続がより円滑に行えるようになりました。スムーズな相続登記のためには、専門家の助言を受けることが重要です。


相続登記の登録免許税の減免措置:一定の条件を満たす場合には、相続登記にかかる登録免許税を免除する制度を導入しました。これにより、経済的な理由で登記を行わなかったケースを減少させ、相続登記の促進を図っています。ただし、適用には期限がありますのでご注意ください。

(論点)改めて相続登記義務化を考える

4. 相続土地国庫帰属制度の導入


 また、相続登記義務化の一環として、相続人が相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」も導入されました。これは、相続によって取得したものの、維持管理が困難な土地を国に帰属させることで、管理負担を軽減する制度です。この制度により、放置されがちな土地が国の管理下に置かれ、適切に利用されることが期待されています。


※相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(法務省HP内)

リンク:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html


「6 却下事由・不承認事由一般関連

(Q3)相続登記が義務化されたと聞きましたが、まだ相続登記をしていません。このような土地は相続土地国庫帰属制度の申請ができますか。

(A3) 相続登記が未了であっても、申請する土地を相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限ります。)によって取得したのであれば、申請することができます。ただし、所有者であることを証する書面(戸籍事項証明書等)を添付する必要があります。また、申請を取り下げたり、申請が却下・不承認となった場合は、承認申請者が引き続きその土地の所有者となりますので、相続登記を申請する必要があります。」(引用終わり)


ポイントは、相続土地国庫帰属制度に申請する場合には相続登記は必須ではありませんが、却下・不承認の場合は、相続登記の義務が生じることになります。


5. 相続登記義務化の施行と罰則


 相続登記の義務化は、2024年4月1日から正式に施行されました。この制度により、土地を相続した人は相続が発生してから3年以内に登記を行う義務が課されます。もしこの義務を怠った場合、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。これにより、相続登記の放置が減り、所有者不明土地の問題が解消されることを狙っています。


まとめ


 相続登記義務化を進めるうえで、行政が行ってきた主な取り組みとしては、戸籍の電子化と集中管理、相続登記手続きの簡素化、登録免許税の減免措置、登記手続きのデジタル化などが挙げられます。これらの施策は、相続登記を促進し、所有者不明土地問題を解決するために重要な役割を果たしています。


(論点)子供がいない夫婦の相続時の問題点

(論点)子供がいない夫婦の相続時の問題点

子供がいない夫婦における相続の問題は、特に長男の嫁という立場でより複雑化することが多いです。

配偶者の方が長男を亡くした後、子供がいないために相続や祭祀継承に関する問題が浮上しやすくなります。

以下に、具体的な問題とその対策について説明します。


目次


1. 祭祀承継者の問題

2. 長男の実家の相続と処分の問題

3. 遺言書の必要性と相続手続きの複雑さ

4. まとめ

(論点)子供がいない夫婦の相続時の問題点

1. 祭祀承継者の問題


 まず、祭祀承継者(お墓や位牌を守る人)の指定についてです。長男が亡くなり、残された配偶者が子供のいない状況では、祭祀を誰が行うかが大きな問題となります。通常、祭祀承継者は法定相続とは別に決定されるため、遺産分割とは異なる視点で考える必要があります。もし遺言書で長男の家系の誰かを祭祀承継者に指定したい場合、その人との関係が良好であるかが重要です。特に親族間での合意がないまま祭祀承継者が指定されると、後々トラブルに発展することがあります。遺言書での祭祀承継者の指定は、家族間の感情的な問題にも配慮する必要があります。


 対策として、遺言書の明確化と、家族との事前の話し合いが求められます。具体的にどのように祭祀を行い、どのような負担が発生するかを明記し、指定された人にその役割を引き受けてもらえるかを確認することが大切です。

(論点)子供がいない夫婦の相続時の問題点

2. 長男の実家の相続と処分の問題


 もう一つの大きな問題は、長男の家系の実家に関する相続です。子供がいない場合、配偶者が相続する財産に長男の実家が含まれることが多いですが、実家が長男の家系の象徴的な存在である場合、処分がしづらいという心理的な負担が生じます。特に長男の両親や兄弟姉妹などの親族が実家に思い入れを持っている場合、配偶者が自由に売却や処分を行うことに対する抵抗感が強くなることが予想されます。


 法的には、配偶者がその不動産を相続すれば処分する権利を持ちますが、実際には家系のシンボルであるため、売却やリフォームを行う際に親族との摩擦が生じることがあります。このような場合の対策として、以下のような方法が考えられます:


事前の合意形成:親族との関係が良好であれば、実家の処遇について話し合い、双方が納得できる形で合意を形成することが理想です。場合によっては、親族にその家を引き取ってもらう代わりに、別の形で財産を分配するなどの工夫も考えられます。


遺言書の作成:被相続人である長男が健在のうちに、実家の処遇について明確な指示を遺言書に記載しておくことも有効です。例えば、「実家は〇〇に譲渡し、他の財産を配偶者に相続させる」などの具体的な指示があれば、後のトラブルを防ぐことができます。


信託の活用:家族信託を利用し、実家の処分や管理に関する権限を信託財産として預けることで、配偶者が財産の維持や処分に関して直接的な負担を負わないようにする方法もあります。信託契約によって、親族が管理を続ける一方、配偶者の経済的な利益を守ることができます。


3. 遺言書の必要性と相続手続きの複雑さ


 遺言書がない場合、長男が亡くなり配偶者だけが残されると、法定相続に従って遺産分割が行われます。長男の親が健在であれば、その親も相続権を持ち、配偶者が全財産を相続できない可能性が高まります。さらに、長男の兄弟姉妹や甥姪が相続に関わることもあり、相続手続きが非常に複雑化します。


このような状況を避けるためには、遺言書の作成が不可欠です。特に以下のポイントを明記することが重要です:


実家の処遇:先述の通り、実家の処遇について親族との合意が得られている場合、その内容を具体的に記載します。そうでない場合は、配偶者が自由に処分できることを明確に記載することが推奨されます。


祭祀承継者の指定:お墓や位牌を守る人物を明確に指定し、祭祀に関する費用の分担や管理方法を記載することも重要です。


配偶者への財産分配:長男の親や兄弟が相続権を持つ場合でも、遺言書で配偶者に多くの財産を相続させるように指定できます。これは法定相続を超えた部分でも認められるため、配偶者の生活を守るためにも活用できます。

(論点)子供がいない夫婦の相続時の問題点

4. まとめ


 子供のいない夫婦における相続は、長男の家系に強い象徴性がある場合や、配偶者が遺産を相続する際に特有の問題が発生します。祭祀承継者の問題や、実家の処遇に関して親族間で摩擦が生じやすく、遺言書がなければ相続手続きが非常に複雑化することがあります。


 これらの問題を防ぐためには、遺言書の作成と、親族間の事前の合意形成が重要です。また、信託や専門家の活用も、円滑な相続を実現するための手段として有効です。相続に関するトラブルを未然に防ぐためには、配偶者や家族、専門家との密なコミュニケーションが不可欠となります。

(論点)相続において「財産が少ないからもめない」は本当か?

(論点)相続において「財産が少ないからもめない」は本当か?

相続に関する話題で、「財産が少ないからもめない」という言葉を耳にすることがありますが、果たしてこれは本当なのでしょうか?

家庭裁判所の遺産分割事件におけるデータを基に、財産の価額別に見た相続の争いについて検証してみます。



目次


1. 相続の争いと財産の多寡

2. 家庭裁判所の遺産分割事件のデータ

3. 財産が少なくても争いが起きる理由

4. 遺産分割を巡るトラブルを防ぐ方法

5. 結論


(論点)相続において「財産が少ないからもめない」は本当か?

1. 相続の争いと財産の多寡


 一般的に、遺産が多ければ相続争いが激化し、財産が少なければ争いは起きないと考えられがちです。しかし、家庭裁判所で扱われる遺産分割事件のデータを見ると、必ずしも財産の多寡が争いの発生に直結しているわけではないことがわかります。

 家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルは、遺産の価額が少ないケースでも多く発生しています。

 実際に、遺産分割の調停や審判に持ち込まれる案件の多くは、遺産の総額が5,000万円以下のケースが大半を占めています。

 このことからも、相続財産の規模にかかわらず、相続人間での争いが生じる可能性は十分にあると言えます。

(論点)相続において「財産が少ないからもめない」は本当か?

2. 家庭裁判所の遺産分割事件のデータ


 家庭裁判所が公開している遺産分割事件の記録を見ると、相続争いがどのような財産規模で発生しているかを分析することができます。以下は、遺産の価額別に見た家庭裁判所での遺産分割事件の割合です。


5,000万円以下:全体の約7割

5,000万円〜1億円:約2割

1億円以上:約1割


 このデータからわかるように、遺産価額が5,000万円以下の相続で家庭裁判所に持ち込まれるケースが最も多いのです。遺産が少ないから争いが起きないという考えは、このデータを見る限り当てはまらないことが明らかです。


(論点)相続において「財産が少ないからもめない」は本当か?

3. 財産が少なくても争いが起きる理由


 では、なぜ財産が少ない場合でも相続争いが発生するのでしょうか?その理由は以下のような要因によります。


(1) 感情的な対立

相続は、単なる財産の分配以上に、家族間の感情的な問題が絡み合うことが多いです。たとえ少額の財産であっても、親族間の関係が良好でない場合、分割方法や分配額をめぐって感情的な対立が起こりやすくなります。たとえば、長年の確執や親の介護負担の不均衡といった問題が表面化し、それが相続争いに発展することがあります。


(2) 分けにくい財産

現金のように簡単に分割できる資産が少なく、不動産や特定の物品が主な財産である場合、それをどのように分けるかで争いが生じることがあります。不動産は分割が難しく、売却するか、一人が相続する場合はその代償金を他の相続人に支払う必要がありますが、この代償金の算定や支払いを巡って争いになることが少なくありません。


(3) 法的知識や準備の不足

多くの人は相続について十分な法的知識を持っておらず、遺言書がない場合には法定相続に基づく遺産分割が必要になります。これがスムーズに進まない場合、相続人同士が意見を異にし、話し合いがまとまらずに調停や審判に進むことがあります。特に、遺産が少額である場合、弁護士を雇うことを躊躇し、結果として紛争が長引くこともあります。


4. 遺産分割を巡るトラブルを防ぐ方法


 財産の多少にかかわらず、相続トラブルを防ぐためには事前の対策が重要です。以下の方法で、争いを未然に防ぐことができます。


(1) 遺言書の作成

最も有効な対策の一つは、遺言書を作成することです。遺言書があれば、相続人間での話し合いをスムーズに進めることができます。特に、遺言書が公正証書遺言として作成されている場合、その信頼性が高く、後のトラブルを防ぐ効果があります。


(2) 財産の把握と分配の検討

相続財産が少ない場合でも、事前に財産の内容や分割方法について家族と話し合っておくことが重要です。不動産や預貯金のほか、生命保険や債務の有無についても把握し、どのように分配するかを考えておくことで、後の紛争を避けることができます。


(3) 相続に関する専門家の活用

相続に関する問題は、専門家(弁護士や司法書士、税理士など)に相談することで、適切な解決策を見つけることができます。特に、法的知識がない場合や感情的な対立が避けられない状況では、第三者の専門家が間に入ることで、冷静な話し合いを進めることができるでしょう。

(論点)相続において「財産が少ないからもめない」は本当か?

5. 結論


 「財産が少ないからもめない」という考えは、家庭裁判所のデータを見る限り、必ずしも正しくありません。

 むしろ、財産が少ない場合でも、感情的な対立や分けにくい財産が原因で相続争いが発生するケースが多いことがわかります。

 相続トラブルを避けるためには、遺言書の作成や事前の家族との話し合い、専門家の活用が有効です。

 財産の規模に関わらず、相続対策を怠らないことが、家族の円満な相続を実現するための鍵となります。

(論点)行政書士と司法書士の違い

(論点)行政書士と司法書士の違い

行政書士と司法書士は、どちらも法律に関する業務を取り扱う専門家ですが、それぞれの業務内容や専門分野に違いがあります。特に相続において不動産が含まれる場合、登記に関わる手続きが発生するため、司法書士に依頼することが適切です。

以下では、行政書士と司法書士の業務内容の違いを説明し、不動産相続において司法書士が果たす役割について詳しく解説します。


目次


1. 行政書士の業務内容

2. 司法書士の業務内容

3. 行政書士と司法書士の違い

4. 相続に不動産が含まれる場合、司法書士に任せるべき理由

5. まとめ

(論点)行政書士と司法書士の違い

1. 行政書士の業務内容


行政書士は、主に「書類の作成」を業務とする法律専門職です。行政書士が作成する書類は、官公署(行政機関)に提出するものが多く、例えば許認可申請書、契約書、各種届出書などが挙げられます。相続においても、行政書士は以下のような業務を行います。


相続関係説明図の作成:相続人が誰であるかを明確にするための図を作成します。

遺産分割協議書の作成:相続人同士で遺産の分け方を決定した際、その内容を記した書類を作成します。

相続手続きのサポート:遺産分割協議や相続に関する行政手続きのサポートを行います。


行政書士は、遺産分割協議書や相続に関する各種書類を作成することができますが、実際の「登記」や「法的な手続き」を行う権限はありません。これは、司法書士が担当する業務に該当します。

(論点)行政書士と司法書士の違い

2. 司法書士の業務内容


 司法書士は、法律に基づく「登記」や「法務書類作成手続き」(司法機関、裁判所など)の専門家です。特に不動産に関する権利関係の登記や、相続における権利移転手続きが主な業務です。司法書士が行う主な業務は以下の通りです。法務局は行政機関なのに、なぜ司法書士なのかという話が出ることがありますが、かつて登記の管轄を裁判所がしていた名残のためです。


不動産登記:不動産の所有権や抵当権など、法律的な権利の変更や設定を登記簿に反映させる手続きです。売買や相続などで所有者が変わった場合、司法書士がその手続きを行います。

商業登記:会社法人の設立や現在の状態を反映させるための変更登記の手続きを代理することができます。

裁判所への提出書類の作成:例えば、相続放棄や遺言の検認手続きに関連する書類を作成し、必要に応じて裁判所に提出します。


 相続において、不動産が含まれている場合は、必ず「登記」の手続きが必要です。このため、相続が発生した際に不動産がある場合は、登記の専門家である司法書士に依頼することが重要です。

(論点)行政書士と司法書士の違い

3. 行政書士と司法書士の違い


行政書士と司法書士の違いは、主に「業務の範囲」にあります。


3-1. 行政書士の業務範囲

 行政書士は、書類の作成に関して広範な権限を持っています。許認可申請や、相続に関する書類作成のサポートを行うことができるため、相続に関する手続きにおいても行政書士が活躍する場面は少なくありません。しかし、行政書士には登記に関する業務を行う権限がないため、不動産の相続手続きにおいては、その範囲を超えた登記申請の代理等の業務には対応できません。


3-2. 司法書士の業務範囲

 司法書士は、法律に基づく登記手続きを行うことができ、相続に伴う不動産の所有権移転登記や、抵当権設定などの複雑な法的手続きに対応できます。ただし、相続人間でのトラブルが生じた場合に、法的な助言や裁判所への書類提出などは、弁護士の領域となります。


4. 相続に不動産が含まれる場合、司法書士に任せるべき理由


 相続に不動産が含まれる場合、必ずその不動産の所有権移転登記が必要です。これは、相続人が正式に不動産を所有する権利を公的に証明するための手続きであり、登記をしないと第三者に対抗することができません。登記を怠ると、不動産を売却する際や、後にトラブルが発生した場合に、相続人が不利な立場に立たされる可能性があります。(令和6年4月1日より相続登記は義務化されています。)


4-1. 登記手続きの重要性

不動産登記は、不動産の権利関係を明確にし、誰がその不動産を所有しているかを公的に証明するためのものです。相続が発生した場合、以下のような問題が生じる可能性があります。


所有者が不明確になる:相続登記を行わないと、登記簿上の所有者が故人のままとなり、相続人がその不動産を売却したり利用したりする際に問題が生じます。

相続人間のトラブル:相続登記を怠ると、相続人間での不動産の権利関係が不明確になり、後にトラブルが発生するリスクが高まります。

不動産の売却が難しくなる:相続登記を行わないままでは、不動産の売却手続きが進められません。売却を希望しても、まず登記を完了させなければならず、手続きが遅れる原因となります。


これらの問題を避けるために、相続登記は速やかに行う必要があります。


4-2. 司法書士に任せるメリット


司法書士に相続登記を依頼することで、複雑な法的手続きを確実に行うことができます。不動産の相続手続きにおいては、以下のようなメリットがあります。


登記手続きの代理:司法書士は、相続人に代わって不動産の所有権移転登記を行うことができます。複雑な書類作成や手続きを全て任せることができるため、相続人自身が法律に詳しくなくても安心です。

トラブルの回避:相続登記が完了していない場合、後々トラブルが生じる可能性がありますが、司法書士が手続きを行うことで、権利関係を明確にし、将来的なリスクを軽減することができます。

法的アドバイスの提供:相続手続きにおいては、法的な判断が必要な場面が多々あります。司法書士は法的なアドバイスを提供し、最適な解決策を提案してくれます。

(論点)行政書士と司法書士の違い

5. まとめ


 行政書士と司法書士は、それぞれ異なる役割を持ちながら、相続手続きにおいて重要な役割を果たします。行政書士は、相続に関する書類作成や遺産分割協議書の作成を担当し、司法書士は不動産登記や法的手続きを行います。相続に不動産が含まれる場合、登記手続きが必要であるため、司法書士に依頼することが不可欠です。

 不動産の相続登記は、相続人が正式にその不動産を所有する権利を確立するために必要な手続きであり、司法書士のサポートを受けることで、複雑な手続きや将来的なトラブルを回避することができます。

 相続において不動産が含まれている場合は、速やかに司法書士に相談し、確実な登記手続きを行うことが重要です。

(論点)土地家屋調査士と司法書士の違い(同じ登記でも対象が異なる)

(論点)土地家屋調査士と司法書士の違い(同じ登記でも対象が異なる)

土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)と司法書士(しほうしょし)は、どちらも登記業務に関わる資格ですが、具体的な業務内容や専門分野は異なります。

登記に関連する業務を行う際に、これら二つの専門職の役割や違いを正確に理解しておくことは、依頼者にとって重要です。本稿では、土地家屋調査士と司法書士が扱う登記の違いを詳しく説明します。


目次


1. 土地家屋調査士の登記業務

2. 司法書士の登記業務

3. 土地家屋調査士と司法書士の違い

4. 共同業務と連携

5. 資格と業務範囲

結論

(論点)土地家屋調査士と司法書士の違い(同じ登記でも対象が異なる)

1. 土地家屋調査士の登記業務


 土地家屋調査士の主な業務は、不動産の「物理的な状態」を登記に反映させることです。具体的には、土地や建物の境界を確定し、その形状や面積などを正確に測量し、登記簿に反映させる業務を担当します。土地家屋調査士の登記業務は、不動産の実体に基づく情報を公的に記録するものであり、これにより所有者や権利者が自分の不動産の正確な範囲や形状を証明できるようになります。


1-1. 主な登記業務

土地家屋調査士が扱う登記の代表的なものには以下があります。


土地分筆登記:一つの土地を複数に分割する場合に行う登記です。例えば、相続や売買などの際に、広い土地を細かく分ける必要がある場合に行われます。

土地合筆登記:複数の土地を一つにまとめる登記です。複数の土地を所有している場合、それらを統合して管理することが可能です。

建物表題登記:新築した建物を初めて登記簿に記載する際に行う登記です。この登記により、建物が公式に存在することが証明されます。

区分建物表題登記:マンションなどの区分所有建物の登記です。個々の区分所有部分の登記が必要な場合に行われます。


1-2. 土地家屋調査士の役割

土地家屋調査士は、主に測量技術に基づいて業務を行います。不動産の境界線や面積、建物の形状などの物理的な要素を正確に反映することが求められます。土地の境界に争いがある場合や、土地の面積が正確でない場合は、土地家屋調査士が現地で測量を行い、その結果を登記簿に反映させます。彼らの業務は、不動産の物理的な側面に関する専門知識が要求されるため、測量士としてのスキルが重要です。

(論点)土地家屋調査士と司法書士の違い(同じ登記でも対象が異なる)

2. 司法書士の登記業務


 一方、司法書士の登記業務は、不動産の「権利関係」に関するものです。司法書士は、不動産の所有権や抵当権などの権利関係の変更や移転を登記簿に反映させる役割を担います。例えば、不動産の売買や相続による所有権の移転、銀行からの借り入れに伴う抵当権の設定などが、司法書士の主な業務に該当します。


2-1. 主な登記業務

司法書士が扱う登記の代表的なものには以下があります。


所有権移転登記:不動産の売買や相続などにより所有者が変わった場合に行う登記です。例えば、家を購入した場合は、司法書士が新しい所有者の情報を登記簿に反映させます。

抵当権設定登記:不動産を担保に借金をする場合に、金融機関が抵当権を設定する際に行う登記です。この登記により、債務者が借り入れた金額を返済できない場合に、金融機関が不動産を差し押さえる権利が公式に認められます。

所有権保存登記:新築物件の初めての所有権登記です。これは土地家屋調査士が行う建物表題登記とは異なり、新築の建物の所有者を明確にするために行われます。

抵当権抹消登記:ローンを完済した場合に、金融機関が設定した抵当権を抹消するための登記です。


2-2. 司法書士の役割


司法書士の業務は、不動産に関する法律的な権利関係を扱います。不動産売買の際に、所有権が正式に移転するためには、登記簿の所有者欄が変更される必要があり、その手続きを代行するのが司法書士の役目です。また、借り入れに際して抵当権が設定される場合や、相続で不動産が移転する場合にも、司法書士がその登記手続きを行います。これにより、権利関係が公に認められ、第三者にも対抗できる状態となります。


3. 土地家屋調査士と司法書士の違い


 土地家屋調査士と司法書士の最大の違いは、扱う「登記の内容」にあります。

 土地家屋調査士は、不動産の物理的な側面を取り扱い、土地や建物の形状、面積、境界などを正確に反映させることが主な業務です。土地の分筆や合筆、新築建物の登記など、物理的な変動を記録する役割を担います。

 司法書士は、不動産の権利関係に関する登記を行い、所有権や抵当権の移転や設定、抹消など、法律上の権利を登記簿に反映させることが主な業務です。売買や相続など、法律的な側面に関与します。


4. 共同業務と連携


 土地家屋調査士と司法書士は、不動産登記において互いに連携して業務を行う場面が多くあります。例えば、新築物件の登記の場合、まず土地家屋調査士が建物表題登記を行い、その後に司法書士が所有権保存登記を行うという流れです。また、土地の分筆や合筆が行われる場合にも、土地家屋調査士が物理的な変更を登記し、その後に司法書士が権利の変更を登記することがあります。


5. 資格と業務範囲


 土地家屋調査士と司法書士は、それぞれの資格が必要であり、業務範囲が法律で定められています。土地家屋調査士は不動産の測量や登記に関する技術的な知識が要求され、司法書士は法律的な知識や契約書の作成、登記手続きの代行が求められます。両者の業務は密接に関連していますが、それぞれの専門分野において高度な専門性が必要です。

(論点)土地家屋調査士と司法書士の違い(同じ登記でも対象が異なる)

結論


 土地家屋調査士と司法書士は、不動産登記において異なる役割を担いながらも、相互に補完し合う関係にあります。土地家屋調査士は不動産の物理的側面(登記簿謄本の表題部)、司法書士は権利関係の法律的側面(登記簿謄本の権利部)を扱い、両者が連携することで不動産の登記が正確かつ円滑に行われます。

(論点)司法書士の独占業務である登記とは

(論点)司法書士の独占業務である登記とは

司法書士の独占業務である「登記」は、日本の不動産取引や相続において極めて重要な役割を果たしています。不動産を購入したり、相続によって不動産の権利を取得したりした際には、登記を行うことが一般的です。

しかし、なぜ登記が必要なのか、また登記を怠った場合にどのようなリスクがあるのかを理解することは重要です。ここでは、登記の意義と、民法第177条に基づく対抗要件について詳しく説明します。


目次


1. 登記とは何か

2. 不動産の権利取得と登記の必要性

3. 民法第177条と

4. 登記をしない場合のリスク

5. 登記のメリット

6. 司法書士の役割

7. まとめ

(論点)司法書士の独占業務である登記とは

1. 登記とは何か


 登記とは、不動産や会社の権利関係を公示するための制度です。不動産の場合、誰がその不動産の所有者であるか、抵当権が設定されているかなど、権利に関する情報が法務局に備えられた登記簿に記録されます。これにより、不動産の権利関係が明確化され、第三者がその情報を閲覧できるようになっています。


2. 不動産の権利取得と登記の必要性


 不動産を購入した場合や相続で不動産を取得した場合、その権利を取得したことを証明するためには「登記」が必要です。登記を行うことで、取得した権利が公的に認められ、他者に対してその権利を主張できるようになります。この点に関して、特に重要なのが民法第177条です。


3. 民法第177条とは


 民法第177条は、不動産に関する権利の変動を第三者に対抗するためには、登記が必要であることを定めています。具体的には、以下のように規定されています。

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記しなければ、第三者に対抗することができない。」

 この規定は、例えば、不動産の売買や相続によって所有権を取得したとしても、その権利を登記していない限り、他の第三者(例えば、別の購入者や抵当権者)に対してその権利を主張することができないことを意味します。つまり、登記をしていない場合、権利を持っていることを他者に証明できず、法的に不利な立場に立たされる可能性があるということです。

(論点)司法書士の独占業務である登記とは

4. 登記をしない場合のリスク


 民法第177条に基づく「対抗要件」は、第三者に対する権利の主張に深く関わっています。これにより、登記をしないことには以下のようなリスクが生じます。


4-1. 所有権が不明確になる

 不動産を取得したにもかかわらず登記を行わない場合、法務局に記録されている登記簿上では、前所有者の名前が引き続き残ることになります。結果として、実際の所有者が誰であるかが不明確となり、後の売却や利用が難しくなる可能性があります。


4-2. 二重売買や詐欺のリスク

 登記を行わない限り、第三者に対してその不動産を所有していることを証明する手段がありません。仮に、不動産の売主が二重に売買契約を結んだ場合、先に登記を済ませた購入者が法的に優先されるため、後から購入したとしても登記をしていなければ不利な立場に置かれます。これにより、登記を怠ると、自分が正当な所有者であっても権利を守ることができないというリスクがあります。


4-3. 相続における問題

 相続で不動産を取得した場合も、登記を行わなければ権利を対外的に主張できません。相続人同士での争いが生じた場合、登記がされていないと、遺産分割がスムーズに進まないことがあります。また、相続人が複数いる場合、一部の相続人が勝手にその不動産を処分してしまうリスクも存在します。このような事態を避けるためにも、登記は迅速に行うことが求められます。


5. 登記のメリット


 登記を行うことには、法的リスクを避けるだけでなく、さまざまなメリットがあります。


5-1. 権利の保護

 登記を行うことで、不動産の所有者としての権利が公的に認められます。これにより、不動産を売却したり、抵当権を設定したりといった不動産の取引をスムーズに進めることが可能です。また、トラブルが発生した際にも、登記簿を用いて権利の有無を証明することができます。


5-2. 将来的なトラブルの回避

 登記を行うことで、所有権が公的に確認できるため、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。特に、不動産は高額で価値のある資産であるため、権利関係が明確でないと相続や売買などの手続きが複雑化し、無用なトラブルを招く原因となります。


5-3. 不動産取引の透明性

 登記によって不動産の権利関係が明確にされるため、不動産取引において信頼性が高まります。購入者や金融機関など、取引に関わるすべての当事者が安心して取引を進められるようになります。

(論点)司法書士の独占業務である登記とは

6. 司法書士の役割


 司法書士は、不動産登記に関する専門知識を持った法律職であり、登記手続きを代理して行うことができます。不動産取引においては、売買契約書の作成から登記申請までの一連の手続きを代行し、権利関係を法的に確定させる役割を果たします。特に、相続や贈与などで複雑な権利関係が絡む場合、専門家である司法書士に依頼することが推奨されます。


6-1. 司法書士の登記手続き

 司法書士は、登記申請書類の作成から法務局への提出まで、登記に関する一切の手続きを行います。また、相続人や取引の当事者と協力して、必要な証明書類や書類の作成をサポートし、登記手続きをスムーズに進めるための助言を行います。これにより、権利の確定が迅速かつ確実に行われます。


6-2. トラブル予防のためのアドバイス

 司法書士は、登記手続きだけでなく、将来のトラブルを予防するための法的アドバイスも提供します。相続において、相続人間の争いを防ぐための対策や、遺言の作成サポートなど、権利関係を円滑に進めるための提案も行います。

(論点)司法書士の独占業務である登記とは

7. まとめ


 不動産を取得した場合、登記を行うことは民法第177条に基づく「対抗要件」を満たすために不可欠です。登記を怠ると、第三者に対して権利を主張できず、トラブルが発生した際に不利な立場に立たされるリスクがあります。そのため、不動産を取得した際は速やかに登記を行い、権利関係を明確にしておくことが重要です。

 登記手続きには複雑な法的要件が関わるため、司法書士に依頼することで、確実かつスムーズに手続きを進めることができます。

(FAQ)いまさら聞けない遺産分割協議

(FAQ)いまさら聞けない遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人が遺産をどのように分配するかを話し合う重要な手続きです。以下は遺産分割協議についてのよくある質問(FAQ)形式でまとめたものです。


目次(質問)


1. 遺産分割協議とは何ですか?

2. 遺産分割協議を行う時期はいつですか?

3. 誰が遺産分割協議に参加できますか?

4. 相続人が未成年の場合はどうなりますか?

5. 協議がまとまらない場合はどうすれば良いですか?

6. 遺産分割協議書は必要ですか?

7. 遺産分割協議書を作成する際の注意点は?

8. 遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合はどうなりますか?

9. 分割方法にはどのようなものがありますか?

10. 代償分割のメリットとデメリットは?

11. 相続放棄をした相続人は協議に参加できますか?

12. 遺産分割協議に司法書士や弁護士は関与しますか?

終わりに

(FAQ)いまさら聞けない遺産分割協議

1. 遺産分割協議とは何ですか?


遺産分割協議は、相続が発生した際に、相続人が遺産を分ける方法を協議する手続きです。遺言書が存在しない場合や、遺言書で定められた内容以外に分割を行う場合に、全ての法定相続人の同意が必要です。この協議によって、各相続人がどの財産をどのように取得するかが決定されます。


2. 遺産分割協議を行う時期はいつですか?


遺産分割協議を行う時期に法的な期限はありませんが、相続税の申告期限である相続開始から10ヶ月以内に協議を完了させることが推奨されます。10ヶ月以内に協議が完了しない場合、相続税の申告が遅れ、税金の負担が大きくなる可能性があります。


3. 誰が遺産分割協議に参加できますか?


遺産分割協議には、法定相続人全員が参加しなければなりません。法定相続人とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者、子ども、直系尊属(両親や祖父母)、兄弟姉妹などです。遺言執行者が選ばれている場合は、遺言執行者も協議に関わることがあります。


4. 相続人が未成年の場合はどうなりますか?


相続人が未成年の場合、親権者または特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加します。親権者が協議に参加する場合、自らの利益と相反するため、裁判所に申請して特別代理人を選任する必要があります。これにより、未成年者の権利が保護されます。

(FAQ)いまさら聞けない遺産分割協議

5. 協議がまとまらない場合はどうすれば良いですか?


全員の同意が得られない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てることができます。調停は、第三者である調停委員が仲介し、相続人間で合意を目指す手続きです。それでも合意に至らない場合は、審判へと進み、家庭裁判所が強制的に遺産分割を決定します。


6. 遺産分割協議書は必要ですか?


はい。遺産分割協議がまとまった場合は、遺産分割協議書を作成します。この書面には、協議で決定した内容が明記され、全ての相続人が署名捺印します。遺産分割協議書は不動産登記や預貯金の名義変更に必要な書類で、法的な効力を持ちます。


7. 遺産分割協議書を作成する際の注意点は?


遺産分割協議書は、相続人全員が内容に同意し署名捺印する必要があります。不動産が含まれる場合は実印を押し、印鑑証明書を添付します。また、遺産の内容が漏れなく記載されていること、書き方に誤りがないことも重要です。専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。


8. 遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合はどうなりますか?


協議後に新たな遺産が見つかった場合、再度相続人全員で協議を行い、その遺産をどのように分けるかを決めます。再び遺産分割協議書を作成する必要があり、全員の同意が求められます。


(FAQ)いまさら聞けない遺産分割協議

9. 分割方法にはどのようなものがありますか?


遺産の分割方法には、以下の3つの主な方法があります。


現物分割:不動産や現金などの遺産をそのままの形で分割する方法。

代償分割:相続人の一部が特定の財産を受け取り、他の相続人に代償金を支払うことで分配する方法。

換価分割:遺産を売却し、その売却代金を相続人で分割する方法。


10. 代償分割のメリットとデメリットは?


代償分割のメリットは、特定の財産(例:自宅や事業用不動産など)を一人が相続できるため、財産の維持が可能になることです。一方で、代償金の支払いが発生するため、支払い能力が求められる点がデメリットです。代償金を準備できない場合、最終的に換価分割に切り替えなければならない可能性もあります。


11. 相続放棄をした相続人は協議に参加できますか?


相続放棄をした相続人は、遺産分割協議に参加する権利も義務もありません。放棄をした時点で、その相続人は初めから相続人でなかったものとみなされます。ただし、遺産分割前に放棄が行われているかを確認する必要があります。


12. 遺産分割協議に司法書士や弁護士は関与しますか?


複雑な遺産分割や争いが予想される場合、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが望ましいです。専門家は法律に基づいて適切なアドバイスを提供し、遺産分割協議書の作成や不動産の名義変更手続きなどを代行することができます。ただし、争いがある場合や想定される場合には、弁護士に依頼してください。


終わりに


遺産分割協議は、相続人全員の協力が必要な手続きであり、法的な知識も重要です。専門家のサポートを受けながら、円滑に手続きを進めることが、後々のトラブルを防ぐための最善の方法です。

(FAQ)いまさら聞けない遺言書について

(FAQ)いまさら聞けない遺言書について

自筆証書遺言と公正証書遺言は、遺言書を作成する際の代表的な方法です。どちらも法的効力を持ちますが、作成手続きや取り扱いに違いがあります。この記事では、これら2つの遺言書についてFAQ形式でその特徴や違いを解説します。


目次(質問)


Q1: 自筆証書遺言とは何ですか?

Q2: 公正証書遺言とは何ですか?

Q3: 自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな違いは何ですか?

Q4: 自筆証書遺言を作成する際の注意点は何ですか?

Q5: 公正証書遺言を作成するための手続きはどうなりますか?

Q6: 自筆証書遺言を保管するための制度はありますか?

Q7: 遺言の作成には費用がかかりますか?

Q8: 証人は必要ですか?

Q9: どちらの遺言を選ぶべきですか?

Q10: どちらの遺言でも内容を変更したり、撤回することはできますか?

(FAQ)いまさら聞けない遺言書について

Q1: 自筆証書遺言とは何ですか?


A1: 自筆証書遺言とは、遺言者が自分で遺言内容をすべて手書きで記載した遺言書です。形式が簡便で、費用もかからないため、手軽に作成できる点が特徴です。しかし、法的要件を満たさない場合は無効になる可能性があり、遺言内容が法的に有効であるか確認するための専門知識も必要となる場合があります。


Q2: 公正証書遺言とは何ですか?


A2: 公正証書遺言とは、遺言者が公証人役場で公証人に遺言内容を口述し、公証人がその内容を文書にして作成する遺言書です。公証人が関与するため、遺言の内容が法律に沿ったものであることが確認され、無効になるリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配も少ないです。


Q3: 自筆証書遺言と公正証書遺言の大きな違いは何ですか?


A3: 大きな違いは作成手続きと安全性です。


㋐自筆証書遺言は、遺言者が一人で作成できる反面、書式や内容に誤りがあれば無効になる可能性があり、保管方法にも注意が必要です。また、遺言者の死後に家庭裁判所での「検認」という手続きが必要です。

㋑公正証書遺言は、遺言作成時に公証人が法的に適正かどうか確認し、さらに原本が公証役場に保管されるため、無効や紛失のリスクが低く、検認手続きが不要です。


Q4: 自筆証書遺言を作成する際の注意点は何ですか?


A4: 自筆証書遺言を作成する際は、以下の点に注意する必要があります。


①全文を自書:遺言者が遺言書の全文を手書きで書かなければなりません。パソコンや代筆は無効です。

➁日付を明記:日付を明記しなければ無効となります。具体的な日付を書く必要があり、「○月○日」や「吉日」といった曖昧な表現は避けるべきです。

③署名・押印:遺言者自身の署名と押印が必要です。印鑑は認印でもよいですが、実印を使うことが一般的です。


Q5: 公正証書遺言を作成するための手続きはどうなりますか?


A5: 公正証書遺言を作成するには、次の手順を踏みます。


①遺言の内容を事前に考え、公証人役場に相談します。

➁公証人と打ち合わせを行い、必要書類を準備します(遺言者の本人確認書類、不動産の登記簿謄本、相続人の戸籍謄本など)。

③公証人役場で遺言者が口述し、公証人が内容を文書化します。

④遺言者と証人2名の立会いのもと、遺言書を確認し署名します。公証人が原本を保管し、遺言者には正本と謄本が渡されます。

(FAQ)いまさら聞けない遺言書について

Q6: 自筆証書遺言を保管するための制度はありますか?


A6: 2020年7月より、「自筆証書遺言書保管制度」が導入されました。法務局で自筆証書遺言を保管してもらうことができ、遺言書の紛失や改ざんのリスクを減らすことができます。この制度を利用した場合、遺言者の死後に家庭裁判所での検認が不要になります。


Q7: 遺言の作成には費用がかかりますか?


A7:

自筆証書遺言の場合、基本的に費用はかかりません。ただし、内容の確認や作成にあたって専門家に依頼する場合は、相談料や報酬が発生することがあります。


公正証書遺言の場合、手数料がかかります。手数料は遺言の内容や遺産の額によって異なり、不動産や金融資産などの財産額が大きいほど高額になります。また、証人を依頼する場合の謝礼も別途必要です。


Q8: 証人は必要ですか?


A8:

自筆証書遺言の場合、証人は不要です。ただし、保管や信頼性の面では慎重に取り扱う必要があります。


公正証書遺言の場合は、2名の証人が必要です。証人には相続人やその配偶者、直系血族(親、子)など特定の立場の人はなれないため、第三者を依頼することが一般的です。



Q9: どちらの遺言を選ぶべきですか?


A9: 自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶかは、状況や遺言者の意向に応じて決めると良いでしょう。


自筆証書遺言は手軽で費用もかからないため、簡便に遺言を残したい場合に適しています。ただし、法的な不備がないか注意が必要です。

公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、内容が確実に有効である点が強みです。また、遺言書が公証役場に保管されるため、信頼性が高く安心です。財産が複雑であったり、相続人同士のトラブルが懸念される場合には公正証書遺言を選ぶことが推奨されます。


Q10: どちらの遺言でも内容を変更したり、撤回することはできますか?


A10: はい、どちらの遺言も遺言者が生存中であれば、いつでも内容の変更や撤回が可能です。ただし、新しい遺言書を作成した場合は、以前の遺言書と矛盾しないよう注意する必要があります。また、公正証書遺言の内容を変更する場合は、再び公証人の手続きを経る必要があります。

(FAQ)いまさら聞けない遺言書について

自筆証書遺言と公正証書遺言には、それぞれの利点と課題があります。自身の財産や家族の状況に応じて、適切な形式を選びましょう。

どちらの形式でも、遺言書が有効であるためには、法律の要件を満たしていることが重要です。

専門家のアドバイスを受けながら作成することをお勧めします。

令和6年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

令和6年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

経営者の皆様。

お手元に、法務省から封書は届いていますでしょうか?


「令和6年10月10日(木)、12年以上登記がされていない株式会社及び5年以上登記がされていない一般社団法人又は一般財団法人に対して、法務大臣による官報公告が行われ、同日付けで管轄登記所から通知書の発送を行いました。」(法務省HP引用)この封書を放置していますと、法人登記簿に登記官が職権で「みなし解散」の手続きとして、解散登記がなされます。


令和6年度においては

令和6年12月10日(火)までに

管轄の登記所に届出又は登記がされないときは、解散したものとみなされます。


「上記の株式会社や一般社団法人又は一般財団法人に該当する場合には、令和6年12月10日(火)までに必要な登記申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があり、これらの手続がされなかったときは、対象の会社等について「みなし解散の登記」がされることになります(会社法第472条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条及び第203条)。」 (法務省HP)

つまり、令和6年12月10日までに本店所在地の管轄法務局に解散していないことを報告し、放置していた登記の実施をしないといけません。


〇最後の登記から12年を経過している株式会社、又は最後の登記から5年を経過している一般社団法人若しくは一般財団法人は、事業を廃止していない場合、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を管轄登記所にする必要があります。

〇公告の日から2カ月以内(令和6年12月10日(火)まで)に、「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、また、必要な登記申請もされないときは、令和6年12月11日(水)付けで解散したものとみなされます


※よくわからない方は、アイリス国際司法書士・行政事務所までご相談ください。


より詳しい内容はこちらのブログをご覧ください!

(FAQ)いまさら聞けない相続登記義務化について

(FAQ)いまさら聞けない相続登記義務化について

2024年4月1日から施行される「相続登記義務化」は、相続による不動産の所有権移転登記が義務化される制度です。この制度は、相続によって生じる不動産の権利関係を明確化し、所有者不明土地の発生を防ぐために導入されました。

この記事では、相続登記義務化に関するFAQ形式で、その概要とポイントをまとめます。


目次(質問)


Q1: 相続登記義務化とは何ですか?

Q2: 相続登記の義務化はなぜ必要なのですか?

Q3: 相続登記はいつまでに行わなければなりませんか?

Q4: 登記を行うために必要な書類は何ですか?

Q5: 遺産分割協議がまとまらない場合でも登記は必要ですか?

Q6: 義務違反に対する罰則はありますか?

Q7: 義務化の対象となる不動産はどのようなものですか?

Q8: 共同相続人がいる場合、誰が登記手続きを行うのですか?

Q9: 遺言書がある場合でも相続登記は必要ですか?

Q10: 登記の手続きを自分で行うことは可能ですか?

Q11: 相続登記を怠っていた過去のケースについてはどうなりますか?

Q12: 相続登記の義務化によりどのようなメリットがありますか?

(FAQ)いまさら聞けない相続登記義務化について

Q1: 相続登記義務化とは何ですか?


A1: 相続登記義務化とは、相続により不動産を取得した際に、その不動産の所有権移転登記を行うことが義務付けられる制度です。従来は登記が任意でしたが、2024年4月1日からは義務となり、期限内に登記をしない場合には、過料が科される可能性があります。


Q2: 相続登記の義務化はなぜ必要なのですか?


A2: 相続登記の義務化は、所有者不明土地の増加を抑えることを目的としています。所有者が不明確な土地は、利用が困難になり、行政手続きや再開発などの際に大きな支障をきたすことがあります。この問題を解決するために、相続によって不動産を取得した場合には、その権利関係を登記によって明確にする必要があります。


Q3: 相続登記はいつまでに行わなければなりませんか?


A3: 相続登記は、相続が発生した日から3年以内に行うことが義務付けられています。相続発生の日とは、被相続人が死亡した日を指します。3年以内に登記を完了しなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。


Q4: 登記を行うために必要な書類は何ですか?


A4: 相続登記に必要な書類は以下の通りです。


1.被相続人の戸籍謄本および除籍謄本(出生から死亡までの一連のもの)

2.相続人全員の戸籍謄本

3.相続人全員の住民票または住所証明書

4.遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)

5.不動産の登記簿謄本および固定資産評価証明書


Q5: 遺産分割協議がまとまらない場合でも登記は必要ですか?


A5: 遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続登記は必要です。この場合は、「相続人全員の共有名義」での登記を行うことが可能です。遺産分割が完了した後に、その結果に基づいて持分を修正する登記を行うことができます。

※3年を超えそうな場合、相続人申告登記(義務化の過料を免れる手続き)をしておけば、過料は課せられないので、その間に遺産分割協議を行い相続登記をすることも可能です。

(FAQ)いまさら聞けない相続登記義務化について

Q6: 義務違反に対する罰則はありますか?


A6: はい、相続登記の義務を怠った場合には、過料が科される可能性があります。具体的には、相続開始から3年以内に登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科されるとされています。また、登記を意図的に怠る行為が認められた場合には、さらに厳しい罰則が適用されることも考えられます。


Q7: 義務化の対象となる不動産はどのようなものですか?


A7: 義務化の対象となる不動産は、すべての土地および建物です。農地、宅地、商業用地など、不動産の用途に関わらず、相続によって取得した全ての不動産に対して登記が必要となります。


Q8: 共同相続人がいる場合、誰が登記手続きを行うのですか?


A8: 共同相続人の中で、誰が登記手続きを行うかは特に法律で定められていませんが、一般的には代表相続人が手続きを進めることが多いです。ただし、最終的には相続人全員が登記申請に関与する必要があり、登記手続きを行う際には相続人全員の同意が必要です。


Q9: 遺言書がある場合でも相続登記は必要ですか?


A9: はい、遺言書が存在する場合でも、相続登記は必要です。遺言書に基づいて相続人が決定されている場合、その内容に従って登記を行うことになります。遺言書により特定の相続人に不動産が遺贈された場合、その相続人が相続登記を行います。


Q10: 登記の手続きを自分で行うことは可能ですか?


A10: 自分で相続登記の手続きを行うことも可能です。しかし、登記の手続きは専門的な知識が必要であり、書類の準備や法的要件を満たす必要があります。手続きに不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをお勧めします。


Q11: 相続登記を怠っていた過去のケースについてはどうなりますか?


A11: 相続登記の義務化は2024年4月1日以降に発生した相続に適用されますが、過去に相続登記を怠っていた場合でも、義務化の対象となります。施行日の令和6年4月1日から3年の間に相続登記をしなければなりません。


Q12: 相続登記の義務化によりどのようなメリットがありますか?


A12: 相続登記が義務化されることで、以下のようなメリットが期待されています。


 1.不動産の所有者が明確になるため、相続トラブルが減少する。

 2.所有者不明土地の発生が抑制され、土地利用が円滑になる。

 3.将来的な相続手続きが簡略化される。


 相続登記の義務化は、相続手続きにおいて重要な転換点となります。相続人の方々は、この新制度の内容を十分に理解し、適切に対応することが求められます。


 この相続登記義務化FAQ以外に、ご不明な点がある場合は、アイリス相続無料相談にてご質問ください。


(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

相続が発生した際、遺産は法定相続人によって分割されますが、その中でも「遺留分(いりゅうぶん)」という法的に保護された最低限の相続分が重要な役割を果たします。遺留分は、被相続人(亡くなった方)が遺言などで特定の相続人や第三者に全財産を譲渡しようとした場合でも、法定相続人が最低限保証される相続権を持つ仕組みです。これにより、家族の経済的な保護を図ることが目的とされています。本記事では、法定相続人と遺留分の関係について詳しく解説します。


目次


1. 法定相続人とは

2. 遺留分とは

3. 遺言書と遺留分の関係

4. 遺留分の放棄

5. 遺留分を巡る相続トラブル

6. まとめ

(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

1. 法定相続人とは


 法定相続人とは、民法によって定められた相続権を持つ者を指します。被相続人が遺言を残さなかった場合、または遺言が無効であった場合、法定相続人が相続人となり、法律に基づいて遺産を分割します。法定相続人の範囲は以下のように定められています。


1.1. 法定相続人の順位

配偶者:常に相続人となります。配偶者は他の相続人がいても、常にその相続人と共同で相続します。

第1順位:子供:被相続人の子供(養子も含む)が法定相続人になります。もし子供が亡くなっている場合、その子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。

第2順位:直系尊属:子供がいない場合、被相続人の両親や祖父母などが相続人となります。

第3順位:兄弟姉妹:子供も直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が亡くなっている場合、その子供(甥や姪)が代襲相続人となります。


1.2. 相続分の割合

相続分は法定相続分として定められています。配偶者がいる場合、配偶者の相続分は以下のように決まります。


配偶者と子供が相続人の場合:配偶者1/2、子供1/2

配偶者と直系尊属が相続人の場合:配偶者2/3、直系尊属1/3

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

2. 遺留分とは


 遺留分とは、法定相続人が最低限確保できる相続分です。被相続人が全財産を特定の相続人や第三者に譲渡する遺言を残した場合でも、遺留分を持つ相続人は「遺留分侵害額請求権」に基づき、自身の遺留分を確保する権利があります。


2.1. 遺留分を持つ者

遺留分は、以下の法定相続人に限られます。


配偶者

子供(代襲相続人を含む)

直系尊属(両親や祖父母など)

兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、兄弟姉妹が相続人であっても遺留分請求を行うことはできません。


2.2. 遺留分の割合

遺留分は、相続財産全体の一定割合を相続人に保証するものです。遺留分の具体的な割合は以下の通りです。


直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の1/3

その他の相続人がいる場合(配偶者や子供がいる場合):相続財産の1/2

遺留分は相続人全員で分割されます。例えば、配偶者と子供がいる場合、遺留分の半分を配偶者が、残りの半分を子供が分け合います。


2.3. 遺留分侵害額請求権

遺留分が侵害されている場合、相続人は遺留分侵害額請求権を行使できます。この請求権により、相続人は遺留分を超えて取得した者(通常は他の相続人や受遺者)に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の返還を求めることができます。遺留分請求は、相続開始後1年以内に行使しなければならず、これを過ぎると請求権は消滅します。



3. 遺言書と遺留分の関係


 被相続人は遺言書によって、遺産を自由に配分することが可能です。しかし、法定相続人が遺留分を侵害される形で遺言が作成されていた場合、遺留分請求を行うことができ、遺言通りに全財産を特定の相続人や第三者に譲渡することはできません。


3.1. 遺言書による財産配分の自由

遺言書は、被相続人が自分の財産を誰にどのように分配するかを指定するための強力な手段です。しかし、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。そのため、遺言を作成する際には遺留分を考慮することが重要です。


3.2. 遺留分を侵害しない遺言の作成

遺留分を侵害しないように遺言を作成することが、相続トラブルを避けるためのポイントです。遺言者は、遺留分に配慮して遺産配分を計画し、遺言内容を法的に有効に保つために、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。


4. 遺留分の放棄


 遺留分は原則として保障されていますが、相続開始前でも放棄することが可能です。相続開始前においては、遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です。


4.1. 遺留分放棄の手続き

遺留分の放棄は、相続開始前に家庭裁判所に対して申立てを行い、許可を得ることで有効となります。この手続きにより、放棄した相続人は遺留分の請求権を失い、遺産分割の際にも遺産を受け取る権利を失います。


4.2. 放棄の影響

遺留分を放棄した場合、その相続人は相続財産を一切受け取ることができなくなります。これにより、他の相続人や受遺者に対して遺留分請求を行うことができなくなるため、相続財産の分割がシンプルになります。

(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

5. 遺留分を巡る相続トラブル


 遺留分は相続人の権利を保護するための制度ですが、遺言によって特定の相続人に多くの遺産が譲渡された場合、他の相続人が遺留分請求を行うことでトラブルが発生することもあります。特に、家族間の感情的な対立が遺留分を巡る紛争を引き起こす原因となることが多いです。

(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

6. まとめ


 法定相続人と遺留分は、相続において重要な要素です。法定相続人は民法に基づいて定められており、遺留分はその法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産を保証する制度です。

 遺言を作成する際には、遺留分の存在を考慮し、相続トラブルを未然に防ぐために適切な配分を行うことが求められます。

(論点)死亡保険金受取人と法定相続人の違いと相続手続きの重要なポイント

(論点)死亡保険金受取人と法定相続人の違いと相続手続きの重要なポイント

死亡保険金受取人と法定相続人は、相続に関する手続きにおいて重要な役割を担いますが、その意味や権利には大きな違いがあります。

 相続手続きを進める際には、この違いをしっかり理解することが必要です。

 本記事では、死亡保険金受取人と法定相続人の違い、相続税の扱い、相続財産との関係などを中心に解説します。


目次


1. 死亡保険金受取人とは

2. 法定相続人とは

3. 死亡保険金は相続財産に含まれるか?

4. 死亡保険金と相続税

5. 死亡保険金と遺産分割の関係

6. まとめ

(論点)死亡保険金受取人と法定相続人の違いと相続手続きの重要なポイント

1. 死亡保険金受取人とは


 死亡保険金受取人とは、生命保険契約に基づいて被保険者(通常、亡くなった方)が亡くなった際に、保険金を受け取る権利を持つ人のことです。

 被保険者が生命保険に加入する際、受取人を指定することが一般的です。受取人として指定されるのは通常、家族や親族ですが、法定相続人でない第三者を受取人に指定することも可能です。


1.1. 指定された受取人の権利

生命保険金は、保険契約によってあらかじめ指定された受取人が権利を持つため、被相続人(亡くなった方)の遺産には含まれません。つまり、生命保険金は遺産分割協議の対象外となり、他の相続人と分け合う必要がありません。この点が、法定相続人に関わる遺産とは異なる重要な違いです。


1.2. 受取人の指定変更

生命保険契約では、受取人を後から変更することが可能です。契約者が変更を希望する場合は、保険会社に対して正式に手続きを行う必要があります。なお、受取人が変更されない限り、当初の指定受取人が保険金を受け取る権利を持ちます。


2. 法定相続人とは


 法定相続人とは、民法に基づいて遺産を相続する権利を持つ人々を指します。被相続人が遺言書を残さなかった場合、または遺言書に特段の指定がない場合、法定相続人が相続財産を分割します。民法では、法定相続人の範囲を以下のように定めています。


配偶者は常に相続人となり、他の相続人と共に相続分を分け合います。

子供がいる場合、子供が第一順位の相続人です。

子供がいない場合、第二順位として直系尊属(両親や祖父母など)が相続人になります。

直系尊属もいない場合、第三順位として兄弟姉妹が相続人となります。


2.1. 相続分の割合

法定相続人の相続分は、配偶者と子供がいる場合、配偶者が遺産の半分を相続し、残り半分を子供が均等に分け合います。もし子供がいない場合、配偶者と直系尊属で相続分を分け合います。兄弟姉妹が相続人となる場合も、同様に相続分が定められています。

(論点)死亡保険金受取人と法定相続人の違いと相続手続きの重要なポイント

3. 死亡保険金は相続財産に含まれるか?


 死亡保険金は、通常、相続財産には含まれません。これは、保険契約に基づいて特定の受取人に直接支払われるため、遺産分割協議の対象外とされるためです。そのため、生命保険金を受け取った受取人は、相続財産の分割に関しては基本的に影響を受けません。

 しかし、例外的に「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合があります。以下にその詳細を説明します。


4. 死亡保険金と相続税


死亡保険金は遺産には含まれないものの、相続税の課税対象となることがあります。ただし、一定の非課税枠が設けられており、法定相続人が受け取る保険金については、非課税限度額があります。


4.1. 非課税限度額

非課税限度額は、次の計算式で求められます。

「非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数」

例えば、法定相続人が3人いる場合、500万円×3=1,500万円が非課税限度額となり、この額までは相続税が課されません。それを超える金額については、相続税の対象となります。


4.2. 法定相続人以外の受取人の場合

受取人が法定相続人以外の人(例えば、友人や恋人)である場合、生命保険金は、非課税枠の適用は受けられません。


5. 死亡保険金と遺産分割の関係


 死亡保険金は遺産分割協議の対象外であり、指定された受取人が保険金を単独で受け取る権利を持ちます。しかし、法定相続人の一部が受取人となり、他の相続人が全く保険金を受け取れない場合、相続人同士で感情的な対立が生じることがあります。このような場合、受取人が得た保険金の一部を相続財産として考慮し、遺産分割協議で調整することもありますが、法的には義務ではありません。


5.1. 遺留分への影響

 相続人には、最低限の相続分である「遺留分」が法律で保障されています。死亡保険金は遺産には含まれませんが、場合によっては遺留分を巡る争いの原因となることもあります。例えば、全財産を特定の相続人に譲る内容の遺言書があった場合でも、他の相続人は遺留分減殺請求を行うことが可能です。しかし、死亡保険金自体はこの請求の対象とはなりません。


(論点)死亡保険金受取人と法定相続人の違いと相続手続きの重要なポイント

6. まとめ


 死亡保険金受取人と法定相続人には、それぞれ異なる役割と権利が存在します。死亡保険金は保険契約によって指定された受取人が直接受け取るものであり、相続財産には含まれません。そのため、遺産分割協議の対象外ですが、相続税の課税対象にはなる場合があります。

 法定相続人が死亡保険金の受取人である場合、一定の非課税枠が適用され、課税負担が軽減される一方で、受取人が法定相続人以外の場合は、相続税が全額課税されることに注意が必要です。

 相続手続きを円滑に進めるためには、事前に受取人や相続人の権利を十分に理解しておくことが重要です。

(論点)法定相続人情報一覧図とは(法定相続情報証明制度)

(論点)法定相続人情報一覧図とは(法定相続情報証明制度)

法定相続人情報一覧図は、相続手続きにおいて法定相続人を明確にするための書類です。特に、相続財産の登記や銀行手続きなどで活用され、これにより相続人や相続割合を明確にすることで、円滑な相続手続きを進めることができます。



目次


1. 法定相続人情報一覧図の概要

2. 法定相続人情報一覧図の作成方法

3. 法定相続人情報一覧図の活用

4. 法定相続人情報一覧図の利点

5. 法定相続人情報一覧図の注意点

6. まとめ

(論点)法定相続人情報一覧図とは(法定相続情報証明制度)

1. 法定相続人情報一覧図の概要


 法定相続人情報一覧図とは、亡くなった方(被相続人)の相続人が誰であるかを示した図表形式の書類です。この一覧図は、被相続人が亡くなった後に相続手続きを進める際、法定相続人全員の関係性や相続分を示すために必要です。


 相続手続きにおいて、誰が法定相続人であるかを証明するためには、通常、戸籍謄本を遡って取得し、相続人を確定させる必要があります。

 しかし、これに加えて法定相続人情報一覧図を提出することで、各相続手続きの際に何度も戸籍謄本を提示する手間を省くことができます。法務省が提供するこの制度を活用することで、相続手続きの簡素化が期待されます。

(論点)法定相続人情報一覧図とは(法定相続情報証明制度)

2. 法定相続人情報一覧図の作成方法


 法定相続人情報一覧図は、法務局に対して「法定相続人証明制度」を利用することで作成できます。具体的な作成手順は以下の通りです。



2.1. 必要書類の準備

 一覧図を作成するためには、まず被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本を取得する必要があります。この書類によって、誰が法定相続人であるかが明確になります。法定相続人とは、民法で定められた順序に基づいて相続権を持つ人々のことを指します。具体的には、以下の順序で相続人が確定します。



配偶者は常に相続人となり、他の法定相続人と共に相続分を分け合います。

子供がいる場合、子供が第一順位の相続人となります。

子供がいない場合、第二順位として被相続人の父母などの直系尊属が相続人となります。

直系尊属もいない場合、第三順位として被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。


2.2. 一覧図の作成

 必要な戸籍謄本を取得したら、それを基に法定相続人情報一覧図を作成します。

 法定相続人一覧図は、相続人と被相続人の関係を図示したものです。例えば、被相続人が亡くなり、その配偶者と子供が法定相続人である場合、配偶者と子供がそれぞれ相続人として図に記載され、相続分も記載されます。



2.3. 法務局への申請

 法定相続人情報一覧図が完成したら、法務局に対して相続登記申請の一環として提出します。

 この際、一覧図と共に被相続人や相続人の戸籍謄本も提出する必要があります。法務局がその内容を確認し、正当性が認められれば、法定相続人情報一覧図が正式に作成されます。

※法定相続情報証明制度となります。ここで作成された証明書は、預金の払い戻しなどに利用することが可能です。

(論点)法定相続人情報一覧図とは(法定相続情報証明制度)

3. 法定相続人情報一覧図の活用


 法定相続人情報一覧図は、相続手続きを進める際に非常に便利な書類です。これを利用することで、相続財産の名義変更や銀行口座の解約手続きなどにおいて、相続人が誰であるかを示すための戸籍謄本を毎回提示する必要がなくなります。以下に具体的な利用例を挙げます。


3.1. 相続登記における利用

相続が発生した際に、不動産の相続登記を行う必要があります。この際、法定相続人情報一覧図を提出することで、相続人全員の戸籍謄本を再度取得する手間を省くことができます。これにより、不動産の名義変更手続きがスムーズに進みます。


3.2. 銀行手続きでの活用

被相続人が所有していた銀行口座の解約や相続手続きを進める場合、通常、相続人全員の戸籍謄本を銀行に提出する必要があります。しかし、法定相続人情報一覧図を提出することで、戸籍謄本の代わりとして相続人全員を確認する手段として利用でき、手続きが簡略化されます。



4. 法定相続人情報一覧図の利点


法定相続人情報一覧図を活用する主な利点は以下の通りです。


4.1. 手続きの簡素化

通常、相続手続きにおいては相続人全員の戸籍謄本を一つ一つ揃え、それを各機関に提出しなければなりませんが、法定相続人情報一覧図を一度作成しておけば、その後の手続きで繰り返し利用できるため、非常に便利です。


4.2. 時間とコストの削減

複数の相続手続きを行う場合、戸籍謄本を取得する費用や手間が大幅に減少します。また、複数の手続きを同時に進める際も、一覧図があれば効率的に処理できます。


4.3. 相続人間の確認

相続手続きでは、相続人間の関係性を正確に把握することが重要です。法定相続人情報一覧図を作成することで、相続人全員の関係が視覚的に明確になるため、相続人同士の混乱やトラブルを未然に防ぐことができます。


5. 法定相続人情報一覧図の注意点


法定相続人情報一覧図にはいくつかの注意点もあります。


5.1. 法務局への申請が必要

法定相続人情報一覧図を作成するためには、法務局に対して戸籍謄本を提出し、正式に申請する必要があります。このため、一覧図を作成するには一定の手間がかかります。


5.2. 戸籍謄本の正確な取得

一覧図の作成には、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要です。万が一、抜け漏れがあった場合、法定相続人が正確に反映されず、手続きが進まないことがあります。そのため、戸籍謄本を正確に取得することが重要です。

(論点)法定相続人情報一覧図とは(法定相続情報証明制度)

6. まとめ


 法定相続人情報一覧図は、相続手続きをスムーズに進めるための重要な書類です。

 これにより、相続人全員の関係性や相続分を明確に示し、相続財産の登記や銀行手続きなどを効率よく進めることができます。相続手続きの簡素化やコスト削減の観点からも、この制度の利用は非常に有用です。

 法務省の提供する法定相続人証明制度を活用し、必要な手続きをスムーズに進めましょう。

(論点)相続発生後にすべき手続きのまとめ

(論点)相続発生後にすべき手続きのまとめ

相続が発生すると、多くの手続きが必要となります。これらの手続きは法律で定められた期限内に行う必要があり、滞りなく進めるためには事前の準備が大切です。

以下、主な手続きを時期ごとにまとめています。



目次


1. 2週間以内に行うべき手続き

2. 3か月以内に行うべき手続き

3. 90日以内に行うべき手続き

4. 4か月以内に行うべき手続き

5. 10か月以内に行うべき手続き

6. まとめ

(論点)相続発生後にすべき手続きのまとめ

1. 2週間以内に行うべき手続き


① 死亡診断書の受け取り

 医師による「死亡診断書」は、診療中の病気に関連して亡くなった場合に発行されます。それ以外の状況での死亡には「死体検案書」が必要です。


➁ 死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)

 死亡届は死亡診断書と一緒に提出し、市町村役場に届け出ます。葬儀社が代行してくれる場合もあります。死亡届のコピーは、死亡保険の請求に使うため、数枚用意しておくと便利です。


③ 世帯主変更届(14日以内)

 市町村役場にて世帯主の変更を行います。


④ 健康保険・介護保険の手続き(14日以内)

 亡くなった方が国民健康保険に加入していた場合、「資格喪失届」を提出します。75歳以上の方は、後期高齢者医療資格の喪失届も必要です。介護保険被保険者証の返却も14日以内に行います。また、葬祭費の申請を忘れずに行いましょう。支給額は3万~5万円です。


➄ 年金受給停止の手続き(10日以内)

 厚生年金や国民年金の停止手続きを行い、未支給年金がある場合は請求を行います。年金事務所で相談すると、遺族年金の受給も確認できます。未支給年金と遺族年金の請求権は5年以内です。

(論点)相続発生後にすべき手続きのまとめ

2. 3か月以内に行うべき手続き


相続放棄・限定承認の手続き

 相続開始を知った日から3か月以内に相続放棄や限定承認の手続きを行います。これらの手続きを怠ると、単純承認(負債も含めてすべてを引き継ぐ)とみなされます。


3. 90日以内に行うべき手続き


森林法に基づく届出

 相続財産の不動産に「森林」が含まれる場合、「森林の土地の所有者届出書」を相続開始から90日以内に市町村役場に提出する必要があります。届出をしなかった場合、10万円以下の過料が課される可能性があるので注意が必要です。


4. 4か月以内に行うべき手続き


準確定申告

 被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得に対する確定申告を相続人が行います。申告は、相続開始を知った日から4か月以内です。税理士に相談することをお勧めします。


5. 10か月以内に行うべき手続き


① 農地法に基づく届出

 相続財産に「田」や「畑」などの農地が含まれる場合、農地法に基づく届出が必要です。違反すると10万円以下の過料が課されますので、期限内に届け出ましょう。


➁ 相続税の申告・納付

 相続財産が基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)を超える場合、10か月以内に相続税の申告と納付が必要です。税理士に相談することで、正確な計算ができます。


6. まとめ


 相続発生後には多くの手続きを期限内に行う必要があります。死亡届や火葬許可申請書などは葬儀社がサポートしてくれる場合もありますが、相続放棄や税務関連などの手続きは個人で行うのが難しいこともあります。費用を考慮しながら専門家への相談を検討しましょう。

(論点)相続発生後にすべき手続きのまとめ
(論点)相続発生後にすべき手続きのまとめ

(論点)亡くなった親のお金は誰のもの?

(論点)亡くなった親のお金は誰のもの?

相続に関する問題においてよく議論されます。特に法定相続人の範囲や相続財産の分割方法について、家族間でトラブルになることが少なくありません。

この問題に正しく対処するためには、まず法定相続人が誰かを特定し、親の財産がどのように分割されるのかを知ることが大切です。



目次


1.法定相続人とは誰か?

2.遺産分割におけるトラブルの原因

3.法定相続人の特定と財産の特定

4.専門家の活用

5.まとめ

(論点)亡くなった親のお金は誰のもの?

1.法定相続人とは誰か?


 法定相続人とは、法律によって定められた相続人のことを指します。具体的には、被相続人(亡くなった親など)の配偶者や子どもが該当します。配偶者は常に相続人となり、これに子どもが加わります。子どもが亡くなっている場合、その子ども(被相続人の孫)が代襲相続人として相続権を持ちます。


 さらに、子どもがいない場合は、親や兄弟姉妹が法定相続人となることがあります。民法では、相続人は次のように順位付けされています:


 第一順位:子ども

 第二順位:親

 第三順位:兄弟姉妹


 配偶者は常に相続人であり、第一順位の子どもと一緒に相続する場合が一般的です。子どもがいない場合には、第二順位の親が相続し、親もいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。

(論点)亡くなった親のお金は誰のもの?

2.遺産分割におけるトラブルの原因


 親のお金が誰のものか、という論点が浮かび上がる最大の理由は、相続財産の取り分についての認識の違いや、被相続人の意思が不明確なことが原因です。法定相続分は法律で定められているものの、現実には以下のような要因でトラブルが発生することが多いです。


親の介護や扶養:特に一人の子が親の介護を担当していた場合、その子が他の兄弟よりも多く相続を望むことがあります。法定相続分では平等な分配が原則ですが、現実的には「貢献度」を主張するケースが増えています。

親の財産の把握:遺産分割協議を始める前に、親の財産を正確に把握することが重要です。しかし、親の財産状況が不透明だったり、隠されている場合、相続人間での信頼関係が崩れることがあります。

遺言書の有無:遺言書がない場合、法定相続分に従って分割されますが、遺言書がある場合は、その内容が優先されます。しかし、遺言書の内容が公平でないと感じられた場合、相続人同士の対立が深まることがあります。



3.法定相続人の特定と財産の特定


 遺産分割協議を進めるにあたり、まず「法定相続人の特定」と「遺産の特定」が必要です。以下のような手順で進めるのが一般的です。


法定相続人の特定

 法定相続人を特定するためには、被相続人の戸籍謄本を取得することが重要です。戸籍謄本を通じて、被相続人が生まれてから亡くなるまでの間にどのような家族構成だったかを確認します。特に、知られていない子どもがいないかどうかを調べることが大切です。また、配偶者がいるかどうか、または亡くなっている場合、その配偶者の相続権がどのように扱われるかも確認する必要があります。

 戸籍謄本を取得するには、市区町村役場で申請するか、インターネットを通じて行政書士事務所などの代理申請サービスを利用することができます。特に相続人が多い場合や、被相続人の居住地が遠方の場合は、専門家のサポートを受けるのが効率的です。


遺産の特定

 次に、遺産を特定する必要があります。親の財産には、不動産や預貯金、株式、保険など多岐にわたります。以下は主な遺産の特定方法です。

預貯金:被相続人の取引金融機関から残高証明書を取得します。これは、死亡時の預金残高を確認するために必要です。残高証明書を取得するには、金融機関に死亡届や相続関係の証明書類を提出する必要があります。

不動産:不動産の特定には、固定資産税評価証明書や登記簿謄本が必要です。これらの書類は、不動産の評価額を把握するために重要です。不動産が複数ある場合、それぞれの不動産についてこれらの書類を取得しておくことが推奨されます。

株式や投資信託:証券会社に対して、被相続人が保有していた株式や投資信託の残高証明を請求します。また、配当金の支払状況も確認しておくと良いでしょう。

生命保険:保険契約の内容によっては、相続財産として扱われる部分があります。被相続人が契約していた保険の契約書を確認し、受取人や保険金額を把握しておくことが必要です。

(論点)亡くなった親のお金は誰のもの?

4.専門家の活用


 相続手続きは、戸籍や財産の調査、遺産分割協議、相続税の申告など、専門的な知識が必要な場面が多くあります。特に法定相続人の特定や財産の特定において、手続きが煩雑になる場合、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談することが有効です。


 例えば、司法書士は不動産の相続登記を代行してくれるだけでなく、戸籍謄本の取得や遺産分割協議書の作成もサポートしてくれます。

 また、税理士は相続税の申告や納税手続きについて助言を行い、節税対策も含めたアドバイスを提供してくれます。

(論点)亡くなった親のお金は誰のもの?

5.まとめ


 「親のお金は誰のものか」という問いに対する答えは、法的には法定相続人がその権利を持つことになります。しかし、相続の過程で家族間の意見の食い違いや感情的な対立が生じることが多く、相続人同士の合意形成が重要です。

 法定相続人の特定と遺産の特定は、円滑な遺産分割協議を進めるための重要なステップです。これらの手続きを確実に行うことで、トラブルを未然に防ぎ、親の遺産を正しく引き継ぐことができます。

必要に応じて専門家のサポートを受けることで、複雑な手続きもスムーズに進められるでしょう。

(論点)遺産分割協議の前に特定しておくべきこと

(論点)遺産分割協議の前に特定しておくべきこと

遺産分割協議を円滑に進めるためには、まず「法定相続人の特定」と「遺産の特定」を正確に行うことが重要です。

これらは、相続人間の争いを未然に防ぎ、法的なトラブルを避けるためにも不可欠な手続きです。それぞれについて詳しく解説していきます。


目次


1. 法定相続人の特定

2. 遺産の特定

3. 遺産分割協議を進めるために

4. 専門家のサポート

5. まとめ

(論点)遺産分割協議の前に特定しておくべきこと

1. 法定相続人の特定


 法定相続人の特定とは、相続に参加する権利を持つ人物を確定させる作業です。これは、相続の基盤となる重要なプロセスであり、全ての相続人が特定されていなければ、遺産分割協議が無効となる可能性があります。具体的には、被相続人(亡くなった方)が亡くなるまでに法的に認められた相続人を全て洗い出し、その相続人が誰であるかを確定することを指します。


1-1. 戸籍謄本の取得

 法定相続人を特定するためには、まず被相続人の戸籍謄本を取得する必要があります。日本の戸籍制度は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの婚姻や離婚、子供の有無などが記録されているため、これを基に相続人を正確に特定できます。

 具体的な取得方法としては、被相続人が最後に住んでいた市区町村役場で「戸籍謄本」「除籍謄本」や「改製原戸籍」を申請します。これにより、現在確認できる子供以外に、婚姻関係外で生まれた子供がいるかどうか、また過去に養子縁組があったかなどの情報も把握できます。


1-2. 法定相続人の範囲

民法では、相続人の範囲が以下のように定められています。


配偶者(常に相続人となる)

子供(第一順位)

子供がいない場合、被相続人の父母(第二順位)

子供も父母もいない場合、被相続人の兄弟姉妹(第三順位)


 ただし、相続に関しては「代襲相続」という制度もあり、相続人が既に亡くなっている場合、その子供や孫が相続権を持つことがあります。この点も、戸籍謄本で確認が必要です。


(論点)遺産分割協議の前に特定しておくべきこと

2. 遺産の特定


 法定相続人が確定した後は、相続財産を特定する必要があります。これは、どの財産が遺産に含まれるかを明確にし、相続人がそれぞれ何を受け取るかを決定するための基礎となります。遺産には、不動産や金融資産、動産、負債などが含まれます。


2-1. 金融資産の確認

 まず、金融機関における取引口座の残高証明書を取得することが重要です。被相続人がどの金融機関と取引をしていたかを確認するためには、過去の通帳やクレジットカードの利用履歴、口座引き落としの明細などを手がかりに、該当する金融機関に残高証明書を請求します。

 残高証明書は、相続開始日時点での預貯金残高を証明する書類であり、遺産分割協議における重要な資料となります。また、被相続人が株式や投資信託を保有していた場合は、証券会社に口座の明細書や評価証明を依頼する必要があります。

 さらに、生命保険金や退職金の有無も確認が必要です。これらは、相続財産としてではなく、保険金受取人に直接支払われるものですが、相続税の課税対象となるため、遺産分割に影響を与える可能性があります。


2-2. 不動産の確認

 次に、不動産については、固定資産税評価証明書を取得する必要があります。この証明書は、市町村役場で取得でき、相続財産に含まれる不動産の評価額を確認する際に使用します。

 また、登記簿謄本も確認しましょう。登記簿謄本を確認することで、被相続人名義の不動産がどこにあり、どのような権利が付いているかを把握できます。特に、抵当権や地上権が設定されている場合、相続後の財産処理に影響を与えるため、事前に確認しておくことが重要です。


2-3. 負債の確認

 遺産には、資産だけでなく負債も含まれます。負債の確認を怠ると、相続後に思わぬ負債が発覚し、相続人が困ることになります。被相続人がどのような借入れをしていたかを確認するために、銀行や消費者金融、クレジット会社からの借入れ状況を調査しましょう。

 また、住宅ローンが残っている場合は、団体信用生命保険に加入していたかを確認します。この保険に加入していた場合、被相続人が亡くなった時点でローンの残高が保険によって清算されることがあります。


3. 遺産分割協議を進めるために

 これらの「法定相続人の特定」と「遺産の特定」が終わった段階で、ようやく遺産分割協議を進めることができます。相続人全員が揃って、相続財産をどのように分けるかを話し合い、合意が得られたら遺産分割協議書を作成します。この協議書には全ての相続人の署名と実印が必要です。

 もし相続人の間で意見が一致しない場合は、家庭裁判所での調停手続きや審判手続きに移行することになります。そのため、遺産分割協議を円滑に進めるためにも、相続開始前に遺言書を作成しておくことが望ましいと言えます。

(論点)遺産分割協議の前に特定しておくべきこと

4. 専門家のサポート


 相続の手続きは非常に煩雑であり、特に複数の不動産や金融資産、負債が絡む場合、専門家のサポートが必要になることがあります。司法書士や行政書士、税理士に相談し、遺産分割協議の進め方や法定相続人の特定、遺産の特定を適切に行うことが重要です。

 相続税申告が必要な場合、相続税の計算や申告についても税理士に依頼することができます。専門家のサポートを受けることで、相続手続きが円滑に進み、相続人間の争いを未然に防ぐことができるでしょう。

(論点)遺産分割協議の前に特定しておくべきこと

5. まとめ


 「法定相続人の特定」と「遺産の特定」は、遺産分割協議を進めるために不可欠なステップです。戸籍謄本や残高証明書、固定資産税評価証明書などを取得して正確に情報を集め、相続人全員が納得できる形で遺産を分割することが求められます。

 また、専門家のアドバイスを受けることで、複雑な手続きや法的リスクを避け、円滑な相続を実現することができます。

(論点)突然、遺産分割協議書が送られてきた!

(論点)突然、遺産分割協議書が送られてきた!

遺産分割協議書が突然送られてきて、実印での押印や印鑑証明書の添付を求められるという状況は、相続における一般的な相談の一つです。特に、弁護士や司法書士から郵便で送られてくる場合、依頼者が驚きや不安を感じることが多いようです。

このような状況で、どのように対応すればよいかを明確にするために、遺産分割協議書の作成過程や問題点、専門家としての対応について詳しく検討していきます。


目次


1. 遺産分割協議書の役割と作成手順

2. 問題の発生源:遺産分割協議書が突然送られてくるケース

3. 専門家としての責任

4. 相続人としての対応策

5. まとめ

(論点)突然、遺産分割協議書が送られてきた!

1. 遺産分割協議書の役割と作成手順


 遺産分割協議書とは、相続財産の分割方法を記載した書面で、相続人全員の同意に基づいて作成されます。協議書には、各相続人が受け取る財産の内容や割合が明示されており、これに全員が合意することで相続財産の正式な分配が行われます。


 遺産分割協議は、全ての相続人が参加して行われるべきものであり、各相続人の権利や希望が十分に反映されることが重要です。この協議が完了した後、協議内容を文書にまとめ、最終的に全相続人が署名・押印を行います。通常は、協議が終わった時点で遺産分割協議書が作成され、その後、相続人全員がその内容に同意して署名・押印を行います。



2. 問題の発生源:遺産分割協議書が突然送られてくるケース


 遺産分割協議書が突然送られてきて、「実印を押印し、印鑑証明書を添付して返送してほしい」と依頼されるケースは問題視されることが多いです。このような手続きは、全相続人が十分な協議を経て合意に至っていることが前提ですが、現実には、相続人の一部が協議の過程に十分に参加していないことがあるためです。


 この場合、遺産分割協議書が送られてくるまでの協議内容が十分に説明されておらず、相続人がその内容に納得していないことがあります。にもかかわらず、専門家(弁護士や司法書士)が書類を作成し、署名や押印を求める行為は、相続人に対して不安や疑念を抱かせることがあります。これは、相続人が自らの権利や財産分割の内容を正しく理解していない状況で、結果的に押印してしまうリスクを伴います。

(論点)突然、遺産分割協議書が送られてきた!

3. 専門家としての責任


 弁護士や司法書士は、相続手続きにおいて相続人の代理を務めたり、協議の進行をサポートしたりする役割を担っています。しかし、遺産分割協議書が相続人に不意に郵送され、同意を得ることなく押印を求める行為は、専門家としての倫理や責任に疑問を抱かせるものです。


専門家は、以下の点を十分に考慮しながら対応することが求められます。


①全相続人への説明義務

 専門家は、遺産分割協議書の内容や協議の過程について、相続人全員に対して丁寧に説明する義務があります。相続人が協議に関与していない場合、その協議の結果がどのような経緯で導き出されたのか、また各相続人にとってどのような影響があるのかを明確に伝える必要があります。


➁相続人の意向を反映する

 遺産分割協議書は、単に相続人の意思を反映した文書ではなく、協議の結果として成立するものでなければなりません。そのため、相続人が実際に協議に参加していない場合や、十分に説明を受けていない場合、その協議書の内容に同意することが不適切です。


③押印の強制は避ける

 相続人に対して、押印や印鑑証明書の提出を強制することは避けるべきです。相続人が協議内容に納得していない状況であれば、無理に書類を返送させることはトラブルを引き起こす原因となります。また、相続人が不当に押印を求められた場合、将来的にその協議内容について争いが生じる可能性も高くなります。



4. 相続人としての対応策


このような状況で相続人がどのように対応すべきかを考えると、以下のポイントが重要です。


①協議の内容を確認する

 まず、遺産分割協議書が送られてきた場合、その内容が自分の理解や意向に沿ったものであるかどうかを確認する必要があります。もし協議に参加していなかった場合や、内容に納得がいかない場合は、押印を保留し、専門家や他の相続人と再度協議を行うことが重要です。


➁専門家に質問する

 送られてきた遺産分割協議書に対して不安や疑問がある場合は、弁護士や司法書士に対して積極的に質問を行いましょう。協議書の内容やその背景について詳しく説明を求めることで、自分の権利を正確に把握することができます。


③押印を慎重に判断する

 協議書に同意しない場合は、押印を急ぐ必要はありません。自分が納得できるまで協議を続けることが大切です。また、遺産分割協議書に記載された内容が法的に妥当であるかどうかを確認するために、別の専門家に相談することも有効です。

(論点)突然、遺産分割協議書が送られてきた!

5. まとめ


 遺産分割協議書が郵送され、押印を求められるという状況は、相続手続きにおいてよく見られるものですが、その背後には相続人の権利や意向が十分に反映されていない場合があります。弁護士や司法書士が専門家としての役割を果たすためには、相続人全員に対する説明義務や協議内容の透明性が求められます。

 また、相続人としては、協議の内容を十分に理解し、自分の権利が尊重されているかどうかを慎重に確認することが重要です。不安や疑問がある場合は、専門家に対して積極的に質問し、納得がいくまで協議を行うことが、スムーズな相続手続きを実現するための鍵となります。

 専門家と相続人の双方が信頼と透明性を持って協議を進めることで、後々のトラブルを回避し、円満な相続手続きが可能となるでしょう。

(論点)遺産分割協議について5つのポイント

(論点)遺産分割協議について5つのポイント

遺産分割協議は、相続における重要な手続きの一つであり、遺産を円満に分けるためには慎重な対応が求められます。

協議に参加する全員が満足する結論に達するのは難しいこともありますが、適切な準備と注意を払うことで、トラブルを最小限に抑えることができます。

以下に、遺産分割協議において特に注意すべき5つのポイントを解説します。


目次


1. 相続人全員の同意が必要であること

2. 遺産の把握と適正な評価

3. 法定相続分と遺留分の理解

4. 遺産分割協議書の作成と法的効力

5. 相続税申告の期限と手続き

まとめ

(論点)遺産分割協議について5つのポイント

1. 相続人全員の同意が必要であること


 遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の同意が必要です。相続人の一部が協議に参加しなかったり、同意しなかった場合、協議は無効となります。

 これにより、相続人が複数いる場合は、全員のスケジュール調整が必要となり、時間がかかることが予想されます。また、連絡が取れない相続人がいる場合、その人の権利をどう扱うかという問題も発生します。

 特に、異母兄弟や、長年会っていない親族が相続人に含まれる場合、円滑に協議を進めるために、事前に関係者全員に連絡を取り、理解を得ることが大切です。



2. 遺産の把握と適正な評価


 遺産分割協議を進める前に、遺産の全体像を把握し、その評価額を正確に算出することが重要です。これには、不動産、金融資産、動産(家具や車など)、負債などを含むすべての遺産の調査が必要です。

 不動産の評価については、専門家による査定が求められることが多く、特に市場価値が変動しやすい資産に関しては、最新の評価を基に協議を進める必要があります。

 また、相続税の課税対象になる財産については、税務署から指摘を受けないよう、適切に申告することが求められます。

 こうした財産の評価が不十分なまま分割を行うと、後々トラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。



3. 法定相続分と遺留分の理解


 相続分割の際に、法定相続分と遺留分の存在を理解することが不可欠です。

 法定相続分とは、法律で定められた相続人が受け取るべき相続財産の割合であり、遺産分割協議の基本となるものです。たとえば、配偶者と子供が相続人となる場合、配偶者は2分の1、子供は残りの2分の1を等分に分けるのが法定相続分です。

 しかし、法定相続分とは別に、相続人には「遺留分」という最低限保障された取り分があります。

 特に、遺言によって相続財産が特定の相続人や第三者に多く分配される場合でも、遺留分が侵害されている場合は、その分の補填を請求する権利があります。

 このため、遺産分割協議では、法定相続分と遺留分の調整をしっかり行い、全員が納得する形にまとめることが大切です。

(論点)遺産分割協議について5つのポイント

4. 遺産分割協議書の作成と法的効力


 遺産分割協議がまとまった後、必ず「遺産分割協議書」を作成することが重要です。これは、協議内容を文書として記録し、相続人全員の署名と押印をもって法的な効力を持つ書類となります。

 遺産分割協議書がない場合、協議内容が不明確になり、後に相続人間でのトラブルが発生する可能性があります。

 また、遺産分割協議書は、不動産の名義変更や金融機関での手続きに必要な書類でもあります。法的に有効な遺産分割協議書を作成するためには、専門家(司法書士や弁護士)のアドバイスを受けることが推奨されます。


5. 相続税申告の期限と手続き


 遺産分割協議が終わった後、相続税の申告と納付を忘れずに行う必要があります。

 相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

 この期間内に申告を行わないと、ペナルティが課される可能性があるため、協議が長引いた場合でも期限内に手続きを終えるようにスケジュールを立てることが重要です。もし、相続税の申告が必要かどうか分からない場合でも、早めに税理士に相談し、必要な対策を講じることが賢明です。

 また、遺産分割協議が終了していない状態でも、法定相続分に基づいて一旦相続税の申告を行い、後に分割が確定した段階で修正申告を行うことも可能です。

(論点)遺産分割協議について5つのポイント

まとめ


 遺産分割協議は、法的な手続きや相続人同士の合意形成が重要であり、準備不足や不注意からトラブルに発展することも少なくありません。

 上述の5つのポイントを押さえ、事前に適切な対応を心がけることで、スムーズな遺産分割を実現することができます。

 専門家のアドバイスを受けながら、法的な手続きを進めることが、相続人全員にとって円満な解決への道となるでしょう。


(論点)貸金庫は相続対策になるのか?

(論点)貸金庫は相続対策になるのか?

「貸金庫は相続対策になるのか?」という問いに対して、まず、貸金庫の役割と使用方法、そして相続が発生した際の手続きについて理解する必要があります。

貸金庫は一般的に、貴重品や重要書類を安全に保管するための手段として利用されますが、相続の場面ではその利便性が問題になる場合があります。特に、相続発生後に貸金庫の内容を確認するために、金融機関によって相続人全員の同意や手続きが必要となるケースがあり、これが相続対策として適しているのかどうかを検討する必要があります。


目次


1. 貸金庫の利用と相続の関係

2. 貸金庫の開錠手続き

3. 相続対策としての適合性

4. 貸金庫利用における対策

5. まとめ


(論点)貸金庫は相続対策になるのか?

1. 貸金庫の利用と相続の関係


 貸金庫は貴金属、重要書類、現金などを安全に保管するための設備であり、金融機関や一部の専門業者が提供しています。貸金庫は、所有物が直接金融機関の口座や資産管理システムに含まれないため、相続が発生しても自動的に相続手続きの一環として扱われるわけではありません。これは、貸金庫の内容が非公開であり、事前に相続財産として記録されていない場合、その中に何が保管されているかを把握するために相続人が協力して調査を行わなければならないということを意味します。


 特に、貸金庫の利用者が死亡した場合、金融機関は通常、相続人全員の同意を得るまで貸金庫の開錠を認めません。

 このため、貸金庫に保管された財産や書類が相続手続きの開始前に確認できないことがあります。例えば、遺言書が貸金庫内に保管されている場合、相続手続きの早い段階で確認できなければ、手続きが遅延する可能性があります。

 したがって、貸金庫は必ずしも迅速な相続対策に直結するものではありません。


2. 貸金庫の開錠手続き


 貸金庫を開けるための手続きは金融機関ごとに異なりますが、多くの場合、相続人全員の実印を押印した同意書と印鑑証明書が必要とされます。

 これは、相続人の中に不正がないようにするための措置ですが、手続きを遅らせる一因ともなります。特に、相続人が複数いる場合、全員の署名や実印が揃わなければ開錠ができないため、時間と労力がかかります。

 さらに、相続人が遠方に住んでいる場合や、関係が疎遠である場合、連絡や手続きがスムーズに進まないことも考えられます。

 このため、貸金庫に遺産分割協議に影響を与える重要な書類や財産を保管する場合は、慎重な計画が必要です。

(論点)貸金庫は相続対策になるのか?

3. 相続対策としての適合性


貸金庫が相続対策として適しているかどうかを判断する際、次の点に注目する必要があります。


①相続人全員の同意を得る手間

 先述の通り、貸金庫を開錠するためには相続人全員の同意が必要となる場合があります。この手続きがスムーズに進められないと、遺産の調査が遅れ、相続手続き全体に影響を与えることになります。特に、相続人間に信頼関係がない場合や、連絡が取りづらい相続人がいる場合は、手続きが煩雑になる可能性があります。


➁貸金庫の中身の把握が困難

 貸金庫内に何が保管されているのかを事前に把握しておくことが難しいため、相続人が財産調査を行う際に混乱を招くことがあります。例えば、現金や貴金属が貸金庫に保管されている場合、それらが他の財産に含まれているかどうかを確認するために時間を要することがあります。特に、貸金庫内に遺言書や重要な財産証書が保管されている場合、早期に開錠できなければ遺産分割協議が進まないリスクがあります。


③他の相続対策と比較した場合のメリットとデメリット

 貸金庫は確かに財産や書類の安全を守るための手段としては有効ですが、相続が発生した際に手続きが煩雑になるリスクがあります。これに対して、例えば、遺言書の保管や財産管理については、公正証書遺言や信託の活用が考えられます。公正証書遺言は公証人が作成し、法律的にも強力な効力を持ち、遺言の内容が明確になるため、相続手続きがスムーズに進む利点があります。また、信託を活用することで、相続人が財産を円滑に受け取ることができる仕組みを作ることも可能です。これに比べると、貸金庫はあくまで財産や書類の保管方法の一つに過ぎず、相続対策としては他の方法よりも手続きが煩雑である点がデメリットとなり得ます。


4. 貸金庫利用における対策


 貸金庫を相続対策として利用する場合、いくつかの対策を講じることでリスクを最小限に抑えることができます。例えば、遺言書や財産に関する重要書類を貸金庫内に保管する際には、その旨を信頼できる相続人や専門家に事前に伝えておくことが重要です。また、遺言書を貸金庫に保管するのではなく、公証役場で保管することを検討するのも一つの方法です。さらに、相続人全員が納得できる形で事前に遺産分割計画を立てることで、貸金庫開錠時のトラブルを避けることができます。

(論点)貸金庫は相続対策になるのか?

5. まとめ


 貸金庫は、安全に財産や重要書類を保管する手段として有効ですが、相続対策としては慎重な判断が求められます。

 特に、相続発生時に相続人全員の同意が必要となる場合、手続きが煩雑になり、スムーズな相続手続きを妨げる可能性があります。そのため、貸金庫の利用に際しては、他の相続対策手段と比較検討し、適切な準備と対策を講じることが重要です。

 相続財産調査の迅速化や遺産分割協議の円滑化を図るためにも、専門家の助言を得ながら計画的に対応することが望ましいでしょう。


(論点)遺産分割協議書作成のコツ(手続き後に遺産を発見した場合の条項)

(論点)遺産分割協議書作成のコツ(手続き後に遺産を発見した場合の条項)

遺産分割協議を進める際には、被相続人の財産を正確に把握することが重要です。

通常、遺産分割協議の前に行う「遺産調査」では、被相続人の名義となっている財産のすべてを確認することが求められます。しかし、どれだけ慎重に調査を行っても、全ての財産を網羅できないことがあります。特に、不動産に関しては、被相続人が所有している財産が思いがけない場所に存在していることがあるため、その把握が難しく、遺産として漏れてしまうこともあります。この場合、遺産分割協議書にどのような対策をしておけば、当該遺産分割協議書を用いて、後に発見された不動産の手続きもできるのかについて解説したいと思います。


目次

1. 遺産調査の重要性

2. 不動産調査の難しさ

3. 新たな財産発見に備える条項の必要性

4. 再協議の手間を省くメリット

5. 相続人間のトラブル防止

6. 条項を追加する際の注意点

まとめ

(論点)遺産分割協議書作成のコツ(手続き後に遺産を発見した場合の条項)

1. 遺産調査の重要性


 遺産分割協議を行う前提として、被相続人の全財産を正確に把握することが必要です。

 遺産調査を行い、すべての財産を明らかにすることで、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。

 しかし、どれだけ慎重に調査を行っても、財産が漏れるリスクがあります。



2. 不動産調査の難しさ


 不動産の調査は特に複雑で、役場から「固定資産評価証明書」を取得することで被相続人名義の不動産を確認できますが、その役場の管轄内の不動産しか調べることができません。他市町村に不動産がある場合、その市町村で別途調査が必要です。

 また、被相続人が思いがけない場所に不動産を所有しているケースもあり、そうした場合には財産が漏れてしまう可能性があります。


(論点)遺産分割協議書作成のコツ(手続き後に遺産を発見した場合の条項)

3. 新たな財産発見に備える条項の必要性


 遺産分割協議書に「すべての相続人は、個々に記載された以外の被相続人所有の不動産があった場合は、相続人〇〇が相続し、取得することに異議はないものとする」という条項を追加することで、遺産分割協議が完了した後に新たな財産が見つかった場合でも、その財産をスムーズに相続できるようになります。

 この条項があると、再協議の手間を省き、相続手続きが簡略化されます。



4. 再協議の手間を省くメリット


 通常、遺産分割協議後に新たな財産が発見されると、再度協議を行う必要がありますが、この条項を入れておくことでその必要がなくなります。これにより、時間や労力を節約できるだけでなく、相続手続きを迅速に進めることが可能です。



5. 相続人間のトラブル防止


 この条項があることで、後から発見された財産に対して相続人間での新たなトラブルを避けることができます。特に高額な不動産や希少な資産が発見された場合、その取り扱いを巡って相続人間で争いが生じることが少なくありません。

 事前に取り決めを設けることで、相続人間の信頼関係を守り、スムーズな相続手続きを進めることができます。



6. 条項を追加する際の注意点


 条項を追加する際には、相続人全員がその内容に同意していることが重要です。相続人の中には、後から発見された財産について新たに協議を希望する者がいるかもしれません。そのため、遺産分割協議書作成時に、専門家から十分な説明を受け、相続人全員が納得した上で押印することが不可欠です。

(論点)遺産分割協議書作成のコツ(手続き後に遺産を発見した場合の条項)

まとめ


 遺産分割協議書に「記載されていない財産が発見された場合、その取得に異議はない」とする条項を追加することで、相続手続きを円滑に進め、トラブルを未然に防ぐことができます。

 相続人同士の関係を守りつつ、複雑な手続きを回避するためにも、この条項の導入は効果的です。

 専門家と相談しながら、相続手続きをスムーズに進める準備を整えておくことが大切です。

(論点)不動産売買の際、権利証が提出できないとき(本人確認情報・事前通知)

(論点)不動産売買の際、権利証が提出できないとき(本人確認情報・事前通知)

登記識別情報(権利証)が提供できない場合、土地や建物の売買や贈与といった取引においては、「本人確認情報」または「事前通知」という手続きが用いられます。これらの手続きは、所有者が正当な権利者であることを確認するためのものであり、不動産取引の安全性を確保するために重要です。

以下では、それぞれの手続きの違いと、どのような場合に使えるのか、またそのメリットとデメリットについて解説します。


目次


1. 本人確認情報とは

2. 事前通知とは

3. 本人確認情報と事前通知の比較

4. どちらの手続きを選ぶべきか

5. 結論



土地の合筆・分筆って何?

1. 本人確認情報とは


 本人確認情報は、登記識別情報や権利証が提供できない場合に、司法書士が本人確認を行い、その結果をもとに作成する書面です。具体的には、司法書士が権利者と面談し、本人の身分証明書(運転免許証やパスポートなど)を確認した上で、所有者が真の権利者であることを確認し、その情報を登記申請書に添付します。これにより、登記識別情報がなくても、登記手続きを進めることが可能です。


(本人確認情報のメリット)

迅速な手続き: 司法書士が直接本人確認を行い、手続きを進めるため、時間をかけずに登記を完了させることができます。売買や贈与の取引において、迅速に進めたい場合に特に有用です。

本人確認が確実: 司法書士が面談や書類確認を行うため、正当な所有者であることを第三者に証明できます。取引相手も安心して取引を進めることができる点が強みです。


(本人確認情報のデメリット)

費用が発生: 司法書士による本人確認には手数料がかかります。通常の登記手続きに加えて、本人確認情報の作成費用が必要となるため、コストが増加します。

面談の必要性: 所有者本人が司法書士と対面での面談を行う必要があります。遠方に住んでいる場合や、本人が面談に出向けない状況では、手続きが煩雑になる可能性があります。


本人確認情報が適用されるケース

登記識別情報(権利証)を紛失してしまった場合。

登記識別情報が発行されていない不動産の所有権移転時。

土地や建物を売却または贈与する際に、手続きを迅速に進めたい場合。


2. 事前通知とは


 事前通知は、登記識別情報や権利証を提供できない場合に、登記申請者(売主)が登記官に対して登記を申請する際に使われる手続きです。具体的には、登記官が所有者に対して書面で通知を行い、その書面を受け取った所有者が一定期間内に回答することで、所有者本人であることを確認する方法です。登記識別情報の提供ができない場合でも、通知に対する返信が正当であれば登記手続きが完了します。


(事前通知のメリット)

費用が安い: 司法書士による本人確認情報の作成に比べ、費用がかからないか、非常に少額で済みます。そのため、コストを抑えたい場合に有利です。

本人の面談が不要: 所有者本人が司法書士と面談する必要がないため、遠方に住んでいる場合や、面談が難しい場合に有効です。


(事前通知のデメリット)

時間がかかる: 登記官から所有者に対して通知が送られるため、その返信を待たなければなりません。通常は、通知の返信がなされるまでに2週間ほどの時間がかかるため、取引を迅速に進めたい場合には不向きです。

所有者が通知に反応しないリスク: 所有者が通知を受け取らなかったり、返信を怠った場合には、登記手続きが滞る可能性があります。特に、高齢者や転居している場合など、通知を受け取らない事態が生じやすいです。


事前通知が適用されるケース

登記識別情報を紛失してしまったが、取引を急いでいない場合。

費用を抑えたい場合。

所有者が司法書士との面談を行うことが難しい場合。

※金融機関から融資を受けて取引をする場合に、融資後ただちに抵当権を設定する場合は事前通知のように日数がかかる手続きは不適合となり、「本人確認情報」を取引前にしておくようになります。


3. 本人確認情報と事前通知の比較

土地の合筆・分筆って何?

4. どちらの手続きを選ぶべきか


手続きの選択は、主に以下のポイントによって決まります:


急いでいるかどうか

売買や贈与を急いで行いたい場合は、本人確認情報の手続きを選ぶべきです。司法書士による確認が完了すれば、すぐに登記申請を進められるため、取引を迅速に完了させることができます。逆に、時間に余裕がある場合は、事前通知を選ぶことでコストを抑えることができます。


費用を抑えたいかどうか

手続きを低コストで行いたい場合は、事前通知が最適です。司法書士による面談や書類作成が不要なため、本人確認情報に比べて費用がかかりません。ただし、取引に時間がかかる点には注意が必要です。


面談が可能かどうか

所有者が司法書士との面談を行うことが難しい場合、たとえば高齢者であったり、遠方に住んでいたりする場合は、事前通知が有効です。面談を行う必要がないため、手続きがシンプルになります。一方で、司法書士との面談が可能で、取引を早く進めたい場合は、本人確認情報を選ぶことでスムーズに手続きが進められます。


土地の合筆・分筆って何?

5. 結論


 登記識別情報や権利証が提供できない場合でも、本人確認情報や事前通知の手続きを利用することで、取引を進めることが可能です。

 それぞれの手続きにはメリットとデメリットがあるため、取引の状況や要件に応じて適切な方法を選択することが重要です。

 急ぎの場合や面談が可能であれば、本人確認情報を利用し、時間に余裕があり、費用を抑えたい場合には事前通知を利用すると良いでしょう。

(論点)土地の合筆・分筆の時、権利証はどうなるの?

(論点)土地の合筆・分筆の時、権利証はどうなるの?

土地の合筆や分筆を行った際の登記識別情報(いわゆる「権利証」)の取り扱いについて、詳しく説明します。土地を処分する際に、売主は、権利証又は登記識別情報を用意しなければなりません。合筆・分筆がなされた土地の場合、どのタイミングのものが必要になるのでしょうか?


目次


1. 合筆と登記識別情報の扱い

2. 分筆と登記識別情報の扱い

3. 登記識別情報の役割

4. 合筆・分筆時の登記識別情報に関するまとめ



土地の合筆・分筆って何?

1. 合筆と登記識別情報の扱い


 合筆とは、複数の隣接した土地を一つにまとめる手続きです。この際、元々の各土地の登記簿は閉鎖され、合筆後の土地として新たな登記簿が作成されます。したがって、合筆後には、元々存在していた複数の土地の登記識別情報と、合筆後に発行される新しい登記識別情報が存在することになります。


①合筆後の登記識別情報

 合筆の手続きが完了すると、通常、新しい土地に対して合筆後の登記識別情報が発行されます。しかし、この新しい識別情報が発行された場合でも、元々の各土地の登記識別情報は依然として有効です。つまり、合筆後の土地を譲渡する際には、合筆後に発行された登記識別情報を使用することも可能ですし、合筆前の各土地の登記識別情報を用いることもできます。この点は非常に柔軟であり、どちらの識別情報を使用しても登記の手続きを行うことができます。


➁合筆後の譲渡時のポイント

合筆後の登記識別情報を使用することも可能。

合筆前の各土地の登記識別情報も引き続き使用可能。


③合筆後の識別情報の取り扱い

 合筆後の識別情報において特に注意すべき点は、登記簿上は新たに一つの土地として扱われるため、元の土地ごとの権利関係はすべて一つの地番に統合されるということです。したがって、譲渡や担保設定を行う際は、新たな地番に基づく登記識別情報を使用するか、元の識別情報を引き継いで利用することになります。特に、複数の土地の登記識別情報を持っている場合は、それぞれをきちんと管理し、必要に応じて適切なものを提供することが求められます。

土地の合筆・分筆って何?

2. 分筆と登記識別情報の扱い


 次に、分筆についてです。分筆とは、一つの土地を複数に分割する手続きです。この場合、分筆前の土地に対して発行されていた登記識別情報は、引き続き分筆後の各土地に対して有効となります。重要な点として、分筆そのものでは新たな登記識別情報は発行されません。つまり、分筆後に新たに登記識別情報が交付されることはなく、分筆前の登記識別情報が引き続き利用されることになります。


①分筆後の登記識別情報

 分筆後は、それぞれ新しい地番が付されますが、新しい登記識別情報が発行されるわけではありません。分筆前の識別情報をもとに手続きを進めることになります。これにより、分筆後の土地を譲渡する際は、分筆前の登記識別情報を利用して取引を行うことが可能です。


➁分筆後の譲渡時のポイント

分筆後に各土地を譲渡する場合、特に以下の点に注意が必要です:

分筆前の登記識別情報が依然として有効であること。

譲渡する際に、その土地が分筆後であることを明確にするために、登記簿の変更内容をしっかり確認すること。


3. 登記識別情報の役割


 登記識別情報は、登記上の権利者がその土地の所有権を証明するために必要な情報です。土地の売買や譲渡、担保設定などの際には、登記識別情報を提供することによって、正当な所有者であることが証明され、登記手続きが適切に行われることを確認します。


登記識別情報の基本的な役割

所有権移転や抵当権設定などの不動産取引において、所有者が登記簿上の正当な権利者であることを証明する。

譲渡や売却の際に提供され、買主や第三者に対して所有権の正当性を示す。

万が一、登記識別情報が紛失した場合でも、代替手続きとして本人確認制度などを利用することで、所有権の証明が可能。


4. 合筆・分筆時の登記識別情報に関するまとめ


 合筆および分筆において、登記識別情報の扱いにはいくつかの異なる側面がありますが、基本的なポイントは次の通りです。

 合筆の際には、新たな登記識別情報が発行されますが、合筆前の土地の識別情報も引き続き有効です。したがって、合筆後の土地を譲渡する場合、合筆後の新しい識別情報、または合筆前の各土地の識別情報を使用することができます。

 分筆の場合は、分筆後に新しい登記識別情報は発行されず、分筆前の識別情報を引き続き使用することになります。譲渡時にも、分筆前の識別情報を用いて取引を行います。

 登記識別情報は、不動産取引における所有権の証明において重要な役割を果たし、取引の安全性を確保するために必要不可欠なものです。

 以上のように、合筆や分筆を行った場合の登記識別情報の取り扱いは、ケースごとに異なりますが、どちらの場合でもその土地に対する正当な権利者としての証明において重要な役割を担っています。

(論点)土地の合筆・分筆って何?

土地の合筆・分筆って何?

土地の合筆・分筆は、不動産管理や相続対策など、さまざまな状況で利用される重要な手続きです。

これらの手続きは、土地の形状や利用目的に応じて、複数の土地をまとめたり、ひとつの土地を分けたりするものです。

ここでは、合筆と分筆について詳しく解説し、それぞれのメリットや手続きの流れ、注意点について説明します。


目次


1.合筆とは

2.分筆とは

3.合筆・分筆の注意点

4.終わりに



土地の合筆・分筆って何?

1.合筆とは


 合筆(ごうひつ)とは、複数の隣接する土地を一つの土地として登記簿上でまとめる手続きのことを指します。たとえば、相続などで複数の地番が分かれている土地を受け取った場合や、購入した土地が隣接していて、管理や売却を容易にしたい場合に利用されます。


(合筆のメリット)


①管理の簡素化

 複数の土地があると、登記上それぞれ別々に管理しなければならず、登記簿や固定資産税の計算が複雑になります。合筆を行うことで、一つの土地として管理できるため、煩雑さを解消できます。


➁固定資産税の軽減

 場合によっては、複数の土地がある場合の方が固定資産税が高くなることがあります。合筆を行い、一つの土地として評価されることで、税額が軽減される場合があります。


③売却や譲渡が容易になる

 土地を売却する際、ひとつの大きな土地として販売できるため、取引がシンプルになります。また、合筆された土地の方が市場価値が高くなることがあるため、有利に売却できる可能性もあります。


④合筆の条件と手続き

 合筆にはいくつかの条件があります。まず、合筆する土地同士が**同一の地目(農地、宅地など)**であることが必要です。また、土地の所有者がすべて同じであり、隣接していることも条件のひとつです。


手続きは以下の流れで進みます:

合筆を希望する土地の資料(登記簿謄本、地図など)を揃える。

登記所に対して合筆申請書を提出し、登記官による審査を受ける。

審査が通れば、合筆登記が完了し、一つの地番にまとめられた土地として新たに登記されます。



2.分筆とは


 分筆(ぶんぴつ)とは、一つの土地を複数に分割する手続きです。土地の一部を売却したい場合や、相続で複数の相続人に土地を分け与える際に利用されます。


(分筆のメリット)


①売却や相続の柔軟性

 一部の土地を売却したい場合、分筆することで、その部分だけを売却できます。相続の場合も、土地を複数に分けて、相続人それぞれに均等に割り当てることができます。


➁土地利用の最適化

 大きすぎる土地を小さく分けることで、それぞれの土地の用途に合わせた活用が可能になります。たとえば、住宅用地として売却する際には、小さな区画に分けて売る方が、買い手が見つかりやすくなることがあります。


③分筆の条件と手続き

 分筆するには、土地の形状や法的な制限に適合しているかを確認する必要があります。特に、都市計画法や建築基準法などの規制が関わる場合があるため、事前に調査が必要です。また、分筆する土地が適切な形状や面積を有しているかを確認するために、土地家屋調査士による測量が行われます。


分筆の手続きの流れは以下の通りです:


分筆予定の土地について、土地家屋調査士による測量を依頼する。

測量結果に基づいて、分筆案を作成する。

分筆申請書を登記所に提出し、登記官による審査を受ける。

審査が通れば、分筆登記が完了し、新たに複数の地番が割り当てられた土地として登記されます。


土地の合筆・分筆って何?

3.合筆・分筆の注意点


税務上の影響

 合筆や分筆によって、固定資産税の評価が変わることがあります。特に分筆の場合、新たに分けられた土地がそれぞれ個別に評価されるため、場合によっては税負担が増える可能性があります。


法的な規制

 分筆の場合、分割する土地が建築基準法に定められた接道義務を満たしているかなど、法律的な制約をクリアする必要があります。これを怠ると、建物の建築ができない土地になるリスクがあります。


相続や贈与における影響

 分筆は、相続や贈与の際に利用されることが多いですが、分筆することによって土地の価値が変わることも考慮する必要があります。また、相続時における分筆では、相続税の評価額に影響を与える場合があるため、税理士など専門家との相談が必要です。


測量費用と手続き費用

 分筆には土地家屋調査士による測量が必要となるため、測量費用が発生します。また、合筆・分筆それぞれの登記手続きにも手数料がかかります。これらの費用を考慮して、手続きに踏み切るかどうかを判断する必要があります。


土地の合筆・分筆って何?

4.終わりに


 合筆と分筆は、土地の管理や活用を効率的に行うための有効な手段です。

 合筆は管理を簡素化し、税負担を軽減する可能性がある一方で、分筆は土地を柔軟に活用し、相続や売却の際に大いに役立ちます。しかし、どちらも法的な手続きや費用が発生し、事前に十分な調査と計画が必要です。

 土地に関する意思決定を行う際は、司法書士や税理士、土地家屋調査士などの専門家に相談し、最適な手続きを選択することが重要です。

(論点)寄与分と特別寄与料についての解説と要件

(論点)寄与分と特別寄与料についての解説と要件

相続の際、法定相続分に従って財産が分配されるのが一般的ですが、相続人の中には、被相続人(亡くなった方)の財産形成や維持、または療養看護に特別な貢献をした者がいることがあります。このような場合、その貢献に応じて相続分が増額されることがあります。これを「寄与分」と言います。また、相続人ではない親族が特別な貢献をした場合、相続人から特別な報酬を請求できる「特別寄与料」という制度も存在します。本稿では、寄与分と特別寄与料についての解説と、それらが認められるための要件について詳述します。


目次


1. 寄与分とは何か

2. 特別寄与料とは何か

3. 寄与分と特別寄与料の違い

まとめ



(論点)寄与分と特別寄与料についての解説と要件

1. 寄与分とは何か


 寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした法定相続人が、その貢献に応じて相続分を増額できる制度です。日本の民法では、相続人はその貢献度に応じて法定相続分よりも多くの遺産を受け取る権利が認められています。たとえば、被相続人が経営する事業を手伝い、財産を増加させた場合や、被相続人の介護を長期間にわたって行った場合など、通常の範囲を超えて特別な貢献をした相続人が寄与分を主張することができます。



(1) 寄与分が認められる条件

 寄与分が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。


法定相続人であること

 寄与分を主張できるのは、相続人として認められている者だけです。具体的には、被相続人の子供、配偶者、兄弟姉妹など法定相続人が該当します。非相続人である親族(例:姻族)や友人には寄与分は認められません。


被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をしたこと

 寄与分が認められるためには、被相続人の財産を維持・増加させたことが証明される必要があります。具体的な例としては、以下が挙げられます:

 被相続人の事業を手伝い、利益を上げた。

 被相続人に対して特別な援助を行い、財産の減少を防いだ。

 被相続人の介護を継続的に行い、その生活を支えた。


寄与が「特別」であること

 寄与分が認められるためには、単なる通常の家事や介護の範囲を超えた「特別な貢献」である必要があります。たとえば、長期間にわたる介護や、他の相続人と比較して圧倒的に大きな貢献があった場合がこれに該当します。



(2) 寄与分の計算方法

 寄与分は、相続財産の中から寄与の程度に応じた金額を算出し、それを寄与した相続人に分配する形で決定されます。具体的には、遺産の全体額に対して寄与度を計算し、その分を他の相続人の相続分から差し引く形で分配が行われます。このため、寄与分の金額は、遺産全体の額や他の相続人の人数によって異なります。



2. 特別寄与料とは何か


 特別寄与料とは、相続人ではない親族が被相続人に対して特別な貢献を行った場合、相続人に対してその貢献に応じた報酬を請求できる制度です。2019年の法改正により新設されたこの制度は、相続人以外の親族(たとえば、被相続人の配偶者の子供や義理の兄弟姉妹など)が被相続人に対して特別な援助や介護を行った場合、その者が貢献に見合った報酬を受け取ることを可能にします。


(1) 特別寄与料が認められる条件

 特別寄与料が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。


法定相続人ではない親族であること

 特別寄与料を主張できるのは、被相続人と一定の親族関係にある者であり、かつ法定相続人ではない者です。例えば、被相続人の配偶者の連れ子、兄弟姉妹の配偶者、甥や姪などがこれに該当します。


特別な貢献を行ったこと

 特別寄与料が認められるためには、相続人ではない親族が、被相続人に対して特別な貢献を行ったことが必要です。たとえば、長期にわたり介護を行ったり、被相続人の生活を経済的に支援した場合などが該当します。この貢献が、通常の範囲を超える特別なものであることが求められます。


無償で行ったこと

 特別寄与料は、無償で行った貢献に対して報酬を請求する制度です。すでに報酬を受け取っていた場合や、契約によって介護などの対価が支払われている場合には特別寄与料は認められません。


(2) 特別寄与料の請求方法

 特別寄与料を請求するためには、相続が開始した後、相続人に対して報酬請求を行う必要があります。この請求は、相続開始から6ヶ月以内に行う必要があります。請求が認められた場合、特別寄与料は相続財産から支払われるため、遺産分割協議においてその金額が調整されます。


(論点)寄与分と特別寄与料についての解説と要件

3. 寄与分と特別寄与料の違い


 寄与分と特別寄与料は、どちらも被相続人への貢献に基づいて報酬を受け取る制度ですが、いくつかの違いがあります。


対象者の違い

 寄与分は法定相続人に認められる権利であるのに対し、特別寄与料は法定相続人ではない親族に認められるものです。第三者の場合は認められません。


貢献の範囲の違い

 寄与分は被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に認められるのに対し、特別寄与料は主に介護や生活支援などの無償での援助が対象となります。


手続きの違い

 寄与分は遺産分割協議の中で調整されるのが一般的なのに対し、特別寄与料は相続人に対して請求を行う手続きが必要です。


(論点)寄与分と特別寄与料についての解説と要件

まとめ


 寄与分と特別寄与料は、被相続人への貢献を評価し、それに応じた報酬を得るための重要な制度です。

 特に寄与分は、法定相続人に認められるものであり、財産の維持・増加に大きく貢献した場合にその相続分を増額できるという点で重要です。

 一方、特別寄与料は、相続人ではない親族が被相続人に対して特別な貢献をした場合に、報酬を請求できる制度です。

 いずれの制度も、相続手続きにおいて適切に利用することで、公平な遺産分配が行われることを目指しています。

(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

住宅を夫婦で購入する際に、その資金の出資割合に応じて持分割合を決めることが一般的です。しかし、持分の決定方法によっては税務上の問題が発生することがあり、特に贈与税の発生が懸念されます。本稿では、持分割合の決定方法、贈与税のリスク、そして実務上での持分放棄という選択肢について、項目に分けて解説します。


目次


1. 住宅購入時の持分割合の決め方

2. 贈与税が発生するリスク

3. 贈与税を回避する方法

4. 持分放棄の提案とその実務的な利点

5. 実務上の留意点

まとめ



(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

1. 住宅購入時の持分割合の決め方


 夫婦で住宅を購入する際には、一般的にそれぞれが出資した金額に応じて持分を設定します。たとえば、夫が70%、妻が30%の購入資金を出した場合、持分割合も夫70%、妻30%とするのが原則です。このような持分割合の設定は、以下の理由から重要です。


(1) 税務上の透明性の確保

 夫婦間で出資割合に応じた持分を設定することにより、税務上の問題が発生しにくくなります。特に、贈与税の課税を回避するためには、実際の出資額に基づいた持分割合が重要です。


(2) 将来的な相続や贈与の影響

 将来的に相続が発生した場合や、持分の変更が行われた場合にも、最初に設定した持分割合が基準となります。そのため、最初に正確な割合を設定することは、後々の手続きや税務に影響を与えるため、慎重に行う必要があります。




2. 贈与税が発生するリスク


 夫婦で住宅を購入する際、持分が一方に偏りすぎている場合、税務上「贈与」とみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。たとえば、夫婦が共同で住宅を購入したにもかかわらず、夫が100%の持分を取得した場合、妻が出資した金額が夫への贈与と見なされる可能性があります。この場合、妻が夫に贈与したものとして、贈与税が発生することになります。


(1) 贈与税の基本的な考え方

 贈与税は、個人から個人へ財産が無償で移転した場合に課税される税金です。夫婦間の持分の設定が実際の出資割合と一致しない場合、その差額が贈与とみなされ、課税対象となります。


(2) 贈与と見なされるケース

 たとえば、夫が全額出資して住宅を購入し、妻が無償でその一部の持分を取得した場合、この持分は夫から妻への贈与とされ、妻が受け取った持分に対して贈与税が発生します。逆に、夫婦の一方が実際に資金を出していないのに多くの持分を取得する場合も同様に贈与税が課される可能性があります。





(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

3. 贈与税を回避する方法


 贈与税を回避するためには、出資割合に基づいた持分割合の設定が最も効果的です。実際に住宅購入に際して夫婦それぞれが出した資金の額をもとに、持分を設定することで贈与税の発生を防ぐことができます。


(1) 適切な持分割合の設定

 適切な持分割合を設定するためには、住宅購入時に夫婦がどれだけの資金を出したかを明確にしておく必要があります。また、住宅ローンを利用している場合も、ローンの返済割合に基づいて持分を設定することが重要です。


(2) 契約書や登記での明確化

 持分割合は、契約書や不動産登記に明記することが必要です。持分割合を明確にすることで、後々のトラブルや税務上の問題を避けることができます。


4. 持分放棄の提案とその実務的な利点


 今回の実務において、私は持分放棄という選択肢を提案しました。持分放棄は、一方の所有者が自らの持分を放棄し、他方の所有者に譲渡する方法です。持分放棄は贈与のように他方への財産移転とは異なり、放棄した者の意思表示だけで有効となるため、手続きが比較的簡便です。


(1) 持分放棄と贈与税の関係

 持分放棄を行う場合、放棄した持分が他方に移転するため、贈与税の問題は残ります。実質的には持分が他方に譲渡されるため、税務上は贈与とみなされる可能性が高いです。しかし、持分放棄はあくまで一方の意思表示で完了するため、手続き自体はスムーズに進めることが可能です。


(2) 意思表示の効力

 持分放棄は、その意思表示が一方の持分放棄者によってなされるため、その意思が明確である限り効力を持ちます。これは、贈与契約のように双方の合意を必要としないため、迅速な手続きが可能です。また、今回のケースでは、持分放棄者の意思表示が唯一の決定要因となったため、贈与ではなく持分放棄が適した選択肢とされました。



5. 実務上の留意点


 持分放棄を選択する際には、いくつかの留意点があります。特に、放棄した持分が他方に移転するため、税務上の取り扱いが重要となります。また、持分放棄を行う場合は、放棄者が自らの意思で行うことが求められ、その意思が明確に表明されることが不可欠です。


(1) 税務申告の必要性

 持分放棄が贈与とみなされる場合には、税務申告が必要です。贈与税の非課税枠を超える贈与が行われた場合、相応の税額が課されるため、適切な申告手続きが求められます。


(2) 意思表示の記録

 持分放棄を行う際には、意思表示の内容を記録に残すことが重要です。これにより、後々のトラブルを回避し、税務上の問題にも対応できるようにすることができます。


(論点)共有持分の決め方と贈与税の問題、持分放棄の実務的な提案

まとめ


 住宅購入における持分割合の設定は、税務上の問題を避けるために極めて重要です。出資割合に基づいた適切な持分設定を行うことで、贈与税のリスクを回避できます。

 また、持分放棄という選択肢は、迅速かつ簡便に所有権の変更を行う方法ですが、税務上の取り扱いに留意する必要があります。

 最終的には、持分割合の設定や放棄に関する意思表示を明確にし、適切な手続きを踏むことが大切です。

(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

近年、結婚せずに生涯独身で過ごす「おひとりさま」や、子供がいない「夫婦二人世帯」が増加しており、こうした人々にとって相続は重要な問題となっています。特に、法定相続人がいない場合には、相続に関して特別な対策を講じておくことが重要です。

ここでは、おひとりさまの相続対策や、最終的に遺産がどうなるかについて解説します。


目次


1. 法定相続人がいない場合の問題点

2. 遺言書の作成

3. 信託の活用

4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮

5. 成年後見制度の活用

6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?

まとめ


(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

1. 法定相続人がいない場合の問題点


 法定相続人がいる場合は、法律に従って相続手続きが進みますが、法定相続人がいない場合には、相続手続きが大きな問題となります。法定相続人がいないと、財産の行き先が不明確になり、親族や知人とのトラブルが発生することがあります。

 また、遺産が適切に引き継がれず、最終的に国庫に帰属するリスクも高まります。おひとりさまの場合、以下の点に特に注意して相続対策を行うことが重要です。


2. 遺言書の作成


 法定相続人がいない場合、最も効果的な相続対策の一つは、遺言書を作成しておくことです。遺言書がない場合、財産は最終的に国庫に帰属してしまいますが、遺言書を作成することで、財産の行き先を指定することができます。


遺言書の種類と注意点

 遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、自分で書くことができますが、形式的な不備があると無効になるリスクが高いため、公証役場で作成する公正証書遺言が推奨されます。公正証書遺言は、遺言者が自ら内容を伝え、公証人が作成するため、法的に有効な遺言書を確実に残すことができます。


遺言執行者の指定

 遺言書には、遺言の内容を実行するための「遺言執行者」を指定しておくことも重要です。遺言執行者がいないと、遺言書の内容がスムーズに実行されず、財産分割や名義変更の手続きが遅れる可能性があります。信頼できる第三者や、司法書士・弁護士などの専門家を遺言執行者として指定することで、トラブルを防ぐことができます。



3. 信託の活用


 おひとりさまの相続対策として、「民事信託(家族信託)」を活用することも有効です。信託とは、財産を信頼できる第三者に託し、指定した目的に従って財産を管理・処分してもらう制度です。信託契約を結ぶことで、生前に自分の意志に基づいて財産の管理や処分を行うことができ、相続に関するリスクを軽減することができます。


信託のメリット

 信託を利用することで、遺言書だけではカバーしきれない財産管理の細かい点まで指示を出すことが可能です。例えば、信頼できる第三者に生前から財産管理を委ね、死亡後もその第三者が財産を適切に管理・分配するように指示することができます。これにより、相続手続きが複雑化することを防ぎ、財産の確実な引き継ぎが可能となります。

※信託を利用する場合、財産管理として預金を信託口口座で管理することになりますが、取扱金融機関が少なく、仮に口座の開設をする場合もそれなりの利用料が必要となります。



(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

4. 親しい人への財産分配や寄付の考慮



 法定相続人がいない場合、遺産を親族や友人、知人に遺贈することができます。遺贈とは、遺言によって特定の人に財産を贈ることを指します。遺贈を活用することで、感謝の気持ちを形にし、親しい人に財産を引き継ぐことができます。



特定の人への遺贈

 例えば、長年世話になった友人や介護してくれた知人に対して、感謝の意を込めて財産を遺贈することができます。遺言書にその旨を明記し、遺産分配を確実に行うための手続きを整えておくことが重要です。


寄付の活用

 また、遺産を慈善団体や社会貢献活動に寄付することも考慮するべき選択肢です。遺産の一部または全部をNPOや公益法人などに寄付することで、自分の財産が社会に役立つ形で活用されることを願うことができます。特に、遺言書で明確に寄付の意思を示しておくことで、確実な実行が可能となります。



5. 成年後見制度の活用


 おひとりさまの相続対策では、認知症などによる判断能力の低下に備えて、成年後見制度を活用することも検討すべきです。成年後見制度は、判断能力が低下した場合に、後見人が財産管理や契約の手続きを代行する制度です。


任意後見制度の利用(身元保証サポートのサービスの一環として行う場合があります)

 任意後見制度を利用することで、あらかじめ信頼できる第三者を後見人として指定し、判断能力が低下した際に財産管理を託すことができます。これにより、本人が健全な状態のうちに意思を反映させ、適切な財産管理が行われるようにすることができます。



6. 法定相続人がいない場合、最終的に遺産はどうなるのか?


 法定相続人がいない場合、遺言書が存在しないと最終的に遺産は国庫に帰属します。これは、民法に基づき、相続人がいない場合には財産が国に引き渡されるという規定があるためです。しかし、遺言書や信託契約を作成することで、このような事態を回避し、財産を希望する相手に適切に引き継ぐことができます。


特別縁故者への分配

 法定相続人がいない場合でも、特別縁故者(被相続人と生前に親しく付き合っていた人)が家庭裁判所に請求を行えば、財産の一部を受け取ることができる場合があります。ただし、この手続きは裁判所の判断によるため、確実に財産が引き継がれるわけではありません。

※特別縁故者もいないもしくは裁判所が認めなかった場合、その遺産は清算人により清算手続きが行われて、残った遺産については国庫に帰属します。


(論点)法定相続人がいない方(おひとりさま)の相続対策について

まとめ


 法定相続人がいないおひとりさまの場合、相続対策を怠ると、財産が望まない形で処理される可能性があります。

 遺言書の作成や信託の活用、寄付や遺贈の検討、成年後見制度の活用など、事前に対策を講じることで、自分の意思に基づいた相続手続きを確実に進めることができます。

 また、相続人がいない場合でも、財産を寄付などをする手続きを行うため、遺言書の作成をしておくことが重要です。




相続が大変になるケース5選

相続が大変になるケース5選

相続手続きは、思っている以上に複雑でトラブルが発生しやすいものです。

遺産をめぐる相続人間の争いや、手続きの複雑さから生じる混乱は、予想外に長引くことも多いです。

特に以下の5つのケースでは、相続が大変になることが多く、注意が必要です。


目次


1. 遺産分割協議がまとまらない場合

2. 遺言書がない、または無効である場合

3. 相続財産の把握が難しい場合

4. 相続人が多い場合

5. 相続税の負担が大きい場合

まとめ

相続が大変になるケース5選

1. 遺産分割協議がまとまらない場合


 相続人が複数いる場合、遺産分割協議が必要です。しかし、全員の意見が一致しないと協議が進まず、結果として長期化することがあります。特に、以下のような場合には分割協議が難航する傾向にあります。


①相続人間の関係が悪い

 親族間の不仲や過去のトラブルが原因で協議が進まない場合があります。感情的な対立が先行すると、客観的な判断ができなくなり、冷静に話し合うことが困難になります。


➁財産の価値や分割方法に対する認識の違い

 遺産が現金だけでなく、不動産や株式などの場合、その評価額や分割方法に対する意見が食い違うことがあります。特に不動産の場合、現物分割が難しいため、相続人の誰が不動産を引き継ぎ、他の相続人に代償金を支払うのかなど、複雑な話し合いが必要になります。


③感情的な遺産の分配

 例えば、家宝や思い出の品、実家など感情的価値が高い財産をめぐって争いが起きることも少なくありません。こうした財産は金銭的な価値以上に相続人の感情に影響を与え、合意形成が難しくなることがあります。


相続が大変になるケース5選

2. 遺言書がない、または無効である場合


 遺言書がない場合、法定相続分に従って遺産を分割することになりますが、これは必ずしも相続人全員が納得する結果にはならないことが多いです。また、遺言書が存在しても、その内容が法的に無効とされる場合や、遺言書自体が発見されない場合もあります。


①自筆証書遺言の不備

 遺言書が手書きで作成された自筆証書遺言の場合、形式的な不備や署名・押印の欠如などで無効とされるケースがあります。法的に有効な遺言書を残すためには、公正証書遺言が推奨されますが、これを利用しない場合、遺言書の効力を巡って争いが生じることがあります。


➁遺言書が複数存在する場合

 遺言書が複数あり、それらの内容が矛盾している場合、どの遺言書を有効とするかをめぐってトラブルが発生します。特に、最後に作成された遺言書が不明確であったり、日付が記されていない場合は、相続人間で争いが避けられません。


3. 相続財産の把握が難しい場合


 被相続人が持っていた財産が明確でない場合、相続財産の調査が難航することがあります。預貯金、不動産、株式、保険など多岐にわたる財産を正確に把握するためには、時間と労力が必要です。また、被相続人が複数の金融機関に口座を持っていたり、不動産が遠隔地に存在していたりすると、さらに手間がかかります。


①隠し財産や未申告の財産の存在

 被相続人が家族に知らせていなかった財産や、適切に申告されていない財産が後から見つかることがあります。これにより、相続手続きが再開される可能性があり、相続税の再計算が必要になる場合もあります。


➁不動産の登記情報の不一致

 被相続人が所有していた不動産の登記情報が最新でない場合、相続手続きが煩雑化します。古い登記情報が残っていたり、名義変更が行われていない不動産がある場合、手続きが長引く原因になります。


4. 相続人が多い場合


 相続人が多い場合、それぞれの意見をまとめることが難しくなります。法定相続分に従って遺産を分割することも、全員の同意が必要になるため、相続人が多ければ多いほど話し合いが複雑化します。また、相続人の中に行方不明者や意思疎通が難しい者がいる場合、手続きがさらに難航することがあります。


①海外在住の相続人がいる場合

 相続人が海外に住んでいる場合、書類のやり取りや意思確認に時間がかかることがあります。さらに、現地の法令に従った手続きが必要になるため、国際的な手続きが加わり、相続全体が長引く可能性があります。


➁疎遠な親族が相続人である場合

 被相続人が再婚している場合や、子供が別居している場合、疎遠になっている親族が相続人となるケースでは、感情的な対立が生じやすくなります。特に、被相続人の配偶者と前妻・前夫の子供たちとの間でトラブルが発生しやすいです。


5. 相続税の負担が大きい場合


 相続財産の価値が高額な場合、相続税の負担が問題となります。特に、相続財産の多くが不動産で現金が少ない場合、相続税を支払うための現金が不足し、相続人間でトラブルになることがあります。


①不動産の売却が必要になる場合

 相続税を支払うために、不動産を売却しなければならないケースもあります。しかし、不動産の売却には時間がかかり、相続手続き全体が長期化することがあります。また、売却価格が相続人間で合意できない場合、さらなる対立が生じます。


➁相続税の申告期限のプレッシャー

 相続税の基礎控除を超えている場合、相続税の申告は、被相続人の死亡から10か月以内に行わなければならないため、期限内に財産を把握し、分割方法を決定する必要があります。この短い期間内で手続きを進めることが難しく、急いで分割協議を行うことで、後から問題が発生することもあります。


相続が大変になるケース5選

まとめ


 相続が大変になるケースは、遺産分割協議の難航や遺言書の有無、相続財産の把握、相続人の多さ、相続税の負担など、さまざまな要因が絡み合っています。

 事前に適切な対策を講じ、円滑な相続手続きが進むよう準備を整えておくことが、トラブルを避けるための最善策です。

(論点)遺言の有効性について

(論点)遺言の有効性について

相続対策として遺言書を作成することは、財産分配の明確化や相続争いの防止を目的としています。しかし、遺言者の死亡後に遺言書の効力が発生し、特に遺言者の認知能力に疑義が生じた場合、その遺言書の有効性が争われることがあります。このような事態は、遺言書の有効性をめぐる訴訟に発展することが多く、遺族間の関係に大きな影響を及ぼす可能性があります。以下では、遺言書の有効性に関する基本的な法的要件や、認知能力に関する疑義が生じた場合の対応について詳しく説明します。


目次


1. 遺言書の基本的な有効性の要件

2. 遺言者の認知能力に関する問題

3. 認知能力に関する証拠

4. 遺言書の無効となる場合

5. 遺言の有効性を確保するための対策

結論


(論点)遺言の有効性について

1. 遺言書の基本的な有効性の要件


 遺言書の有効性を確認するためには、いくつかの形式的要件を満たす必要があります。遺言書の形式には主に次の2つがあります。


①自筆証書遺言: 遺言者が自分で全文を書き、日付と署名を行うことが必要です。2020年の法改正により、自筆証書遺言の財産目録については、パソコンで作成したり、第三者が作成したものを添付することが可能になりましたが、本文は遺言者自身が手書きである必要があります。以下が民法の規定となります。


「民法(自筆証書遺言)

第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」


➁公正証書遺言: 公証役場で公証人が作成する遺言です。遺言者が口述し、内容を公証人が文書にして作成するため、最も信頼性が高く、遺言者の認知能力に問題があった場合でも、作成時に公証人が、さらに確認時には証人2名を立ち会わせて確認を行うため争いが起こりにくいとされています。

 遺言書がこれらの形式的要件を満たしていない場合、無効となるリスクが高くなります。


※特に、自筆証書遺言においては、法律の要件が重要となりますので、効力を出すためには専門家のサポートを受けた方がいいと思います。また、相続発生し、遺言書の効力が要件を充たして発生した場合においても、遺言書作成時の遺言者の認知能力について争いがある場合、他の相続人から裁判で無効の訴えを提訴される場合があります。

(論点)遺言の有効性について

2. 遺言者の認知能力に関する問題


 遺言書の有効性に対する最大の争点の一つが、遺言者の認知能力です。遺言を作成するためには、遺言者が遺言を行う時点で「意思能力」を有している必要があります。意思能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、適切に判断できる能力を指します。認知症や精神疾患などでこの能力が低下している場合、遺言書の有効性に疑義が生じることがあります。


認知能力が疑われるケース

 遺言者が遺言書を作成した時期に認知症を患っていたり、精神的な不安定さがあった場合、その遺言書が法的に有効であったかどうかが問われることがあります。例えば、以下のような状況が認知能力に関する争いの原因となります。


認知症の診断: 遺言作成時に遺言者が認知症の診断を受けていた場合、その時点での意思能力が十分であったかどうかが問題視されます。診断が軽度であり、意思能力に問題がなければ有効ですが、重度の認知症で判断能力が大きく低下していた場合、遺言が無効とされる可能性があります。


精神的な圧力や強制: 遺言作成時に、遺言者が他者から精神的な圧力を受けていた場合や、遺言の内容が不自然である場合、遺言者が意思能力を失っていたと主張されることがあります。


(論点)遺言の有効性について

3. 認知能力に関する証拠


 遺言者の認知能力を巡る争いにおいて、意思能力の有無を判断するための証拠が重要となります。具体的には以下の証拠が利用されることが多いです。


 医療記録: 遺言者の医師による診断書やカルテなどの医療記録は、遺言作成時の精神状態を示す重要な証拠となります。特に、遺言作成前後の医療記録が重要視され、意思能力があったかどうかを判断するための基礎資料となります。


 公証人や証人の証言: 公正証書遺言の場合、遺言作成時に立ち会った公証人や証人の証言が意思能力を証明する手がかりになります。公証人は、遺言者が意思能力を有しているかどうかを確認する義務があるため、公正証書遺言の場合、認知能力に対する疑義は比較的少なくなる傾向があります。


 家族や近親者の証言: 遺言者の行動や精神状態について、家族や近親者が証言することもあります。しかし、相続人間での利害関係が複雑な場合、この証言は偏りが生じる可能性があるため、客観的な証拠と組み合わせて検討されることが多いです。


 実際、証拠を提出すると言っても、かなり難しいと思います。認知症が発症するリスクが高くなる年齢は、75歳を過ぎてからとなります。その前に、遺言書を作成しておけば、このような争いは避けられると思われます。遺言書の内容は、後で変更可能です。ぜひ、遺言書の作成の検討をしてみてください。



4. 遺言書の無効となる場合


 認知能力に問題があり、意思能力が欠けていたと判断された場合、遺言書は無効となります。遺言書が無効とされた場合、遺言の内容に従った財産分配は行われず、法定相続分に従って財産が分割されます。このため、遺言者の意向が反映されなくなる可能性が高くなります。


 無効の主張が認められる場合としては、以下のようなケースが考えられます。


 遺言作成時に認知症が進行していた: 診断書や医療記録から、遺言作成時に認知能力が失われていたことが明らかな場合。

 遺言書の内容が極端に不自然: 遺言者が過度に特定の相続人に有利な遺言を残した場合、精神的な圧力がかかった可能性があるとされることがあります。


5. 遺言の有効性を確保するための対策


 遺言書の有効性を確保するためには、認知能力に疑義が生じないような対策が重要です。特に、遺言作成時に遺言者が高齢であったり、健康状態に問題がある場合、次のような対策が推奨されます。

 公正証書遺言を利用する: 公証人が立ち会い、意思能力の確認を行うため、公正証書遺言を作成することで後の争いを防ぎやすくなります。

 医師の診断を受ける: 遺言作成時に意思能力が十分であることを示すため、医師の診断書を取得しておくことが有効です。特に、認知症などの診断を受けている場合には、専門医の証明が重要です。

 証人を立てる: 遺言書作成に信頼できる証人を立ち会わせることで、後に認知能力をめぐる争いが発生した場合の証拠とすることができます。

(論点)遺言の有効性について

結論


 遺言書の有効性は、遺言者の認知能力や意思能力が十分であったかどうかに大きく依存します。

 遺言作成時に認知能力に疑義が生じる場合、争いが起こる可能性があり、そのための証拠収集や適切な遺言の形式選択が重要です。

 公正証書遺言や医師の診断書などを活用することで、遺言書の有効性を確保し、相続人間の争いを防ぐための対策が求められます。

(論点)遺言認知をすることで起こりうること

(論点)遺言認知をすることで起こりうること

遺言認知とは、主に相続に関する場面で、非嫡出子(結婚していない関係で生まれた子)を、遺言を通じて父親が法律的に認知する行為です。遺言の形式で行われるため、父親が生存中には認知の効力は発生せず、父親が死亡した時点で遺言認知が成立します。この行為には相続においてさまざまな法的、感情的な問題が生じる可能性があります。以下では、遺言認知を行った場合に考えられる影響や問題点について説明します。


目次

1. 相続権の確立

2. 相続分の決定

3. 家族間のトラブル

4. 形式的な要件

5. 認知の争い

6. 認知の無効

7. 非嫡出子の感情的な影響

8. 税務上の影響

結論

(論点)遺言認知をすることで起こりうること

1. 相続権の確立


 遺言認知によって認知された非嫡出子は、父親の法定相続人となります。法的に認知されることで、非嫡出子も嫡出子と同様に相続権を持つことができ、父親の遺産を受け取る権利が生じます。遺言によって明確に認知が行われた場合、相続手続きにおいてこの認知は重要な役割を果たします。


2. 相続分の決定


 認知された非嫡出子の相続分は、基本的に他の子(嫡出子)と同じになります。ただし、遺言によって認知されるだけでなく、具体的な遺産分割の指示が遺言に含まれている場合もあります。たとえば、遺産の一部またはすべてを特定の相続人に譲る指示があれば、非嫡出子の取り分が変わる可能性があります。しかし、遺留分(最低限の相続権)は、他の相続人と同様に非嫡出子にも保障されます。


3. 家族間のトラブル


 遺言認知によって新たに認知された非嫡出子の存在が明らかになると、既存の家族関係に緊張が生じることがあります。特に、嫡出子や他の相続人が非嫡出子の存在を知らなかった場合、遺産分割に関して争いが生じることが考えられます。例えば、嫡出子たちは非嫡出子の相続分が自分たちの取り分を減らすと感じる可能性があり、その結果、法廷での争いに発展することがあります。


4. 形式的な要件


 遺言による認知は、遺言の形式要件に厳格に従う必要があります。日本では、遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的に有効であるためには一定の要件を満たさなければなりません。たとえば、自筆証書遺言の場合、全文を遺言者自身が手書きし、日付と署名が必要です。これらの形式要件を守らなかった場合、遺言認知が無効とされるリスクがあります。そのため、遺言による認知を検討する場合は、専門家の助言を受けることが重要です。


5. 認知の争い


 遺言によって認知された場合でも、他の相続人や親族がその認知の正当性を疑問視することがあります。例えば、遺言書の内容に不自然な点があったり、遺言が作成された当時の父親の精神状態に問題があったと主張される場合です。その結果、認知の有効性を巡って法廷で争われるケースも少なくありません。特に、高額な遺産が関与する場合、このような争いは長期化する傾向があります。


6. 認知の無効


 遺言による認知が有効であるためには、遺言が父親の自由意思に基づいて作成されたことが重要です。父親が認知する意思を明確に持っていたことが証明されない場合や、遺言が作成された際に父親が認知能力を欠いていたと判断される場合、その認知は無効となる可能性があります。また、遺言自体が無効とされた場合、遺言認知も無効となります。たとえば、遺言書の作成が法的要件を満たしていなかったり、偽造や強制が疑われる場合です。


7. 非嫡出子の感情的な影響


 遺言によって認知された非嫡出子にとって、父親が生前に認知を行わず、死後に遺言で認知されるという事実は感情的に複雑な問題を引き起こすことがあります。非嫡出子にとっては、父親が生前に自分を公に認めなかったという思いが残ることがあり、遺産分割を通じて解決する以上に、感情的な問題が残ることがあります。これにより、遺言認知を受けた子供と他の家族との間に感情的な距離が生まれる可能性もあります。


8. 税務上の影響


 遺言による認知が行われた場合、認知された子供は相続税の対象となる可能性があります。相続税の計算においては、法定相続分に基づいて課税されますが、非嫡出子として認知された子供も他の相続人と同様に課税される対象となります。相続税の免税額や税率は、その時点の法制度によって変動するため、認知後の相続手続きにおいては税務の専門家の助言を仰ぐことが推奨されます。


結論


 遺言認知を行った場合、相続に関する権利が法的に確立される一方で、家族間の争いや感情的な問題が発生する可能性が高くなります。また、遺言の形式的な要件や認知の有効性に対する法的な争いも発生するリスクがあります。そのため、遺言による認知を検討する際には、法的な助言を受けつつ、怒られることは承知の上で(ここ大事)、家族間のコミュニケーションも十分に行うことが重要です。



 何度か私もこのような状況に立ち会ったケースがあるのですが、大体修羅場になります。


(論点)法務局が行う地図の作成について

(論点)法務局が行う地図の作成について

法務局が行う「地図作成」について、不動産登記法第14条第1項に定められた地図を基に作成される地図は、不動産の特定や取引の安全性を確保するうえで重要な役割を果たしています。ここでは、地図作成の概要や法的根拠、そしてそれに伴う効果について詳しく説明します。



目次


1. 地図作成の概要と不動産登記法第14条

2. 地図作成の法的根拠と歴史的背景

3. 不動産登記法第14条第1項に基づく地図の内容

4. 地図作成の手続き

5. 地図作成の効果

6. 地図作成の今後の展望

まとめ

(論点)法務局が行う地図の作成について

1. 地図作成の概要と不動産登記法第14条


 不動産登記法第14条第1項では、法務局が不動産の土地について「地図」を備え付ける義務が定められています。この地図は、各土地の境界や位置を明確にするために作成され、土地の特定や境界争いの防止、さらには不動産取引の円滑化を目的としています。これにより、不動産の登記簿に記録される土地の情報は、地図と連動して正確性が確保されることになります。


 地図作成は、測量技術を駆使して正確な位置情報を示すための作業が行われ、法務局がその結果を公示します。作成された地図は、法務局で備え付けられ、誰でも閲覧できる状態にされるため、関係者が土地の情報を容易に把握できるようになっています。

(論点)法務局が行う地図の作成について

2. 地図作成の法的根拠と歴史的背景


 不動産登記法に基づく地図作成は、日本における不動産の取引や権利関係を明確にするために設けられた制度です。もともと、日本の不動産に関する制度は地籍調査や土地台帳に基づくものでしたが、地籍の不明確さや境界争いの増加に伴い、法務局が中心となって地図を作成し、土地の正確な位置を示す必要性が高まりました。

 特に、土地の境界が曖昧であったり、所有者同士での争いが発生した場合、この地図が重要な証拠となります。従来は、各土地の所有者が独自に境界を示していましたが、現在では法務局が管理する地図が公式なものとされ、これに基づいて境界の確定や土地の取引が行われるようになりました。



3. 不動産登記法第14条第1項に基づく地図の内容


 不動産登記法第14条第1項による地図は、土地の境界や面積、位置情報を明確にするための公的な地図です。この地図は、以下の内容を含んでいます。


①土地の境界線の明示: 地図には、各土地の境界が明確に描かれており、隣接する土地との境界がはっきりとわかります。これにより、境界に関する争いを未然に防ぐ効果があります。


➁土地の面積: 登記簿に記載される土地の面積と連動しており、正確な面積情報を確認することができます。


③位置情報の正確性: 地図は、測量技術を用いて作成されており、土地の位置を正確に特定することが可能です。これにより、土地の場所が誤って認識されることがなくなります。



4. 地図作成の手続き


 地図作成は、法務局の管轄下で行われます。土地所有者や利害関係者が自らの土地の位置や境界を確認するために、法務局に地図の作成や修正を依頼することが可能です。また、地籍調査の結果に基づき、自治体や公共機関からの依頼を受けて法務局が地図作成を行う場合もあります。

 地図作成の手続きには、通常、測量士や土地家屋調査士などの専門家が関与し、正確な測量が行われたうえで地図が作成されます。この測量結果に基づいて、土地の所有者や隣接地の所有者との合意が得られた場合、最終的に法務局に地図が備え付けられることになります。

(論点)法務局が行う地図の作成について

5. 地図作成の効果


 地図作成には、いくつかの重要な効果が伴います。


①土地の特定が容易になる

 地図作成により、土地の境界や位置が明確になるため、土地を特定することが非常に容易になります。不動産取引の際には、土地の正確な情報が求められるため、この地図を参照することで、誤解やトラブルを防ぐことができます。


➁境界争いの予防・解決

 地図に明示された境界線が公的なものとして認められるため、隣接地との境界争いが発生した場合でも、迅速に解決することが可能です。特に、境界不明の土地を取引する際には、この地図が重要な証拠として機能します。


③不動産の価値向上

 地図作成によって土地の情報が正確に示されることで、その土地の価値がより正確に評価されるようになります。不動産の取引において、境界が不明瞭な土地は取引価格が下がるリスクがありますが、地図があることでこうしたリスクを軽減できます。


④法的効力の強化

 法務局が作成した地図は、公的な効力を持つため、裁判所での証拠としても使用することが可能です。これにより、土地の境界や位置に関する法的な争いが生じた場合でも、地図に基づいて裁判を有利に進めることができます。



6. 地図作成の今後の展望


 地図作成の技術は、近年の測量技術やデジタル技術の進展により、より正確かつ迅速に行われるようになっています。

 法務局も、地図の電子化を進めており、オンラインでの閲覧や手続きが可能になることで、土地の取引や管理がさらにスムーズになることが期待されています。

 また、今後は地籍調査の拡充や地図データの精度向上に向けた取り組みが進められることで、より信頼性の高い不動産取引環境が整備されるでしょう。


(論点)法務局が行う地図の作成について

まとめ


 法務局が行う地図作成は、不動産登記法第14条第1項に基づき、土地の境界や位置を明確にするための重要な役割を担っています。

 この地図により、土地の特定が容易になり、境界争いの防止や不動産取引の安全性が高まる効果があります。地図作成の手続きやその効果を十分に理解し、不動産取引や管理に役立てることが、重要な役割を果たします。

 所有者の方の立会や、隣接する土地の所有者の確認のご協力をお願いいたします。

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

日本における交通事故や離婚などの示談交渉に関しては、弁護士がその役割を担うことが原則です。特に、訴額が140万円を超える場合は弁護士が必要ですが、訴額が140万円以下の場合、認定司法書士も交渉に関わることが可能です。しかし、行政書士は示談交渉を行うことが法的に許可されていません。行政書士の職務範囲は書類作成や契約書の作成支援などに限られており、法的アドバイスや交渉代行はできないことが明確に規定されています。



目次


1. 示談交渉における弁護士と司法書士の役割

2. 行政書士の職務範囲と制限

3. 高知県宿毛市での行政書士による違法な示談交渉

4. 適切な専門家を選ぶことの重要性

5. 結論

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

1. 示談交渉における弁護士と司法書士の役割


示談交渉において、弁護士は全ての訴額の事件を担当することができ、特に訴額が140万円を超える場合は必須となります。弁護士は訴訟、交渉、和解の手続きを全面的に取り仕切る法的権限を有しており、複雑な法的トラブルに対応できます。

 また、認定司法書士は、訴額が140万円以下の場合に限り、示談交渉に関与できる法律専門家です。司法書士は、日常的に不動産登記や会社設立の手続きに関与していますが、特別研修を経て認定考査に合格した場合、140万円以下の民事事件においては、示談交渉の代理も許されています。

※司法書士全員が認定司法書士であるわけではありません。

ですので、訴額がはっきりしない場合は、弁護士に相談するのがいいと思います。


2. 行政書士の職務範囲と制限


 一方、行政書士の役割は、書類作成や行政手続きのサポートに限られています。行政書士は法的助言を行ったり、示談交渉の代理を務めることは法的に認められていません。

 主な業務は、各種許認可申請、契約書の作成、遺言書の作成補助などであり、交渉や法的代理人としての活動はできないため、訴訟や示談交渉が必要な場合は弁護士または司法書士に依頼する必要があります。


3. 高知県宿毛市での行政書士による違法な示談交渉


 令和6年9月9日のニュースで、高知県宿毛市で発生した事件は、行政書士が示談交渉に関与した事例として注目を集めました。この事件では、行政書士が職務範囲を超えて示談交渉を行ったことが問題視され、法的な責任を問われることになりました。行政書士がこうした行為に関与することは、法律に違反しており、顧客にとってもリスクが伴います。

 この事件は、行政書士が示談交渉に関与することの危険性を浮き彫りにしました。行政書士に依頼する際には、彼らの職務が法的書類の作成に限られていることを理解する必要があります。行政書士が示談交渉に関与することは法律に反するため、依頼者としても注意が必要です。

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

4. 適切な専門家を選ぶことの重要性


 今回の事件は、法的トラブルに直面した際に、適切な専門家を選ぶことの重要性を強調しています。示談交渉や訴訟を必要とする問題に対しては、弁護士または認定司法書士を選択するべきであり、行政書士に依頼する場合は、書類作成などの範囲内での業務に限るべきです。


 法的な代理や交渉は、一般市民にとって複雑な手続きとなるため、法的な専門知識と権限を持つ弁護士や認定司法書士に依頼することで、問題の適切な解決を図ることができます。行政書士に依頼する場合も、彼らの業務範囲を明確に理解し、誤った依頼をしないように注意する必要があります。

(論点)弁護士法第72条違反行為(非弁行為)について

5. 結論


 示談交渉を行う場合、訴額に応じて弁護士または認定司法書士に依頼することが最善です。行政書士は、示談交渉や訴訟代理を行うことができないため、誤った依頼をすると法的なリスクを抱える可能性があります。

 特に今回の高知県宿毛市での事件を通じて、行政書士が職務範囲を超えて示談交渉を行うことがいかに危険であるかが再認識されました。

 依頼者としては、専門家の職務範囲を理解し、適切な法律専門家に依頼することが重要です。

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産や負債を一切相続しないことを選択する手続きです。通常、相続放棄は自分が相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。この3か月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続を受けるかどうか慎重に判断するために設けられた期間です。しかし、熟慮期間内であっても、相続放棄ができないケースがいくつか存在します。

以下に4つの具体的な事例を挙げ、その理由を解説します。


目次


1. 相続財産の一部を処分してしまった場合

2. 相続財産を消費してしまった場合

3. 相続税の申告をしてしまった場合

4. 相続財産を管理した場合

まとめ

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

1. 相続財産の一部を処分してしまった場合


相続放棄ができない代表的なケースの一つは、相続人が被相続人の財産を処分してしまった場合です。たとえば、亡くなった親が所有していた自動車を相続人が売却してしまったとします。この場合、売却行為自体が「相続を承認した」とみなされ、相続放棄の手続きを行うことができなくなります。民法において、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、それは「法定単純承認」とされ、相続を放棄する権利を失うことになります。



【具体例】

被相続人が残した不動産を売却してしまい、その後に多額の負債があることが判明した場合、負債を避けるために相続放棄をしようとしても、不動産売却という処分行為が既に行われているため、相続放棄が認められないことになります。



2. 相続財産を消費してしまった場合


 相続財産を使ってしまった場合も、相続放棄ができません。たとえば、亡くなった人の預金口座からお金を引き出して生活費に使ってしまうなどの行為が該当します。このような行為は相続財産を「取得」したとみなされ、やはり相続を承認したものと見なされるため、相続放棄ができなくなります。



【具体例】

 親の預金口座から引き出したお金を家の修繕や生活費に使った後、親に多額の借金があることがわかった場合、相続放棄をしようとしても、既に預金を消費しているため、相続放棄は不可能です。

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

3. 相続税の申告をしてしまった場合


相続税の申告をすることも、相続放棄を妨げる要因となります。相続税は、相続財産を取得した者が納税するものであり、申告を行うこと自体が相続を承認した証拠とされます。相続税の申告を済ませた後に、相続放棄をしようとしても、その申告行為が相続の意思を示したものとみなされ、放棄は認められなくなります。



【具体例】

 被相続人が多額の財産を持っていたときに、その財産について相続税の申告を行った後に、被相続人が抱えていた負債の存在が発覚した場合、相続放棄を試みても相続税の申告という事実が相続の意思を示したものとされ、放棄は認められません。そもそも、相続税の申告をするということは、自身の相続があったことを知っているわけですし、相続発生から10ケ月以内に申告をすることから、熟慮期間は超過してしまっているケースが多いと考えます。



4. 相続財産を管理した場合


 相続財産を管理した場合も、相続放棄ができなくなるケースがあります。特に、亡くなった人の財産を整理し、負債の清算や財産の分配などの行為を行うことは、相続を承認したとみなされる可能性があります。たとえば、遺産分割協議に参加して他の相続人と話し合いを行うなどの行為も、相続を認めたものとされる場合があります。


【具体例】

 兄弟で遺産分割協議を行い、不動産の分配について話し合った後で、被相続人が多額の負債を抱えていたことが判明し、相続放棄を希望しても、協議に参加していた時点で相続を承認したとみなされ、放棄は認められません。遺産分割協議に参加して協議内容に合意するということは、たとえ遺産を全くもらわなかったとしても、自身の持つ相続権を処分したとみなされますので、相続放棄はできなくなります。

(論点)相続放棄できる熟慮期間中でも相続放棄ができなくなるケース

まとめ


 相続放棄は、相続財産に関する権利と義務をすべて放棄する手続きですが、熟慮期間内であっても、相続財産を処分したり、消費したり、管理したりすると、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。

 相続人は、被相続人が亡くなった後に何らかの財産処分や管理を行う前に、慎重に相続放棄の手続きを検討することが重要です。

 また、相続に関して不明な点がある場合や、負債の有無が不確かな場合は、早めに専門家に相談することが推奨されます。

 相続の手続きは複雑であり、誤った判断や行動が後々大きな問題を引き起こす可能性があるため、十分な注意が必要です。

(論点)相続できないものとは

(論点)相続できないものとは

相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産や権利義務を、相続人が引き継ぐことです。一般的には、土地や建物、現金、株式などの財産を想像することが多いですが、実際には相続できるものとできないものが存在します。相続できないものについて理解しておくことは、相続手続きを円滑に進めるために重要です。

本稿では、被相続人の財産の中で相続できないものについて説明します。


目次


1. 一身専属権

2. 生命保険金

3. 年金

4. 一部の損害賠償請求権

まとめ

(論点)相続できないものとは

1. 一身専属権


まず、相続できないものとして代表的なのが「一身専属権」です。これは被相続人の個人的な権利や義務であり、その人自身に密接に関連しているため、他人が引き継ぐことができないものです。一身専属権には次のようなものがあります。

※プロミュージシャンの子供が、コンサートやってもチケット買った人たちの債務履行とはなりませんよね。 



(1) 身分関係に基づく権利義務


 被相続人の身分に直接関連する権利や義務は、相続することができません。たとえば、親権、後見人としての権利義務、婚姻関係に基づく権利などは、一身に帰属するものであり、被相続人が亡くなった時点で消滅します。具体的には、次のようなものが該当します。


親権: 親が子供に対して有する親権は、親の死亡に伴い消滅します。親権は新たな親権者や後見人が家庭裁判所によって選任されるため、相続の対象にはなりません。

後見人としての義務: 法定後見や任意後見の後見人は、被後見人に対して責任を負いますが、後見人が死亡した場合、その義務は相続されず、新たな後見人が選任されます。

婚姻関係に基づく権利義務: 婚姻に基づく扶養義務や配偶者としての権利義務も相続の対象にはならず、被相続人の死亡により婚姻関係は終了します。


(2) 委任契約


 被相続人が生前に行っていた業務委任契約や、弁護士や税理士などとの委任契約も相続されません。これらは被相続人自身の信頼に基づく契約であり、被相続人が死亡すると契約は終了します。もっとも、委任契約のうち未払いの報酬などについては相続の対象となる場合があります。


(3) 労務に基づく権利


 被相続人が労働者として勤務していた場合、その労働契約も死亡によって終了します。労務の提供は個人に依存するものであり、相続の対象にはなりません。たとえば、給与や労働時間に関する権利は被相続人が持つものであり、死亡時点で契約は終了します。ただし、未払いの給与や退職金は相続財産として扱われることがあります。


(論点)相続できないものとは

2. 生命保険金


 生命保険金は被相続人の死亡に伴い支払われるものですが、通常、保険金受取人が指定されている場合、生命保険金は受取人固有の権利として扱われます。そのため、生命保険金は相続財産には含まれません。具体的には次のような場合があります。


保険契約: 保険契約者(被相続人)が死亡した際、保険金受取人として指定された人が生命保険金を受け取ります。この場合、生命保険金は受取人の財産となり、相続財産には含まれません。


税務上の取扱い: 税務上は、生命保険金は相続税の課税対象となることがありますが、それでも相続財産とは区別され、受取人に直接支払われます。


ただし、生命保険金が過剰な額である場合や特定の相続人に対して偏った支給が行われた場合、他の相続人が異議を唱え、裁判所で「特別受益」として考慮されることもあります。この場合、相続財産の一部として評価される可能性があります。


3. 年金


 年金も相続の対象外となります。年金は被相続人の生存に基づいて支給されるものであり、死亡した時点でその権利は消滅します。公的年金や企業年金など、被相続人が生前に受給していた年金は、基本的に死亡とともに支給が停止されます。


 未支給年金: 被相続人が死亡する前に年金が支払われていなかった場合、その分は未支給年金として遺族が請求できる場合があります。この場合、相続財産とは別に遺族が直接受け取る形となり、相続の対象には含まれません。


4. 一部の損害賠償請求権


 被相続人が損害賠償請求をしている場合、その請求権は相続の対象になることがありますが、例外的に相続できないものもあります。たとえば、慰謝料請求権がこれに該当します。被相続人が生前に被った精神的苦痛に対する慰謝料は、基本的にその人個人に帰属する権利であり、相続の対象とはなりません。ただし、すでに裁判が進行中で、慰謝料が確定している場合は相続されることがあります。


 一方で、財産的損害に対する賠償請求権は相続されることが一般的です。たとえば、交通事故による財産的損害や、契約違反による損害賠償請求は相続財産として扱われます。



5. 公的な資格や地位


 被相続人が有していた公的な資格や地位も相続の対象外です。たとえば、弁護士、医師、公認会計士などの資格は個人の能力や信頼に基づくものであり、これを相続することはできません。また、被相続人が公職に就いていた場合、その地位も死亡に伴い消滅します。

(論点)相続できないものとは

まとめ


 相続できないものには、被相続人個人に強く結びついた一身専属権や、生命保険金、年金、そして公的な資格や地位などがあります。これらは個人的な権利や義務であり、他人に引き継ぐことができないため、相続財産として扱われません。また、一部の損害賠償請求権や慰謝料なども相続の対象外となる場合があります。


 相続手続きを行う際には、どの財産が相続可能でどの権利が相続できないのかを理解することが重要です。

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

生命保険を活用した相続対策は、相続財産の分割を避ける手段として一般的に行われています。生命保険金は、契約者が指定した受取人に直接支払われるため、原則として相続財産には含まれず、遺産分割協議の対象にはならないとされています。

しかし、特定の受取人に対して過度に多額の保険金が支払われた場合、その保険金が他の相続人に不公平な利益をもたらすと考えられることがあります。このような場合、生命保険金が「特別受益」とみなされることが裁判で認められることがあるため、注意が必要です。


目次


1. 生命保険金の扱い

2. 特別受益とは?

3. 生命保険金が特別受益とみなされたケース

4. 判例の影響と今後の留意点

5. 結論

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

1. 生命保険金の扱い


 まず、生命保険金は通常、相続税の計算において「みなし相続財産」として扱われますが、民法上の遺産分割の対象には含まれません。すなわち、生命保険金は被相続人の死亡によって受取人が受け取るものであり、直接の相続財産ではないため、遺産分割協議で争われることは通常ありません。


 これにより、受取人は指定された金額を自由に使うことができ、他の相続人の意向に左右されずに保険金を受け取ることが可能です。また、生命保険金は相続税の課税対象になるものの、一定の非課税枠(法定相続人1人につき500万円)が設けられており、節税対策としても利用されることが多いです。



2. 特別受益とは?


 特別受益とは、特定の相続人が生前に被相続人から特別な利益を受けていた場合、その利益を相続分に反映させて他の相続人との公平を図る制度です。民法第903条では、結婚資金や住宅資金の贈与、あるいは学資金などが特別受益に該当することが明示されています。


 この制度は、特定の相続人が被相続人から生前に過剰な援助を受けていた場合、その分を相続財産の中で調整し、他の相続人との不公平を避けるためのものです。相続人の中には、生前贈与を受けた者とそうでない者が存在するため、特定の相続人が不当に優遇されることを防ぐ仕組みとなっています。

(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

3. 生命保険金が特別受益とみなされたケース


 生命保険金が特別受益とみなされることは、基本的には少ないですが、近年の判例では、特定の条件下で特別受益と認定されるケースが増えてきました。ここで重要なのは、保険金の金額や受取人の立場、そして他の相続人との相対的な関係です。

例えば、【東京高裁平成27年3月18日判決】では、生命保険金が特別受益に該当すると判断されました。この事例では、長男が生命保険の受取人として非常に高額の保険金を受け取りましたが、他の相続人(兄弟姉妹)にはほとんど遺産が残されていなかったため、他の相続人が不公平だと主張しました。裁判所は、長男が受け取った生命保険金が遺産の大部分を占めていたことや、長男が受けた利益が他の相続人に対して不相応に大きいことを考慮し、この生命保険金を特別受益と認定しました。


 この判決のポイントは、生命保険金が通常は相続財産とはみなされないにもかかわらず、他の相続人との公平性を欠く状況下では、特別受益として考慮される可能性があるということです。



4. 判例の影響と今後の留意点


 このような判例が示すように、生命保険金が特別受益とみなされるかどうかはケースバイケースであり、相続人間の関係や保険金の金額が大きな影響を与えます。受取人が被相続人から生前に多額の贈与を受けている場合や、生命保険金の金額が他の相続財産に比べて不釣り合いに大きい場合には、特別受益と判断される可能性が高くなります。


 そのため、生命保険を活用した相続対策を行う際には、以下の点に注意する必要があります。


 受取人の公平性の確保: 受取人が特定の相続人に偏っている場合、他の相続人が不公平を主張するリスクが高まります。受取人を複数の相続人に分ける、あるいは事前に遺言や遺産分割協議で受取額の公平性を確認しておくことが重要です。


 生命保険金の額の調整: 保険金が他の遺産に比べてあまりにも大きな額になると、特別受益として認定されるリスクが高まります。保険金の額を相続財産全体のバランスに合わせて調整することが推奨されます。


 相続人間のコミュニケーション: 相続に関するトラブルを防ぐためには、相続人間で事前に十分なコミュニケーションを図り、生命保険の受取に関しても合意を形成しておくことが重要です。


(論点)生命保険を活用した相続対策の注意点

5. 結論


 生命保険金は原則として相続財産に含まれず、遺産分割の対象にはならないものの、特定の相続人が過度に利益を得たと判断される場合には、裁判所によって特別受益とみなされることがあります。特に、保険金の額が遺産の大部分を占めるようなケースや、他の相続人とのバランスが著しく欠けている場合には、生命保険金も特別受益の対象となり得ます。


 相続対策として生命保険を活用する際には、このような判例を踏まえて、相続人間の公平性を十分に考慮し、トラブルを未然に防ぐための準備を行うことが不可欠です。専門家への相談をされることをお勧めいたします。

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

おひとり様の身元保証サービスは、家族や親族がいない、または頼れる人がいない高齢者にとって重要なサポートを提供するものです。このサービスには、主に生活支援、医療・介護時のサポート、そして死後の手続きなどが含まれますが、その中でも契約に関連する部分は特に重要です。解説したいと思います。

目次

1. 身元保証契約の重要性

2. 生活支援契約とその内容

3. 医療・介護サポートにおける契約

4. 死後事務委任契約の役割

5. 契約内容のカスタマイズと調整

6. 契約書の内容と費用のポイント

7. 専門家の関与と法的サポート

8. 契約前の確認事項と適切な選択

まとめ

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

1. 身元保証契約の重要性


おひとり様の身元保証サービスの中心となる「身元保証契約」は、医療機関や介護施設における保証人としての役割をサービス提供者が担うことを約束するものです。契約の範囲や条件が明確に定められ、緊急時にも迅速に対応できることが求められます。



2. 生活支援契約とその内容


 「生活支援契約」では、日常生活におけるサポートを受けるための条件や範囲が規定されています。買い物の代行や通院の付き添いなど、利用者の自立した生活を支えるための契約内容が含まれます。



3. 医療・介護サポートにおける契約


 「医療・介護契約」は、利用者が必要な医療や介護を受ける際に、サービス提供者が保証人や代理人として対応することを定めた契約です。緊急時の入院や治療において、家族の代わりに同意書にサインするなど、利用者の意思を尊重しつつ適切なサポートを提供します。



4. 死後事務委任契約の役割


 「死後事務委任契約」は、利用者が亡くなった後の手続きを代行するための契約です。葬儀の手配や遺品整理、行政手続きなどを含み、無縁仏にならないように最期を尊厳を持って迎えるためのサポートが行われます。

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

5. 契約内容のカスタマイズと調整


これらの契約は、利用者の希望や状況に応じたカスタマイズが可能です。利用者とサービス提供者の間で綿密な打ち合わせが行われ、必要に応じて契約内容が調整されます。特定の医療機関や葬儀の形式など、利用者の希望に沿った対応が可能です。



6. 契約書の内容と費用のポイント


 契約書には、利用者の権利と義務、サービス提供者の責任が明記されています。契約期間や解約条件、費用の支払い方法なども重要なポイントとなり、特に費用に関しては一括払いと分割払いの選択肢が提供されることが一般的です。しかし、実費である程度必要な費用に関しましては、「預託金」として、前もって支払いが必要となります。



7. 専門家の関与と法的サポート


 これらの契約には、司法書士や弁護士などの専門家が関与する場合があります。特に遺言書の作成や死後事務委任契約においては、専門家のアドバイスを受けることが推奨され、利用者の法的保護を強化します。しかし、契約関連については、争い等のケースが想定される場合ですと、弁護士にお願いしたほうがよろしいかと思います。



8. 契約前の確認事項と適切な選択


 契約を結ぶ前に、サービスの詳細や料金体系、解約条件を十分に確認することが重要です。また、必要に応じて専門家の意見を求め、自分の希望や状況に最適な選択をすることが求められます。


 どこまで、関与させるのかによっても大きく変わってきますので、各契約と目的がきっちりと合致しているか判断することが一番重要だと考えます。

(論点)おひとりさまの身元保証サービスについて

まとめ


 内閣府からのガイドライン(案)が出ました。完全にはまだまだといった感じなのですが、今までに問題になっていた点(遺産についてのサポート団体への遺言書による遺贈)については、明示することになりそうです。

 生きている時のサービスは安くても、遺産を遺贈することを条件とされると、まずい点もあります。

 なぜなら、医療・介護サポートで「もっと〇〇してほしい」という要望があっても、それを受け入れると将来の実入りが減少するということになってしまう場合、正常な判断ができるのか怪しいですからね。こういったトラブルを防止するという観点からも、身元保証サポート選びは、慎重にしたいものですね。


 自分らしく最後まで生きていくサポートを提供してくれる団体にお願いするようにしましょう。

 アイリスでもサービス提供団体の活動内容を拝見させていただいて、お勧めできる団体もございますので、是非ご連絡ください。勿論、ご紹介は致しますが、紹介の費用は掛かりませんし、サポートを受けるかどうかは、ご自身の判断でお願いしております。

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

再婚を経験した方が、前婚の元妻との間に子供がいる場合、特にその子供と長期間会っていない場合、遺産分割協議において残された家族に大きな負担がかかることがあります。

こうした状況を避けるためには、遺言を活用した事前の対策が非常に重要です。


目次


1.遺産分割協議における負担

2.遺言を使った対策方法

3.結論

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

1.遺産分割協議における負担


再婚後の家族にとって、遺産分割協議は非常にデリケートな問題です。前婚の子供が相続人として権利を持つ場合、以下のような負担が生じることがあります。


①感情的なストレス


 長期間会っていない前婚の子供が突然現れ、相続権を主張することは、残された家族にとって大きな感情的ストレスとなります。特に、再婚相手やその子供たちにとっては、予想外の事態であり、家庭内の人間関係にも影響を及ぼす可能性があります。


➁協議の複雑化


 前婚の子供が相続に関与することで、遺産分割協議が複雑化します。特に、相続人同士の関係が希薄である場合、協議が円滑に進まないことが多く、結果として時間や費用がかさむことがあります。また、遺産分割がスムーズに進まないと、法定相続分に基づく配分を余儀なくされ、全員が納得する結果が得られない場合もあります。


③財産管理の混乱


 前婚の子供が遺産分割に関与することで、財産の管理が複雑になることがあります。たとえば、不動産が遺産に含まれる場合、共有名義となることで管理や処分が困難になる可能性があります。また、遺産分割が長引くと、相続税の申告期限に間に合わないリスクも生じます。


(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

2.遺言を使った対策方法


こうした問題を避けるためには、遺言を活用した事前の対策が有効です。以下は、その具体的な方法です。


①遺言書の作成


 遺言書を作成することで、相続人間での争いを未然に防ぐことができます。特に、再婚相手やその子供たちに対する配慮を明確に示すことで、遺産分割協議がスムーズに進む可能性が高まります。遺言書には、前婚の子供に対する配分を明記することで、後々のトラブルを防ぐことができます。


➁遺留分に配慮した遺言


 前婚の子供が遺留分を主張する可能性がある場合、遺留分を考慮した遺言を作成することが重要です。遺留分を無視した遺言は、後で遺留分減殺請求が行われ、再婚後の家族がさらに困難な状況に陥る可能性があります。そのため、遺言を作成する際には、法定相続分や遺留分を考慮し、全員が納得できる内容とすることが望ましいです。


③専門家のアドバイスを受ける


 遺言書を作成する際には、司法書士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。専門家の助言を受けることで、法的に有効な遺言書を作成できるだけでなく、相続人全員にとって公平で納得のいく内容にすることができます。また、遺言執行者を指定することで、遺産分割がスムーズに進行するようにすることも重要です。

(論点)再婚経験があり、前婚の際に子供がいて離婚後会ってない場合

3.結論


 再婚後の家族にとって、前婚の子供との関係は遺産分割協議において大きな負担となることがあります。しかし、遺言を適切に活用することで、この負担を軽減し、残された家族が円滑に遺産を相続できるようにすることが可能です。

 遺言の作成は、単なる形式的な手続きではなく、残された家族の未来を守るための重要な手段であることを認識し、早めに対策を講じることが求められます。

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反の問題が生じる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

この論点について、以下に詳しく説明します。


目次


1. 後見人と身元引受人の役割

2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点

3. 利益相反の具体例

4. 法的見解と対策

5. 結論

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

1. 後見人と身元引受人の役割


まず、後見人と身元引受人の役割を理解することが重要です。

後見人は、被後見人の財産管理や生活上の意思決定を支援する法的な役割を担います。被後見人が判断能力を欠く場合に、後見人がその権限を行使して、被後見人の利益を守ることが求められます。

一方、身元引受人は、施設入所時や医療機関での手続きにおいて、被後見人の身元を保証する役割を担い、緊急時の連絡先や、場合によっては医療・介護の意思決定に関与することがあります。


(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

2. 同一人物が両方の役割を担う場合の問題点


後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反が生じるリスクがあります。後見人は被後見人の利益を最優先に考えるべきですが、身元引受人としての役割が重なると、被後見人の利益を損なう可能性が出てくることがあります。


 例えば、後見人が被後見人の財産を管理する立場にある一方で、身元引受人として施設入所時の費用負担や契約の締結に関与する場合、後見人が身元引受人として自分自身の責任を軽減するために、被後見人に不利な決定をする可能性があります。このような状況では、後見人の義務である被後見人の最善の利益を守るという責務が果たされない危険性があります。


3. 利益相反の具体例


 利益相反の具体例として、以下のようなケースが考えられます。


 施設入所の契約締結: 身元引受人として施設入所の契約を締結する際、後見人が被後見人の財産から費用を支払うことを決定するが、実際には施設の費用が高額で、被後見人の財産が減少する結果になる場合があります。後見人としては、被後見人の利益を最優先に考え、費用対効果を十分に検討すべきですが、身元引受人としての立場があると、契約を急ぐあまり、被後見人の利益を損なう決定を下す可能性があります。


 医療・介護の意思決定: 医療や介護に関する重要な意思決定が必要な場合、身元引受人としての責任と後見人としての財産管理の責任が衝突することがあります。例えば、身元引受人として長期入院を選択することが被後見人の財産に大きな影響を与える場合、後見人としては費用負担を軽減するために別の選択肢を探すべきかもしれません。しかし、身元引受人としての立場が強調されると、後見人としての判断が歪められるリスクがあります。

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

4. 法的見解と対策


日本の法制度では、後見人と身元引受人が同一人物であること自体は禁止されていません。しかし、利益相反のリスクが高い場合には、第三者機関や家庭裁判所の関与が求められることがあります。また、後見監督人(監督者)を設置することで、利益相反が発生しないように監視する仕組みを導入することが有効です。


 さらに、後見人と身元引受人が同一人物である場合には、定期的に状況を見直し、必要に応じて役割を分離するか、監督機関に報告することで利益相反を回避する努力が必要です。家庭裁判所は、被後見人の利益を保護するために後見人の行動を監視し、必要に応じて指導や変更を行う権限を持っています。

(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?

5. 結論


 後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反のリスクが存在するため、被後見人の利益を最優先に考えるべきです。

 法的には同一人物が両方の役割を担うことは可能ですが、利益相反が発生しないようにするための対策が必要です。

 後見監督人の設置や家庭裁判所の関与、定期的な見直しなどを通じて、被後見人の利益が適切に保護されるような仕組みを整えることが重要です。

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

遺産相続において、前妻との間に生まれた子供がいる場合、特にその子供に対して養育費や大学の費用、さらには結婚費用までを負担した後、遺留分放棄の念書を書いてもらった場合、遺産をその子供に相続させなくても良いのかという疑問が生じることがあります。この問題に対する正確な理解を深めるためには、遺留分放棄に関する法的な手続きについて理解しておく必要があります。


目次


1. 遺留分とは

2. 遺留分放棄の念書の効力

3. 養育費や結婚費用の負担と遺留分放棄

4. 遺留分放棄が認められなかった場合の影響

5. 結論

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

1. 遺留分とは


まず、遺留分とは、法律上、相続人が最低限保障されている相続財産の割合を指します。日本の民法では、相続人の権利を保護するために、被相続人(遺産を残す人)が遺言によって全財産を特定の人に譲る場合でも、他の相続人が最低限受け取るべき財産の割合が保証されています。遺留分は、法定相続人が不当に少ない遺産しか受け取れない場合に、その権利を主張することで、受け取ることができる財産の額を保護するための制度です。


法定相続人の第1順位、第2順位である子、直系尊属については、主張することができますが、第3順位の兄弟姉妹には、遺留分を主張する権利は民法上認められていません。

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

2. 遺留分放棄の念書の効力


 次に、遺留分放棄の念書について考えてみましょう。遺留分を放棄すること自体は可能です。しかし、その放棄が有効であるためには、法律に定められた特定の手続きを踏む必要があります。つまり、各個人間で作成した私文書で、遺留分放棄の効力は認められません


相続発生前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1043条)。この手続きを経ないで行われた遺留分放棄の合意や念書は、法的に無効とされる可能性が高いです。家庭裁判所が許可を与えるためには、放棄が相続人の自由意思に基づいて行われており、不当に不利益を被るものではないことが確認される必要があります。


3. 養育費や結婚費用の負担と遺留分放棄


 質問の中で言及されている「養育費、大学の費用、結婚費用を負担したから、遺留分を放棄させた」という状況についても、重要な点があります。養育費や教育費、結婚費用の負担は、親としての義務や愛情表現として行われるものであり、それを理由に相続権の放棄を求めることは慎重に考える必要があります。


 さらに、家庭裁判所が遺留分放棄の許可を与える際には、その放棄が公平であるか、被相続人から相続人への経済的な配慮が適切に行われたかが審査されます。養育費や結婚費用の負担だけでは、家庭裁判所が遺留分放棄を認めるかどうかは別問題であり、その許可が得られなければ、遺留分放棄の念書が法的に有効とならない可能性があります。


4. 遺留分放棄が認められなかった場合の影響


 家庭裁判所の許可がない遺留分放棄は無効となるため、その場合、相続が発生した際に前妻の子供が遺留分を請求する権利を行使することができます。もしその子供が遺留分請求権を行使した場合、遺産の一部を請求される可能性があります。このような状況を避けるためには、適切な法的手続きを経ることが不可欠です。

(論点)相続発生前の遺留分放棄について

5. 結論


 結論として、遺産相続の前に遺留分放棄の念書を書いてもらったとしても、それだけでは前妻の子供に遺産を相続させなくても良いという保証にはなりません。遺留分放棄を法的に有効にするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があり、この手続きを経ていない遺留分放棄は無効とされる可能性があります。したがって、前妻の子供に遺産を相続させたくない場合には、必ず専門家の助言を受け、適切な手続きを踏むことが重要です。


 ちなみに、こういった場合のアドバイスとして、「遺言書」の作成をお勧めしております。なぜなら、遺言書に遺産の帰属先を記載することで、相続発生時に遺言書の効力が生じて、遺産はしてした方に帰属するからです。勿論、遺留分についての問題は残るものの、遺留分権利者がその権利を主張しなければ、遺留分の問題は発生しません。当然ですが、遺留分侵害額請求権を主張した場合には、その算出額を支払うことになるかもしれませんが、遺産の帰属は、指定者に移っています。

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

共有不動産の持分を解消する際、持分を贈与するのか、持分放棄をするのかという選択肢があります。この2つの方法には、それぞれ異なる法律上および税務上の影響があります。ここでは、それらの違いと注意すべき点を解説します。


目次


1. 持分贈与の法的側面

2. 持分贈与の税務面

3. 持分放棄の法的側面

4. 持分放棄の税務面

5. どちらの選択肢が有利か

6. 結論

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

1. 持分贈与の法的側面


持分贈与とは、共有不動産の持分を他の共有者に無償で譲渡することです。贈与は、贈与者の意思表示と受贈者(もらう側)の意思表示が必要です。贈与自体は意思表示時点で成立はしますが、証拠として贈与契約書を作成し、登記手続きを行うことで、持分の移転が正式に完了します。

この場合、受贈者は贈与を受けた持分を完全に自分のものとする権利を持ちます。法的には、贈与が完了した時点で、贈与者の持分は受贈者に移転し、贈与者はその不動産に関して一切の権利を失います。


(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

2. 持分贈与の税務面


贈与を行った場合、受贈者には贈与税が課されます。贈与税の額は、贈与された持分の評価額に基づき算出され、税率は累進課税方式で適用されます。また、不動産の場合、固定資産税評価額を基準に評価額が決まりますが、実際の市場価値との差異があるため、税務署と相談しながら進めることが重要です。さらに、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える場合、課税される点にも注意が必要です。


 また、贈与後に不動産を売却するときの「譲渡所得税」の「取得費」について、受贈者は、贈与物件に係る贈与者の取得日・取得費を引き継ぐことになります。


3. 持分放棄の法的側面


 一方、持分放棄は、共有者が自らの持分を無償で放棄する単独行為です。持分を放棄することで、その持分は他の共有者全員のものとなり、持分比率に応じて再配分されます。法的には、持分放棄を行うことで、放棄した共有者はその不動産に関する権利を失い、他の共有者は持分が増える形となります。持分放棄は贈与とは異なり、特定の共有者に対して持分を移転するのではなく、共有者全体に対して持分が分配されることが特徴です。ただし、共有者が2名であり、そのうちの1名が持分放棄をした場合、上記の持分を贈与したのと同じ効果が得られます。複数名居た場合は、残された共有者の持ち分比率に応じて持分が移転します。


4. 持分放棄の税務面


 持分放棄の場合、放棄された持分が他の共有者に移転する際、移転を受ける側に贈与税が課される可能性があります。特に、持分放棄が特定の共有者に利益をもたらす場合、その共有者に対して贈与とみなされるケースがあり、贈与税が発生することがあります。さらに、持分放棄による共有者間の持分調整が、市場価値に対して無償で行われたと判断される場合、税務署が贈与と認定するリスクがあるため注意が必要です。まずは課税される可能性が高いので、確定申告時に申告しておくことをお勧めします。よくわからない場合には、税理士にご相談ください。


 それと、持分放棄後に当該不動産を売却する場合の譲渡所得税についての「取得費」について、贈与課税時は、概算取得費(売却金額の5%等)が取得費となり取得費の引き継ぎがないので、当局側の課税の実務では、贈与課税時の時価を取得費とすることから、二重課税はないということになります。


5. どちらの選択肢が有利か


 持分贈与と持分放棄のどちらが有利かは、具体的な状況によります。贈与の場合、受贈者に贈与税が課されますが、特定の相手に持分を渡すことができるため、相続や家族間の財産分与を考慮した場合に有効です。一方、持分放棄は共有者全体に平等に持分が分配されるため、特定の相手に財産を集中させたくない場合や、税務リスクを最小限に抑えたい場合に適しています。


 ただし、持分放棄は共有者が2名でないと、共有関係の解消には至らないということや、税務上のメリットデメリットが存在します。詳しくは専門家にご相談ください。

(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

6. 結論


 共有不動産の持分を解消する際には、持分贈与と持分放棄のそれぞれに法的および税務的な影響があります。どちらを選択するかは、個々の事情や目的に応じて慎重に検討する必要があります。贈与税の負担や持分の再配分の影響を考慮し、最適な方法を選ぶためには、専門家のアドバイスを求めることが重要です。


 ただし、不動産登記手続きについては、登記原因証明情報の内容と当為原因が異なる程度で、それ以外で異なる部分はありません。


(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

 相続が発生した際、相続人が存在しない場合、その財産はどこへ行くのかという疑問が生じます。

 このようなケースは「相続人不存在」と呼ばれ、法律に基づく手続きが定められています。以下、その手続きと財産の行方について説明します。


目次


1. 相続人不存在の確認

2. 遺産管理人の選任

3. 相続財産の公告と受遺者の探索

4. 相続財産の国庫帰属

5. 国庫帰属後の手続き

6. 結論

(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

1. 相続人不存在の確認


 相続人が不存在であると判断されるのは、被相続人が死亡した際に法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)がいない場合です。また、相続人がいても全員が相続放棄をした場合も同様に相続人不存在の状態となります。


 相続人がいるかどうかは、被相続人の戸籍謄本などを調査して確認します。この手続きは通常、遺産管理人や家庭裁判所が担当します。


(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

2. 遺産管理人の選任


 相続人不存在が確認されると、家庭裁判所は「遺産管理人」を選任します。

 遺産管理人は、相続財産の保全、処分、債務の支払いなどを行うために選ばれる第三者です。遺産管理人は、弁護士や司法書士など、法律に精通した専門家が任命されることが一般的です。


 遺産管理人が選任されると、財産の管理とともに、相続債務の清算や未払いの税金の支払い、債権者への対応などを行います。また、遺産の一部を売却するなどして、債務の支払いに充てることもあります。


 当然ですが、この遺産管理人への報酬も、前もって家庭裁判所に予納することになりますが、その額は数十万円から数百万円が想定されます。(いったい誰が支払うのでしょうか?)勿論、予納金が支払われない場合、手続きは進みません。


3. 相続財産の公告と受遺者の探索


 遺産管理人は、相続財産の内容を公告し、受遺者や相続人の可能性がある者を探します。この公告は、遺産管理人が選任されてから通常2か月以内に行われ、一般的には官報などで公示されます。公告期間中に相続人や受遺者が現れれば、その者に対して相続手続きが行われます。


 しかし、公告期間中に相続人や受遺者が現れない場合、最終的にはその財産の処理が行われます。


4. 相続財産の国庫帰属


 公告期間が過ぎても相続人が現れなかった場合、相続財産は「特別縁故者」に分与される可能性があります。特別縁故者とは、被相続人の生前に特に親しい関係にあった者で、例えば、長年同居していた友人や内縁の配偶者などが該当します。特別縁故者が財産の分与を希望する場合、家庭裁判所にその旨を申し立てることができます。


 特別縁故者への分与が行われない場合、相続財産は最終的に「国庫」に帰属します。これは、相続人不存在の場合に限られる特殊な措置で、国が相続財産を受け取ることになります。国庫帰属の対象となる財産には、不動産、預貯金、株式などが含まれます。


5. 国庫帰属後の手続き


 財産が国庫に帰属した後、これらの財産は国有財産として処分されます。不動産であれば、売却されたり、公共の利用に供されたりします。現金や預貯金は、国の財政に組み入れられます。また、株式などの有価証券は、国が売却して現金化することが一般的です。


 一度国庫に帰属した財産は、相続人や特別縁故者が後に現れたとしても、その返還が認められることは基本的にありません。したがって、相続人不存在が確定する前に、全ての可能性を考慮して手続きを行うことが重要です。

(論点)受取人のいない相続財産はどこにいくのか

6. 結論


 相続人が不存在の場合、その財産はまず遺産管理人によって管理され、特別縁故者への分与が行われる可能性がありますが、最終的には国庫に帰属します。このようなケースは、法律に基づいた厳格な手続きが必要となり、遺産管理人や家庭裁判所の役割が非常に重要です。相続人不存在の問題は、誰が財産を受け取るのかという個別の問題だけでなく、社会全体における財産の管理や再分配にも関連する重要なテーマです。


 ちなみに、日本全体で、受取人のいない遺産額「647億円(2021年朝日新聞記事引用)」だったみたいです。

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

任意後見契約は、将来の判断能力の低下に備えて信頼できる後見人を事前に選び、契約を結ぶ制度です。

この契約時に、財産の開示が求められる理由と、開示しないことのデメリットについて説明します。


目次


1. 財産開示の重要性

2. 財産目録作成条項を含めない契約の例外

3. 財産目録がない場合のデメリット

4. 結論

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

1. 財産開示の重要性


 任意後見契約を締結する際、原則として本人は後見人に対して財産の開示を行います。これは、後見人が本人の財産状況を正確に把握することで、後見が開始された際に適切な財産管理が行えるようにするためです。財産の開示は、本人が保有する資産や負債、収入源などの全体像を後見人が理解し、将来的な支出計画や財産の保全を確実に行うための基礎となります。


 財産開示を行うことで、後見人は本人の生活維持に必要な資金をどのように確保するか、どの資産をどう管理するかを計画的に決定できます。また、家族間のトラブルや財産の不正利用を未然に防ぐ効果も期待されます。後見人が最初から財産状況を把握していれば、本人が判断能力を失った後でもスムーズに財産管理が行えるため、本人や家族にとって安心感が得られます。


2. 財産目録作成条項を含めない契約の例外


 例外として、任意後見契約書に財産目録作成の条項を含めない場合、財産の開示を行わずに契約を締結することも可能です。これは、本人がプライバシーを重視し、財産を開示することに抵抗がある場合や、信頼関係が十分に構築されているため、後見人に財産を開示する必要がないと判断した場合に選ばれることがあります。


 しかし、財産目録を作成しない契約にはリスクが伴います。特に、将来的に認知能力が低下し、家族や後見人が財産管理に疑問を持った際に、問題が顕在化します。

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

3. 財産目録がない場合のデメリット


 財産目録がない状態で任意後見が開始された場合、本人の財産がどの程度存在していたのか、どの資産がどれだけ減少したのかを証明する手段が限られます。例えば、家族が「何かおかしい」と感じても、財産の移動や減少が不審であるかどうかを確認するのが難しくなります。


 財産目録が存在すれば、後見が開始された時点の財産状況と現在の状況を比較することで、不正な取引や不審な財産移動がないかを検証できます。しかし、財産目録がない場合は、このような証拠を確保する手段がなく、不正が行われていたとしても、それを証明することが非常に困難になります。


 例えば、本人が判断能力を失う前に不正な取引が行われていた場合、財産目録がなければその不正を証明するための証拠が不足し、後見人や家族が取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。結果として、本人の財産が不正に減少していたとしても、それを追跡し、適切な対処を行うことができなくなります。


 さらに、財産目録がないことで、後見人が適切な財産管理を行っていたかどうかの判断も困難になります。家族や関係者が後見人の行動を監視・評価する際に、財産目録がないと透明性が欠如し、後見人に対する信頼が揺らぐ可能性があります。

(論点)任意後見契約時に財産を開示する理由とその重要性

4. 結論


 任意後見契約において財産を開示することは、後見人が適切に本人の財産を管理し、本人の生活を守るために不可欠な手続きです。

 財産目録を作成しない契約も可能ですが、その場合、将来的に財産管理に問題が生じた際に、それを証明する手段がないため、リスクが高まります。

 したがって、任意後見契約を締結する際には、可能な限り財産目録を作成し、後見人が適切に業務を遂行できるような体制を整えることが重要です。

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

 成年後見制度は、高齢者や認知症患者、精神障害者など判断能力が低下した人々を法的に保護するための制度です。

 この制度には「任意後見」と「法定後見」の2種類があります。

 また、成年後見制度の利用状況と市民後見人についてもお話をしたいと思います。


目次


1.任意後見

2.法定後見

3.利用率と裁判統計から見る現状

4.市民後見人の役割と課題

5.結論

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

1.任意後見


 任意後見は、本人がまだ判断能力がある段階で、将来に備えて信頼できる人物を後見人として選び、任意後見契約を結ぶ制度です。

 契約内容には、後見人が将来、本人の生活、財産管理、医療に関する意思決定を代行することが含まれます。この契約は、公証役場で公正証書として作成され、本人の判断能力が低下した際に、家庭裁判所に申請して正式に後見が開始されます。


 任意後見のメリットは、本人の意向を最大限に反映できる点にあります。

 本人が信頼する人物を選ぶことで、後見人に対する安心感が得られ、財産の管理や医療に関する決定がスムーズに行われる可能性が高まります。

(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

2.法定後見


 法定後見は、すでに判断能力が低下している場合に、市町村長や親族などからの申し立てにより家庭裁判所が後見人を選任する制度です。法定後見には、後見、保佐、補助の3種類があり、それぞれの対象者の判断能力に応じて後見人の権限が異なります。後見人は、本人の生活や財産管理、契約の締結などに関する意思決定を代行します。


 法定後見の選任プロセスでは、家庭裁判所が後見人を選定しますが、本人や親族が希望する人物が選ばれるとは限りません。そのため、後見人の選任に関しては、しばしば家族内での意見の相違や法定後見人に対する不満が生じることがあります。

 勿論、専門家が選任された場合、その報酬が発生し、それは現行制度ですと、本人が亡くなるまで発生することになります。


3.利用率と裁判統計から見る現状


 成年後見制度の利用は年々増加しており、特に法定後見の利用が目立ちます。家庭裁判所の統計によれば、後見に関する申立件数は過去10年間で着実に増加しており、2023年には年間で約4万件に達しました。このうち、任意後見の利用は全体の約10%に留まっており、圧倒的に法定後見の利用が多い状況です。


 法定後見が主流となっている背景には、本人や家族が判断能力の低下に早期に気づかず、任意後見契約を締結するタイミングを逃してしまうケースが多いことが挙げられます。

 また、任意後見契約の締結には公証役場での手続きが必要であり、その手続きの煩雑さや費用が利用のハードルとなっている可能性も考えられます。


 また、市町村長による申し立てが圧倒的に多くなってきています。これは、いままで介護度の確認などで契約当事者として、親族相手でも慣習として行っていたところ、だんだん厳しくなり、本人相手で介護度の確認をするにあたり認知症発症している可能性が高い場合、法定後見制度を利用して、後見人(法定代理人)として本人に代わって契約するように厳格化されてきているからだと考えられます。


4.市民後見人の役割と課題


 市民後見人は、専門家ではなく、市民が後見人として家庭裁判所に選任される制度です。市民後見人の導入は、高齢化社会に対応するための重要な施策とされています。特に、家族や親族がいない、または親族間で後見人を務めることが難しい場合に、市民後見人が重要な役割を果たします。


 しかし、市民後見人の利用には課題もあります。まず、後見業務に関する専門知識や経験が不足しているため、十分な支援を提供できない可能性があります。

 また、市民後見人の育成や支援体制の整備が十分でないため、安定した後見業務を行うための環境が整っていない場合があります。そのため、市民後見人の質を高めるための研修制度やサポート体制の強化が急務とされています。


(論点)成年後見制度の解説と利用状況、市民後見人って?

5.結論


 成年後見制度は、判断能力が低下した人々の権利を保護するための重要な制度です。

 任意後見と法定後見の選択肢があることで、個々の状況に応じた保護が可能となりますが、現状では法定後見が主流となっています。

 また、市民後見人の導入は、社会的な需要に応える重要な施策である一方で、その運用には改善の余地が残されています。


(論点)子がいない夫婦の相続について

(論点)子がいない夫婦の相続について

 子供がいない夫婦の相続においては、一般的な相続よりも複雑な点が多く、事前にしっかりと準備をしておくことが重要です。

 相続人第1順位の子がいないので、いきなり相続人第2順位の直系尊属(両親等)が関与してきますが、すでに両親等が無くなっている場合には、第3順にの兄弟姉妹になります。

 ここでは、子供がいない夫婦が相続に関して注意すべき点を5つ挙げ、それぞれを解説します。


目次


1. 法定相続人の範囲と相続割合の確認

2. 遺言書の作成の必要性

3. 配偶者居住権の確保

4. 親族との関係維持と遺産分割協議の重要性

5. 相続税の負担と節税対策

まとめ

(論点)子がいない夫婦の相続について

1. 法定相続人の範囲と相続割合の確認


 子供がいない夫婦の場合、相続人の範囲が通常のケースとは異なります。具体的には、配偶者が相続人であることは変わりませんが、相続人が配偶者一人のみとは限りません。

 子供がいない場合、配偶者以外の相続人としては、被相続人の親や兄弟姉妹が含まれることになります。もし被相続人の親が存命であれば、配偶者と親が相続人となり、配偶者が3分の2、親が3分の1を相続します。

 親がすでに他界している場合、兄弟姉妹が相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続することになります。

 兄弟姉妹がすでに他界している場合は、その子供(甥や姪)が代襲相続することもあります。

 配偶者が全ての財産を相続するわけではないため、法定相続人の範囲と相続割合を確認しておくことが重要です。


2. 遺言書の作成の必要性


 子供がいない夫婦の場合、遺言書の作成が特に重要です。遺言書がない場合、遺産は法定相続分に従って分割されるため、配偶者以外の相続人にも遺産が分配されることになります。

 しかし、遺言書があれば、被相続人は財産の分配方法を自由に決定することができます。たとえば、全ての財産を配偶者に相続させたい場合や、特定の財産を特定の親族に遺贈したい場合には、遺言書が不可欠です。

 遺言書を作成することで、相続がスムーズに進み、遺族間の紛争を防ぐことができます。

 特に、第3順位の広大終いに関しては、「遺留分」の主張はできません。

 遺言書を作成しておくことで遺産を自身の意思通りに承継することが可能となりますので、ぜひ遺言書作成の検討を考慮ください。

 もちろん、後々の問題を考慮して「公正証書遺言」で行うことをお勧めいたします。


3. 配偶者居住権の確保


 子供がいない夫婦の場合、相続によって配偶者が住んでいる家を失うリスクがあります。

 例えば、配偶者以外の相続人が相続分を主張し、家の売却や分割を要求することが考えられます。このような状況を避けるためには、配偶者居住権を確保することが重要です。

 配偶者居住権とは、配偶者が相続により、被相続人が住んでいた住居に引き続き住む権利を保護する制度です。これにより、配偶者が安定して生活できる環境を確保することができます。

 ただし、配偶者居住権を有効に活用するためには、遺言書にその旨を明記しておく必要があるため、事前の準備が必要です。


4. 親族との関係維持と遺産分割協議の重要性


 子供がいない夫婦の場合、相続時に配偶者と親族(被相続人の親や兄弟姉妹)との間で遺産分割協議が必要になります。

 この協議がスムーズに進まないと、相続手続きが長引く可能性が高く、感情的な対立が生じることもあります。特に、親や兄弟姉妹が相続人として関与する場合には、配偶者と親族との間での協力と理解が重要です。

 被相続人の生前から親族との関係を良好に保つことで、相続時のトラブルを防ぐことができます。また、遺産分割協議では、全相続人の同意が必要なため、相続人間の調整が求められます。

 このため、遺言書を残しておくことが非常に有効ですし、必要に応じて司法書士や弁護士などの専門家の助言を受けることも検討すべきです。


(論点)子がいない夫婦の相続について

5. 相続税の負担と節税対策


 子供がいない夫婦の場合、相続税の負担が大きくなる可能性があります。

 法定相続人が少ないと、基礎控除額が減少するため、相続税の課税対象となる遺産額が増えることがあります。たとえば、子供がいる場合には法定相続人の数が増えるため、基礎控除額も増加しますが、子供がいない夫婦では配偶者と親または兄弟姉妹が相続人となるため、控除額が少なくなります。その結果、相続税の負担が大きくなる可能性があります。

 相続税を軽減するためには、生前に適切な対策を講じることが重要です。具体的には、生前贈与や保険の活用、信託の設計などが考えられます。

 また、遺産分割の際には、配偶者の税額軽減措置を活用することも有効です。これにより、配偶者が相続した財産に対する相続税を大幅に軽減することができます。

(論点)子がいない夫婦の相続について

6.まとめ


 以上の5つの点を踏まえ、子供がいない夫婦の相続においては、法定相続人の確認や遺言書の作成、親族との関係維持など、事前にしっかりと準備をしておくことが求められます。適切な対策を講じることで、配偶者の生活を守り 、遺産の円滑な相続を実現することが可能です。

 相続は家族間の重要な問題であり、専門家の助言を受けながら慎重に対応することが望ましいでしょう。


(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

家族信託が出始めたころには、夢のような制度として脚光を浴びましたが、利用が進むにつれて、その問題点も浮き彫りになってきて、「後見制度に代わる」制度ではないことが明らかになってきました。そもそも、財産管理の方法を契約で当事者同士でするものが家族信託で、家庭裁判所の管理下で行うものが後見制度です。その目的も財産管理という名目は同じでも内容は全く違うものです。現状、家族信託はそこまで浸透していない様に見えます。その原因を紐解いてみました。


目次


1. 家族信託の概要

2. 受託財産の管理が大変(信託口口座による管理)

3. 委託者への報告を怠っているケースが多い

4. 税務署に対する報告ができていないケースが多い

5. どこからクレームが来るのか

6. 家族信託に対する誤解や過信

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

1. 家族信託の概要


 家族信託とは、委託者(通常は親)が受託者(通常は子供)に財産を信託し、将来、委託者が認知症などで判断能力を失った場合でも、信託契約に基づいて財産を管理・運用する仕組みです。

 この制度は、特に高齢者の認知症対策として広く利用されていました。

 信託契約によって、受託者が委託者の代わりに財産を管理できるため、親族間の紛争を防ぐことが期待されていました。

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

2. 受託財産の管理が大変(信託口口座による管理)


 家族信託の利用が減少している理由の一つとして、受託財産の管理の煩雑さが挙げられます。信託財産を管理するためには、信託専用の口座(信託口口座)を開設する必要がありますが、金融機関によってはこの信託口口座を開設してくれない場合があります。

 このような場合、受託者は信託財産の管理が難しくなり、管理業務が大きな負担となります。特に高齢の受託者にとっては、この管理作業が複雑で負担が大きいため、家族信託の利用を敬遠する要因となっています。

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

3. 委託者への報告を怠っているケースが多い


 信託契約では、受託者が委託者に対して定期的に財産の管理状況を報告する義務がありますが、現実にはこれが十分に行われていないケースが多いです。家族間での信頼関係があるために、受託者が報告を怠りがちで、信託の透明性が損なわれるリスクがあります。

 このような状況では、信託が適切に機能していないと見なされる可能性があり、家族信託の効果が十分に発揮されないことがあります。


4. 税務署に対する報告ができていないケースが多い


 家族信託を利用する場合、信託財産に関する税務申告が必要ですが、多くの受託者がこの義務を十分に理解していません。そのため、確定申告時に信託財産を正しく申告できていないケースが多く見られます。

 税務署への報告が不十分な場合、後に税務署から指摘を受けたり、追徴課税が発生したりするリスクがあります。信託財産が大規模であるほど、税務管理が重要となり、適切な申告がなされていないことで、信託制度全体の信頼性が損なわれる結果となっています。


5. どこからクレームが来るのか


 家族信託は、委託者と受託者の間で締結される契約ですが、管理される財産は最終的に相続人の遺産となります。そのため、他の相続人が受託者の管理方法に疑義を抱いた場合、クレームが発生することが多くあります。

 特に信託財産が大きい場合や、相続人間で利害関係が複雑な場合には、これが紛争に発展することもあります。受託者が信託の内容を適切に管理し、透明性を確保していないと、家族間の関係が悪化するリスクが増加します。

(論点)家族信託が利用されなくなってきた理由

6. 家族信託に対する誤解や過信


 家族信託が普及し始めた当初、一部の専門家や業者が「家族信託を利用すれば、後見制度は不要になる」といった誤った情報を提供していたケースがありました。

 しかし、家族信託と後見制度は異なる制度であり、家族信託を利用しても後見制度が不要になるわけではありません。このような誤解が広まった結果、家族信託に対する過信が生まれ、制度の限界に直面する利用者が増えました。

 これにより、家族信託の利用が見直され、結果として利用者が減少する要因となっています。


 これらの理由により、最近では家族信託の利用が減少しています。

 家族信託は有用な制度ですが、その管理の煩雑さや税務管理の重要性、そして相続人間の関係に注意しながら慎重に利用することが求められます。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

 連れ子に相続権はあるのか?また、連れ子を養子にする意味について解説しています。

 また、この場合、あなたが亡くなるまでに残された家族にすべき手続きについてもお話をしています。


目次


1. 連れ子の相続権について

2. 養子縁組した場合の相続権

3. 例外的な取り扱い

4. 養子縁組して相続権はあるが、あなたがしておくべき手続

5. まとめ

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

1. 連れ子の相続権について


 日本の民法において、連れ子とは一方の親が再婚相手との間にできた子供ではなく、前配偶者との間に生まれた子供を指します。

 連れ子は再婚相手と血縁関係がないため、法定相続人には含まれません。

 すなわち、再婚相手が亡くなった場合、連れ子には相続権がありません

 これは民法第887条に基づいており、法定相続人は配偶者と血縁関係にある子供に限られるからです。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

2. 養子縁組した場合の相続権


 しかし、連れ子を再婚相手が養子縁組した場合、その法的地位は大きく変わります。養子縁組が成立すると、連れ子は法律上の「子」となり、再婚相手との間に法的な親子関係が生じます。

 この結果、養子は再婚相手の法定相続人として認められ、実子と同等の相続権を有します。つまり、養子縁組によって、連れ子は再婚相手の相続財産を相続する権利を持つことになります。

 具体的には、再婚相手が亡くなった場合、その相続人は配偶者と子供(養子を含む)となります。もし配偶者と養子が相続する場合、相続分は民法の規定により、配偶者が1/2、養子が1/2となります(他に相続人がいない場合)。


3. 例外的な取り扱い


 ただし、養子縁組後の相続においても、養子縁組が形式的に行われた場合、つまり相続対策としてのみ行われ、実質的な親子関係がない場合には、裁判所が養子縁組を無効と判断することがあります。このような場合、相続権が否定される可能性もあります。

 また、養子縁組した連れ子が他の兄弟姉妹と共同で相続する場合、遺産分割協議において、遺留分や相続分の取り決めが必要となります。遺留分は、法定相続人が最低限相続できる割合であり、養子縁組が行われたとしても、他の相続人との間で相続分が調整されることがあります。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

4. 養子縁組して相続権はあるが、あなたがしておくべき手続


 あなたが仮に亡くなり、相続が発生した場合について考えてみましょう。

 確かに養子縁組した連れ子の方には、相続権は発生しています。遺産の分割協議をすることになりますが、この協議は相続人全員の参加が必要です。

 もし、再婚前のあなたの前妻との間にお子様がいる場合、このお子様も相続人となり、協議に参加して署名、実印による押印、印鑑証明書の提供がなければ、遺産分割協議は成立しません。

 果たして、前妻との間の子供が、気持ちよく協議に参加してもらえるような関係が構築できているならいいのですが、そうでない場合、協議は難航します。


 相続発生時の遺産分割協議という負担を残された家族に残さないためにも、「遺言書」(できれば公正証書遺言)の作成をアドバイスしております。このような状況にある方は、年齢に関係なく公正証書遺言を作成しておくことがいいと思います。人間いつ亡くなるか誰にもわかりませんからね。

(論点)連れ子の相続権について、及び養子縁組した場合の相続権

5. まとめ


 連れ子は再婚相手と養子縁組をしない限り、再婚相手の相続権を持ちません。しかし、養子縁組を行うことで、連れ子は法定相続人として認められ、実子と同等の相続権を持つことになります。このため、再婚家庭においては、将来的な相続問題を見据えた上で、養子縁組を検討することが重要です。

 また、養子縁組後の相続においては、他の相続人との間で適切な調整を行う必要があります。これらの法律的な側面を十分に理解し、適切な手続きを行うことが、家庭内の円満な相続を実現するために不可欠です。


 また、相続発生時のことも考慮して、早めに遺言書の作成をしておくことをお勧めしております。遺留分の問題もあるじゃないかと言われるかもしれませんが、遺留分は遺産の帰属先が決まったのちの話で、相手方が請求してくるものです。遺産の帰属先が遺産分割協議をするまで共有という状態ではありません。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応


 近年、空き家物件に対する火災保険料が大幅に値上がりしています。この動向は、保険会社が空き家をリスクが高いと評価し、損害発生の可能性を考慮して保険料を見直しているためです。特に、火災や自然災害による損害のリスクが高まっている地域では、保険料の上昇が顕著です。これにより、多くの空き家所有者が保険の継続を迷う状況に立たされています。

 では、火災保険を続けるべきか、それとも辞めるべきかを検討してみましょう。


目次


1.火災保険の必要性

2.保険料の負担

3.保険を辞めるリスク

4.保険の継続を検討する場合

5.保険を辞める場合の対応策

6.結論

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

1.火災保険の必要性


 空き家でも火災保険が必要な理由は明確です。

 まず、火災のリスクは空き家であっても存在します。空き家は、長期間の無人状態が続くため、火災が発生しても発見が遅れることが多く、その結果、被害が拡大しやすいです。

 また、空き家が放火や不審火の標的になりやすいことも考慮すべきです。

 さらに、隣接する物件に被害が及んだ場合、その賠償責任を負う可能性があるため、火災保険はリスク管理の重要な手段です。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

2.保険料の負担


 一方で、保険料の負担は無視できません。空き家物件に対する保険料が値上がりすると、所有者にとって経済的な負担が増すことになります。特に、物件が収益を生まない場合、その維持費や税金に加えて保険料の負担が重くのしかかります。そのため、経済的な観点から火災保険の継続を見直すことも一案です。


3.保険を辞めるリスク


 しかし、火災保険を辞めることにはリスクが伴います。前述の通り、火災や自然災害が発生した場合、保険がなければ全ての損害を自己負担することになります。また、隣接物件への被害が発生した場合、その賠償も自己負担となり、大きな経済的打撃を受ける可能性があります。さらに、空き家を売却する際、火災保険がかけられていない物件は購入希望者にとってリスクが高いと判断され、売却が難しくなることも考えられます。


4.保険の継続を検討する場合


 火災保険を継続する場合、保険料の節約方法を検討することが重要です。

 例えば、保険会社によっては、一定の条件を満たすことで保険料の割引が適用されることがあります。防犯対策を強化し、定期的な点検を行うことで、リスクを軽減し、保険料の引き下げが可能な場合もあります。

 また、保険の見直しを行い、補償内容を必要最低限に調整することも一つの方法です。


5.保険を辞める場合の対応策


 もし火災保険を辞めることを検討する場合は、代替策を考えることが不可欠です。例えば、空き家を管理するための管理会社を利用し、定期的な点検や清掃を行うことで、火災リスクを軽減できます。

 また、空き家を賃貸物件として活用し、収益を得ながら維持費を賄うことも一つの選択肢です。さらに、空き家の売却を検討する場合には、保険を辞める前に市場の動向をよく調査し、売却時期や価格を見極めることが重要です。


 できれば、保険額を下げてでも、火災保険を継続したほうがいいかもしれません。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

2.保険料の負担


 一方で、保険料の負担は無視できません。空き家物件に対する保険料が値上がりすると、所有者にとって経済的な負担が増すことになります。特に、物件が収益を生まない場合、その維持費や税金に加えて保険料の負担が重くのしかかります。そのため、経済的な観点から火災保険の継続を見直すことも一案です。


3.保険を辞めるリスク


 しかし、火災保険を辞めることにはリスクが伴います。前述の通り、火災や自然災害が発生した場合、保険がなければ全ての損害を自己負担することになります。また、隣接物件への被害が発生した場合、その賠償も自己負担となり、大きな経済的打撃を受ける可能性があります。さらに、空き家を売却する際、火災保険がかけられていない物件は購入希望者にとってリスクが高いと判断され、売却が難しくなることも考えられます。


4.保険の継続を検討する場合


 火災保険を継続する場合、保険料の節約方法を検討することが重要です。

 例えば、保険会社によっては、一定の条件を満たすことで保険料の割引が適用されることがあります。防犯対策を強化し、定期的な点検を行うことで、リスクを軽減し、保険料の引き下げが可能な場合もあります。

 また、保険の見直しを行い、補償内容を必要最低限に調整することも一つの方法です。


5.保険を辞める場合の対応策


 もし火災保険を辞めることを検討する場合は、代替策を考えることが不可欠です。例えば、空き家を管理するための管理会社を利用し、定期的な点検や清掃を行うことで、火災リスクを軽減できます。

 また、空き家を賃貸物件として活用し、収益を得ながら維持費を賄うことも一つの選択肢です。さらに、空き家の売却を検討する場合には、保険を辞める前に市場の動向をよく調査し、売却時期や価格を見極めることが重要です。


 できれば、保険額を下げてでも、火災保険を継続したほうがいいかもしれません。

(論点)空き家物件の火災保険料の値上がりと今後の対応

6.結論


 空き家物件の火災保険料の値上がりに直面した場合、その継続か解約かを慎重に検討する必要があります。経済的な負担とリスクを天秤にかけ、自身の状況に最も適した選択をすることが求められます。

 保険の継続が最善と判断した場合は、保険料の節約策を講じ、逆に辞める場合は代替策をしっかりと計画することが重要です。

(論点)所有不動産記録証明制度について

(論点)所有不動産記録証明制度について

「所有不動産記録証明制度」は、不動産登記名義人の住所と氏名から、その名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。 

 被相続人(以下、亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。つまり、不動産の全国規模の「名寄せ」が可能になるということです。


目次


1. 所有不動産記録証明制度の開始時期

2. 遺産である不動産の調査におけるメリット

3. おわりに

(論点)所有不動産記録証明制度について

1. 所有不動産記録証明制度の開始時期


 所有不動産記録証明制度は、2026年2月に正式に導入される予定です。この制度は、不動産登記名義人の住所と氏名から、その名義人が所有している不動産を全国的に一括して調査し、所有不動産記録証明書というリストで証明する制度です。 

 被相続人(以下、亡くなった人)名義の不動産だけでなく、存命の名義人や法人名義の不動産も調査できます。つまり、不動産の全国規模の「名寄せ」が可能になる問うことです。

(論点)所有不動産記録証明制度について

2. 遺産である不動産の調査におけるメリット


所有不動産記録証明制度は、特に相続の際における不動産調査において、多くのメリットをもたらします。以下にその主要な利点をまとめます。


(a) 情報の一元管理とアクセスの容易化


 現行制度では、不動産の所有権情報は各地の法務局で管理されていますが、所有不動産記録証明制度では、全国の不動産情報が一元的にデジタル管理されます。これにより、相続人や司法書士が必要な情報に迅速にアクセスできるようになります。例えば、相続発生後、相続人が所有している不動産を調査する際に、複数の法務局を訪れる必要がなくなり、一度の手続きで全国の不動産情報を確認することができます


(b) 所有権の確認とトラブル防止


 相続における不動産の所有権確認は、時に複雑で時間がかかる作業です。特に、相続人が多数存在する場合や、長期間にわたり相続手続きが行われていなかった場合、不動産の所有者が特定できないことが問題となります。しかし、所有不動産記録証明制度の導入により、所有者情報が一元管理されるため、相続不動産の所有者確認が迅速かつ正確に行えます。これにより、相続人間のトラブルや誤解を未然に防ぐことができます。そもそも、遺産の不動産が漏れてしまった場合、相続登記義務化に抵触する可能性が出てしまいます。


(c) 遺産分割協議の円滑化


 相続人が遺産分割協議を行う際、不動産の評価額や所有状況を正確に把握することが重要です。所有不動産記録証明制度により、各不動産の最新の評価額や所有権の変遷が明確になるため、遺産分割協議がスムーズに進められるようになります。また、この制度は、第三者による不正な所有権移転を防止する効果もあり、相続人が安心して協議を進められる環境が整います。


(d) コストと時間の節約


 所有不動産記録証明制度の導入により、相続に関連する調査や手続きに要するコストや時間が大幅に削減されることが期待されます。従来の手続きでは、不動産の所有者確認や評価額の算定に多大な労力と費用がかかっていましたが、この制度により、一元的に必要な情報が取得できるため、これらの負担が軽減されます。特に、相続税申告に際しては、正確な不動産評価額の算定が求められるため、この制度は相続人にとって大きな助けとなるでしょう。


※現状、固定資産税の請求通知書が来ている場合には、遺産の不動産を確認することができますが、固定資産税の課税対象とならない価値の低い不動産の場合、通知書には載ってこないために、役場が発行する「名寄帳」または「固定資産税評価証明書」を確認する必要がありました。しかし、これらの証明書も役場単位ですので、全国規模で確認する方法ができますので、相続登記の際に、漏れが無くなることが期待できます。

(論点)所有不動産記録証明制度について

3. おわりに


 所有不動産記録証明制度は、相続における不動産調査の効率化と正確性向上を図るための重要な制度です。

 この制度の導入により、相続手続きの円滑化、トラブルの防止、コストの削減が期待されており、相続人や司法書士にとって非常に有益なツールとなるでしょう。

 2026年の導入を前に、関係者は制度の詳細や運用方法について十分に理解し、備えておくことが重要です。


(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

会社の経営者にとって、相続対策は重要な課題です。

特に、自社株式が相続の対象となる場合、その株式の評価額が相続税に大きな影響を与えることは避けられません。そのため、適切な相続対策を講じるためには、会社の資産価値を正確に把握することが必要です。

その一環として、決算時における一株当たりの価値を調べておくことが重要なステップとなります。


目次


1. 一株当たりの価値の重要性

2. 決算時における価値の把握

3. 生前対策のための準備

4. 税務リスクの軽減

5. 専門家の活用

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

1. 一株当たりの価値の重要性


 会社の一株当たりの価値は、会社の純資産を株式総数で割ることで算出されます。この数値は、会社の財務状況や経営状態を反映したものであり、相続時において非常に重要な役割を果たします。

 特に、中小企業の経営者にとって、自社株の評価は、相続税の計算基準となるため、適切なタイミングでこの価値を把握しておくことが求められます。が、その概要すらわかっていない状態で、いざ相続が発生した場合、相続税がいくらになるのかさっぱりわかりません。

 そうならないように、決算時に顧問の税理士先生にお願いをして、会社の一株当たりの資産額を概算でもらっておくとよいでしょう。

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

2. 決算時における価値の把握


 会社の一株当たりの価値は、決算時に最も正確に把握できます。決算時は、会社の収支や資産、負債が明確に整理され、会社の純資産が確定する時期です。

 このタイミングで一株当たりの価値を計算することで、相続対策や事業承継の際に活用できる正確なデータが得られます。

 また、決算書を基に評価を行うことで、税務当局に対しても透明性のある説明が可能になります。


3. 生前対策のための準備


 会社の一株当たりの価値を把握しておくことで、生前に相続対策を講じる際の準備が整います。

 例えば、株式の分散や生前贈与を検討する際には、株式の現在の価値を基に具体的な計画を立てることができます。

 また、事業承継においては、後継者に対する株式の移転をスムーズに行うための基礎資料として役立ちます。

 さらに、会社の将来価値を見据えた対策を講じることで、相続発生時における相続人の負担を軽減することが可能です。


4. 税務リスクの軽減


 決算時に一株当たりの価値を把握し、それに基づいて相続対策を行うことで、税務リスクを軽減することができます。

 相続税の評価額が不確定な状態で放置されると、相続時に予想外の高額な税負担が発生する可能性があります。

 しかし、決算時の正確なデータを基に対策を講じておけば、相続税の負担を抑え、予測可能な範囲で税務対応を行うことができます。

 また、これにより、税務調査などのリスクも軽減されます。

(論点)経営者の皆様、相続対策できていますか

5. 専門家の活用


 会社の一株当たりの価値を正確に把握し、適切な相続対策を講じるためには、専門家の協力が不可欠です。税理士や会計士、司法書士などの専門家に相談することで、会社の財務状況や法的リスクを総合的に評価し、最適な相続対策を策定することができます。

 特に、自社株の評価は複雑なプロセスを伴うため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいです。

 会社の資産価値を正確に把握し、適切な相続対策を講じることは、経営者にとって重要な責務です。

 決算時における一株当たりの価値の把握は、そのための基礎となるステップであり、将来の事業承継や相続税対策を成功させるために欠かせない要素です。

 経営者の皆様には、この重要性を理解し、早めに準備を進めることを強くお勧めします。

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

遺言書作成は、財産や相続人に対する思いを形にする大切な手続きですが、その前に考慮すべき重要なステップがあります。これらのステップをしっかりと踏むことで、遺言書がより確実に、自分の意志を反映し、後々のトラブルを避けるためのものとなります。財産の把握と整理が必要です。自分が所有する財産を正確に把握し、それが現金、預金、不動産、有価証券、貴金属、家財、その他の財産にどのように分かれるかを整理することが重要です。また、負債がある場合にはその内容も把握し、遺言書に反映させるべきです。これにより、相続人が財産の内容を正確に理解でき、相続手続きがスムーズに進む基盤を築けます。


目次


1. 財産の把握と整理

2. 相続人の確認と整理

3. 遺言執行者の選定

4. 税務面での影響の確認

5. 専門家への相談

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

1. 財産の把握と整理


 遺言書を作成する前に、まず自身の財産を把握し整理することが重要です。現金や預金、不動産、有価証券、貴金属、家財など、所有する財産がどのように分かれているのかを明確にしましょう。また、負債がある場合にはその内容も正確に把握し、相続時にどのように処理されるべきかを考慮する必要があります。これにより、相続人が財産の全体像を理解し、後々のトラブルを防ぐための基盤が整います。


 ただし、自身の預金口座が日本国内で点在していたり、所有不動産も行政単位を超えて点在する場合など、把握することが困難なケースもありましたが、次第に手続きがしやすいような方向に進んでいるといえます。今までにできている財産調査等の仕組みと、今後できる財産調査等の仕組みについてまとめてみました。


①生命保険契約照会制度(既に稼働)

➁戸籍取得の広域制度(令和6年3月より稼働)

③預貯金口座検索(令和7年4月より開始予定)

④不動産の全国規模の名寄せ(令和8年2月より開始予定)

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

2. 相続人の確認と整理


 次に、相続人を確認し整理することが必要です。法定相続人だけでなく、特定の人物に財産を譲りたい場合もあるかもしれません。家族構成や各相続人の事情を考慮し、誰にどのように財産を分配するかを明確にすることが重要です。この段階でしっかりと整理しておくことで、遺言書の内容が具体的かつ公平なものとなり、相続トラブルを避けることができます。


3. 遺言執行者の選定


 遺言書に記載された内容を実行するためには、遺言執行者の選定が必要です。遺言執行者は、遺言の内容に従って手続きを進める責任を負う人物です。信頼できる家族や友人、もしくは専門家を選ぶことで、遺言書の内容が確実に実行されることを保証できます。


 私の場合、財産を受け取る方を遺言執行者として指定するようにしております。遺言執行者は、亡くなった被相続人の本人の地位で法律行為を行うことになります。そして、自信でできない内容については、専門家に委任すべきと考えるためです。専門家を遺言執行者にしてしまいますと、本人の立場での手続きということになってしまいます。


4. 税務面での影響の確認


 遺言書を作成する前に、税務面での影響を十分に考慮することも大切です。相続税や贈与税が課税される財産の種類や評価額を確認し、相続税対策を検討する必要があります。生前贈与や生命保険の活用、納税資金の確保など、税金に関連する計画を立てることで、相続人の負担を軽減することができます。この段階で適切な対策を講じておくことが、後のトラブル回避に繋がります。生前対策を十分に講じることも重要ですが、いざ相続が発生した場合、不動産を引き受けた相続人には、相続税を支払う際のキャッシュが不足する可能性もあります。こういったことも考慮しつつ、固定資産⇒流動資産について、税理士の先生を交えて対応するようにしております。

(論点)遺言書作成する前に必要なこと

5. 専門家への相談


 遺言書作成にあたり、司法書士や弁護士、税理士などの専門家への相談を検討することが重要です。法律的な観点や税務上のリスクを正確に理解し、適切なアドバイスを受けることで、遺言書が法的に有効であることを確認できます。特に、財産が多岐にわたる場合や家族関係が複雑な場合には、専門家の意見を取り入れることが推奨されます。税理士と司法書士が同じ相談会に参加する相続法律・税務無料相談会を月一で実施しております。


 これらのステップを踏むことで、遺言書が自身の意志を確実に反映し、円満な相続を実現するためのものとなります。最後に重要なことは、残される相続人とのコミュニケーションです。「みんな仲がいい」と思っていても、それはあなたという存在があるからかもしれません。あなたという存在が亡くなった場合に、「みんな仲がいい」状態になるとは限りませんからね。

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

相談業務を行っている際、未だに「相続放棄」と「財産放棄」という言葉を混同して使われている方がいらっしゃいます。相続放棄の手続きは、家庭裁判所に申述をして受理の可否を行います。当然、相続登記にこの時に家庭裁判所から発行される「証明書」の添付を要求されます。それでは、相続放棄者がいる場合の相続登記について、解説していきたいと思います。


目次


1.相続放棄者がいる場合の添付書類


2.限定承認を特定の相続人が行い、他の相続人が相続放棄をしている場合


3.相続放棄と持分放棄について

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

1.相続放棄者がいる場合の添付書類


 家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書を相続証明情報の一部として添付します。


 「相続放棄申述受理証明書」以外の書類を添付することの可否について以下に指名します。


 ①相続放棄者、その他の相続人が作成した相続放棄証明書は、相続証明情報とはなりえない。

  ※相続放棄は家庭裁判所に対する要式行為だからである。

 ➁相続放棄順術受理通知書を相続証明情報とすることはできない。(登研720号)※後に変更

 ③相続を原因とする所有権の移転登記の申請において、相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載された「相続放棄等の申述有無についての紹介に対する家庭裁判所からの回答書」や「相続放棄申述受理通知書」を登記原因を証する情報の私費部とすることができる。(登研808号)


  ※これにより、登研720号の取り扱いは変更になっています

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

2.限定承認を特定の相続人が行い、他の相続人が相続放棄をしている場合


「相続が開始した場合,相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。


①相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ単純承認

➁相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない相続放棄

③被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ限定承認」


このうち、限定承認の申述は、相続人全員で行う必要があります。


共同相続人のうち特定の相続人が限定承認を行い、他の共同相続人は相続の放棄を行った場合において、その相続登記の申請の添付情報として、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本及び限定承認をした旨を証する家庭裁判所の限定承認受理証明書のほかに、相続人を確定するために筆応となる戸籍謄本又は除籍謄本及び相続放棄をした者に係る相続放棄を証する家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書の提供が必要となる。(登研699号)


家庭裁判所は限定承認の申述がされたときは、相続人を確定するために必要な戸籍謄本又は除籍謄本及び相続放棄申述受理証明書の提出を受け、これにより相続人となるべき者を確定し、相続人全員による限定承認の申述であることを確認したうえで、受理の審判を行うことになるが、後日相続放棄の取り消し等により、限定承認の効力が覆されていることもあり得ることから、登記官が登記の申請時において、改めて限定承認が相続人全員によりなされたものであることを確認する必要があるために、再提出させ判断をしている。

(論点)相続放棄者がいる場合の相続登記

3.相続放棄と持分放棄について


 共同相続人甲乙丙のうち、乙丙の「自分たちは遺産分割協議によって金銭の分配を受けたので、相続財産である不動産に関する持ち分は放棄する。」旨の持分放棄証明書を添付してされた、こう単独名義の相続登記申請は受理されない。(昭28.4.25民甲697号)


※持分放棄もしくは財産放棄という呼称で、相談の中でも話される方がいらっしゃいますが、相続そのものを放棄する場合は「家庭裁判所の手続きによる相続放棄」をすべきですし、特定財産をもらった代わりに不動産の持分を放棄するのであれば「相続人全員による遺産分割協議書」によるべきです。

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

相続手続きにおける「相続人の確定」は、相続財産の分配や手続きを進める上で最も重要なプロセスの一つです。このプロセスでは、通常、相続人の身分を証明するために戸籍謄本や除籍謄本が提出されます。しかし、戦災や自然災害などの理由でこれらの書類が提出できない場合、どのように相続人を確定させるかが問題となります。この点に関する取り扱いについて、昭和44年3月3日付けの民甲373号通達と平成28年3月11日付けの民二219号通達での変更点を踏まえ、以下に整理します。


目次


1. (昭44.3.3民甲373号)の取り扱い


2. 平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点


3. まとめ

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

1. (昭44.3.3民甲373号)の取り扱い


 昭和44年の民甲373号通達では、戸籍や除籍が提出できない場合の相続手続きに関する取り扱いが定められていました。この通達は、主に以下のような状況に対応するために発出されました。


 まず、戦災や災害によって戸籍が焼失した場合や、長期間にわたり戸籍が適切に保管されていなかった結果、必要な戸籍や除籍を提出できない場合がありました。このような状況下では、相続人の確定が難しくなるため、民甲373号通達では、相続人全員による「他に相続人はいないことの証明書」の提出が要求されていました。


2. 平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点


 平成28年の民二219号通達では、昭和44年の取り扱いを見直し、相続人の確定に関する取り扱いが緩和されました。主な変更点は以下の通りです。


 まず、戸籍や除籍が提出できない場合、相続人の確定に関する調査を行い、すでに滅失している戸籍等については、行政が発行する「滅失証明書」に添付を従来通り求めることは引き続き必要です。


 また、特に戦災や災害により戸籍が消失している場合でも、可能な限りの資料を収集し、それらを基に相続人を確定することが求められるようになりました。このように、平成28年の通達では、相続人全員による証明書の提供が不要となりました。これは、昭和44年の回答からすでに50年が経過しており、相続人全員の同意を得ることが困難な事案が増加していることを鑑み、相続人全員の同意書及び印鑑証明書の添付がなくても、除籍等の滅失証明書等の行政機関の証明書があれば、相続登記は受理されるとされました。

(論点)除籍等の滅失等についての相続登記の添付情報について

3. まとめ


①昭和44年3月3日付け(昭44.3.3民甲373号)の取り扱い


昭和44年の民甲373号通達では、戦災や災害によって戸籍や除籍が焼失し、これらを提出できない場合に対応するための取り扱いが定められていました。この通達では、相続人の確定が難しい場合、相続人全員による「他に相続人はいないことの証明書」の提出が求められ、相続手続きを進めるための証拠とされていました。


➁平成28年3月11日付け(平28.3.11民二219号)での変更点


平成28年の民二219号通達では、昭和44年の取り扱いが見直され、相続人の確定に関する手続きが緩和されました。具体的には、相続人全員による証明書の提供が不要となり、行政機関が発行する「滅失証明書」などの証明書があれば、相続登記が受理されるようになりました。この変更は、相続人全員の同意を得ることが困難な事案が増加したことを考慮したもので、滅失した戸籍に代わる証明手段が整備されたことにより、相続手続きがより円滑に進められるようになりました。

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

生存配偶者が姻族関係終了の意思表示を行うと、亡くなった配偶者の親族(姻族)との法律上の関係を解消できます。これにより、扶養義務などに関する権利が消滅し、心理的・社会的負担も軽減されます。手続きは市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで行い、慎重な判断が求められます。


目次


1. 姻族関係とは


2. 姻族関係終了の意思表示の意義


3. 効果の概要


4. 手続きの流れと注意点


5. 結論

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

1. 姻族関係とは


 姻族関係とは、結婚によって配偶者を通じて形成される親族関係を指します。具体的には、夫や妻の親や兄弟姉妹、そしてその配偶者などが姻族に該当します。姻族は、日本の民法上、配偶者とともに家族として扱われる存在であり、法律上の権利や義務が発生することがあります。例えば、扶養義務や相続に関する権利などが姻族に関する法律的な関係です。


 しかし、姻族関係は血縁による親族関係とは異なり、結婚や死亡などの状況に応じて変化するものです。特に配偶者が死亡した場合、生存配偶者は姻族関係を維持するか、終了させるかを選択することができます。これを可能にするのが、民法第728条第2項に定められた「姻族関係終了の意思表示」です。


2. 姻族関係終了の意思表示の意義


 姻族関係終了の意思表示は、配偶者が死亡した後に残された生存配偶者が、配偶者の親族(姻族)との法律上の関係を終了させるための手続きです。この意思表示により、生存配偶者は法律的に姻族との関係を解消し、その後は法的な親族関係として扱われなくなります。

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

3. 効果の概要


 姻族関係終了の意思表示を行うことにより、生存配偶者は以下の効果を得ることができます。


①法律上の親族関係の終了

姻族関係が終了すると、姻族とは法律上の親族関係が消滅します。これにより、姻族に対する扶養義務や相続に関する権利が消滅し、法律的な負担や義務が軽減されます。特に、配偶者の親や兄弟姉妹に対する扶養義務が解消されることは、生存配偶者にとって重要な効果です。


➁相続関係の明確化

姻族関係が終了することで、相続における権利関係が明確になります。姻族との関係が続く場合、複雑な相続問題が生じる可能性がありますが、関係を終了させることで、生存配偶者が自らの財産を守りやすくなります。これにより、将来的な相続争いを防ぐ効果も期待できます。

※ただし、子供がすでにいる場合ですと、その子供が相続人となるケースが存在します。


③感情的・心理的な安定

配偶者の死後、姻族との関係が負担となることがあります。特に、義父母や義兄弟姉妹との関係が緊張している場合、関係の継続は生存配偶者にとって大きな精神的ストレスとなり得ます。姻族関係を終了させることで、これらの感情的負担を軽減し、新たな生活を始めやすくなります。


④社会的な義務の軽減

姻族関係が続く場合、法事や冠婚葬祭などの社会的義務が生存配偶者に課されることがあります。これらの義務が生存配偶者にとって負担となる場合、姻族関係の終了により、これらの義務から解放されることが可能です。これにより、社会的なストレスや負担を軽減することができます。


4. 手続きの流れと注意点


 姻族関係終了の意思表示は、市町村役場に「姻族関係終了届」を提出することで行います。この手続きにより、戸籍に記載され、法的な効力が発生します。意思表示は配偶者の死亡後、随時行うことができ、特に相続や扶養義務の整理を考慮したうえで、速やかに手続きを進めることが望ましいです。


 ただし、姻族関係終了の意思表示を行った場合、その後、再び姻族と法律上の関係を結ぶことはできません。また、この意思表示が義父母や他の姻族に与える感情的な影響も無視できません。慎重な判断とともに、家族間の感情や関係性を考慮することが重要です。

(論点)生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をすることで得られる効果

5. 結論


 生存配偶者が姻族関係終了の意思表示を行うことで、法律的な義務や権利から解放され、相続関係の整理や感情的な負担を軽減することができます。この手続きは、生存配偶者が配偶者の死後、新たな人生を歩むための一助となりますが、その影響と慎重な判断が求められます。法律的な効果に加え、家族や姻族との感情的な側面も含めて総合的に判断することが大切です。

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

相続の際、相続放棄の話の中で、「もう相続放棄の手続きをしたのだから、今回の相続放棄も大丈夫ですよね。」とおっしゃられる方がいますが、実は、相続放棄は各被相続人毎にしなければなりません。また、未成年者を相続放棄をする場合には、親権者が法定代理人として相続放棄手続きをすることになりますが、「利益相反行為」を考慮に入れる必要性がります。その他注意点について述べたいと思います。


目次


1.代襲相続した相続人の一人が死亡した場合


2.未認知の非嫡出子が父親の養子になっていた場合


3.親権者が親権に復する子を代理して相続放棄手続きをする場合

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

1.代襲相続した相続人の一人が死亡した場合


 祖父甲が亡くなる前に、父親である乙がすでに亡くなっていたため、乙の子供A、B、Cについて、甲の相続につき代襲相続が発生しています。甲には多額の借金があったためにB、Cは相続放棄手続きを行ったが、Aは相続発生時入院しており手続きができなかった。その後、B、Cの相続放棄手続受理されたのち、Aが死亡した。Aは生涯独身であった。


 このケースの場合、B、Cの甲に対する相続放棄の効力が、Aの相続についても及ぶのかどうかという点です。


 結論は、BCは甲の死亡で開始した相続権を放棄しても、Aの相続で開始した相続権を放棄したことにはならない。(登研384号)


 甲の相続権は、BCは相続放棄しているのでAが承継することになります。そして、Aが死亡したことで、相続の第3順位の兄弟姉妹に相続権が移ることになりますが、甲の相続権+Aの相続権の状態になっていますが、甲の相続権はAが引き受けている状態ですので、当然、Aの債権債務すべてを承継することになると考えられます。そのため、BCはAの相続について放棄する手続きを期間内に実施する必要があります。


※今回の事例では、BCが相続放棄をすることで新たに相続人が発生することはありませんが、新たに相続人になる方が出てくる場合には、一連の流れを一報入れて頂くようにお願いをしております。不意打ちでは、その次の手続きの際に協力していただけなる可能性が出てきますからね。


2.未認知の非嫡出子が父親の養子になっていた場合


 未認知の非嫡出子が父親の養子になっていたが、養子として相続放棄手続きをしました。その後、死後認知の裁判が確定した場合、非嫡出子としての相続権も取得しない。(昭48.8.5第2688号)養子という法律上子供としての地位を有していたのに相続を放棄しているため、その後、裁判で死後認知が確定しても、相続権は復活しないというものです。


(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

3.親権者が親権に復する子を代理して相続放棄手続きをする場合


 この場合、親権者である親が同一の相続において相続権を持っているかどうかで見ていきます。相続権を持つ場合には、「利益相反行為」となりますので、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。


 同一の相続で相続権を持たない場合には、利益相反行為とはなりません。また、同一の相続で相続権を有する場合でも、利益相反とはならないケースが存在します。


 それが「親権者がその親権に復する子を代理して相続放棄をする場合でも、親権者がすでに相続放棄をしているか、又は子と同時に相続放棄をするときは、子を代理してした相続放棄は利益相反行為には該当しません。(最判昭53.2.24)

(論点)相続人の確定について(相続放棄のタイミング)

4.その他、関連事項


 ①生存配偶者が姻族関係終了の意思表示をして、市町村長に届出をしても、その者の相続権は奪われない。(登研406号)


 ➁胎児は相続放棄できない。(昭36.2.20法曹会議決議)


 ③相続放棄を証する情報から、受理新お案の日の前日に申述人の一人が死亡していることが認められる場合でも、当該相続登記は受理される。(昭47.5.2第1776号)


  ※相続放棄申述の時点で生存していれば、その申述は有効だから。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

ここでは、一般的な法定相続人の確定ではなく、レアケースとはなりますが、血族相続人の地位を有している養子、配偶者相続人の地位を有している養子のケースや、二重の相続資格者の相続放棄についての先例について解説をいたします。ポイントは、二重の地位について、法定相続分を双方もらえるのか、片方だけなのかという点と、二重の地位の片方だけ相続放棄ができるのかどうかという点になってくると思います。


目次


1.血族相続人の資格を有している場合の相続分

2.配偶者相続人の資格と結相続人の資格を有する場合の相続分

3.二重の相続資格者の相続放棄(事例1)

4.二重の相続資格者の相続放棄(事例2)

5.まとめ

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

1.血族相続人の資格を有している場合の相続分


 前提として父親 甲、母親 乙の子供 長男B、次男丙と丙の子A(甲からすると孫)がいます。甲の生前にAを甲の養子としていました。


 自己の孫であるAを養子としている行が死亡した場合、Aは、甲の養子として、また丙を代襲して2つの身分で相続分を取得することになる。(昭26.9.18民甲1881号)

 ここでのポイントは、代襲の孫としての地位と、養子としての地位、双方で相続分を取得できる点です。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

2.配偶者相続人の資格と結相続人の資格を有する場合の相続分


 下図において、Aは配偶者としての相続分のみを取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得できない。(昭23.8.9民甲2371号)


前回の孫と養子の関係と異なり、配偶者と養子(兄弟姉妹)では、配偶者の地位しか主張できないということです。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

3.二重の相続資格者の相続放棄(事例1)


 下図において、Bが養子として相続放棄をした時、Bが兄弟姉妹の立場で相続することができるかが問題となります。この場合には、兄弟姉妹としての相続権についても放棄の効果が及びます。(昭32.1.10民甲61号)


※相続放棄は単純明快である必要があり、血族相続人としての相続権の一部に対する放棄は認められないとして画一的処理を図る必要があるためであるとされています。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

4.二重の相続資格者の相続放棄(事例2)


 配偶者と妹としての祖王族人の資格を併有する者(配偶者とともに養子となる養子縁組をしているケース)から相続による所有権移転の登記が申請され、相続を証する情報として、戸(徐)関の謄本及び相続放棄申述受理証明書のほか、「配偶者として相続の放棄異をしたことを確認することができる相続放棄申述書の謄本及び妹としては総ぞ億の放棄をしていない旨記載された印鑑証明書付きの上申書が提供された場合」、配偶者としての相続の放棄の効果は、妹としての相続人の資格には及ばないものとして取り扱い、本件の申請を受理して差し支えない。(平27.9.2民二363号)


事例1では、「相続放棄は単純明快であるべき」としている一方で、相続放棄について相続人の地位を分けて考えているようにも見えます。一見、全く反しているように考えることもできますが、もう一方の相続人としての地位について、要件付きで受理しても差し支えないという取り扱いとなっています。

(論点)相続人の確定について(血族相続人、配偶者の養子縁組)

5.まとめ


 このように、相続人としての複数の地位を有する方たちの権利について、認められる範囲や、相続放棄などの意思表示をした際に、どこの範囲までの放棄をしたのかという点が非常に重要となってくることが解ると思います。


 ご自身のケースはどうなのかについては、今回のケースが当てはまらない場合には、専門家の相談を受けることをお勧めいたします。

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

相続において最も重要なステップの一つが、「相続人の確定」と「相続財産の確定」です。これらの手続きを適切に行うことで、後のトラブルを避け、スムーズな相続手続きを進めることが可能となります。専門家に相談する際に、専門家の立場からお話をすると、この2点が確定していない状態では、相続手続きを進めることはできません。無料相談で、時間を有効活用することができるようになります。


目次


1. 相続人の確定


2. 相続財産の確定


結論

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

1. 相続人の確定


a. 相続人とは?


 相続人とは、被相続人が亡くなった際に、その遺産を受け継ぐ権利を有する者を指します。相続人の範囲は民法で定められており、基本的には配偶者と血縁関係にある親族が該当します。具体的には、配偶者は常に相続人となり、これに加えて以下の順位で血縁者が相続人となります。


第一順位: 子(嫡出子、非嫡出子、養子を含む)

第二順位: 直系尊属(主に父母)

第三順位: 兄弟姉妹


相続人の確定は、これらの順位を確認することで行います。なお、第一順位に該当する相続人がいない場合にのみ、第二順位が相続人となり、さらに第二順位の相続人もいない場合に第三順位が相続人となります。


b. 相続人の特定


 相続人の特定作業には、戸籍謄本の取得が必要です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、全ての相続人を確認することが求められます。これにより、相続人の数やその相続割合を確定させます。


 また、注意すべき点として、相続人が養子である場合や、認知された子がいる場合は、追加の戸籍調査が必要になることがあります。さらに、被相続人が複数回結婚している場合は、前妻・前夫との間に生まれた子も相続人となるため、これらの状況も慎重に確認する必要があります。


c. 相続放棄と限定承認


 相続人の中には、相続を放棄する場合や限定承認を行う場合があります。相続放棄とは、全ての遺産を受け取らない意思を表明することで、家庭裁判所に申立てを行います。限定承認は、相続財産が負債を上回る場合に、その超過部分のみを承認する手続きです。これらの手続きを行うことで、相続人が負うリスクを軽減することができます。

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

2. 相続財産の確定


a. 相続財産とは?


 相続財産とは、被相続人が死亡時点で所有していた全ての財産を指します。これには、現金や預貯金、不動産、有価証券、車両などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金、ローンなどのマイナスの財産も含まれます。


b. 財産の調査方法


 相続財産を確定するためには、まず被相続人の財産の全体像を把握することが必要です。これには、銀行口座の取引履歴、不動産登記簿、保険証券、借入契約書などの書類を収集し、財産をリストアップします。また、被相続人が複数の銀行に口座を持っていた場合や、未公開の株式を所有していた場合など、財産の全容を確認するためには専門的な知識が必要となることもあります。


 さらに、被相続人が賃貸不動産を所有していた場合、賃貸借契約書を確認し、将来的な収益やリスクを考慮に入れる必要があります。この段階で、財産がどのように分配されるべきか、遺言が存在するかどうかも確認することが重要です。


c. 財産の評価と分割


 相続財産の評価は、現実的な市場価値に基づいて行う必要があります。不動産の評価には不動産鑑定士、株式や有価証券の評価には証券会社の専門家が関与することが一般的です。財産の評価が終わったら、相続人間で公平に分配する方法を検討します。遺産分割協議が必要な場合は、相続人全員が同意することが求められます。


d. 注意点と専門家の役割


 相続財産の確定は、法律や税務の知識が必要とされる複雑な作業です。特に相続税の申告期限は、被相続人が死亡してから10ヶ月以内であるため、早期の対応が求められます。相続財産の確定が難航する場合や、相続人間での争いが生じた場合は、司法書士や税理士、弁護士などの専門家に相談することが望ましいです。


※不動産だけに限って言えば、その年度の「固定資産税評価証明書」を取得することで、役場単位での不動産を特定することができます。令和6年4月1日より「相続登記義務化」が始まっています。毎年、固定資産材納税通知書の内容のみを相談時に持参される方がいらっしゃいますが、不動産に漏れがあった場合、再度相続登記をしなければならなくなってしまいます。相談時には、その年度の「固定資産税評価証明書」を取得するようにしてください。

(論点)相続手続きを始める前に確定すべきこと2選

結論


 「相続人の確定」と「相続財産の確定」は、相続手続きを円滑に進めるための基盤となる重要なプロセスです。これらのステップを確実に行うことで、相続に関するリスクやトラブルを最小限に抑え、相続人全員が納得できる形で遺産を受け継ぐことが可能になります。専門家の助けを借りながら、慎重に進めていくことが肝要です。

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

遺言書に全財産の半分を相続人Aに相続させ、残りの半分をXに贈与(遺贈)するとの記載がある場合、特に不動産の登記をする場合、各ケースごとに、どのような手続きになるのかについて解説をしたいと思います。また、これらを踏まえて、専門家に相談することに優位性についてもお話をしたいと思います。


目次


1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?


2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合


3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?


 「全財産の2分の1は相続人Aに相続させ、残りの2分の1はXに贈与する」旨の遺言書があった場合、「遺贈」で一部移転登記を申請した後、持分全部移転の相続登記を申請する(登研523号)。


 つまり、遺贈による登記を相続登記に先んじてしなければならないという点です。相続登記と遺贈の登記は、根本的に異なる点が、「共同申請」か「単独申請」かという点です。相続登記は、単独申請であるため亡くなった名義人の住所に変更があったとしても、それを証明する資料を添付すれば、同一人認定していただけますが、遺贈の場合、「住所変更の手続」を要します。詳しいことは、専門家にご相談ください。


※遺贈の単独申請について(要件を確認してください)


 法律改正により、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、その所有権の移転の登記を単独で申請することができるようになります。 なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになります。

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合


 仮に、A名義の甲土地をA死亡により、その子B及びCに2分の1づつ相続登記をした後に、実はAが生前にDに持分2分の1を売却していたという事実が判明したというもの。


 本来の事実関係からすると、A死亡時にその持分の2分の1はDのものだったということになります。これを実現しようとすると、すでに申請している相続登記は、事実とは異なる内容ということになり、抹消登記をすべきということになります。


 しかし、この場合、「B持分4分の1、C持分4分の1移転」という、すでになされている相続登記を活かし、相続人から等しい割合による持分2分の1の移転登記で、実態に合わせることが可能です。

(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・


 実は、不動産登記法という法律について、長年、司法書士と法務局の登記官との間で意見交換を実施して、法律に則り、実務に即した形での運用を念頭に様々な「先例」等が存在いたします。


 登記簿の全部事項証明書に記載されている内容については、実態を表現するように申請書類を準備し、実態に合った形での登記実行がなされています。


 受験生時代に、民法で法令上に則った形で実現する登記と、不動産登記法を学習した際に出てくる、「いわゆる便宜上の登記」というものを区別し、関連付けながら進めていったことを思い出します。多くの方は、この部分でつまずいているのではないでしょうか。


 また、相続登記で、ご近所の方と自分のものが微妙に異なるなんてのも、これらが関連している可能性もあります。


 そうなんです。相続登記とひとくくりにお話をしておりますが、実はお一人お一人、その対処すべき内容というのが変わってくることが多いです。ですので、専門家への相談ということが、非常に大事になってくると考えております。

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

相続について、今一度確認しておきます。民法896条「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とあります。遺産に含まれる不動産について、各ケースについて考え、相続登記の要否・可否について解説したいと思います。


目次


1.農地の売主に相続発生

2.農地法の許可を停止条件とする仮登記がある場合

3.仮登記が存在する場合で、すでに相続登記がある場合

4.それでは、農地法許可申請前に売主が死亡した場合

5.農地法の許可到達前に買主が亡くなった場合

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

1.農地の売主に相続発生


 「農地の売主が死亡した後、農地法3条の許可があった場合には、その農地の相続登記を経た後でなければ、買主への所有権移転の登記をすることはできない。」(昭40.3.30民三309号)


 ①売買契約(売主甲、買主乙)

 ➁甲死亡(甲の子丙へ相続登記)

 ③乙に対する農地法3条許可発行(売買を原因とする丙から乙への所有権移転登記)


このケースでは、①から③の順序で登記をしなければなりません。なぜなら、農地法の許可が所有権移転の対抗要件である以上、その許可前に相続が発生すると、丙が当該農地をいったん取得することになるためです。しかし、丙は甲の所有権移転義務・登記移転義務を承継していますので、その後、丙から乙への所有権移転登記を行うことになります。


2.農地法の許可を停止条件とする仮登記がある場合


 前の事例では、許可待ちの状態でしたが、今回の事例では、農地法の許可を条件に仮登記を実施している点が異なります。「仮登記」というキーワードが出てきましたので、説明いたします。


(仮登記)「不動産登記における所有権移転の仮登記とは、所有権の移転が未確定の段階で、将来的に所有権が移転する可能性があることを第三者に対して公示するための登記手続きです。通常、仮登記は本登記が行われるまでの一時的な措置として利用されます。たとえば、不動産売買契約が締結されたが、売買代金の全額がまだ支払われていない場合や、登記原因証明情報が未完備である場合などに、所有権移転の仮登記が行われます。仮登記をしておくことで、後日正式な登記がなされた際に、仮登記の順位に基づいて効力が発生するため、登記権利者の権利保全に役立ちます。ただし、仮登記には本登記に比べて制約があり、第三者への対抗力が限定されるため、最終的には本登記を行うことが重要です。」

 それでは、今回のように農地法の知事の許可を停止条件とする仮登記がすでに登記されている場合、許可が発行され仮登記に基づく本登記をする場合、許可前に所有権登記名義人が死亡している時でも、「本登記を前提として、相続登記をすることを要しない。(昭35.5.10民三328号)

 この先例は、本来は、相続登記をしてから本登記をすべきですが、その場合せっかく実施した相続登記はすぐに抹消されることになるため、便宜、相続登記の省略を認めたものです。

(論点)相続登記の可否について(遺産の農地について)

3.仮登記が存在する場合で、すでに相続登記がある場合


 順位1番で甲が名義人となっており、順位2番で甲から乙への所有権移転仮登記の後、順位3番で甲の子丙への相続登記がある場合を考えます。


 農地法の許可が到達した時点で、丙と乙が順位2番の仮登記に基づく本登記をすることになります。この本登記がなされた場合、順位3番の相続登記は、職権(登記官の権限により)で抹消されることになります。(登研576号)


4.それでは、農地法許可申請前に売主が死亡した場合


 農地法の許可申請前に売主が亡くなった場合ですので、許可を申請する当事者の一方がすでにいないわけです。ですので、相続登記を行い、この相続人と買主とで、農地法の許可を申請し、手続きを進めていくことになります。


5.農地法の許可到達前に買主が亡くなった場合


 この場合、すでに亡くなっている買主への許可は無効であり、買主の相続人が当該許可を証する情報を提供して所有権移転登記を申請しても受理されません。(昭51.8.3民三第4443号)。なぜなら、亡くなった買主について農業適格者としての許可証が、農地法の許可に当たり、亡くなった買主の相続人が農業適格者の判断は、当該許可証では行われていないために、無効という扱いとなります。この場合は、改めて売主と買主の相続人とで許可申請をやり直す必要があります。

(論点)相続登記に権利証は必要か?

(論点)相続登記に権利証は必要か?

結論から言いますと、書類がすべてそろっているようであれば、権利証の提供は不要となります。しかし、提出すべき書類の中には、相続が発生するタイミングによっては、入手できないものも存在します。今回は、通常の取引(売買)では、権利証が必要となるのに、相続では不要になるのか、またどのようなときに必要となるのかについてお話をしたいと思います。


目次


1.不動産の登記の概略


2.不動産の相続登記に必要な書類について


3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限


4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応


5.まとめ

(論点)相続登記に権利証は必要か?

1.不動産の登記の概略


 売買の場合、売主(現所有者)と買主がいます。この2当事者間で、売る意思表示と、買う意思表示が合致すれば、売買は成立します。それでは、相続登記を見てみましょう。被相続人(亡くなった方で現所有者)と、相続人(遺産分割協議により特定の相続人とする)と、こちらも2当事者がいるように思えるかもしれませんが、1方当事者である被相続人は亡くなっており、意思表示をすることはできません。つまり、相続とは、被相続人の身の上に発生した時、相続人全員に対して平等にその権利と義務が承継されることを指します。意思表示は関係ありません。そのため、被相続人が多額の借金を残して亡くなり、めぼしい財産もない場合には、「相続放棄」という手続きにより、すべてを承継する相続人ではなかったことにしてもらうことができます。


2.不動産の相続登記に必要な書類について


 相続登記に必要な添付書類について、「亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍」「相続人全員の戸籍」「不動産を取得する者の住民票の写し」「遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(相続登記の場合、期間制限はなし)」などに加え、登記簿上の被相続人の本人特定のために、「住民票の除票」又は「戸籍の附票(名義人の住所の履歴が記載されたもの)」が必要となります。不動産を異なるタイミングで取得しているような場合ですと、A不動産では、A市住所、B不動産の名義人の住所が、B市住所ということもあり得ます。そして、登記官及び登記のシステムは、同一人の判定を「氏名」と「住所」で行っているため、住所がつながらなければ、同一人とは見ていただけないということになります。

(論点)相続登記に権利証は必要か?

3.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限


 今までは住民票の除票も戸籍の附票も保管期間が5年間だったため、抹消されて取得することができませんでした。そのため、5年以上前に死亡した被相続人の相続登記を申請するためには、住民票の除票と異なる書類を用意しなければならず、相続登記の現場では難儀したものです。しかし、法改正によって150年間は保管してくれることになりましたので、その問題は解決することができます。


 しかし、保管期間が150年に改正されたのは、令和元年6月20日以降の住民票の除票や戸籍の附票ですから、令和になる前の平成以前の住民票の除票や戸籍の附票が取得できないことに違いありません。


4.住民票の除票・戸籍の附票の保管期限経過している場合の対応


 保存期限が超過している住民票の除票や戸籍の附票は取得することはできませんので、「調査はやりましたが見つからなかった証拠」として、「廃棄証明書」を発行してもらうようにします。


 ここで初めて、登記名義人の特定をするために次の手が打てるわけです。公の資料での同一人の証明は困難となりました。そこで使うのが「権利証」です。


 しかし、権利証も紛失しているケースは十分考えられます。


 そこで、権利証までない場合には、戸籍の本籍地として記載されている住所表記が、登記簿の住所と同じであれば、同一人の判断をしていただけます。


 これもだめだった場合、相続人全員の同意に基づく「上申書」を提出することになります。

(論点)相続登記に権利証は必要か?

5.まとめ


 不動産登記における売買は、売主と買主の意思表示により成立し、その後登記されます。一方、相続登記では、被相続人の意思表示は関係なく、死亡と同時に相続人へ権利と義務が承継されます。相続登記には「戸籍」「住民票の写し」などが必要で、住所がつながらないと同一人物と認められません。以前は住民票の除票や戸籍の附票の保管期限が5年でしたが、法改正により150年に延長されました。ただし、平成以前の書類は対象外で、取得できない場合は「廃棄証明書」を発行し、他の証明手段(権利証の添付)を検討します。

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

既に設定された共同根抵当権について、変更登記のご依頼がありました。概略は、債権の範囲の変更と、債務者に法人を追加する変更という内容でした。変更の内容は、2つでありますが、一つの変更申請書で登記をすることができるのでしょうか。少し解説したいと思います。


目次


1.共同根抵当権で、2つの項目を変更する場合


2.司法書士作成の報告形式の登記原因証明情報をする場合


3.今回のケースについて(契約書が2通)


4.一申請情報申請の要件


5.まとめ

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

1.共同根抵当権で、2つの項目を変更する場合


 通常ですと、金融機関から司法書士に共同根抵当権の変更登記申請の依頼と併せて、「根抵当権変更契約書(債権の範囲の変更及び債務者の追加変更)」を作成してもらえないかということで話があります。ですので、登記原因証明書として提出する契約書の内容は、登記の申請内容に則したものとなります。登記原因証明情報は1通ですので、形式上も問題なく1つの申請で申請することが可能です。また、契約書に不動産の表示も含まれますので、物件印字も契約書作成の段階で記載することができます。


2.司法書士作成の報告形式の登記原因証明情報をする場合


 今回のように変更登記申請の内容を取りまとめ、権利者・義務者の記名押印及び不動産の表示等の法令上の要件を充たした内容となっていることが必要です。この「報告形式の登記原因証明情報」は、登記申請としては有効です。しかし、「原本還付されない」という難点があります。報告形式の登記原因証明情報は、法務局に差し入れてしまうことになりますので、当然、金融機関と設定者間の契約書は必要となります。それだったら初めから、一つの契約書に取りまとめておいた方がいいということで、私の経験上では、ほとんど取り扱ったことはありません。


3.今回のケースについて(契約書が2通)


 今回のケースについては、「根抵当権変更の契約書様式があるので、契約書記載後お渡しをして、その後物件印字等をすることになりました。変更登記申請後に、融資の実行が控えており、この点も考慮しなければなりません。


 実行日の前日に書類を預かりに行きました。「登記原因証明情報」としての「共同根抵当権変更契約書」が、債務者のものと、債権の範囲の変更のものと2通ありました。変更の契約日は双方合わせていました。


 ここで改めて「一申請情報申請」の要件について確認しました。

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

4.一申請情報申請の要件


 「同一登記管轄区域の数個の不動産につき同一の申請情報で登記申請することが認められるもの」とあります。わかりやすく見ていきますと


 ①管轄登記所が同一であること ※あります


 ➁登記の目的が同一であること ※共同根抵当権の変更です


 ③登記原因及びその日付が同一であること ※年月日変更です(先例では共同根抵当権の場合、日付が異なっていてもできるとの先例があります)


 ④申請人が同一であること


  ※所有者が土地と建物で異なっている(抵当権の抹消登記の場合では、先例がある)


いくつか不安要素はあるものの、先例などを短時間で調べ上げて、申請書を提出しました。勿論、登記原因証明情報は、2通の契約書で「原本還付手続」をしました。

(論点)一申請情報申請によって申請をすることの可否(共同根抵当権変更登記申請について)

5.まとめ


 登記手続きが完了する前に、登記官の方から連絡がありました。「先生もご存知の通り・・・・・」という内容でしたが、通常は「契約書」は司法書士で作成していたが、今回は金融機関所定の要式での対応となったことと、共同根抵当権の場合、原因日付が同じではなくても申請ができるが、今回の申請は登記原因証明情報が2通となってしまっているため、日付は統一させていただいた旨をしっかりお話をさせて頂きました。


 「まあ、今回のところは、」というところで、何とかなりました。


 次回からは、金融機関とお役様との間の契約書は作成していただきとして、司法書士側から、変更内容の登記原因証明情報として、報告形式の登記原因証明情報の作成の提案をさせて頂こうと思いました。

(論点)相続トラブル5選

(論点)相続トラブル5選

相続に関するトラブルは、多くの家族にとって避けたい問題ですが、現実にはしばしば発生します。以下では、相続における代表的なトラブルを5つ取り上げ、それぞれの具体例や解決策を交えながら説明します。


目次


1. 遺言書の有無と内容の不備


2. 生前贈与の問題


3. 相続人間のコミュニケーション不足


4. 財産の評価額に対する争い


5. 遺留分侵害の問題


結論

(論点)相続トラブル5選

1. 遺言書の有無と内容の不備


トラブルの内容

遺言書がない場合や、遺言書に不備がある場合、相続人同士で意見が分かれ、トラブルに発展することがあります。特に遺産分割の割合や特定の財産の分配方法について争いが生じやすいです。


具体例

例えば、父親が亡くなり遺言書が見つからなかった場合、相続人である兄弟姉妹の間で家屋や預貯金の分配について意見が対立することがあります。また、遺言書があっても、内容が曖昧で解釈が分かれる場合や、法律的に無効とされる記述が含まれている場合もトラブルの原因となります。


解決策

遺言書を作成する際には、公証人による公正証書遺言が推奨されます。これにより、遺言の内容が法的に有効であり、紛争のリスクを最小限に抑えることができます。また、遺言書の内容は定期的に見直し、家族状況の変化や法改正に対応することが重要です。


2. 生前贈与の問題


トラブルの内容

生前贈与は、相続税対策として有効ですが、適切な手続きが行われないとトラブルの元となります。特に、贈与の公平性や贈与税の問題が発生することがあります。


具体例

例えば、親が長男にのみ大きな額の生前贈与を行った場合、他の兄弟姉妹が不公平だと感じ、相続時に争いが生じることがあります。また、贈与税の申告が適切に行われていない場合、税務署から追徴課税が発生するリスクもあります。


解決策

生前贈与を行う際には、全ての相続人に対して公平であることが重要です。また、贈与税の申告を確実に行い、税務リスクを回避するために、専門家の助言を受けることが推奨されます。

(論点)相続トラブル5選

3. 相続人間のコミュニケーション不足


トラブルの内容

相続人間のコミュニケーションが不足していると、誤解や不信感が生まれ、トラブルに発展しやすくなります。特に、相続財産の分配方法や手続きについて意見が異なる場合に問題が顕在化します。


具体例

例えば、相続手続きの進行状況を一部の相続人のみが知っている場合、他の相続人が情報を共有されず、不信感を抱くことがあります。その結果、話し合いが難航し、法的手段に訴えるケースも少なくありません。


解決策

相続手続きにおいては、全ての相続人が情報を共有し、透明性を保つことが重要です。定期的な家族会議を開き、専門家を交えて話し合うことで、誤解や不信感を解消することができます。


※このコミュニケーション不足による問題を多く見てきましたが、子供たちの仲の良さは、被相続人(亡くなった方)を中心に形成されていたものであり、亡くなった後、それぞれの意見がぶつかるといったこともよくあります。きっと大丈夫だろうと安易に考えるのではなく、遺言書のように「形」に残す形で、ご自身の意思表示をしっかりしておき、その内容についての話も定期的にするようにしておくことをお勧めいたします。


4. 財産の評価額に対する争い


トラブルの内容

相続財産の評価額について相続人間で意見が分かれることがあります。特に、不動産や株式などの評価が難しい財産において、評価額の妥当性が争点となることが多いです。


具体例

例えば、親の遺産として残された不動産の評価額について、相続人の間で意見が分かれ、一方が過大評価だと主張し、他方が過小評価だと感じる場合があります。このような場合、相続財産の分配が進まず、長期的な争いに発展することがあります。


解決策

財産の評価は、公平な第三者である不動産鑑定士や公認会計士に依頼することが重要です。専門家の評価を基に話し合いを進めることで、トラブルを未然に防ぐことができます。


5. 遺留分侵害の問題


トラブルの内容

遺留分とは、法律で定められた最低限の相続分のことを指し、これを侵害する遺言書や生前贈与が行われると、相続人が異議を唱えることができます。遺留分が侵害された場合、遺留分減殺請求が行われることがあり、トラブルの原因となります。


具体例

例えば、親が遺言書で全ての財産を特定の子供に遺贈した場合、他の子供が遺留分を侵害されたとして遺留分減殺請求を行うことがあります。この請求が認められると、遺言の内容が変更されることになります。


解決策

遺言書を作成する際には、遺留分に配慮することが重要です。遺留分を侵害しないような分配方法を検討し、必要に応じて相続人と事前に話し合うことが推奨されます。また、遺留分に関する法的なアドバイスを受けるために、専門家の助言を仰ぐことが重要です。


結論


相続に関するトラブルは、多岐にわたりますが、事前の準備と適切な手続きを行うことで多くの問題を回避することができます。遺言書の作成や生前贈与の計画、相続人間のコミュニケーションの強化、専門家の助言を受けることが、円滑な相続手続きを実現する鍵となります。これらのポイントを押さえ、家族間の絆を守りながら相続問題を解決していきましょう。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

不動産の相続登記をしないことで起こるデメリットは、法的、経済的、社会的な側面から多岐にわたります。以下にその主なデメリットを詳細に説明します。


目次


1. 法的デメリット


2. 経済的デメリット


3. 社会的デメリット


まとめ

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

1. 法的デメリット


(1) 権利の不確定性


相続登記を行わないと、相続人が法的に不動産の所有権を主張することが困難になります。登記は、所有権の公示機能を果たすため、登記がなければ第三者に対して所有権を主張することができません。その結果、相続人間での権利関係が不明確になり、紛争の原因となります。

また、その資産価値にもよると思いますが、相続人間で誰が実家を引き継ぐのかでもめるケースもあります。離島の一軒家で利用価値が居住以外に乏しく、周りの方も高齢化している場合などでは、引き受ける相続人の方にとっても負担になります。しかし、とりあえず誰が所有者なのかを確定しなければ、その処分もできない状態になってしまいます。

相続登記を放置することで、さらに相続が発生していくことになり、権利関係が時間の経過とともに複雑化するといったことも起こりえます。


(2) 売却・担保提供の制約


登記がされていない不動産は、売却や担保提供が困難です。買主や金融機関は、所有権が確定していない不動産を購入したり、担保として受け入れたりすることに慎重になります。これにより、相続人は不動産の流動性を失い、資金調達が困難になる可能性があります。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

2. 経済的デメリット


(1) 税金の問題


相続登記をしないまま放置していると、固定資産税や都市計画税などの税金の支払いが滞る可能性があります。未登記の不動産に対する税金の支払い義務は相続人にありますが、誰が負担するのかが不明確になり、最終的には延滞金や罰則が科されることもあります。


(2) 相続税の課税


相続登記を行わない場合でも、相続税の課税対象となります。相続税の申告期限は、被相続人の死亡から10ヶ月以内ですが、登記をしないと適正な評価額を算出することが難しくなり、過少申告や延滞に繋がるリスクがあります。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

3. 社会的デメリット


(1) 遺産分割協議の困難


相続人が複数いる場合、相続登記を行わないと、遺産分割協議が滞ることがあります。特に、不動産が共有名義となるケースでは、全ての相続人の合意が必要となるため、意見の対立が起きやすくなります。これにより、相続人間の関係が悪化し、協議が長期化する恐れがあります。


(2) 地域社会への影響


相続登記未登記の不動産が放置されると、空き家や荒れ地となり、地域の景観や治安に悪影響を及ぼすことがあります。また、管理が行き届かない不動産は、火災や倒壊などのリスクを伴い、近隣住民にとっても迷惑となります。

(論点)不動産の相続登記をしないことで起こるデメリット

まとめ


不動産の相続登記をしないことは、多くのデメリットを伴います。法的な権利の不確定性から経済的な損失、さらには社会的な問題まで、幅広い影響が生じます。相続登記は、相続手続きの一環として速やかに行うことが重要であり、これにより相続人間の紛争を防ぎ、円滑な相続手続きと財産の有効活用が可能となります。相続登記を怠らず、早期に手続きを進めることが、相続人にとっての最善の策と言えるでしょう。

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

相続時精算課税制度は、高齢者が生前に財産を贈与しやすくするために設けられた制度です。しかし、この制度を利用するにはいくつかの注意点があります。以下に、相続時精算課税を利用する際の注意点を5つのポイントにまとめて説明します。


目次


1. 適用条件の確認

2. 2500万円の特別控除の理解

3. 相続時の税負担

3. 相続時の税負担

4. 不動産の贈与に関する注意点

5. 制度利用の長期的な計画

結論

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

1. 適用条件の確認


 相続時精算課税制度を利用するには、適用条件を満たしていることが必要です。具体的には、贈与者が60歳以上であり、受贈者が20歳以上の直系卑属(子や孫)である必要があります。また、適用を受けるためには、受贈者が「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。この条件を満たしていない場合、この制度を利用することはできません。


2. 2500万円の特別控除の理解


 相続時精算課税制度では、贈与者から受贈者に対して、2500万円までの贈与については贈与税が課されません。ただし、これを超える金額については、一律20%の贈与税が課されます。この2500万円の特別控除は一生に一度限りのものであり、超過分の贈与税は申告しなければなりません。この特別控除の適用範囲や計算方法をしっかり理解しておくことが重要です。


 そして、令和6年1月1日から、年間の贈与額から110万円の控除も追加されていますので、計画的に生前贈与を行えば、110万円の控除を複数年適用を受けることができます。

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

3. 相続時の税負担


 相続時精算課税制度を利用すると、贈与された財産の価値は、贈与時の価値で相続財産に加算されます。相続時には、贈与時に課された贈与税額を差し引いた額で相続税が計算されます。このため、相続時に予想以上の税負担が生じる可能性があります。贈与時の財産評価額が相続時に増加する場合、相続税が高額になることを見越して、将来の税負担を考慮した計画を立てることが重要です。


 2500万円分の相続時精算課税を利用して贈与した場合の110万円は暦年贈与制度のように7年に遡っての相続財産への組み戻しはありません。


4. 不動産の贈与に関する注意点


 不動産を相続時精算課税制度で贈与する場合、その評価額を慎重に考慮する必要があります。不動産の評価額は市場価格に基づくため、贈与時と相続時で評価額が変動することがあります。特に地価が上昇している地域では、相続時に高額な評価額がつく可能性があり、結果として相続税が増加するリスクがあります。また、不動産を贈与する際には、登記費用や贈与税申告の手続きなどの追加費用も発生するため、事前にこれらの費用も考慮しておくことが重要です。


※110万円の控除(相続時精算課税制度も暦年贈与制度も含め)を有効利用するために、一度に所有権を移転するのではなく、「持分」を少しづつ計画的に生前贈与するケースもあります。詳しくは、税理士又は司法書士にご相談ください。


5. 制度利用の長期的な計画


 相続時精算課税制度を利用する際には、短期的な節税効果だけでなく、長期的な資産運用計画も考慮する必要があります。例えば、将来的に家族がどのように財産を活用するか、財産の分割方法や管理方法などを含めた総合的な資産計画を立てることが重要です。また、制度の利用を決定する前に、専門の税理士やファイナンシャルプランナーと相談し、個別の状況に応じたアドバイスを受けることも有効です。

(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

結論


 相続時精算課税制度は、贈与者が生前に財産を子や孫に移転しやすくするための有効な手段ですが、その利用には慎重な計画と適切な判断が求められます。適用条件の確認、2500万円の特別控除の理解、相続時の税負担の予測、不動産贈与の際の注意点、そして長期的な資産計画の策定といったポイントをしっかりと押さえて、制度の利用を検討することが重要です。適切な準備と計画を立てることで、将来の税負担を軽減し、家族の財産を効果的に管理することができます。


(論点)相続登記における注意点

(論点)相続登記における注意点

相続登記は、不動産を相続した際に、相続人がその不動産の所有権を正式に登記する手続きです。この手続きを適切に行わないと、後々の売買や譲渡が難しくなり、相続人間でのトラブルの原因となることがあります。相続登記における重要なポイントと注意点について、以下に詳しく説明します。


目次


1. 相続登記の必要性

2. 相続登記の法的期限

3. 必要書類の準備

4. 遺産分割協議書の作成

5. 法定相続分の確認

6. 相続税の申告

7. 不動産の評価額の確認

8. 登録免許税の支払い

9. 専門家の助言を受ける

10. 相続登記後の管理

まとめ

(論点)相続登記における注意点

1. 相続登記の必要性


 相続登記を行うことで、不動産の所有権を相続人に正式に移転します。この手続きを怠ると、相続人が不動産を売却する際に問題が生じたり、相続人間でのトラブルが発生する可能性があります。相続登記を早期に行うことで、相続手続きをスムーズに進めることができます。


2. 相続登記の法的期限


 2024年4月1日から、相続登記が義務化されることになりました。これにより、相続開始から3年以内に相続登記を行わなければなりません。この期限を過ぎると、過料が課される可能性がありますので、相続が発生したら速やかに相続登記の手続きを進めることが重要です。


3. 必要書類の準備


相続登記を行うためには、以下の書類が必要です:


被相続人の死亡を証明する書類:戸籍謄本や死亡診断書など

相続人を証明する書類:戸籍謄本や戸籍抄本など

不動産の登記簿謄本:法務局で取得

遺産分割協議書:相続人全員の合意に基づく遺産分割協議書

遺言書:遺言がある場合

固定資産評価証明書:市町村役場で取得

相続登記申請書:法務局で記入・提出


これらの書類を正確に準備し、不備なく提出することが重要です。

(論点)相続登記における注意点

4. 遺産分割協議書の作成


 遺産分割協議書は、相続人全員の同意のもとに作成される書類であり、不動産の分割方法や所有者を明記します。この協議書は全員の署名と押印が必要であり、不備があると相続登記が受理されないことがあります。遺産分割協議書の作成には、専門家の助言を受けるとスムーズに進められます。


5. 法定相続分の確認


 相続人間で遺産分割協議がまとまらない場合、法律で定められた相続分(法定相続分)に従って相続することになります。法定相続分に基づいて相続登記を行う場合も、相続人全員の同意が必要です。法定相続分に従った相続は、トラブルを避けるために重要です。


6. 相続税の申告


 相続登記を行う前に、相続税の申告が必要な場合があります。相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内であり、期限内に申告を行わないと延滞税が課されることがあります。不動産の評価額を正確に算出し、必要な場合は相続税を適切に申告することが重要です。


7. 不動産の評価額の確認


 相続税の計算や相続登記の手続きには、不動産の評価額を確認する必要があります。評価額は、市町村役場で発行される固定資産評価証明書や、国税庁の路線価図などを参考にします。不動産の評価額を正確に把握し、相続税の申告や遺産分割協議書の作成に役立てます。


8. 登録免許税の支払い


 相続登記には、登録免許税がかかります。登録免許税は、不動産の評価額に応じて計算され、登記手続きの際に支払います。登録免許税の計算方法や支払い方法については、法務局や専門家に相談すると良いでしょう。


9. 専門家の助言を受ける


 相続登記は複雑な手続きであり、専門家の助言を受けることでスムーズに進めることができます。司法書士や弁護士に依頼することで、書類の準備や手続きの進行をサポートしてもらえます。また、相続税の申告についても税理士の助言を受けることで適切に対応できます。


10. 相続登記後の管理


 相続登記が完了した後も、不動産の管理や保全が重要です。相続した不動産を売却する場合や、賃貸する場合には、適切な手続きを行う必要があります。また、不動産の固定資産税の支払いも忘れずに行うことが大切です。

(論点)相続登記における注意点

まとめ


 相続登記は、不動産を相続する際に欠かせない重要な手続きです。相続登記を適切に行うことで、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きを実現できます。以下のポイントを押さえて、相続登記を進めましょう:


相続登記の必要性と法的期限を理解する

必要書類を正確に準備する

遺産分割協議書を作成する

法定相続分を確認する

相続税の申告を行う

不動産の評価額を確認する

登録免許税を支払う

専門家の助言を受ける

相続登記後の不動産管理を行う

 

これらのステップを踏むことで、相続登記を円滑に進め、相続人全員が安心して不動産を受け継ぐことができます。

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

会社の代表者が亡くなった場合、法人の株式の相続は複雑で重要な手続きとなります。以下に、株式の相続について考慮すべき主要なポイントを5つに分けて説明します。


目次


1. 株式の評価と相続税

2. 会社の経営権の継承

3. 相続による会社の安定性の確保

4. 株式の譲渡制限と承認手続き

5. 専門家のサポート

6. まとめ

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

1. 株式の評価と相続税


株式の評価は相続税を計算するために重要です。株式の評価方法には以下のようなものがあります。


評価方法

上場株式:市場価格に基づいて評価されます。亡くなった日の終値、またはその前後1ヶ月の平均値などが基準となります。

非上場株式:評価が難しく、国税庁の「財産評価基本通達」に基づいて評価されます。主な評価方法には「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」があります。


相続税の計算

株式の評価額が確定したら、それを基に相続税が計算されます。相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。


2. 会社の経営権の継承


 株式を相続することで、会社の経営権も相続されることがあります。これにより、会社の経営に大きな影響を与える可能性があります。


経営権の移行

遺言の確認:被相続人が遺言を残している場合、その内容に従って株式が分配されます​)​。

遺産分割協議:遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、株式の分配方法を決定します。

株主総会:株式の相続が確定した後、新しい株主は株主総会で承認を受ける必要があります。

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

3. 相続による会社の安定性の確保


 株式の相続によって会社の安定性が損なわれるリスクがあります。このため、事前に対策を講じることが重要です。


事前対策

株主間契約:株式の譲渡や相続に関する規定を事前に定めておくことができます。これにより、相続後の混乱を防ぎます​。

遺言信託:遺言書を信託会社に預け、専門家の管理下で株式の分配を行う方法です​。

株式分散の防止:株式の相続が複数の相続人に分散することを防ぐため、特定の相続人に集中させる方法も検討されます​。

※株式の分散は避けるべきです。例えば、定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要となります。要件は「原則として、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議」です。つまり、2人で仲良く半分ずつでは、仲たがいが生じた場合、定款の変更すらできない状態に陥ります。注意が必要です。


4. 株式の譲渡制限と承認手続き


 会社の定款には、株式の譲渡に制限がある場合があります。相続によって株式が移転する際にも、この制限が適用されることがあります。


譲渡制限の確認

定款の確認:会社の定款に譲渡制限が記載されているかを確認します。相続による株式の移転も、株主総会や取締役会の承認が必要な場合があります。

承認手続き:必要に応じて株主総会や取締役会で承認手続きを行います。承認が得られない場合、会社側が株式を買い取る権利を行使することもあります​。

(論点)会社の代表者が亡くなった場合の相続の注意点

5. 専門家のサポート


株式の相続手続きは複雑で専門知識が必要です。弁護士や税理士、公認会計士などの専門家のサポートを受けることが重要です。


専門家の役割

弁護士:法的手続きや遺産分割協議のサポートを行います​。

司法書士:争いのない法的手続きや商業登記等、遺産分割協議についてのサポートをします。

税理士:株式の評価や相続税の申告、納付手続きをサポートします​​。

公認会計士:株式の評価や財務分析を行い、相続後の会社の経営をサポートします​。


6. まとめ


 会社の代表者が亡くなった場合の法人の株式の相続は、評価方法や相続税、経営権の移行、会社の安定性の確保、譲渡制限と承認手続き、専門家のサポートなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。これらのポイントを踏まえ、事前に適切な対策を講じることで、相続後のトラブルを未然に防ぐことができます。相続手続きが円滑に進むよう、専門家のサポートを受けながら計画的に進めることが重要です​。

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

遺産分割協議を困難にする主な事例とその解決方法について説明します。遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要であり、さまざまな問題が発生することがあります。以下に、代表的な事例とその解決方法を挙げていきます。


目次


1. 相続人間の意見対立


2. 相続人の所在不明


3. 遺産の評価に関する争い


4. 遺言書の有効性に関する争い


5. 特定の相続人に対する偏った遺産分配


まとめ

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

1. 相続人間の意見対立


事例

相続人間で意見が一致しないことは一般的です。特に、不動産などの分割が難しい財産の場合、各相続人の希望が対立することがあります。


解決方法

①調停:家庭裁判所に調停を申し立て、第三者の仲裁を受けることで合意を目指す​。

➁専門家の仲介:弁護士や司法書士などの専門家を仲介役として依頼し、公平な視点から解決策を提案してもらう​ ​。

③不動産の売却:不動産を売却して現金化し、その分配を行うことで、物理的な分割の難しさを解消する​ ​。


2. 相続人の所在不明


事例

相続人の一人が所在不明で連絡が取れない場合、協議が進まないことがあります。


解決方法

①家庭裁判所への不在者財産管理人選任の申し立て:所在不明の相続人の財産を管理するための管理人を選任し、代わりに協議に参加してもらう​。

➁失踪宣告を受ける:家庭裁判所に、通常7年超、

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

3. 遺産の評価に関する争い


事例

遺産の評価額に関して相続人間で意見が分かれる場合、協議が難航することがあります。特に、不動産や株式などの市場価値が変動する資産は評価が難しいです。


解決方法

①専門家の評価:不動産鑑定士や公認会計士などの専門家に評価を依頼し、公正な評価額を算定する​ ​。

➁複数の評価:複数の専門家による評価を比較し、平均値を取るなどの方法で公平性を保つ​ 。


4. 遺言書の有効性に関する争い


事例

遺言書の内容やその有効性に関して相続人間で争いが生じることがあります。特に、自筆証書遺言の場合、形式不備や偽造の疑いが問題となることがあります。


解決方法

①遺言無効訴訟:遺言書の有効性に疑義がある場合、家庭裁判所に遺言無効訴訟を提起し、法的に解決を図る​。

➁遺言書の検認:家庭裁判所で遺言書の検認を受け、形式的な有効性を確認する​。

③専門家の意見:弁護士に相談し、遺言書の法的有効性について意見を求める​。

(論点)遺産分割協議を困難にする問題点

5. 特定の相続人に対する偏った遺産分配


事例

特定の相続人に対して偏った遺産分配が遺言書に記載されている場合、他の相続人が不満を持つことがあります。このような場合、遺留分の問題が生じることがあります。


解決方法

①遺留分侵害額請求:遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。これにより、最低限の相続分を確保することができます​。

➁和解:相続人間で話し合いを行い、公平な分配を目指すために和解を試みる。弁護士などの第三者を介することで、冷静な話し合いが可能になります​。

③調停や仲裁:家庭裁判所に調停や仲裁を申し立て、法的に公平な解決を図る​。


まとめ


 遺産分割協議を困難にする事例は多岐にわたりますが、各事例に対して適切な解決方法を講じることで、円満な相続を実現することが可能です。相続人間の意見対立や所在不明、遺産の評価問題、遺言書の有効性、偏った遺産分配などの問題に対しては、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や司法書士、鑑定士などの専門家のサポートを受けながら、法的に適切な手続きを進めることで、相続問題を円滑に解決することができます​​。


(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

遺言書が見つかり、その内容が「全財産を愛人に遺贈する」と記載されていた場合、相続人としてはショックを受けることでしょう。しかし、このような場合でも適切に対処する方法があります。以下に、その手順とポイントを詳しく説明します。


目次


1. 遺言書の確認と検認


2. 遺留分の確認と請求


3. 遺留分侵害額請求の手続き


4. その他の対応策


まとめ

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

1. 遺言書の確認と検認 


 まず、遺言書が正式なものであるかを確認します。遺言書の種類に応じて、検認が必要な場合があります。


公正証書遺言:公証人によって作成された遺言書であれば、検認は不要です。


自筆証書遺言・秘密証書遺言:これらの場合、家庭裁判所での検認が必要です​。検認は遺言書の形式的な有効性を確認する手続きであり、内容の有効性を判断するものではありません。


2. 遺留分の確認と請求


  民法には「遺留分」という制度があります。遺留分は、一定の相続人(配偶者、子供、直系尊属など)が最低限相続できる財産の割合を保障するものです。遺留分の割合は以下の通りです:


配偶者と子供がいる場合:配偶者と子供それぞれが相続財産の1/4を遺留分として持つ。


配偶者と直系尊属がいる場合:配偶者が1/3、直系尊属が1/6。


子供のみの場合:子供が相続財産の1/2を遺留分として持つ。


「全財産を愛人に遺贈する」という遺言書が見つかった場合、遺留分を侵害している可能性が高いです。この場合、相続人は遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)を行うことができます​ ​。


3. 遺留分侵害額請求の手続き


 遺留分侵害額請求を行うためには、以下の手順を踏みます。


3.1 請求の意思表示


 遺留分を侵害された相続人は、相手方(愛人)に対して遺留分侵害額請求の意思表示を行います。この意思表示は、口頭でも書面でも可能ですが、証拠を残すために書面で行うのが一般的です。内容証明郵便を利用することで、意思表示の事実と日時を明確に証明できます​。


※裁判をしないと主張できないという方がいらっしゃいますが、遺留分侵害額請求権の行使は、裁判上でも裁判外でも可能です。


3.2 調停・仲裁


 意思表示後、当事者間で話し合いが行われますが、合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停では中立的な第三者が介入し、合意に向けた調整が行われます​ ​。


3.3 裁判


 調停が不成立の場合、最終的には裁判に進むことになります。裁判では、遺留分の具体的な金額や支払い方法について判決が下されます​ ​。

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

4. その他の対応策


4.1 遺言無効訴訟


遺言書の内容や作成過程に不正があった場合(例えば、遺言者が精神的に不安定な状態であった、あるいは脅迫や詐欺によって作成された場合)、遺言無効訴訟を提起することができます。この訴訟では、遺言の無効を証明するための証拠を提出する必要があります​​。


4.2 和解


愛人との間で話し合いが可能であれば、相続人の遺留分を尊重しつつ、遺産の一部を愛人に分与する形で和解を図ることも考えられます。これにより、法的手続きにかかる時間と費用を節約することができます​​。


5. 専門家への相談


 相続問題は複雑で感情的なものが多いため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。専門家は法的なアドバイスを提供し、適切な手続きをサポートしてくれます​。

(論点)「全財産を愛人に遺贈する」と書かれた遺言書が発見!

まとめ


 「全財産を愛人に遺贈する」という遺言書が見つかった場合、遺留分を侵害している可能性が高いです。相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、自身の権利を守ることができます。適切な手続きを踏み、必要に応じて専門家に相談することで、相続問題を円滑に解決することが可能です​。


 まずは、争いも想定されますので、はじめから弁護士と相談の上、手を打って行った方がいいと思います。

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

公正証書遺言を作成する際の費用について説明します。公証役場での公正証書遺言作成費用は、基本手数料、書類の取り寄せ費用、証人の日当、専門家への報酬など、複数の要素で構成されています。


目次


1. 公証役場手数料


2. 書類の取り寄せ費用


3. 証人の日当


4. 公証人の出張費用


5. 専門家への報酬


まとめ

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

1. 公証役場手数料


公証役場の基本手数料は、遺言に記載する財産の価額によって異なります。具体的な費用は以下の通りです:


財産が100万円まで:5,000円

100万円超200万円まで:7,000円

200万円超500万円まで:11,000円

500万円超1,000万円まで:17,000円

1,000万円超3,000万円まで:23,000円

3,000万円超5,000万円まで:29,000円

5,000万円超1億円まで:43,000円

1億円超3億円まで:5,000万円ごとに13,000円加算

3億円超10億円まで:5,000万円ごとに11,000円加算

10億円超:5,000万円ごとに8,000円加算

さらに、全体の財産が1億円以下の場合には、基本手数料に11,000円が加算されます。また、遺言書の枚数によっては、謄本手数料(コピー代)が3,000円から5,000円程度加算されることがあります。


※ポイントは、遺産を渡す各相続人を基準に算定し、合計額が手数料となります。遺産の総額で手数料を計算するわけではありませんので注意が必要です。

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

2. 書類の取り寄せ費用


公正証書遺言を作成するためには、各種書類が必要です。これらの書類の取得には費用がかかります:


戸籍謄本:1通450円

印鑑証明書:1通300円

住民票:1通300円

評価証明書(不動産1物件):300円

登記事項証明書(不動産1物件):600円


※各自治体により、書類意取得の手数料の金額が異なります。取り寄せる書類を管理している自治体に確認してください。


3. 証人の日当


公正証書遺言の作成時には、証人2名の立ち会いが必要です。証人を専門家や公証人役場に依頼する場合、1名につき7,000円から15,000円程度の日当がかかります​。(高松市の場合1名5,000円)知人に頼む場合は、この費用はかかりません。


ただし、証人は誰でもいいというわけではなく、一定の要件があります。


公正証書遺言の証人となるためには、以下の要件を満たしている必要があります:


①成人であること:証人は20歳以上の成人である必要があります。

➁遺言者の直系尊属・直系卑属ではないこと:遺言者の両親や子供などの直系尊属・直系卑属は証人になることができません。

③遺言者の配偶者ではないこと:遺言者の配偶者も証人になることができません。

④遺言の受益者やその配偶者、直系尊属・直系卑属ではないこと:遺言により利益を受ける者、その配偶者や直系尊属・直系卑属も証人になることができません。

➄未成年者や成年被後見人、被保佐人ではないこと:法律上、未成年者や成年被後見人、被保佐人は証人としての資格を持ちません。


これらの要件を満たすことが、公正証書遺言の証人として適格であることを確認するために重要です。つまり、近しい家族にお願いする場合、要件を充たさない場合があります。


4. 公証人の出張費用


遺言者が公証役場に行けない場合、公証人が自宅や病院などに出張することも可能です。この場合、手数料が1.5倍に加算され、公証人の日当として1日あたり2万円(4時間以内の場合は1万円)が必要です。また、交通費も実費で請求されます。

(論点)公正証書遺言の作成にかかる手数料等について

5. 専門家への報酬


公正証書遺言の作成を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、その報酬が発生します。報酬の額は依頼する事務所や業務の範囲によって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度が相場です。


まとめ


公正証書遺言の作成には、遺言に記載する財産の価額によって手数料が変動する基本手数料、必要書類の取り寄せ費用、証人の日当、そして公証人の出張費用などが含まれます。また、専門家に依頼する場合はその報酬も考慮に入れる必要があります。これらを総合して計画を立てることが重要です


まずは、専門家への相談をして検討してみてください。


(論点)公正証書遺言作成の手続き

(論点)公正証書遺言作成の手続き

公正証書遺言は、公証人が作成する信頼性の高い遺言書です。以下に、公正証書遺言を作成する際の具体的な手順を説明します。


目次


1. 遺言内容の検討

2. 公証役場の選定と予約

3. 必要書類の準備

4. 証人の確保

5. 公証役場での手続き

6. 公正証書遺言の保管

7. 遺言書の見直し

まとめ

(論点)公正証書遺言作成の手続き

1. 遺言内容の検討


 まず、遺言内容をじっくり検討します。以下の点を考慮して内容を決めます。


遺産の分配方法:財産をどのように分配するか、誰に何を相続させるかを決めます。


特定の相続人への配慮:特定の相続人に対して、特別な配慮が必要な場合はその旨を記載します。


遺言執行者の指定:遺言内容を実行する遺言執行者を指定します。信頼できる人物を選びます。

(論点)公正証書遺言作成の手続き

2. 公証役場の選定と予約


 遺言内容が決まったら、公証役場を選び、予約を取ります。予約時に以下の情報を伝えます。


遺言者の氏名、住所、生年月日


証人2名の氏名、住所、生年月日※公証役場に証人の依頼をしている場合は不要


遺言内容の概要


公証役場の連絡先はインターネットで検索するか、最寄りの役場に問い合わせると良いでしょう。


3. 必要書類の準備


 公正証書遺言を作成するためには、以下の書類が必要です。


本人確認書類:遺言者および証人2名の運転免許証やパスポートなどの身分証明書


※本人の場合は、印鑑証明書での本人確認をする場合が多いです。


財産に関する書類:不動産登記簿謄本、預貯金の通帳の写し、株式の証券など


その他の書類:家族構成を確認するための戸籍謄本、遺言執行者を指定する場合はその同意書など

(論点)公正証書遺言作成の手続き

4. 証人の確保


 公正証書遺言の作成には、2名の証人が必要です。証人には以下の条件があります。


(証人の要件)


遺言者の配偶者や直系血族でないこと


遺言の利益を受ける者でないこと


成年であること


弁護士や司法書士など、専門家を証人として依頼することも可能です。


5. 公証役場での手続き


 予約した日時に公証役場に出向きます。手続きの流れは以下の通りです。


公証人による説明:公証人が遺言の内容について説明し、遺言者が理解しているか確認します。


遺言内容の確認:遺言者が遺言内容を読み上げ、誤りがないか確認します。


署名・押印:遺言者と証人が遺言書に署名・押印します。


公証人の署名・押印:公証人が遺言書に署名・押印し、公正証書遺言が完成します。

(論点)公正証書遺言作成の手続き

6. 公正証書遺言の保管


 公正証書遺言は公証役場に保管されます。遺言者には遺言書の正本と謄本が交付されます。遺言書の保管方法について家族に知らせておくと、相続時にスムーズに手続きを進めることができます。


7. 遺言書の見直し


 遺言内容は一度作成しても、状況に応じて見直すことが可能です。例えば、家族構成や財産状況に変化があった場合は、遺言書を更新することを検討します。新しい遺言書を作成する場合も、同じ手続きを踏むことになります。


まとめ


 公正証書遺言を作成する手順は以下の通りです。


遺言内容の検討


公証役場の選定と予約


必要書類の準備


証人の確保


公証役場での手続き


公正証書遺言の保管


遺言書の見直し


 これらの手順を踏むことで、公正証書遺言を確実に作成し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。公正証書遺言は公証人が関与するため、法的な効力が強く、信頼性が高いです。遺言の内容が明確であり、相続人同士の争いを防ぐために、有効な手段と言えるでしょう。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。共有不動産は、様々な問題を抱えています。元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。


目次


1. 意思決定の難航


2. 維持費用の負担と分担


3. 利用方法の衝突


4. 相続時の問題


5. 不動産の売却の困難


結論

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

1. 意思決定の難航


 不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。


 例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。


2. 維持費用の負担と分担


 不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。


 例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

3. 利用方法の衝突


 共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。


例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。


4. 相続時の問題


 共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。


 例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

5. 不動産の売却の困難


 共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。


 例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。


結論


 不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

言語化とは、思考や感情を言葉として明確に表現することを指します。これは日常生活において、自己理解を深めるだけでなく、他者とのコミュニケーションを円滑にするためにも重要です。特に人生の終末期において、自己の希望や意思を明確に伝えることが求められる場面が増えます。そこでエンディングノートと遺言書という二つのツールが大きな役割を果たします。本稿では、この二つのツールの効力の違いについて説明します。


目次


1.エンディングノート


2.遺言書


3.効力の違い


4.結論

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

1.エンディングノート


 エンディングノートは、本人が生前に自身の希望や意志を記録しておくためのノートです。例えば、葬儀の形式、遺産の分配、介護の希望、財産の管理などについて記載します。このノートは、法的効力を持たないものの、家族や関係者に対して本人の意思を伝えるための重要な手段です。


①エンディングノートの利点


(1)自由度の高さ: エンディングノートには、何を書いても構いません。形式に拘らず、自分の言葉で自由に意思を表現できます。

(2)感情の共有: 法的文書には表現しにくい感情や思いも、エンディングノートを通じて伝えられます。例えば、「家族への感謝の言葉」や「過去の思い出」など。

(3)生活の質の向上: 自分の望む介護や医療について具体的に記載することで、生活の質を向上させることができます。


➁エンディングノートの限界


(1)法的効力の欠如: エンディングノートは、法的拘束力を持ちません。つまり、記載された内容が法的に実行される保証はありません。

(2)解釈の自由: 書き手の意図が十分に伝わらない場合、解釈の違いから意図した通りに実行されない可能性があります。

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

2.遺言書


 遺言書は、法律に基づいて作成される文書で、遺産の分配やその他の希望を法的に拘束力を持って定めるものです。日本では、民法に基づいて遺言書の作成方法が規定されており、法的に有効な遺言書を作成するためには、一定の要件を満たす必要があります。


①遺言書の種類


(1)自筆証書遺言: 遺言者が自らの手で全文、日付、氏名を記載し、押印する形式です。法的に有効であるためには、形式的な要件を満たす必要があります。

(2)公正証書遺言: 公証人が作成し、遺言者および証人2名の立会いのもとで署名・押印される遺言書です。信頼性が高く、紛失や改ざんのリスクが低いです。

(3)秘密証書遺言: 遺言者が署名・押印し、封をした遺言書を公証人に提出して確認を受ける形式です。


➁遺言書の利点


(1)法的効力: 遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載された内容が法的に実行されます。これにより、遺産の分配やその他の希望が確実に実現されます。

(2)明確な指示: 遺産の分配方法や特定の希望を明確に指示することで、遺族間の争いを未然に防ぐことができます。

(3)遺言執行者の指定: 遺言書に遺言執行者を指定することで、遺産の分配をスムーズに行うことができます。


③遺言書の限界


(1)作成の複雑さ: 法的要件を満たすためには、形式や内容に厳格な規定があるため、作成が複雑です。特に公正証書遺言の場合、公証人との面談や証人の確保が必要です。

(2)費用: 公正証書遺言を作成する場合、公証人への報酬や証人への謝礼が必要となり、費用がかかります。

言語化することの大切さ(家族と相続について話をする前に)

3.効力の違い


 エンディングノートと遺言書の最大の違いは、その法的効力にあります。エンディングノートは本人の意思を伝えるためのツールであり、法的拘束力はありません。一方、遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載内容が法的に実行されます。このため、具体的な遺産分配や法的手続きを必要とする希望がある場合は、遺言書を作成することが重要です。

 ただし、エンディングノートは、遺言書の補完的な役割を果たすことができます。例えば、遺言書には記載しにくい感情的な内容や、日常の希望、細かな指示などをエンディングノートに記載することで、遺族や関係者に対して総合的な意思を伝えることができます。


4.結論


 言語化することの大切さは、人生の終末期において特に顕著です。エンディングノートと遺言書を併用することで、法的な手続きと感情的な意志の双方をバランスよく伝えることができます。エンディングノートは感情や希望を自由に表現できる一方で、法的効力を持たないため、重要な法的事項については遺言書を作成することが求められます。この二つのツールを適切に活用することで、自身の意思を確実に伝え、遺族や関係者が安心して後の手続きを進めることができます。

 今まで携わった相続関連業務で、公正証書遺言を作成した後にお迎えが車が来るまで少し話をした時のことです。一仕事終えたというのと、これでひとまず安心という気持ちから、いろいろなことを話しました。会社を心配されていたのですが、相続人の方が引き受けてくれるという意思表示があったことを大変喜んでいました。その時心から「良かったですね。本当に。これで心配事がずいぶん減ったんじゃないですか?」というと、何かほっとしたような顔をされていました。そしてその数か月後に亡くなったのですが、今までの経緯をすべて日記にしたためていたようで、相続人の方全員からすごく感謝されました。この経験から改めて、人の大事な意思表示のお手伝いができるということについて、これからも継続して行っていこうと思いました。勿論、新しい取り組みも含め、「不安」を「安心」に代えていけるよう続けていこうと思います。

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

お客様には「さあ、遺言書を作りましょう」と言ってはいるものの、作成には、家族関係やそのご本人の背景的なことを外しては、作成できません。財産を分けるにも、それなりの理由が必要ですし納得していないと、安心するはずの遺言書作成が無意味になってしまいます。そこで先日、一般社団法人四国ライフエンディング協会・株式会社人生百年サポート主催の「エンディングノートの勉強会」に参加しました。その内容を踏まえ、エンディングノートの効果をお話したいと思います。


目次


1.エンディングノートと遺言書:今後のことと人生の棚卸


2.なぜエンディングノートをはじめに設定すべきと考えるようになったのか


3.エンディングノート:人生の棚卸と今後のこと


4.遺言書:法的効力を持つ意思表示


5.まとめ

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

1.エンディングノートと遺言書:今後のことと人生の棚卸


 エンディングノートと遺言書は、人生の終わりを見据えた計画と、その実現のための法的手段を提供する重要なツールです。エンディングノートは、自分の人生を振り返り、今後のことを家族や友人に伝えるためのものであり、遺言書はその意思を法的に実行するためのものです。以下では、エンディングノートと遺言書の役割や作成方法、注意点について詳しく説明します。


2.なぜエンディングノートをはじめに設定すべきと考えるようになったのか


 エンディングノート作成のセミナーに参加させていただき、意外にもエンディングノートの効力を目の当たりにして、遺言書でいきなり自分の意思をまとめるのではなく、エンディングノートで一度人生の棚卸をしてから、その後の相続についての遺言書を考えると、私自身、スムーズに遺言書の内容を決めることができました。まるで、エンディングノートが遺言書を作るための「潤滑油」のような働きを体験したわけです。そこで、エンディングノートについて少しお話をしたいと思いました。

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

3.エンディングノート:人生の棚卸と今後のこと


エンディングノートの目的

エンディングノートは、人生の振り返りと今後の意思を明確にするためのものです。具体的には、自分の生い立ちや家族構成、経歴、趣味、友人関係などを記録し、自分がどのように生きてきたかを振り返ります。また、自分が大切にしている価値観や信念、最後に伝えたいメッセージ、葬儀の希望、財産の分配などを記載します。


エンディングノートの内容

エンディングノートの内容は、個人の自由に任されていますが、以下の項目が一般的に含まれます:


個人情報:名前、生年月日、住所、連絡先、家族構成

人生の振り返り:生い立ち、学歴、職歴、趣味、特技、友人関係

健康情報:病歴、現在の健康状態、かかりつけ医の情報

資産情報:銀行口座、保険、年金、証券、不動産、負債

終末期の希望:延命治療の希望、臓器提供の意思、介護の希望

葬儀の希望:葬儀の形式、場所、喪主、宗教、戒名

遺言書の有無:遺言書の場所、内容の概要

メッセージ:家族や友人への最後のメッセージ、感謝の言葉

エンディングノートの作成と保管


エンディングノートは、書店やインターネットで購入できる専用のノートを使用するか、自分で作成することも可能です。内容を定期的に見直し、最新の情報を反映させることが重要です。また、エンディングノートは法的効力を持たないため、家族や信頼できる人に存在を知らせ、適切に保管しておくことが大切です。


(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

4.遺言書:法的効力を持つ意思表示


遺言書の役割

遺言書は、エンディングノートで示した意思を法的に実行するための文書です。遺産の分割方法や財産の管理者、未成年の子どもの後見人、葬儀の方法など、具体的な指示を法的に拘束力のある形で残すことができます。遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを防ぎ、自分の意思を確実に実現することができます。


遺言書の種類

遺言書には、主に以下の3種類があります:


自筆証書遺言:本人が遺言の全文、日付、署名を自筆で書き、押印します。費用がかからず、手軽に作成できますが、形式の不備や紛失のリスクがあります。

公正証書遺言:公証人が遺言者の意思を聞き取り、公正証書として作成します。公証人役場で保管されるため、紛失の心配がなく、法的に確実です。費用がかかりますが、最も信頼性の高い方法です。

秘密証書遺言:本人が遺言書を作成し、署名押印した後、公証人と証人の前で封印して保管します。遺言の内容を秘密にできる一方で、形式不備のリスクがあります。


遺言書の作成と保管

遺言書を作成する際には、以下の点に注意する必要があります:

形式要件の遵守:遺言書の形式要件を厳守することが重要です。不備があると無効となる可能性があります。

専門家の助言:弁護士や司法書士に相談し、適切な内容と形式で遺言書を作成することをお勧めします。

保管方法:自筆証書遺言の場合、遺言書保管制度を利用して法務局で保管するか、信頼できる人に預けると良いでしょう。公正証書遺言は公証人役場で保管されるため、安心です。


エンディングノートと遺言書の連携

エンディングノートと遺言書は、互いに補完し合う関係にあります。エンディングノートで自分の思いや希望を整理し、遺言書でその意思を法的に実行することで、総合的な人生設計を実現できます。具体的には、以下のように連携させると効果的です:

エンディングノートの活用:エンディングノートで示した希望や思いをもとに、遺言書の内容を具体化します。特に、財産分与や葬儀の希望など、法的に重要な事項を明確にします。

遺言書の見直し:エンディングノートの内容を定期的に見直し、遺言書の内容も必要に応じて更新します。家族状況や財産状況の変化に応じて、遺言書を最新の状態に保つことが重要です。


家族とのコミュニケーション:エンディングノートを通じて家族に自分の意思を伝え、遺言書の存在と内容についても理解を得るよう努めます。事前に家族との話し合いを行うことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます。

(論点)エンディングノートと遺言書(今後のことと人生の棚卸)

5.まとめ


 エンディングノートと遺言書は、人生の最終段階における意思を明確にし、その実現を法的に保障するための重要なツールです。エンディングノートで自分の思いや希望を整理し、遺言書でその意思を法的に実行することで、家族に安心と信頼を与えることができます。以下のポイントに注意して、エンディングノートと遺言書を効果的に活用しましょう:


エンディングノートで人生を振り返り、今後のことを整理する。

遺言書を作成し、法的効力を持たせる。

専門家の助言を受け、適切な形式で遺言書を作成する。

エンディングノートと遺言書を連携させ、総合的な人生設計を行う。

家族とのコミュニケーションを大切にし、意思を共有する。


 これらの手順を踏むことで、安心して人生の最終段階を迎えることができ、家族に対しても負担を軽減することができます。

 そうなんです。皆、なぜ遺言書を作成するのかというと「安心」が欲しいわけです。遺言書にも「付言事項」といって、法的効力は及ばないものの、家族への想いなどを残せるようにはなっていますが、長文で書かれている者は見たことがありません。家族への想いや自分の考えなどは、まずはエンディングノートにしたため、その後、遺言書を作成することで円滑に進められると感じました。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

自筆証書遺言は、遺言者が自分で書き残す形式の遺言書で、作成や変更が比較的容易であるため、多くの人に利用されています。しかし、その一方で法的効力を持たせるためには一定の要件を満たす必要があります。以下に、自筆証書遺言を作成する際に気を付けるべきポイントを詳しく説明します。


目次


1. 全文を自筆で書く

2. 日付の記載

3. 署名と押印

4. 遺言内容の明確化

5. 法定相続分の確認

6. 保管場所の選定

7. 訂正方法の注意

8. 家族や相続人への配慮

9. 法的アドバイスの活用

10. 定期的な見直し

11. 遺言執行者の指定

12. 公正証書遺言との比較

まとめ

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

1. 全文を自筆で書く


 自筆証書遺言の最大の特徴は、遺言者が全文を自筆で書かなければならない点です。パソコンやワープロを使って作成したり、他人に書いてもらったりすることは無効です。また、本文だけでなく、日付や署名も全て自筆で書く必要があります。


2. 日付の記載


 遺言書には、作成した日付を必ず記載しなければなりません。日付がなければ遺言書としての効力を持ちません。また、「平成〇〇年〇月〇日」といった具体的な日付を書く必要があり、「吉日」などの曖昧な表現は避けましょう。日付が特定できない場合、遺言書全体が無効になる可能性があります。


3. 署名と押印


 遺言書には、遺言者の署名と押印が必要です。署名は自筆でフルネームを記載し、押印は実印でなくても構いませんが、認め印よりも印鑑登録されている印鑑が望ましいです。署名と押印を忘れると、遺言書が無効になる恐れがあります。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

4. 遺言内容の明確化


 遺言内容はできるだけ具体的かつ明確に書きましょう。例えば、財産の分割方法や相続人の指定について、曖昧な表現を避け、具体的な金額や割合、物件の詳細などを記載します。また、相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分を明確に示すことが重要です。遺言内容が不明確であると、遺言書が無効になったり、相続人間で争いが生じる可能性があります。


5. 法定相続分の確認


 遺言書作成時には、法定相続分についても確認しておきましょう。法定相続分を無視した内容にすると、相続人間で争いが生じる可能性があります。特に、遺留分を侵害しないよう注意が必要です。遺留分は、一定の相続人に最低限保障されている相続分であり、これを侵害すると遺留分減殺請求が行われる可能性があります。


6. 保管場所の選定


 自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多いですが、遺言書の存在や場所が相続人に知られなければ意味がありません。信頼できる人に保管場所を伝えるか、公証役場や法務局での預かりサービスを利用することを検討しましょう。2019年7月からは、自筆証書遺言を法務局で保管する制度も始まりました。この制度を利用すると、紛失や偽造のリスクを軽減できます。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

7. 訂正方法の注意


 自筆証書遺言の訂正には厳格なルールがあります。内容を訂正する場合は、訂正箇所に二重線を引き、訂正した旨を記載し、訂正箇所の近くに署名と押印を行います。訂正方法が適切でない場合、訂正部分が無効になる可能性があるため、慎重に行う必要があります。


8. 家族や相続人への配慮


 遺言書の内容について、家族や相続人に配慮することも大切です。突然の遺言内容に驚かせたり、相続人間のトラブルを招かないように、できるだけ事前に意向を伝えておくと良いでしょう。これにより、遺言の内容を理解してもらいやすくなり、円滑な相続手続きを進めることができます。


9. 法的アドバイスの活用


 自筆証書遺言を作成する際には、法律の専門家に相談することをお勧めします。弁護士や司法書士、税理士などの専門家のアドバイスを受けることで、遺言書が法律的に有効であることを確認できます。また、専門家の助言により、相続税の対策や財産分割の方法についても最適なアドバイスを受けることができます。

(論点)自筆証書遺言を作成する場合の注意点

10. 定期的な見直し


 自筆証書遺言は、一度作成したらそれで終わりではありません。家庭状況や財産状況が変わるたびに、定期的に見直しを行うことが重要です。見直しを怠ると、遺言書の内容が現状に合わなくなり、相続トラブルを招く可能性があります。


11. 遺言執行者の指定


 遺言執行者を指定することで、遺言書の内容を確実に実行することができます。遺言執行者には、信頼できる家族や友人、または専門家を選ぶと良いでしょう。遺言執行者が指定されていない場合、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる必要が出てきます。


12. 公正証書遺言との比較


 自筆証書遺言には多くのメリットがありますが、リスクも伴います。特に、形式不備による無効リスクや、紛失や改ざんのリスクを考慮すると、公正証書遺言も検討する価値があります。公正証書遺言は公証人が関与するため、法的効力が高く、形式不備のリスクが少ないです。


まとめ


 自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、法的効力を持たせるためには多くの注意点があります。全文自筆、日付の記載、署名と押印、明確な内容、法定相続分の確認、保管場所の選定、訂正方法の注意、家族や相続人への配慮、専門家のアドバイス、定期的な見直し、遺言執行者の指定、公正証書遺言との比較といったポイントを押さえて、適切な自筆証書遺言を作成することが重要です。こうした注意点を踏まえて遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

不動産は、生前対策として非常に有効な手段です。相続税の負担を軽減し、遺産分割をスムーズに行うために不動産を活用することは、多くのメリットがあります。以下に、不動産を利用した生前対策のメリットを詳しく説明します。


目次


1. 不動産の評価減効果

2. 賃貸不動産による収益の確保

3. 生前贈与による相続税対策

4. 不動産の活用による財産の保全

5. 不動産の活用による相続人間の公平性の確保

6. 事業承継の円滑化

7. 相続税の納税猶予制度の活用

8. 遺言書との併用

9. 不動産のリノベーションによる価値向上

まとめ

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

1. 不動産の評価減効果


 不動産の評価額は、相続税評価額として固定資産税評価額や路線価などが基準となります。これらの評価額は、実際の市場価格よりも低く設定されることが一般的です。そのため、不動産を相続財産に組み込むことで、評価額を低く抑え、相続税の負担を軽減することができます。また、賃貸物件の場合、借地権や借家権が考慮され、さらに評価額が減少する可能性があります。


2. 賃貸不動産による収益の確保


 賃貸不動産を所有している場合、相続人にとって安定した収益源となります。賃貸収入は現金収入であり、相続税の支払いや生活費の確保に役立ちます。また、賃貸物件は相続時における評価額が減少するため、相続税の負担をさらに軽減する効果があります。特に、長期間にわたり安定した収益を得られる賃貸物件は、相続後の家族の経済的な安定にも寄与します。


3. 生前贈与による相続税対策


 不動産を生前に贈与することで、相続税の課税対象となる財産を減少させることができます。生前贈与には年間110万円までの非課税枠があり、この枠を利用して少額ずつ贈与することが一般的です。また、不動産の一部を贈与することで、相続時の評価額を分割し、相続税の負担を軽減することができます。特に、子供や孫に不動産を贈与することで、将来の相続税負担を分散させることが可能です。


※不動産の場合、評価額は高額になると思われます。そこで、生前贈与対策として行うのは、「持分の割合をきめて贈与する」手法で対策をすることができます。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

4. 不動産の活用による財産の保全


 不動産は、現金や株式と異なり、物理的な財産であるため、価値が安定しやすい特性があります。これにより、インフレーションや市場の変動によるリスクを回避しやすく、財産の保全に役立ちます。特に、立地条件の良い不動産は、将来的に価値が上昇する可能性が高く、長期的な資産価値の維持に寄与します。


5. 不動産の活用による相続人間の公平性の確保


 不動産を活用することで、相続人間の公平性を確保することができます。例えば、遺言書で不動産の分割方法を明示することで、相続人間のトラブルを防ぐことができます。また、複数の不動産を所有している場合、それぞれの相続人に異なる物件を分配することで、公平な相続を実現することができます。さらに、特定の相続人に対して生前に不動産を贈与することで、相続時の不公平感を軽減することも可能です。


6. 事業承継の円滑化


 不動産を所有している場合、事業承継がスムーズに行えるというメリットがあります。特に、事業用不動産は、事業の継続性を保つために重要な資産です。生前に事業用不動産を後継者に贈与することで、事業承継の準備を整え、相続時の混乱を防ぐことができます。また、事業用不動産を利用した経営資源の活用や、新たな事業展開の基盤としても活用することが可能です。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

7. 相続税の納税猶予制度の活用


 農地や事業用資産を相続する場合、一定の条件を満たすことで相続税の納税猶予を受けることができます。これは、農業や事業の継続を支援するための制度であり、生前に適切な準備を行うことで、この制度を活用することができます。例えば、農地の相続においては、農業を継続する意思を明確にし、適切な手続きを行うことで、相続税の負担を軽減することができます。


8. 遺言書との併用


 不動産を活用した生前対策は、遺言書と併用することでさらに効果を高めることができます。遺言書に不動産の分割方法や受取人を明確に記載することで、相続時のトラブルを防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。また、遺言書を作成することで、生前に贈与した不動産についても明確に意思を示すことができ、相続人間の混乱を防ぐことができます。


9. 不動産のリノベーションによる価値向上


 生前に不動産をリノベーションすることで、資産価値を向上させることができます。リノベーションにより、不動産の魅力を高め、賃貸収益を増加させることが可能です。また、相続人にとっても、リノベーション済みの不動産は魅力的な資産となり、相続後の活用がしやすくなります。これにより、相続時のトラブルを防ぎ、円滑な資産承継を実現することができます。

(論点)不動産を利用した生前対策のメリット

まとめ


 不動産を利用した生前対策には、不動産の評価減効果、賃貸不動産による収益の確保、生前贈与による相続税対策、不動産の活用による財産の保全、不動産の活用による相続人間の公平性の確保、事業承継の円滑化、相続税の納税猶予制度の活用、遺言書との併用、不動産のリノベーションによる価値向上など、多くのメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、専門家の助言を受けながら適切な不動産戦略を立てることが重要です。不動産を効果的に活用することで、相続税の負担を軽減し、家族の生活基盤を守りつつ、円滑な相続手続きを実現することができます。

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

生命保険は、相続対策として非常に有効な手段の一つです。相続税の負担を軽減し、遺産分割をスムーズに行うために生命保険を活用することは、多くのメリットがあります。以下に、生命保険を利用した生前対策のメリットを詳しく説明します。


目的


1. 非課税枠の活用

2. 相続税の支払い資金の確保

3. 遺産分割の円滑化

4. 迅速な支給

5. 受取人の自由な指定

6. 遺留分対策

7. 保険金の種類に応じた柔軟な対応

8. 保険料の払い込みと相続税の軽減

9. 保険商品の多様性

まとめ


(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

1. 非課税枠の活用


 生命保険金には、相続税の非課税枠があります。具体的には、法定相続人一人当たり500万円の非課税枠が適用されます。このため、生命保険に加入することで、一定額までの保険金が相続税の課税対象外となります。例えば、法定相続人が3人いる場合、最大1500万円までの生命保険金が非課税となり、相続税の負担を大幅に軽減することができます。


※生命保険の保険金は、法律上は「受取人の財産」となります。しかし、これでは遺産の大半を生命保険にすることで、相続税申告を潜脱することにもなりかねませんので、生命保険金は「みなし相続財産」として、控除枠を設け、控除枠を超過した金額が遺産と指摘見込まれます。


2. 相続税の支払い資金の確保


 相続財産に不動産や株式などの現金以外の資産が多い場合、相続税の支払いに困ることがあります。生命保険金は、受取人に直接現金で支給されるため、相続税の支払い資金として活用することができます。これにより、不動産や事業資産を売却せずに相続税を支払うことが可能となり、家族の生活基盤を守ることができます。


3. 遺産分割の円滑化


 生命保険金は、指定した受取人に直接支給されるため、遺産分割協議を経ずに相続人に分配することができます。これにより、相続人間での遺産分割の争いを防ぐことができます。また、遺言書に生命保険金の受取人を明確に指定しておくことで、特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができ、遺産分割の手続きを円滑に進めることができます。

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

4. 迅速な支給


 生命保険金は、遺言執行や遺産分割協議を待たずに迅速に支給されます。通常、被保険者の死亡後、短期間で保険金が支払われるため、相続人が速やかに資金を受け取ることができます。これにより、葬儀費用や相続税の支払いなど、急な出費にも対応しやすくなります。


※収益物件の不動産(ローン残あり)などの現金化しにくい遺産を多く引き取った相続人に、相続税支払いのために保険の受取人にするなどの活用方法があります。


5. 受取人の自由な指定


 生命保険では、受取人を自由に指定することができます。これにより、相続人以外の第三者や特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができます。また、遺言書と併用することで、受取人の指定を明確にし、相続トラブルを未然に防ぐことができます。特に、家族構成が複雑な場合や特定の相続人に多く遺したい場合に有効です。しかし、生命保険の受取人を相続人以外の第三者にしてしまうと、税法上は「みなし相続財産の控除枠」が使えませんので注意が必要です。


6. 遺留分対策


 生命保険金は遺留分の計算に含まれないため、遺留分対策としても有効です。遺留分とは、法定相続人に最低限保障される相続分のことですが、生命保険金は遺留分の対象外となります。このため、遺言書に生命保険金の受取人を指定することで、遺留分を侵害せずに特定の相続人に多くの財産を遺すことができます。


※なぜなら、遺留分という法律上の相続人の権利となり、法律上、生命保険金は受取人の固有の財産とされているためです。

(論点)生命保険を利用した生前対策のメリット

7. 保険金の種類に応じた柔軟な対応


 生命保険には、定期保険、終身保険、養老保険など、さまざまな種類があります。これにより、個々の状況やニーズに応じて、最適な保険商品を選択することができます。例えば、相続税の負担が大きい場合には、終身保険に加入して長期的に保険金を受け取ることができるようにすることが有効です。一方、短期間で多額の資金が必要な場合には、定期保険を活用することが考えられます。


8. 保険料の払い込みと相続税の軽減


 生命保険料の払い込みは、被保険者が自分で行うことが一般的ですが、相続人が保険料を支払う場合には、相続税の軽減効果があります。相続人が保険料を負担することで、被保険者の財産が減少し、その結果、相続税の課税対象額が減少します。これにより、相続税の負担を軽減することができます。


9. 保険商品の多様性


 生命保険には、多様な商品があり、個々のニーズに応じたプランを選択することができます。例えば、特約を付けることで、介護費用や医療費に備えることができる商品もあります。これにより、相続対策だけでなく、生前のリスクにも備えることができます。


まとめ


 生命保険を利用した生前対策には、相続税の非課税枠の活用、相続税の支払い資金の確保、遺産分割の円滑化、迅速な支給、受取人の自由な指定、遺留分対策、保険金の種類に応じた柔軟な対応、保険料の払い込みと相続税の軽減、保険商品の多様性など、数多くのメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、専門家の助言を受けながら適切な保険商品を選択し、早めに対策を講じることが重要です。生命保険を効果的に活用することで、相続税の負担を軽減し、家族の生活基盤を守りつつ、円滑な相続手続きを実現することができます。

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

遺言書の形式には、主に公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があります。これらの遺言書のうち、公正証書遺言は、法的に確実でトラブルを防ぎやすい形式として広く利用されています。以下に、公正証書遺言のメリットを自筆証書遺言と比較しながら詳しく説明します。


目次


1. 公正証書遺言のメリット


2. 自筆証書遺言との比較


まとめ

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

1. 公正証書遺言のメリット


法的確実性の高さ


 公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法的に確実な遺言書となります。公証人は法律の専門家であり、遺言内容が法律に適合しているかを確認しながら作成します。そのため、公正証書遺言は形式不備や内容不明確による無効リスクが極めて低くなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自分で書くため、法的要件を満たさない場合や、内容が曖昧な場合に無効になる可能性があります。


紛失や改ざんのリスクが低い


 公正証書遺言は、公証役場に保管されるため、遺言書が紛失したり、第三者によって改ざんされるリスクが低いです。公証役場に保管されているため、遺言書の存在を確認しやすく、相続人間でのトラブルを防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は遺言者自身で保管することが多く、保管場所が不明だったり、紛失したりするリスクが高くなります。


内容の明確化


 公正証書遺言は、公証人が内容を確認しながら作成するため、遺言内容が明確であることが保証されます。公証人は遺言者の意思を正確に反映し、法律に基づいて適切な表現を用いて遺言書を作成します。そのため、相続人間での解釈の違いや争いが生じにくくなります。一方、自筆証書遺言は遺言者が自由に書くため、内容が曖昧であったり、誤解を招く表現が含まれている場合があります。


遺言執行の容易さ


 公正証書遺言は、公証人が認証しているため、遺言執行がスムーズに行われます。遺言書が法的に確実であることから、相続手続きが迅速に進むことが期待できます。また、公証人が遺言書の内容を証明するため、相続人間での争いが少なくなります。一方、自筆証書遺言は、遺言書の内容や形式に不備がある場合、遺言執行が困難になることがあります。特に、認知の争い(「うちの親父は、この遺言書を書いたとき認知症だったんだ」といったもの)について、公証人と証人2人の立会で作成しますので、ある程度は防ぐことができます。


訂正や変更の簡便さ


 公正証書遺言は、公証人に依頼することで簡単に訂正や変更が可能です。遺言者の意思を正確に反映するために、公証人が内容を確認しながら訂正を行います。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身で訂正を行う必要がありますが、訂正方法に厳格なルールがあり、適切に訂正しないと無効になる可能性があります。

(論点)公正証書遺言のメリットと自筆証書遺言との比較

2. 自筆証書遺言との比較


手軽さと費用の違い


 自筆証書遺言は、遺言者が自分で書くため、作成や変更が手軽で費用もかかりません。一方、公正証書遺言は、公証人に依頼するため、手続きがやや煩雑であり、作成費用も発生します。しかし、公正証書遺言は法的確実性が高く、相続トラブルを防ぐための投資と考えることができます。


法的要件の厳格さ


 自筆証書遺言は、全文を遺言者が自筆で書く必要があり、日付や署名、押印も自筆で行う必要があります。これに対し、公正証書遺言は、公証人が作成するため、遺言者が自筆で書く必要はありません。そのため、身体的な制約がある場合でも、公正証書遺言は作成しやすいです。


保管と開示の違い


 自筆証書遺言は、遺言者自身が保管するため、保管場所が不明確な場合や、紛失・改ざんのリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証役場に保管されるため、遺言書の存在や内容を確実に確認でき、相続人間のトラブルを防ぐことができます。


遺言執行のスムーズさ


 自筆証書遺言は、遺言執行の際に検認手続きが必要です。検認手続きとは、家庭裁判所が遺言書の形式を確認し、遺言書の存在を相続人に知らせる手続きです。この手続きがあるため、遺言執行が遅れる可能性があります。一方、公正証書遺言は検認手続きが不要であり、遺言執行が迅速に行われます。


専門家の関与とアドバイス


 公正証書遺言は、公証人が作成に関与するため、法律の専門家のアドバイスを受けながら作成することができます。これにより、遺言内容が法律に適合し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。一方、自筆証書遺言は、遺言者自身が作成するため、専門家のアドバイスを受ける機会が少なく、法的に不備が生じる可能性があります。


まとめ


 公正証書遺言は、法的確実性の高さ、紛失や改ざんのリスクの低さ、内容の明確化、遺言執行の容易さ、訂正や変更の簡便さなど、多くのメリットがあります。一方、自筆証書遺言は、手軽さと費用の安さがメリットですが、法的要件の厳格さや保管のリスク、遺言執行の煩雑さがデメリットとなります。遺言書を作成する際には、自身の状況やニーズに応じて、公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらが適しているかを検討し、専門家のアドバイスを受けながら適切な遺言書を作成することが重要です。これにより、相続トラブルを未然に防ぎ、円滑な相続手続きを実現することができます。


 ただし、公正証書遺言であっても、争いにより裁判で覆る可能性があります。遺言者の状態をしっかりみて、推定相続人である家族の方たちとしっかりコミュニケーションをとって、対策を講じることが重要です。

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

生前対策を考えるとき、相続発生した場合を想定して行います。しかし、何から手を付けていいやらわからない方も多いのではと思います。今回、専門家への相談も含め、具体的な内容について少しお話をしたいと思います。


目次


1.遺言書の作成


2.生前贈与


3.不動産の活用


4.生命保険の活用


5.専門家に相談

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

1.遺言書の作成


 遺言書の作成は相続対策の基本です。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がありますが、公正証書遺言が最も一般的で信頼性が高いです。公証人の立会いのもと作成され、改ざんの心配がないため、法的効力が強いです。遺言書を作成することで、遺産分割の方法を明確にし、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。特に、家族構成が複雑な場合や特定の相続人に多く遺したい場合などは、遺言書を作成することが有効です。また、遺言執行者を指定することで、遺産分割の手続きがスムーズに進むようになります。


2.生前贈与


 生前贈与は、相続財産を減少させることで相続税の負担を軽減する方法です。年間110万円までの贈与は非課税であるため、この非課税枠を活用して少額ずつ財産を贈与することが一般的です。また、特定の目的のための贈与も有効です。例えば、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与には、それぞれ非課税枠が設けられており、これを活用することで、子供や孫のための資金を提供しつつ、相続税の課税対象額を減少させることができます。さらに、住宅取得資金の贈与も非課税枠があるため、家族の住宅購入を支援しつつ、相続税対策を行うことが可能です。


※暦年贈与は、令和6年1月1日から相続発生時からさかのぼって7年間分の贈与を相続財産に組み戻すことになっております。

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

3.不動産の活用


 不動産は相続財産の中でも大きな割合を占めることが多く、これを有効に活用することで相続税対策が可能です。例えば、不動産を賃貸物件として運用することで収益を得ることができます。また、不動産の評価額は市場価格よりも低くなることが多いため、相続税の負担を軽減する効果があります。持ち家を子供名義に変更することで、生前贈与の非課税枠を利用して相続税の負担を軽減することも考えられます。ただし、不動産の運用や名義変更には法的な手続きや費用がかかるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。


※実際、これを活用されている方もいます。しかし、融資の額が大きく、不動産の評価の額が小さくなるといった、額が大きい内容での節税対策になりますので、利用できる方は限られます。


4.生命保険の活用


 生命保険は、相続税対策として非常に有効な手段です。生命保険金には、法定相続人1人当たり500万円の非課税枠が設けられており、この枠を活用することで相続税の負担を軽減することができます。また、生命保険金は受取人が指定されているため、遺産分割協議を経ずに迅速に支給されるメリットもあります。これにより、相続税の支払い資金を確保することができるため、相続人が現金不足に陥るリスクを軽減できます。さらに、生命保険は契約者が自由に受取人を指定できるため、特定の相続人に対して確実に財産を遺すことができます。

(論点)相続の生前対策、5つのポイント

5.専門家に相談


 相続対策は非常に複雑であり、個々の状況に応じた最適な対策を講じるためには、専門家の助言が欠かせません。税理士や弁護士、司法書士などの専門家に相談することで、最新の法改正や税制に基づいた適切な対策を講じることができます。例えば、税理士は相続税の申告や生前贈与の計画において有益なアドバイスを提供し、弁護士は遺言書の作成や遺産分割協議の進行をサポートします。専門家のアドバイスを受けることで、相続税の負担を最小限に抑えつつ、円滑な相続手続きを実現できます。


まとめ


 これらの生前対策を組み合わせることで、相続税の負担を軽減し、相続人間のトラブルを防ぎ、円滑な財産の承継を実現することが可能です。早めに対策を始めることで、より効果的な相続対策が行えます。


 しかし、上記内容を検討する前に、まずは、専門家への相談を考えてください。分からない状態での対策は、実際何も効力がないケースもございます。せっかくの対策を効果的に実現するためにも、専門家への相談は欠かせませんからね。

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

今回は、不動産を共有で所有することの不利益について解説したいと思います。共有不動産は、様々な問題を抱えています。元のオーナー間で、関係性が良好でも、その次の世代ではどうなるかわかりません。また、身分上の変化(例えば離婚)などにより、関係性が悪化する場合も考えられます。


目次


1. 意思決定の難航

2. 維持費用の負担と分担

3. 利用方法の衝突

4. 相続時の問題

5. 不動産の売却の困難

6.結論

(論点)不動産を共有で所有することの不利益

1. 意思決定の難航

不動産を共有する場合、複数の共有者が関与するため、重要な決定を下す際に全員の合意が必要となります。例えば、不動産の売却や賃貸に関する決定、修繕やリノベーションの実施、あるいは不動産の利用方法についての決定など、共有者全員の同意を得ることが求められます。


 例: ある不動産を3人の共有者が所有している場合、一人が不動産を売却したいと思っても、他の2人が反対することがあります。このような場合、売却を進めることはできません。合意を得るための交渉が長引き、結果として迅速な意思決定が困難になります。


2. 維持費用の負担と分担


 不動産の共有者は、維持費用や修繕費用を分担する必要があります。しかし、各共有者がその負担をどのように分け合うかについて意見が一致しないことがあります。一部の共有者が費用負担を拒否したり、経済的に負担できない場合、他の共有者がその分を補填しなければならないことがあります。


 例: 建物の屋根が老朽化し、修繕が必要な場合、共有者の一人が修繕費用を負担できないとしたら、他の共有者がその分を負担することになり、不公平感が生じます。また、修繕が先延ばしにされることで、不動産の価値が下がるリスクもあります。


3. 利用方法の衝突


 共有不動産の利用方法についても意見の対立が生じることがあります。ある共有者がその不動産を賃貸に出したいと考える一方で、別の共有者は自己利用を望むことがあります。このような場合、利用方法についての合意を得ることが難しく、不動産の効果的な利用が妨げられます。


 例: 共有不動産が都市部のマンションで、一部の共有者が投資目的で賃貸に出したいと考え、他の共有者が自己利用や家族のために利用したいと考える場合、双方の意見が対立し、最適な利用方法を見つけることが困難です。


(論点)不動産を共有で所有することの不利益

4. 相続時の問題


 共有不動産は相続時に特に複雑な問題を引き起こすことがあります。共有者の一人が亡くなった場合、その持分は相続人に引き継がれますが、相続人が複数いる場合、新たな共有者が増えることになります。これにより、意思決定がさらに複雑化し、摩擦が生じやすくなります。


 例: 共有者の一人が亡くなり、その持分が3人の子供に相続された場合、新たに3人の共有者が加わります。これにより、共有者の数が増え、全員の意見を一致させることがますます難しくなります。特に、相続人同士が意見を異にする場合、長期的な対立が生じる可能性があります。


※通常は遺産分割協議により、相続人のどなたか一人に移転しますが、争っている場合、法定相続分での登記がなされてしまい、共有状態になります。


5. 不動産の売却の困難


共有不動産を売却する場合、全ての共有者の同意が必要です。これが得られない場合、売却は困難となり、結果として不動産の流動性が低下します。また、一部の共有者が売却に積極的でない場合、市場価格よりも低い価格での売却を余儀なくされることもあります。


 例: 共有者の一人が緊急に現金を必要とし、不動産を売却したいと考えても、他の共有者がこれに同意しない場合、売却は進められません。結果として、緊急に資金が必要な共有者は他の方法で資金を調達する必要が生じ、場合によっては不利な条件での取引を余儀なくされることがあります。


(論点)不動産を共有で所有することの不利益

6.結論


 不動産の「共有」は、一見するとリスク分散や共同利用の利点があるように見えますが、実際には多くの不利益をもたらします。意思決定の難航、維持費用の分担の不公平、利用方法の衝突、相続時の問題、売却の困難など、共有者間の摩擦や対立が生じやすく、これらが長期的に不動産の価値や利用効率に悪影響を与えることがあります。

 共有不動産を所有する場合、これらの問題を予見し、共有者間で明確なルールを設定し、信頼関係を築くことが重要です。

 それでもなお、共有による不利益を完全に避けることは難しいため、個別所有や法人による所有など、他の所有形態を検討することも一つの選択肢となります。

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

相続人が一人であっても、相続の手続きは必ずしも簡単ではありません。その理由について、以下で詳しく説明します。


目次


1.相続の基本的な流れ


2.手続きが簡単でない理由


3.結論

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

1.相続の基本的な流れ


相続の手続きは、相続人の人数に関係なく、以下のような基本的な流れをたどります。


(1)相続人の確認:相続人が一人であることを確認するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍を遡って確認する必要があります。この過程で、知られていなかった相続人がいる可能性もあり、複雑になることがあります。


(2)遺産の調査:被相続人の財産を調査し、相続対象の資産と負債を把握します。これには、不動産、預貯金、株式、生命保険などが含まれます。また、負債があればそれも含めて調査しなければなりません。


(3)相続放棄の検討:相続財産に負債が多い場合、相続人は相続放棄を検討することがあります。相続放棄をする場合、家庭裁判所に手続きを行う必要があり、手続き自体が複雑です。


※遺産分割協議書の作成:相続人の調査の結果、他にも相続人がいることが判明した場合、遺産分割協議書を作成して相続内容を明文化することが求められます。


(4)名義変更手続き:相続した財産の名義変更手続きが必要です。例えば、不動産の名義変更や銀行口座の解約・名義変更などが挙げられます。これには、それぞれに異なる書類や手続きが必要です。(法務局にて、法定相続情報一覧図の作成することで、共通する戸籍等の書類を持参しなくてもよくなります。)

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

2.手続きが簡単でない理由


相続人が一人であっても、相続の手続きが簡単でない理由はいくつかあります。


複雑な書類手続き

相続手続きには、多くの書類が必要です。例えば、被相続人の死亡届、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続関係説明図、財産評価証明書などがあります。これらの書類を揃えるだけでも時間と手間がかかります。特に、相続人が一人でも、すべての財産に対して適切な書類を用意し、各機関に提出する必要があります。


財産の評価と分割

被相続人が複数の財産を持っていた場合、それらの評価を行う必要があります。不動産の場合、評価額を算定するために専門家の査定が必要となることがあります。また、金融資産も種類ごとに評価額を確認しなければなりません。相続人が一人であっても、これらの手続きは省略できません。


税務申告

相続財産が一定の額を超える場合、相続税の申告が必要です。相続税の計算には、複雑な税法の知識が必要であり、税理士の助けを借りることが多いです。また、税務署に対して提出する書類も多く、申告期限も厳格です。相続人が一人でも、相続税の申告手続きを行わなければならない場合があります。


負債の調査

被相続人が負債を抱えていた場合、その全貌を把握する必要があります。負債がある場合、相続人はそれを引き継ぐか、相続放棄を選択することができます。負債の有無を確認するためには、被相続人の過去の金融取引や借入記録を詳しく調査しなければならず、これも一筋縄ではいきません。


遺言書の存在

被相続人が遺言書を残していた場合、その内容に従って相続手続きを進める必要があります。遺言書が法的に有効かどうかを確認し、内容が法定相続分と異なる場合には、相続人として異議を申し立てることも考えられます。このようなケースでは、弁護士の助けを借りることが多くなります。

(論点)「相続人は、私一人なので、手続きは簡単ですか?」

3.結論


相続人が一人であっても、相続手続きは多岐にわたり、複雑な手続きを要します。書類の準備、財産の評価、税務申告、負債の調査など、すべてのプロセスを適切に遂行するには専門的な知識と時間が必要です。特に、遺産に負債が含まれている場合や、複数の財産がある場合、手続きの複雑さは一層増します。このため、相続手続きが簡単でないことを理解し、必要に応じて専門家の助けを借りることが重要です。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

借金の帳消しや過払い金が戻るといった宣伝が行われていますが、そのすべてが詐欺であるわけではありません。しかし、こうした宣伝には詐欺的な手法が含まれているケースもあるため、注意が必要です。以下に、具体的なポイントを挙げて説明します。


目次


1. 過払い金返還請求の現実


2. 借金帳消しの宣伝とそのリスク


3. 詐欺のリスクと注意点


4. 信頼できる情報源の活用


5. まとめ

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

1. 過払い金返還請求の現実


過払い金の実態:

2000年代後半から2010年代前半にかけて、過払い金返還請求は非常に多くの人々に利用されました。この時期には、消費者金融などが法定上限を超える高金利で貸付を行っていたため、多くの借り手が過払い金を請求できる状況にありました。しかし、現在では、こうした高金利の貸付がほぼ解消されており、過払い金を請求できるケースは非常に少なくなっています。


(裁判所の司法統計を確認すると)


ピーク時:

件数: 約220,000件(2010年)

理由: 高金利の借入が多く、過払い金請求が急増。


現在:

件数: 約10,000件(2023年)

理由: 高金利の借入が解消され、対象となる借入がほぼなくなった。


※つまり、ピーク時の5%ほどしか、過払い事件として存在していないということになります。


過払い金の対象者:

過払い金返還請求の対象となるのは、過去に高金利で借り入れを行った人々です。現在、法定上限金利を守っている貸金業者がほとんどであり、新たな借り入れに関しては過払い金が発生しないため、過払い金の返還請求を行える人は限られています。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

2. 借金帳消しの宣伝とそのリスク


借金帳消しの手段:

「借金帳消し」という言葉は、自己破産や個人再生などの法的手続きを指すことが多いです。これらの手続きは、借金を法的に整理する方法であり、実際に債務を免除または減額することが可能です。しかし、これには一定の条件が必要であり、全ての人が簡単に利用できるものではありません。



手続きの影響:

自己破産や個人再生を行うと、信用情報にその情報が記録され、一定期間は新たな借り入れが難しくなります。また、自己破産の場合は、持ち家や財産を処分する必要があるなど、生活に大きな影響を与える可能性があります。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

3. 詐欺のリスクと注意点


詐欺的な業者の手口:

一部の業者は、過払い金返還や借金帳消しを簡単に行えると謳って、顧客を集めています。こうした業者は、高額な手数料を請求したり、必要のない法的手続きを勧めたりすることがあります。特に、過払い金請求の権利がないにも関わらず、請求ができると偽って手数料を取るなどの詐欺行為が問題となっています。 


怪しい宣伝に注意:

「簡単に借金がゼロになる」「過払い金が必ず戻ってくる」といったキャッチフレーズを使っている業者は特に注意が必要です。こうした宣伝は、現実を誇張していることが多く、詳細を確認せずに契約すると、後で大きなトラブルに発展する可能性があります。


※特に最近ひどいと思った事件は、令和6年6月22日熊本放送が報じた「全国B型肝炎訴訟の熊本弁護団の(元)団長が1億4千万円を着したとされる問題」です。B型肝炎の広告も最近よく見ますよね。


4. 信頼できる情報源の活用


専門家のアドバイス:

借金問題や過払い金請求について検討する場合は、信頼できる弁護士や司法書士に相談することが重要です。彼らは、適切な手続きを踏んで問題を解決するためのアドバイスを提供してくれます。また、弁護士会や司法書士会などの公的な機関も利用できます。


消費者センターの利用:

不安な場合は、地元の消費生活センターに相談することも有効です。消費生活センターは、詐欺的な手口や問題のある業者についての情報を提供しており、具体的なアドバイスを受けることができます。

(論点)借金帳消しや過払い金の広告は詐欺なのか?

5. まとめ


 過払い金請求や借金帳消しを謳った宣伝には注意が必要です。すべてが詐欺というわけではありませんが、中には高額な手数料を要求する悪質な業者も存在します。次の点に注意して対応することが重要です。


過払い金返還請求の現実を理解する:

現在では過払い金を請求できるケースが少なくなっているため、対象となるかどうかを慎重に確認する必要があります。


借金帳消しの手続きとその影響を把握する:

自己破産や個人再生などの手続きには一定の条件があり、生活に大きな影響を与えることがあるため、適切な情報を得ることが重要です。


詐欺のリスクを避ける:

怪しい宣伝や不必要に高額な手数料を要求する業者には注意し、信頼できる専門家や公的機関を活用して問題を解決するよう心がけましょう。


 信頼できる専門家や機関を利用して、適切な情報とサポートを得ることが、トラブルを避けるための最善の方法です。

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

仮登記と処分禁止の仮処分は、どちらも不動産や権利に関する法律手続きにおいて重要な役割を果たしますが、それぞれの目的や効果、手続き内容は異なります。

以下に、仮登記と処分禁止の仮処分の違いについて、具体的な説明を交えながらまとめます。


目次


1.仮登記について

2.処分禁止の仮処分について

3.仮登記と処分禁止の仮処分の主な違い

4.結論

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

1.仮登記について


①定義と目的

仮登記は、登記の内容が最終的に確定していない段階で、将来の登記手続きに備えて権利関係を一時的に登記簿に記録する手続きです。これにより、権利の優先順位を仮に保全し、後に本登記を行う際の権利主張を確保します。


➁具体的な例

例えば、不動産の売買契約が成立したが、正式な登記が完了するまでに時間がかかる場合に仮登記を行うことが一般的です。この仮登記により、契約成立後に第三者が不動産を取得しようとしても、仮登記を行った買主の権利が優先されることになります。


③手続き

仮登記の手続きは、登記所に対して申請書を提出し、必要な書類や費用を納付することで行われます。仮登記は一時的なものであり、将来的に本登記を行うことが前提とされています。


④効果

仮登記は、権利の優先順位を確保するために重要な役割を果たしますが、仮登記自体には完全な対抗力はありません。つまり、仮登記のみでは第三者に対して完全に権利を主張することはできません。本登記が完了することで、初めて正式な権利が確定します。

※このため、本登記を急がないと、仮登記に送れる権利者(本登記することでその登記を失う者)が発生してしまうと、その権利者の「承諾証明書」がなければ、本登記をすることができません。


➄主な利用場面

不動産売買契約の成立後に正式な登記が完了するまでの間の保全

抵当権設定契約の仮段階での権利確保

農地の権利移転における農地法許可待ちの状態での保全

(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

2.処分禁止の仮処分について


①定義と目的

処分禁止の仮処分は、裁判所が、特定の財産や権利に関して、その処分(売却や譲渡など)を一時的に禁止する命令を出す手続きです。この仮処分により、当事者間の紛争が解決するまでの間、財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぎます。


➁具体的な例

例えば、不動産の所有権を巡って争いがある場合に、裁判所がその不動産を処分することを禁止する仮処分を命じることで、裁判が終了するまでの間、不動産の売却や譲渡ができなくなります。これにより、裁判が長引いても、財産の現状が維持され、権利の争いが公正に解決されることが保障されます。

※仮に仮処分の登記後に登記をしたとしても、裁判で権利が認められると、当該権利者の承諾証明書がなくても、簡易な手続きで、その登記の抹消をすることができます。


③手続き

処分禁止の仮処分は、裁判所に対して申立書を提出し、必要な証拠を提出することで行われます。裁判所は、仮処分を命じるために必要な要件を満たしているかどうかを審査し、要件が満たされていると判断した場合、仮処分命令を発出します。


④効果

処分禁止の仮処分は、裁判所の命令によって強制力を持ち、当事者がその命令に従わない場合には、法的な制裁が科されることがあります。これにより、当事者が不動産や権利を不当に処分することができなくなり、財産の現状が維持されます。


➄主な利用場面

不動産や動産の所有権を巡る紛争の間に、財産が不当に処分されるのを防ぐ

企業間の契約違反などで、特定の財産が処分されるのを防ぐ

家庭内の離婚や相続などで、財産分与に関連する財産が勝手に処分されるのを防ぐ


3.仮登記と処分禁止の仮処分の主な違い


①目的の違い


  仮登記:将来の権利関係を確定するための準備として、権利の優先順位を仮に保全することを目的としています。

  処分禁止の仮処分:財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぐことを目的としています。


➁手続きの違い


  仮登記:登記所に対して申請を行い、必要な書類や費用を納付することで手続きが進められます。

  処分禁止の仮処分:裁判所に対して申立てを行い、裁判所の審査を経て命令が発出されます。


③効果の違い


  仮登記:権利の優先順位を確保するが、完全な対抗力は持たない。将来的に本登記を行うことで権利が確定します。

  処分禁止の仮処分:裁判所の命令により強制力があり、命令に従わない場合には法的な制裁が科されることがあります。


④利用場面の違い


  仮登記:主に不動産取引や権利移転の準備段階で利用されます。

  処分禁止の仮処分:財産や権利を巡る紛争がある場合に、その財産や権利の現状を維持するために利用されます。


(論点)仮登記と処分禁止の仮処分の違い

4.結論


 仮登記と処分禁止の仮処分は、それぞれ異なる目的と手続きを持ち、異なる状況で利用されます。仮登記は将来の権利関係を確定するための準備として、権利の優先順位を仮に保全する手続きです。一方、処分禁止の仮処分は、財産や権利の現状を維持し、紛争の対象となっている財産が不当に処分されるのを防ぐ手続きです。

両者の違いを理解し、適切な場面でそれぞれの手続きを活用することが、法的なリスク管理において重要です。


 ちなみに、処分禁止の仮処分の登記での裁判が確定した場合、仮処分に遅れる登記を抹消するには、判決による登記と移転登記を同時に申請する方法があります。

遅れる登記がない場合は、処分禁止の仮処分登記抹消の嘱託を書記官に依頼する必要があります。遅れる登記の抹消には、仮登記のように相手の承諾証明書は必要なく、「単独申請」で登記申請することが可能です。

その際に、添付する書類として「通知証明情報」というものがありますが、これは、抹消される遅れる登記の権利者に対し通知をしたことを証する書面となります。

名義人の登記簿上の住所地に内容証明郵便により通知をし、これを発した日から1週間経過で到達したものとみなされます。

仮登記の承諾証明書よりも手続き上、楽ですし確実です。

裁判するのが面倒だから仮登記を安易に選択すると、後に事故の権利の主張ができないなんてことが起こりえますので、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

相続に関する準備を進める中で、「生前の覚書」が遺言書として有効なのかどうかという疑問を持つ人は少なくありません。

遺言書は、遺産の分割や相続の際に重要な役割を果たしますが、その形式や内容には法律上の厳格な要件が存在します。

本稿では、生前の覚書が遺言書として認められるかどうかについて、具体的な条件や考慮すべき点を詳細に解説します。


目次


1. 遺言書の法的要件

2. 生前の覚書と遺言書

3. 覚書が無効となるケース

4. 遺言書を確実に作成するためのアドバイス

5. まとめ

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

1. 遺言書の法的要件


まず、遺言書として有効であるためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。日本の民法では、以下の3つの形式が主要な遺言の方法として認められています。


1.1. 自筆証書遺言

全文自筆: 遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自筆で書き、押印します。

自筆でなければ無効: 全文を自筆で書くことが求められ、パソコンで作成したものや他人に書かせたものは無効です。

家庭裁判所での検認: 遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。


1.2. 公正証書遺言

公証人の作成: 遺言者が公証人の前で遺言の内容を口述し、公証人が筆記して作成します。

証人の立会い: 遺言者が口述した内容を2人以上の証人が立ち会い、その正確性を確認します。

検認不要: 公証人が作成するため、家庭裁判所での検認手続きは不要です。


1.3. 秘密証書遺言

遺言者が作成し封印: 遺言者が遺言書を作成し、封印します。署名押印は遺言者自身が行います。

公証人と証人の確認: 公証人および2人以上の証人の前で遺言者が封印された遺言書を提出し、内容は確認されません。

検認が必要: 遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

2. 生前の覚書と遺言書


生前の覚書が遺言書として有効かどうかを判断するためには、上記の要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。


2.1. 形式の要件

自筆証書遺言の要件: 覚書が遺言者の自筆で書かれているか、日付と氏名が記載されているかを確認します。また、覚書が押印されていることも重要です。これらの要件が満たされていなければ、覚書は自筆証書遺言として無効とされる可能性が高いです。

公正証書や秘密証書の要件: 公証人や証人の関与がない場合、覚書はこれらの形式を満たすことができないため、公正証書遺言や秘密証書遺言としては無効です。


2.2. 内容の要件

遺言者の意思の明確性: 覚書の内容が遺言者の意思を明確に示しているかが重要です。遺言者の意向が明確でなく、曖昧な記述がある場合、法的に有効な遺言書として認められない可能性があります。

法定相続人の権利: 覚書の内容が法定相続人の権利を侵害している場合や、法定相続分に違反している場合は、その効力が制限されることがあります。


3. 覚書が無効となるケース


 以下のような場合、覚書は遺言書として無効となる可能性があります。


3.1. 法定形式を満たさない場合

自筆でない覚書: パソコンで作成された覚書や、他人が代筆した覚書は無効です。自筆証書遺言としての要件を満たしていないため、法的効力は認められません。

日付や署名の欠如: 覚書に日付がない場合や、遺言者の署名がない場合、遺言書としての法的要件を満たさないため無効となります。


3.2. 遺言の内容が曖昧な場合

明確な意思表示がない: 覚書の内容が不明確で、遺言者の意思が具体的に示されていない場合、遺言書としての効力が認められないことがあります。

誤解を招く表現: 覚書の内容に曖昧な表現や、法的な解釈に誤解を招く可能性のある表現が含まれている場合、無効とされることがあります。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

4. 遺言書を確実に作成するためのアドバイス


4.1. 専門家への相談

弁護士や司法書士の利用: 遺言書を確実に作成するためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。法的に有効な遺言書を作成するための助言を得ることができます。


4.2. 公正証書遺言の作成

確実な手続き: 公正証書遺言は公証人が作成するため、法的要件を確実に満たすことができます。また、家庭裁判所での検認手続きが不要なため、手続きがスムーズに進むメリットがあります。


4.3. 定期的な見直し

内容の更新: 遺言書は定期的に見直し、変更が必要な場合は新しい遺言書を作成します。遺言者の意思が変わった場合や、家族構成に変更があった場合は、遺言書を最新の状態に保つことが重要です。

(論点)生前の覚書は遺言書として有効か?

5. まとめ


 生前の覚書が遺言書として有効かどうかは、法律で定められた形式的および内容的要件を満たしているかによって決まります。一般的に、覚書が遺言書として認められるためには、自筆証書遺言としての要件を満たす必要がありますが、法的要件を満たしていない場合は無効となります。遺言書を確実に有効なものとするためには、専門家の助言を受け、公正証書遺言など、法的に確実な方法で作成することが推奨されます。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)実家の相続手続についての注意点

(論点)実家の相続手続についての注意点

相続人の方が、すでに別所帯を持っており、実家をどのようにすればいいのか、悩まれている方も多いと思います。

今回は、実家の相続手続きをする際の注意点についてお話をしたいと思います。


目次


1. 相続手続きの基本的な流れ

2. 相続手続きにおける注意点

3. 実家の相続における特有の注意点

4. 専門家の活用

5. まとめ

(論点)実家の相続手続についての注意点

1. 相続手続きの基本的な流れ


実家の相続手続きは、以下のような一般的なステップを経て進められます。


①相続の開始:被相続人(親など)が死亡した時点で相続が開始されます。

相続人の確定:戸籍謄本などを用いて法定相続人を確定します。被相続人に子供がいない場合、両親や兄弟姉妹など、関係者全員の確認が重要です。

遺産の調査・評価:遺産のリストアップと評価を行います。具体的には不動産、預貯金、株式、負債などを含みます。

遺産分割協議:相続人全員で遺産の分割方法を協議し、合意を得ます。合意内容は遺産分割協議書に記載します。

➄相続税の申告・納付:基礎控除を超える遺産がある場合、相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行います。配偶者控除(1億6千万円)を適用する場合も、申告が必要です。

⑥登記・名義変更:不動産の登記名義変更や金融機関での名義変更を行います。

(論点)実家の相続手続についての注意点

2. 相続手続きにおける注意点


(1)相続人の調査

相続人の漏れがないか確認: 戸籍謄本を遡って確認し、すべての相続人を確定することが重要です。特に、兄弟姉妹が多い場合や複雑な家族構成の場合、相続人の漏れが起きやすいため、注意が必要です。


(2)遺産の調査

遺産の把握: 実家の不動産以外にも、預貯金や株式、負債など、すべての遺産を漏れなく調査することが大切です。遺産が複数の地域に分散している場合や、海外に資産がある場合は特に注意が必要です。


(3)遺産の評価

不動産評価の方法: 実家の不動産評価には、公示価格や固定資産税評価額、相続税評価額などの評価基準があり、それぞれ異なるため、正確に把握することが求められます。評価額が不適切だと、相続税額や分割協議に影響を及ぼす可能性があります。相続税のための評価については、税理士に確認が必要です。また、不動産登記の基準は、その年度の固定資産税評価証明書又は納税通知書に記載のある、評価額が基準になります。納税通知書の場合は、固定資産税が課税される不動産のみの記載しかありませんので、相続の場合には、固定資産税の評価証明書を取得することが必要となります。


(4)遺産分割協議

全員の合意が必要: 遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。特に実家のような大きな財産は分割が難しく、意見の対立が生じやすいです。話し合いが難航する場合は、第三者の専門家(弁護士、税理士など)の助けを借りることが有効です。


(5)相続税の申告と納付

申告期限を守る: 相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。期限を過ぎると、延滞税や加算税が課されるため、注意が必要です。

節税対策: 生命保険金の非課税枠や配偶者控除など、節税対策を検討することも重要です。専門家のアドバイスを受けて、適切な節税対策を講じることが求められます。


(6)不動産の登記と名義変更

速やかな名義変更: 不動産の名義変更は相続手続きの中でも特に重要です。名義変更を怠ると、後々の売却や担保設定に支障が生じる可能性があります。相続人の同意が得られない場合や、遺産分割が未決定の場合は、遺産分割調停・審判を行うことも検討します。


(7)遺言書の確認

遺言書の存在確認: 被相続人が遺言書を残している場合、遺産分割の際にその内容が優先されます。公正証書遺言、自筆証書遺言などの遺言書が残されている可能性があるため、遺言書の存在を確認します。

遺言書の検認: 自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認手続きが必要です。検認を経ずに開封すると過料が発生するため、注意が必要です。


(論点)実家の相続手続についての注意点

3. 実家の相続における特有の注意点


①不動産の評価と分割

共有名義のリスク: 実家の不動産を共有名義で相続すると、売却や利用に関する意思決定が難しくなることがあります。将来的なトラブルを避けるため、共有名義はできるだけ避け、一人の相続人が取得するか、売却して現金で分配する方法を検討します。


代償分割の検討: 実家を一人の相続人が取得する場合、他の相続人に対して代償として現金などを支払う「代償分割」を検討することが有効です。これにより、公平な相続が可能になります。


➁空き家の管理と処分

空き家問題の対策: 実家が空き家になる場合、適切な管理が求められます。空き家の管理が不十分だと、固定資産税が増加する可能性や、近隣に迷惑がかかる場合があります。売却や賃貸、解体など、空き家の活用方法を検討します。実家に思い入れがあり、地元の管理会社に管理をお願いした場合、高額な管理費用を請求される場合があります。処分で検討された方がいいと思います。


固定資産税の確認: 空き家の状態によっては、固定資産税の特例措置が適用されない場合があるため、現地の税務署や市区町村に確認します。


③住宅ローンの確認


ローンの残高確認: 実家に住宅ローンが残っている場合、残高を確認し、返済方法を検討します。返済が難しい場合は、売却してローンを完済するか、相続放棄を検討します。


4. 専門家の活用


(1)弁護士や司法書士の相談


法律問題の解決: 相続人間でのトラブルや遺産分割の協議が難航した場合、弁護士の助言を受けることが有効です。法的な観点から適切なアドバイスを得ることで、円滑な手続きを進めることができます。


(2)税理士の活用


相続税の申告と節税: 相続税の申告が必要な場合、税理士に依頼することで、正確な申告が可能になります。また、節税対策についても専門的なアドバイスを受けることができます。


(3)不動産鑑定士の利用


不動産の正確な評価: 実家の不動産評価が複雑な場合、不動産鑑定士に依頼して正確な評価を行うことが推奨されます。正しい評価に基づく相続手続きが可能になります。


(論点)実家の相続手続についての注意点

5. まとめ


 実家の相続手続きは、法的な手続きや税金、不動産の管理など、多岐にわたる問題が絡み合うため、慎重な対応が求められます。相続人全員が協力し、適切な専門家の助けを借りながら進めることが、円滑な相続手続きの鍵となります。事前に十分な情報を収集し、計画的に対応することで、トラブルを未然に防ぐことができます。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

遺産分割協議は、相続人同士で遺産をどのように分割するかを決定する重要なプロセスです。この協議は慎重に行わなければならず、失敗すれば長期的なトラブルに繋がる可能性があります。以下に、遺産分割協議において注意すべき6つのポイントをまとめました。


目次


1. 相続人の確認と全員参加

2. 遺産の範囲と評価の確定

3. 遺言書の有無の確認

4. 公平性の確保

5. 争族を避けるための配慮

6. 書面での合意と法的手続きの確認

まとめ

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

1. 相続人の確認と全員参加


 遺産分割協議を行う前に、まず全ての相続人を正確に確認することが重要です。相続人は、民法で定められた法定相続人だけでなく、被相続人(亡くなった方)が遺言で指定した受遺者や、養子なども含まれます。また、協議には全相続人が参加しなければなりません。一人でも欠けると、その協議は無効になります。相続人の確認が不十分だと、後から新たな相続人が現れるなどしてトラブルになる可能性があるため、戸籍謄本を取得して慎重に確認しましょう。


2. 遺産の範囲と評価の確定


 遺産分割協議を行う前に、遺産の全体像を把握することが重要です。遺産には、現金や不動産、株式、車などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。また、被相続人の名義の口座や土地なども確認し、全ての財産をリストアップします。その上で、各財産の評価を行い、公平な分割ができるようにしましょう。不動産の評価には、不動産鑑定士などの専門家の意見を参考にすると良いでしょう。


3. 遺言書の有無の確認


 遺産分割協議の前に、被相続人が遺言書を残しているかどうかを確認する必要があります。遺言書がある場合、その内容に従って遺産を分割します。遺言書が公正証書遺言であればそのまま効力を持ちますが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認が必要です。遺言書の内容に問題がある場合や、相続人全員が合意している場合には、遺言書に基づかずに協議を進めることも可能ですが、その際には慎重な対応が求められます。

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

4. 公平性の確保


 遺産分割においては、相続人全員が公平に遺産を受け取ることが原則です。しかし、実際には相続人それぞれの状況や希望が異なるため、完全に平等に分けることは難しいことが多いです。そのため、各相続人の意見を尊重しつつ、全員が納得できる形で遺産を分割することが求められます。例えば、不動産は現金と違って分割が難しいため、売却してその代金を分配するか、特定の相続人が取得して他の相続人に代償金を支払うなどの方法を検討します。


5. 争族を避けるための配慮


 遺産分割協議は、相続人間での争い(いわゆる「争族」)が起きやすい場面です。争いを避けるためには、協議の進行を公正に保ち、全相続人の納得を得ることが重要です。話し合いが難航する場合は、弁護士などの専門家に仲介を依頼するのも一つの方法です。また、日程調整や協議の場所選びなどにも気を配り、全員が参加しやすい環境を整えることも大切です。

(論点)遺産分割協議で注意すべき6つのポイント

6. 書面での合意と法的手続きの確認


 遺産分割協議で合意が得られた場合、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。この協議書には、全相続人が署名押印する必要があり、それによって法的な効力を持つことになります。協議書が作成されていない場合、後日合意内容に争いが生じるリスクがありますので、必ず書面で残すようにしましょう。また、協議書の内容を確実に実行するために、不動産の名義変更や銀行口座の解約手続きなど、必要な法的手続きも確認し、速やかに行うことが重要です。


まとめ


 遺産分割協議は、相続人全員が納得できる結果を得るための重要なプロセスです。上記のポイントをしっかりと押さえ、慎重に進めることで、トラブルを避け、円満な相続を実現することができるでしょう。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

相続登記義務化に伴う手続きについて、以下の6つのポイントに絞って解説します。この法改正は、2024年4月1日から施行され、日本における不動産の相続手続きに大きな影響を与えます。その手続きの概要を示し、6つのポイントについてお話をしたいと思います。


目次


1. 相続登記の義務化の背景と目的

2. 相続登記の義務化の内容と期限

3. 手続きの流れと必要書類

4. 相続放棄と登記義務

5. 法定相続情報証明制度の活用

6. 過去の未登記不動産の対応

7. まとめ

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

1. 相続登記の義務化の背景と目的


背景と目的: 日本では、長年にわたり相続登記が行われないまま放置されている不動産が多く存在していました。この「所有者不明土地」問題は、土地の有効活用や管理を妨げ、社会的、経済的に多くの問題を引き起こしています。このような問題を解決し、土地の管理を適正化するために、相続登記の義務化が導入されました。これにより、相続発生後に迅速に登記が行われることが期待され、土地の管理や流通の円滑化が促進されます。


2. 相続登記の義務化の内容と期限


内容と期限: 新法では、相続人が不動産を相続した場合、その相続登記を義務付けることが定められました。具体的には、相続人は相続開始から3年以内に登記を行わなければなりません。これに違反した場合、正当な理由がない限り、罰則が科される可能性があります。相続登記を怠ると、10万円以下の過料が課されることになります。これにより、相続登記を迅速に行うことが求められます。

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

3. 手続きの流れと必要書類


手続きの流れ: 相続登記の手続きは、主に以下のステップで行います。


①遺言書の確認: まず、遺言書が存在するかどうかを確認します。遺言書があれば、その内容に従って相続手続きを進めます。

➁相続人の確定: 次に、相続人を確定するために、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本などを取得します。

③遺産分割協議: 相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配方法を決定します。合意が得られたら、遺産分割協議書を作成します。

④相続登記の申請: 必要書類を準備し、法務局で相続登記の申請を行います。

➄必要書類: 相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。


 ㋐被相続人の死亡を証明する戸籍謄本

 ㋑相続人全員の戸籍謄本

 ㋒不動産の固定資産評価証明書

 ㋓遺産分割協議書(遺言書がない場合)

 ㋔登記簿上の住所の記載のある被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票

  ※役場で取得できないケースがあります。その場合は、司法書士に相談しましょう。

 ㋕登記申請書


これらの書類を揃えることで、相続登記を進めることができます。

(論点)相続登記義務化に伴う手続きの6つのポイント

4. 相続放棄と登記義務


相続放棄の場合: 相続人が相続を放棄する場合は、家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行う必要があります。相続放棄が認められると、その相続人は初めから相続人でなかったことになります。相続放棄をした場合、登記義務は発生しませんが、次順位の相続人に登記義務が移ります。したがって、相続放棄を考えている場合は、家庭裁判所での手続きと登記の影響について十分に理解しておく必要があります。しかし、相続登記を長年放置していた場合は、相続放棄ができない場合もあります。


5. 法定相続情報証明制度の活用


法定相続情報証明制度: 相続登記を含む各種相続手続きを簡素化するために、法定相続情報証明制度を活用することが推奨されます。この制度では、法務局で一度、相続関係を証明するための書類を提出すれば、登記や金融機関での手続きを行う際に、その証明書を複数回使用できるようになります。この制度を利用することで、相続手続きの負担が軽減され、効率的に手続きを進めることが可能です。


6. 過去の未登記不動産の対応


過去の未登記不動産: 新法施行前に相続が発生したものの、相続登記が行われていない不動産についても、登記が義務化されました。この場合、相続発生から3年以内に登記する必要はなく、速やかに登記を行うことで義務を果たすことが求められます。過去の未登記不動産がある場合は、早めに相続登記を行い、法的な義務を履行することが重要です。


7. まとめ


 これらのポイントを押さえることで、相続登記義務化に伴う手続きについて理解を深め、適切に対応することが可能です。相続登記は法律に基づいた義務であり、迅速かつ正確に行うことが、財産管理や相続トラブルの回避に繋がります。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)事例で見る相続問題について

(論点)事例で見る相続問題について

相続問題は、多くの家庭や個人にとって避けて通れない問題であり、感情的なトラブルや法的な紛争を引き起こすことが少なくありません。以下では、相続問題の具体的な事例を挙げつつ、主要な問題点や解決策についてまとめます。


目次


1.相続問題の具体的事例

 事例1: 家族間の不公平感

 事例2: 遺言の無効主張

 事例3: 遺産分割協議の難航

 事例4: 未成年の相続人

2.相続問題の解決に向けた一般的な対策

3.まとめ

(論点)事例で見る相続問題について

1.相続問題の具体的事例


事例1: 家族間の不公平感


【背景】

父親が亡くなり、母親と3人の兄弟(長男、次男、長女)が相続人となった。父親は遺言を残しておらず、相続は法定相続分に従うことになった。しかし、長男は父親の生前に家業を手伝っていたため、他の兄弟よりも多くの財産を受け取るべきだと主張。一方で、次男と長女は公平な分配を求めた。

【問題点】

長男は、家業への貢献を理由に法定相続分以上の相続を主張。

次男と長女は、貢献度にかかわらず、法定相続分に基づく公平な分配を希望。

家族間の信頼が損なわれ、感情的な対立が激化。

【解決策】

調停を通じて、長男の貢献を考慮した上で、公平な分配を模索。

弁護士や信頼できる第三者の仲介により、冷静な話し合いを実施。

家族全員が納得できるような解決策として、長男には家業関連の資産を多く配分し、他の財産については法定相続分に基づき分配。

※ここまでくると、司法書士では対応できませんので弁護士をご紹介するようにしています。


 事例2: 遺言の無効主張


【背景】

父親が亡くなり、遺言書が発見された。しかし、その遺言書は特定の相続人(次男)に有利な内容であり、長女は遺言書が無効であると主張した。理由は、遺言書が作成された当時、父親は認知症の診断を受けており、意思能力がなかったとされているためである。

【問題点】

長女は遺言書の無効を主張し、法的手続きに入った。

次男は遺言書が父親の意思に基づくものであり、有効であると主張。

遺言書の有効性に関する法的紛争が発生し、裁判にまで発展。

【解決策】

遺言書の有効性を判断するために、医師の証言や当時の診断書を確認。

法律の専門家を交えて、遺言書の作成過程や意思能力の有無を検証。

裁判所の判断に基づき、遺言書が無効とされた場合には法定相続分での分配、または新たな遺言書の作成を促進。


 事例3: 遺産分割協議の難航


【背景】

母親が亡くなり、遺産分割を行うことになったが、遺産には不動産が含まれていた。この不動産は価値が高く、相続人(兄、妹)間で分割方法を巡って意見が対立。兄は不動産を売却して現金で分割することを提案したが、妹は思い出の詰まった不動産を保持したいと主張した。

【問題点】

不動産を売却するか保持するかで相続人間の意見が対立。

不動産の評価額についても相続人間で異なる意見があり、協議が難航。

感情的な要素が絡み、解決が遅れる。

【解決策】

不動産の専門家に依頼して、公正な評価額を算定。

妹が不動産を保持したい場合、その価値分を他の財産で調整するか、兄に対して代償金を支払う案を提案。

不動産を一部売却して一部保持するなどの柔軟な分割案を検討。


 事例4: 未成年の相続人


【背景】

両親が交通事故で突然亡くなり、未成年の子供(15歳)が相続人となった。遺産には多額の現金や不動産が含まれており、未成年の子供が相続手続きを行うために、後見人が必要となった。しかし、両親が後見人を指定していなかったため、親族間で後見人を巡る争いが発生。

【問題点】

未成年の相続人のために、信頼できる後見人を選定する必要がある。

親族間で後見人の選定を巡る意見の対立が発生。

未成年の子供の利益を最優先に考えた相続手続きが必要。

【解決策】

裁判所に後見人選任の申立てを行い、公正な手続きで後見人を選定。

未成年者の権利と利益を守るため、法律の専門家(弁護士や司法書士)を介して相続手続きを進める。

未成年者が成人するまでの間、後見人が適切に遺産を管理し、必要に応じて生活費や教育費を確保することが重要。

(論点)事例で見る相続問題について

2.相続問題の解決に向けた一般的な対策


①遺言書の作成


【目的】

遺言書は相続人間のトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。明確な指示を残すことで、相続人間の争いを減らし、公正な分配を行うことができます。

【方法】

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的な要件を満たす必要があります。


➁相続税対策


【目的】

相続税の負担を軽減するための対策を講じることが重要です。相続税が高額になる場合、遺産分割が難航する可能性があります。

【方法】

生命保険の活用、生前贈与、遺産分割方法の工夫などを検討します。


③生前贈与


【目的】

生前に財産を贈与することで、相続発生時の遺産分割を円滑にすることができます。

【方法】

 一定額まで非課税となる制度を活用し、生前に子供や孫に財産を贈与することが考えられます。


④家族信託の活用


【目的】

家族信託を利用することで、財産管理や相続の円滑な引き継ぎを行うことができます。特に高齢者や障害者の財産管理に有効です。

【方法】

信託契約を締結し、信頼できる家族を受託者に任命して財産を管理します。


➄法律専門家の相談


【目的】

相続問題は法律が絡むため、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や税理士、司法書士に相談することで、法的な問題を適切に解決できます。

【方法】

 事前に信頼できる専門家を選定し、必要に応じて相談を行います。

(論点)事例で見る相続問題について

2.相続問題の解決に向けた一般的な対策


①遺言書の作成


【目的】

遺言書は相続人間のトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。明確な指示を残すことで、相続人間の争いを減らし、公正な分配を行うことができます。

【方法】

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などの形式があり、それぞれ法的な要件を満たす必要があります。


➁相続税対策


【目的】

相続税の負担を軽減するための対策を講じることが重要です。相続税が高額になる場合、遺産分割が難航する可能性があります。

【方法】

生命保険の活用、生前贈与、遺産分割方法の工夫などを検討します。


③生前贈与


【目的】

生前に財産を贈与することで、相続発生時の遺産分割を円滑にすることができます。

【方法】

 一定額まで非課税となる制度を活用し、生前に子供や孫に財産を贈与することが考えられます。


④家族信託の活用


【目的】

家族信託を利用することで、財産管理や相続の円滑な引き継ぎを行うことができます。特に高齢者や障害者の財産管理に有効です。

【方法】

信託契約を締結し、信頼できる家族を受託者に任命して財産を管理します。


➄法律専門家の相談


【目的】

相続問題は法律が絡むため、専門家の助言を得ることが重要です。弁護士や税理士、司法書士に相談することで、法的な問題を適切に解決できます。

【方法】

 事前に信頼できる専門家を選定し、必要に応じて相談を行います。

(論点)事例で見る相続問題について

3.まとめ


 相続問題は、法的な知識だけでなく、家族間のコミュニケーションや感情的な要素も関わるため、複雑でデリケートな問題です。事前の準備や対策を講じることで、円満な相続を実現することが可能です。


 ここでご紹介した事例は、私が受任した相続ではなく、一般事例として挙げられた内容を取り上げました。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

令和6年4月19日に内閣府が発表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」は、高齢者やその家族が信頼できる終身サポート事業者を選択するための基準を提供し、悪質な事業者からの被害を防止することを目的としています。このガイドラインは、特に契約書の作成、預託金の保全、身元保証契約に関する注意点を示しています。以下にその要点をまとめます。


目次


1. 契約書の作成


2. 預託金の保全


3. 遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約の回避

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

1. 契約書の作成


 ガイドラインでは、終身サポート事業者が提供する契約書について詳細な指針が示されています。具体的には、死後事務委任契約、財産管理契約、事務委任契約など、各種の契約書の作成が求められています。


 死後事務委任契約は、契約者が亡くなった後に、葬儀や財産の処分などの事務手続きについて委任する契約です。この契約書には、具体的な事務内容、委任者と受任者の権利義務、報酬の額と支払い方法などを明記することが推奨されています。契約者が安心して老後を過ごせるように、透明性を確保し、後に紛争が生じないように詳細な記載が必要です。


 財産管理契約については、契約者が生前に自身の財産管理を第三者に委任する契約です。この契約書には、管理対象の財産の種類と範囲、管理方法、報酬の支払い条件などを明示し、契約者の利益を保護することが重要です。


 事務委任契約は、日常の事務作業や生活支援を委任する契約です。具体的な支援内容や支援の範囲、契約期間、報酬などを契約書に明記することで、契約者が安心して生活を委ねることができるようになります。


2. 預託金の保全


 ガイドラインは、事業者が受け取る預託金についても厳格な管理を求めています。特に、預託金の保全措置として信託銀行または信託会社を利用することが推奨されています。


 預託金は、将来のサービス提供や事務手続きの費用として事前に受け取る金銭です。この金額は、事業者の倒産や経営悪化時にも保全される必要があります。ガイドラインは、預託金を信託銀行または信託会社に預けることで、その安全性を確保するよう求めています。信託機関は、厳格な監督下にあり、資金の安全性が高いため、預託金の信託保全は、利用者にとって非常に安心できる仕組みです。


※仮に、事業者名義の預金で管理していた場合、破産した場合に差押え等のリスクにさらされることになります。信託にすることにより、手数料はかかりますが、差押え対象から除外されるメリットがあります。

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

3. 遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約の回避


 ガイドラインでは、遺贈や死因贈与を条件とする身元保証契約を避けることを強く推奨しています。遺贈とは、遺言により財産を譲ることを指し、死因贈与は死亡を原因とする贈与契約です。


 これらの契約は、契約者が死亡後にその財産を保証人に譲渡することを条件とするため、悪用されるリスクが高いです。特に、契約者が認知症などの判断能力の低下により、不適切な契約を結ばされる可能性があります。ガイドラインは、こうしたリスクを避けるため、事業者が遺贈や死因贈与を契約条件とすることを禁止し、身元保証契約において契約者の財産を保全する措置を講じることを求めています。


 身元保証契約は、高齢者が安心して生活を送るために必要なサポートを提供する契約であり、契約者の生活と権利を保護することが求められます。そのため、ガイドラインは、保証人が契約者の財産を不当に取得しないよう、契約内容の透明性と適切な契約書の作成を強調しています。

(論点)身元保証サポート事業(内閣府発表のガイドライン(案)について)

4. まとめ


 内閣府が発表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(案)」は、高齢者やその家族が安心してサービスを利用できるよう、契約書の作成、預託金の保全、遺贈や死因贈与を条件とする契約の回避について詳細な指針を提供しています。このガイドラインに従うことで、利用者は信頼できる事業者を選び、安心して老後を過ごすためのサポートを受けることができるでしょう。


 そして、これらの身元保証サポート事業者の監督官庁はどこかというと、内閣府のHPでも、「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の取組(i)消費者庁において、身元保証や死後事務等を行う身元保証等高齢者サポート事業による消費者被害を防止するため、厚生労働省その他関係行政機関と必要な調整を行うこと。」とされており、事業所の監督官庁による定期的な監査で是正するのではなく、消費者庁に届け出ることにより、ガイドラインに合っていない契約からの消費者保護という仕組みとなっています。

(論点)相続の民間資格の危うさについて

(論点)相続の民間資格の危うさについて

日本では、相続問題がますます複雑化しており、専門家のアドバイスを求めることが一般的です。しかし、近年では司法書士や弁護士といった専門家に依頼せず、民間資格を持つ人々が相続手続きをサポートする事例が増えています。これには費用面の負担軽減や手軽さが利点とされていますが、その一方で重大なリスクも存在します。今回は、相続における民間資格の危うさについて、専門家に依頼しないことのリスクと合わせて考察します。


目次


1.民間資格の概要


2.民間資格の危うさ


3.専門家に依頼するメリット


4.まとめ

(論点)相続の民間資格の危うさについて

1.民間資格の概要


 民間資格とは、国や自治体の公的資格とは異なり、企業や団体が独自に認定する資格を指します。相続に関連する民間資格としては、「相続診断士」や「家族信託コーディネーター」などが存在します。これらの資格は、数日から数週間の短期間で取得可能であり、相続に関する基礎知識を学ぶことができます。しかし、実際の法律知識や実務経験が乏しいことが多く、専門的な判断を要する場面で問題が発生することが懸念されています。


※そんなことはない、インターネット上に転がっている情報を集めればそれなりに相談できるという方がいらっしゃいましたが、それこそ危険で、法律上の判断をしながら、情報の精査ができるのが国家資格者です。仮に、専門的な相談をしたいなら、あなたを信じて相談に来るお客様のためにも、数日から数週間で取れる民間資格ではなく、国家資格を取るべきです。国家資格がベースにある民間資格者なら問題ないと思います。


2.民間資格の危うさ


①法的な権限の欠如


 民間資格を持つ者には、司法書士や弁護士のような法的な権限がありません。たとえば、相続登記や遺産分割協議書の作成といった法的手続きは、法に基づいて専門知識を持った司法書士や弁護士によって行われる必要があります。法律相談も然りです。民間資格者がこれらの手続きを行うことは、法律上許されていないため、無資格のままこれを行うと、違法行為に該当する可能性があります。


➁誤った情報提供のリスク


 民間資格を持つ者が提供する情報が必ずしも正確であるとは限りません。相続手続きには、税務や法務の複雑な知識が必要であり、誤ったアドバイスが財産分配に重大な影響を及ぼすことがあります。例えば、相続税の申告漏れや、遺産分割協議書の不備により、相続人が後にトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。


③責任問題


 民間資格者によるアドバイスが原因で問題が発生した場合、その責任を追及することが難しい場合があります。公的資格を持つ専門家には、職業上の倫理規定や監督機関が存在し、トラブル発生時にはこれに対処するための仕組みが整っています。しかし、民間資格者の場合、こうした制度が不十分であり、被害を受けた依頼者が救済を求めることが難しいのです。


④費用面の不透明さ


 一部の民間資格者が提供する相続サービスには、料金体系が不透明なものが多く、依頼者が知らない間に高額な費用を請求されるリスクがあります。また、事前に契約書を交わさずにサービスを提供するケースも見られ、後になって費用トラブルが発生することもあります。

(論点)相続の民間資格の危うさについて

3.専門家に依頼するメリット


①法的な保障


 司法書士や弁護士といった専門家に依頼することで、法的に認められた資格者が手続きを行うため、法律に基づいた正確な手続きが保証されます。また、これらの専門家は法律に基づいた責任を負うため、トラブル発生時にも安心です。


➁高度な専門知識


 相続には税務や法務、金融など多岐にわたる知識が必要です。専門家は長年の経験と知識に基づき、依頼者にとって最適な解決策を提供することができます。例えば、相続税の適切な申告や、相続人間での公正な財産分配など、専門的なアドバイスが求められる場面での対応が可能です。


③透明な費用体系


 専門家に依頼する場合、事前に契約書を交わし、費用についても明確に説明を受けることが一般的です。これにより、後で不当な請求を受ける心配がなく、依頼者は安心してサービスを利用することができます。


④万が一のトラブルに備えての保険制度


 国家資格の士業には、万が一のトラブルに備えて、団体の補償制度に加え任意の保険に加入しているケースが多いです。何かトラブルがあったとしても、このような制度で保証してもらえるという安心感があります。


4.まとめ


 相続手続きを行う際に、民間資格を持つ者に依頼することは、手軽で費用面でも魅力的に思えるかもしれません。しかし、法的な権限や専門的な知識に欠けることが多いため、誤った情報提供やトラブルのリスクが高まります。相続手続きは人生の中でも重要なイベントであり、専門家に依頼することで正確で安心な対応を得ることができます。専門家のサポートを受けることで、法的に正確な手続きが保証され、依頼者が安心して財産を管理・分配できる環境を整えることが重要です。


参考文献


「相続診断士とは?」 日本相続診断協会

「家族信託コーディネーターの役割」 信託協会

「司法書士法の概要」 日本司法書士会連合会

「相続登記の手続きと注意点」 法務省

「相続税の申告漏れが多い理由」 税理士法人

「弁護士の役割と責任」 日本弁護士連合会

「相続手続きの費用とその内訳」 不動産ジャーナル

「相続における司法書士の役割」 法務省

「相続税の正しい申告方法」 税理士会

「弁護士の費用体系とトラブル防止」 弁護士ドットコム

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

令和6年4月1日に相続登記が義務化されました。義務化の罰則は、最大10万円以下の過料です。この過料を免れるためには、相続登記を申請するか、正当な理由がある場合には、相続人申告登記をすることとなります。この「相続人申告登記」について、解説していきたいと思います。


目次


1.相続人申告登記とは


2.相続人申告登記に必要な書類


3.相続人申告登記の意外な使い方


4.まとめ

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

1.相続人申告登記とは


 相続人申告登記とは、相続によって不動産の所有権が移転した場合に、法定相続人がその事実を法務局に申告し、不動産登記を行う手続きです。この制度は、2024年4月1日に施行された「不動産登記法の一部を改正する法律」により新設され、相続登記が義務化された背景のもと、登記手続きを簡便化し、相続による不動産所有権の変動を適切に記録することを目的としています。


 相続人申告登記は、相続登記義務化の罰則である過料を免れることができます。過料が科せられない正当な理由とは、以下の通りです。


「(1) 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合


 (2) 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合


 (3) 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合


 (4) 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合


 (5) 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合」(法務省HP引用)


 今後、遺産分割協議をする予定だが、現状もめていて話が進まないような場合、義務化の期限である3年以内に相続登記ができないような場合、申出人から「相続人申告登記」を入れておけば、当該申出人については、罰則の過料は免れます。

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

2.相続人申告登記に必要な書類


「一般的に、


ア.(被相続人と申出人の戸籍等)


①被相続人(死亡した方)の死亡した日が分かる戸籍の証明書(戸除籍謄本等)


②申出人が被相続人の子であることが分かる戸籍の証明書


③被相続人の死亡した日以後に発行された申出人についての戸籍の証明書


が必要になります。


1通の証明書で①~③を満たす場合には、その証明書の添付で足ります。」(法務省HP引用)


例えば、申出人である配偶者・子が除籍謄本に含まれている場合などです。


「イ.(登記簿上の名義人と被相続人の住所を証明する書類)


被相続人(死亡した方)の最後の氏名及び住所が登記記録上の氏名及び住所と異なる場合や被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には、被相続人が登記名義人(登記記録上の所有者)であることが分かる被相続人の本籍の記載のある住民票の除票又は戸籍の表示の記載のある戸籍の附票の写し等が必要となります。」(法務省HP引用)


※他のHPで、この書類が含まれていないケースがありました。登記システム上では、本人の特定を「氏名」と「住所」の一致で行います。そのため、最後の住所地と登記簿上の住所地が異なっている場合、住民票の除票で証明することになりますが、子の住民票の除票には「前住所」までしか記載されていません。そのため、「登記簿上の住所」と、「亡くなった住所地」とのつながりを除票では証明できない場合、「戸籍の附票」が必要となってきます。


「ウ.(申出人の住民票の写し(原本))


申出人の住民票の写し(原本)です。住民票上の申出人の氏名のふりがな及び生年月日を記載した場合は、提出する必要はありません。なお、住民票の写しを提出する場合は、マイナンバー(個人番号)が記載されていないものを取得し提出してください。 また、申出人の現在の住所が記載されている法定相続情報一覧図の写しを提出するか、その法定相続情報番号(法定相続情報一覧図の写しの右上に記載された番号)を申出書に記載することで、住所証明情報の添付に代えることができます。」(法務省HP引用)


※申出人も相続人申告登記の情報となりますので、申出人の住民票の写しを添付します。

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

3.相続人申告登記の意外な使い方


 とある方から聞いた話ですが、とある相続人の方が他の相続人と遺産分割協議をすることを打診したのですが、全く連絡をよこさないといったことがあったようです。今後、態度が軟化することも期待できないため、相談に来られた相続人を申出人とする、相続人申告登記を申請し、3年後に過料徴収の通知がなされたときに、遺産分割協議を相手方が打診してくるのを待つ、という使い方をされている方がいるようでした。


 ただし、相手方次第となりますので、本当に遺産分割協議ができるかどうかはわかりません。現状が膠着しているような場合なら、確率は低いと思うのですが、効果があるかもしれませんね。

(論点)相続人申告登記をするには(必要書類と意外な使い方)

4.まとめ


 相続人申告登記をすることで、相続登記義務化の罰則である過料を免れることができます。相続人申告登記に必要な書類は、「被相続人の除籍謄本」「被相続人と申出人の関係を証する戸籍謄本」「被相続人の最後の住所地と登記簿謄本上の住所の一致を証する住民票の除票の写し又は戸籍の附票」「申出人の現在戸籍」「申出人の住民票の写し」となります。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1回実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

就労継続支援事業所は、障がい者が社会的自立を目指すための重要な施設です。

日本の福祉制度において、これらの事業所は障がい者の就労支援と社会参加を促進するための重要な役割を果たしています。

本稿では、就労継続支援事業所の目的、種類、対象者、提供されるサービス、及びその意義について説明します。

また、今「A型」支援事業で起こっている問題についてもお話をしたいと思います。


目次


1.就労継続支援事業所の目的

2.就労継続支援事業所の種類とその内容

3.就労継続支援事業所の意義

4.現在「A型」事業所で起こっている問題

5.まとめ

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

1.就労継続支援事業所の目的


就労継続支援事業所の主な目的は、障がい者に対して安定した職場環境を提供し、職業訓練や生産活動を通じて就労能力を向上させることです。これにより、障がい者が社会に貢献し、自己実現を達成する機会を得ることが期待されます。さらに、これらの施設は、障がい者が社会の一員として尊重され、自立した生活を送るための支援を行います。


2.就労継続支援事業所の種類とその内容


就労継続支援事業所は、「A型」と「B型」の2種類に分けられます。それぞれ異なる特性と目的を持っています。


(A型)

A型は、労働契約に基づいて賃金が支払われる形式です。雇用関係が明確に存在し、障がい者は労働者としての権利と義務を持ちます。このタイプの事業所は、障がい者が通常の企業での就労が難しい場合に、より柔軟な働き方を提供しつつ、一般就労に近い形での労働経験を積むことができます。主な対象は、一定の就労能力を持ち、一般企業での就労が難しい障がい者です。


(B型)

B型は、雇用契約がないため、労働時間や作業内容が比較的自由で柔軟な形式です。賃金は作業量に応じて支払われますが、A型よりも少額になることが一般的です。この形式は、一般企業での就労が困難であり、支援が必要な障がい者に対して、日中活動の場を提供し、社会参加の機会を促進します。主な対象は、重度の障がいや精神的な障がいを持つ人々で、長時間の就労が難しい場合に適しています。


(対象者)

就労継続支援事業所の対象者は、身体障がい、知的障がい、精神障がい、または発達障がいなどを持ち、一般就労が難しいと認められた人々です。これらの施設は、障がいの種類や程度に応じた適切な支援を提供し、個々のニーズに応じた就労支援を行います。


(提供されるサービス)

就労継続支援事業所では、以下のような多岐にわたるサービスが提供されます。


(職業訓練と技術指導)

障がい者に対して、職業訓練や技術指導を行います。これにより、障がい者は新たなスキルを身につけ、就労能力を高めることができます。具体的には、軽作業や製造業務、農作業など、多様な業務が含まれます。


(就労準備支援)

就労継続支援事業所では、就労に必要な基礎的な知識やスキルを習得するための支援が行われます。これには、面接対策や履歴書の書き方、職場でのコミュニケーション能力の向上などが含まれます。


(社会適応訓練)

社会生活に必要な基本的なスキルやマナーを学ぶための訓練も提供されます。これにより、障がい者が職場や地域社会で円滑にコミュニケーションを図り、適応する力を養います。


(生活支援)

就労以外の面でも、生活全般にわたる支援が行われます。例えば、健康管理や金銭管理、日常生活のサポートなどが含まれます。


3.就労継続支援事業所の意義 


 就労継続支援事業所の存在は、障がい者の社会参加を促進し、生活の質を向上させるために極めて重要です。これらの施設は、障がい者が自分の能力を最大限に発揮し、社会に貢献する場を提供します。また、障がい者が働く姿を通じて、社会全体に対する理解と受容の促進にも寄与しています。

 さらに、就労継続支援事業所は、障がい者の家族にとっても大きな支えとなります。家族は、障がい者が安心して働くことのできる環境を提供されることで、精神的な安定を得ることができます。

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

4.現在「A型」事業所で起こっている問題


令和6年6月16日の山陽新聞の記事で「岡山県内A型事業所廃止や規模縮小相次ぐ 300人余り解雇の見通し、報酬改定影響か」という記事がありました。なぜ「A型」でこのようなことが起こっているのか、B型との違いから見ていきたいと思います。


(A型とB型の違い)


①雇用契約

A型: 雇用契約あり、利用者は従業員として扱われる。

B型: 雇用契約なし、利用者は支援を受ける立場。


➁賃金

A型: 最低賃金以上の賃金が支払われ、安定した収入が得られる。(賃金)

B型: 出来高払いで、一般的にはA型よりも低い賃金。(工賃)


③対象者

A型: 比較的軽度の障がいを持ち、一定の就労能力がある人。

B型: 重度の障がいや精神的な障がいがあり、長時間の就労が難しい人。


④支援の内容

A型: 実際の業務を通じて就労訓練を行い、スキルを向上させる。

B型: 軽作業や手作業を通じて日中活動と社会参加を支援。


➄経営の方向性

A型: 収益を上げることが求められ、一般企業に近い経営。

B型: 福祉的な支援が中心で、収益はあまり重視されない。


 B型が、より福祉関連事業に近いが、A型は通常の企業に近いものです。しかし、通常の企業と異なり生産性の向上などの方針をとることは困難で、補助金でその賃金を支払っているところ、福祉関連の報酬基準が定期的に見直されるところ、この報酬改定の影響が出てしまったため、A型の事業廃止やB型への移行をする事業所が出てきたということでした。

(論点)就労継続支援事業所について(A型事業所で現在起こっていること)

5.まとめ


 就労継続支援事業所は、障がい者が自立した生活を送るための重要な支援を提供する施設です。A型とB型の2種類があり、それぞれ異なる特性を持ちながら、障がい者のニーズに応じた柔軟な支援を行っています。これらの施設を通じて、障がい者は社会に貢献し、自己実現を達成する機会を得ることができます。就労継続支援事業所の存在は、障がい者の社会参加と生活の質向上に大きく貢献しており、今後もその重要性は増していくことでしょう。

 一方で、厚生労働省の定期的な報酬規程の見直しの影響もあるため、A型事業所にとっては運用が厳しくなっている状況だと考えられます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

あなたの大切な人生の時間、その価値がいかほどのものか、実際わからない方もいらっしゃいます。当然ですが、お金で時間そのものを買うことはできませんが、お金を払うことで、煩わしい手続きを専門家にお願いすることで、日常を維持することができます。明確に理解している必要はありませんが、あまりにもお金に固執している方を見ると、「ご自身で」ということになります。今回は、専門家にお願いするという論点で、人生の中でのお金と時間について、お話をしたいと思います。


目次


はじめに

1.相続手続きの複雑さと時間の負担

2.精神的負担の軽減

3.お金の節約と最適化

4.時間とお金のバランス

5.まとめ

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

はじめに


相続手続きは、故人の財産を法定相続人や遺言書に従って分配するための重要なプロセスです。しかし、この手続きは非常に複雑で、特に精神的に辛い時期に行わなければならないため、遺族にとって大きな負担となることが多いです。人生において時間はお金では買えない貴重な資源であることを考慮すると、相続手続きを専門家に依頼することには大きなメリットがあります。以下に、その詳細を説明します。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

1.相続手続きの複雑さと時間の負担


 相続手続きには、多くの手続きと書類が必要です。例えば、不動産の名義変更、遺産分割協議、相続税の申告など、各手続きに関連する書類の準備や申請が求められます。また、役所や金融機関などへの訪問も必要です。これらを個人で行う場合、かなりの時間と労力が必要となります。特に、平日に役所や銀行に行く必要があるため、仕事を休んだり、他の重要な活動を犠牲にしたりすることになるでしょう。


 相続手続きを専門家に依頼することで、これらの煩雑な手続きを代行してもらうことができます。専門家は、相続手続きの流れや必要な書類について熟知しており、スムーズに進めることができます。これにより、遺族は自分たちの時間を他の重要なことに使うことができるのです。時間は有限であり、失った時間は二度と戻ってきません。この貴重な時間を、手続きのために浪費するのではなく、自分たちの生活をより充実させるために使うことができるのは、非常に大きなメリットです。


2.精神的負担の軽減


 相続手続きは、家族が亡くなった直後に行わなければならないため、精神的な負担が大きいです。このような状況で煩雑な手続きを行うことは、遺族にとってさらに辛いものとなるでしょう。専門家に依頼することで、精神的な負担を大幅に軽減できます。専門家が手続きを代行してくれることで、遺族は心の整理をつける時間を持つことができ、家族の思い出を大切にしながら、新たな生活に向けて気持ちを整えることができます。


 また、相続手続きには感情的な側面も絡んでくることが多いです。例えば、遺産分割に関する家族間の意見の相違や、遺言書の内容に対する不満など、感情的な対立が生じることがあります。このような場合でも、専門家が中立的な立場からアドバイスを提供することで、冷静で公正な解決を導き出すことができます。これにより、家族間の関係を悪化させずに円満に手続きを進めることができます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

3.お金の節約と最適化


 専門家への依頼には費用がかかりますが、長期的に見れば経済的に有利であることが多いです。相続税の計算や財産評価は非常に複雑で、素人が行うとミスが発生しやすく、結果として過剰な税金を支払うことになりかねません。専門家は、相続税の最適な対策を提案し、合法的に税負担を軽減する方法を提供してくれます。これにより、結果的に大きな節約につながります。


 例えば、相続税の控除を最大限に活用するためのアドバイスや、遺産分割の方法によって税金を減らすことができる場合があります。これらの知識は、専門家ならではのものです。また、手続きのミスによる再提出や罰金といった予期せぬ費用を避けることができるため、経済的にも非常に効率的です。


※アイリスにご相談いただいた場合で、相続税関連のご相談につきましては、提携税理士の面談をセッティングいたします。ワンストップで時短できます。


4.時間とお金のバランス


 相続手続きを自分で行うことで、専門家に支払う費用を節約しようと考える人もいるかもしれません。しかし、手続きにかかる時間と労力、さらには精神的な負担を考慮すると、専門家に依頼することのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。時間はお金では買えない貴重な資源です。その時間を手続きに費やすよりも、専門家に任せて、自分の時間をもっと有意義な活動に使うことが、結果的には最良の選択です。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ➁(人生の中でのお金と時間)

5.まとめ


 相続手続きは、人生の中で避けられない重要なプロセスです。しかし、その複雑さや時間のかかる性質を考えると、専門家に依頼することが賢明です。特に、人生において時間はお金では買えない貴重な資源であり、その時間を有効に活用することが、生活の質を高める上で非常に重要です。専門家に手続きを任せることで、時間とお金を効率的に使い、安心して相続手続きを進めることができます。これにより、遺族は自分たちの時間を大切にし、心豊かに生活を送ることができるのです。

 先日、教訓めいた動画を見ました。内容は、余命いくばくもない方からのメッセージという体で話が進みます。「あなたに、10億円あげると言ったら、きっとあなたは、「はい」と答えるだろう。しかし、10億年あげるが、あなたには明日が来なくなるというと「いいえ」と答える。つまり、明日が来るということは、価値が測れないほど尊いものだということだ。」と言っていました。これは極論めいていますが、実際のところ「時間そのもの」を売っている場所はありません。その代わり、お金で時間を買える場合というのが存在します。その数少ない場合が正に専門家に依頼することだと思います。もちろん、ご自身でできるなら、わざわざ無料相談などに来て時間を浪費せずに、ご自身でやればいいと思います。無料相談を渡り歩いても、細かな手続きを指導してくれる専門家は、おそらくいません。なぜなら、それが専門家の生業なわけですから。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

相続手続きは、亡くなった方の財産や債務を正当に分配するための重要なプロセスです。しかし、この手続きは非常に複雑で時間がかかるため、専門家に依頼することが多くのメリットをもたらします。以下に、専門家に相続手続きをお願いするメリットについて詳しく説明します。


目次


1.手続きの煩雑さからの解放

2.法的リスクの軽減

3.適切な財産評価と分配

4.相続税対策の提案

5.スムーズな遺産分割協議

6.遺言書の作成・検認のサポート

7.複雑な相続ケースへの対応

8. 心理的な負担の軽減

9.まとめ

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

1.手続きの煩雑さからの解放


 相続手続きには、多くの書類作成や提出が必要であり、それぞれが異なる役所や機関に対するものです。専門家に依頼することで、これらの煩雑な手続きをプロフェッショナルが代行してくれるため、自分で行う手間と時間を大幅に削減できます。また、提出書類に不備があると再提出が必要になることも多いため、初めから専門家に任せることで、スムーズに手続きを進めることができます。


2.法的リスクの軽減


 相続手続きには法律が深く関わっており、誤った手続きを行うと法的なトラブルに発展する可能性があります。専門家は相続に関する最新の法規や規制に精通しており、法的に正確な手続きを行うことで、相続人間の争いや税務上の問題を未然に防ぐことができます。これにより、安心して手続きを進めることができます。


3.適切な財産評価と分配


 相続財産には、現金や不動産、株式など多岐にわたる資産が含まれます。これらの資産の評価は、専門知識が必要であり、適切に行わなければ相続税が過大に課される可能性があります。専門家に依頼することで、正確な財産評価を行い、公正かつ最適な分配が可能になります。また、複数の相続人がいる場合、専門家が間に入ることで、公平な財産分配が実現しやすくなります。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

4.相続税対策の提案


 相続税は、相続財産の一定額を超えると発生しますが、その計算方法や控除項目は非常に複雑です。税理士などの専門家は、相続税に関する豊富な知識と経験を持っており、合法的に相続税を軽減するための最適な対策を提案してくれます。これにより、相続税負担を最小限に抑えることが可能です。


※アイリスにご相談いただければ、提携税理士及び他士業との連携で、ワンストップで問題解決に向けて進めることが可能です。


5.スムーズな遺産分割協議


 遺産分割協議は、相続人全員が合意する必要がありますが、意見の対立が生じることが少なくありません。専門家である弁護士が仲介することで、公平かつ効率的な協議が可能となり、円滑な解決が図れます。また、事前に司法書士や弁護士にご相談いただければ、法律に基づいたアドバイスを提供するため、協議内容が法的に問題ないかを確認しながら進めることができます。


※すでに争いがある場合は弁護士が関与することになります。これを予防するための事前の相談につきましては、弁護士、司法書士でも対応可能です。争いが顕在化した時点で、提携の弁護士にお繋ぎをしております。


6.遺言書の作成・検認のサポート


 遺言書がある場合、その内容を法的に有効にするために検認手続きが必要です。専門家は、この手続きを迅速かつ正確に行い、遺言書に記載された内容に基づく円滑な相続をサポートします。また、遺言書がない場合でも、法的に適切な遺産分配を提案してくれるため、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

7.複雑な相続ケースへの対応


 相続には、複雑なケースが多々あります。たとえば、複数の国に資産がある場合や、相続人が海外にいる場合などです。これらの場合、各国の法律に精通した専門家のサポートが不可欠です。また、相続人が未成年である場合や、認知症の親がいる場合など、特殊な事情がある場合も、専門家が最適な解決策を提供してくれます。


8. 心理的な負担の軽減


 相続手続きは、家族が亡くなった直後の精神的に辛い時期に行わなければならないため、心理的な負担が大きいです。専門家に手続きを任せることで、遺族が心の整理をつける時間を確保でき、精神的な負担を軽減することができます。また、専門家が細かな調整や対応を行ってくれるため、遺族は心身の負担を減らして相続手続きに臨むことができます。

(論点)専門家に相続手続きをお願いするということ①(心理的負担の軽減)

9.まとめ


 専門家は、今まで様々な相続手続きを経験しており、相談者に適した内容の手続きをご提案することができます。「何をしていいかわからない」という方にとって、相続の今後手続なんて、ゴールが見えていない状態で対応することになります。関係各所に出向き、話を聞きながら対応していくことになりますが、重複する証明もあるにもかかわらず、個々に対応するようになるために、膨大な手続きにさらされている錯覚をしてしまっている方が多いです。年金暮らしで、時間は有り余っていると感じている方は、ご自身で対応される方もいると思うのですが、仕事をしながら相続手続きをするということは、あまり現実的ではないと考えます。重要な人生の時間をどのように使うのかは、本人次第ということになりますが。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

生前贈与をしたいが、実はその対象建物が未登記だった場合、どのようにすればいいのでしょうか。また、暦年贈与制度を利用するのか、相続時精算課税制度を利用するのかによっても、税理士にお願いする手続きの内容が異なってきます。今回は、暦年贈与制度の基礎控除額110万円を超える場合について、お話をしたいと思います。


目次


1.未登記建物について相続登記義務化の対象範囲に入るのか?

2.未登記建物の生前贈与の手続き

3.暦年贈与制度で行う場合

4.相続時精算課税制度を利用する場合

5.まとめ

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

1.未登記建物について相続登記義務化の対象範囲に入るのか?


 令和6年4月1日に施行された、相続当為義務化ですが、登記簿上の相続による名義変更ができていない場合が対象となります。未登記建物は、法務局に「登記簿は存在しません」。そのため、相続登記義務化の対象からは外れています。


 しかし、このままだと固定資産税を課税できないので、市町村役場の資産税課などは、調査を行い未登記の建物がある場合でも、固定資産税台帳に掲載しています。


 登記されている不動産については、登記が変更された場合、その情報が役場や税務署などに通知される仕組みになっております。ですので、その所有者の名義が誰であるかわかるわけですが、未登記建物の場合、物件は調査できても名義人が変更されたことまでは把握できません。そのため、未登記物件の場合、登記ではなく届出を市町村役場に行うことになります。勿論、提出する届出書以外に、添付書類が必要です。これは、相続だけではなく、売買・贈与の場合にも所定の添付書類は必要になります。


(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

2.未登記建物の生前贈与の手続き


 今回は生前贈与の手続きとなるので贈与になります。贈与も未登記建物の名義を変更するために「贈与契約書」と「名義変更の届出書」が必要です。高松市の場合、資産税課で取得することができます。印鑑については、高松市では認印でもよいらしいですが、各自治体で異なる場合があると思いますので、必ず事前に確認をしてください。


3.暦年贈与制度で行う場合


 暦年贈与制度では、1年間(暦年)に110万円までの贈与は非課税となります。このため、長期間にわたり計画的に資産を分散させるのに適しています。しかし、年間110万円を超える贈与には、贈与税が課されます。税率は贈与額に応じて異なり、最高で55%です。注意点として、連続した贈与は一括贈与とみなされる可能性があるため、慎重に計画する必要があります。


 個人の場合は、確定申告の時期に贈与税の申告をしなければなりません。忘れないように、ご自身で行うか、解らない場合には、税理士に頼みましょう。

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

4.相続時精算課税制度を利用する場合


 特定の親(65歳以上)から子(20歳以上)への贈与に適用され、最大2,500万円まで非課税で贈与できます。相続時にその贈与分が相続財産に加算され、相続税が再計算されます。この制度は、大きな資産を一度に移転する際に有利ですが、相続時に再び税が計算されるため、相続税の負担が増える可能性があります。


 相続時精算課税制度を利用する場合にも、確定申告の時期に届出と申告をしなければなりません。相続時精算課税制度を使うと、その相手との間の今後の贈与で暦年贈与制度を使うことはできなくなりますので、注意が必要です。税理士の無料相談を利用して、暦年贈与制度と相続時精算課税制度のどちらを使った方がいいのか確認する必要があると思います。

(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

5.まとめ


 このように、未登記建物の生前贈与の手続きについては、市町村役場で、「贈与契約書」「届出書」の提出で、問題なく名義の変更をすることができます。そもそも、未登記建物は登記簿が存在しないため、相続登記義務化の対象ではありません。


 しかし、生前贈与の場合、贈与税の検討をする必要があります。相続税を見据えた対策として、「暦年贈与制度」と「相続時精算課税制度」の利用が候補に上がりますが、相続時精算課税制度を利用すると、その相手との今後の贈与では暦年贈与制度は使えなくなる点には注意が必要です。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。


(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)
(論点)未登記建物の生前贈与(贈与の名義変更と税務手続)

(論点)家が建っているのに地目は田?

(論点)家が建っているのに地目は田?

先日、生前贈与の相談で登記簿を確認すると、登記簿の地目は「田」のままになっているのに、すでに建物が存在していました。通常は、建物を建てる際に地目変更を行う必要がありますし、行政の農地転用の申請をして許可を得なければ、農地を宅地に地目変更はできないというのが原則だと思いますが、何があったのでしょうか?


目次


1.家が建っているのに地目が田である場合


2.家を建築する前にすべき手続き


3.なぜこんなことが起こったのか?


4.まとめ

(論点)家が建っているのに地目は田?

1.家が建っているのに地目が田である場合


 登記簿だけから判断すると、当然、農地転用の手続きを経ずに建物を建ててしまっているので、完全にアウトです。しかし、事実確認をしていくと、固定資産税の通知書に記載されている地目は、「田」ではなく「宅地」になっていました。つまり、市町村の役場は、その土地が農地ではなく宅地であることを把握して、ずいぶん前から宅地として課税しているようでした。


 そもそも、違法状態で建築会社が建物を建設するというのは、行政処分の対象となりますので、そもそも引き受けないと考えられます。相談に来られた方に話を聞いても、なんか的を得ませんので、実際に市役所に確認することにしました。

(論点)家が建っているのに地目は田?

2.家を建築する前にすべき手続き


 市役所で聞いたお話をする前に、家を建築する前に、家を建てる土地が農地の場合、どのような手続きが必要なのかお話をしたいと思います。


 まずは、農地に家などを建てるには、農地転用という手続を行います。自分の土地であっても、勝手に農地を造成して家などを建ててはいけません。


 そして、地目変更の手続きについては、以下の手続きを踏まなければなりません。


「農地転用手続・開発関係手続・建築関係手続」→「工事開始」→「工事完了」


工事が完了した後に、役場の農業委員会へ「現況証明願」を依頼して、農地から宅地に変わったことの確認をしてもらいます。確認が終わった段階で、農業委員会から証明書をもらいこれをもって法務局へ登記簿表題部の地目変更を申請することになります。

(論点)家が建っているのに地目は田?

3.なぜこんなことが起こったのか?


 実際に家が建っているということは、農地転用の許可と開発・建築手続きについては終わっているものと考えます。仮に、何の許可も得ずに建築している場合、当然、役場の調査が入り、しかるべき指導が入ります。


 しかし、今回のケースで見ると、固定資産税の納税通知明細には、すでに宅地になっているので、役場側では宅地に変更したことは承知しているということです。


 つまり、「農地転用手続・開発関係手続・建築関係手続」→「工事開始」→「工事完了」、および現況証明まで終わっているのに、法務局に地目変更の申請をしていなかったということになります。


 このために、役場は宅地として認識しているのに法務局の登記簿では農地のままといった現象が現れるわけです。

(論点)家が建っているのに地目は田?

4.まとめ


 結局、相談者の方には、土地家屋調査士の方にお願いして、地目変更の申請をしていただくようにしました。その後、贈与を原因とする所有権移転登記ができるようになります。地目が農地のままだと、農業委員会の許可証の添付を要求されます。


 違法建築かどうかの判断は、「固定資産税の納税通知明細」の地目が、農地のままか、宅地に変更されているかでできると思います。勿論、役場の農業委員会等に確認をすることは必要になってきますが。その後、現況証明(農業委員会に過去の履歴があれば、すぐに取得できます)があれば、土地家屋調査士の方にお願いをして、法務局の表題部の地目の変更登記をしていただければ、問題なく所有権移転登記はできます。


 ただし、違法建築の場合については、役場の関係部署の担当者に、農地転用等の手続きからお願いできるか相談するしかありません。正常な状態にするような手続きが必要となってきます。固定資産税の通知明細の地目が農地のままで、すでに家が建っている状態でしたら、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

相続登記を放置することにより、不動産の権利関係が混乱することは、相続人やその債権者にとって深刻な問題を引き起こします。この権利関係の混乱が具体的にどのような問題をもたらすのか、また相続人の債権者による差押えがどのような影響を及ぼすのかについて、詳しく説明します。


目次


1. 相続登記の放置と権利関係の不明確さ

2. 複数世代にわたる相続での権利関係の複雑化

3. 相続人間の紛争と法的手続きの必要性

4. 相続人の債権者による差押えのリスク

5. 不動産の処分の難しさと市場価値の低下

6. 行政手続きや税務上の問題

7. 法改正による相続登記の義務化

8. まとめ

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

1. 相続登記の放置と権利関係の不明確さ


 相続登記を行わないと、不動産の名義は故人(被相続人)のままとなり、新たな所有者が法的に確定しません。この状態では、不動産の所有権が誰にあるのかが不明確になり、相続人間での権利関係が混乱することになります。このような状況では、不動産を売却したり、担保に提供したりすることが困難になり、資産の流動性が著しく低下します。


2. 複数世代にわたる相続での権利関係の複雑化


 相続登記が何世代にもわたって放置されると、相続人の数が増加し、誰がどの部分の不動産に権利を持つのかを確定するのが極めて困難になります。例えば、祖父母の代で相続登記が行われずにそのまま放置されると、子供や孫の世代までに権利関係が引き継がれ、相続人の間での利害調整が非常に複雑化します。このような状況では、相続人全員の同意を得るのが難しく、遺産分割協議が長期間にわたることになります。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

3. 相続人間の紛争と法的手続きの必要性


 相続登記が行われないと、相続人間での所有権をめぐる紛争が発生するリスクが高まります。例えば、ある相続人が「この不動産は自分のものだ」と主張し、他の相続人が異議を唱えた場合、裁判所での法的手続きが必要になります。こうした紛争は、時間と費用がかかり、相続人同士の関係を悪化させることがあります。


4. 相続人の債権者による差押えのリスク


 相続登記を放置した場合、相続人の個別の財政問題が不動産に影響を与えることがあります。具体的には、相続人の債権者がその相続人の債務を回収するために、相続財産である不動産を差し押さえる可能性が生じます。相続人が複数いる場合でも、特定の相続人の債務が全体の不動産に影響を与えることがあります。


差押えのメカニズムと影響

債権者は、相続人の財産に対して強制執行を行い、不動産を差し押さえることができます。相続登記が完了していない状態では、不動産の権利関係が明確でないため、差押え手続きが複雑化し、他の相続人にも不利益をもたらす可能性があります。例えば、相続人Aが借金を抱えている場合、その債権者はAが所有する部分の不動産を差し押さえようとしますが、登記が未了であるために他の相続人BやCの権利も影響を受けることがあります。

これは、たとえ遺産分割協議が完了していても、差押えの登記と相続登記の前後で優劣が決まります。遺産分割協議が確定しているなら、早めに相続登記を実施しましょう。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

5. 不動産の処分の難しさと市場価値の低下


 相続登記が行われていない不動産は、市場での売却が非常に困難です。所有権が不明確であるため、購入者は法的なリスクを負うことになり、価格が大幅に低下するか、そもそも買い手がつかない可能性があります。また、登記が未了の不動産は、担保としての価値が低く、金融機関からの融資を受けることも難しくなります。


6. 行政手続きや税務上の問題


 相続登記を放置することにより、行政手続きや税務上の問題も発生します。不動産の固定資産税の納税義務者が曖昧になることで、税金の未払いが発生し、自治体からの督促や差し押さえが行われる可能性があります。また、相続税の申告においても、相続人が誰であるかが明確でないと、正確な申告ができず、ペナルティが課されることがあります。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

7. 法改正による相続登記の義務化


 2024年4月1日から、相続登記が義務化されることになり、相続発生から3年以内に登記を行わない場合、過料が課されることになりました【出典】法務省、2024年施行の改正法】。この法改正により、相続登記を早期に行うことが求められるようになり、権利関係の混乱を未然に防ぐための措置が強化されます。


8. まとめ


 相続登記を放置することによる権利関係の混乱は、相続人やその債権者にとって大きなリスクを伴います。不動産の権利関係が不明確であることは、相続人間の紛争を招き、不動産の売却や利用を困難にします。また、相続人の債権者による差押えが行われると、他の相続人にも影響が及び、さらなる権利関係の混乱が生じます。相続登記を適切に行うことで、これらの問題を未然に防ぎ、安心して不動産を管理・活用することが可能となります。法改正により義務化が進む中で、早期の対応がますます重要になっています。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱
(論点)相続登記を放置することで起こる権利関係の混乱

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わっています。暦年贈与と同じ「110万円控除」というキーワードでも、相続時精算課税制度とは、中身が全く異なってきます。セミナーで伺った内容についてまとめてみました。詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。(遺留分対策としても、使える場合があります。)


目次


1.暦年贈与と相続時精算課税

2.令和6年1月1日以降何が変わったのか

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

4.まとめ

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)


 暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。


 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。


 上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。


2.令和6年1月1日以降何が変わったのか


 ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わっています。


 改正される内容は、以下の通りです。


①暦年贈与制度


 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。


➁相続時精算課税


 (令和5年12月31日までに計算式)

  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 (令和6年1月1日以降の計算式)

  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)

            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。


 ※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる


キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。


 セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。


 また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。

(論点)生前贈与のポイント(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

4.まとめ

(まとめ画像→)


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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(論点)遺留分の生前対策について

(論点)遺留分の生前対策について

生前の遺留分対策は、相続において遺留分権利者(配偶者や子供など)が最低限保障されるべき相続分を確保しつつ、被相続人の意思を尊重した財産分配を実現するために重要です。以下に主要な対策を詳しく説明します。


目次


1. 生前贈与

2. 生命保険の活用

3. 信託の利用

4. 遺言書の活用

5. 養子縁組の活用

6. 家族間の合意形成

7.まとめ

(論点)遺留分の生前対策について

1. 生前贈与


(1)生前贈与の意義

 生前贈与は、被相続人が生存中に財産を特定の相続人や第三者に贈与することを指します。これにより、相続開始時の遺産の総額を減少させ、相続税の負担を軽減する効果があります。ただし、贈与税及び、不動産の場合の登録免許税、その際の専門家への報酬等も興梠しなければなりません。


(2)遺留分への影響

 生前贈与は、原則として相続財産に含まれ、遺留分の計算対象となります。ただし、贈与から10年以上経過している場合、その財産は遺留分の計算に含まれません【※】。このため、長期的に計画的な贈与を行うことが重要です。


※ 2020年の民法改正により、遺留分の計算において、遺留分権利者に対する贈与については相続開始前の10年間まで遡って計算されるようになりました(民法1044条)。


(3)具体的な方法

 暦年贈与: 毎年110万円以内の非課税枠を利用して贈与を行う。ただし、相続発生後、7年間遡って、その間に贈与した財産は、相続財産となってしまいます。

 相続時精算課税:こちらは2500万円までの財産を贈与税なしで生前贈与し、相続発生時に2500万円分を相続財産とする手続きです。ここで令和6年1月1日より、年間基礎控除110万円が追加されています。相続時精算課税を使う場合、税務署への届出が必要となります。そして、一度、相続時精算課税を選択すると、暦年贈与を使うことはできなくなりますので注意が必要です。


 教育資金・結婚・子育て資金の贈与: 特定の目的で非課税枠を活用して贈与する。詳しくは税理士にご相談ください。

(論点)遺留分の生前対策について

2. 生命保険の活用


(1)生命保険の特性


 生命保険金は、受取人の固有財産とみなされ、相続財産とは別に扱われます。生命保険金の非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」で設定されており、これを利用することで相続税の負担を軽減できます。


(2)具体的な方法


 受取人を遺留分権利者以外に指定: 特定の相続人が受け取れるように受取人を設定する。


保険金の受取方法の工夫: 被相続人の意向を反映するため、保険金の分配方法を工夫する。

(論点)遺留分の生前対策について

3. 信託の利用


(1)家族信託とは


 家族信託は、被相続人が自分の財産を信頼できる受託者に託し、指定した受益者に利益を分配する仕組みです。信託財産は相続財産とみなされないことから、遺留分対策として有効です。


(2)具体的な方法


 特定信託: 特定の相続人や第三者を受益者とする信託契約を設計する。


 分割信託: 複数の受益者に財産を分割して分配する信託契約を作成する。

(論点)遺留分の生前対策について

4. 遺言書の活用


(1)遺言書の効力


 遺言書を作成することで、被相続人の意向を明確にし、相続人間のトラブルを防ぐことができます。特別受益の持ち戻しを免除することを記載することで、特定の相続人に対して多くの財産を残すことが可能です。ただし、遺留分侵害額請求をなされた場合は、相続人への特別受益の場合、10年以内の遺産は、遺留分侵害額請求の際の遺産の対象となります。


(2)具体的な方法


 持ち戻し免除の記載: 遺言書に、特別受益の持ち戻しを免除する旨を明記する。


 配分の調整: 遺留分を侵害しない範囲で、財産の配分方法を明確に指定する。

(論点)遺留分の生前対策について

5. 養子縁組の活用


(1)養子縁組の意義


 養子縁組は、被相続人と養子との間で法的な親子関係を結ぶことを指します。養子は法定相続人となり、法定相続分が発生します。これにより、相続人の数が増え、結果的に各相続人の遺留分が減少することになります。法律上は、養子の数に制限はありませんが、税務上では制限があります。相続税の基礎控除に加算できる養子の人数には注意が必要です。


(2)遺留分への影響


 養子縁組をすることで、遺留分権利者の人数が増え、それに伴い遺留分の総額が減少します。例えば、相続人が増えることで、1人あたりの遺留分割合が減少し、相続財産を柔軟に配分しやすくなります。一人当たりの法定相続分を下げることができ、結果、遺留分の額も減少します。


(3)具体的な方法


 養子縁組による相続人の追加: 養子を迎えることで法定相続人を増やし、遺留分の減少を図る。


 特別養子縁組の活用: 20歳未満の子供を養子とすることで、相続人の数を増やし、相続財産の分配を調整する。

(論点)遺留分の生前対策について

6. 家族間の合意形成


家族間の協議


相続において家族間の合意形成は不可欠です。被相続人の意向を尊重しつつ、遺留分権利者を含む全ての相続人が納得する形で財産分配を進めます。


具体的な方法


家族会議の開催: 定期的に家族会議を開き、相続に関する理解と合意を深める。


遺留分放棄の協議: 遺留分権利者に対して事前に遺留分の放棄を求める(家庭裁判所の許可が必要)。当然、当事者に納得していただくために相応の財産の提供が必要となります。


※ すべての相続問題に言えることですが、この家族間の合意の形成(コミュニケーション)をしっかりやらず、きっと大丈夫と思いつつ放置し、相続が始まったときに家族間に亀裂が入るといった事案が散見されます。



7.まとめ


 生前の遺留分対策は、遺留分権利者の権利を尊重しながら、被相続人の意思を最大限に実現するための重要なプロセスです。生前贈与、生命保険の活用、信託の利用、遺言書の作成、養子縁組、相続税対策の併用、そして家族間の合意形成など、様々な方法を組み合わせることで、相続が円滑に進行し、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。これにより、相続財産の分配がスムーズに行われ、家族の将来に対する安心感を得ることができるます。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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(論点)遺留分の生前対策について
(論点)遺留分の生前対策について

(論点)相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

相続において特別受益と持ち戻し、遺言書による持ち戻しの免除と遺留分に関する事項は、法的に重要なテーマであり、家族内の公平性を保つために多くの配慮がなされる分野です。以下に、それぞれの概念と関連事項を説明します。


目次


1.特別受益と持ち戻し

2.持ち戻しの具体的な計算方法

3.遺言書による持ち戻しの免除

4.遺留分と持ち戻し免除の関係

5.遺留分侵害額請求の手続き

6.まとめ

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

1.特別受益と持ち戻し


(1)特別受益とは

 特別受益(とくべつじゅえき)とは、被相続人(亡くなった人)が相続人に生前贈与した財産や、相続開始前に特別に利益を受けた場合のことを指します。典型的な例には、結婚資金や住宅購入資金の援助、事業の立ち上げ資金などがあります。これらの贈与は、他の相続人と比較して特定の相続人が過度の利益を得ているとみなされるため、相続分の計算において考慮される必要があります。


(2)持ち戻しとは

 持ち戻し(もちもどし)とは、特別受益を受けた相続人が相続財産を公平に分配するために、その受益額を相続財産に加算する手続きです。これにより、全相続財産の総額を算定し、その上で各相続人の相続分を決定します。


 たとえば、被相続人が死亡時に残していた財産が1000万円で、生前に特定の相続人に300万円の贈与をしていた場合、相続財産は1300万円とみなされます。これを各相続人の法定相続分に基づいて分配します。


 持ち戻しを行う理由は、相続財産の公平な分配を図るためです。特別受益を考慮せずに遺産分割を行うと、生前贈与を受けた相続人が不当に多くの財産を手にすることになり、他の相続人にとって不公平になる可能性があります。


2.持ち戻しの具体的な計算方法


 持ち戻しは、特別受益を受けた時点での価額を基準に行われます。特別受益が持ち戻しされる際の価額は、相続開始時点での評価額を基準とし、特別受益を受けた相続人の相続分から控除します。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

3.遺言書による持ち戻しの免除


(1)持ち戻し免除とは

 被相続人は遺言書を通じて、特定の相続人に対する特別受益の持ち戻しを免除することができます。これは、被相続人が特定の相続人に対して特別な事情や感情的な理由がある場合に、他の相続人の了承を得ることなく行うことが可能です。例えば、特定の相続人が被相続人の介護を行ったり、経済的な援助をしていた場合などに、持ち戻しを免除することでその相続人の貢献を認める形になります。


(2)持ち戻し免除の効果

 持ち戻し免除の効果は、免除を受けた相続人が、特別受益を受けた分を相続財産に加算せずに相続できることを意味します。これにより、他の相続人と比較してより多くの財産を得ることが可能になります。


 例えば、前述の例で、特定の相続人が300万円の特別受益を受けていた場合でも、遺言書で持ち戻しが免除されていると、その300万円は相続財産に加算されず、生前贈与を受けた300万円の財産については、遺産に持ち戻す必要が無くなります。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

4.遺留分と持ち戻し免除の関係


(1)遺留分とは

 遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限保障される相続財産の割合を指します。遺留分は、相続人が被相続人の意思に反して財産を全く受け取れない事態を防ぐための制度です。通常、直系尊属(親)や子、配偶者などが遺留分権利者となります。


 遺留分の割合は法定相続分の半分または3分の1(直系尊属のみが相続人の場合)であり、これにより相続人が最低限保障されるべき財産を確保します。ほとんどの場合が、その割合は、法定相続分の2分の1となります。


(2)遺留分に対する持ち戻し免除の影響


 持ち戻し免除が遺留分に及ぼす影響は、複雑です。遺留分は相続財産の公平な分配を保障するため、持ち戻し免除が遺留分権利者の権利を侵害する場合があります。例えば、特定の相続人に対して多額の特別受益があり、その持ち戻しが免除されると、他の相続人の遺留分が侵害される可能性があるのです。


 この場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権の行使を行うことができます。遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害する範囲内で遺産をもらった相続人に対して請求を行います。この請求は、裁判上でも裁判外でも構いません。つまり、口頭での請求でも効力はありますが、後にもめたときの訴訟の対策として、書面で作成し内容証明郵便で意思表示することをお勧めいたします。請求の結果、遺留分を認めたり、裁判で認められた場合、民法改正前は、財産の返還でしたが、改正後は、金銭的な補償を求める手続きとなりました。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

5.遺留分侵害額請求の手続き


 遺留分侵害額請求は、相続開始後に遺留分権利者が家庭裁判所に対して行います。この手続きにより、遺留分を侵害された相続人は、正当な相続分を取り戻すことができます。

 請求には時効があり、改正民法第1048条は,遺留分侵害額請求権の時効について,「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。 相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」となっています。

相続における「特別受益」、「持ち戻し」と「遺留分」の関係について

6.まとめ


 相続における特別受益と持ち戻し、遺言書による持ち戻しの免除、そして遺留分の関係は、相続人間の公平性を保つために重要な要素です。

 特別受益の持ち戻しは相続財産の分配を公平にするために必要な手続きですが、被相続人の意思により持ち戻しが免除される場合もあります。この場合、遺留分権利者の権利を保護するための制度が整備されており、遺留分侵害額請求によって最低限の相続分が保障されています。

 これらの制度は、相続において被相続人の意思と相続人の権利のバランスを保つために重要な役割を果たしています。


アイリスでは、随時無料済談を受け付けております。来訪、電話、オンラインによるZOOM面談、いずれにも対応しております。ご予約は、下の画像をクリックしてください。入力フォームが現れます。


(論点)外国居住の相続人のサイン証明

(論点)外国居住の相続人のサイン証明

海外に長期居住している場合、日本での住民票及び印鑑証明書は抹消されます。遺産分割協議については、相続人全員の参加と遺産分割協議書には、署名及び実印による押印が要求されます。しかし、相続人の一人が海外居住者だった場合、「印鑑証明書」は取得できません。この場合に使用する「署名証明書(サイン証明書)」が必要となりますが、手続き・種類について解説したいと思います。


目次


1.署名証明書(サイン証明書)とは


2.署名証明書(サイン証明書)の方式


3.まとめ

(論点)外国居住の相続人のサイン証明

1.署名証明書(サイン証明書)とは


 海外に住所を移してしまった日本人(日本国籍有)の方は印鑑証明書を取得することができません。この場合、現地の領事館で取得できるのが署名証明書(サイン証明書)です。署名証明書(サイン証明書)は日本の印鑑証明書に代わるものとして発行されるもので,申請者の署名(又は拇印)が確かに領事の目の前でなされたことを証明するものです。


 署名証明書(サイン証明書)、原則は領事館に出向く必要があります。いきなり当日訪問しても受付してもらえない予約制となっているところもあるため、事前に事前に管轄をする領事館を確認の上で申請方法について問合せしてください。


 しかし、領事館まで遠く離れている場合など,領事館のサイン証明書(署名)を取得することが困難なときは,外国の公証人が作成した署名証明を添付して登記の申請をすることも認められています。

(論点)外国居住の相続人のサイン証明

2.署名証明書(サイン証明書)の方式


 署名証明書(サイン証明書)には2つ形式があります。


①形式1:貼付型又は合綴型といわれる領事館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(遺産分割協議書など)を綴り合わせて割印を行うもの


➁形式2は単独型といって印鑑証明書のようにその紙単体で申請者の署名をで証明するもの


 この2種類があります。法務局で不動産登記などに使用する場合の署名証明書(サイン証明書)は、形式1を求められます。貼付型又は合綴型といわれる署名証明書(サイン証明書)を取得するためには、綴る書面とパスポートなどの必要書類を持参の上、現地の領事館に出向き申請します。


 ですので相続人間の遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書が作成された後ではなければ申請をすることができません。遺産分割協議書と合綴型した証明書は、海外から日本へ送ってもらう必要があります。万が一の郵便事故等に備え、1枚に相続人全員が押印する方式ではなく1人1枚押印する遺産分割協議証明書方式で用意することが望ましいです。


(論点)外国居住の相続人のサイン証明

3.まとめ


 署名証明書(サイン証明書)は、海外在住の日本国籍者が印鑑証明書の代わりに使用できる証明書です。これは申請者の署名(または拇印)が確かに領事の目の前でなされたことを証明するもので、現地の領事館で取得できます。原則として領事館に出向く必要があり、予約制のところもあるため、事前に確認と問い合わせが必要です。しかし、領事館が遠い場合やその他の理由で訪問が難しい場合、外国の公証人が作成した署名証明を使うことも認められています。


 名証明書(サイン証明書)の方式には2つの形式があります。


形式1:貼付型(合綴型)


概要:領事館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した書類(例えば遺産分割協議書など)を綴り合わせて割印を行うものです。


使用例:法務局での不動産登記など。


手続き:綴る書面(遺産分割協議書など)を準備。パスポートなどの必要書類を持参し、領事館で申請。


形式2:単独型


概要:印鑑証明書のように、その紙単体で申請者の署名を証明するものです。


 不動産登記などに使用する場合は形式1が求められます。相続人間で遺産分割協議がまとまった後に申請し、署名証明書を日本に郵送します。郵便事故を避けるため、相続人全員が1枚に押印するのではなく、1人1枚ずつ証明書を作成することが望ましいです。


 また、スケジューリングも領事館が開いている日時に予約して来訪しないといけませんので、事前に遺産分割協議書を送付した後に対応していただく必要があります。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

 また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

(論点)外国居住の相続人のサイン証明
(論点)外国居住の相続人のサイン証明

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

相続人の中に精神疾患がある方がいる場合の遺産分割協議は、特別な配慮が必要となります。どのような配慮が筆応なのかについて、お話をしたいと思います。


目次


1.成年後見制度の利用


2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処


3.まとめ

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

1.成年後見制度の利用


 遺産分割協議は、「相続人全員の参加」が要件です。つまり、相続人の中に精神疾患を患っている方がいる場合でも、その方を除外して遺産分割協議を成立させることはできません。これが大前提になります。性疾患と言っても、どの程度のレベルにあるのかについては、医師の診断にもよると思いますが、意思表示が困難な場合、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。


精神障害がある相続人が意思決定能力を欠いている場合、その相続人の利益を守るために成年後見制度を利用するのが一般的です。この制度では、家庭裁判所が成年後見人を選任し、後見人がその相続人の代理として遺産分割協議に参加します。


成年後見制度には以下の種類があります:


 ①後見:意思能力が欠如している場合に適用され、後見人が全面的に財産管理や法律行為を代行します。


 ➁保佐:意思能力が不十分な場合に適用され、保佐人が特定の行為について同意を必要とします。


 ③補助:意思能力が一部不十分な場合に適用され、補助人が本人の希望に応じて一部の行為について同意を行います。


 家庭裁判所への申立には、申し立てができる方が制限されています。具体的には、本人,配偶者,4親等内の親族,成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」という。),任意後見人,任意後見受任者,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。(裁判所HP引用)


 必要書類は、「申立書」「医師の診断書」「本人の財産に関する書類」などが必要となります。専門家(弁護士・司法書士)に相談するか、裁判所のHPを参照してみてください。


 成年後見人が選任された場合、成年後見人は遺産分割協議に本人の代理人として参加することになりますが、本人の利益を最大限に守るために行動する責任があります。具体的には、遺産分割の内容が相続人にとって不利にならないように注意を払い、適切な分割案を検討します。


 こうしてまとまった遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。この協議書には、すべての相続人(後見人を含む)が署名・捺印する必要があります。精神障害がある相続人の場合、後見人が代理で署名・捺印を行います。協議書の内容が明確で、公平であることを確認することが重要です。


 精神障害がある相続人に対しては、配慮をもって対応することが重要です。必要に応じて、福祉サービスや専門家(弁護士や司法書士など)の助言を得ることも検討してください。精神障害を持つ相続人が適切な支援を受けられるように、家庭裁判所や関連機関と連携することも重要です。

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

2.本人と成年後見人が利益相反の関係にある場合の対処


 特定の事情により利益相反が生じる場合や、成年後見人が適当でない場合などに「特別代理人の選任」が必要となります。

 「後見人が他の相続人である場合」には、注意が必要です。この場合、本人と成年後見人との間に、利益相反関係が生じているため特別代理人の選任をする必要があります。


 家庭裁判所への申立ては、利益相反が生じる可能性がある相続人や利害関係者が行います。特別代理人は相続人の代理として適切な判断を下し、その利益を守ります。特別代理人の役割と責任は重大であり、適切な行動が求められます。相続問題において特別代理人が必要な場合は、早めに専門家に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。


 利益相反関係になっているかどうかがよくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)相続人の中に精神疾患者がいる場合の遺産分割協議

3.まとめ


 精神障害がある相続人を含む遺産分割協議は、法的手続きや専門的な知識が求められるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。専門家のアドバイスを受けることで、法的な手続きがスムーズに進み、全ての相続人の利益が適切に守られることが期待できます。


以上が、精神障害がある相続人を含む遺産分割協議の基本的な流れとポイントです。適切な手続きを踏むことで、トラブルを避け、円満な遺産分割が実現することが期待されます。


 私の経験ですが、相続関連の話し合いの時に心無い言葉を使う親族の方がいました。その親族の方は、被相続人が生前、土地や山林の所有権を自分たちに移転してほしいと言いましたが、断られたため「あなたの躾が悪いから、引きこもりになるんや。」といったそうです。そもそも、親族には相続権はありませんが、精神疾患になる可能性なんて、今の日本ではだれでもある訳です。私が確認した事案は、言った方が相続人ではないので、遺産分割協議では支障はありませんでしたが、その方たちが遺産分割協議に参加した場合、相当揉めると思います。権利を主張するのも大事なのですが、遺産分割協議に集まった方たちすべてに同じだけの権利があることを念頭に、節度ある対応をしていただきたいです。


(論点)相続登記義務化の問題点

 (論点)相続登記義務化の問題点

2021年に改正された民法および不動産登記法により、日本では相続登記が義務化されました。この制度は2024年4月1日から施行されており、相続による不動産の登記が義務付けられています。相続登記の義務化は、不動産の所有者不明問題を解消し、透明性を高めることを目的としていますが、その一方でいくつかの問題点も指摘されています。以下に、その主要な問題点について詳述します。


目次


1. 手続きの煩雑さとコスト負担

2. 罰則のリスク(10万円以下の過料)

3. 相続人間のトラブル

4.まとめ

 (論点)相続登記義務化の問題点

1. 手続きの煩雑さとコスト負担


 相続登記には様々な書類の準備が必要であり、手続きが煩雑であることが大きな障害となっています。


 ①書類の準備:


  戸籍謄本や住民票、不動産の評価証明書など、多くの書類を揃える必要があります。特に相続人が多数いる場合や相続人が遠方に住んでいる場合、これらの書類の収集は時間と労力を要します。


 ➁専門家への依頼:


  登記手続きを確実に行うために、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することが一般的です。しかし、これには相応の費用がかかり、経済的負担となることがあります。特に遺産が少ない場合や相続人が高齢である場合、この費用負担は大きな問題となります。


 ※自治体によっては、相続登記費用の補助金制度がある場合があります。最寄りの市役所等に確認してみてください。

 (論点)相続登記義務化の問題点

2. 罰則のリスク(10万円以下の過料)


 相続登記の義務化に伴い、登記を怠った場合の罰則が導入されました。


  ①罰則の存在: 罰則の存在が相続人に対してプレッシャーを与える一方で、相続手続きを迅速に進める動機にはなるかもしれません。しかし、相続人が手続きに不慣れであったり、高齢や健康問題などで迅速に対応できない場合、罰則の適用は不公平に感じられることがあります。


  ➁罰則の実効性: 実際に罰則がどの程度の頻度で適用されるかについては不透明であり、その実効性に疑問が持たれることもあります。また、罰則が適用された場合の相続人の対応方法や救済措置が十分に整備されていないことも問題です。


 ※法務省から、要件については既に発表されています。過料を免れる方法もありますので、詳しくは専門家である司法書士に確認してください。

 (論点)相続登記義務化の問題点

3. 相続人間のトラブル


 相続登記義務化により、相続人間のコミュニケーションや協力が求められますが、これがトラブルの原因となることがあります。すでに発生している相続において、相続人間でもめているため塩漬けにしていたケースが見受けられますが、義務化により、何らかの解決策を講じて、相続登記を勧めなければならなくなっています。


 ①相続人間の意見の相違: 相続人間で遺産分割に関する意見が一致しない場合、登記手続きが進まないことがあります。特に、相続財産が不動産のみの場合や共有持分が複雑な場合、協議が難航することがあります。


 ➁遠隔地に住む相続人: 相続人が遠隔地に住んでいる場合、連絡や手続きの調整が困難となり、手続きの遅延や誤解が生じやすくなります。これにより、相続人間の関係が悪化するリスクもあります。


 すでにトラブルが発生している場合は、弁護士に相談したほうがいいかもしれません。もめてから時間がたっている場合、家庭裁判所で「遺産分割調停」又は「遺産分割審判」で何らかの決着をつけることができます。

4.まとめ


 相続登記義務化は、日本における不動産管理の透明性を高め、所有者不明の不動産問題を解消するための重要な改革です。しかし、その一方で、手続きの煩雑さやコスト負担、罰則のリスク、相続人間のトラブルといった様々な問題点が存在します。これらの問題に対処するためには、専門家による支援体制の整備、罰則の適用基準の明確化などが必要です。相続登記義務化の制度が円滑に運用され、実効性を持つためには、これらの課題に対する継続的な改善と支援が不可欠です。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


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(論点)相続登記義務化の問題点
(論点)相続登記義務化の問題点

相続登記義務化に関する説明

相続登記義務化に関する説明

2021年の民法および不動産登記法の改正により、日本では相続登記が義務化されることとなりました。この改正は2024年4月1日から施行され、相続による不動産の登記が義務付けられることで、所有者不明の不動産の問題を解消し、透明性を高めることが目的とされています。以下では、相続登記義務化の背景、具体的な内容、そしてその影響について詳しく説明いたします。


目次


1.相続登記が義務化に至った背景


2.改正の内容


3.今後想定される影響


4.まとめ

相続登記義務化に関する説明

1.相続登記が義務化に至った背景


 日本では、相続登記が未完了のまま放置されている不動産が多く存在します。相続人が相続登記を行わない理由として、手続きの煩雑さや費用の問題が挙げられます。しかし、これによりいくつかの深刻な問題が生じています。


 ①所有者不明不動産の増加:


  不動産の所有者が明確でない場合、公共事業の用地取得や再開発が困難になることがあります。特に、インフラ整備や災害対策において、迅速な対応が求められる場面で支障が出ることがあります。実際に、東日本大震災の際には、所有者不明の土地のために、復旧が遅れていました。


 ➁空き家問題:


  相続登記が行われずに放置された不動産が空き家となり、防災や防犯の観点から地域社会に悪影響を及ぼしています。空き家は放火や不法侵入のリスクを高めるだけでなく、景観の悪化や資産価値の低下を招きます。

相続登記義務化に関する説明

2.改正の内容


 相続登記義務化に関する改正では、以下のような具体的な内容が盛り込まれています。


 ①相続登記の義務化:


  相続が発生したことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務付けられます。(すでに発生している相続については、令和6年4月1日より3年以内)相続登記を行わない場合、罰則が科される可能性があります。これは相続人が自身の権利を明確にし、適切に不動産を管理するための重要なステップです。


 ➁相続登記の簡素化:


  手続きの簡素化を図るため、必要書類の取得が容易になります。具体的には、戸籍謄本や住民票の取得手続きが簡略化されるほか、オンライン申請の導入も進められています。これにより、相続人の負担が軽減され、スムーズに登記手続きを行うことが可能になります。


 ③所有者不明土地の管理制度の整備:


  自治体が所有者不明の土地を管理できる制度が整備されました。これにより、放置された土地の適切な管理が期待され、公共事業や地域開発の障害が取り除かれることが期待されます。

相続登記義務化に関する説明

3.今後想定される影響


 相続登記義務化により、いくつかの重要な影響が見込まれます。


 ①相続人の義務の明確化:


  相続人は、不動産の相続が発生した場合に速やかに登記手続きを行う義務があります。これにより、相続人間でのトラブルが減少し、不動産の管理がより効率的に行えるようになります。特に、相続人間での共有持分の明確化が進むことで、不動産の有効利用が促進されます。


 ➁不動産市場の透明性向上:


  相続登記が義務化されることで、不動産の所有者が明確になります。これにより、不動産取引の透明性が向上し、市場の信頼性が高まります。特に、投資家にとっては安心して取引を行える環境が整うことが期待されます。


 ③公共事業の円滑化:


  所有者が明確な不動産が増えることで、公共事業の用地取得がスムーズに進むようになります。これにより、インフラ整備や地域開発が効率的に行われ、地域社会全体の発展に寄与します。


 ④空き家問題の解消への第一歩:


  相続登記が義務化されることで、空き家の発生が抑制されます。これにより、防災や防犯の観点からも地域の安全性が向上し、住環境の改善が期待されます。また、適切に管理された不動産は、地域の資産価値向上にも寄与します。

4.まとめ


 相続登記の義務化は、日本における不動産管理の改善と透明性の向上を目的とした重要な改革です。相続人はこの新しい制度に対応するために、相続が発生した際には速やかに登記手続きを行うことが求められます。これにより、社会全体としての不動産管理がより適切に行われることが期待されています。


 不動産の相続登記が義務化されることで、所有者不明の不動産が減少し、地域社会の発展や不動産市場の健全化が進むことが期待されます。この制度は、相続人にとっても権利を守り、不動産の有効利用を促進する重要な役割を果たします。相続登記の手続きを確実に行い、新しい制度に対応することが、将来的なトラブルを防ぐためにも重要です。


 また、ご自身の権利を主張するため(不動産を処分する場合に、契約の当事者を主張するため)に、相続登記をしておかなければできません。将来、所有している不動産を処分しようと考えている方は、相続登記は早めにしておくことをお勧めいたします。


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相続登記義務化に関する説明
相続登記義務化に関する説明

(論点)エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートと遺言書は、どちらも人生の終わりを迎える際に必要な事項を整理しておくための書類ですが、それぞれの目的や法的効力には大きな違いがあります。今回は、エンディングノートと遺言書の違いについて解説したいと思います。


目次


1.エンディングノートとは

2.遺言書とは

3.エンディングノートと遺言書の比較

4.遺言書に法的効力が及ばない付言事項とは

エンディングノートと遺言書の違い

1.エンディングノートとは


エンディングノートとは、自分の希望や思いを家族や友人に伝えるためのものです。


記載する内容として以下のものが主なものです。


 ①医療や介護についての希望

 ➁葬儀の方法や希望

 ③デジタル資産の管理方法

 ④親しい人へのメッセージ

 ➄遺産の分配についての希望(法的効力はありません)


 エンディングノートには法的効力はありません。そのため、遺産分割の際には遺言書の内容が優先されます。エンディングノートはあくまで家族や関係者が故人の希望を理解するための参考資料となります。

エンディングノートと遺言書の違い

2.遺言書とは


遺言書とは、法律に基づいて、遺産の分配や相続人の指定を明確にするためのものです。


 遺言書の内容として、民法上で以下の内容を定めることができます。


 ①遺産の分配方法の指定

 ➁相続人の指定

 ③遺言執行者の指名

 ④その他法律に基づく指示


 エンディングノートとは異なり、遺言書は法的に効力があり、適切に作成されている場合、遺産分割や相続において法的に拘束力があります。自筆証書遺言で法務局以外で保管されている遺言書は、相続発生後、家庭裁判所の検認を経ることで、法的効力が確定します。


 自筆証書遺言書でも、法務局に保管されている場合や、公正証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けなくても、相続発生時に法的効力を生じます。


 遺言書には、遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言・公正証書遺言の2種類があります。これらは法律に従って正しく作成される必要があり、特に公正証書遺言は公証人の関与及び、遺言者の意思確認時に証人2名の立会が求められます。遺言書の内容は、遺言者又はその代理人とのヒアリング等により、公証人が遺言書を作成します。


一方で、自筆証書遺言の場合、遺言者本人が自筆で作成するため、法的効力を生じるように専門家のサポートなどが必要になるばあがあります。せっかく遺言書を書いても、法的効力が生じなければ意味がありませんから。

エンディングノートと遺言書の違い

3.エンディングノートと遺言書の比較


(目的)エンディングノートは個人の希望を伝えるためのものであり、遺言書は法的に遺産分割を指示するためのものです。


(内容)エンディングノートは医療、葬儀、デジタル資産など幅広い希望を含むことができるのに対し、遺言書は主に遺産分割に関する事項に限定されます。


 法的効力 エンディングノートには法的効力がないのに対し、遺言書には法的効力があります。


 エンディングノートと遺言書を併用することで、故人の意向をより明確に伝え、法的に確実な形で遺産を分配することができます。また、最近はやりのデジタル資産についても、パスワードやアクセス方法なども、エンディングノートに記載しておくことで、遺産を見つけやすくすることも可能になります。

エンディングノートと遺言書の違い

4.遺言書に法的効力が及ばない付言事項とは


遺言書の付言事項とは、遺言書に法的拘束力のある事項とは別に、遺言者が相続人や遺族に対して伝えたいメッセージや希望を書き加える部分のことです。これには法的拘束力はありませんが、遺言者の意向や思いを伝えるための重要な役割を果たします。


 つまり、家族への想いなどについては、遺言書の中の「付言事項」に書きしたためることができます。付言事項には、法的効力が及ばないため、甲的効力を及ばしたい内容は、別項目で記載しなければなりません。


「付言事項」には以下のような内容を記載します。


 ①感謝の言葉

 ➁遺産分割の理由

 ③遺族へのメッセージや希望


などです。


 付言事項の重要性は、法的拘束力はないものの、遺言者の思いを直接遺族に伝える手段として非常に重要です。これにより、遺族は遺言者の真意を理解しやすくなり、遺産分割に関する争いを防ぐことにもつながります。遺言書に付言事項を加えることで、遺言者の意向がより明確に伝わり、遺族間の調和が保たれることが期待されます。

エンディングノートと遺言書の違い

5.まとめ


 このように、エンディングノートと遺言書は、別の働きがあります。エンディングノートを書いても、法的効力が生じないため、その中で「長男に全財産を相続させる」と記載しても、遺産分割協議をして遺産を分割しなければ、個々の財産の帰属先が明確にはなりません。使い分けをして、「安心」を手に入れましょう。


 もし、よくわからない場合には、専門家に相談することをお勧めいたします。

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

海外が関連すると、相続手続きは一気にハードルが上がります。被相続人が海外で亡くなった場合、相続放棄の手続きは、どのようにすればいいのでしょうか?管轄の家庭裁判所ってどこになるのか?少しお話をしたいと思います。


目次


1.管轄の家庭裁判所はどこ?


2.どの士業にお願いすればいいのか


3.まとめ

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

1.管轄の家庭裁判所はどこ?


 相続放棄の管轄の家庭裁判所は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。その住所地が、海外であった場合、外国の裁判所への相続放棄というのが原則になるわけです。家事手続法では、日本の裁判所に相続放棄の管轄を認めていません。


 しかし、その国に相続放棄のような手続きがそもそもなかったり、仮に相続放棄に類似の手続きがあっても、制約があり相続放棄類似の手続きができないといったことが起こりえます。さらに、首尾よく外国の裁判所で相続放棄ができたとしても、その効力が日本国内でも有効とは限りません。日本国内の債権者に対抗できない相続放棄の手続きをしたとしても、意味がありません。


 このような場合、民事訴訟法で以下のように規定されています。


「(管轄裁判所の特例)


第十条の二 前節の規定により日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属する。


 相続放棄制度がないことや、日本での相続放棄の手続きが必要な理由を主張立証して、日本の家庭裁判所に相続放棄の緊急国際裁判管轄を認めてもらう必要があります


 そして、日本の裁判所に原則的に国際裁判管轄がない場合に、特別に日本の裁判所の緊急国際裁判管轄を認めてもらう場合の裁判所は必ず東京家庭裁判所になります

 海外に居住する被相続人が亡くなり、多額の借金がある場合、若しくは、すでに離婚した配偶者が海外で死亡し、債務がいくらあるのかわからないため、子に借金を負わせたくないなどの理由で、相続放棄の手続きを行う場合には、東京の家庭裁判所に問い合わせた方がいいです。ただし、事例的に取り扱った件数が多いようですとすんなり手続きに入れますが、緊急国際裁判管轄を認めてもらうためには、認めてもらう必要があることを立証しなければなりません。

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

2.どの士業にお願いすればいいのか


 以上のように、緊急国際裁判管轄を認めてもらうためには、必ず東京家庭裁判所で行うことになります。ここで、どの士業に頼めば、手続きがスムーズに進むのかについてお話をしたいと思います。


 司法書士は、読んで字のごとく「司法の書類作成をする者」となります。行政書士では無理です。しかし、今回のように書類作成のみならず、その前段階で「緊急国際裁判管轄」を認めてもらう必要がありますので、弁護士一択だと思います。


 認定司法書士には、簡易裁判所における訴額140万円以下の民事訴訟については、訴訟代理人となることができますが、家庭裁判所は地方裁判所扱いです。書類作成だけで、ご本人に知識がなく代理人を必要としている場合は、認定司法書士でも出る幕はありません。

(論点)被相続人が海外で亡くなった場合の相続放棄

3.まとめ


 他の相続手続きもそうなのですが、グローバル社会になっているのに、海外が関係すると、一気にそのハードルは高くなります。今回は、相続放棄ですので、相続発生後の対応になります。


 しかし、遺産分割協議も外国に相続人が済んでいるというだけで、やはりハードルは上がります。この場合は、生前に遺言書を作成し、遺産分割協議をしなくてもいい様にしておくことで、煩雑な手続きを避けることができます。この場合でも、債務は相続人に来ますので、相続放棄をするとなると、海外から相続放棄手続きを被相続人の死亡井の住所地を管轄する家庭裁判所に行わなければなりません。当然ですが、期限もあります。


 生前に、海外に居住割ている方は、事前に専門家に相談しておいた方がいいかもしれませんね。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

戸籍や住民票について、士業には、「職務上請求」というものがあります。職務上請求については、なんでもかんでも士業なら取得できるといった誤った認識の依頼してくる方がいらっしゃいます。が、当然、なんでもかんでも取得できるというわけではありません。職務に関連していなければ、取得は士業と言えどもできません。詳しく解説いたします。


目次


1.本人請求ができる範囲


2.職務上請求で取得できる範囲


3.職務で密接に関係すると言っても・・・


4.まとめ

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

1.本人請求ができる範囲


 戸籍を本人が本人のものを取得するのは当然できますが、それ以外にどの範囲まで、取得できるのでしょうか?


 配偶者、祖父母、父母などの直系尊属、子、孫などの直系卑属の戸籍が範囲となります。自分で戸籍を取得する場合、本籍のある市区町村の役場で関係が確認できない場合には、関係が分かる戸籍で証明しなければなりません。証明できないと、請求している本人との配偶者・直系尊属・直系卑属といった関係を役場の窓口の担当者がわからないためです。


 まずは、請求者本人の戸籍や改正原戸籍などを取得して、そのあとに請求することになると思います。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

2.職務上請求で取得できる範囲


 先にも書きましたが、「職務上請求」は、士業の職務に関連している場合をもって、取得が可能となります。例えば、相続登記をするために遺産分割協議書を作成しなければならないとき、法定相続人全員の参加が義務付けられていますので、この場合は、法定相続人に関連する戸籍を取得することができますが、遺言書作成となりますと、話は大きく変わってきます。遺言書(特に公正証書遺言)を作成する場合、士業に依頼したとしても、その範囲は、依頼者(遺言者)本人が、取得できる範囲と受遺者のものまでとなります。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

3.職務で密接に関係すると言っても・・・


 相続登記をした配偶者の方が遺言書を作成するときに、戸籍の取得の依頼がありました。その時に、本人で取得できる範囲までであることを告げると、「先生、相続登記の時に、相続人全員の戸籍取得してくれたじゃないですか?」とおっしゃられましたが、職務内容が異なってしまいますので、上記範囲までの取得しか、職務上請求でも許されていません。職務で取得できる範囲があることを伝え、納得していただきました。


 行政書士として遺言書作成のご依頼を受任しても、行政書士の職務上請求書では、本人取得範囲までしか認められていません。依頼があれば制限なしに戸籍謄本や住民票を取得できるというわけではなく、依頼者が本人又は第三者として請求できるものを代わりに請求できるに過ぎません。依頼者の方が請求できないものは、いくら職務上請求でも取得することができません。職務上請求は、法令上万能ではありません。


 しかし、職務上請求を使うと、取得できてしまうケースがあります。ですので、権限外の取得や、興信所などに職務上請求を販売する事件が後を絶たないわけです。


※行政書士会では、職務上請求書購入の際、申請書類には「誓約書」「使用済みの職務上請求書」「研修(職務上請求に関する研修)の終了証」の添付を要求されます。

(論点)戸籍の本人請求と職務上請求

4.まとめ


 稀にですが、戸籍の取得のみの依頼があることがありますが、お断りするようにしています。戸籍の取得のみでは、根本となる職務ではないためです。それに、トラブルに巻き込まれることが、極めて高い確率で予想できるためでもあります。


 専門家である士業が、適切に職務上請求を使ってこそ意味があります。管理も当然必要なのですが、管理しやすくするために、職務上請求は、複数冊購入することもできますが、必ず1冊ずつ購入するようにしており、厳重に保管しております。


 以上のことからわかるように、独身の方で、ご兄弟の方に遺言書を作成される方の場合には、依頼者の方から、受遺者の方に戸籍等の取得のお願いをしていただいております。

(論点)成年後見人の遺産分割協議への参加

成年後見人の遺産分割協議への参加

相続人の中に成年後見人がついている場合、遺産分割協議について、当該相続人の法定代理人として、成年後見人が参加して行うことになります。成年後見人が遺産分割協議に参加するにあたり注意すべき点がいくつかありますので解説していきたいと思います。

目次

1.家庭裁判所の許可が必要か?

2.被後見人の利益を最優先

3.利益相反の回避

4.適切な専門家の助言

5.遺産分割協議書の作成と確認

6.透明性の確保

7.まとめ

成年後見人の遺産分割協議への参加

1.家庭裁判所の許可が必要か?


 成年後見人が判断能力を欠いている相続人(本人)に代わり、遺産分割協議に参加する場合は、家庭裁判所の許可は不要です。

 しかし、家庭裁判所と相談しながら本人の利益を守る観点から、協議内容に問題がないか判断した方が良いでしょう。判所の許可はいりませんが、事前に相談等をしておいた方が、後のトラブル回避にもつながります。

 なにより、後見人には善管注意義務があり、被後見人の権利を守ることが職務だからです。


 ただし、遺産分割を行った場合は、その結果を裁判所への定期報告の際に報告する必要があります。

成年後見人の遺産分割協議への参加

2.被後見人の利益を最優先


 先にも書いた通り、成年後見人には善管注意義務があります。

 そして、成年後見人の最も重要な役割は、被後見人の利益を保護することです。

 遺産分割協議においても、被後見人の権利や利益が最大限に保護されるようにする必要があります。適切な分割が行われるよう、注意深く協議内容を検討し、不利な条件を避けることが求められます。


 以上のために、「後見人は被後見人の法定相続分の財産を確保しなければいけない」ことになります。法定相続分は、成年被後見人の保証された権利ですので、その確保が求められるわけです。


 ですので、合理的な理由がない場合や、合理的な理由があっても裁判所が認めてくれない場合には、代理人として本人(被後見人)が法的に有する権利(法定相続分)を相続放棄したり、不当に少ない相続分で合意したりすることはできません。


3.利益相反の回避


 遺産分割協議には複数の相続人が関与するため、利益相反の問題が生じる可能性があります。成年後見人が他の相続人の利益と被後見人の利益との間で板挟みになることがないよう、利益相反を避けるための措置が必要です。必要に応じて、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることも考慮すべきです。


 このような状況が生じるケースは、司法書士や弁護士が成年後見人ではなく、親族(相続人の一人)が、成年後見人になっている場合です。親族成年後見人の場合には、利益相反の注意が必要です。

成年後見人の遺産分割協議への参加

4.適切な専門家の助言


 専門家が成年後見になっている場合には、問題となることは少ないと思いますが、親族成年後見人の場合ですと、法律の知識が乏しいため、専門家のサポートを要することがあります。

 遺産分割の手続きは法的に複雑であるため、弁護士や司法書士などの専門家の助言を受けることが重要です。成年後見人が正確かつ適切に手続きを進めるためには、専門家のサポートが不可欠です。


5.遺産分割協議書の作成と確認


 遺産分割協議がまとまった場合、その内容を遺産分割協議書として文書化する必要があります。

 この文書には全相続人の署名と捺印が必要です。成年後見人は被後見人に代わって署名を行いますが、内容をしっかり確認し、被後見人に不利益がないようにすることが重要です。


6.透明性の確保


 遺産分割協議の過程および結果は、透明性を保つことが重要です。成年後見人は、被後見人や関係者に対して適切な説明を行い、協議内容が明確かつ公正であることを示す必要があります。


成年後見人の遺産分割協議への参加

7.まとめ


 成年後見人が遺産分割協議に参加する際には、被後見人の利益を最優先ることが不可欠です。また、利益相反の回避、専門家の助言の活用、協議書の適切な作成、透明性の確保が求められます。これらの注意点を踏まえ、慎重に手続きを進めることが重要です。


(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

相続登記において、住所が異なるが、戸籍の附票で同一性を証明することが必要となります。生前贈与で持分を数回に分けて移転している方の相続登記にて、同一物件内で、住所表記が異なっている場合にはどのような影響が出るのか、解説したいと思います。


目次


1.不動産登記簿のシステム


2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性


3.同一であることを確認できたとしても


4.まとめ

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

1.不動産登記簿のシステム


 法務省の不動産登記のシステムについて、「同一性(本人であることを判別)」を「氏名」と「住所」で見極めています。つまり、住所が異なるが、氏名は同じという場合、変更の登記をしておかなければ、同一人とはみなされないわけです。


 所有権を売買により第三者に移転する場合、その前提として住所・氏名を現状に合わせるために「変更登記」をしてから、売買による所有権移転登記がなされます。仮に、この変更登記を抜かした場合は、却下となってしまいます。決済の際には、特にこの点を調査し、変更登記が必要かどうかの判断をしなければなりません。

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性


 それでは、相続登記の場合にはどのように実務で行っているのかと言いますと、被相続人(登記簿の名義人で亡くなった方)の住所が現状と異なる場合には、前住所が登記簿上の住所ですと「住民票の除票」の添付で構いません。


しかし、登記簿上の住所が、前住所よりも前の住所である場合には、「戸籍の附票」を用いて、同一性の証明をすることになります。直近の相続については問題はないのですが、ずいぶん前に亡くなった方の相続登記をする場合、この「住民票の除票」も「戸籍の附票」も廃棄されてしまっている場合があります。


 この場合の対応として、「廃棄証明書」を取得し、同一性を証明する「住民票の除票」も「戸籍の附票」すでにないことを相続登記申請書に記載し、他の方法での同一性の証明をすることになります。


 ①住所と戸籍謄本に記載されている本籍の住所が同一である場合には、これだけで証明可能。


 ➁権利証の添付で、被相続人本人であることを証明可能。


 ③上申書を作成し、これに相続人全員が署名、実印による押印をして、全員の印鑑証明書を添付することで証明責任を免れます。


 上記の3つの手続きが必要となります。


 現住所が異なる場合で、住所のつながりを証明できない場合、被相続人の同一性を証明が、一つのポイントとなります。そして、この証明は、登記官の検査によりなされますので、書類がそろっていれば、相続登記は可能となるわけですが、住所を変更していない場合の問題点は、これ以外にもあります。

(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

3.同一であることを確認できたとしても


 さて、相続登記の審査のために、被相続人の同一性を証する書面として「住民票の除票」または「戸籍の附票」が必要なことは、すでにお話しました。


 それでは、不動産登記システム上でも何も問題がないのかと言いますと、場合によっては弊害が出てきます。


 所有権全部の移転や同一の住所で登記されている持分を相続人に相続させる場合には問題とはなりませんが、例えば、1筆の土地を戦前の相続対策で、一部移転を複数回実施しており、その間に住所が変わったにもかかわらず、過去の住所の変更をしなかった場合に、問題が起こります。


 それは、「登記の目的」が、単純な「所有権移転」や「○〇持分全部移転」とはならず、「○〇持分全部移転(順位番号3番の持分)及び○〇持分全部移転(順位番号4番の持分)」という表記になってしまいます。


 これは、登記官の審査で同一性が証明できたとしても、システム上では、住所が変更されていなければ、別人と扱われてしまうためです。



4.まとめ


 以上、所有権などの登記名義人が、住所・氏名が変更になった場合には、変更登記をすることで、上記のような問題を防ぐことができます。登記簿を見た方が、「先生、何かミスったの?」と言われる場合がありますので、書類の返却の際には、必ず、ご説明をさせて頂いております。


 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。


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(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)
(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

(論点)相続対策としての「一時払い終身保険」活用

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

一時払い終身保険(生命保険)(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。

生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。


目次


1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか

2.受取人は誰が一番いいのか

3.まとめ(体験談含む)

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか


 被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。


 注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。


 保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。


 これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

2.受取人は誰が一番いいのか


 前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。


 ①配偶者(妻)を受取人とした場合

  配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。なぜなら、2次相続でこの保険金が、配偶者の遺産となるからです。


 ➁子供を受取人とした場合

  一番効果が出るケースです。


 ③孫を受取人とした場合

  子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。


 厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。

相続対策としての「一時払い終身保険」活用

3.まとめ


 生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。


 次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。


 実際にあった話として、とある証券会社に相続手続きで解約した後、管理口座にまとまった金額の預金ができました。まだ、相続税の支払いも終わっていないのに、営業を配偶者にかけて生命保険契約を締結させようとしました。事前にご相談がありましたので、相続税の支払いで現金が足りない場合、生命保険を解約しないといけない状況となることが考えられ、この場合の解約返戻金は、元本割れを起こします。相続税を支払ったのちに考えても遅くはないことを説明し、専門家の立場ではなく、人として、その証券会社は、あなたのことなどどうでもいいと思っていることを伝えました。ひどい話ですよね。


 相続対策が必要な場合、税理士を含めた無料相談でじっくり説明し、一時払い終身保険の活用などの対策が必要な場合、知り合いに保険会社の方がいない場合には、こちらからご紹介しております。勿論、紹介料などの費用は掛かりません。単に保険会社の方を紹介するだけです。


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令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

令和6年4月1日に施行されたのは、相続登記義務化だけではありません。不動産登記において、所有権の登記名義人について、任意・必須項目が追加されています。その内容について、解説したいと思います。


目次


1.旧姓の併記


2.会社法人等番号


3.外国人名のアルファベット表記


4.まとめ

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

1.旧姓の併記


 不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)により、現在の所有権の登記名義人の氏名に旧氏を併記することができるようになりました。結婚等により、姓が変わった方が所有者の場合、旧姓の氏名もカッコで表記できるようになりました。


(表記)


 権利部(甲区)


 順位番号  登記の目的  受付年月日・受付番号 権利者その他の事項


  1    所有権移転  年月日第〇号     香川県高松市番町一丁目1番1号


                          香川 髙子


                         (讃岐 髙子)


 ただし、旧姓表記ができる所有者である登記名義人の要件があります。それは、


「旧氏は現在の所有権の登記名義人の氏名にのみ併記することができ、これ以外の者は、旧氏併記の対象とはなりません。


また、日本の国籍を有しない者については、旧氏を併記することはできません。」


 申出をすることができる場合として


「次の(1)及び(2)の登記を申請する場合に、それぞれに定める者が当該登記の申請人である場合には、登記官に対し、その一の旧氏を申請情報の内容として、当該旧氏を登記記録に記録するよう申し出ることができます(※)。(規則第158条の34第1項)


※併記したい旧氏が登記される氏と同一である申出をすることはできません。


 また、次の(1)及び(2)に定められた方以外の方が申し出ることはできません。


(1) 所有権の保存若しくは移転の登記、合体による登記等(不動産登記法(平成16年法律第123号)第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。) 所有権の登記名義人となる者


(2) 所有権の登記名義人の氏についての変更の登記又は更正の登記 所有権の登記名義人


  ※名前や住所のみの変更の登記の申請と併せて申出をすることはできません。」


(法務省HP引用)


 つまり、所有権を取得した者が、所有権保存・所有権移転登記等を行うときや、氏名の変更が生じたときのみにしかできません。例えば、すでに今の姓で登記がなされている場合に、住所変更のみ生じ、住所変更の登記を申請する場合は、同時に旧姓の登記をすることはダメということを言っています。


(登記申請例)


登記の目的 所有権移転


原 因 令和○年○月○日売買


権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号


法 務 太 郎( 登 記 太 郎


義 務 者 ○○郡○○町○○34番地


    甲 野 花 子


添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報


代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報


旧氏を証する情報


登記識別情報(又は登記済証)を提供することができない理由 □不通知 □失効 □失念 □管理支障 □取引円滑障害 □その他( ) □登記識別情報の通知を希望しません。 令和○年○月○日申請 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)


(以下省略)

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

2.会社法人等番号


 令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として法人識別事項が追加されました。この理由としては、法務省から以下の通り説明があります。


①所有権の登記名義人である法人の識別性が向上。


➁令和8年4月1日からは、所有権の登記名義人が会社法人等番号を有する法人であって、その会社法人等番号が所有権の登記に記録されているときは、会社法人等番号を検索キーとして、商業・法人登記システムの情報に基づき、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をすることが想定されていため。


とされています。







(法人識別事項申出書の例)


申出の目的 ○番所有権変更


法人識別事項証明情報 会社法人等番号 1234-56-789012


申 出 人 ○○市○○町一丁目34番地 法務商事株式会社


    代表取締役 法 務 太 郎


添付情報 法人識別事項証明情報(会社法人等番号がある法人に関しては、なしとなります) 代理権限証明情報


令和○年○月○日申出 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)


(以下省略)


 ここで、「法人事項証明情報」とは何かといいますと、「民法等の一部を改正する法律により、令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(以下「法人識別事項」といいます。)が追加されました。」とあります。すでに閉鎖されている法人の場合には、会社法人等番号を確認することができる閉鎖事項証明書又は閉鎖登記簿謄本を提供する必要があります。

令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

3.外国人名のアルファベット表記


 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際(※1)には、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供する必要があります。また、添付情報として、ローマ字氏名を証する情報(※2)を提供する必要があります。ただし、代位により登記を申請する場合その他の登記名義人となる者等以外の者が登記を申請する場合において、登記名義人となる者等が住民基本台帳に記録されていない外国人であるためローマ字氏名を証する情報の提出が困難であるときは、例外的にローマ字氏名を申請情報として提供しないこととして差し支えありません。


(法務省HP引用)


例外の代位登記によりアルファベットが住民基本台帳に乗っていないなどの理由がある場合のみ、アルファベット表記のみでもよいというもので、原則、カタカナ表記(アルファベット表記)という形で申請するようになります。


(登記申請書の例)


登記の目的 所有権移転


原 因 令和○年○月○日売買


権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号


ジョン・スミス(JOHN SMITH) 義 務 者 ○○郡○○町○○34番地


義 務 者  甲 野 花 子


添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報 代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報 ローマ字氏名証明情報


※ローマ字氏名証明情報について、具体的には、「住民票の写し(ローマ字氏名が記載されているものに限ります。)」


4.まとめ


 今回ご紹介した不動産登記についての変更点について、1.旧姓の併記は「任意」ですが、2.会社法人等番号と3.外国人のアルファベット表記については、「必須」事項となります。


 今後、不動産登記で所有権が法人もしくは外国人に移転する場合には、注意が必要となります。

(論点)外国在住者の相続放棄

(論点)外国在住者の相続放棄

最近、外国在住者の方からの相談も増えてきました。その中で、「相続放棄」の手続きを外国からでもできるのかといった質問がありました。手続き自体はできるのですが、相続放棄には期間制限があります。被相続人の所在地の家庭裁判所に申述することになるのですが、提出する書類を集めるのも一苦労します。今回は、外国在住の日本人の相続放棄について、解説したいと思います。


目次


1.相続放棄とは


2.相続放棄に必要な書類


3.どの士業にお願いするのが良いのか?


4.まとめ

(論点)外国在住者の相続放棄

1.相続放棄とは


 相続放棄は、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産を受け取らない決定をする法的手続きです。これにより、相続人は財産だけでなく、負債やその他の義務も放棄します。相続放棄を選択する理由として、被相続人の負債が多いために相続することが不利と考えられる場合や、特定の家庭内事情がある場合などが挙げられます。


①相続放棄の手続き


 ㋐家庭裁判所への申述:


  相続放棄をするためには、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。


 ㋑必要書類:次項で記載します。


 ㋒相続放棄の申述に関する照会書の送付:


  照会書とは、今回の申述について、申述者の相続放棄の意思の確認と背景状況などを確認するために送付されます。内容が不明瞭や裁判所が確認したい事項がある場合、出頭を求められる場合がありますので、返答に関しましては専門家と相談したほうがいいです。


※原則、相続放棄は書面のやり取りで完結する手続きですが、家庭裁判所へ出頭を求められる場合もあります。


 ㋓申述の結果通知:


  申述書が受理されると、家庭裁判所から相続放棄が認められた旨の通知が送られてきます。


➁相続放棄の効果


 ㋐全面的な放棄:


  相続放棄をすると、その相続人は被相続人の財産や負債を一切引き継がなくなります。


 ㋑後順位相続人への影響:


  相続放棄が認められると、次順位の相続人に相続権が移行します。例えば、配偶者が相続放棄をすると、子供に相続権が移ります。


③注意点


 ㋐相続放棄の取消:


  原則として、一度認められた相続放棄は撤回できません。ただし、詐欺や脅迫による相続放棄は例外として認められる場合があります。


 ㋑限定承認との違い:


  相続放棄は財産も負債も一切引き継がないのに対し、限定承認は相続した財産の範囲内で負債を返済することを条件に相続を承認する手続きです。

(論点)外国在住者の相続放棄

2.相続放棄に必要な書類


(配偶者・第1順位の相続人の場合)

 ①申述人の戸籍謄本


 ➁被相続人の戸籍謄本 (申述人と同一の戸籍の場合 不要)


 ③被相続人の住民票除票又は戸籍附票


 ④第1順位の相続人が孫の場合は,孫の親(被相続人の子)の死亡がわかる戸籍謄本も必要


 ➄収入印紙 800円分 切手 84円×2枚(本人の持参による提出の場合は, 84円×1枚)


 ※切手の必要額と枚数については、事前に管轄の家庭裁判所に確認を取ってください。


 ⑥海外在住者の場合、在留証明書及びサイン証明(署名証明)も必要

※上記ケース以外の必要書類につきましては、裁判所HPを参照してください。

(論点)外国在住者の相続放棄

3.どの士業にお願いするのが良いのか?


 相続放棄は、特に負債が多い場合や家庭内での複雑な事情がある場合に有効な手段です。しかし、手続きには法律的な知識が必要となるため、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。


 戸籍等の取得に関しましては、司法書士も弁護士も「職務上請求」により取得が可能です。


 今回の前提である、海外在住の日本人の相続放棄の手続きについて考えますと、時間的な余裕があり、ある程度ご自身で行える知識があれば、費用面で見れば司法書士でも構わないと思いますが、司法書士には、裁判所とのやり取りの「代理権」がありませんので、申述書提出後の照会書の受け取り等につきましては、行うことができません。申述書を提出した後、照会書の受領や結果の受領の代理までお願いしたい場合には、費用は掛かりますが、弁護士にやってもらった方がいいと思います。


4.まとめ


 外国在住の日本人の方が相続放棄をする場合、戸籍等の取得については、司法書士・弁護士でも問題ありませんが、家庭裁判所とのやり取りを代理してもらう場合には、弁護士の方がいいです。ただし、費用は司法書士にお願いする場合よりもかかります。司法書士にお願いする場合、家庭裁判所とのやり取りは、ご本人で外国からのやり取りとなります。相続放棄は、相続を知ってから3ケ月です。時間的なゆとりがない場合には、弁護士に代理していただくのがいいと思います。

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

先日、遺産分割協議書を作成し署名と実印による押印を実施したのですが、印鑑証明書と照合すると、明らかに印影がかけた状態のものがありました。

他の書類も確認したのですが、すべて印影の丸枠のほとんどが出ていない状態でしたので、実印の現物を確認すると、完全に欠けている状態でした。

このような場合、どのような対応をすればいいのか、実体験をもとにお話をいたします。


目次


1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)

2.印鑑がかけている場合の対応

3.まとめ

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)


これは、私が香川県の高松市役所HPの内容と、今回の事案の問い合わせについての話をしたいと思います。


香川県高松市役所での取り扱い


  まずは印鑑を登録できるのは、高松市に住民登録がある15歳以上の方

   ※意思能力のない方は、印鑑登録をすることができません。

  ※成年被後見人の方は、本人が窓口にお越しになり、法定代理人(成年後見人)が同行している場合に限り、申請することができます。

  そして、登録できる印鑑は一人1つです。

  住民票に旧姓(旧氏)併記を申請し、記載された方は、旧姓(旧氏)でも印鑑登録ができます。


  一方で、登録できない印鑑については、

①住民登録している氏名と異なるもの

➁職業、資格など、氏名以外の事項を表しているもの

③自己流のくずし文字、極端な図案化などで、本人の氏名を表してないもの

④印影の大きさが、一辺の長さ8ミリメートルの正方形に収まる小さなもの

➄印影の大きさが、一辺の長さ25ミリメートルの正方形に収まらない大きなもの

⑥ゴム印など変形しやすいもの

輪郭がないもの又は30%以上欠損しているもの

⑧竜紋や唐草模様等を外郭としたもの

⑨押印すると文字が白くなるもの(逆さ彫り印)

⑩同一世帯内の方が既に登録しているもの

 ※⑦輪郭が仮に20%あれば登録できるのかと言いますと、高松市役所では、登録を控えていただくように話をしているようです。(問い合わせで確認)

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

2.印鑑がかけている場合の対応


高松市への問い合わせで、輪郭部分がかなりかけた印鑑でしたので、かけた状態での登録はできないと言われました。

そこで、印鑑屋に同行し、新たに印鑑を購入いただき、その足で市役所窓口に行き、買った印鑑を登録し印鑑証明書を取得しました。


 本人が行った場合、数十分で印鑑証明書まで発行されますが、本人以外の代理人の場合、

「登録者ご本人宛に郵送による照会をしますので、登録までに1週間程度かかります。窓口には、申請時と回答書持参時の2回、お越しいただくことになります。」

とのことで、すぐに印鑑証明書を取得することはできません。注意が必要です。

(論点)遺産分割協議書の実印押印と印鑑証明書

3.まとめ


 相続で必要となる添付書類である遺産分割協議書には、実印で押印の上、印鑑証明書を添付します。もちろん、印影と実印が異なる場合には、相続登記はできません。


 ご高齢になられ、「もう必要ないだろう」と、実印がかけたままにされている方もいらっしゃるようですが、相続は、いつ発生するかわかりません。

 かけた実印を所有されている方は、お元気なうちに印鑑登録のやり直しをすることをお勧めいたします。高松市では、ご本人以外の方が印鑑の登録をやり直す場合、1回の来訪ではできなくなっております。

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

令和6年4月1日に施行された「相続登記義務化」ですが、猶予期間3年以内に相続登記を正当な理由なく放置した場合、最大10万円以下の過料を科されます。それでは、その「正当な理由」とは何なのか、また、正当な理由に該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりませんが。


目次


1.相続登記義務化とは


2.相続登記義務化の過料が科される場合


3.相続登記義務化の過料を免れる場合


4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法


5.まとめ

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

1.相続登記義務化とは


 相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。


 また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)


2.相続登記義務化の過料が科される場合


 正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは


 ※正当な理由の例


 (1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース


 (2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース


 (3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース


 (4)経済的に困窮している場合


 などが挙げられています。

4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法


「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。


(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

 この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

5.まとめ


 最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。


 また、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。


 今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。


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(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)
(論点)相続登記義務化(過料を免れる「正当な理由」とは)

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

被相続人に配偶者・子が無く、すでに両親も他界しているため、兄弟姉妹に相続が発生してしまっている場合、遺産はどのように分ければいいのでしょうか。

相談者の方が、積極的に亡くなった方の身の回りの世話をしていて、他の相続人が何もしていなかった場合、世話をしていた相続人は多く遺産をもらえるのか?遺留分は考慮しないといけないのか?

解説していきたいと思います。


目次


1.兄弟姉妹への相続

2.寄与分制度

3.遺産分割協議をするにあたり

4.まとめ

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

1.兄弟姉妹への相続


まずは、相続人の順位を見ていきたいと思います。

配偶者がいる場合、この方は常に相続人となります。

そして、血族相続人とその順位は、第1順位(子又はその代襲相続人)、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹又はその代襲相続人)。

ここで注意したいのは、血族第1順位の子の代襲相続人と、第3順位の兄弟姉妹の代襲相続人の範囲が異なる点です。


 ①子の代襲相続人 被代襲者の子であること。被相続人の直系卑属であること。

 ➁兄弟姉妹の代襲相続人 被相続人の子であること。

つまり、子の代襲は再代襲があり、兄弟姉妹の代襲相続人には再代襲はありません


 また、法定相続分も変化します。

 ①配偶者・子 各2分の1

 ➁配偶者・直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1

 ③配偶者・兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1


上記は配偶者がいた場合ですが、いない場合、各順位ごとの相続人間で人数分の按分となります。

ただし、代襲相続人が複数人いる場合は、被代襲相続人の法定相続分を代襲相続人の人数で除した数でさらに按分します。


今回の相談では、亡くなった方の兄弟が4名おり、今回の相談者以外の方たちはすでに亡くなっていて、甥姪が複数人いるとのことでした。

この時点で、相談者が受け取れる法定相続分が4分の1であることを説明しました。


その時に、「私は、〇〇さんを亡くなるまで世話してきたが、他の兄弟は全く寄り付かなかった。亡くなった本人も全部私にくれると言っていた。だから、私が多く遺産をもらうということはできないか?」との質問を受けました。

(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

2.寄与分制度


寄与分制度は、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献に応じて相続分を増やすことができる制度です。以下に寄与分制度の主要なポイントを説明します。


①寄与分の要件


(1)特別の寄与:

寄与分を主張するためには、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な寄与をしたことが必要です。一般的な扶養や介護の範囲を超えた貢献が求められます。


(2)寄与の種類:

寄与の具体的な例としては、以下のようなものがあります。


㋐被相続人の事業に対する労務提供

㋑被相続人の事業に対する財産提供

㋒被相続人の療養看護

㋓その他、被相続人の財産の維持・増加に特別な寄与をした行為


➁寄与分の算定方法

寄与分は、被相続人の財産全体の中で寄与の程度に応じて算定されます。具体的な額や割合は、相続人間で協議して決定しますが、協議が成立しない場合は家庭裁判所が決定します。


③寄与分の効果

寄与分が認められると、その分だけ他の相続人の相続分が減少します。寄与分は被相続人の遺産全体に対して加算されるため、寄与者の取り分が増加します。


④寄与分を主張する手続き

協議:まず、相続人間で寄与分について協議を行います。協議が成立すれば、その合意に基づいて遺産分割を行います。

家庭裁判所への申し立て:協議が成立しない場合、家庭裁判所に寄与分の申し立てを行うことができます。家庭裁判所は、寄与の程度や具体的な事実を基に寄与分を判断します。


⑤注意点

寄与分の請求期間:相続開始後に一定の期間内に寄与分を主張しないと、その権利が消滅する場合があります。具体的な期間は法律で定められていますので、早めの対応が必要です。

証拠の収集:寄与分を認めてもらうためには、特別の寄与を立証する証拠が必要です。例えば、被相続人の事業への貢献を示す書類や証言などを準備することが重要です。

※証拠があっても、具体的な金額として寄与していなければ認められるのは困難です。


寄与分制度は、相続人が被相続人に対して特別な貢献をした場合、その貢献を公正に評価するための制度です。

通常の寄与では足りません。なぜなら、法定相続分で報われていると判断されるためです。


3.遺産分割協議をするにあたり


寄与分の話をした時に、相談者の方は、かなり落胆されていました。

しかし、相続の権利者は、法定相続人すべてにありますので、この点については納得していただきました。そして、現在凍結されている被相続人の預金の解除をするためには、「遺産分割協議書」が必要であることを説明しました。

先ほどの寄与分の話から、遺産分割協議は相続全員でするものであり、協議が成立しなければ預金も凍結されたままになってしまうことを説明し、他の相続人たちの様子を見て、今までの事情をはなしをして、自身の相続分について意見をもらうようにしてみてくださいとアドバイスをいたしました。


(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

4.まとめ


今回のケースでは、「遺言書」があれば、全額今回の相談者の方が遺産を取得できたケースです

「遺留分」があるから、全部は無理なのでは?とお思いになる方もいるかもしれませんが、「遺留分」を主張できるのは、配偶者・子・直系尊属のみで、兄弟姉妹には主張することができません。

遺産を全部上げるという言葉だけではなく、「遺言書」という形で残しておかなければ、法的な効力は生まれません。


生前の相続相談を専門家にしておく意味は、十分に感じられるケースでした。



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身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

相談の中に、「身元保証サポート」を家族の一人が利用したばかりに、おかしなことになっているというものがありました。以前、身元保証サポートの問題点として、「亡くなった後の遺産がサービス提供者へ渡っている」点を指摘していましたが、今回は、ご家族がいるのに、何らかの原因で身元保証サポートを利用するとどのようなことが起こるのか、お話したいと思います。


目次


1.法定代理人とは


2.身元保証サポートのサービス内容


3.今回の相談で問題となったこと

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

1.法定代理人とは


 法定代理人(ほうていだいりにん)とは、法律によって特定の人(被代理人)のために代理権を付与され、その人の法律行為を代行する権限を持つ者のことを指します。これは、未成年者や成年被後見人など、自己の意思で法律行為を行うことが難しい人々を保護するための制度です。


(法定代理人の役割と権限)


法定代理人は、被代理人に代わって契約を結ぶなどの法律行為を行います。これにより、被代理人の権利や利益を保護し、適切な意思決定が行われるようにします。具体的な役割や権限は、代理人の種類や被代理人の状況によって異なります。


(法定代理人の種類)


①親権者


未成年者の法定代理人として、親権者(通常は両親)がその役割を担います。親権者は、子供の財産管理や法律行為を行う権限を持ちます。


➁未成年後見人


親が亡くなった場合や親権を失った場合、裁判所によって選任される未成年後見人が法定代理人となります。未成年後見人は、未成年者の生活や財産の管理を行います。


③成年後見人


成年後見制度に基づき、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な成人のために選任される法定代理人です。成年後見人は、被後見人の財産管理や日常生活の支援を行います。


(法定代理人の選任方法)


法定代理人は、法律や裁判所の決定に基づいて選任されます。親権者は通常は自動的に法定代理人となりますが、未成年後見人や成年後見人は、家庭裁判所によって選任されます。


(法定代理人の責任)


法定代理人は、被代理人の利益を最優先に考えて行動する義務があります。これには、被代理人の財産を適切に管理し、不利益を避けるよう努める責任が含まれます。法定代理人がこの義務を怠った場合、被代理人やその関係者から責任を追及されることがあります。


まとめると、法定代理人は、法律によって代理権を付与され、自己の意思で法律行為を行うことが難しい人々を保護するために、重要な役割を果たします。親権者、未成年後見人、成年後見人などの法定代理人は、それぞれの状況に応じて被代理人の利益を守り、適切な意思決定を行う責任を負っています。

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

2.身元保証サポートのサービス内容


身元保証サポートサービスは、主に高齢者や身寄りのない人、障害者などが安心して生活できるように、様々なサポートを提供するサービスです。このサービスは特に、日本において高齢化社会が進む中で重要性が高まっています。以下は、一般的な身元保証サポートサービスの内容です。


① 住居の保証


賃貸契約の保証: 賃貸住宅を借りる際に、保証人がいない場合に身元保証サービスが代わりに保証人となります。


施設入居の保証: 老人ホームや介護施設に入居する際の保証も提供されます。


➁医療機関での保証


入院時の保証: 病院に入院する際に必要な保証人となります。これにより、家族が遠方にいる場合や身寄りがない場合でも安心して医療を受けることができます。


医療費の支払い保証: 入院中の医療費や治療費の支払いを保証します。


③生活サポート


日常生活の支援: 買い物の代行や通院の付き添い、日常的な手続きのサポートなど、生活の質を向上させるための支援を提供します。


緊急時対応: 緊急事態が発生した際の連絡先となり、迅速に対応します。


④財産管理


財産の管理: 高齢者や障害者の財産を適切に管理し、不正利用を防止します。


遺言執行: 被サービス者が亡くなった後の遺言の執行や財産の整理を行います。


➄介護サポート


介護サービスの手配: 必要に応じて、介護サービスの手配や調整を行います。


介護計画の作成: 個々のニーズに応じた介護計画を作成し、適切な介護を受けられるよう支援します。


⑥法的手続きのサポート


契約書の作成と確認: 賃貸契約やサービス契約の作成と確認を行います。


法的代理: 必要に応じて、法的代理人として各種手続きを代行します。


⑦見守りサービス


定期的な連絡: 定期的に電話や訪問を行い、被サービス者の安否を確認します。


緊急通報システム: 緊急時に迅速に対応できるよう、通報システムを設置します。


 以上のように、身元保証サポートサービスは、特に高齢者や身寄りがない人々にとって、安心して生活するための強力なサポートを提供します。住居の保証や医療機関での保証、日常生活の支援、財産管理、介護サポート、法的手続きのサポート、見守りサービスなど、多岐にわたる支援を通じて、被サービス者が安全で快適な生活を送れるようにします。

身元保証サポートサービスを家族がいる方が利用した場合

3.今回の相談で問題となったこと


 身元保証サポートのサービス内容として、生前の財産管理・身上監護、死後の事務委任・遺言執行などが挙げられます。生前のサポートを実現するために「任意後見契約」を締結します。つまり、サービス提供する業者が「法定代理人」となって、財産管理・身上監護を行うことになります。


 そのために、ご家族がいる被後見人の場合、被後見人の病状などの意思の説明義務は、状況にもよると思うのですが、ご家族ではなく法定代理人となり、財産管理のため通帳等は業者が管理することになります。当然、これらの管理の監督は、最終的に家庭裁判所が関係することになりますので、定期的な報告を法定代理人は求められることになります。


 詳しい内容は言えませんが、ご家族に起こった不測の事態で家族が混乱している時に、(この部分は、私の推測)本人が不安になって、あることは話を盛って、ない話も付け加え悪い推測の上で、介護施設関係者等 に話をしたために、介護施設関係者等 が事実確認をご家族にしたが、連絡も取れず、結果、話だけが進み、家族の問題が解決したときは、医師からの話も聞けず、ご本人の通帳等も返却してもらえない状況になっているという話でした。


※契約段階で、本人とご家族での話し合いがあれば、このような事態は起こらないのですが、「虐待」等の危険性を施設側が判断した場合には、このような事態になることもあります。


 ここで言えることは、関係者皆に非がありますが、誰も責めることはできない点です。


 司法書士では、これらのトラブルについて介入することはできません。弁護士を通じて、業者と話し合い、契約の解除をするしか方法はない旨お話をさせて頂きました。


 高齢者の方は、普段と状況が異なると不安になり、一人の場合特に、悪方向に物事を考えてしまう傾向があります。以前施設介護の施設長をしている時も、この類の話はよくありました。定期的に行っている訪問や、連絡については、できる限り、続けるようにすることが、誤解を招かない方法だと考えます。コミュニケーションが不安定になったとき、同じようなことが起こるかもしれませんからね。

相続登記をしないと起こること

相続登記をしないと起こること

令和6年4月1日から相続登記義務化が施行されました。

それまでは任意だった相続登記なのですが、相続登記をしないとどうなるのでしょうか。

事例を交えながら、わかりやすく解説していきます。


目次


1.相続登記義務化とは

2.相続登記をしないとどうなる

3.相続登記義務化の過料だけじゃない

4.まとめ

相続登記をしないと起こること

1.相続登記義務化とは


2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まりました。

いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用

相続登記をしないと起こること

2.相続登記をしないとどうなる


今回の相続登記義務化における法律の改正では、相続登記義務化に対する罰則は、10万円以下の過料となっています。


「なんだ、10万円払えばいいんじゃないの。」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。


また、「相続人申告制度」という制度があり、こちらをすることで過料を免れることはできますが、「相続登記をしないこと」の問題点は、過料だけではありません。

相続登記をしないと起こること


3.相続登記の問題は義務化の過料だけじゃない


相続登記をしないということは、当該不動産の名義人が亡くなった方のまま放置されるということを意味します。放置している間に相続が数次的に発生した場合、現行の民法では、相続人と数次相続が発生した方たちの相続人も権利関係者となります。東京近郊の空き家の相続関係者が100人にも上るという記事を見かけたことがあります。この100人の権利者間で、法定相続分で相続登記を行うか、遺産分割協議をして相続人の一人に不動産を帰属させて、相続登記はできません。


それでは、相続登記をしないとどうなるのかと言いますと、その朽ち果てた建物を処分できません。共有の問題で、処分行為をする場合には、共有者全員の同意を要するからです。


これらのことが面倒だからと言って、放置していた場合、さらに深刻な問題が発生いたします。それが「所有者責任」です。

不動産に限らず、ものを所有するということは、その管理責任は所有者にあります。しかも「無過失責任(過失があろうとなかろうと責任を負うことになる)」です。不動産を相続登記せずに放置した場合、老朽化や管理不全のために放置された状態であったために、第三者が不利益を被った場合、と書くと難しくなりますので、例えば、管理ができていなかった家の外壁が崩れて、誰かが死傷した場合、その責任を所有者が負うということです。名義人が既に死亡していた場合も、その相続人が責任を負うことになります。相続というのは、亡くなったからの権利義務をすべて引き継ぐからです。


こういった問題が常に付きまとう状況となりますので、やはり相続登記は早めに行い、使わない不動産は、早期の処分を行うことをお勧めいたします。


4.まとめ


相続登記義務化に関して「しないとどうなる」という観点からお話をさせて頂きました。相談者の方も、罰則である「過料」についてよくご存じなのですが、「所有者責任」を知っている方は、ほとんどいません。相続登記を放置して、自身がまだ済んでいる状態なら管理もできると思いますが、すでに相続人と別居していて、戻ってくる予定もないような場合ですと、相続登記が未了の場合、処分ができませんので、早急に相続登記をして、家族で話し合いの場を持ち、その処分について話し合ってみてはいかがでしょうか。


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「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

相続登記が義務化されたことで罰則である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、簡素化した手続きの「相続人申告登記」があります。過料は免れますが、他に問題はないのでしょうか?


目次


1.「チャチャっとできる相続登記でお願い」?


2.過料を免れるための「相続人申告登記」


3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・


4.まとめ

「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

1.「チャチャっとできる相続登記でお願い」? 


 「チャチャっとできる相続登記でお願い」。この言葉は、最近の相談で、相談者の方から聞いた言葉です。相続登記後に、土地と家を売却して、介護施設入所の費用の足しにしたいから、長男の名義にして、ゆくゆくは売却の方向で考えたいと相談を受けました。そこで、相続登記について必要書類や、ご家族に行っていただく手続きについてお話をしたところ、この言葉を言われました。


 はじめ、何のことを言っているのかわかりませんでしたので、相続登記については、説明した 通りの手順が必要で、登記を申請しないと、後の不動産の処分はできない旨説明しました。そうすると「そんなことはない。近所の方が、相続登記をチャチャっとやったって聞いた。先生、それでやってください。チャチャっとできる相続登記でお願いします。」と言われました。相続登記で、そのような簡単な手続きはなく、遺言書があっても戸籍と住民票などは必要になることを説明したのですが、「近所の方」のやった方法をやってほしいと譲ろうとはしませんでした。そこで、その手続きがおそらく「相続人申告登記」で、将来、不動産を処分する場合には、これだけでは不十分で、結局は相続登記をしなければならなくなる旨説明しました。将来処分することが分かっているのに、相続人申告登記だけ済ませることはできないことも話しましたが、とても不服そうな感じで、「先生、チャチャっとやる相続登記を知らないんですか?」と言いました。


 「ご近所の方は、司法書士とか法律関係の仕事をしているんですか?」と尋ねると、年金暮らしのお年寄りであり専門家でないことがわかりました。そのあと少し話したのですが、平行線をたどっていましたので、うちではできない旨を伝えてお引き取り頂きました。

2.過料を免れるための「相続人申告登記」


「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。


(画像)相続人申告登記の登記簿のイメージ


「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

 この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・


  この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

「チャチャっとできる相続登記でお願い」?

4.まとめ


 「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。


 相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰も住まなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。


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(論点)相続登記を急ぐ意味

(論点)相続登記を急ぐ意味

相続登記義務化を控えて、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。

そんな中で、相続登記を急ぐ意味がよく分からないという方がいらっしゃいました。被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。


目次


1.民法177条の意味

2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係

3.まとめ

(論点)相続登記を急ぐ意味

1.民法177条の意味


 民法177条では


「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。


 つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。


 その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。

(論点)相続登記を急ぐ意味

2.遺言と債権者の関係


 相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。


 特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法が亡くなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。


 相続登記を急ぐ意味は、十分あります。

(論点)相続登記を急ぐ意味

3.まとめ


 このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。


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相続に対する生前対策のまとめ

相続に対する生前対策のまとめ

相続対策をしているのとしていないのでは、大きな差が出てくる場合があります。特に、相続対策をしていなかったばかりに、相続発生後に遺産分割協議がまとまらないであるとか、相続税が思った以上にかかって大変といったことがあるかもしれません。今回は、一般的な相続対策についてご紹介いたします。相続税対策にも通じる部分もありますが、法律と税法は、似て非なる部分がありますので、法律面について解説いたします。


目次


1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか


2.相続対策①生前贈与


3.相続対策➁生命保険


4.相続対策③公正証書遺言


5.相続対策④養子縁組


6.まとめ

相続に対する生前対策のまとめ

1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか


 相続対策をする必要性は、周りで起こっている相続の問題をみればよくわかると思います。やったらいいのはわかっているけど、まだ早いよと思いの方も多いのではないでしょうか。この後、解説する相続対策について、自身が動けるうちにしておいた方が良いものもあります。今元気でも、相続対策を思いったった時も元気であるとは限りませんからね。


 客観的な指標で言いますと、「平均寿命」と「健康寿命」があります。

「平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2019(令和元)年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。 一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。」(厚生労働省e-ヘルスネット記事引用)


 どうでしょうか?意外と健康寿命の年齢が若いことに気づかれるかもしれません。


 そうなんです。相続対策については、元気なうちに仕込んでおかないと、それ以上になりますと、気力的に持たないことが多いです。


 無料相談会に参加された方たちの中にも、高齢になってから対策を考えて相談に来られる方も少なくないのですが、対策の手続きの話をすると「そんなに大変なら、やっぱりいいです。」となる方もいらっしゃいます。元気で、自身が動ける間に対策を始めることが大事です。

相続に対する生前対策のまとめ

2.相続対策①生前贈与


 生前贈与の効果は、亡くなった時点での個人財産を目減りさせておくことが目的です。資産として現金が多い方は、現金での贈与でも構わないのですが、現金が少ない場合には、土地や建物、動産なども有効な手段です。名義が記録としてきっちり残るものとして、土地、建物の不動産で、実際に生前贈与されている方もいらっしゃいます。暦年贈与の110万円の控除額を念頭に入れ、税理士と相談をしながら「持分」形式で少しずつ所有権を子供又は孫に移転していく方法です。


 今回は、対象ではありませんが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与制度」は、組み戻し期間が、3年から7年へ、大幅に延長され、対策が遅れてしまいますと、せっかくした生前贈与が無駄になってしまうかもしれません。早めの対策が必要になってきます。


 相続時精算課税制度の110万円の控除を使った手法もありますが、こちらは税務署への届出が必要となります。専門家と相談しながら、進めてください。






3.相続対策➁生命保険


 こちらも、現預金が多い方向けの相続対策となります。生命保険に加入することで、その額を相続財産から減少させることができます。ただし、保険に加入すればいいだけではなく、ここで重要となるのは「受取人を本人以外にしておくこと」です。受取人を「子供」にしておいた場合、法律上、その支払われる保険金は、「子供の財産」となります。


 税法上では、保険金は「みなし相続財産」となり、500万円×法定相続人の数を超える者についてのみ、相続財産とみなされます。


 それでは、資産が全て現預金だけで、全額生命保険にしておけば、相続財産0じゃないの?と考える方もいるかもしれませんが、裁判所の判例では、半分を超える金額については、認められないものもありますし、30%しか認めていないものもあります。その額と、状況によると思うのですが、あまりにもたくさんの財産を保険に切り替えるのはお勧めできません。

相続に対する生前対策のまとめ

4.相続対策③公正証書遺言


 遺言でもめた場合、争点は遺言者の意思能力に及びます。自筆証書遺言(仏壇から出てきた手書きの遺言書など)は、作成された年月日によっては、認知症が疑われた時期などに重なっている場合には、問題となるケースが多いです。


 そこで、アイリスでも、できる限りおすすめ割いているのが「公正証書遺言」の活用です。


 自筆証書遺言と異なり、遺言者は(予約を取って)公証役場に出向くか、公証人に来訪していただくかの形になり、どの場合でも、公証人が読み聞かせ、「2人の証人」がいることは要件となっています。この場合、本人の意思能力について、全くないとは言えませんが、争点になることは少ないです。


 アイリスで行う公正証書遺言サポートでは、専門家の司法書士が承認の一人となりますので、仮に裁判になった場合でも、証人として証言することも可能です。


 また、元気な間に第1回目の遺言書を作成しておくことで、後にやっぱり変えたいと思ったときにも、変更することは可能です。


5.相続対策④養子縁組


 これは、法律上では「遺留分対策」、そして、税務上では「相続税対策」として有名です。


 法定相続人を増やすことで、各法定相続人に割り当てる相続分を少なくする方法です。


ここでも、法律上と税法上の違いがあります。


 法律上では、養子にした場合でも、法定相続人の数え方は、全員「子供」としてカウントされますが、税法上では、①被相続人に実の子供がいる場合「1人まで認められます」、➁被相続人に実の子供がいない場合「2人まで認められます」となります。


 法定相続人の人数の影響は、以下の場合に影響します。


 ①相続税の基礎控除額


 ➁生命保険金の非課税限度額


 ③死亡退職金の非課税限度額


 ④相続税の総額の計算


税法上は、5人養子にして基礎控除額を増やそうとしても、実子がいる場合は1人のみ、いない場合は2人までしか認められませんので注意が必要です。

相続に対する生前対策のまとめ

6.まとめ


 まとめると、相続対策は健康寿命を考え、元気なうちから対策を始めること、そして、大部分の対策が、相続財産の目減り効果を利用したものですので、専門家に相談の上、きっちり対策を講じていくことが重要となります。


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(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

相続登記を放置することによるリスクについて、相続人の状況は次第に変化するために、その調査が膨大になったり、新たな手続きをしなければ先に進めないといった事案を引き起こす可能性が出てきます。それでは、お話をしていきたいと思います。


目次


1.放置している間のリスク


2.長期放置していなくても


3.解決策はないのか?


4.まとめ

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

1.放置している間のリスク


 相続を長期放置していることで発生する可能性のあるリスクは、「相続人の状況が変わること」で引き起こされる、手続きなどの増加です。具体的な事案に対する手続きをお話しますと、


 ①放置している間に相続人が亡くなり、相続の範囲が広がってしまう


  相続人の調査対象範囲が広がります。当然、相続登記に必要な戸籍の取得数は増加します。


 ➁放置している間に相続人が認知症になってしまう


  成年後見人の申し立てを家庭裁判所に行い選任してもらい、その成年後見人と遺産分割協議をすることになります。


 ③放置している間に相続人が海外で居住し始める


  海外に居住すると「印鑑証明書」が日本国内で取得できなくなります。印鑑の制度のない外国の場合、領事館で「サイン証明」の手続きが必要になります。


 ④放置している間に相続人が行方不明になる


  7年経過していた場合、「失踪宣告」の手続きにより、家庭裁判所に当該相続人の「死亡みなし」をしてもらうことになります。7年を経過していない場合には、「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申立で、その不在者財産管理人も含めて遺産分割協議をすることになるのですが、当該相続人の法定相続分の確保が必要となります。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

2.長期放置していなくても


 長期間放置していなくても、相続発生時に相続人の中に「認知症の方がいる」「海外居住者がいる」「行方不明者がいる」「前妻との間に子供がいる」などの状況があるケースがあります。被相続人が生前からこういった状況が発生している場合、相続が発生すると「遺産分割協議」は、難航すると思います。


 それでは、すでにこのような状況が発生している、もしくは近い将来、このような状況が発生する可能性が非常に高い場合、何らかの対策をとることはできないのでしょうか?

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

3.解決策はないのか?


 生前の相続対策として、「遺言書」で解決を図ることは可能です。遺言書を書いたからと言ってすべて万事解決、というわけではないのですが、少なくとも相続発生時に、残されたご家族に「遺産分割協議の呪縛」からは、少なからず解放されます。遺言書で遺産の帰属先を予め指定しておくことで、相続発生時に遺産が指定先に帰属します。自筆証書遺言の場合で法務局に保管していない場合には、検認の手続きが必要となります。また、その内容が法的に有効かどうかは、解りません。作成時に専門家の指導を受けて作成した場合には、有効となる可能性は高いのですが、そうでない場合は微妙です。ですので、公正証書遺言をお勧めいたします。公正証書遺言の場合、文面や内容は、遺言者とヒアリングをして公証人が作成してくれますので、検認も不要で、登記の際、公正証書遺言と相続の時とは比較できないほど少ない戸籍ですることができます。遺言書があれば、遺産分割協議で相続人全員でその内容を変更できる場合もあるのですが、そもそも遺産分割協議ができないまたは困難な状況なので利用する価値は十分にあると考えます。そして、遺言書の内容は、遺産分割協議の内容に優先します。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか3

4.まとめ


 相続相談の内容で、問題となるのが遺産分割協議ができないなどのお話が多数を占めます。当該相続では、しんどい思いをされた方には、年齢に関係なく、今後ご自身の相続の対策として「公正証書遺言の作成」を強く薦めております。現状仲がいいこと度間の関係も、あなたという存在があって保たれている可能性があり、あなたが亡くなった場合、どうなるかは、誰にも予想が付きません。また、遺言は一度作成されても、その後、異なる内容の遺言書を作成することも可能です。残されたご家族のためにも、遺言書の作成をぜひご検討ください。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)



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(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

相続登記を放置することによるリスクについて、具体的に見ていきたいと思います。

相続登記をするためには、「遺産の確認」と「相続人の確認」が必要ですが、長期放置している間に遺産は変化ありませんが、相続人の状況は次第に変化してきます。それでは、お話をしていきたいと思います。


目次


1.放置している間に相続人が亡くなると

2.放置している間に相続人が音信不通

3.放置している間に相続人が認知症に

4.まとめ

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

1.放置している間に相続人が亡くなると

 

 相続人の中に亡くなった方がいますと、被相続人の方同様に、その方の生まれてから亡くなるまでの戸籍と除籍謄本が必要であることは先にも述べました。


 そしてさらに、その方の子供の中に亡くなった方がいる場合、同じような状況となります。つまり、相続人の範囲が際限なく広がっていきます。

 その中には、あまり面識のない方もいるかもしれませんし、亡くなった相続人との関係は良くても、その子供との間で親族間のトラブルにより、険悪な状況となっているかもしれません。


 放置するということは、不確定要素が一気に拡大します。

 相続の取りまとめをしている相続人から、戸籍の附票の最後の住所地宛に手紙を送った場合、返事が来れば、話し合いもできますが、受け取っていても返事がない場合が発生するかもしれませんね。この場合は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し出て、解決を図る必要があります。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

2.放置している間に相続人が行方不明


 それでは、手紙を出したが、そのままあて先不明でその手紙が戻ってきた場合は、どうすればいいのでしょうか。

 この場合、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、この不在者財産管理人と遺産分割協議をすることになります。この時、不在者の法定相続分の確保が必須要件となりますので、仮に長男名義にしたいが次男が失踪している状態での、不在者財産管理人との遺産分割協議では、長男2分の1、次男2分の1となってしまいます。

 勿論、代償分割(不動産をもらう相続人が、不在者となっている相続人の持分相当額を支払うことで、自身の名義とする分割方法)はすることができますが、支払う現金を用意できなければ、持分による登記をすることとなります。

 そして、不在者財産管理人をも推立てる場合、家庭裁判所にその報酬として、数十万円から100万円の予納金を納めることになります。


 失踪期間が7年を超えている場合には、「失踪宣告」の申し立てを家庭裁判所に行い、死亡みなしとすることができます。

 


(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか2

3.放置している間に相続人が認知症に


 相続登記を放置している間に、相続人の一人が認知症になってしまった場合、もはや認知症になった相続人は、遺産分割協議を行うことはできません。

 そこで、4親等以内の親族の方が、成年後見人を家庭裁判所に申し立てて、成年後見人を就任させることになり、その成年後見人と遺産分割協議をすることになります。

 遺産分割協議が終わったのち、この成年後見人を解任することはできず、亡くなるまで財産管理をすることになります。

 当然、報酬は亡くなるまでの期間必要となります。


4.まとめ


 現状、相続人全員と意思疎通できる状況にある方は、迷わず相続手続きを進めてください。放置は何の解決策にもならず、後世へ大きな負担を残す結果となってしまいます。

もしご自身で、何から始めればいいのかわからないようでしたら、専門家に相談してください。

無料相談ですと、法務局や市役所、司法書士会などで定期的に開催されています。


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(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

相続登記を放置することによるリスクは、令和6年4月1日に施行された相続登記義務化の罰則である、最大10万円以下の過料だけではありません。最近の相談内容でも、長期間放置したことによる手続きの停滞など、余儀なくされている事例をよく見ます。それでは、お話をしていきたいと思います。


目次


1.相続登記をするために必要な手続き


2.放置している間に相続人が亡くなると


3.相続人が海外居住している場合


4.まとめ

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

1.相続登記をするために必要な手続き


 相続が発生した場合、「遺産の確定」と「相続人の確定」が必要となります。


(遺産の確定)


 遺産は、現預金、有価証券、生命保険などについては、通帳や定期的に郵送される郵便物などから、判明します。一方で、不動産の場合には、同一市区町村内であれば、市役所や役場で「固定資産評価証明書」を取得することにより、不動産を探し出すことができます。


(相続人の確定)


 こちらは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍・除籍謄本を取得し、その方の配偶者、子供を確認することができます。そして、相続人の現在戸籍と当該不動産を引き継ぐ相続人の住民票が必要となります。


 法定相続分で引き継ぐ場合には、法定相続分の持分で不動産の名義の変更を実施することになりますが、相続人の一人に引き継がせる場合には、生前に遺言書がある場合か遺産分割協議を経なければ、することができません。将来、当該不動産の売却を考えている場合には、地元に残っている相続人の方名義にしておき、その方と買主との間で売買契約を締結することになります。亡くなった方(不動産の名義)の遺言書がなければ、「相続人全員」で遺産分割協議をし、その内容を遺産分割協議書に取りまとめて、各相続人が署名、実印での押印と相続人全員の印鑑証明書を添付することにより、相続登記に必要な遺産分割協議書が完成します。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

2.放置している間に相続人が亡くなると


 相続人の確認に必要な書類の概要について、上記で述べていますが、実際、相続人の中にすでに亡くなっている方がいた場合、どのようになるのでしょうか?


 その場合、相続人だった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍、除籍謄本が必要となります。例えば、父親で発生した父親の遺産を受け取る権利は、子である相続人が取得することになります。そして、その子である相続人が亡くなってしまった場合、その子の相続人全員に承継されることになります。(数次相続の場合)


 こういった事情が一人二人ならさほど負担にはならないと思いますが、その方に離婚歴があり、前の妻との間に子供がいた場合どのようになるのかと言いますと、その方も今回遺産分割をするために必要な相続人となります。遺産分割協議の大前提は、相続人全員で行うことです。少し雲行きが怪しくなってきたことがわかると思います。

(論点)相続登記を放置すると、なぜ大変になるのか1

3.相続人が海外居住している場合


 また、すでに外国に居住されている方が相続人の中にいた場合、国によっては「印鑑証明書」のないケースが存在します。印鑑証明書が取得できないケースでは、外国の日本領事館等でサイン証明を受ける必要があります。


 日本領事館が近くにあったり、交通の便がいい場合には、その相続人の方の負担は軽減されますが、行くまでに命がけといった場合もあります。


4.まとめ


 今回は、一般的な相続登記に必要な書類等について、お話をしてきました。


 必要書類の説明をすると、「なーんだ、それだけ?」と言われる方もいますが、相続人の状況や長年放置することにより、次第に相続登記で名義の変更をするというゴールへのハードルが一気に高くなってきます。

遺言書による不動産の相続登記

遺言書による不動産の相続登記

生前対策として、アイリスでは相談者の方に、積極的に遺言書の作成のアドバイスをしております。

遺言書を作成することにより、どのようなメリットがあるのか、いまいちピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。

遺言書があった場合と、なかった場合の比較も含めて解説したいと思います。


目次


1.遺言書の種類

2.遺言書があった場合の相続登記の書類

3.遺言書がなかった場合の相続登記の書類

4.まとめ

遺言書による不動産の相続登記

1.遺言書の種類


遺言は、方式、種類、作成方法が民法で定められており、この定めに従っていない遺言は無効となります。

一般的な方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、特別証書遺言の3種類の遺言があります。それぞれ作成手続きが異なります。


①自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び氏名を自筆し、押印する必要があります。(民法968条1項)

ただし、財産目録については、パソコン等で作成することが可能となっています。


➁公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が口述した遺言内容を公証人が筆記する方式の遺言です。(民法969条)

実務上では、事前に遺言者にヒアリングし、遺言の内容を決めたのち、公証人が文書にまとめ、面談当日に公証人から遺言者に読み聞かせ、その内容で問題なければ、署名、実印による押印をするものです。その面談の際に証人2人以上が同席することとなります。

遺言書は公証人が作成し、公証人と証人2名以上の下で面談が行われるため、意思能力等の面で覆しにくくなります。また、文字が書けない、目が見えないといった障害がある方でも、この方式での遺言書の作成は可能です。


③秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が自分で作って封印した遺言書を公証役場に持参し、公証人に、その遺言書が間違えなく遺言者本人のものであることを公証しもらう方式の遺言です。  

公証人が遺言内容を作成するわけではありませんので、自筆証書遺言同様遺言者がある程度、知識を持っている必要があると思います。

ただし、どうしても中身を誰にも知られたくないときに使う方式です。

遺言者は、証人2人以上と共に公証役場に行き、持参した封書を公証人と証人の前に提出して、自己の遺言書である旨とその筆者の住所、氏名を申述します。

これを受けて公証人は、提出の日付及び遺言者の申述を封紙に記載します。この秘密証書遺言は、遺言者本人が保管することになります。


一般的なのは①と➁です。また、①の自筆証書遺言書を作成した場合、法務局で保管できる制度があります。この場合、相続が発生した場合の検認の手続きが不要となります。

遺言書による不動産の相続登記

2.遺言書があった場合の相続登記の書類


①遺言書(検認手続きを経た自筆証書遺言書であっても、中身の有効性まで証明するものではありませんので、自筆・日付、氏名の記載・押印・加除の方式が規定に従っているかについて、確認が必要です。自筆証書遺言書の場合、検認した場合の検認済証明書の添付も必要です。(法務局に保管されている場合は、検認済証明書は不要)


➁被相続人の死亡の事実がわかる除籍謄本


③被相続人の住民票の除票(登記簿上の住所と一致するもの)


④不動産を取得する相続人の現在戸籍(被相続人死亡日後に取得されたもの)


➄不動産を取得する相続人の住民票


 ⑥固定資産評価証明書


 ⑦司法書士に依頼する場合の委任状


以上となります。それでは、遺言書がなかった場合どのようになるのでしょうか

遺言書による不動産の相続登記

3.遺言書がなかった場合の相続登記の書類


※遺産分割協議により、特定の相続人に不動産の名義を変更するケース


 ①被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)

 ※数次相続により、すでに亡くなっている方も生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要


 ➁被相続人の住民票の除票(登記簿上の住所と一致すること)

 ③相続人全員の現在戸籍(被相続人死亡日後に取得されたもの)

 ④遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印による押印)

 ➄印鑑証明書(相続人全員分 申請人分は除けます)

 ⑥相続関係説明図

 ⑦不動産を取得する相続人の住民票

 ⑧固定資産評価証明書

 ⑨司法書士に依頼する場合の委任状


 以上となります。

被相続人の戸籍は、生まれてから亡くなるまで、そして、相続人の戸籍は全員分となります。

そして、その相続関係を表した、相続関係説明図を作成して添付することになります。


4.まとめ


遺言書があった場合とない場合の相続登記の申請書に添付する書類の違いを解説してきました。

確かに、遺言書がなかったら書類が増えるのはわかるがそれだけでしょう、という方もいらっしゃいますが、それは、「遺産分割協議が争いなくできる状況にある」という前提があるからそう思われるのかもしれません。

しかし、いくつかのケースで、圧倒的に遺言書があった場合、相続登記がスムーズにいくケースがあります。例えば


 ①前婚の配偶者との間に子供がおり、現在の配偶者と婚姻後は、全く連絡を取っていない場合

その子供も「相続人」です。

残された配偶者と今の子供たちは、前婚の際の子供とは全く面識がありません。

前婚社との子供の心情として、すんなり遺産分割協議に協力していただけるか疑問です。


 ➁外国に相続人がいる場合で、外国居住者が相続登記の手続きについて手間を取りたくない場合

外国に居住していても、相続人であることには変わりません。外国に住居を移すことで、印鑑証明書や住民票は取得できなくなります。

これに代わって、「サイン証明」を日本領事館等で手続きをすることになるのですが、領事館に行くまで命がけという方もいらっしゃいました。


上記のような状況に当てはまる方は、遺言書を作成しておくことで、残された家族にかかる負担を軽減することが可能になります。


ぜひ、生前対策としての遺言書の作成を検討してみてください。


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相続放棄(自分にとって都合のいい放棄はできません)

相続放棄(自分にとって都合のいい放棄はできません)

随分前になるのですが、相続放棄をしたいという相談がありました。話の中で、負動産は取得したくないが、現金預金だけもらうことはできないのかと質問されました。このようなことはできるのでしょうか?


目次


1.相続放棄とは


2.負動産はいらないが現金預金は欲しいとき


3.結局、相続放棄という制度を使うと

相続放棄(自分にとって都合のいい放棄はできません)

1.相続放棄とは


 相続放棄とは、民法で以下のように規定されています。


「(相続の放棄の方式)


第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。


(相続の放棄の効力)


第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす


(相続の放棄をした者による管理)


第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。


2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。」


 つまり、相続放棄とは、民法に書かれている手続き(家庭裁判所への申述)をすることで、認められれば、当該相続において、初めから相続人ではなかったとみなされるということです。はじめから相続人ではなくなりますので、財産にせよ借金にせよ、受け取る権利、引き受ける義務、双方ともに無くなるということになります。

相続放棄(自分にとって都合のいい放棄はできません)

2.負動産はいらないが現金預金は欲しいとき


 上記の通り「相続放棄」という制度を利用した場合、相続人ではなくなるため、その相続で発生した権利義務共に負わなくてもよくなります。「借金が多い」という場合であれば、相続財産と比較して、「相続放棄」又は「限定承認」という手続きを選択することができますが、「負動産」の場合、価格がついていなくても、財産と扱われます。同じ財産で金は欲しいが不動産はいらないというわけにはいかないんですよね。相談者の中の多くは、ネットなんかで調べていて「できない」ことを知ったうえで相談してくるケースがすごく多いです。


結局、負動産を抱えて相続する場合には、周りにもらってくれる方がいた場合には贈与を検討する。しかし、周りも同じように過疎化が進んでいて、高齢化している状態では、「空き家」化してしまうこととなり、そうなってくると「相続土地国庫帰属制度」を検討するしかなくなってきます。勿論「相続土地国庫帰属制度」の対象は土地となりますので、建物を取り壊したり、引き取ってくれるような状態にできるのか考える必要があります。当然ですが、その分のコストも発生します。だって、国に管理してもらうのに「タダで」というわけにはいきませんからね。

相続放棄(自分にとって都合のいい放棄はできません)

3.結局、相続放棄という制度を使うと


 相続放棄という制度を利用すると、当該相続において、初めから相続人ではないとみなされますので、相続で発生した財産も受け取る権利は無くなってしまいます。いくら現預金をたくさん持っていても、相続放棄をしてしまいますと、それを受け取る権利は、無くなります。


 結局、現金預金だけもらって負動産を無視することはできません。そして相続放棄という選択肢も使えなくなります。現金預金を使った段階で、相続財産を処分したということで、相続放棄をすることはできなくなります。また、一度、相続放棄を認められていても、相続財産の処分により「法定単純承認(相続人であることを認めた)」したことになり、承認された相続放棄は取り消されることになります。


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遺産分割協議書(遺産分割前に凍結された預金を下ろすには)

遺産分割協議書(遺産分割前に凍結された預金を下ろすには)

遺産分割前に、預貯金の口座が凍結されてしまい、相続人の調査が難航し相続発生後の生活に困ってしまうといった事態が、実際に起こっていました。子供がいれば、サポートも受けられると思うのですが、子供がおらず、自分以外の相続人が誰かわからない状態で、預金が凍結されますと日々の生活を続けられなくなる方もいます。そこで、2019年7月1日の民法改正により、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」についての規定が盛り込まれています。どのような内容になっているのか確認していきましょう。


目次


1.そもそも何が問題なのか


2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点


3.事例で考える


4.まとめ

遺産分割協議書(遺産分割前に凍結された預金を下ろすには)

1.そもそも何が問題なのか


前のブログでも書きましたが、相続発生を金融機関が確認した場合、被相続人の口座は凍結されます。これは、金銭(現金・預金)について、当然には分割されません。遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。これが、2019年7月1日より前の民法の取り扱いでした。


 私がまだ司法書士資格の受験生だった時に、予備校の講師(司法書士)が言っていたのですが、子供のいない夫婦の夫が亡くなり、すべて夫名義の預金しかなく、夫の入院費用や葬儀代を支出してしまったのち、手持ちの現金が底を尽き、預貯金も凍結されている状態で日々の生活にも困る状態で相談に来られた方がいたそうです。いろいろ手を尽くしたのですが、結局ダメで、相続人との遺産分割協議をするにも、夫の兄弟姉妹は遠方に住んでいて、すぐにできる状態ではなかったそうで、とても大変な思いをしたということでした。


 こういったことを踏まえて、民法が改正されています。

遺産分割協議書(遺産分割前に凍結された預金を下ろすには)

2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点


「(民法909条の2)


 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。


 前段の部分が重要で、遺産分割が成立する前であっても一定額の預貯金については、各共同相続人が単独でその権利を行使できる旨が規定されています。その一定額とは、「法定相続分の3分の1」です。


 それでは、夫の預貯金が90億円あるので「法定相続分の3分の1」なら、億単位のお金の引き出しができるのかというとそうではなく、上限が定められています。


「民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令


 民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。」


つまり、150万円が上限として定められています。これは、各金融機関ごとに150万円が限度となり、一つの金融機関内に複数の口座があっても、その合計額は150万円が限度となります。


3.事例で考える


 例えば、夫婦と子供一人がいましたが、子供は行方不明で連絡がつかない状態です。預貯金の口座はすべて夫名義で900万円の残高があったとします。この時妻は、自分の法定相続分2分の1の3分の1、つまり150万円までなら、遺産の一部分割みなしとして金融機関からの引き出しが可能となります。ただし、各金融機関の手続きが必要となりますので窓口にお問い合わせください。

遺産分割協議書(遺産分割前に凍結された預金を下ろすには)

4.まとめ


 今回は、相続発生後、遺産分割までの間の預貯金の「いわゆる仮払い制度」の取り扱いについて解説いたしました。


 相続が発生して、手持ちの現金がない場合の手段として有効かと思います。遺産分割に時間がかかりそうな場合にはぜひ活用してみてください。


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遺産分割協議書(相続開始前後の使途不明金の取り決め)

遺産分割協議書(相続開始前後の使途不明金の取り決め)

相続発生前に、被相続人(亡くなった方)が自ら出金し消費していた事実が分かっている場合には、特に問題とはなりませんが、被相続人の預金の管理を相続人お一人が管理していた場合、多額の使途不明金が生じていた場合、どのようにすればいいのでしょうか。


目次


1.相続発生前の使途不明金の取り扱い

2.相続発生後の使途不明金の取り扱い

3.まとめ

遺産分割協議書(相続開始前後の使途不明金の取り決め)

1.相続発生前の使途不明金の取り扱い


被相続人A、相続人B・Cで、BがAの講座の管理をしており、使途不明金500万円が生じている場合


「第〇条 相続人B及び相続人Cは、次の財産が被相続人A(年月日死亡)の遺産であることを確認し、これをBが取得するものとする。

X銀行Y支店普通預金(口座番号123456)の使途不明金500万円に係る被相続人AのBに対する返還請求権」とします。


Bが生前Aの預金を管理していた場合には、AとBとの間に「預金の管理に関する委任契約が成立」していたと考えられるため、使途不明となったAの預金について、被相続人Aは、管理の受任者である相続人Bに対して、返還請求権(民法646条1項)又は損害賠償請求権(民法709条)という「相続財産」が発生することになるためです。

当然、Aの債権はB・Cに相続されます。Bは自分が負うこれらの債務との相殺をすることになり、Cは、相続で受けた権利をBに対して返還請求することとなります。

遺産分割協議書(相続開始前後の使途不明金の取り決め)

2.相続発生後の使途不明金の取り扱い


遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分した財産を遺産分割の対象に含めることができます。(民法906条の2 1項)


また、共同相続人の一人または数人により財産が処分されたときは、当該共同相続人以外の共同総ぞ属人全員の同意によって、遺産分割の対象とすることができます。(民法906条の2 2項)


この条項は、民法改正により追加されたものです。

当初は、共同相続人全員の同意がないと、処分された財産について、遺産に含めることはできませんでした。そうすると、処分した相続人が、仮に反対した場合、処分された財産は遺産に含めることができなくなるため、勝手に処分した相続人の同意は不要とされています。


(事例)

被相続人Aが死亡し、相続人の子供B・Cがいたとします。財産は、被相続人Aが居住していた家と土地、そして現金200万円があったはずなのですが、200万円がいつの間にかなくなっていることに気づきました。


 ①BはCが盗んだと疑っており、Cは否定しています。しかし、お互い消えた200万円を遺産に含めることに争いがない場合、200万円は遺産分割の対象とすることができます。

 ➁現金200万円をCが勝手に使ったことが判明しました。BはCの同意がなくても、現金200万円が遺産分割の対象とすることができます。


つまり、民法906条の2で言っているのは、共同相続人に消えた財産を遺産分割の対象にすることに争いがなければ、対象とすることができるし、勝手に処分した方が判明している場合、その方の同意がなくても、他の共同訴z九人全員の同意で、遺産分割の対象とすることができると言っています。


3.まとめ


財産の使い込みなどの処分について、相続発生前後において、法律上生じる根拠が異なることが分かります。相続開始前だと、委任契約における受任者の責任として、そして、相続発生後において、共同相続人全員の同意で、亡くなった財産を遺産分割の対象にすることができますし、使い込んだ相続人が判明している場合には、その財産を遺産分割の対象とすることに、当該相続人の同意は不要とされています。


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遺産分割協議書(判明していない財産の取り決め)

遺産分割協議書(判明していない財産の取り決め)

遺産分割協議書を作成しても、その後の調査で、その時に判明していなかった遺産が発見される場合があります。このような場合に、当初の遺産分割協議書に「条項」を盛り込むことで、遺産の引継ぎ方法を取り決めておくことができます。


目次


1.法定相続分通りに取得させる場合


2.法定相続分とは異なる配分で取得させる場合


3.一人の相続人に取得させる場合


4.判明したときに別途協議する場合


5.まとめ

遺産分割協議書(判明していない財産の取り決め)

1.法定相続分通りに取得させる場合


「第〇条 本協議に記載のない新たな遺産が発見されたときは、当該遺産につき、相続人A及びBは、2分の1ずつそれぞれ取得する。」


※事例は、子A・Bのみが相続人であった場合を想定しています。


 のちに遺産が発見されるなど、最初の遺産分割において遺産の一部を脱漏した一部分割の可否についての法律上の規定はありません。しかし、このような取り決めは有効とされています。ただし、初めの一部分割時に脱漏した遺産が判明していれば、最初の遺産分割のような分割は行わなかったと主張する相続人の方がいる場合には、民法95条1項により、錯誤取消になる場合があります。


2.法定相続分とは異なる配分で取得させる場合


「第〇条 後日、本協議書に記載のない遺産が発見された場合には、当該遺産につき、相続人Aが4分の3、相続人Bが4分の1を取得するものとする。」


 「1.法定相続分通りに取得させる場合」と同様に、予め新たに遺産があることが判明した場合の条項を取り決めておくことも可能です。勿論、錯誤取消になる場合もあります。


遺産分割協議書(判明していない財産の取り決め)

3.一人の相続人に取得させる場合


「第〇条 本協議世に記載のない新たな遺産が発見された場合には、当該遺産については相続人Aがすべて取得する。(これについて、Bは意義がないことを確認する。)」


 「1.法定相続分通りに取得させる場合」と同様に、予め新たに遺産があることが判明した場合の条項を取り決めておくことも可能です。勿論、錯誤取消になる場合もあります。


 例えば、相続人Aは、被相続人である父親と同居しており、相続人Bは遠方に住んでおり、実家に関連する遺産は、基本相続人Aにすべて帰属させたいといった要望がある場合、このような条項を盛り込みます。今まで、実務上で最もよく使う項目です。


4.判明したときに別途協議する場合


「第〇条 後日、本協議書記載のない新たな遺産が発見された場合には、当該遺産の分割について別途協議をする。」


 一部分割後の残余財産の分割方法としては規定がありません。残余財産のみの分割で足り角か、はたまた、再度、当該遺産を含めた遺産すべてについて協議を行うのか?悩ましいところです。


 一部分割の際の当事者の意思表示の解釈に関する裁判例があります。


「遺産の公平な総合的分配のために、すでに一部分割された遺産も分割時において存在するものとして、遺産の総額を評価し、それに各当事者の法定相続分を乗じて具体的相続分を算定し、さらに一部分割により各当事者の取得した遺産の評価額を算定して、具体的相続分と一部分割による取得分との可不足分を算出しなければならない。」(東京家審昭47.11.15家月25.9.107)


 しかし、現実問題として、仮に遺産分割審判までもつれた状態で、新たに発見された遺産について別途協議するというのは、無理があると思います。実際、遺産分割審判書にこの条項が盛り込まれており、また遺産分割調停を申し立てた事例を見たことがあります。家族関係がさらに悪化してしまいますよね。


遺産分割協議書(判明していない財産の取り決め)

5.まとめ


 民法の相続法改正により、遺産分割協議によって一部分割が可能であることが明文化されています。(民法907条1項)しかし、新たに発見された遺産について、その財産のみの分割協議でいいのか、再度、全体として遺産分割協議をやり直すのかについては、状況観て判断するようにしております。勿論、司法書士として、その内容にまで介入することはありませんが、家族関係の状況によっても変わってきます。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

(論点)亡くなった方の遺産の調べ方

(論点)亡くなった方の遺産の調べ方

相続が発生したときに、相続人全員で遺産分割協議をしようにも、亡くなった方の遺産を特定できないと、分割協議の対象である遺産を確定しないと、協議ができません。

どのように遺産を調べればいいのか、お話をしたいと思います。


目次


1.預貯金について

2.不動産について

3.(番外編)生命保険

4.まとめ

(論点)亡くなった方の遺産の調べ方

1.預貯金について


亡くなった方の通帳や郵送物などから、預金している金融機関を特定します。

ここで重要なのが、「パソコン」「スマホ」の中身を確認することです。

最近、金融機関によっては、預金通帳を発行しない、スマホやパソコンで残高確認や送金ができるアプリなどで完結している場合もあります。また、スマホの場合、仮想通貨などのデジタル資産のアクセスツールになっている場合もあります。

ですので、スマホを亡くなってすぐに解約するのではなく、良く調査してみてください。


調査の結果、亡くなった方が保有する口座の金融機関を割り出します。そして、その金融機関の窓口に行き、亡くなった方の口座があるか調べてもらいます。(この段階で、金融機関は口座名義人が亡くなったことを知るため、口座が凍結されてしまいます。)


おそらく、口座凍結解除のために、金融機関から、亡くなった方の戸籍と、自分が亡くなった方の相続人であることがわかる戸籍を準備するように指示があると思います。基本的には、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍、相続人の現在戸籍が必要になります。(相続人特定のため)

そして、金融機関によっては、相続人全員から同意書(実印押印のもの)と印鑑証明書を求められる場合があります。

これに代わるものとして、遺言書やすでに遺産分割協議を終えている場合は、そちらを要求されます。


 すでにお分かりになると思うのですが、全金融機関に網羅的に紹介する仕組みは現在ありません。

通帳などから、各金融機関を調べていくことになります。

(論点)亡くなった方の遺産の調べ方

2.不動産について


不動産が存在している各管轄する自治体の「名寄帳」を取得することで、亡くなった方の詳細な不動産の特定が可能です。ただし、不動産があるその自治体(市役所や町役場)ごとになりますので、そこを外れた不動産は、見つけることができません。


2026年2月2日から、法務局で全国の不動産を一括名寄せができるようになります。が、現状はできません。


法務局によっては、相続登記で名義変更をする際の登録免許税の計算の基礎となる「固定資産税評価額」の証明書として利用できない場合もありますので、名寄帳ではなく固定資産税評価証明書を取得していただくようにお願いしております。

固定資産税納税通知書と一緒に送付される「固定資産税明細」についても使えるのですが、この明細に記載されているのは、固定資産税が課税される不動産のみ記載されています。

公衆用道路など、評価のない土地については、この通知書では把握できませんので、固定資産税評価証明書を取得してください。


(論点)亡くなった方の遺産の調べ方

3.(番外編)生命保険


契約者が亡くなった方で、受取人を相続人とした生命保険の保険金は、法律上は相続財産ではなく、受取人の財産となりますので番外編とさせていただきました。


こちらも、亡くなった方の戸籍と自分が相続人と分かる戸籍を集めます。

そして、「生命保険契約紹介制度」を利用します。インターネット経由で照会を行いますので、集めた戸籍類をPDFにし、ホームページからアップロードします。

この紹介制度を利用するには、利用料3000円がかかりますので、クレジットカードで決済します。


4.まとめ


相続の手続きに必要な戸籍類については、事前に法務局にて、「法定相続情報証明制度」を利用して、「法定相続情報一覧図」を入手しておくと、手続きが楽になります。

費用は掛かりませんし、戸籍の束を持ち歩く必要もありませんので、お勧めです。


また、令和6年4月1日から、法定相続情報に割り振られます「法定相続情報番号」を相続登記の申請書に記載することで、法定相続情報一覧図の添付を省略できるようになっております。


このように、財産の種類によって、手続きが異なります。詳しくは専門家に相談しましょう。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。

ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

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また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。

こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。

「相続人申告登記」のみで、不動産を処分できるのか?

「相続人申告登記」のみで、不動産を処分できるのか?

令和6年4月1日に施行された「相続登記義務化」ですが、この制度の中に「相続人申告登記」というものがあります。相続した不動産は、3年以内に相続登記をしないと、最大10万円の科料に処せられますが、相続人申告登記をすれば、個の過料を免れることができます。それでは、当該不動産を処分できるのでしょうか?


目次


1.相続人申告登記とは


2.相続人申告登記をしたから不動産を処分できる?


3.まとめ

1.相続人申告登記とは


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。こちらも、令和6年4月1日より施行されます。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。(相続人申告登記をした時の登記簿の内容)

「相続人申告登記」のみで、不動産を処分できるのか?

 この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。※司法書士に代行してもらうには、司法書士報酬がかかります。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

「相続人申告登記」のみで、不動産を処分できるのか?

2.相続人申告登記をしたから不動産を処分できる?


 「相続人申告登記」をすると、確かに相続登記義務化の罰則である「最大10万円以下の過料」の適用を免れることができますが、この状態で当該不動産を処分することができるのでしょうか?


 答えは、「できません」。


(法務省HP引用)


「相続登記を申請しようとする場合、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本などの書類を収集して、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要があります。


 そこで、期限内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しい場合に簡易に相続登記の申請義務を履行することができるようにする仕組みとして、「相続人申告登記」が新たに設けられました。


 なお、相続人申告登記は、簡易に義務を履行することができる一方で、以下のような留意点があるため、直ちに遺産分割や相続登記の申請をすることが難しい場合などに、義務を果たすために利用いただくことが想定されます。


 〇 遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできない


 〇 不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある」


(引用終わり)


 「相続人申告登記」は、一般的な不動産登記のような権利関係を公示する目的のものではないため、当該不動産の処分まではできないとされています。

「相続人申告登記」のみで、不動産を処分できるのか?

3.まとめ


 先日の相談会で、「相続登記をしたから、不動産の処分をしたいので不動産屋を紹介してほしい。」と言われたので、相続登記がなされているのか確認するために登記簿を確認すると、相談者のみの「相続人申告登記」が入っていました。他に相続人がいるのかを確認すると、その方と亡くなった方の間に子供がおらず、亡くなった方の両親も既に他界されているとのことで、その兄弟姉妹に相続権がある旨を説明し、その方たちと「遺産分割協議」をしたのちに、「相続登記」をしないと、不動産の処分ができない旨を伝えました。よくよく話を聞くと、すでに不動産屋に行ったのですが、このままではできないから、司法書士の先生の所に行ってくれと言われたために相談に来たそうです。戸籍を集めて、相続人を特定し、遺産分割協議をして、相続登記ができることを伝え、その手続きを受任いたしました。


 相続人申告登記は、義務化の過料は免れますが、権利関係の公示の効力はありませんので、将来的に不動産の処分を検討されている方は、ご注意ください。

自筆証書遺言の検認手続き、しないとどうなる?

自筆証書遺言の検認手続き、しないとどうなる?

遺言書で検認手続きを要するのは、自筆証書遺言です。

公正証書遺言では、検認の手続きは必要ありません。

そして、検認の手続きについて、家庭裁判所に申し立て、その後手続きをすることになるのですが、見なかったことにしたり、この検認手続きをしないとどうなるのか?お話をしたいと思います。


目次


1.自筆証書遺言の検認手続き

2.自筆証書遺言でも検認の手続きを要しない場合とは

3.見なかったことにしたり、検認手続きを怠ると

4.まとめ


自筆証書遺言の検認手続き、しないとどうなる?

1.自筆証書遺言の検認手続き


検認とは、相続人に対し遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません


遺言書の検認手続きは、次のような流れで行われます。


①遺言書を見つけ、種類を特定する

➁相続人を明確にする(戸籍等をそろえる)

③家庭裁判所の管轄を確認する

(被相続人(遺言作成者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。)

④家庭裁判所に提出する書類を作成する

➄家庭裁判所に検認を申し立てる

⑥家庭裁判所から検認期日について通知が届く

⑦当日、家庭裁判所での検認に出席する


 ※相続人全員に通知されるので、相続人全員の立会が必要なのかという疑問について

「Q1. 相続人には,検認手続が行われることをだれが連絡するのですか。また,相続人のなかには,高齢で出頭できない人がいるのですが,問題ありませんか。

A. 相続人には,申立後,裁判所から検認期日(検認を行う日)の通知をします。申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは,各人の判断に任されており,全員がそろわなくても検認手続は行われます。」(裁判所パンフレット引用)


⑧遺言書の返還を受け、検認済証明書を申請する

自筆証書遺言の検認手続き、しないとどうなる?

2.自筆証書遺言でも検認の手続きを要しない場合とは


自筆証書遺言でも、検認の手続きを省略することができます。

それは、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合です。

すでに、法務局担当官が、自筆証書遺言の形式の確認をして、本人確認後、原本とそのデータを保管するため、偽造変造の恐れがないためです。


(法務局パンフレット引用)

「相続をめぐる紛争を防止する観点から,本制度では,


①自筆証書遺言に係る遺言書を法務局(遺言書保管所)でお預かりし,その原本及びデータを長期間適正に管理します(原本:遺言者死亡後 50 年間/画像データ:遺言者死亡後 150 年間)。


②保管の際は,法務局職員(遺言書保管官)が民法の定める自筆証書遺言の方式について外形的な確認(全文, 日付及び氏名の自書,押印の有無等)を行います。※遺言の内容について,法務局職員(遺言書保管官)が相談に応じることはできません。※本制度は,保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。


③相続開始後は,相続人等に遺言書の内容が確実に伝わるよう,証明書の交付や遺言書の閲覧等に対応します。


④本制度で保管されている遺言書は,家庭裁判所の検認が不要となります。


⑤相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けたり,遺言書の閲覧をした場合には,その他の全ての相続人等へ遺言書が保管されている旨の通知をします。」

(引用終わり)

自筆証書遺言の検認手続き、しないとどうなる?

3.見なかったことにしたり、検認手続きを怠ると


遺言書を検認しないと、次のような問題が生じる可能性があります。


①5万円以下の過料が科せられる

➁相続人の欠格事由になる

③相続放棄や限定承認の期限が過ぎてしまう可能性がある

④相続手続きが遅れてしまう

➄相続人同士のトラブル

⑥相続財産の名義変更ができなくなる


この中で、特に重要なのが、遺言書を見つけて、他の相続人には黙って、遺産分割協議をした場合、➁の相続人の欠格事由となるケースがあります。

欠格事由に該当すると、相続人としての権利をはく奪されますし、場合によっては刑事罰を受けることにもなりかねません。

必ず、ご自身だけで判断せずに、相続人全員に相談して対応を検討してください。


遺言書がある場合でも、遺産分割協議で、相続人全員が合意をした場合には、遺産分割協議が有効に成立する場合もあります。

詳しいことは専門家にご相談ください。



4.まとめ


自筆証書遺言の検認手続きについて解説をしてまいりました。一般的な手続きは、上記のような内容となっております。

遺言書がない場合、相続人の中で、海外在住の方がいる場合や音信不通の方がいる場合など、現実的に遺産分割強をすることが困難になることがありますので、生前に遺言書を作成しておくことは重要だと考えております。

また、セミナーや相談会で、必ず出てくる質問で「遺産分割協議をしたのに、何年もたってから仏壇から遺言書が出てきたけど、どうしたらいいですか?」というものがあります。

見なかったことにして放置したり、検認手続きを怠った場合のリスクも存在しますので、このような事案が発生した場合、専門家に相談することをお勧めいたします。


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(論点)あなたの遺言書は、万全ですか?(予備的遺言)

(論点)あなたの遺言書は、万全ですか?(予備的遺言)

先日、相談者の方から、「うちの両親はお互いに遺言書を書いているから、大丈夫。」というお話がありました。

その内容を聞くと、一見、確かに両親間でうまく遺産を承継させることができるように見えるのですが、「2次相続を想定していない。」遺言書の内容となっていました。

2次相続にも対応した遺言書は、どのように作成すればいいのでしょうか?


目次


1.遺言書の効力

2.1次相続・2次相続とは

3.予備的遺言を使った2次相続対策

4.まとめ

(論点)あなたの遺言書は、万全ですか?(予備的遺言)

1.遺言書の効力


遺言書の効力とは、遺言者が死後に財産や遺産の処分を定めるために書かれた文書が、法律においてどのような法的な効果を持つかを指します。

一般的に、遺言書は遺言者の最後の意思を表すものとして尊重され、その内容に基づいて財産の分割や処分が行われます。

ただし、効力を発揮するためには、特定の法的要件を満たす必要があります。


公正証書遺言では、公証人が遺言内容の法的効力が有効になるように、条項を作成してくれますが、自筆証書遺言の場合、自分で自筆しなければなりません。

ここで、自筆証書遺言において法的効力を有効にするために必要な項目をご紹介したいと思います。


①遺言書の全文,遺言の作成日付及び遺言者氏名を,必ず遺言者が自書し,押印します。

遺言の作成日付は,日付が特定できるよう正確に記載します。

例)「令和3年3月吉日」は不可(具体的な日付が特定できないため)。


②財産目録は,自書でなく,パソコンを利用したり,不動産(土地・建物)の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付する方法で作成することができますが,その場合は,その目録の全てのページに署名押印が必要です。


③書き間違った場合の訂正や,内容を書き足したいときの追加は,その場所が分かるように示した上で,訂正又は追加した旨を付記して署名し,訂正又は追加した箇所に押印します。


以上は、全体の要件で、各種条項についても要件を充たいしていないと、有効にならない場合がありますので、専門家に相談することをお勧めいたします。


(論点)あなたの遺言書は、万全ですか?(予備的遺言)

2.1次相続・2次相続とは


最初の相続(1次相続)で配偶者と子供が相続した後、その配偶者が亡くなったことで発生する二度目の相続のことを2次相続と呼びます。

 相続は一般的には両親の死亡に伴って発生します。 父と母、それぞれが死亡したときに相続が発生しますが、このうち一度目を1次相続、二度目を2次相続といいます。


例えば、AB夫婦に子XYがいたとします。

AB間で、相互にAの遺言書には「全財産をBに相続させる。」とし、Bの遺言書には「全財産をAに相続させる。」といていた場合、どちらかが亡くなったときは、遺言書の内容で、相互に補完することができます。

しかし、この状況は、1次相続の範囲を対象としています。

2次相続(A死亡後、Bが死亡したケース)では、この遺言書の内容では、対応ができません。

遺言書についてのご相談で、この2次相続を想定していない内容の場合が、散見されます。


(論点)あなたの遺言書は、万全ですか?(予備的遺言)

3.予備的遺言を使った2次相続対策


それでは、具体的に2次相続にも対応した遺言書の条項はどのようにすればいいのでしょうか。

その答えは、「予備的遺言(補充遺言)」を追加しておくことです。


予備的遺言とは、相続人又は受遺者が、遺言者の死亡以前に死亡(遺言者の死亡より先に又は遺言者の死亡と同時に)する場合、相続人が相続を放棄する場合、受遺者が遺贈を放棄する場合等に備えて、遺言者があらかじめ、財産を相続させる者又は受遺者を、予備的に定めておく遺言です。


2の事例で言いますと、仮に1次相続でAが亡くなった場合、Bの遺言書に「第〇条 遺言者は、Aが遺言者の死亡以前に死亡したときは、第□条に相続させるとした財産を長男のX(生年月日、住所)に相続させる。」という項目を追加することで、1つの遺言書で2次相続対応も可能になります。

勿論、A又はBどちらが先に亡くなるかなんてわかりませんから、お互いの遺言書に、個の予備的遺言を入れておくことにより、2次相続対策も万全になります。

さらに、長男Xも病気で余命宣告されている場合などでも、その孫についても追加することが可能です。


4.まとめ


遺言作成の際に注意すべき、「2次相続も想定した内容」の遺言書作成について「予備的遺言」をご紹介いたしました。

相談等で、話を聞いている際、必ず遺言書の条項に予備的遺言があるかどうかを確認するようにしております。

相談者の中には、専門書を読み込んで「これで安心だが、もしかしたらと思い相談に来た。」という方もいらっしゃり、内容を確認すると2次相続を想定していないこともよくありました。


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手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


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相続放棄件数(司法統計)が過去最多。そして空き家問題。

相続放棄件数(司法統計)が過去最多。そして空き家問題。

負の財産が多い場合、そもそも相続人としての立場を放棄する「相続放棄」ですが、令和4年度の件数が、過去最多の26万件を突破したとの記事を見ました。記事の中に「借金」や「不動産」を相続したくないので相続放棄をしたといった内容で書かれていましたが、実務ではよく聞く話です。少しお話をしたいと思います。


目次


1.相続放棄とは

2.「相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題」(共同通信記事引用)

3.空き家の対策

4.まとめ

相続放棄件数(司法統計)が過去最多。そして空き家問題。

1.相続放棄とは


相続放棄は、被相続人のすべての相続財産(プラスの財産もマイナスの財産も)を相続することなく、最初から相続人ではなかったとみなされることです。


多額の借金をしている方が亡くなられた場合、相続人がその借金を引き継いで支払わなくていいように、相続人には相続放棄という権利が与えられています。

相続放棄の申述を家庭裁判所に対し手続きを行う必要がありますが、この手続きには、相続を知ったときから3ケ月という制限があります。

3か月を超えてからの相続放棄の申述は、原則認められません。


また、最初から相続人ではなかったとみなされるため、代襲相続も起こりません。

そのため、当該相続人として次順位の相続人となるため注意が必要です。

相続相談等では、字順位の相続人に、相続人となったことを伝えてあげた方がいいとアドバイスをしております。

なぜなら、レアケースにはなるのですが、字樹陰の相続人が独身の兄弟姉妹で、両親がすでにいない場合、その方が亡くなった場合、再度、自信が相続人となってしまうことがあり得ます。連絡は密にしておいた方が親切でもあり、安全です。

相続放棄件数(司法統計)が過去最多。そして空き家問題。

2.「相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題」(共同通信記事引用)


「相続放棄、過去最多26万件 空き家増え、対策課題(共同通信記事引用)


不動産や借金などプラス、マイナスどちらの遺産も受け継がない「相続放棄」が年々増え、2022年は全国の家庭裁判所で過去最多の26万497件が受理されたことが9日、司法統計で分かった。

人口減少や過疎化が進む中、専門家は空き家となった実家を手放したり、縁遠い親族の財産を受け取らなかったりする例が目立つと指摘。

放置された家屋や土地への対策が課題で、行政が適切に管理できるよう制度設計を求める声もある。


民法は、人(被相続人)が死亡した場合、配偶者や子らが一切の遺産を相続すると定めており、マイナスの遺産も相続しなければならない。

これを避けるため、相続放棄を家裁に申し立てることができる。全国の家裁で受理件数が増加。司法統計で19年は22万5416件、20年が23万4732件、21年が25万1994件だった。


相続に関する手続きを多く扱う弁護士法人「心」(本部・名古屋市)によると、親が亡くなり、子どもが地元を離れている場合、維持費や固定資産税の負担を嫌って実家の相続を放棄することが多い。孤独死した人と疎遠な親族が遺産を放棄する例もある。」(引用終わり)


3.空き家の対策


空き家の対策として、行政も「空き家バンク」などの取り組みをしております。

しかし、空き家がここまで急速に増加してくるとなると、何らかの手段をとらないとだめになるかもしれません。

昨年のニュースでは、京都市が「空き家税」なる課税を検討しているというものもありました。

しかし、空き家といえども、元は個人資産なわけで、義務化された相続登記で所有者を特定しなければ、処分することもできません。

相続関連の相談を受けている時も、空き家になるかもしれない、田舎の実家が問題となることはよくあります。


相続放棄件数(司法統計)が過去最多。そして空き家問題。

4.まとめ


司法統計で、相続放棄が過去最多となっている記事をご紹介しました。

記事の中で気になったのが、借金と(価値のない)不動産が同列で語られている点でした。確かに、子供からすれば、田舎の実家は、負担以外の何物でもないかもしれません。処分できる不動産ならまだしも、田舎の集落的な場所の不動産は、処分もままならないと思います。


実際、相続登記後、業者にリフォームして売却の方向で相談者が話を進めていたのですが、ぎょすやから連絡があり、「周りの建物のほとんどが空き家になっているので、リフォームしても意味がない」と言われたことがありました。


ご自身が使っていない実家については、早めに処分の方向で検討しておいた方がいいかもしれません。


認知症対策1(任意後見制度)

認知症対策1(任意後見制度)

任意後見制度は、委任者が自分の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人となってくれる人(「任意後見受任者」といいます。) と任意後見契約を締結し、そこで選任しておいた任意後見人に、将来、自分が認知症や精神障害等で判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。


目次


1.法定後見制度と任意後見制度

2.認知症になるとできなくなること

3.成年後見制度の種類

4.任意後見契約

5.任意後見のメリット・デメリット

6.まとめ

認知症対策1(任意後見制度)

1.法定後見制度と任意後見制度


事前に準備しておかなかった場合、認知症と判断されると「成年(法定)後見制度」の利用一択になってしまします。

法定後見では、家庭裁判所に申し立てをしたのちに、お子様を後見人にしたいとの希望を提出していた場合でも、家庭裁判所では、「他の家族が反対している」「財産が多い」「後見人になった後に複雑な法律行為を予定している」などの状況を踏まえるため家庭裁判所の判断で「司法書士・弁護士」が後見人になるかもしれません。司法書士や弁護士が選ばれた場合、継続的に報酬(月額2~6万円)が発生し、亡くなるまで発生します。

また、後見人は裁判所に報告義務があり、家族には報告義務はないため、ご家族が財産の状況把握ができない可能性があります。

あらかじめ後見人になってもらいたい家族と任意後見契約を結ぶことで、ご家族を後見人として財産の管理ができるようになります。

認知症対策1(任意後見制度)

2.認知症になるとできなくなること


認知症と診断され他場合、以下のことができなくなります。


 ①預金の処分

 ➁不動産の処分

 ③福祉関係の契約・手続き

 ④相続が発生したときの遺産分割協議 等


上記が発生した場合、法定後見を利用するしか方法はありません。

認知症対策1(任意後見制度)

3.成年後見制度の種類


法定後見になると、誰が後見人になるのかわかりません。

「父の財産を管理したい」長男様が、自身で家庭裁判所に後見の申し立てをした際、長男様のお名前を推薦人として書いていたので安心していたところ、弁護士が選任され、慌てて即時抗告しましたが、覆ることはありませんでした。

そもそも家庭裁判所の決定に、抗告をすることはできません。(体験談)


法定後見制度を利用したくない場合には、判断能力喪失前に任意後見契約を締結しておく必要があります。

認知症対策1(任意後見制度)

4.任意後見契約


任意後見契約は、ご本人と任意後見人になる予定の方(任意後見受任者)との間で締結する契約です。しかし、この任意後見契約だけでは、実際にご本人が認知症になったとき、効力は発生しません。


この任意後見契約につきましては、公証役場において公正証書で作成しなければなりません。


契約を締結してすぐに後見人として活動できるかというとそうではなく、ご本人が認知症等で判断能力が低下したときに、任意後見受任者が家庭裁判所に「任意後見監督人の選任の申し立て」をします。

家庭裁判所が選任した任意後見監督人が就任したときに、任意後見受任者は任意後見、財産管理や身上監護といったことができるようになります。


公証役場で任意後見契約を締結する内容として、判断能力低下時に代理してもらいたいことを定めておきます。


 (代理目録サンプルとして)

 ①不動産、動産等全ての財産の保存、管理及び処分に関する事項

 ➁金融機関、証券会社との全ての取引に関する事項

 ③保険契約(類似の共済契約を含む。)に関する事項

 ④定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払いに関する事項

 ➄生活費の送金、生活に必要な財産の取得に関する事項及び支払いに関する事項

 ⑥医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入所契約に関する事項

 ⑦要介護認定の申請及び認定に関する承認または審査請求並びに福祉関係の措置(施設入所措置を含む。)の申請及び決定に対する審査請求に関する事項

 ⑧登記済権利証・登記識別情報、印鑑、印鑑カード、住民票基本台帳カード、個人番号(マイナンバー)カード、マイナンバー通知カード、預貯金通帳、各種キャッシュカード、有価証券・その預り証、年金関係書類、健康保険証、土地・建物賃貸借契約書等の重要な契約書類その他重要書類の保管および各事項の事務処理に必要な範囲内の使用に関する事項

 ⑨居住用不動産の購入及賃貸借契約並びに住居の新築・増改築に関する請負契約に関する事項

 ⑩登記及び供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する事項

 ⑪遺産分割の協議、遺留分侵害額請求、相続放棄、限定承認に関する事項


 などを取り決めて任意後見契約を公証役場にて公正証書で作成します。


5.任意後見のメリット・デメリット


(メリット)


①ご家族をほぼ確実に任意後見人にできる

 ※任意後見人を付けることが本人のためにならないといった特別の事情がない限り認められます。

 「成人であれば、誰でも、あなたの信頼できる人を、任意後見人にすることができます。身内の者でも、友人でも全然問題ありません。ただし、法律がふさわしくないと定めている事由のある者(破産者、本人と訴訟をした者、不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由のある者(例えば金銭にルーズな人)など)はダメです。」日本公証人連合会HP引用


➁身上監護(福祉サービス利用契約、要介護認定の申請)なども任せられる

 ※家族信託の場合、できない。


③年金の入金される口座も管理できる

 ※家族信託の場合、できない。


④不動産に抵当権が付いていても金融機関の承諾は不要

 ※家族信託の場合、金融機関の承諾が必要。


(デメリット)


①任意後見監督人の報酬が必要となる


  管理財産5000万円以下 月1万円~2万円

  管理財産5000万円超  月2万5千円~3万円

 ※法定後見の場合でも次の場合、後見監督人が付く可能性が大(報酬面は同じとなる)


預金1000万円以上ある場合(地域によって額が異なります)

  ※後見制度支援信託を利用して、後見人の手元には200万円程度の預金を残し、残りを信託銀行などに信託し、家庭さん板書の書類がないと引き下ろしできないような仕組みをとる場合があります。しかし、ご本人が遺言書を作成している場合、この後見制度支援信託を利用することはできなくなるため、その場合に後見監督人が付く可能性が高くなります。


  このような状況ですと、後見監督人への継続報酬が必要になります。

6.まとめ


法定後見で家族が後見人に選任され後見監督人が付かなければ一番コストがかからないということになりますが、法定後見では第三者が後見人に選任されてしまう可能性があるという点。

また、預貯金1000万円以上で遺言書を作っているなら監督人が付く可能性が高くなるという点。

これらを踏まえると、監督人への継続報酬が同じなら、家族をほぼ確実に後見人にできる(後見人報酬が発生しない)任意後見契約を締結しておいた方が良いのでは、ということになります。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


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生前の相続対策3(生命保険の活用)

生前の相続対策3(生命保険の活用)

生命保険(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。


目次


1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか


2.受取人は誰が一番いいのか


3.まとめ

生前の相続対策3(生命保険の活用)

1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか


 被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。


 注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。


 保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。


 これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。

生前の相続対策3(生命保険の活用)

2.受取人は誰が一番いいのか


 前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。


 ①配偶者(妻)を受取人とした場合


  配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。


 ➁子供を受取人とした場合


  一番効果が出るケースです。


 ③孫を受取人とした場合


  子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。


 厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。

生前の相続対策3(生命保険の活用)

3.まとめ


 生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。


 次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。


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生前の相続対策2(遺言書作成)

生前の相続対策2(遺言書作成)

生前の相続対策として「遺言書作成」があります。遺言書を作成しておくことで、ご自身の意思を残された家族に伝えることと、不要なトラブルを避けることもできるかもしれません。ただし、遺言書作成が有効と判断されるためには、法律の要件をクリアしておく必要があります。


目次

1.遺言書作成のタイミング

2.自筆証書遺言と公正証書遺言

3.遺言書がある場合とない場合の手続きの差

4.遺言書の未来

5.まとめ


生前の相続対策2(遺言書作成)

1.遺言書作成のタイミング


遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。

一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。

早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。


ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。

生前の相続対策2(遺言書作成)

2.自筆証書遺言と公正証書遺言


①自筆証書遺言(しひつしょうしょゆいごん)

遺言者自身が手書きで書いた遺言書のことです。

遺言者が自らの意思を文書に記し、日付や署名を行います。

法的効力を持つためには、遺言者が死亡する前に遺言書に自筆で署名し、日付を入れる必要があります。

法律上の要件を満たすために、自筆で書かれ、遺言者の署名があることが重要です。また、内容が明確であることも求められます。


➁公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)

公証人が立会いし、遺言者の意思を確認した上で作成される遺言書のことです。

公証人は遺言者に対し、遺言書の内容や意味を確認し、遺言者の意思を理解したうえで遺言書を作成します。

遺言者は公証人の前で署名します。公証人も署名し、証人も立ち会います。

自筆証書遺言と比べて、法的な証拠力や信頼性が高いとされています。遺言書の内容や遺言者の意思が明確に公証されるためです。


要するに、自筆証書遺言は遺言者自身が書いたものであり、公正証書遺言は公証人が立会いし作成されたものです。

どちらも法的な効力を持ちますが、相続人間で争いが生じた場合、公正証書遺言の方が通常、法的な証拠力が高いとされています。


3.遺言書がある場合とない場合の手続きの差


それでは、遺産が相続人に帰属するタイミングについてお話をいたします。


(1)遺言書がある場合

遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。


(2)遺言書がない場合

相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。

つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。

その間に、相続人の中には法定相続分の持分を買い取り業者などに売却したりする方などが発生してしまいますと、遺産分割協議がうまくまとまらなくなってしまう可能性も出てきます。


遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。

早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。

相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。

家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。

ここで言えることは、相続関連の手続きで戸籍類など亡くなった方と相続人の関係を証明するための書類は圧縮され、遺言者と遺産を受け取る方の戸籍で関係性を証明すれば、手続きを始めることができる点です。

なぜなら、遺産の帰属先は既に決まっているためです。

生前の相続対策2(遺言書作成)

4.遺言書の未来


これまで紙でしか認められなかった遺言が、ついにパソコンやスマホからでも作成が可能になるというニュースがでましたね。

(令和5年5月5日 日本経済新聞)


今までだと、自筆証書遺言ですと財産目録以外は、原則紙に直筆で書き込み、自署・押印が成立の要件となっていました。公正証書遺言も、公証人及び証人2名と自身で、書面上で書かれた内容について確認する作業が必要で、保管も書面での保管となっています。

※公証役場での公正証書遺言の保管は、デジタル化されています。


5.まとめ


遺言書について解説してまいりました。

遺言書は、健康年連を考慮すると「70歳を超えたとき」に検討し始めた方がいいと思います。

中には、「うちは財産が少ないから、遺言書なんて必要ない」と思われている方もいるかもしれませんが、実は、家庭裁判所の統計データを見ますと、遺産分割調停・審判の件数で財産額が5000万円以下で全体の78%を占め、1000万円以下では35%にも及びます。

勿論、揉めた場合、家族関係はぎくしゃくしてしまうでしょう。

このような事態を防止する意味でも、遺言書は有効な手段だと考えます。


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生前の相続対策1(生前贈与)

生前の相続対策1(生前贈与)

生前の相続対策として、生きている間にどなたかに財産を贈与するという方法があります。以前はよく使われていた「暦年贈与制度」ですが、令和6年1月1日よりルールが変更になり、贈与税110万円の非課税枠は利用できても、相続時に相続人に贈与していた財産について、相続財産に持ち戻しされる範囲が、従前の3年から7年に延長されました。これ以外にも注意すべき点がありますので、解説していきたいと思います。


目次


1.生前贈与の留意点

2.こんなはずじゃなかった生前贈与

3.暦年贈与制度と相続時精算課税制度

4.まとめ


生前の相続対策1(生前贈与)

1.生前贈与の留意点


財産を生きている間に、誰かに贈与することを生前贈与と言います。

生前贈与は、一般の贈与と同じく贈与税の対象となります。基礎控除額は110万円ですが、これを超えると贈与税がかかります。

相続税と比較すると、控除額については、相続税の場合、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」となりますので、贈与税の控除額110万円とは比較にならないほど大きく控除額が設定されています。

また、不動産の名義変更のための税金である「登録免許税」は、贈与の場合1000分の20ですが、相続で登記をする場合1000分の4と5分の1となります。急いで、生前贈与すべきかどうかの判断はやはり必要だと思います。


贈与税も相続税も、税務署への申告が必要です。

贈与税の場合、確定申告の際に届け出ることとなり、相続税の場合は、相続発生から10ケ月以内に申告をすることになります。忘れると税務署から呼び出しが来ますので、解らない場合には、税理士に相談してください。


生前の相続対策1(生前贈与)

2.こんなはずじゃなかった生前贈与


以前、「もう使わない宅地があるから、孫に贈与したい。」と相談がありましたので、固定資産税評価証明書を確認すると合計額が1000万円を超えていました。

贈与税がかかる旨話をすると、「孫に迷惑はかけれないから、私が贈与税を払う。」と言っていました。

税理士に相談していただきますと、贈与税に加え、贈与税を肩代わりすると、そこにも贈与税がかかってくると言われ、少し考えさせてほしいと言い、その後、それでも贈与したいということでしたので手続きをしました。

業際の関係で、司法書士だけで相談してしまいますと、税務について概略程度はお話しできるのですが、細かい内容まで相談に応じることはできません。税理士法に違反してしまうためです。

アイリスでは、提携先の税理士をご紹介しております。


3.暦年贈与制度と相続時精算課税制度


暦年贈与制度の相続人への贈与について、持ち戻しの期間が3年から7年に伸びたことは既にお話をしましたが、他にも相続時精算課税制度と異なる点があります。

それは、相続時精算課税制度を利用する場合には、税務署へ届出が必要となり、届け出後は暦年贈与制度を利用することはできなくなります。

令和6年1月1日の変更点は相続時精算課税制度にもあり、年間控除額110万円を利用できるようになりました。こちらは、控除した場合、暦年贈与制度のように相続財産への持ち戻しがありません。

詳細につきましては、比較表を以下に示します。

生前の相続対策1(生前贈与)

4.まとめ


生前贈与を検討する場合、やはりコスト面についての検討が必要です。

相続で実施したほうが安くなる場合があります。

また、どの制度を使えば、ご自身が考えている生前贈与として活用できるのかの判断も必要です。

税金関係の相談は、司法書士は受けることができませんので、必ず税理士に相談し、手続きが発生するようなら、専門家である税理士に依頼してください。

司法書士は、不動産の名義の変更の手続きはできますが、税務署への届出や申告はできません。


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相続登記義務化について、「なぜ」義務化なのか?わかりやすく解説

相続登記義務化について、「なぜ」義務化なのか?わかりやすく解説

既に始まっている相続登記義務化ですが、なぜ相続登記が義務化されたのか?そして、相続登記をしないことによる弊害は、罰則である過料だけなのか?そして、不動産を所有するということについて今一度考えていただきたく、詳しく解説していきます。北海道新聞の記事によくまとまったものがありましたので、こちらを引用しながらお話をしていきます。


目次


1.相続登記とは何?

2.相続登記をしないことによる支障

3.空き家問題と直結。放置すると何が良くない?

4.所有することによる責任問題について

5.まとめ

相続登記義務化について、「なぜ」義務化なのか?わかりやすく解説

1.相続登記とは何?


「登記は土地の場所や広さ、建物の構造など不動産の状態と、その権利関係を記したものです。現在の所有者がだれで、抵当権が付いているかどうかなどをだれでも確認することができ、不動産取引を安全に行うための制度です。そして、相続登記は、家や土地など不動産の所有者が亡くなった後、不動産の所有名義を相続人に変更する手続きのことをいいます。」(北海道新聞記事引用終わり)


つまり、亡くなった方名義のままでは、公示された登記簿からは、亡くなった方の氏名住所しかわかりません。もし、処分(売買等)しようと思っても、死者は契約当事者にはなることはできません。

現在生きている当事者でなければなりません。そのためには相続登記をしておかなければ、処分すらできないという状態になるわけです。


それでは、なぜ相続登記を放置する方が今まで多かったのかと言いますと、通常不動産取引をした場合の権利関係を明確にするために「登記(名義の変更)」をして、第三者に対抗する要件を備えるわけです。

登記をしないと、前の所有者から買ったとする第三者に対抗できないという事態が生じるわけです。

つまり、自己の権利を主張するために登記が必要なんです。不動産の登記は任意というのはここからきています。

それが今まで相続登記にも及んでいたために、令和6年4月1日までは、任意で行うものとされていました。任意ですので、罰則もありませんから、「やらない」という選択肢があったわけです。


しかし、東日本大震災の時、復興のため被災した土地を再開発しようとしたとき、この相続登記の放置による所有者不明となっている土地がネックになり、再開発が遅れたそうです。

そこで、政府が所有者不明土地の調査をしたところ、九州の面積に匹敵する土地が該当したため、相続登記義務化の方向に方針を転換したと言われています。


2.相続登記をしないことによる支障


先ほどは、相続登記をしないことについて、社会的な支障についてお話をしてきました。それでは、相続登記をしなかった方たちにとってどのような支障が出てくるのかを見ていきたいと思います。


まずは、今回の義務化の罰則である過料です。最大10万円以下の過料となります。

それでは、10万円払えばそれで終わりなのか?または、相続人申告登記をして、過料だけは免れておけばいいのか?という点について、考えていかなければならないと思います。次で述べたいと思います。


3.空き家問題と直結。放置すると何が良くない?


建物放置は空き家問題に直結しますし、損壊の危険や治安悪化も懸念されるところです。

季節の変わり目になりますと、放火事件などが増加しますが、空き家が狙われるケースも少なくありません。


「空き家はさまざまな問題を生じさせます。人が管理しない状態が続くと、台風などの自然災害で損壊したり、雨水が入って朽ちたりして周囲に危険を及ぼします。動物が入り込んで繁殖すれば、衛生面でも問題になります。悪い人がたむろして治安の悪化を招く可能性もあります。その他にも景観面や地価の低下も問題となります。そこで、一つの対策として不動産登記法などが改正され、相続登記を義務化することになりました。」(北海道新聞記事引用)


こちらもどちらかと言えば、社会的な問題に起因するものですが、地域の問題になってきますね。例えば、倒壊しそうな空家が倒壊し、近隣住民に被害が出た場合に、相続人の方たちは「関係ない」といえるのでしょうか?次で解説していきます。

相続登記義務化について、「なぜ」義務化なのか?わかりやすく解説

4.所有することによる責任問題について


「民法(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない


2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。


3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」


上記民法の規定は、土地の工作物(建物、橋、電柱、エスカレーター等)について、責任の所在を指しています。


例えば、空き家を放置していたために、倒壊し、近隣住民に損害が発生した場合、空き家に占有者はいませんので、その責任は所有者に行くことになります。

つまり、相続人です。よく条文を見ていただければわかると思うのですが、占有者(賃借人など)には、ちゃんと管理していることが証明されれば責任を免れますが、所有者にはその文言はありません。

つまり、損害が発生した場合、所有者に係る責任は、免責事由がなく無過失責任となります

相続人にいかなる事情があったとしても、とりあえずは責任がかかります。そして損害を賠償した後、「損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」とされるわけです。

使わない不動産(特に老朽化した建物)について、処分方法の検討を促しているのには、このような事情がある訳です。


5.まとめ


このように、相続登記を放置することで相続人が負う責任は、義務化の過料だけではないことがお分かりいただけたと思います。

所有者の責任というのは無過失責任です。使わない実家などがある場合、アイリスでは相談を受けつけております。このような物件を専門に買い取りをされている業者がおりますので、そちらにお繋ぎしております。

漠然とした不安が現実のものになる前に、是非検討してみてください。


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(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

相続登記をご自身でされる場合もあると思いますが、申請書の記載が間違っていたり、法定の要件を欠く場合に法務局側で行う手続きに「補正」「却下」があります。また、申請人が行う手続きとして「取下げ」があります。それぞれ、内容が異なりますので解説したいと思います。


目次


1.「補正」とは


2.「取下げ」とは


3.「却下」とは


4.「却下」・「取下げ」による書類の還付


5.まとめ


(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

1.「補正」とは


補正とは、登記の申請に不備がある場合において、申請人がその補正をすることをいいます。


 補正の方法としましては、「電子申請」と「書面申請」で取り扱いが異なります。


 ①電子申請の補正(不動産登記規則60条2項1号)


  法務大臣の定めるところにより、電子情報処理組織を使用して申請の補正をする。


 ➁書面申請の補正(不動産登記規則60条2項2号)


  登記所に提出した書面を補正し、又は補正にかかる書面を登記所に提出する。


※申請書田添付情報の補正は、「登記官の面前」でさせなければならないとあります。(不動産登記法準則36条3項前段)この場合、当該書面が資格者代理人(司法書士)の作成によるものである時、当該資格者代理人本人に補正させなければならない。(不動産登記法準則36条3項後段)


 個人の意見として、この時は、非常に恥ずかしいと感じます。


 ここで、「登録免許税の追加納付のみ」の補正の場合は、電子申請による場合でも、領収書または収入印紙を窓口に提出又は送付する方法で行います。

(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

2.「取下げ」とは


 取下げとは、申請人の意思により、登記申請を撤回することです。取下げには、登記の申請を補正するための取り下げと、申請を完全にやめるための取り下げの2種類があります。


 注意点として、取下げできる期間があり、「登記の完了後又は却下後」にはすることができません。(不動産登記規則39条2項)


 取下げの方法として、


 ①電子申請(特例方式含む)※特例方式とは、添付書類だけ書類で申請する方式。


  法務大臣の定めるところに従い、電子情報処理組織を使用して申請を取り下げる旨の情報を登記所に提供する方法による。(不動産登記規則39条1項1号)


 ➁書面申請


  申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法による。(不動産登記規則39条1項2号)


 ここで重要になってくるのが、司法書士などの代理人に依頼している場合の「委任状」に記載されている事項です。補正のための取り下げの場合には、取下げのための特別の授権を要しません(昭29.12.25民甲2637号)が、申請を完全に撤回するための取り下げの場合、取下げのための特別の授権をようします。(昭29.12.25民甲2637号)


 また、取下げの際の塘路億免許税の還付についてですが、書面・特例方式の場合、領収書または収入印紙を台紙に貼った書面を取下げの日から1年以内に再使用することができる旨の証明を求めたときは、「再使用証明」がなされます。台紙等に再使用の印が押されますので、再度申請する際に利用できます。しかし、電子納付の場合は、還付の手続きをすることになります。


 ※登録免許税額がそれなりに大きい場合で、申請書類に自信がない場合には、還付するにも時間がかかりますので、「再使用証明」で行った方がいいと思います。

(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

3.「却下」とは


 登記官は、登記申請が25条列挙事由に該当する場合には、理由を付した決定をもってその申請を却下しなければならない。(不動産登記法25条)


 ただし、その申請の不備が補正可能なものであって、申請人が登記官が定めた相当の期間内に補正した場合には、却下されない。(不動産登記法25条但し書き)


※25条列挙事由とは、却下事由になり、これに該当する場合には却下されるという取り扱いになっています。詳細内容については、今回は割愛いたします。


 申請却下時には、登記官から、却下決定書が交付されます。代理人により申請した場合には、当該代理人に交付されます。(不動産登記規則38条1項、2項)


 この時、添付書面は還付されますが、登録免許税のために収入印紙を貼った申請書は返却されません。ですので、取下げの場合と異なり、再使用証明ができませんので注が必要です。


(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

4.「却下」・「取下げ」による書類の還付


 却下と取下げについて、比較した表を以下に示します。


(論点)相続登記(登記申請の補正・取下げ・却下)

5.まとめ


 「補正」「取下げ」「却下」の手続きの違いについて解説をしてきました。


 例えば、最近よく見かけるのですが、本人申請の際に窓口で修正を促している様子を見かけます。こちらは、「補正」に当たると思います。そして、受理前に書類の不足などを指摘して、追加で持ち込んでいただくのも、一種の補正だと思います。また、法務局では、事前に登記相談なども行われたり、司法書士による相談を予約制で受け付けています。司法書士による相談で、詳細まで聞くことはかなり難しいと思いますが、法務局職員による登記相談はいろいろと教えていただけると思います。


 登記の申請は、まずは提出することから始まります。そこで、何か問題があればアドバイスをいただけると思います。法務局に足を運ぶ回数を減らしたい、時間を書けれないというのであれば、やはり司法書士に相談して、申請をお願いするのが良いと考えます。

令和6年4月1日施行の登記事項証明書等における代替措置関係について

令和6年4月1日施行の登記事項証明書等における代替措置関係について

日本語だけで解釈しようとするとおそらく解らない方が多いと思います。

今回、4月1日に、不動産登記関連の登記事項証明書(登記簿)の公示される実際の住所の代わりにその者から申出のあった場所(公示用住所提供法務局等)とする申出を申請時に行い、DVなどの被害を未然に防ぐことを目的とする制度です。

くわしく解説いたします。


目次

1.登記事項証明書等における代替措置とは

2.代替措置を受けられる要件

3.代替措置を申請するときの「承諾書」(何を承諾するのか)

4.まとめ


令和6年4月1日施行の登記事項証明書等における代替措置関係について

1.登記事項証明書等における代替措置とは


今まで、一般的な不動産の登記事項証明書については、売買などの不動産取引の安全を重視し、登記簿上に本人の住所を記録するようにしています。

改正前まで特例的に、登記実務上、例えば、登記名義人等がDV被害者等の被支援措置者である場合には、被支援措置者の保護の観点から現住所を秘匿する必要性が高いことに配慮して、一定の場合に、現住所への住所の変更の登記を不要とする取扱いや、前住所又は前々住所を登記権利者の住所として申請することを許容したり、登記申請書等に記載されている被支援措置者の住所の閲覧制限の取扱いを行っていたりしていました。


 しかし、昨今の義務化された相続登記や住所等の変更登記など、不動産登記簿の情報を最新のものにするための方策を実施するにあたり、DV被害者等を保護する観点からその住所を非公開とする取り扱いの必要性も一層高まっているため、これらの措置に法的根拠が設け、今回の改正により、住所を表示する代替措置等をするようになりました。


不動産登記関連の登記事項証明書(登記簿)の公示される実際の住所の代わりにその者から申出のあった場所(公示用住所提供法務局等)とする申出を申請時に行うことで、DVなどの被害を未然に防ぐことが目的となります。

令和6年4月1日施行の登記事項証明書等における代替措置関係について

2.代替措置を受けられる要件


「(1) 登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)は、その住所が明らかにされることにより、次のア又はイに掲げる場合(以下「措置要件」という。)に該当するときは、代替措置申出(法第119条第6項に規定する申出をいう。以下同じ。)をすることができるとされた。


ア 人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合(法第119条第6項)


イ 当該登記記録に記録されている者その他の者(自然人であるものに限る。)について次に掲げる事由がある場合(規則第202条の3)


(ア) ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第6条に規定するストーカー行為等に係る被害を受けた者であって更に反復して同法第2条第1項に規定するつきまとい等又は同条第3項に規定する位置情報無承諾取得等をされるおそれがあること。


(イ) 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)第2条に規定する児童虐待(同条第1号に掲げるものを除く。以下この(イ)において同じ。)を受けた児童であって更なる児童虐待を受けるおそれがあること。


(ウ) 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者であって更なる暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの(後記(エ)において「身体に対する暴力」という。)を除く。)を受けるおそれがあること。


(エ) 前記(ア)から(ウ)までに掲げるもののほか、心身に有害な影響を及ぼす言動(身体に対する暴力に準ずるものに限る。以下同じ。)を受けた者であって、更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあること。


(2) 前記(1)の「登記記録に記録されている者」には自然人であること以外に特段の限定は付されていないことから、登記名義人であった者、信託目録に記録されている者、閉鎖された登記記録に記録されている者等もこれに該当する。また、登記記録に記録されている者の住所が明らかにされることにより、当該者以外の者(例えば、登記記録に記録されている者と同居する者等)に前記(1)ア又はイに掲げるおそれがある場合も、措置要件に該当する。ただし、この場合においても代替措置申出をすることができるのは登記記録に記録されている者に限られる。


(3) 次に掲げる者が更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合には、前記(1)イ(エ)の事由があるものとして取り扱うものとする。


ア 特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的以外の目的により前記(1)イ(ア)のストーカー行為等と同様の態様による行為に係る被害を受けた者


イ 前記(1)イ(イ)の児童虐待と同様の態様による行為に係る被害を受けた満18歳以上の者(例えば、高齢者など)


ウ 保護者でない者から前記(1)イ(イ)の児童虐待と同様の態様による行為に係る被害を受けた児童


エ 配偶者以外の者から前記(1)イ(ウ)の暴力と同様の態様による行為に係る被害を受けた者


オ 名誉又は財産等に対する脅迫を受けた者


カ 正当な理由なくインターネット上で生活状況を含めたプライバシー情報がさらされている深刻な状況にある者


これらに該当しない者であっても、個別の事案における具体的な事情に応じ、前記(1)イ(ア)から(ウ)までに掲げる言動と同程度の心身に有害な影響を及ぼす言動を受け、更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合には、同(エ)の事由があると認められる。」(通達要件部分引用終わり)


 つまり、自然人(法人ではない個人)であり、DVだけでなくストーカーや脅迫などを受けている場合で、有害な影響を受ける恐れがある場合に、代替え措置の提供を受けることができるとなっています。


令和6年4月1日施行の登記事項証明書等における代替措置関係について

3.代替措置を申請するときの「承諾書」(何を承諾するのか)


法務局の住所を公示するにあたり、代替措置の申出書に加え「承諾書」を要求されます。その内容は以下の通りです。


「☑ 前記2の内容に変更が生じた場合には、速やかに前記1に記載した公示用住所提供者(規則第202条の10に規定する公示用住所提供者をいう。以下同じ。)である法務局又は地方法務局(以下「公示用住所提供法務局等」という。)に変更後の事項を申し出ます。


☑ 公示用住所提供法務局等が受領するのは、申出人に宛てて公示用住所提供法務局等に送付された文書に限り、文書以外の物は受領しないことを承諾します。


☑ 裁判所による特別送達、本人限定受取郵便その他の公示用住所提供法務局等において受領することが性質上予定されていない方法によりに公示用住所提供法務局等に送付された文書は、公示用住所提供法務局等において受領しないことを承諾します。


☑ 公示用住所提供法務局等が受領した文書は、当該受領の日から1か月間に限り公示用住所提供法務局等で保管するものとし、申出人本人又はその代理人がその期間内に当該文書を受領しないときは、公示用住所提供法務局等において当該文書を廃棄することを承諾します。


☑ 申出人に宛てて公示用住所提供法務局等に送付された物が文書であることを確認するため必要があるときは、申出人の承諾なく、公示用住所提供法務局等において開封その他の必要な処分をすることを承諾します。


☑ 規則第202条の11第2項第4号及び第202条の16第3項第3号に規定する取扱い(以下「本取扱い」という。)は、次に掲げる日のうち最も早い日に終了し、当該日以後に申出人に宛てて公示用住所提供法務局等に送付された文書その他の物は、公示用住所提供法務局等において受領しないことを承諾します。


⑴ 公示用住所提供法務局等を公示用住所提供者とする代替措置等申出(規則第202条の4第1項に規定する代替措置等申出をいう。以下同じ。)があった日から10年を経過した日(この法務大臣の定める事項と同様の事項を記載した書面を提出して公示用住所提供法務局等に対して本取扱いの延長を申し出た場合を除く。)


⑵ 規則第202条の15第1項の規定による代替措置申出の撤回があった日


⑶ 申出人の死亡の日


☑ 不動産登記法(平成16年法律第123号)第119条第6項の申出に関する情報を保有する法務局又は地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が、本取扱いに必要な限度で、公示用住所提供法務局等に対して当該情報を提供することについて承諾します。


☑ 公示用住所提供法務局等の所在地に変更があった場合であっても、規則第202条の16第1項の規定による公示用住所の変更申出がない限り、登記事項証明書又は登記事項要約書に記載される公示用住所(規則第202条の10に規定する公示用住所をいう。)は変更されないことを理解しました。


☑ 公示用住所提供法務局等の故意又は重過失による場合を除き、本取扱いに関して発生した損害について、国は賠償責任を負わないことについて承諾します。」(承諾書引用終わり)

令和6年4月1日施行の登記事項証明書等における代替措置関係について

4.まとめ


今回の法改正により、一定の要件を充たす必要はありますが、公示される登記事項証明書に「住所」を仮の住所(法務局等)することができ、「文書(荷物はNG)」の保管を1か月間行っていただけるという点。


運用によっては、また変更がされるかもしれませんが、良い方向に進んでいると思います。


私が、相談を受けた方の中には、このような被害にあわれていている方にお会いして話を聞くこともありましたので、少しずつ前進していると思います。

(論点)相続問題(混ぜるなキケン!「相続放棄」と「財産放棄」の違い)

(論点)相続問題(混ぜるなキケン!「相続放棄」と「財産放棄」の違い)

相続登記を実施する際に、添付書類として法定相続人を特定するために戸籍謄本等から確認します。そして、当然、遺産の分配について、原則法定相続分となるわけですが、そこからさまざまな事情を踏まえて、相続人間で遺産分割協議をして遺産を分割します。一方で、相続放棄の申述は、家庭裁判所の手続きを要します。先日の相談で「相続分のないことの証明書」を作成し、署名押印したので、私は相続放棄をしたことになるのかとの相談を受けました。果たして相続放棄なのでしょうか?


目次

1.相続放棄とは

2.「相続分のないことの証明書」とは何を証明しているのか

3.被相続人の借金を負わないために

4.まとめ


(論点)相続問題(混ぜるなキケン!「相続放棄」と「財産放棄」の違い)

1.相続放棄とは

 

民法では相続放棄について、以下のように規定されています。


「(相続の承認又は放棄をすべき期間)


第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。


2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる


(相続の放棄の方式)


第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。


(相続の放棄の効力)


第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」


 つまり、手続きとして家庭裁判所に申述しなければならず、その期間は熟慮期間と呼ばれ「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」以内にしなければなりません。3か月と言いますと、あっという間です。また、相続放棄は、被相続人が生きている間にはできません。相続発生後にできる手続きとなりますので、3か月経過直前に相談に来られる方もいますが、相続放棄ができなくなる可能性も出てきます。


 そして、相続放棄の効果は、「相続人とならなかったものとみなす」、よって、被相続人が有する債権債務のすべてを受けられなくなります。


(論点)相続問題(混ぜるなキケン!「相続放棄」と「財産放棄」の違い)

2.「相続分のないことの証明書」とは何を証明しているのか


 ここで、過去に相続登記をされた方の中で、「相続分のないことの証明書(特別受益証明書・寄与分を取り決めた遺産分割協議書など)」を作成したという方がいらっしゃるかもしれません。これは、相続登記を申請する際に添付する登記原因証明情報の一つとして、証明された方は財産をもらわなかったという証明書になります。この手続きは「財産放棄」といいます。あくまでも、相続人間で財産の分配の方法を決めるために行う手続きです。


(論点)相続問題(混ぜるなキケン!「相続放棄」と「財産放棄」の違い)

3.被相続人の借金を負わないために


 さて、「相続放棄」と「財産放棄」について解説してきましたが、実際のところ被相続人(亡くなった方)の負債を負わなくていいのは、どちらなのでしょうか?皆さんはわかりますか?


 初めから相続人ではなかったとみなしてくれる「相続放棄」と、相続人間のみで取り決める「財産放棄」。被相続人の債権者が影響を受けるのは「相続放棄」です。


 「初めから相続人ではないとみなす=この相続で受ける債権債務を引き継がない」ということになるからです。


 それでは遺産分割協議で財産をもらわなかった場合、相続負債を負わなくてもいいのでしょうか?


「(遺産の分割の効力)


第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


 遺産分割協議を相続人間ですることは自由なのですが、但書で「第三者の権利を害することはできない。」とあります。つまり、相続債権者の権利は害せないわけです。結果、負債を相続人として受けることになります。


 今までも、相談に来られる方の中に、「相続放棄」と「財産放棄」を混同されている方が多くいらっしゃいました。相続放棄は、必ず家庭裁判所の手続きが必要です。もし、家庭裁判所の手続きをしていなければ、それは相続放棄ではないかもしれません。


(論点)相続問題(混ぜるなキケン!「相続放棄」と「財産放棄」の違い)

4.まとめ


 「相続放棄」「財産放棄」について、手続きとその効力について解説してきました。「財産放棄」であるのに、相続放棄をしたと勘違いしてしまいますと、後に、被相続人の債権者から多額の請求を受けることになります。また、相続放棄は家庭裁判所の申述により行われます。ご自身ですることも可能です。一般的には書面のみの手続きとなりますが、申述する内容によっては、家庭裁判所に出頭を命じれられる可能性もあります。ですので、熟慮期間の残りの期間と相続放棄手続きについて、専門家に相談されることをお勧めいたします。


 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください

不動産取引の注意点(利益相反取引)

不動産取引の注意点(利益相反取引)

会社の役員(取締役等)の所有する土地を自身が役員を務める法人に売却する場合、「利益相反取引となります。他にも、担保権(抵当権など)の設定などにおいても、この「利益相反取引」となり売る場合があります。それでは、利益相反取引の状態で売却は可能なのか?解説していきたいと思います。今回は、法人と個人の取引についてお話をします。


目次


1.不動産登記における利益相反取引

2.利益相反取引かどうか見極めるポイント

3.利益相反取引の場合の添付書類

4.まとめ


不動産取引の注意点(利益相反取引)

1.不動産登記における利益相反取引


不動産取引における利益相反取引ですが、一番わかりやすいのは、個人の不動産をその方が代表を務める会社に売却するケースです。売買契約自体は問題なくできるでしょうが、問題点は、どちらも立場が異なるだけで、「同一視」できる点です。ですので、不当に安い値段で売却したり、不当に高く売却することが可能になってしまいます。要は、契約内容は自由ですので、第三者に売却する場合と比べると、不当に高く売却する場合、法人から合法的に資金を個人に移転できてしまうわけです。法人の資金が外部に流出して損害を被るのは、「株主」です。ですので、原則、株主総会決議を要するわけです。

2.利益相反取引かどうか見極めるポイント

 不動産登記関連での利益相反取引については、様々な事例があります。まずは、権利の種類から見ていきます。

 ①不動産の所有権の場合

 所有権が移転する場合、それが買主・売主の立場であっても双方ともに考慮が必要です。なぜなら、「会社の資産を安く売る行為」(売主側)、「会社が高く買う行為」(買主側)で、利益相反の可能性が出てくるわけです。それでは、個人・法人間の取引では、どのように見ていけばいいのでしょうか?その個人が、取締役に含まれているかどうかで判断します。

 それでは、法人・法人間取引では、どのようにみるのかと言いますと、自身が代表を務める法人に対し、相手方の法人にその代表者が取締役としている場合が該当します。

 ➁担保権(抵当権)の場合

 担保権の場合、担保権を設定している不動産の所有権者が「法人」の場合注意が必要です。なぜなら、個人所有不動産に法人の担保権を設定するのは自由ですし、法人の債務を個人資産で担保してくれるので、株主に損害を及ぼすこともありません。

  ㋐抵当権を設定する場合

   法人所有の不動産に、個人債務を担保するために抵当権を設定する場合、利益相反取引となります。

  ㋑抵当権の債務者を変更する場合

   個人所有の土地に、個人債務者の抵当権が設定されている状態で、この債務者を法人に変更をする場合、利益相反行為となります。会社が個人の債務を肩代わりするわけですからね。株主総会決議は必要とはなりますが、登記の際、承諾証明情報として、株主総会議事録の添付は不要です。なぜなら、個人所有の不動産のため、最終的に抵当権が実行されると、不動産を失うのは個人ですから。

不動産取引の注意点(利益相反取引)

3.利益相反取引の場合の添付書類


 不動産登記の申請書に添付する書類として、「株主総会議事録(取締役会設置会社においては、取締役会議事録)」が必要です。通常、商業登記の申請において、株主総会議事録を添付する場合、併せて「株主リスト」の添付を要求されますが、不動産登記の商大証明情報として「株主総会議事録」を添付する場合、この「株主リスト」の添付は要求されていません。(不動産登記令9条、規則36条4項)


 先の、抵当権の債務者の変更について、故人の債務を肩代わりしているのに、なぜ株主総会議事録が要らないのかという点については、法務局ではあくまで「形から入る」、つまり、外形が利益相反に見えるかどうかで判断します。これは利益相反の登記に限らず、どのような事情でも外形上の判断になります。


 しかし、登記に必要ないからと言って、決議を省略してはいけません。実質上は利益相反取引ですからね。


不動産取引の注意点(利益相反取引)

4.まとめ


 先の、抵当権の債務者の変更について、故人の債務を肩代わりしているのに、なぜ株主総会議事録が要らないのかという点については、法務局ではあくまで「形から入る」、つまり、外形が利益相反に見えるかどうかで判断します。これは利益相反の登記に限らず、どのような事情でも外形上の判断になります。


 しかし、登記に必要ないからと言って、決議を省略してはいけません。実質上は利益相反取引ですからね。


 利益相反取引については、「相続人の遺産分割協議で未成年の代理人が自分も相続人である場合」なども含まれてきます。


 このように、利益相反かどうかの判断は、専門家に相談して手続きを進めていくべきだと考えます。


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(論点)相続問題(譲渡したはずなのに登記未了だった)

(論点)相続問題(譲渡したはずなのに登記未了だった)

過去に不動産を譲渡(売買・贈与)したが、その後、当事者が亡くなり相続人が調査すると、その登記が未了であることが発覚。しかも、契約書などの書類は見つからず途方に暮れているという相談です。

契約書類がなく、しかもその当事者が双方とも死亡している場合、登記はできるのでしょうか?


目次


1.民法上の譲渡契約について

2.具体的にどうすればいいのか

3.相続を証する書面とは

4.まとめ

(論点)相続問題(譲渡したはずなのに登記未了だった)

1.民法上の譲渡契約について


それでは、譲渡(売買・贈与)契約をした場合、どのような時点で契約が成立するのでしょうか。

「民法(売買)

第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」


「民法(贈与)

第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」


つまり、双方の意思表示が合致したときにその契約は成立するとなっています。

ただし、法律上書面等での契約を規定しているものもあります。


「民法(保証人の責任等)

第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」


(論点)相続問題(譲渡したはずなのに登記未了だった)

2.具体的にどうすればいいのか


それでは、具体的に登記をする場合にはどのようにしたらいいのか、そもそも亡くなった方の意思表示はどうするのかについて、解説していきます。

今回の事例は、売主・買主双方ともに亡くなっているケースでお話をいたします。


申請書に添付する「登記原因証明情報」がありますが、契約書がなければ契約書を添付することはできません。そこで、司法書士が報告形式の登記原因証明情報を作成し、相続人の皆様に署名押印をしていただくことになります。




所有権の名義変更について、申請書には以下のように記載をします。


A→Xの贈与の後、双方死亡し、Aの相続人がB・C、Xの相続人がY・Zとします。


(申請書)


登記の目的 所有権移転

登記の原因 年月日贈与


権利者   亡X

      上記相続人 Y

      上記相続人 Z

義務者   亡A相続人 B

      亡A相続人 C


※権利者側のY又はZが申請人となり登記をすることができます。権利者側は、保存行為として、その1人から登記ができるためです。

※義務者側のAの相続人については、相続人全員が申請人になることを要します。(昭27.8.23民甲74号)

しかし、上記の相続人としてどのように証明すればいいのでしょうか。それは、申請書に添付する書面として「相続証明情報」が必要になります。(不動産登記令7条1項5号イ)


3.相続証明情報とは


被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍、相続人の現戸籍です。

売主・買主双方に相続が発生している場合には、双方の書面が必要となります。加えて、被相続人の住民票の除票も必要になります。(譲渡側:登記簿の住所と氏名で本人を特定するため、受取側:亡くなった方の最後の住所の証明として)

また、これらの書類の原本還付ができるかどうかについては、法務局HPを参照すると


(法務局HPより引用)


「「原本還付」される情報原本還付される主な情報(書面)は,以下のとおりです。

① 登記原因証明情報のうち売買契約書,抵当権設定契約書及び弁済証書,解除証書の原本など いわゆる報告的な登記原因証明情報は 原本還付されません

② 住所証明情報(住民票など)

③ 資格証明情報(会社・法人の代表者事項証明書など)

相続を証する情報(遺産分割協議書,被相続人の住民票の除票など)※ 相続の登記に添付する「相続を証する情報」のうち戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本 ,閉鎖戸籍全部(個人)事項証明書(除籍謄抄本 )))は,相続関係説明図を提出すれば,原本還付を請求することができます。なお,原本還付の請求が可能かどうか不明な場合は,最寄りの法務局又は地方法務局に御相談ください。」とあります。


4.まとめ


このように、契約当事者がすでに死亡しており、契約書も無い登記未了の物件について、現状で登記をすることは可能です。

また、時効取得として要件を充たす場合には、そちらで現利用者に名義を移転することも可能です。

詳しくは、司法書士まで相談してください。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


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静岡市「身元保証」全国初の事業者の認証制度を導入

静岡市「身元保証」全国初の事業者の認証制度を導入

前回お話した身元保証サービスの闇ですが、令和6年2月2日に全国初となる身元保証サービス提供事業者の認証制度を静岡市が導入した記事を見つけました。業界内外で、サービスの正常運用化に向けた取り組みはしているものの、まだまだやりたい放題の業者もいるわけで、今回は「業界の正常化に向けた第1歩」だと思います。



目次

1.身元保証サービスの問題点のおさらい

2.静岡市「身元保証」 全国初の事業者の認証制度を導入

  (静岡News Web)

3.まとめ


静岡市「身元保証」全国初の事業者の認証制度を導入

1.身元保証サービスの問題点のおさらい

 

第一に、身元保証サポートのサービスについて、法律上の整備がなされていません。それゆえに、各社サービス内容もまちまちです。金額が安いからということで契約しても、実際のサービス内容が、契約者にとって満足いくものとは限りません。

 第二に、預託金を信託口口座など、安全な場所に保管管理できていないケースもある点です。自社の口座で管理していた場合、破産した場合、そのお金は債権者に差し押さえられてしまい、回収することはできないでしょう。

 第三に、サービス提供会社の中には、「公正証書遺言」の内容に、「団体(法人)への寄付」を義務付けている場合があります。過去の判例で、とあるNPO法人がこれをしていたため、甥・姪から相続の侵害として訴えられ、最高裁で「無効」との判決が出ました。しかし、このケースでは、権利を侵害された相続人がいたために発覚したことであり、身寄りのない「おひとりさま」の場合、未だにこのようなことをしている団体(法人)があるそうです。


※今回は、この点で争いになっています。


 「お世話になった団体に寄付して何が悪いんだ」との反論も聞こえてきそうですが、考えてみてください。あなたが重病を患い多額の医療費がかかるとき、医者と身元保証人との間で、あなたは治療してもらいたくても、あらかじめ決めておいた医療の方針を実施するとの話し合いがあった場合、どうすることもできません。悪い言い方をすれば「多額の治療費を使って治療すること=将来、団体が受ける実入りが減る」の関係になってしまっているため、果たして寄付前提の契約をした身元保証人が、あなたのご意見を聞いてくれるか疑問です。


2.静岡市「身元保証」 全国初の事業者の認証制度を導入(静岡News Web)


 前回お話した身元保証サービスの闇ですが、令和6年2月2日に全国初となる身元保証サービス提供事業者の認証制度を静岡市が導入した記事を見つけました。ここまで社会問題となっていて、裁判で争っている方もいらっしゃる身元保証サービスですが、私は国の怠慢だと考えます。おひとり様が亡くなった場合、ものをいう方がいない場合が圧倒的に多いので、表面化しないだけです。ですので現状目に見えているのは氷山の一角です。業界内でも、身元保証サービスを正常化する動きもありますが、業者には監督権限なんてありませんから、強制力がないんですよね。このまま放置はできないということで、静岡市がついに動きました。


(令和6年2月2日 静岡News Web記事引用)


「身寄りのない高齢者の入院時などの「身元保証」を行う民間のサポート事業の需要が高まる一方、契約をめぐるトラブルが問題となる中、全国で初めてとなる事業者の認証制度を静岡市が導入することになりました。


民間の「身元保証等高齢者サポート事業」は、家族などに代わって保証人の役割を担ったり、日常生活の支援、死後の葬儀などを行うもので、単身高齢者の増加で需要が高まる一方、所管する省庁や法律がなく、契約に関するトラブルも報告されています。


こうした中、事業者の質の保証に行政も関わる必要があるとして、静岡市は事業者の認証制度を導入を決め、1日の説明会には、事業を行うNPOや社会福祉法人など7社が集まりました。


静岡市では、契約ルールや解約時の返金の手続き、死後の寄付などの基準を新たに定め、条件を満たす場合に限り、3年間「優良事業者」の認証が与えられます。


その後は更新制で、市は申請のあった事業者からサービス内容や料金体系、財務状況などを審査した上、認証した場合はホームページなどで公表することにしています。


総務省によりますと、自治体が身元保証事業者の認証制度を創設するのは全国で初めてだということです。


参加した事業者は「独身の人が増え、生前や死後事務を代行するニーズが高まっているので行政が関わる認証は大事だと思います」と話していました。


静岡市地域包括ケア・誰もが活躍推進本部の酒井真本部次長は「前例のない基準づくりに苦労したが、皆さんが安心して利用できるよう事業者と一緒に体制を整備していきたい」と話していました。」(記事引用終わり)


 静岡市が、身元保証サービスを提供している事業者を対象に「認証制度」を全国初で導入したという内容です。特筆すべきは、認証したらそれで終わりではなく、3年間「優良事業者」の認証としている点です。やっと動き始めましたね。


静岡市「身元保証」全国初の事業者の認証制度を導入

3.まとめ


 身元保証サービスを提供する事業者に対し、静岡市が全国初で3年間の認証制度を導入した記事をご紹介しました。


 実際のパンフレットなどを見たときに、生前のサービスの料金が他の事業者と比較して異常に安い場合は、死後の財産を法人に移転することを要件としている場合もあります。勿論、安くてもそのような要件はない場合もありますが、サービス提供を受け始めてから、遺言書と死因贈与契約書を作成するケースもあります。事前にどの事業者が問題があるのかがわからないというところに、最大の闇が存在します。


 この認証制度が全国に広がることを期待しております。


身元保証サービスの闇

身元保証サービスの闇

随分前からある身元保証サービスを提供する法人が、利用者に「法人に全財産を相続させる」という遺言書と死因贈与契約書を作成し、親族がこれを無効とする裁判の判決が名古屋地裁で出ました。過去のブログでも、身元保証を提供する法人すべてが問題なのではなく、亡くなった後の財産を法人が総取りする仕組みを利用してる業者が問題であることは、お話をしてきました。内容を見ていきましょう。


目次

1.「全財産相続させる」本人の筆跡と違う契約無効の判決 高齢者の身元保証NPO敗訴(中日新聞記事より)

2.これまでも問題となっている身元保証サービス

3.何が問題なのか

4.まとめ

1.「全財産相続させる」本人の筆跡と違う契約無効の判決 高齢者の身元保証NPO敗訴(中日新聞記事より)

身寄りのない高齢者らの身元保証を請け負う名古屋市内のNPO法人が、同市内の90歳と74歳の姉弟と交わした死亡後の贈与契約について、親族が「(姉弟の)署名は自筆でない」として契約無効の確認を求めた訴訟の判決が28日、名古屋地裁であり、棚井啓裁判官は「契約は無効」と親族の訴えを認めた。


 判決によると、2022年8月、「私は全財産をNPO法人に相続させる」と記載され、姉弟がそれぞれ本人名義で署名、押印した遺言書が作成された。死亡と同時に全財産の所有権がNPO法人に移る死因贈与契約書も、本人名義の署名でそれぞれ作成された。」(記事引用終わり)


今回は、おひとり様ではなく、親族の方がいたので争いになっています。本当におひとり様の場合、争う相続人がいませんので、財産は遺言書や死因贈与契約先の法人のものになっていたのでしょう。また、身元保証サービスを提供しているのは、NPO法人だけとは限りません。


2.これまでも問題となっている身元保証サービス

 (2021年1月30日 東京新聞)


 「身寄りのない高齢者の身元保証代行を請け負う愛知県内のNPO法人が、死亡した高齢者との贈与契約に基づき金融機関に預金の返還を求めた訴訟の判決が名古屋地裁岡崎支部であり、近田正晴裁判官は「公序良俗に反する契約で無効」として請求を棄却した。高齢者と身元保証代行団体との間で交わされた、死亡時の財産の贈与契約(死因贈与契約)を無効とする司法判断は極めて珍しい。」(記事引用終わり)


 こちらは、おひとり様の死亡後、契約に基づいて預金の支払いをしようとしたところ、金融機関が拒んだことで裁判となった事例です。


※以前、金融機関から後合わせで、「死因贈与契約書(公正証書ではない)」を持ってきた預金の承継屋を名乗る方に、預金の払い戻しができるかという問い合わせがありましたが、預金には譲渡禁止特約が付いています。知らないというのは通りません。なぜなら預金が自由に取引でき、詐欺の温床になってしまうためです。そのため、相続人全員の同意書がなければ、契約で譲渡をしようとしても譲渡禁止特約を主張できる旨アドバイスをしたことがあります。しかし、おひとり様の場合ですとこの判例から、「公序良俗に反する契約で無効」が言えそうですね。ただし、地裁の判断ではありますが。


3.何が問題なのか

 第一に、身元保証サポートのサービスについて、法律上の整備がなされていません。それゆえに、各社サービス内容もまちまちです。金額が安いからということで契約しても、実際のサービス内容が、契約者にとって満足いくものとは限りません。


 第二に、預託金を信託口口座など、安全な場所に保管管理できていないケースもある点です。自社の口座で管理していた場合、破産した場合、そのお金は債権者に差し押さえられてしまい、回収することはできないでしょう。


 第三に、サービス提供会社の中には、「公正証書遺言」の内容に、「団体(法人)への寄付」を義務付けている場合があります。過去の判例で、とあるNPO法人がこれをしていたため、甥・姪から相続の侵害として訴えられ、最高裁で「無効」との判決が出ました。しかし、このケースでは、権利を侵害された相続人がいたために発覚したことであり、身寄りのない「おひとりさま」の場合、未だにこのようなことをしている団体(法人)があるそうです。


※今回は、この点で争いになっています。


 「お世話になった団体に寄付して何が悪いんだ」との反論も聞こえてきそうですが、考えてみてください。あなたが重病を患い多額の医療費がかかるとき、医者と身元保証人との間で、あなたは治療してもらいたくても、あらかじめ決めておいた医療の方針を実施するとの話し合いがあった場合、どうすることもできません。悪い言い方をすれば「多額の治療費を使って治療すること=将来、団体が受ける実入りが減る」の関係になってしまっているため、果たして寄付前提の契約をした身元保証人が、あなたのご意見を聞いてくれるか疑問です。もちろん、寄付の義務を要求する団体・法人ばかりではありませんし、適切に身元保証サポートサービスを運用されている団体・法人もあります。


4.まとめ

 今回の判決を受けて、過去の判例を調べていきますと、判例を見ていくと、昭和のものもありました。随分前から問題になっているわけですがなぜこのようなことがいまだに続いているのでしょうか?


 それは、身元保証代行は監督官庁がなく、契約の不透明さがしばしば指摘されているにもかかわらず、何ら法整備ができていないためです。2016年には日本ライフ協会(東京)が高齢者からの預託金を流用していたことが発覚して破産し、社会問題になったという事件もありました。


 監督官庁がなく、法律も整備されていない状態では、この手の事件は減らないと思います。


そんな中・・・・(次号に続く)

「10年後に遺言発見」最高裁は何を初判断したのか(令和6年3月19日)

「10年後に遺言発見」最高裁は何を初判断したのか(令和6年3月19日)

法定相続人が不動産を相続して10年以上たった後、他にも相続人がいるとする遺言が見つかった場合、誰が不動産を所有できるのか?

セミナーなどでよく質問がある論点です。

これについて、先日、最高裁が初めて判断を示したみたいです。


目次


1.事件の概要(令和6年3月19日 日経新聞記事引用)

2.相続回復請求権とは

3.まとめ

「10年後に遺言発見」最高裁は何を初判断したのか(令和6年3月19日)

1.事件の概要(令和6年3月19日 日経新聞記事引用)


法定相続人が不動産を相続して10年以上たった後、他にも相続人がいるとする遺言が見つかった場合、誰が不動産を所有できるのか――。こうした点が争われた訴訟の上告審判決が19日、最高裁第3小法廷(渡辺恵理子裁判長)であった。同小法廷は法定相続人による相続財産の取得は遺言によって妨げられないとする初判断を示した。

民法は、所有する意思を持ち善意・無過失で10年間、不動産などを占有した場合はその所有権を取得できるとする「時効取得」を定める。下級審では最近も「時効取得は成立しない」とする判断が出ていた。

最高裁が時効取得の成立を認め、遺言に基づく相続権の主張では既にある登記を覆すことはできないとしたことで、同種の事案は今回の結論に沿って判断されるとみられる。


判決などによると、原告の女性は2004年、養子縁組をしたおばの不動産を唯一の法定相続人として相続、登記した。


ところが、10年以上過ぎた18年に遺言の存在が判明。裁判官が立ち会って開封する「検認」が行われたところ、女性や女性のいとこを含む3人に「遺産を等分する」と書かれていた。

女性は既に時効取得が成立しており、いとこらに遺産の返還を求める権利はないとして19年に提訴した。


裁判でいとこ側が主張したのは、民法が規定する「相続回復請求権」と呼ばれる権利だ。

本来、相続人でない人に相続権を侵害された場合、侵害を知ってから5年以内なら財産を取り戻すことができるとする。

いとこ側は、侵害の事実を知ったのは検認を経て遺言の内容を把握した時点で、まだ5年が経過していないと強調

家督相続に関する訴訟を巡り、相続回復請求権を行使できる状態では時効取得は成立しないとした1932年の大審院(現在の最高裁)の判例などを根拠に、女性に対して不動産を返すよう求められると反論した。

第3小法廷は、回復請求権に5年間などの期限が設けられた目的は「相続権の帰属や法律関係を早期、終局的に確定させること」にあると確認。

行使できなくなるまで時効取得を認めないのは「趣旨に整合しない」とした。


相続回復請求権が残っている状態でも時効取得は成立すると結論付け、女性側の請求を認めた二審・東京高裁判決を支持。

いとこ側の上告を棄却した。


いとこ側が言及した大審院の判例については「家督相続制度を前提とするものだ」として、今回の判断は「抵触しない」と述べた。


相続回復請求権が主張されるのは、遺言などによって自身に相続権があることを後から知るケースに限られる。ベテラン裁判官は「こうした場面はあまり想定されず、判決の影響は限定的だろう」とみている。」(記事引用終わり)


(原告 法定相続人の主張)

時効取得が成立しており、いとこらに遺産の返還を求める権利はない。


(被告 いとこ側の主張)

相続回復請求権を行使できる状態では時効取得は成立しないとした1932年の大審院(現在の最高裁)の判例などを根拠に、女性に対して不動産を返せ。


(最高裁の判断)

いとこ側の上告を棄却。原告の主張を支持した。


※却下という のは「要件を備えていない不適法な訴えなどと して内容が審理(検討)される前に退けられるこ と」をいいます。これに対して内容が審理されたうえで訴えが 退けられることを「棄却(ききゃく)」といいます。


2.相続回復請求権とは


「民法(相続回復請求権)

第八百八十四条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様とする。」


「10年後に遺言発見」最高裁は何を初判断したのか(令和6年3月19日)

3.まとめ

今回は、法定相続した後に、遺言書が発見されたものですが、期間が取得時効の善意取得の期間である10年を超えていたため、原告が時効取得を主張し、それが最高裁判所に認められたという内容でした。

それでは、取得時効の善意取得できる期間である10年を下回った場合、どうなるのか?現状では、まだ判断は出ていませんので何とも言えません。


しかし、今回取り上げた内容は、完全に争いが生じておりました。

裁判では、途中、和解を勧められますが、最高裁まで争ったところを見ると相当揉めていたことがうかがえます。


遺言書を作成された方は、ご家族に内容は伝えないまでも、その「想い」を確実に伝達できるように、その保管場所を伝えておきましょう。


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根抵当権における債務者の相続について

根抵当権における債務者の相続について

根抵当権とは、特定の債務を担保する抵当権と異なり、契約・登記の「極度額」まで去っていされた取引から生じる債務を担保します。しかし、「元本確定事由」が発生しますと、それまでの債務と利息、遅延損害金を担保する抵当権のようになります。

この根抵当権で、債務者に相続が発生した場合、どのような手続きが発生するのでしょうか。


目次


1.根抵当権と抵当権の違い

2.相続発生後6ケ月以内にできる対応

3.相続発生後6か月経過後にできる対応

4.債務者が法人で、その代表者に相続が発生した場合

根抵当権における債務者の相続について

1.根抵当権と抵当権の違い


(抵当権)

抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。

担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。

つまり、「借入金=抵当権で担保する債権」ということになります。

抵当権の債務者に相続が発生した場合には、相続による債務者の変更の登記が必要になります。


(根抵当権)

根抵当権とは抵当権の一種であり、複数回の貸付・借入を行う契約において利用されます。

根抵当権では、担保となる目的物から貸付の限度額を定め、その範囲内で貸付・借入を行います。

抵当権は、一度の貸付・借入ごとに設定する必要があり、同じ債務者・債権者同士で契約を行う場合でも、その都度、抵当権を設定しなければなりません。

しかし、根抵当権であれば、貸付限度額の範囲で何度でも貸付・借入を行えます。カードローンの借り入れに似ています。

要は、借入金も担保されますが、それ以外に借りた借入金も担保でき、発生消滅を繰り返しても、根抵当権の効力は継続します。


抵当権の場合、借入金を全額返済した場合、抵当権はその担保権としての効力が無くなり抵当権を抹消することができます。

一方で、根抵当権の場合には、元本確定事由が発生しない限り、債務を全額返済しても根抵当権の効力は無くなりません。

この点が一番抵当権と異なる部分です。

勿論、債務者が債権者である金融機関等と話をして、根抵当権がもう必要なければ、「解除」により抹消することは可能です。


2.相続発生後6ケ月以内にできる対応


(元本を確定させないための登記)

元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。

金融機関と相談した上、指定債務者を選び登記するように指定があった場合、指定債務者の合意の登記をするためには、その前提として被相続人の相続人全員を債務者とする債務者の変更登記をしなければなりません。

つまり、①相続人全員の債務者変更登記、➁指定債務者の合意の登記、の2回の登記が必要となります。債務者の変更の登記となりますので、登録免許税は、共同根抵当権が設定されている物件の数×2回分×1000円となります。

また、相続発生から合意までの間の各相続人が承継した債務を担保するためには、さらに③債権の範囲の変更登記も必要になります。


(事例)

根抵当権者X銀行、債務者Yの根抵当権があり、Y所有の不動産があったとします。

Yの相続人はA,Bで、Aが不動産を遺産分割協議で相続登記をしているものとします。


 ①相続人全員の債務者変更登記

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  変更後の事項 債務者(被相続人 甲) A B」


 ➁指定債務者の合意の登記

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  指定債務者 A」


 ③債務者及び債権の範囲の変更登記


 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  変更後の事項

  債務者 A

  債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権

       ○年○月○日債務引受(旧債務者B)にかかる債権

       ○年○月○日相続によるAの相続債務のうち変更前根抵当権の被担保債権の範囲に属するものにかかる債権


※AがYの相続により承継した債務及びBが相続した債務を免責的に引き受けたものにかかる債務は根抵当権によって担保されませんので、特定債権として追加する必要があります。債務者をAとする変更登記は交替的変更となりますので、変更前に生じたXのAに対する債権の範囲に属するものにかかる債権も根抵当権によって担保されることになります。

元本確定前の根抵当権において、債務者が変更した場合、新たな債務者の債権は担保するものの、今までの債権は外れてしまいますので、このような特定債権として、根抵当権の債権の範囲を変更することで、根抵当権の担保範囲に加えることができます。


3.相続発生後6か月経過後にできる対応


先にも書いた通り、元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。

元本が確定すると、その後は通常の抵当権のように相続時の債権を担保する抵当権と同じになりますが、極度額まで「利息」「遅延損害金」を担保することができます。

当然、相続後に発生した債権については、当該根抵当権では担保できなくなってしまいます。

そして、確定後の債務を全額返済すれば、根抵当権は効力を失います。

それでは、具体的にどうなるのかと言いますと、以前のブログの抵当権の債務者の相続と同じ手順で行うことになります。金融機関から指定があると思うのですが、①遺産分割協議による相続登記を行う方法と、➁相続登記後に免責的債務引受による債務を承継する相続人の債務引受けの登記の2種類となります。


 これらの登記は、元本が確定していないとできませんので、相続発生から6か月経過後に行うことができます


 ①相続人全員の債務者変更登記

 「年月日相続」を原因として

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  変更後の事項 債務者A B」(法定相続人全員を登記)


 ➁免責的債務引受けにおける債務者の変更

  「年月日Bの債務引受」を原因として

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  変更後の事項 債務者 A」(債務を引き受ける相続人を登記)


※➁の登記原因証明情報として「根抵当権変更契約書(債務者相続による免責的債務引受)」の契約書を作成します。

※すべての根抵当権変更登記において、登記権利者(根抵当権者)、登記義務者(所有権の名義人)となります。

根抵当権における債務者の相続について

4.債務者が法人で、その代表者に相続が発生した場合


法人の代表者が死亡した場合、債務者が法人の根抵当権はどうなるのでしょうか?

確かに代表者の方は亡くなっていますが、法人そのものは存続していますし、法人の代表者は別の方が鳴っていたとしても、法人と金融機関が交わした契約そのものが無効になるわけではありません。

先にも書いた通り根抵当は、継続取引を想定した担保権です。

ですので、故人が債務者の根抵当権とは異なり、代表者に相続が発生しても登記は発生しません。


しかし、法人と金融機関との間の債務を代表者が個人として、連帯保証人になっているようなケースでは、連帯保証人の脱退加入の契約が必要となります。

このような場合には、取引先の金融機関にお問い合わせください。


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相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

先日、ニュース記事で「妻に自宅を贈与する」記事が出ていました。

贈与税を念頭に贈与を検討していました。

婚姻期間20年超の夫婦間の配偶者へ住宅又は住宅を取得するための資金を贈与した場合の特別控除があります。

果たして、これだけで問題がないのでしょうか?

また、生前贈与した自宅を相続発生時に「みなし相続財産として持ち戻し」の対象になるのかについて、お話をしたいと思います。


目次


1.夫婦間で20年以上の期間の贈与税の控除額

2.記事「「結婚後20年経てば贈与税がかからない」は本当か?」(健美家記事引用)

3.司法書士の答え(健美家記事引用)

4.生前自宅が贈与されていた場合、みなし相続財産として持ち戻しされないのか?

5.まとめ


相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

1.夫婦間で20年以上の期間の贈与税の控除額


戸籍上、夫婦としての婚姻期間が20年以上経過していれば、配偶者へ住宅又は住宅を取得するための資金を贈与した場合、2000万円まで(基礎控除110万円と合わせれば2110万円まで)贈与税がかからないことになっています。 

同じ配偶者から一生に1回だけ認められる非課税特典です。

つまり、贈与税という観点から見れば、自宅が2110万円以内であれば、贈与税は発生しませんが、要件があります。


①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

➁配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること

③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること


要件クリアしても、贈与する金額が2110万以下だった場合は、贈与税は0円となりますが、必ず申告期限(贈与を受けた翌年3月15日)までに贈与税の申告書を税務署に提出する必要があります。

相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

2.記事「「結婚後20年経てば贈与税がかからない」は本当か?」(健美家記事引用)


それでは、記事に書かれていた内容を見ていきましょう。(健美家記事引用)

「(略)令和4年末に住宅ローンを完済しました。

そして、住宅ローンを完済したタイミングで自宅を妻に贈与しようと考えました。

自宅を贈与する目的は、私の不動産投資に何かあっても妻と家族に自宅を残すためです。不動産投資が上手くいかなくなった時に、自宅が任売や競売になるのは、妻や家族には大変申し訳ない事になります。

私は、毎月税理士事務所に打ち合わせに行っていますが、以前、税理士さんが、「結婚して20年過ぎると、配偶者に自宅を贈与しても税金がかからない」と言っていたのを覚えていたことも、後押しになりました。」(引用終わり)


おそらく、この方の物件も要件を充たしていたため贈与税はかからなかったのでしょう。


しかし、不安なようで司法書士にも相談してみたいですね。


3.司法書士の答え(健美家記事引用)


「(略)とりあえず司法書士さんに相談することにしました。

25年以上前に自宅の登記でお世話になり、現在は収益物件の登記でお世話になっている司法書士さんです。

司法書士さんから最初に出てきた言葉は、「本当にやるんですか?」と、いうものでした。

司法書士さんは、明らかにこの贈与の話を思い留まらせようとしていました。


詳しく説明を聞くと、無税なのは贈与税だけで、不動産取得税と登録免許税は、普通にかかるという事です。

さらに司法書士費用も必要で、妻への自宅の贈与にかかる費用は、総額で40万円くらいという話でした。

不動産取得税、登録免許税、司法書士費用という言葉は、収益物件の購入ではよく聞く言葉ですが、自宅となると全く頭から抜けていました。

司法書士さんは、再確認するように、「本当に贈与税の免除のためだけに40万円もかけるんですか?普通はやりませんよ」と、真顔で聞いてきました。」(引用終わり)


総額40万円というのは、物件価格(固定資産税評価額)によって変わってきます。

まずは、所有権の名義を変更するために必要な「登録免許税」があります。贈与ですと1000分の20ですが、相続で行う場合、1000分の4となります。

贈与の時の5分の1ですよね。

また、これだけではありません。相続の場合、配偶者控除として1億6千万円の枠があります。


生前に贈与する場合、自身の相続後の二次相続対策のケースが圧倒的に多いです。

なぜなら、もらった配偶者に相続が発生した(二次相続)では、相続の配偶者控除1億6千万円が使えなくなってしまうためです。

同じ相続で不動産の名義変更を予め子供にしておくことで、配偶者の相続発生時に相続税がさらに発生してしまうことを嫌う方が多いためです。

※相続税のご相談は税理士に確認してください。


4.生前自宅が贈与されていた場合、みなし相続財産として持ち戻しされないのか?


それでは、生前に配偶者へご自宅を贈与してしまったのちに相続が発生し、みなし相続財産の適用で持ち戻しが発生するのかどうかについて解説します。


「民法第903条第4項

婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」


とあります。

つまり今回のケースのように、生前、配偶者に自宅を贈与していても、相続財産の持ち戻し(贈与でもらった住宅を相続財産とすること)は、発生しないことになります。


相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

5.まとめ


今回は、配偶者に自宅を生前贈与した場合について、事例を交えてお話をいたしました。


仮にアイリスに同様のご相談があった場合、情報はすべて開示して、最終判断は、相談者の方に決めていただいております。今まで同じような相談が何件かありましたが、半数の方は費用の面でやめられる方がいました。

一方で、そのまま進められる方もいらっしゃいました。

どちらの方も、その後の相続対策について、熱心に相談されていました。


相続対策は、きっかけがないとなかなか進められないものです。

このように何か一つでも、きっかけがあれば、対策をすることができます。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

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ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

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セミナー資料公開(遺留分の生前対策③)

セミナー資料公開(遺留分の生前対策③)

遺言書を作成するにあたり、ある相続人に集中して遺産を相続させようとしたときに遺留分の問題が発生する可能性があります。

この場合、ご依頼者から具体的に対策をしたいと相談された場合、どのように対策をするのかについて解説していきたいと思います。


目次

1.遺留分対策のアプローチ

2.遺留分対策①早期の生前贈与

3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄

4.遺留分対策③遺留分の生前放棄

5.遺留分対策④生命保険の活用

6.遺留分対策➄養子縁組制度の活用

7.まとめ

セミナー資料公開(遺留分の生前対策③)

1.遺留分対策のアプローチ


まずは、各相続人に遺留分侵害額がどのくらいになるのかを予め試算します。

その時に取るべき対策のアプローチとして以下の5点が考えられます。


㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる

※遺留分侵害額の算定で、減産の額を増加させることにより「パターン➁」の状況に持ち込む方法です。

㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう

㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする

㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる

㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる


具体的な対策についてみていきたいと思います。


2.遺留分対策①早期の生前贈与


遺留分侵害額請求の対象となるのは遺贈と贈与になります。

贈与とは遺言書で財産を引き継がせることであり、遺贈は必ず遺留分を計算するうえで対象財産となります。

一方、生前贈与は一定の期間制限があります。この期間制限外での贈与については、遺留分侵害額請求の対象財産とはなりません。


つまり、「一定期間内に行われた贈与が遺留分の対象となる=期間外の贈与は遺留分侵害額請求の対象から除かれる」となります。

この「一定期間」については、相続人と相続人以外で異なってきます。(民法第1044条)


 (遺留分算定のための財産の価額に算入される贈与)

※特別受益:自宅購入資金、事業資金、不動産をもらう等の扶養の範囲を超えた資金的援助を受けることを言います。

例えば、12年前に長男が自宅購入資金として2千万円、父親から援助を受けその後相続が発生した場合、この2千万円は、特別受益に該当する贈与とはなりません。


また、遺留分権利者を害すると知ってなされた贈与については、期間制限はなくなりますので注意が必要です。これに該当するかどうかの要件は、


①その贈与が、個人の財産が増加しないという予見があること

➁将来、個人の財産が増加しないという予見があること

 →「全く収入が立つ予定がないのに贈与する行為=損害を与えることを知っていた」

と、判断される可能性があります。


ご高齢で定職がない状態での贈与は、該当する可能性があります。

相続はいつ発生するかわかりませんので、できるだけ早期の対策が必要となります。


3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄


遺留分権利者とは、「配偶者」「子供」「直系の親」が該当します。つまり、相続人が対象になります。

そこで、「相続放棄」を検討していきます。

相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったと扱われます。そうなると、相続人以外の贈与の対象となりますので、相続発生前1年以内のものでなければ遺留分侵害額請求の対象財産ではなくなります。

ただし、この場合も遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である場合には、この1年という期間制限はなくなってしまいますので注意が必要です。

遺留分権利者により裁判となった場合、この「遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である」ことの立証責任は遺留分権利者側になりますので、相当困難にはなると思われますので、権利行使されないことが多くあると思われます。


4.遺留分対策③遺留分の生前放棄


相続放棄は、被相続人の生前にはすることができません。

相続を相続人が知ったのち3か月以内にすることができます。しかし、遺留分の放棄は、被相続人の生前であってもすることは可能です。


遺留分対策として、「最も確実な方法」として、生前に相続人となる方と話し合い遺留分を放棄していただく方法があります。


遺言書の相談で最も多い内容が、「どうやって、対象の相続人の方に遺留分を放棄してもらうか」です。

「念書」を書いてもらっていたら大丈夫なのかというお話をされる方もいらっしゃいますが、生前の遺留分放棄の手続きとしては、民法1049条にある通り、「家庭裁判所の許可」がなければ、当該念書に法的な効力はありません。

家庭裁判所の許可を要する理由としては、被相続人による不当な圧力によって、不本意に遺留分の放棄が行われてしまう可能性があるためです。


遺留分権利者が不当に権利を奪われることがないようにとのことで、家庭裁判所で許可を得る要件として次の事項が挙げられます。


  ①遺留分権利者の自由な意思によること(強制的な遺留分の放棄は不可)

  ➁遺留分放棄の必要性や合理性が認められること

  ③遺留分権利者へ十分な代償が行われていること(遺留分に相当する程度の贈与を行うこと)


なお、遺留分を放棄した相続人は、相続人として遺産を相続することができます。この点が相続放棄と大きく異なる点です。

ですので、遺言書を書いて当該相続人への遺産の相続をしないように意思表示しておかなければ、遺留分放棄者は法定相続人として相続財産を相続することとなってしまいます。


5.遺留分対策④生命保険の活用


あらかじめ相続財産に現金・預金が多くある場合には、「生命保険」の活用が考えられます。

生命保険の活用は、相続税対策においても有効ですが、遺留分対策においても有効です。


相続対策に活用する保険は、終身型の死亡保険となります。

被保険者が亡くなったときには、「受取人」に死亡保険金が支払われることになります。

相続対策の生命保険活用する場合の保険料は、一時払いで現金・預金を保険金に変えることができます。


この死亡保険金の大きな特徴は、相続財産として取り扱われないという点があります。


 ①相続税法上は相続財産とされるので、相続税の課税対象となりますが、「相続人の人数×500万円」の控除の枠があります。

 ➁相続する上では相続財産から除外されています。つまり、相続財産ではありません。


つまり、死亡保険金は、受取人である相続人固有の財産ということになり、遺産分割協議などなくても、保険証書をもって死亡保険金の受け取りができます。

相続財産ともされていないため、遺留分の対象ともなりません。

生命保険の活用も、過度の利用(遺産総額に対して50%程度)となりますと、相続財産と扱われて、遺留分の対象となる可能性が高いため、利用する割合については注意が必要です。

セミナー資料公開(遺留分の生前対策③)

6.遺留分対策➄養子縁組


養子縁組は、相続税対策にも活用されていますが、遺留分対策にも有効です。養子縁組によって各相続人の遺留分も減少します。


事例で、父親が何もしていない場合、相続分は長男、次男それぞれ2分の1ずつとなり遺留分はそれぞれ4分の1となります。

父親が、長男の配偶者と孫を養子とした場合、各相続分は4分の1となり、それぞれの遺留人は8分の1となります。

相続税の側面でも、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)で相続人の数が4人としたいところですが、

 ①実子がいる場合は、養子は1人まで

 ➁実子がいない場合は、養子は2人まで

この基礎控除の相続人の人数に加えることができます。


一方で、遺産を相続する側面では、人数制限はありません。

相続税の考え方と相続の考え方では、違いがありますので詳しくは各専門家に相談してください。


7.まとめ


遺留分対策のアプローチとして挙げた5つについて、


 ㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる

 ㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう

  ③遺留分の生前放棄(家庭裁判所の許可が必要)、相続発生後は家庭裁判所の許可は不要。

 ㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする

  ①早期の生前贈与、➁生前贈与と相続放棄

 ㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる

  ④生命保険の活用

 ㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる

  ➄養子縁組活用


位置づけることができます。

㋐については、遺言書内又は、遺産分割協議書内で遺留分額と同等額の財産を分与することで達成することができます。

テクニカルなことは以上ですが、各検討されている方たちの個別の状況に応じて、手段は選ぶべきだと考えております。

テクニカル面ばかり重視しすぎると、家族関係がその後おかしくなったりすることがあります。

「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、各専門家への相談をお勧めいたします。


※内容でも少し触れましたが、「相続」と「相続税」についての考え方が異なる個所があります。

 専門家に相談しながら、対策を進めていくことをお勧めいたします。


アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。

いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。

ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。

手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)


また、別事務所で「相続法律・税務無料相談会」を月1で実施しております。

こちらは完全予約制になっておりますので、必ず事前に電話で予約状況を確認の上、予約を確定してください。


セミナー資料公開(遺留分の生前対策➁)

「遺留分の生前対策➁」で、遺留分の算定から遺留分侵害額の算定まで解説しております。遺留分侵害額が算定出来ましたら、遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の請求ができることになります。その効力範囲などを解説していきます。


目次

1.遺留分侵害額請求権とは

2.遺留分侵害額の請求順

3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲

4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効

5.まとめ

1.遺留分侵害額請求権とは

被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し,遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合,遺留分権利者は,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分を侵害されたとして,その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。 これを遺留分侵害額の請求といいます。(民法1046条)


 遺留分侵害額請求権の法的性質は形成権であることから、受遺者又は受贈者に対する具体的な金銭請求権は、遺留分侵害額請求権を行使して初めて発生することになります。


※形成権:権利者の一方的な意思表示によって現存の権利関係に一定の変更を生じさせる権利のことです。

2.遺留分侵害額の請求順

①受遺者と受贈者がある場合


 (受遺者:遺言で遺産を受けた場合、受贈者:生前に贈与を受けた場合)


  先に受遺者が負担することとなります。(民法1047条第1項第1号)


 ➁受遺者が複数ある場合又は、贈与者が複数あるときで贈与が同時に行われた場合


  原則:受遺者。受贈者は遺贈・贈与の目的の価額の割合に応じて負担


  例外:遺言者がその遺言に別段の意思表示をした時は、その意思に従う


  (民法1047条第1項第2号)


 ③受贈者が複数あるとき(上記➁を除く)


  後の受贈者から順次前の受贈者が負担(民法1047条第1項第3号)


※贈与を先にした場合、明確にならない場合があるので、遺贈が先の順位となります。


 遺贈は遺言者の死亡により効力を発生するので同時になり、贈与も同時なら価額の割合になります。贈与の場合は、前後関係があるので新しい後の贈与から順番に負担することがルールとして定められています。


※受遺者又は受贈者が無資力(請求時に財産がない状態)で遺留分権利者が満足を得ることができない(金銭債権を回収できない)場合の損失の負担は、遺留分権利者が負担することになります。(民法1047条第4項)つまり、請求しても請求先が無資力なら、次の順位の受遺者、受贈者が負担するのではなく、遺留分権利者自身が負担することになるということです。


3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲

 ①金銭債権の発生(民法1046条第1項)


  ※金銭債権が発生するものの、いきなり受遺者に支払えと請求しても、遺贈されたものが不動産などすぐに金銭に変換できないもので、受遺者に資力が乏しかった場合には、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、金銭支払債務の支払いに係る期限の許与をすることができます。(民法1047条第5項)


 ➁受遺者又は受贈者が、第三者弁済等により遺留分権利者が負担すべき相続債務を消滅させた場合、遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務の額の限度において、遺留分侵害額請求権によって負担する債務の消滅を請求することができます。(民法1047条第3項)


 ※受遺者、受贈者が、遺留分権利者が負うはずだった債務を消滅させたのだから、その分減額してと言える権利です。これも遺留分権利者に受遺者又は受贈者が減額又は消滅させてと意思表示しなければ効力は生じません。

4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効

遺留分侵害額請求は、遺留分権利者から相手方に対する意思表示によって行います。そして、この意思表示は、「裁判上」でも「裁判外」でも構いません。


 つまり、単純に相手方に請求すれば、遺留分侵害額請求をしたことになりますので、請求時に金銭債権が発生することになります。


 ここで、いつまでも侵害額請求することができるとすると、受遺者や受贈者にとって、いつ請求されるかわからないという不安がずっと続くことになりますので、民法上遺留分侵害額請求権の消滅時効が設けられています。


 ①遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年(民法1048条前段)


  ※単に相続開始・贈与・遺贈があったことを知るのみでなく、それが遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求を市うべきものであることを知ったときである。(最判昭57.11.12参照)


 ➁相続開始の時から10年(民法1048条後段)(除斥期間-多数説)


  ※つまり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときが相続開始から10年経過していた場合には、もはや請求することはできません。


5.まとめ

 遺留分侵害額請求権を行使した場合のルールについて解説してきました。遺留分侵害額請求権は、各相続人に残された最終的に行使できる権利です。他の相続人たちから妨害されないような仕組みになっていますが、権利ですのでいつまでも行使しないと時効にかかってします仕組みもあります。


 また、遺留分侵害額請求権の行使につきましては、裁判上、裁判外共に行使することができます。


 よくわからない場合には、専門家にご相談ください。


セミナー資料公開(遺留分の生前対策①)

遺言書の相談内容、遺産分割協議でしばしば出てくる「遺留分」。いったい誰が主張でき、どのように具体的な遺留分の価額を算出するのかを解説していきます。


目次

1.遺留分とは

2.遺留分を主張できる相続人とは

3.遺留分の割合

4.遺留分の算定

5.遺留分侵害額の算定

6.まとめ

1.遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。


 遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。


 こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。


2.遺留分を主張できる相続人とは

 兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、①子(代襲相続を含む)、➁直系尊属(両親又は祖父母など)、③配偶者です。(民法1042条第1項)


 包括受遺者及び、相続欠格・排除・相続放棄により相続権を失った者は、相続人ではないので、遺留分の主張はできません。


3.遺留分の割合

 ①総体的遺留分として


  (1)直系尊属のみが相続人の場合、被相続人の財産の3分の1(民法1042条第1項第1号)


  (2)その他の場合、被相続人の財産の2分の1(民法1042条第1項第2号)


 ➁個別的遺留分とは


  遺留分権利者が2人以上いる場合、各人の遺留分を個別的遺留分と呼び、その算定方法は民法1042条第2項が準用する民法900条及び901条の法定相続分になります。


 小難しく書いておりますが、①は全体に適用する遺留分割合で、➁が実際、各相続人が主張できる遺留分の割合(法定相続分×総体的遺留分割合)になります。つまり、実務で必要なのは➁になります。


 (事例)もし、配偶者と子供2人のうち長男が遺留分を主張する場合、①総体的遺留分は2分の1となります。そして長男の法定相続分は4分の1となるので2分の1×4分の1で8分の1が長男の遺留分になります。


4.遺留分の算定

 被相続人が相続開始時に有していた積極財産(不動産、預貯金、動産など)の価格を確定します。


 次に加算をすべき項目があります。いわゆる「特別受益」と呼ばれる財産で


 (1)相続人以外の者が被相続人から相続開始前1年以内に贈与で受け取った財産


 (2)相続人が被相続人から相続開始前10年以内に贈与で受け取った財産


 ※もし、贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合には、期間制限がなくなることに注意が必要です。


  具体的に「贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合」とは、贈与者に収入がないにもかかわらず多額の財産を贈与する行為などが挙げられます。遺留分対策をする場合には注意が必要です。


 ※遺留分対策として、相続放棄を利用するケースがあるのも、この特別受益の期間を相続人ではなくなることで、特別受益の算入の期間を10年から1年に短縮できる点にあります。当然こちらも、遺留分権利者を害する行為としてなされたと判断された場合、期間制限はなくなりますので、注意が必要です。

5.遺留分侵害額の算定

 遺留分の侵害額の計算


 遺留分額から


 ①減算対象項目


   ㋐遺留分権利者が受けた特別受益の価額


   ㋑遺留分権利者が取得すべき遺産の価額


 ➁加算対象項目


   遺留分権利者が承継する債務の額


 を調整することで、遺留分侵害額の算定ができ、これが遺留分侵害額請求権の額となります。


 ※遺留分権利者が実際に受けた特別受益と遺産については減算し、引き受けた債務については加算とします。


 債務を加算すると言われると、遺留分額の算定と逆になっており、なにかこう抵抗感がありますが、遺留分権利者の立場で見ると、自信がもらったものは減算して、負担したものは加算すると考えれば、納得がいくと思います。

6.まとめ

 今回は、遺留分について、遺留分を主張できる者と、遺留分の算定方法について解説をいたしました。


 相続開始前では、相続後相続人間で争いが起こらないようにするために「遺留分を侵害しない額」までの生前贈与や、この額を想定した遺産分割を記した遺言書の作成などの手法が考えられます。


 相続開始後では、遺産分割協議の際に「遺留分侵害額請求」がなされる場合があります。民法改正により、不動産などの分割など行わなくても、金銭によりその額を支払うことになります。


 遺留分は相続人に残された最後の権利であるので、侵害した場合には「遺留分侵害額請求権」の行使が認められています。


 専門家に相談をして、対策をしましょう。次回は、遺留分の侵害額の計算方法の解説をいたします。

相続登記義務化の対象範囲

相続登記義務化の対象範囲

相続登記義務化が施行されましたが、問い合わせ内容に「相続登記義務化の対象は土地だけでしょう」という話をする方がいらっしゃいました。

相続義務化の対象範囲について、再度、お話をしたいと思います。


目次


1.相続登記義務化の発端

2.相続登記義務化の対象範囲

3.まとめ

相続登記義務化の対象範囲

1.相続登記義務化の発端


Q1.知りませんでした!不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されるのはなぜですか?


「相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や公共工事の訴外など、社会問題になっています。この問題解決のため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。」(法務省パンフレット引用)


東日本大震災後の復興作業の際、土地の所有者を特定するために大変苦労したということがあったみたいです。

実際に、仙台などで各地の司法書士を臨時の公務員として雇い、相続人の調査を行い所有者を特定していったという話を聞きました。そのため、復興作業が大幅に遅れたそうです。

この時問題になったのが、任意である相続登記の放置です。現在、所有者不明土地の面積は、九州と同じ面積だそうです。これが原因となり、今回の相続登記義務化の流れになっています。


2.相続登記義務化の対象範囲


Q2.相続登記の義務化とは、どういう内容ですか?


「相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得できたことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。


正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

遺産分割の話し合いで不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、登記をする必要があります。」(法務省パンフレット引用)


Q3.義務化が始まるのはいつからですか?始まった後に、対応すれば大丈夫でしょうか?


「「相続登記の義務化」は、令和6年4月1日から始まります。ただ、今から備えておくことが重要です。

また、令和6年4月1日より以前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります(3年間の猶予期間があります。)ので、要注意です。」(法務省パンフレット引用)


これらの質問で、不動産の対象範囲が土地だけだと勘違いされている方が、意外に多いです。おそらく、相続登記義務化の発端となったのが「所有者不明土地問題」だからだと思いますが、相続登記義務化の対象範囲は、不動産(土地・建物)です。


質問内容にもあったのですが、義務化が始まってからやればいいというお話がありましたが、今元気な方でも、時間の経過により状況は変わってきます。

亡くなった場合には、さらに相続人が増えるケースや、認知症などになってしまい、遺産分割協議の際に成年後見人の申請が必要になったりする場合があります。

相続人の調査や成年後見人を就けるにも、それなりのコストが発生してしまいます。早めの対処が、「安心」をもたらしてくれます。

早めに相続の対応をするように心がけてください。

相続登記義務化の対象範囲

3.まとめ


「相続登記義務化」のキーワードを知っていても、その中身まで詳しく知っている方はなかなか見たことがありません。

アイリスでも、相続無料相談や相続法律・税務無料相談会、無料セミナーなどを通じて、啓蒙活動を実施しております。


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手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

相続登記義務化の対象範囲

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相続登記義務化(在外日本人の方が相続人にいるケース)

相続登記が義務化されました。相続登記をする際に問題となるのが「遺産分割協議」です。日本国内に、すべての相続人がいる場合でも、その関係性が良くない場合にはトラブルとなるケースはありますが、手続き自体は通常の相続登記と変わりません。しかし、相続人お方が、外国に居住し、なかなか帰国できない場合もあるかと思います。このような場合の相続手続きについて解説いたします。


目次

0.外国で帰化した元日本国籍の方の相続について

1.在外日本人の相続手続について

2.外国に帰化した相続人がいる場合の手続について

3.生前の対策の重要性

4.まとめ

0.外国で帰化した元日本国籍の方の相続について

ここで、前提条件として、亡くなった方(被相続人)は、日本に居住されていた日本人とさせていただきます。被相続人が、外国に行きその国で帰化しているような場合、「法の適用に関する通則法」に、以下のとおり定められています。


「第六節 相続


(相続)


第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。


(遺言)


第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。


2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。」

つまり、相続・遺言に関しては、帰化した外国の法律に従うことになります。


1.在外日本人の相続手続について


 日本国籍はそのままで、外国に居住されている方が、相続人の方の中にいる場合についてお話をします。無料相談などで、意外とこの手の相談が多いように感じます。


 遺言書がない場合、相続発生後に遺産分割協議をして遺産の分割を行うわけですが、外国に居住する相続人を外して遺産分割協議をすることはできません。法律上、「相続人全員」で協議することになっているためです。


(1)遺産分割協議についての問題点


 当然、当該相続人は海外にいるので、対面の協議をする場合、帰国しないとだめになります。しかし、ZOOMなどを利用した、テレビ電話を用いた遺産分割協議も検討する価値はあると思います。アイリスでも、別室(事務所以外の部屋)を利用し、インターネット経由で遺産分割協議ができるようにしています。このように遺産分割協議自体は、帰国しないでも問題なくできますが、さらに問題点は続きます。

(2)相続登記を含む手続きに必要な印鑑証明書と住民票


 遺産分割協議書が整えば、これに実印で押印し「印鑑証明書」を添付します。また、当該相続人が日本の不動産を相続により取得する場合、「住民票」が必要となります。


 しかし、外国に居住されている日本の方は、「印鑑証明書」・「住民票」共に取得することができません。それでは、通常必要となる書類(印鑑証明書や住民票など)に代わる証明書はどういったものが該当するのでしょうか。


 ①印鑑証明書に代わる「サイン証明書」


  台湾や韓国を除いて、日本以外の国では印鑑証明書や住民票の制度が存在しません。この場合、海外では、実印の代わって署名(サイン)で行いますので、海外にいる相続人は、遺産分割協議書に署名(サイン)を行うことで代替え手段を使います。そして、印鑑証明書の代わり、日本領事館等の在外公館に出向いて遺産分割協議書に相続人が署名した旨の証明(サイン証明)をもらってきて、このサイン証明を遺産分割協議書に添付することで対応します。この場合、遺産分割協議書は、日本にいる相続人も含めた全員分(1通)のものではなく、内容が同じ、サインをする相続人のみの署名欄がある遺産分割協議書にしておきましょう。


 ➁住民票に代わる「在留証明書」


  当該相続人が日本にある不動産を相続する場合、住民票が必要となりますが、先にも書いた通り、住民票は取得できません。ですので、代替え手段である「在留証明書」を取得する必要があります、手続きは、現地の日本領事館にパスポートや運転免許証といった現住所にいつから居住しているのかを証明できる書類を提示することによって申請・取得することができます。


2.外国に帰化した相続人がいる場合の手続について

 他国に帰化した人でも、相続人であることを証明する必要があります。日本人であれば、当然のように相続人であることを戸籍で証明することができますが、外国人には戸籍がありません(海外では戸籍制度がない国の方が多い)。


そこで、戸籍に代わって相続人であることを証明する「相続証明書」が必要となります。


 この「相続証明書」という証明書が存在するわけではなく、被相続人と当該相続人との関係性を証明する書類になります。例えば「出生証明書」「婚姻証明書」「死亡証明書」等が該当します。

3.生前の対策の重要性

海外にお子様などが居住しており、自分に相続が発生した場合、家族に迷惑がかかるのではないかと不安に感じておられる方も少なくはないと思います。


 このような場合、「遺言書」の作成をお勧めします。特に、預貯金や有価証券、不動産の手続きには、遺言書がない場合には、遺産分割協議書が必要となるために、遺産をもらわない海外居住の相続人についても、相続手続きに協力してもらう必要があります。


 しかし、遺言書があれば、亡くなった方の死亡を証する除籍謄本と財産をもらう方の戸籍謄本及び住民票(不動産の場合)、があれば、手続きが可能です。


 ただし、海外居住する相続人に遺産を渡したい場合には、上記書類が必要となります。


4.まとめ

 今回は、海外に居住または帰化した相続人がいるケースについて解説をいたしました。遺言書がない場合、取得しなければならない書類がたくさんあり、その書類を取得するために「日本領事等」に出向かなければなりません。場合によっては、半日かけて日本領事まで出向かなければならないこともあります。


 このように、海外とのやり取りや、書類取得の負担を考え、是非「遺言書」を検討されてはどうかと思います。

相続発生。何から手を付ければいい?

相続発生。何から手を付ければいい?

無料法律相談で内容を精査しますと、一番多いのは、「相続が発生してから、いったい何をしていいのかわからない。」という内容です。相続に必要な手続きを一通りご説明すると、そこから手続きが必要になる場合には、こちらからどのくらいの費用が掛かるのかをお話しするのですが、不動産がなく、相続税の基礎控除内の相談の場合、相談だけで済みケースも多くありませんので、今回まとめてみました。


目次

1.2週間以内にすべきこと

2.3か月以内にできること

3.90日以内にすべきこと

4.4か月以内にすべきこと

5.10か月以内にすべきこと

6.まとめ

1.2週間以内にすべきこと


 ①死亡診断書の受け取り


  医師が「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡した」と認められる場合には「死亡診断書」


  上記以外の場合には、「死体検案書」


 ➁死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)


  ※葬儀社によっては、書類一式を用意・代行していただける場合もあります。


  死亡届(死亡診断書と一緒の用紙についている)については、記入したものを数枚コピーを何枚かとっておくことをお勧めいたします。死亡保険の請求に使用する場合があるためです。


 ③世帯主変更届(14日以内) 市町村役場


 ④健康保険・介護保険の手続き(14日以内)


  (国民健康保険の場合)


 国民健康保険に加入していた方の場合、亡くなった方の住所地の市町村役場に「資格喪失届」を提出。


 亡くなられた方が75歳以上の場合、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。


 返却物として「国民健康保険被保険者証」「国民健康保険高齢受給者証(対象者)」「後期高齢者医療被保険者証(対象者)」


 葬祭費の申請をする場合、葬儀の領収書や喪主の通帳などが必要となります。


   ※通常葬祭費の申請は、窓口で説明があります。3万円から5万円の支給がありますので忘れないようにしましょう。


  (健康保険の場合)


   会社員や公務員の場合、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出しますが、会社側で手続きをしていただける場合が多いので会社に相談してみてください。


   亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合、ご自身が国民健康保険に入るか、会社員である他の家族の扶養にはいる必要があります。


  (介護保険について)


   14日以内に「介護保険資格喪失届」を市町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。


 ➄年金受給停止の手続き(厚生年金の場合10日以内、国民年金の場合には14日以内)


手続の際には、本人確認や押印を求められることがありますので、運転免許証又はマイナンバーカード、認印を所持しておいてください。


   未支給年金の請求


   亡くなった月の分までの年金を受け取っていないものがある場合、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。この請求権の時効は、5年です。


   また、「遺族年金の受取」について、年金事務所に相談しましょう。こちらの債権も時効期間は5年となります。


2.3か月以内にできること


 相続放棄・限定承認などの手続きの期間となります。


 「民法第915条


  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」


 ※限定承認の場合、民法第924条で第915条を準用していますので同じ期間になります。


3.90日以内にすべきこと


 もし、相続財産の不動産に地目が「森林」となっているものがある場合、森林法に基づく「森林の土地の所有者届出書」を当該不動産の所在地である市町村役場に届出書を提出する義務がある可能性があります。指定の森林が対象となるので、事前に市町村役場に、当該不動産の森林が対象であるがどうかの確認をしてください。相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要があります。届出をしない、又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料が課されることがあります。


 ※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。


4.4か月以内にすべきこと


 所得税の「準確定申告」をすることになります。「準確定申告」とは、被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きで、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合において、そ族の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行う確定申告のことです。


  ※詳しくは、税理士の方に相談してください。アイリスでは、税理士のご紹介も可能です。


5.10か月以内にすべきこと


 ①農地法第3条の3第1項の規定による届出書


  相続財産の不動産の地目が「田」・「畑」等の農地である場合、届出が必要になります。


  「第六十九条


   第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」となりますので、忘れないように届出をしましょう。


  ※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。


 ➁相続税の申告・納付


  相続税申告の要否について、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額を相続財産の合計額が超える場合には、相続税の申告が必要となります。


  詳しくは、税理士に相談していただきます。香川県高松市の税理士であれば、取引先である税理士の紹介も可能です。


6.まとめ


 なかなか、期間別でまとまっている資料が少なかったので、まとめてみました。


 相続が発生して、死亡届出等は葬儀社がサポートや代行してくれますが、それ以外の手続きについては、ご自身で行えない場合には、費用なども考慮しながら専門家への相談をしてください。

相続登記をしたいが、亡くなった方の住民票除票・戸籍の附票が取得できない場合

相続登記をしたいが、亡くなった方の住民票除票・戸籍の附票が取得できない場合

長年相続登記を放置していた場合に多く見られますが、相続登記に必要な書類の一つである、亡くなった不動産名義人の「住民票の除票の写し」又は「戸籍の附票」が取得できない場合があります。これは、令和元年6月19日までは、「住民票の除票」の保存期間が、消除された日から5年間とされていたため、長年相続登記を放置した場合、取得できないケースも発生することがあります。この場合の対処法として、どのようにすればいいのでしょうか。解説していきます。


目次

1.法定相続情報証明制度を申請する場合

2.相続登記に必要な場合の代替手段

3.まとめ

1.2週間以内にすべきこと

 ①死亡診断書の受け取り


  医師が「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡した」と認められる場合には「死亡診断書」


  上記以外の場合には、「死体検案書」


 ➁死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)


  ※葬儀社によっては、書類一式を用意・代行していただける場合もあります。


  死亡届(死亡診断書と一緒の用紙についている)については、記入したものを数枚コピーを何枚かとっておくことをお勧めいたします。死亡保険の請求に使用する場合があるためです。


 ③世帯主変更届(14日以内) 市町村役場


 ④健康保険・介護保険の手続き(14日以内)


  (国民健康保険の場合)


 国民健康保険に加入していた方の場合、亡くなった方の住所地の市町村役場に「資格喪失届」を提出。


 亡くなられた方が75歳以上の場合、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。


 返却物として「国民健康保険被保険者証」「国民健康保険高齢受給者証(対象者)」「後期高齢者医療被保険者証(対象者)」


 葬祭費の申請をする場合、葬儀の領収書や喪主の通帳などが必要となります。


   ※通常葬祭費の申請は、窓口で説明があります。3万円から5万円の支給がありますので忘れないようにしましょう。


  (健康保険の場合)


   会社員や公務員の場合、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出しますが、会社側で手続きをしていただける場合が多いので会社に相談してみてください。


   亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合、ご自身が国民健康保険に入るか、会社員である他の家族の扶養にはいる必要があります。


  (介護保険について)


   14日以内に「介護保険資格喪失届」を市町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。


 ➄年金受給停止の手続き(厚生年金の場合10日以内、国民年金の場合には14日以内)


手続の際には、本人確認や押印を求められることがありますので、運転免許証又はマイナンバーカード、認印を所持しておいてください。


   未支給年金の請求


   亡くなった月の分までの年金を受け取っていないものがある場合、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。この請求権の時効は、5年です。


   また、「遺族年金の受取」について、年金事務所に相談しましょう。こちらの債権も時効期間は5年となります。


2.3か月以内にできること

 相続放棄・限定承認などの手続きの期間となります。


 「民法第915条


  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」


 ※限定承認の場合、民法第924条で第915条を準用していますので同じ期間になります。


3.90日以内にすべきこと

 もし、相続財産の不動産に地目が「森林」となっているものがある場合、森林法に基づく「森林の土地の所有者届出書」を当該不動産の所在地である市町村役場に届出書を提出する義務がある可能性があります。指定の森林が対象となるので、事前に市町村役場に、当該不動産の森林が対象であるがどうかの確認をしてください。相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要があります。届出をしない、又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料が課されることがあります。


 ※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。


4.4か月以内にすべきこと

 所得税の「準確定申告」をすることになります。「準確定申告」とは、被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きで、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合において、そ族の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行う確定申告のことです。


  ※詳しくは、税理士の方に相談してください。アイリスでは、税理士のご紹介も可能です。


5.10か月以内にすべきこと

 ①農地法第3条の3第1項の規定による届出書


  相続財産の不動産の地目が「田」・「畑」等の農地である場合、届出が必要になります。


  「第六十九条


   第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」となりますので、忘れないように届出をしましょう。


  ※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。


 ➁相続税の申告・納付


  相続税申告の要否について、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額を相続財産の合計額が超える場合には、相続税の申告が必要となります。


  詳しくは、税理士に相談していただきます。香川県高松市の税理士であれば、取引先である税理士の紹介も可能です。


6.まとめ

 なかなか、期間別でまとまっている資料が少なかったので、まとめてみました。


 相続が発生して、死亡届出等は葬儀社がサポートや代行してくれますが、それ以外の手続きについては、ご自身で行えない場合には、費用なども考慮しながら専門家への相談をしてください。

1.法定相続情報証明制度を申請する場合


法定相続情報証明制度を利用する場合、戸籍全部事項証明書、除籍謄本、改正原戸籍謄本などを取得する必要があります。多いときで10通を有に超える場合もあります。この戸籍の束をもって、各金融機関に名義変更や解約の手続きに持参するのは、非常に手間であるため、法定相続情報証明制度が、平成29年5月29日に実施されました。


 この法定相続情報証明制度で証明されるのは、原則「戸籍類」の法定相続関係の証明です。住所は任意での申請になりますが、申請人の本人確認として、住民票の写しが必要になってきますので、少なくとも申請人に関しては住民票が必要になります。


 任意で住所も法定相続情報証明に記載してもらうためには、それぞれ相続人の住民票、被相続人の除票が必要となります。ここで注意しなければならないのは、申請人の本人確認のために提出する住民票を原本でかねてしまいますと、法務局に申請人の住民票を取得されてしまいますので、コピーに原本に相違ない旨を記載し署名押印したものも併せて提出する点です。


 先ほども書きましたように、法定相続情報証明制度で証明できる内容は、戸籍に記載されている法定相続情報がメインとなりますので、被相続人の除票や戸籍の附票がない場合、「最後の本籍」の項目で事足ります。

2.相続登記に必要な場合の代替手段

それでは、相続登記の必要書類としての住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合どのようにすればいいのでしょうか?


 登記官が不動産の所有者の名義の同一性を確認するために「氏名」「住所」で特定します。つまり、被相続人の最後の住所と不動産名義の住所が一致しており、氏名も同じであれば同一人物との判断をしてもらえます。しかし、住所が異なる場合には注意が必要です。最後の住所の一つ前の住所であれば、住民票の除票に「前住所の表記」で確認をすることができます。しかし、それより前の住所が登記簿に記録されている場合、住民票の除票が使えません。その場合は、戸籍の附票を使って特定していきます。


 しかし、令和元年6月20日以前に廃棄された場合、「除票」も「戸籍の附票」も取得はできません。この場合、以下の方法で登記官に同一性を認めていただく必要があります。


 ①権利証(登記済証)


  権利証は、不動産に権利があることを証明する書類だからです。通常、相続登記では権利証を提出する必要はありません。相続は、相続の発生という事実の発生によって登記申請をします。不動産の持ち主は死亡した被相続人なので意思確認をしたくてもできません。


ですので、不動産の持ち主の意思を確認する必要がなく、権利証を用意する必要がないのです。権利証を提出不要にする代わりに、事実の発生を証明する戸籍謄本等を提出する必要があります。被相続人の住所の移り変わりを証明することができない場合、権利証を提出して登記簿に書いてある人であると証明することができます。被相続人の権利証を提出した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明していませんが、権利者であると証明したことになります。


 ➁上申書


  権利証は紛失しても再発行されません。通常は大切に保管して簡単に人目にさらしたりしないものですが、相続など大切な場面で見つけることができなくなることは多々あります。被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなるのです。権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。その財産を相続する人だけではありませんので、注意が必要です。その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。印鑑証明書について期間制限はないので、古いものでも差し支えありません。


 法務局によっては、上申書の他に不在住証明書や不在籍証明書が必要になります。固定資産税の納税証明書の提出が求められる場合があります。固定資産税は、一般的に所有者が負担するものだからです。固定資産税を負担していた場合、所有者であったと認めてもらいやすくなります。住所がつながらない場合などイレギュラーな場合の取り扱いは、管轄の法務局によって異なる場合があります。必ず、管轄法務局に確認をするようにしてください。


③被相続人の本籍と登記上の住所が一致する場合は住民票の除票は不要


 本籍地と登記上の住所が一致する場合、法務局は同一人物と認めてくれます。あらためて、住民票の除票を提出する必要はありません。


3.まとめ

 このように、相続登記を長年放置した場合、相続登記に必要な書類がすでに廃棄されているケースが少なくありません。早めの相続登記を心掛けるようにしてください。

相続登記義務化に関係なく、相続登記を急ぐ理由

相続登記義務化に関係なく、相続登記を急ぐ理由

相続登記義務化が始まり、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。相談者の中に、「義務化はわかるのだが、相続登記を急ぐ意味がよく分からない」という方がいらっしゃいました。被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。


目次

1.民法177条の意味

2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係

3.まとめ

1.民法177条の意味

民法177条では


「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。


 つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。


 その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。


2.遺言と債権者の関係

相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。


 特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法がなくなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。


 また、持分を対象に買い取りをする業者も存在ます。持分だけでは、その全体の不動産を利用することは困難ですので、不動産価値の持分分の価格より買いたたいて仕入れます。その後、「共有物分割請求」をして持分分の価格を回収しようとします。

このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。


 相続登記義務化に注目が集まっていますが、本来相続登記はしておかないと、様々な場面で不利益が発生する恐れが潜在化します。

相続手続きに便利、「法定相続証明情報一覧図」の取得

「法定相続情報証明制度」とは、相続登記に必要な戸籍や住民票を法務局に申請し、取得できる書類になります。「法定相続証明情報」を活用し、預金の名義変更・解約、相続登記に添付する戸籍の代わりに提出することができます。すでに制度が始まり数年が経過していますが、改めて、取得方法についてまとめてみたいと思います。


目次

1.法定相続情報証明制度とは

2.法定相続情報証明一覧図の申請書

3.申請書に添付する書類について

4.申請窓口

5.注意する点

1.法定相続情報証明制度とは

法定相続情報証明制度(ほうていそうぞくじょうほうしょうめいせいど)は、日本の相続手続きにおいて、相続人が相続財産についての情報を証明するための制度です。この制度は、相続人が法務局に提出する「法定相続情報証明書」に基づいています。


法定相続情報証明書は、相続人が相続財産の内容や詳細な情報を記載した文書であり、これによって相続手続きが円滑に進むことが期待されています。


2.法定相続情報証明一覧図の申請書

 ①被相続人の表示(氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日)


 ➁申出人の表示(住所、氏名、連絡先、被相続人との続柄)


 ③代理人の表示(住所(事務所)、氏名、連絡先、申出人との関係)


 ④利用目的(不動産登記、預貯金の払い戻し、相続税の申告、年金等手続、その他 から選択)


 ➄必要な写しの通数・交付方法


 ⑥被相続人名義の不動産の有無(有・無、有の場合には不動産の所在又は不動産番号)


  ※不動産は、申請書を提出する法務局の管轄内にある不動産であることが必要です。記載する不動産は、複数ある場合は、そのうちの一つの未記載で大丈夫です。


 ⑦申し出先登記所の種別(被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地 のいずれかを選択)


3.申請書に添付する書類について

(必ず用意する書類)


 ①被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸除籍謄本


 ➁被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票


 ③相続人の戸籍謄抄本


 ④申出人の氏名。住所を確認することができる公的書類


  (運転免許証の表裏面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写し)


  ※これらのコピーには、「原本と相違ない旨」を記載し、申出人の記名をしなければなりません。


  (必要となる場合がある書類)


 ➄法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合(任意です)各相続人の住民票の写し


 ⑥委任による代理人が申し出の手続きをする場合


  ㋐委任状


  ㋑(親族が代理をする場合)申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本


  ㋒(資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等


 ⑦➁の住民票の除票を取得することができない場合の戸籍の附票

4.申請窓口

申請窓口は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかに該当する管轄法務局に提出をします。


 申請後、法定相続情報一覧図の再発行を申請する場合、利用しやすい申出人の住所地の法務局に申請することをお勧めいたします。


5.注意する点

 注意する点として2点あります。


 まず一点目は、提出する相続情報一覧図(申請人もしくは代理人が作成するもの)で、相続人が縦に記載されている場合、一番下の相続人の下部に「以下余白」の文字を記載することが必要です。私が使っている作成ソフトでは、この「以下余白」の記載が出力されませんので、ワード出力後に編集をしています。


 次に、相続人の情報に住所を記載するために「住民票の写し」を添付することになるのですが、申出人の氏名・住所を確認しることができる公的書類にも「住民票の写し」が含まれており、兼用することも可能なのですが、兼用した場合、申出人の住民票の写しが証明情報として法務局に取得されてしまい還付されません。この場合、申出人の住民票の写しのコピーを作成し、「原本と相違がない旨」を記載し、氏名、押印をして添付することで、原本の申出人の住民票の写しが還付されることになります。返却されなかった場合、せっかく取得した申出人の住民票の写しを再度市役所等で取得しなければならなくなりますので、注意が必要です。

令和6年4月1日、相続登記が義務化されました。

令和6年4月1日(ブログアップ日)、相続登記が義務化されました。もう一度相続登記義務化について、アナウンスしたいと思います。今後の法改正等により、今回の相続登記義務化だけでなく、相続登記を放置することによる罰則が強化する可能性もあります。早めの対策をすることで、「安心」して不動産を後世に繋ぐことができます。


目次

1.相続登記義務化の内容

2.相続登記をしないことによるデメリット

3.相続人申告登記

4.まとめ

1.相続登記義務化の内容

2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。


 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)


というのが概要です。


 改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。


 相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。


 「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。


  相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。

2.相続登記をしないことによるデメリット

相続登記義務化により、「正当な理由」なく相続登記を怠った場合の法律上の罰則は、「最大10万円以下の過料」です。しかし、相続登記をしないことによるデメリットは、過料以外にもあります。


 ①処分できない


  処分するためには、当該不動産の名義人を明示する必要があります。最終的に売却することになっても、亡くなった方相手に売買契約はできません。権利関係が明確にできない状態で、処分することはできないということです。そのためにはどうしても、相続登記をして、現存する名義人に変更しておかなければなりません。


 ➁権利関係が複雑になる


  戦後民法は、遺言書がない場合、相続人全員に相続の権利があるとしています。ですので、数代にわたり相続登記を放置していた場合、権利関係が複雑になり、相続人の調査だけで、相当な費用が発生してしまいます。また、名義人となる方に名義変更を行うには、相続人全員と遺産分割協議をする必要があります。仮に、法定相続人全員の持分ごとの相続登記をしたとしても、処分する場合には、その全員と相手方で手続きをすることになります。いずれにしても、相続人全員を特定する必要があります。


 ③共同相続人の中にお金に困っている方がいた場合


  先ほども話をしましたが、遺産分割協議で特定の相続人に名義を変更するそ族登記と、法定相続人の持ち分に応じた相続登記、どちらもすることもできます。しかし、㋐借金に窮している相続人の債権者が「代位による登記」にて、法定相続登記を行い、その持分に抵当権を設定したり、㋑当該相続人が不動産の持分を持分買い取り業者に売却してしまうこともあり得ます。


 もし、㋑が発生した場合、他の相続人にできる相続分の取戻権があります。


「(相続分の取戻権)


民法 第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。


2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。」


とあり、1ケ月を過ぎますと、権利行使できなくなってしまいます。その後、共有持分を得た業者は、「共有物分割請求」をしてくる可能性があります。


 共有持分の買取価格は、仮に3000万円の3分の1の持分を売却しても、1000万円にはなりません。相当低い価格になってしまいます。業者は、共有物分割請求をすることで、1000万円を回収しようとするでしょう。そうやって、業者が儲けているわけです。


3.相続人申告登記

 過料を免れる制度として「相続人申告登記」があります。

4.まとめ

 施行されました相続登記義務化について、その制度と罰則の過料、過料の免れる方法をお話してきました。そして、相続登記をしないことによるデメリットについても触れました。


 今後、ニュースなどによりますと、国や行政の対策に所有者が協力する努力義務が課され用としています。つまり、不動産の所有者に対する責任を増やしていく施策が検討されています。そうなってきますと、使わない家族の不動産を早く手放したいと思う方もいるかもしれませんが、このような処分をするにも、「相続登記」をしておかなければ、何もできない状態になってしまいます。早めの相続登記をしておくことが、何をするにしても重要になります。

相続人の中に行方不明者がいる場合の手続

今までに何度か相続人が音信不通となっているケースがありました。音信不通と言っても、住所や居住場所が特定されている場合には、何とか連絡をする方法はあるのですが、中には戸籍などからは追えず、他の相続人も今まで何の連絡もないと話している場合には、どのように遺産分割協議を進めていけばよいのでしょうか。


目次

1.遺産分割協議を成立する要件

2.住所・連絡先が分からない場合

3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)

4.完全に行方不明の場合

5.まとめ

1.遺産分割協議を成立する要件

相続財産の分配方法を決めるためには遺産分割協議が必要です。この遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければならず、誰か一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。相続登記においても法定相続人全員が記名し実印にて捺印した遺産分割協議書と印鑑証明書の添付が必要となります。


 つまり「相続人全員」でなければ、遺産分割協議は無効となります。ですが、行方不明など連絡がつかなかったり所在がわからない場合にはどうすればいいのでしょうか。


2.住所・連絡先が分からない場合

 疎遠になった相続人の住所を調べる方法として、戸籍の附票を確認することで確認できる場合があります。ただし、本籍地で取得ができますので、調査が必要となるかもしれません。相続人の調査として、弁護士、司法書士、行政書士にお願いすると、「職務上請求」をすることにより調査が可能です。勿論、調査を要する他の相続人の方でも窓口で取得することができます。


 所在が明らかとなっても、その方が応じてくれるかどうかはわかりません。

3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)

何かしらの理由で連絡しても応答してもらえない、または話し合いを拒否されてしまう場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという手段があります。調停を申し立てると家庭裁判所から呼び出し状が送達されるので、家庭裁判所で話し合いを行い、遺産分割を成立させることになります。


 しかし、いきなり家庭裁判所に調停を申し立てると、「なぜ返信しないのか」「なぜ拒否するのか」といったことが、法廷での話し合いの場で明らかになるので、話し合いがこじれるかもしれません。このケースではトラブルに発展する場合が多いので、自身でもしくは代理人として依頼した弁護士に内容証明郵便で、調停の手続きに入る前に解決できるかどうか探ってみた方がいいと思います。


4.住居すらわからない行方不明の場合

 戸籍の附票などに記載された住所には存在せず、どこで暮らしているかも分からず、連絡手段もない状態になってしまっている場合、遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があるので、相続人の中に不在者がいる場合にはこれを行うことができません。


 この場合には、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることで、その管理人を含めて遺産分割協議をすることができます。不在者財産管理人の申立ては、利害関係人または検察官が家庭裁判所に対して行いますが、相続人の一部が不在者の場合には他の相続人が利害関係人に該当するのでこの申立てを行うことができます。


 家庭裁判所が介在するので、仮に行方不明者をないがしろにしたような遺産分割協議の場合、家庭裁判所が許可を出さない可能性もありますので、注意が必要です。


 また、失踪宣告を活用する場合もあります。失踪宣告とは、不在者についてその生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。


※戦時中の死亡宣告の制度もあり、こちらは戸籍を確認すると記載されています。


5.まとめ

 このように、行方不明でもその状況次第で対応する手法が変わってきます。


 連絡が着く状態であれば、できる限り穏便に話を進めることを心掛けてください。


 また、どの状況にあるのかわからない場合には、専門家に相談をすることをお勧めいたします。どのような資料を取得して調査するのか、相続専門の専門家なら答えを持っているはずです。そしてその後の対応についてもアドバイスをしていただけると思います。


会社経営者が亡くなり相続が発生

会社経営者が亡くなり相続が発生

複数の会社経営をしていたAさんが亡くなり、配偶者と子供2人いました。さて、どのように相続すればいいのか、という問題になってきます。一般の方であれば、遺産分配を遺産分割協議を経て決めていただく必要があるのですが、経営者が保有する「株式の評価」によっては、様々な問題が発生してきます。また、不動産が経営者の個人名義であった場合にも、事業継続そのものに問題が発生するケースもあります。


目次

1.会社経営者Aさんの相続発生

2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)

3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点

4.まとめ

1.会社経営者Aさんの相続発生


まずは、遺言書の有無の確認が必要です。遺言書があれば、その内容に従って遺産を分割することになります。しかし、遺言書がなかった場合、遺産の範囲を見ていかなければなりません。


遺言書の有無にかかわらず、遺産の範囲とその額の確定作業は、専門家に任せた方がいい場面です。総合的に課税される相続税を想定しながら、遺産をどのように配分すればいいのかを相続専門の税理士先生に確認し、Aさん名義の預金、有価証券、保険、保有株式、不動産、動産の額を確定していきます。特に時間を要するのが、経営者Aさんの保有する自社の株式の1株当たりの純資産の評価のために、3期分の決算書などが必要となってきます。


 そして、遺言書の内容又は遺産分割協議の内容に従って、遺産を分配することになるのですが、不動産の名義の変更や法人の代表者の変更は、司法書士が対応することになります。

2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)

 法人の役員変更の内容については相続人の方に決めていただく必要があります。法人の事業を引き継ぐ意思の確認やその素養なんかも踏まえて決めていただく必要があります。


 事業を引き継ぐ意思があっても素養がなければ、事業を承継しても経営ができない可能性があるからです。ここはじっくり話し合って決めていただくようにしています。


 そして一番の問題は、経営者が保有していた株式を誰に引き継がせるかという点。特に株式会社では、「所有」と「経営」が分離しています。「経営」の面は、先ほど話した事業を引き継ぐ相続人の意思と素養なのですが、株式は株式会社の「所有」を意味しています。


例えば、定款の目的の内容を変えて、新規事業を始めたいと思った場合、「株主総会の特別決議」が必要となりますが、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が要件となります。経営者が保有していた株式を分散させてしまいますと、意見の対立が起こった場合、この要件を充たすことができず、定款変更すらできない状態に陥るリスクがあります。


3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点

 以前、県外の方で、酒造会社の経営者が亡くなり、工場は法人名義でしたが、土地が経営者の個人名義でした。会社を弟が引き継ぐことになったことに対して相続人間(子供である兄弟)で争いになり、結局、法定相続分(各2分の1)で土地名義を変更することになりました。その後、兄の方から「共有物分割請求」をされてしまい、土地の価額の半分を支弁できなかった弟は、工場を撤去して土地を現物分割することになってしまいました。つまり、事業継続できなかったということになります。


※知り合いの税理士の先生に確認すると、実は、土地を個人名義、建物を法人名義にして、土地を法人に貸し出す形にすることにより、税金対策として良く用いられる手法であることを聞きました。  


4.まとめ

 経営者の相続に関してお話をしてきました。ポイントは「自社の保有株式の分散防止」と会社の工場などに関連する不動産で、「個人名義の不動産を生前に法人名義に変えておく」などの対処法を考える必要があるかと思います。


収益物件の相続の注意点

収益物件の相続の注意点

生前、相続税対策として、個人名義で賃貸マンションを購入し、金融機関から融資を受けているケースについての相続を考えてみます。物件価格が高額で融資額が大きいと「相続税対策」として、事前に税理士などのアドバイスを受けて購入している場合が多いです。このような収益物件がある場合について、お話をしていきたいと思います。


目次

1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?

2.収益物件の相続手続き

3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点

4.ローンが残っている時の注意点

5.まとめ

1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?

アパートのような収益物件は、相続税評価額がかなり低くなる点が大きなメリットです。アパート等の不動産の相続税評価額は一定のルールに基づいて計算され、時価(実際の価値)の30~50%程度になるので、節税になります。


 新築の場合でも、金融機関からの融資を受けた場合、新築の収益物件とローンが残りますので、その差額で相続税対策をしているケースもあります。


2.収益物件の相続手続き

 まずは大きく以下の手順が必要です。


①相続登記する。

 名義を亡くなった方から、相続人のどなたかに名義を変更する必要があります。


➁管理会社に連絡し、入居者に通知する。

 管理契約の当事者が亡くなっていますので、基本的に物件を引き継いだ相続人と管理契約を取り交わす必要があるためです。また、アパートの所有者が変わったことを入居者に通知し、賃料の支払先を変更する必要がある場合があります。


③アパートローンがある場合は金融機関に相談する。

 アパートローンに「団体信用生命保険」が付いている場合には、借りた人が亡くなると保険金でローンが返済されます。


相続税の節税目的で建てられたアパートの場合には、借入金があれば相続税評価額を圧縮できるので、団体信用生命保険は付けていないことが多いです。団体信用生命保険なしのアパートローンで、ローン残高が残る場合には、今後の支払いについて金融機関と相談し、契約を引き継ぐ手続きを行います。


④準確定申告を4ヶ月以内に行う

 亡くなった人の不動産収入について、相続人が代わりに申告・納税を行う必要があります。これを準確定申告といいます。通常の確定申告は、1年分を翌年の2月16日から3月15日までに手続きしますが、準確定申告は特別に、相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があるのでご注意ください。


➄相続税を10ヶ月以内に申告する

 相続税がかかる場合には、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税します。


3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点

 2①の相続登記をする場合、亡くなった年の新築物件は、固定資産税評価証明書には記載されません。固定資産税の評価額は、その年の1月1日時点の物件について評価額が記載されるためです。それでは、どのように新築物件の評価額を出せばいいのかと言いますと、「○〇法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」を参照します。建物を新築した場合も、所有権保存登記の登録免許税の計算に使用される価格基準になります。物件の登記簿の「種類」「構造」から、1㎡あたりの単価を見つけて、登記簿の床面積を乗じた数値を評価額として計算します。


4.ローンが残っている時の注意点

 アパートのローンを残したまま親が亡くなってしまった場合、遺産分割協議の前に連帯保証人が誰か確認します。連帯保証人の銀行の審査基準は、法定相続人であること、または事業継承ができる見込みのある人である場合が多いです。やはり、資力のない方への変更は、金融機関側が拒否する可能性があります。


また、連帯保証人が相続人であった場合、ローンが残っているアパートの相続放棄ができません。当該相続人の方は、亡くなった主債務者と同等の責任をもって、ローンを返済する必要があるためです。どうしても、アパートの経営やローンの返済をやめたい場合は、該当のアパートを売却するしかないでしょう。


5.まとめ

 このように、収益物件を相続する際には、様々な手続きや注意点が存在します。

相続登記義務化。しないとどうなる相続登記?

相続登記義務化。しないとどうなる相続登記?

令和6年4月1日から相続登記義務化が始まります。それまでは任意だった相続登記なのですが、相続登記をしないとどうなるのでしょうか。事例を交えながら、わかりやすく解説していきます。


目次


1.相続登記義務化とは

2.相続登記をしないとどうなる

3.相続登記義務化の過料だけじゃない

4.まとめ

1.相続登記義務化とは

2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用


2.相続登記をしないとどうなる

今回の相続登記義務化における法律の改正では、相続登記義務化に対する罰則は、10万円以下の過料となっています。


 「なんだ、10万円払えばいいんじゃないの。」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。


 また、「相続人申告制度」という制度があり、こちらをすることで過料を免れることはできますが、「相続登記をしないこと」の問題点は、過料だけではありません。


3.相続登記の問題は義務化の過料だけじゃない

 相続登記をしないということは、当該不動産の名義人が亡くなった方のまま放置されるということを意味します。放置している間に相続が数次的に発生した場合、現行の民法では、相続人と数次相続が発生した方たちの相続人も権利関係者となります。東京近郊の空き家の相続関係者が100人にも上るという記事を見かけたことがあります。この100人の権利者間で、法定相続分で相続登記を行うか、遺産分割協議をして相続人の一人に不動産を帰属させて、相続登記はできません。


 それでは、相続登記をしないとどうなるのかと言いますと、その朽ち果てた建物を処分できません。共有の問題で、処分行為をする場合には、共有者全員の同意を要するからです。


 これらのことが面倒だからと言って、放置していた場合、さらに深刻な問題が発生いたします。それが「所有者責任」です。不動産に限らず、ものを所有するということは、その管理責任は所有者にあります。しかも「無過失責任(過失があろうとなかろうと責任を負うことになる)」です。不動産を相続登記せずに放置した場合、老朽化や管理不全のために放置された状態であったために、第三者が不利益を被った場合、と書くと難しくなりますので、例えば、管理ができていなかった家の外壁が崩れて、誰かが死傷した場合、その責任を所有者が負うということです。名義人が既に死亡していた場合も、その相続人が責任を負うことになります。相続というのは、亡くなったからの権利義務をすべて引き継ぐからです。


 こういった問題が常に付きまとう状況となりますので、やはり相続登記は早めに行い、使わない不動産は、早期の処分を行うことをお勧めいたします。

4.まとめ

 相続登記義務化に関して「しないとどうなる」という観点からお話をさせて頂きました。相談者の方も、罰則である「過料」についてよくご存じなのですが、「所有者責任」を知っている方は、ほとんどいません。相続登記を放置して、自身がまだ済んでいる状態なら管理もできると思いますが、すでに相続人と別居していて、戻ってくる予定もないような場合ですと、相続登記が未了の場合、処分ができませんので、早急に相続登記をして、家族で話し合いの場を持ち、その処分について話し合ってみてはいかがでしょうか。

相続登記義務化の過料を免れる「相続人申告登記」

相続登記義務化は、所有者不明土地問題から議論され出てきたものです。義務化されたことで罰則である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、簡素化した手続きの「相続人申告登記」があります。過料は免れますが、他に問題はないのでしょうか?


目次

1.相続登記義務化

2.過料を免れるための「相続人申告登記」

3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・

4.まとめ

1.相続登記義務化2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


 「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用


2.過料を免れるための「相続人申告登記」

「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。





この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・

  この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。


4.まとめ

 「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。


 相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰もすまなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。


 早めの対策・対応をとることが相続を円滑に進めるコツだと考えます。

相続登記義務化の過料を回避するには

令和6年4月1日に始まる「相続登記義務化」の罰則である最大10万円以下の過料。この過料を免れる要件と、この要件に該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりません。また、相続登記そのものをせずに過料を回避しても問題点が残ってしまいますので、そちらも併せて解説いたします。


目次

1.相続登記義務化とは

2.相続登記義務化の過料が科される場合

3.相続登記義務化の過料を免れる場合

4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法

5.まとめ

1.相続登記義務化とは

相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。


 また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)


2.相続登記義務化の過料が科される場合

 正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。


3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは

 ※正当な理由の例


 (1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース


 (2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース


 (3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース


 (4)経済的に困窮している場合


 などが挙げられています。

4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法

 「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。

この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。


5.まとめ

 最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。


相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、


①相続発生後、3年以内に相続登記を実施する


➁相続人申告登記を実施する


がありますが、①の遺産分割をしない法定相続分での登記は共有関係となるためお勧めできません。➁の相続人申告登記も相続登記義務化は免れますが、この後売買する場合には相続登記が必要となります。


 司法書士が、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。


 今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。

相続登記義務化の罰則(過料の要件)

令和6年4月1日より始まる相続登記義務化について、罰則である過料。すでに法務省よりその過料の運用方針が示されています。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」とは何かについて解説します。


目次

1.はじめに

2.相続登記義務化による過料の要件

3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン

4.①過料通知およびこれに先立つ催告

5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

6.③「正当な理由」があると認められる場合

7.まとめ

1.はじめに

 2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。


2.相続登記義務化による過料の要件

 相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。


 ①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」


 ➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」


 ※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。


 正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。


3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン

 2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。


 相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。


 ①過料通知およびこれに先立つ催告


 ➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法


 ③「正当な理由」があると認められる場合


が定められています。

4.①過料通知およびこれに先立つ催告

 相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。


 しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。


5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

 登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。


 ➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき


 ➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき


 ※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。


6.③「正当な理由」があると認められる場合


 ③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合


 ③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合


 ③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合


 ③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合


 ③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合


 ※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。


7.まとめ

 相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。


 これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。


 登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。


 相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。



相続登記に関する注意点(夫婦共有の不動産について)

相続登記に関する注意点(夫婦共有の不動産について)

不動産購入時に、夫婦で購入代金を別々で支払う場合も少なくありません。この場合、不動産を夫婦共有での登記をしています。なぜなら、代金をそれぞれ払っているのにもかかわらず、共有名義にせず単独名義にした場合、名義人以外の者から名義人に対する「贈与税」を負わされてしまうためです。

新築の家屋の場合、出した金額に応じて共有持分を決めて保存登記をするケースが多いです。その後、夫婦どちらかに相続が発生した場合、もう一方に持分の権利が自動的に移転するわけではありません。

詳しく解説していきます。


目次


1.共有者と法定相続人の関係

2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか

3.まとめ


相続登記に関する注意点(夫婦共有の不動産について)

1.共有者と法定相続人の関係


共有者と法定相続人の関係が、ここでは問題になってくると思います。亡くなった共有者の財産(遺産)の権利は、いったい誰のものになるのでしょうか。

まず一番初めにしなければならないのは、亡くなった共有者が「遺言書」を作成していたかどうかです。

遺言書は、遺言者が亡くなることで効力を生じ、その内容が有効になります。つまり、夫婦で購入し、夫が亡くなった際に、遺言書で「不動産の持分を妻に相続させる」旨の記載があれば、妻が夫の持分を取得することになります。

当然、他の相続人の遺留分を侵害していた場合には、遺留分侵害額請求権を行使されることはあるかもしれませんが、ここでは想定しないことにいたします。

遺言書がなかった場合、亡くなった共有者の持分の権利は、亡くなった方の法定相続人が民法規定の法定相続分で共有している状態になります。

仮に、亡くなった以外の共有者が、法定相続人ではない第三者(内縁の妻等)の場合には、そもそも相続権はありませんので、取得することは困難でしょう。

また、内縁の妻の場合、相続人が不存在である場合に特別縁故者として家庭裁判所が認定してもらえれば、その持分を取得する可能性はあります。認めてもらえるかどうかは、家庭裁判所の判断次第ということになります。

相続登記に関する注意点(夫婦共有の不動産について)

2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか


①他の共有者のみが相続人であった場合

問題なく、その亡くなった共有者の持分の権利は、他の共有者に移転します。


➁他共有者が相続人の1人であった場合

他の相続人全員と「遺産分割協議」により、帰属先を協議しなければなりません。協議を経なければ、法定相続人の法定相続分の割合で持分権利をさらに共有している状態になります。協議がこじれた場合には、「遺産分割調停・審判」の手続きを要します。協議等を経て帰属先が他の共有者だとなれば、その持分の権利は、他の共有者のものになります。


③他共有者が全くの第三者であった場合

相続人ではないので、遺産分割協議への参加はできません。ですので、相続人の中からどなたかが持分を取得し、共有状態は解消されないことになります。もっとも、相続人間で持分の売却等の提示もしくは、こちらからの意思表示を受け入れてくれれば、持分を取得することは可能です。

相続登記に関する注意点(夫婦共有の不動産について)

3.まとめ


まとめると、共有者だからと言って、相続発生時に必ず持分を取得できるとは限らないということが言えます。

夫婦である場合でも、他に相続人がいる場合、「遺産分割協議」を経て持分の帰属先を他の共有者にしないと持分の取得はできません。

内縁の妻の場合、そもそも相続人ではないので、相続人の遺産分割協議への参加する権利はありません。


対処法としては、共有者から生前に持分を生前贈与(不動産評価額が大きい場合、何回かに分けて贈与)することが挙げられます。


また、共有者の生前に「遺言書」を作ってもらうことも有効な手段です。遺言書の場合、持分の権利は、他の共有者に必ず移転します。ただし、第三者の場合には、税金がかかってくるかもしれませんが、相続人から「共有物分割請求」をされて、住む場所を失ってしまうリスクも否定はできないからです。


今回は、わかりやすくするためにできるだけ簡単な事例で紹介いたしました。詳しい内容に関しましては、専門家に相談することをお勧めいたします。


アイリスでは、相続対策・相続手続きにつきまして、随時予約制で無料相談会を実施しております。

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相続登記に関する注意点(夫婦共有の不動産について)


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認知症対策として(任意後見と家族信託)

認知症対策として(任意後見と家族信託)

認知症対策として、「任意後見契約」と「家族信託契約」があります。

家族信託万能論を唱えている専門家の方もいらっしゃるみたいですが、同じ「財産管理」であっても、その内容は大きく異なります。

実際にいずれかの対策をした後に、こんな筈ではなかったとならないために、比較解説していきます。


目次


1.はじめに

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

3.結局どちらの制度がいいのか?

4.まとめ

1.はじめに


認知症対策として「任意後見制度」と「家族信託」という2つの制度があります。

「どちらの制度がいいの?」、認知症対策相談の時、相談者様からよく質問を受けます。どちらの制度も一長一短があります。制度の内容を要理解せずに、表面的なメリットのみとらえて選択してしまうと、「こんなはずではなかった。」ということにもなりかねません。

内容をよく理解した上で選択することが重要になります。なぜなら、この2つの制度は、性質が異なるものだからです。ご家族の置かれた状況からどちらの制度を選択すればよいか見えてくると思います。

それでは解説してまいります。

認知症対策として(任意後見と家族信託)

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い


(事例)母は既に亡くなっており、父親が最近少し物忘れが多くなってきており、長男夫婦と次男夫婦がいる事例で見ていきます。


このような事例で、長男が「財産管理」をしていきたい場合を考えていきます。


※父親に判断能力がまだあることが前提条件となります。すでに判断能力を失われている場合には、法定の成年後見制度を利用することになります。

※2つの制度共に詐欺被害などにあった場合の「取消権」がないので対応はできません。法定の成年後見制度にはありますので、ここでも選択の判断が分かれます。


認知症対策として(任意後見と家族信託)

3.結局どちらの制度がいいのか?


事例から見ますと、父親に「身上監護まで必要」であるなら任意後見制度を利用し、必要なければ「家族信託」という選択になります。

しかし、家族信託のみで対応していたがために、父親の認知症が進み、要介護認定の申請手続きや、介護施設への入所契約など発生した場合、「法定の成年後見制度」を利用しなければならなくなります。

そこで、大きな財産については「家族信託」で財産管理をして、それ以外の財産と身上監護を「任意後見制度」を併用する方法もあります。

また、併用だとコスト面で大きくなるのであれば、どちらがいいのかの選択が必要となってきます。

この場合は、ご家族でよく話し合ったうえで決めていただきます。


4.まとめ


 ①積極的な財産管理を行いたいのであれば「家族信託」

 ➁身上監護が必要なら「任意後見」

 ③裁判所の関与を避けたいのであれば、「家族信託」

 ④どちらの制度もご要望になじむのであれば、費用で比較する


「任意後見制度」も「家族信託」もどちらかを選択すれば完ぺきといった制度ではありません。それぞれの制度の趣旨が異なるためです。

どちらもご要望に馴染まない場合がありますので、制度をよく理解して決めなければなりません。専門家と相談しながら進めていくのがいいと思います。


アイリスでは、随時、予約制にて認知症対策の無料相談を受け付けております。何らかの手続きをするまでは、費用は発生いたしません。


法律・税務双方の無料相談会も別会場にて、月一で実施しております。

法律面での相続対策に加えて税金の面も不安という方は、是非ご活用ください。

生前の相続対策として(遺言)

生前の相続対策として(遺言)

最近の相談者の方の年齢と希望するサービスの内容について、いろいろと考えることがあります。ライフステージごとに、できることをまとめてみました。健康年齢が75歳ということを考えますと、生前の対策は元気なうちにしておくことが重要かと考えます。また、生前対策そして、遺言書を積極的に考える理由についても解説しています。


目次

1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)

2.遺言書を作成する意味

3.相続財産が相続人に帰属するタイミング

 3-1.遺言書がある場合

 3-2.遺言書がない場合

4.遺産分割協議でもめてしまうことも

5.まとめ

1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)

 早めに遺言書を作成することのメリット

遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。


 ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。

また、遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。


※ご本人の状態により、使える法律行為や制度が異なる点にもご注意ください。特に認知症発症後は、法定後見制度一択になります。

3.相続財産が相続人に帰属するタイミング

 3-1.遺言書がある場合


  遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。


 3-2.遺言書がない場合


  相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。

※遺留分の問題があるから遺言書は進めないという方もいらっしゃるようですが、相続発生時の相続財産の帰属先は一端は決まる点がメリットだと考えますので、アイリスでは遺言書の作成についてお勧めをしております。


4.遺産分割協議でもめてしまうことも

 遺言書がなく亡くなられた被相続人の相続人全員で遺産分割協議をする場合、もめるケースがあります。一旦もめてしまうとなかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。


 こうなった場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。それでもまとまらない場合には、家庭裁判所による審判で遺産分割を決定することとなります。


 ここまで行ってしまいますと、家族関係は完全に悪くなってしまいます。一度悪くなった家族関係は、もう元には戻らないでしょう。このようなことからも、遺言書作成の意義は、とても大きいと考えます。


5.まとめ

 最後に、遺言書は遺言者の意志を尊重するものであるため、遺言者自身が最も納得できる内容を記載することが大切です。しかし、遺言書が法律に反する内容を含んでいる場合などは、遺言書は無効となることがあります。遺言書を作成する際には、法律に基づいた内容であるかどうか専門家に相談し、確認するようにしましょう。

相続税対策としての死亡保険の取り扱い

相続税対策としての死亡保険の取り扱い

相続が発生し、死亡保険金が受取人(相続人の一人)によって受け取られたときに、それは相続財産として遺産に含むものなのでしょうか。当然、相続人以外のどなたかに、死亡保険金の受取人とした場合には贈与税の対象に、また、亡くなった被相続人本人が受取人の場合には、相続財産として取り扱われることになります。

今回は、相続人の一人が受取人に指定されていた場合について、法律面と税制面の両面から解説していきます。


目次

1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか

2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合

3.死亡保険金の税制面での取り扱い

4.まとめ

相続税対策としての死亡保険の取り扱い

1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか


保険契約に基づき受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又は、これを行使して取得した死亡保険金は、民法903条第1項に規定する遺贈又は、贈与に係る財産には原則的には当たりません

つまり、法律上、死亡保険金は、相続財産とはなりません。ですので、相続の生前対策として生命保険(死亡保険)が活用されるケースがあります。相続財産となりうる額の一部をを生命保険契約をすることで、目減りさせることができるためです。それでは、相続財産のほとんどを生命保険に切り替えても相続財産とはならないのかというと、そういうわけではありません。どのような基準があるのかを次の項目で解説をいたします。


2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合


(最判平16.10.29)

「法律上、生命保険金は原則的には相続財産に該当しませんが、当該保険料が被相続人が生前に保険者に支払ったものであり、それにより保険金受取人である相続人に保険金請求権が発生することなどに鑑みると、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是正することができないほどに著しいものであると評価すべき「特段の事情」が存する場合には、民法903条の類推適用により、当該保険金請求権を特別受益に準じて持戻しの対象となると解する。


この「特段の事情」の有無の判断は以下のような点などの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断する。」とあります。


それでは、判例で言っている特段の事情とはどういった内容なのでしょうか。


 ①保険金の額

 ➁保険金の額の遺産の総額に対する比率

 ③同居の有無

 ④被相続人の介護等に対する貢献の度合い


以上、4つの内容を考慮したうえで判断されます。

➁の比率については、明確な基準はないですが、平成17年の判例では、遺産総額のほぼ全額(99%超)を保険金が占めており、また、平成18年の判例では61%を保険金が占めていて、相続とみなされました。

他の要件も加味されますので、50%を超える場合には注意しておいた方がいいかもしれません。


3.死亡保険金の税制面での取り扱い


「被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。

この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。


500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額


なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。


(注1) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

(注2) 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。」

(国税庁HPより引用)

相続税対策としての死亡保険の取り扱い

4.まとめ


死亡保険金は、法律上では原則、相続財産とはなりませんが、 

①保険金の額

➁保険金の額の遺産の総額に対する比率

③同居の有無、

④被相続人の介護等に対する貢献の度合い

といった内容を考慮して特別受益と認められる場合があります。

特別受益と認められた場合、その死亡保険金は相続財産に組み入れられてしまいます。

また、税法上は、死亡保険は「みなし相続財産」とされ、基礎控除を超える額は相続財産とされます。

詳しい内容につきましては、各専門家への相談をお勧めいたします。


アイリスでは、ワンストップでの相続のお悩みを解決する場として「相続法律・税務無料相談会」をご紹介しております。

法律のお悩みのみの場合につきましては、「アイリスDEいい相続」の無料相談会にて対応をいたします。ぜひ、この機会にご活用ください。


代位登記について

代位登記について

「代位登記」は他の人が変わって申請する登記のことですが、一定の要件が必要です。それでは、代位登記等について解説します。


目次

1.代位登記とは

2.代位登記ができる要件

3.実際の申請書記載

4.まとめ


1.代位登記とは

 代位登記とは、債権者、自己の債権を保全するために、民法423条の規定により、債務者の有する「登記申請権」を代位行使して登記㋓㋔申請することを言います。


「民法423条(債権者代位権の要件)


 第1項 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。」


規定の表現は、債権者、債務者となっており、良くイメージできない方もいるかもしれませんので具体的に言いますと、


(事例1)AからBに売買によりBに余裕権が移転し、その後、Bがその所有権をCに売ったとします。この場合の住所は、A→Bの所有権移転をした後に、B→Cへの所有権移転登記をすることになります。しかし、Bが所有権移転登記を請求しない場合、Cは既に所有権を持っているのに、待つことしかできない状態になってしまいます。A→Bの登記請求権は、Bが持つ権利です。それをC(債権者)が、B(債務者)のもつAへの所有権移転請求権を代位行使するができます。


2.代位登記ができる要件

 民法の規定では、「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるとき」とあります。上記事例ですと、CはBに請求はできますが、Bの持つ請求権は直接行使できません。こうなると、CはBに対する請求権(被保全債権)を保全(履行してもらうようにすること)する必要がある訳です。この「請求権の保全」が、要件になります。


(いくつか事例を示します)


 ①賃借権について登記する旨の特約がない場合、被保全債権となるべき賃借権設定登記請求権を有しないため、所有権移転登記の代位はできない。


 ➁表題部所有者A、Aの債権者(当該不動産を買った人)Bがいる場合、BはAに代位して、Aの所有権保存登記を代位できる。被保全債権はBからAへの所有権移転登記請求権。


などが挙げられます。

3.実際の申請書記載

 (事例1)の申請書


登記の目的  所有権移転登記


原   因  年月日売買(A→Bの売買が発生した年月日)


権 利 者  (被代位者)B


代 位 者  C


代位原因   年月日売買の所有権移転登記請求権


義 務 者  A


添付情報   登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 住所証明情報


       代位原因証明情報 代理権限証明情報


となります。通常の申請書と異なる部分は、「被代位者・代位者」「代位原因」の記載と、添付書類に、「代位原因証明情報」があることです。事例のような売買の場合は契約書などがこれに当たります。


 この「代位原因証明情報」を添付しなくてもいいときがあります。


 それが、すでに登記簿上にある抵当権の抵当権者が請求権を代位行使する場合です。この場合でも、添付情報欄に「代位原因証明情報は、年月日受付〇号をもって本物件に抵当権設定登記済につき添付省略」の記載は必要です。


4.まとめ

 今回は、代位による登記のお話をしてきました。代位するには、要件が必要です。その要件は、「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるとき」です。迷惑をかけられて登記ができない方の請求権を保全するために必要であるならば、代位による登記も可能となります。


 前に、離婚調停書正本(確定証明書付)を添付して、所有権移転登記を単独で申請する場合をご紹介しました。その際に、名義人の住所が変更になっているときも、住所変更登記を代位によりすることが可能です。ただし、登記原因証明情報(住民票)の添付は必要となります。


 代位の要件を充たしているかどうかにつきましては、専門家にご相談ください。

遺産となる財産が少なくても遺言書を作る意味

遺産となる財産が少なくても遺言書を作る意味

相続相談に来訪される方で、すでに遺言書作成する目的を明確に持っている方もいらっしゃいますし、相談内容に付随する形で、「遺言書の作成」を勧めても、「うちは財産少ないし、関係ないよ」とおっしゃる方もいます。

しかし、財産が少なくても遺言書を作らないという選択肢を選ぶということは、本当に正解なのでしょうか。


目次


1.遺言書作成の目的

2.財産が少ない方でも遺言書を作成する意義

3.まとめ

遺産となる財産が少なくても遺言書を作る意味

1.遺言書作成の目的


遺言書を作成しようとされる方には、何らかの目的があります。

例えば、相続発生後の遺産分割方法を指定することで、相続人間の争いごとを抑制したいと思って作る方もいらっしゃいます。

事業をしている方の場合は、個人資産が会社の財産と密接に関係あるような場合には、「事業継続」を視野に遺言書を作成するでしょう。

また、再婚歴のある方であれば、再婚後の家族と再婚前の相続人との間で遺産分割協議をする負担を軽減するために、作成されると思います。(遺言執行者により、遺言の内容は、すべての相続人に知らせなければならないため、その後の反応はわかりませんが、少なくとも遺産の帰属先は指定できるわけです。)


このように、遺言書を作成する目的を明確に持たれている方だけが、遺言書を作成することでいいのでしょうか?


遺産となる財産が少なくても遺言書を作る意味

2.財産が少ない方でも遺言書を作成する意義


財産が少ない方の場合でも、目的がはっきりしていれば遺言書作成をしている方は多いと思います。

しかし、遺言書作成の目的がない様なら、果たして作成しなくても問題はないのでしょうか?

そこで、財産が少なく、目的が現状ない方向けに、作成しないことで起こりうる問題点をお話したいと思います。


 


①財産別の遺産分割調停・審判の統計データ

(令和2年度家庭裁判所 遺産分割事件件数統計)


ご覧のように、財産が多い方は、専門家に相談の上、生前に相続対策される一環で遺言書を作成している場合が多いため、遺産分割調停・審判事件の割合が低いことが分かります。

一方で、1000万円以下の相続財産でもめるケースが多いことが見て取れます。

財産が少ないことは、遺言書を作成しない理由とはならないことがわかると思います。


➁未来のことは誰にも予測はできません


現状、家族関係が良くても、将来、どのようになるのかはわかりません

親の目線からの関係と、現状の子供間の実際の関係は見えていない可能性もあります。

人というのは、意外と細かいことを根に持っている場合があります。

「子供の時から、親父は弟ばかりひいきしてきた。」と、亡くなった後に吐露し始める方を見ました。ご存命の間は、本当の心情を隠されているかもしれません。

それでは、遺言書を書いたから、すべてうまくいくかというとそうではありません。

上記のような例ですと、子供時代から蓄積された感情がありますので、難しいと思いますが、少なくとも相続時点での財産の帰属先は決まります。

「遺留分」の問題にも発展する可能性がありますが、遺留分で主張できるのは法定相続分の2分の1です(例外もあります)。


(財産が少なくはないですが、事業継続にも影響します)

京都の老舗の造り酒屋さんで、相続が発生し、建物や工場は法人名義でしたが、敷地は父親の個人名義でした。

弟が継承することに反対だった兄が、遺産分割調停を申し立て、遺産分割審判までもつれ、結局半分ずつの持分で兄・弟で登記しました。

その後、兄は共有物分割請求をしましたが、現金がなかった弟は代償分割ができず、結局建物工場を解体して、敷地を第三者に売却して、換価分割を選択しました。

当然、事業は継続できなくなり、法人は解散となってしまいました。


この事例は、遺言書があってもだめだった可能性がありますが、遺留分が半分で済みことを考えると、もしかしたら、何とかなった可能性もあったのでは?と思ってしまいます。


3.まとめ


まとめると、財産の額にかかわらず、遺言書を書いておくメリットはあります。

できれば、早い段階で一つ作り上げ、その後の状況で内容を変更することはできます。

公正証書遺言では、費用が掛かるというのであれば、自筆で作成を続け、ある程度納得いく時期に来た時に、公正証書遺言を作成することで、費用は抑えることができます。


亡くなった後の家族関係を円満に保つためにも遺言書の作成をお勧めいたします。


成年後見制度の落とし穴

成年後見制度の落とし穴

認知症になった後の財産管理制度として、「成年後見制度」があります。

現在、成年後見制度をより使いやすい制度にすべく見直しを行っている最中ですが、家族を成年後見人にしたことで事件が発生しております。成年後見制度の成年後見人は、実質、本人に代わって解散管理をはじめ様々な権限が与えられます。専門家を指定した場合、報酬が発生するため、家族を成年後見人に指定して申請する方も多いかと思います。

今回はこの事件について解説したいと思います。


目次

1.事件の概要

2.問題が引き起こす連鎖反応

3.まとめ

成年後見制度の落とし穴

1.事件の概要


(令和6年2月27日テレビ静岡記事引用)


「成年後見人の立場を悪用して、認知症の母親の口座から現金 約890万円を引き出したとして42歳の派遣社員の男が逮捕されました。

業務上横領容疑で逮捕されたのは千葉県市川市に住む契約社員の男(42)で、認知症になった実の母親の成年後見人に選任されていた2020年7月から2021年11月までの間、自らが使用する目的で母親の口座から40回以上にわたって現金 計890万円を引き出した疑いです。

警察によると、男は累計の出金額が多額だったため2021年11月に成年後見人を解任されていて、その後、後見人に選任された弁護士が刑事告訴していました。

男は容疑を認めていて、警察が犯行の動機や金の使い道などを調べています。」(記事引用終わり)


記事を見る限り、成年後見人に選任された家族が、被成年後見人(本人)の口座の管理を任されているのも関わらず、自分で使用する目的で預金を使い込んだというものです。


2.問題が引き起こす連鎖反応


以前、他士業の方から、成年後見の申し出を出してほしいとの話をいただきましたが、断った経緯があります。

その理由として、成年後見人として指定者されていたのが、家族だったからです。

財産は比較的少ない方だったのですが、リーガル登録(成年後見人としての講習を受け、登録をしている)されている司法書士の先生にお願いするようにアドバイスしました。

財産の多い少ないの問題でなく、専門家でない成年後見人が選任された場合には、上記のようなことが発生しうるからです。ただし、成年後見人を選任するのは、あくまで家庭裁判所であり、指定していたからと言ってその方が選任されるわけではありません。その場合には、指定されていた家族からクレームの電話が来ます。決定内容に不服があれば、当然控訴なども考えられますが、この家庭裁判所の判断については、控訴等は受け付けてくれません。対象外になっているためです。


逆に、このようにクレームの電話が来るケースについては、「よからぬことを考えていたのでは?」と勘ぐってしまいます。

このように使い込みが発生した場合、家族であっても刑事事件として告訴されます。

そして、他に相続人がいた場合、問題はこれだけでは収まりません。

将来発生する相続で得られるはずだった財産について、民事訴訟を起こされる可能性もあります。こうなると家族間の関係は、修復不可能になるでしょう。


成年後見制度の落とし穴

3.まとめ


財産を管理する成年後見人は、報酬を支払ってでも専門家にするのか、それとも家族にすればいいのかという問題は付きまといます。

ただし、家族が鳴った場合でも、家庭裁判所で選任した後見監督人が選任される場合がありますので、結局報酬が発生する可能性もあります。

このような事件の発生を抑止する意味でも、専門家にお願いしたほうがいいのではと考えてしまいます。

一方で、財産管理の手法で、家族と専門家の成年後見人との間で意見の違いが発生する場合もあります。


いずれにしても、成年後見制度を利用する場合には、家族で話し合い、家族の中から指定者を選ぶ場合にも、慎重に判断すべきだと思います。


(ニュース)日本司法書士会連合会と日本郵便株式会社との「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結

(ニュース)日本司法書士会連合会と日本郵便株式会社との「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結

令和6年2月7日に日本郵便株式会社と「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結式を開催しました。

日本郵便株式会社では、「終活サポート」の窓口としてサービス提供をしています。過去に、どのような団体・法人・会社と協定しているのか少し調べてみました。


目次

1.日本郵便株式会社の提供する「終活日和」とは

2.実は知ってました

3.日本郵便株式会社が過去に協定を結んでいた先(調査)

4.まとめ


(ニュース)日本司法書士会連合会と日本郵便株式会社との「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結

1.日本郵便株式会社の提供する「終活日和」とは

2024年2月19日Impress Watchのニュース記事引用


郵便局で「郵便局の終活日和」提供開始

日本郵便は、全国の郵便局で顧客の終活をサポートするサービス「郵便局の終活日和」を2月16日から開始する。相談料は無料。

専用のコールセンター「生活相談ダイヤル」で顧客の相談に乗り、内容に応じて、終活関連の提携企業を紹介するサービス。'18年度から北海道と首都圏において試行された「終活紹介サービス」が好評だったことから、全国の郵便局で提供を開始する。

コールセンターに直接電話をかけることのほか、郵便局の社員がコールセンターへの電話をサポートすることもできる。

提携企業を紹介できるサービスは、相続手続の代行、介護施設や賃貸住宅へ入居時の身元保証、死後事務委任、葬儀場の案内、墓石等の紹介、介護施設の案内、入院後等の家財整理、空き家の解体など。自分史作成や思い出写真撮影サービスも紹介可能。

提携企業を紹介後、相談と見積りまでは無料。サービス提供は有料。」(引用終わり)

このサービスの一環として、日本司法書士会連合会との協定締結があったものと思われます。


2.実は知ってました


昨年の8月、協力先の先生が東京に行ったときに、北海道と東京で実施していた「終活紹介サービス」が全国展開する話を聞いてきました。そこで、地元郵便局に確認したのですが、まだサービス提供前なので、何とも言えないと回答されていました。

営業先のチャンネルの一つになればいいなとは思っていましたので、その後の情報については、アンテナを張っていました。

先日、その郵便局を訪れたときに、いよいよ具体的に動き出している話を聞いて、その内容やパンフレットをいただいてきたところでした。

(ニュース)日本司法書士会連合会と日本郵便株式会社との「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結

3.日本郵便株式会社が過去に協定を結んでいた先(調査)


上記記事に「'18年度から北海道と首都圏において試行された「終活紹介サービス」」という点で、その時の提携先が気になり調べてみました。


2018年9月20日@Press記事引用

「日本郵便株式会社との連携による終活紹介サービスの 試行開始に関するお知らせ

不動産取引にかかる事務効率化を推進する株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:本間英明、東証一部(証券コード:6093)、以下 EAJ)の子会社である株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託(東京都千代田区、代表取締役 今中 弘明/以下「EAJ信託」)と日本ATM株式会社(東京都港区、代表取締役社長 中野 裕/以下「ATMJ」)は、2018年10月10日より、日本郵便株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 横山 邦男/以下「日本郵便」)及び株式会社鎌倉新書(東京都中央区、代表取締役社長 相木 孝仁/以下「鎌倉新書」)と連携し、終活紹介サービスの試行を開始することをお知らせいたします。」(引用終わり)


以前の記事にも書きましたが、令和2年に東京司法書士会が日本司法書士会連合会に照会を出して問題となった会社が含まれていました。

なぜ問題になったのかと言いますと、当該会社は、日本郵便株式会社から預かった案件を個々の司法書士に会員として登録させて登録料を徴取し、登録した司法書士に案件を紹介していたからです。

これ、司法書士法の「不当誘致」で、問題となります。

その後、鎌倉新書をはじめとするWEB公告集客系の営業がありましたが、鎌倉新書の「いい相続」が、案件紹介の司法書士対象のサービスを停止していました。

令和4年に開業した後の話ですので、繋がりましたね。

この事件の後のWEB案件紹介は、「ポータルサイトに登録し、見た方が連絡先に電話等する方式」に様変わりしています。直接の顧客の紹介はまずいですからね。


4.まとめ


今回は、令和6年2月7日に日本司法書士会連合会と日本郵便株式会社との間で「終活に関する広報等の連携に関する協定書」締結したことを取り上げました。

その中で、2018年から日本郵便株式会社が提供する「終活紹介サポート」から、東京司法書士会で懲戒事案にもなった事件の全貌を知ることができました。

今後の、司法書士と郵便局との連携についても具体的に知りたいですね。

「遺産分割協議後に遺言書発見!どうすればいいのか?」

「遺産分割協議後に遺言書発見!どうすればいいのか?」

遺産分割協議をした後に遺言書を発見した場合、どうすればいいのでしょうか?「見なかったことにする」で済むのでしょうか?わかりやすく解説したいと思います。


目次

1.遺言書の効力

2.遺産分割協議後、遺言書が発見された場合

3.家庭裁判所で行う検認とは

4.遺言執行者とは

5.まとめ

1.遺言書の効力


遺言では「相続方法」を指定することができます。法定相続分以外の割合で遺産を分け与えたり、特定の遺産を特定の相続人や相続人以外の人へ受け継がせたりすること(遺贈)が可能になります。法律では「遺言によって指定された相続方法は法定相続に優先する」と規定されているためです。


「(遺言による相続分の指定)


民法 第九百二条 被相続人は、前二条の規定(法定相続・代襲相続について)にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。」


 つまり、遺言があると、法定相続分を超える相続や下回る相続も有効となります。遺言書を使うと、以下のような事項を指定できます。


①相続分の指定、➁遺産分割方法の指定、③遺贈、④寄付、➄遺産分割の禁止(5年以内)、⑥認知、⑦相続人の廃除、⑧保険金受取人の変更、⑨遺言執行者・遺言執行者を指定する人の指定。


 逆に、民法で定められている項目以外の事項を遺言書に書いても効力はありません。

2.遺産分割協議後、遺言書が発見された場合

法定相続した遺産を協議で帰属先を定めるのが、遺産分割協議です。この協議は、法定相続人全員の参加が要件です。しかし、協議の後に相続人お一人が遺言書を発見した場合、どうなるのでしょうか?


 もし、未開封の遺言書を相続人の一人が発見した場合、「見なかったことにする。」のはやめてください。民法で定められている相続人の「欠格」事由に該当する可能性があります。


 まずは、相続人全員に連絡をして、家庭裁判所での「検認」の手続きをしてください。


3.家庭裁判所で行う検認とは

「「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。」(裁判所HP引用)


 つまり、検認手続きでは、遺言の有効無効を判断するものではなく、遺言書の現状を公的機関で保管する手続きです。封がされている遺言書の場合、未開封のまま、家庭裁判所に持ち込んでください。家庭裁判所で開封された遺言書は、すぐにコピーがとられ裁判所で保管します。仮に開封したとしても、検認手続きはできますが、「過料」が発生しますのでご注意を。


4.遺言執行者とは 

 遺言執行者とは、遺言内容を実現する役割を負う人です。遺言者が遺言で指示したことが実現するように、財産目録の作成や預貯金の払い戻し、相続人への分配、不動産の名義変更、寄付などを行います。遺言執行者は民法で「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権限」が認められています。(民法1012条)


 遺言執行者は、遺言者が遺言内容に指定することもできますし、


 遺言執行者に弁護士や司法書士などの専門家を指定する場合もありますが、遺言執行者は、遺言者の遺言内容を実現するために相続人に代わって行うために、代理人ではなく本人という立場で執行することになります。2019年の法改正により、遺言執行者は単独で不動産の名義変更できるようになりました。


5.まとめ

 遺産分割協議と遺言書では、遺言書の効力の方が優先されます。そのため、相続人全員で遺産分割協議をした後に、相続人の一人が遺言書を発見した場合、速やかに相続人全員に連絡をして、家庭裁判所で検認の手続きを受けなければなりません。


 遺言内容を執行するには、遺言執行者が必要です。遺言執行者は、遺言書の指定があればその方、その方がすでに亡くなっていたり指定されていない場合には、遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。


令和6年2月21日「成年後見制度見直し」有識者らの研究会が報告案まとめる

令和6年2月21日「成年後見制度見直し」有識者らの研究会が報告案まとめる

認知症になった方の財産を管理するための「成年後見制度」ですが、現行の制度では問題点もあるため、改正の動きが出ているようです。

随分前から「スポット後見」などの要望があり、これらを現行制度に取り入れようとする話は聞いたことがあったのですが、動きがあったみたいです。


目次


1.成年後見制度(法定後見制度)とは

2.成年後見制度の何が問題なのか

3.令和6年1月法務省「成年後見制度の見直しに向けた検討」内容

4.まとめ

令和6年2月21日「成年後見制度見直し」有識者らの研究会が報告案まとめる

1.成年後見制度(法定後見制度)とは


「認知症、知的障害、精神障害などの理由で、ひとりで決めることが心配な方々は、財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのがむずかしい場合があります。

また、自分に不利益な契約であることがよくわからないままに契約を結んでしまい、悪質商法の被害にあうおそれもあります。

このような、ひとりで決めることに不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援(意思決定支援)を行い、共に考え、地域全体で明るい未来を築いていく。それが成年後見制度です。」(厚生労働省HP引用)


2.成年後見制度の何が問題なのか


 包括的な問題として、多様性がうたわれている現状で、認知症発症後の制度が、「現行の成年後見制度」一択という状況になっていて、その成年後見制度が使いにくいものであることが挙げられます。どのような点が使いにくいのかというと、


①利用動機の課題

例えば、遺産分割協議に参加するために成年後見制度を利用した場合、遺産分割協議が終わっても、亡くなるまで成年後見人が就いた状態になってしまい、弁護士・司法書士が就任している場合、その分の報酬が発生してしまう点。

➁成年後見人の包括的な取消権・代理権

成年後見人(財産の処分等には、家庭裁判所の許可が必要)のこれらの権限により、本人の意思を必要以上に制限してしまうことがある点。


他にも、問題点が挙げられていましたが、主には上記の2点が、成年後見制度が使い辛い原因になっていると思います。

特に、①に関しては、遺産分割協議のためだけに親族を候補者として申請しても、成年後見人を選任する権限は家庭裁判所にあるため、専門家である弁護士・司法書士が選任される場合もあります。そうすると、報酬が亡くなるまで発生しますし、制度趣旨が「本人の財産の保護」ですので、ご家族の意向にマッチしないことも発生する可能性があります。

令和6年2月21日「成年後見制度見直し」有識者らの研究会が報告案まとめる

3.令和6年1月法務省「成年後見制度の見直しに向けた検討」内容

(画像 法務省HP引用)


2①➁の内容を含めて、大きく4つの項目について(他に検討事項もあります)、書かれています。私的には「法定後見制度における開始、終了等に関するルールの在り方」に、注目をしています。

他にも、私の老人ホームの施設長だったころの経験から、認知症と言っても、その症状は様々です。

軽度の者から重度のものまで様々です。かなり進んでいても、日によっては正常に戻る時があったりします。

おそらくこういった内容も含まれて来るとは思います。


4.まとめ


実務において、遺産分割協議の際に相続人の中に認知症の方がいた場合、成年後見制度を申請するかどうかで悩まれる方を数多く見てきました。

その原因というのが、今回の「主な検討テーマ」に含まれる内容です。今回の制度改正で、より使える成年後見制度になってほしいと思います。


令和6年3月1日より、戸籍の「広域制度」が始まりました。

令和6年3月1日より、戸籍の「広域制度」が始まりました。

従来は本籍地の市区町村でしか戸籍謄本等を取得できませんでしたが、広域交付制度の導入により、本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本等を取得できるようになっています。広域制度について解説したいと思います。


目次

1.広域制度とは

2.広域制度を利用できる対象者

3.弁護士、司法書士などの「職務上請求」は広域制度で使えるか?

4.まとめ 

1.広域制度とは

 広域交付制度とは、本籍地以外の市区町村の窓口において、戸籍証明書や除籍証明書を請求できる制度です。事例として、高松市役所で、徳島市役所に本籍地のある戸籍を取得できるという制度です。


 2024年3月1日以降、改正戸籍法の施行によって新たに広域交付制度が導入されます(改正戸籍法120条の2、120条の3)。


 これが実現できた背景として、以前から法務省一元管理化に向けた取り組みをしており、各自治体の戸籍のデータを法務省でデータベース化することにより、各自治体から法務省データベースにアクセスすることにより、本籍地以外の自治体の窓口でも、戸籍を取得できるようになりました。


 データ化された戸籍を取り扱うことから、データ化されていない戸籍に関しましては、広域制度の対象外となります。広域制度で取り扱うことのできる文書は、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本が対象となります。


2.広域制度を利用できる対象者

 広域交付制度を利用して戸籍謄本類を請求できるのは、以下のいずれかに該当する人です。


 ①本人


 ➁配偶者


 ③直系尊属(父母、祖父母など)


 ④直系卑属(子、孫など)


 なお、広域交付制度を利用した請求は、代理人によって行うことは認められていません。上記のいずれかに該当する人が、必ずご自身が市区町村役場の窓口に行って手続きを行う必要があります。


3.弁護士、司法書士などの「職務上請求」は広域制度で使えるか?

 「2.広域制度を利用できる対象者」として、司法書士、弁護士等は含まれておりません。つまり、弁護士や司法書士などに認められている「職務上請求」については、広域交付制度の利用は認められていません。そのため、相続人の調査などをご依頼される場合の弁護士、司法書士等による職務上請求は、通常の戸籍請求手続となり、本籍地が最寄りの市町村役場に無い場合には、郵送請求となります。


4.まとめ 

 相続が発生した場合、被相続人の戸籍等の文書が、すべてデータ化されている場合には、この広域制度で、最寄りの市町村役場で相続に必要な戸籍類を取得することが可能です。この点ではめりとは大きいと考えます。


 しかし、一部データ化できていない戸籍類がある場合には、通常の取得方法になります。ご本人で取得する場合及び、弁護士、司法書士等に依頼する場合には、郵送による手続きで取得することになります。


 詳しくは、最寄りの市町村役場の窓口、又は専門家にお問い合わせください。

生前贈与(権利証・登記識別情報を紛失した場合の手続き)

生前贈与(権利証・登記識別情報を紛失した場合の手続き)

相続とは異なり、生前贈与は売買同様に、添付書類として、「権利証又は登記識別情報」の提出を求められます。

このような場合、どのように手続きを進めていけばいいのでしょうか。解説していきたいと思います。


目次

1.権利証・登記識別情報の添付

2.権利証・登記識別情報を紛失した場合

3.手続き①事前通知

4.手続き➁本人確認

5.手続き③公証人の認証制度

6.まとめ

生前贈与(権利証・登記識別情報を紛失した場合の手続き)

1.権利証・登記識別情報の添付


相続では、登記簿上の名義人は、すでに亡くなっているため、当事者として手続きに参加できません。そして、相続は一般承継と呼ばれ、その権利等を相続人が全て承継するとされていますので、登記簿上の名義人の特定の資料を就ければ問題なく申請は受理されます。

しかし、生前贈与の場合、登記簿上の名義人の方は、存命です。

ですので、手続きの参加が必要になる点は、売買と同じです。つまり、登記簿上の名義人の方は、自身の意思表示(贈与すること)を証明するために、自身が保管している「権利証又は登記識別情報」及び「印鑑証明書」の提出を求められます。

司法書士が作成する委任状や登記原因証明情報への実印での押印も必要です。


2.権利証・登記識別情報を紛失した場合


 それでは、添付書類として「権利証又は登記識別情報」を紛失してしまった場合、生前贈与の申請はできなくなってしまうのでしょうか?


生前贈与(権利証・登記識別情報を紛失した場合の手続き)

3.手続き①事前通知


法務局から登記申請人に対し直接「登記申請についての意思確認の照会」を行う制度です。

権利証を添付せずに登記申請を行うと、数日後、法務局から売主である登記義務者に対して登記申請についての本人の意思を確認するための書面が郵送で通知されます。

法務局からの通知を受けた登記義務者は、一定期間内に「登記申請の内容について間違いのない旨の申出」を行う必要があります。(本当に贈与をしたかどうかの確認)

具体的には、法務局から送られてくる事前通知書に「この登記申請の内容は真実です」という回答欄がありますので、署名および実印で捺印をし法務局へ持参または郵送で送り返します。

指定の期間(後述)までに書類が法務局に到着することで、権利証がなくても不動産の売却手続き(受贈者への名義書換)を行うことが可能になります。

ちなみに、申出期間は、法務局が通知を発送した日から二週間以内と定められており、この期間内に法務局に登記義務者から申出がなければ、登記申請自体が却下されるか、または登記申請を取下することになりますので、指定の期日までに法務局へ返信が届くよう注意が必要です。

※親族間での贈与や抵当権抹消といった緊急性をあまり必要としない登記申請に、適しています。


4.手続き➁本人確認


登記の申請代理人である司法書士(資格者代理人)がご本人様と直接面談し、本人のパスポートや運転免許証等の身分証明書の提示を受けて本人であることを確認して、司法書士がその責任において本人確認をしたことを明らかにした上で、その内容を本人確認情報という書類を作成して、法務局に提供するというものです。

その本人確認情報が適正であれば、条件によっては事前通知を省略して登記が実行されます。

ただし、あくまで「登記を代理して申請する司法書士等」が本人確認をしなければなりませんので,本人確認だけを知り合いの司法書士等に依頼し,登記だけは別の司法書士に依頼するということはできません。

この司法書士による本人確認をすれば,前住所通知等様々な手間が省けるため,権利証を紛失している場合に一番多く使われている方法です。


※前住所通知は、前の所有権移転から3か月以内に再度所有権移転が発生した場合に実施されます。

※費用は別途発生します。ですので、金融機関から融資を受けての売買においては、よく使われる手続です。


5.手続き③公証人の認証制度


公証人の面前で、司法書士に対する登記申請委任状等にご署名・ご捺印いただき、公証人が間違いなく本人であることを確認し、その書類が真正なものであることの認証を受ける手続です。

公証人による認証を受けた登記委任状を添付し、法務局に登記申請を行います。

こちらの手続きは、数千円程度の認証手数料を支払うだけで済みますので、本人確認情報を作成する費用を抑えることができます。

ただし、公証人による本人確認は,印鑑証明書、ご実印,運転免許証等の身分証及び認証文を付ける委任状を持って、公証役場が空いている時間(平日)に公証役場へ直接行っていただく必要がございます。


6.まとめ


「権利証又は登記識別情報」を紛失しても、所有権移転登記(名義変更)はできます。

しかし、特に本人確認の手続きについてですが、他の手続きと異なり、公証役場や法務局が関与しません。

登記を任された司法書士が行うため、「地面士」による不正に用いられることがありますので、「本人であることが確認」できるまでは、登記の実行は致しません。

場合によっては、手続き自体もう一度やり直すこともあります。

そして、明らかに本人が確認できる場合を除き、事前に登記簿上の住所に訪問し、本人確認を行いますので、費用はそれなりにかかります。


アイリスでは、生前贈与などの相続対策のご相談をお待ちしております。


離婚等に伴う財産分与について(不動産名義変更とその他の手続き)

離婚等に伴う財産分与について(不動産名義変更とその他の手続き)

離婚又は婚姻の取り消しにより、一方が財産の分与を請求した時に、その財産の中に不動産が含まれる場合、「財産分与」を原因とする所有権移転登記(名義変更手続き)がされます。今回は、この「財産分与」について解説していきます。


目次

1.財産分与とは

2.財産分与に関する先例

3.離婚手続きの違いによる添付書類と原因日付

4.住宅ローン債務者の変更について(重要)

5.まとめ

1.財産分与とは

財産分与(ざいさんぶんよ)とは、法律上の用語であり、通常は離婚などの場面で使われます。これは、共有されている財産を分割することを指します。具体的には、配偶者間での財産分与は、離婚の際に共有財産を公平に分割することを指します。


財産分与は、公正な取り扱いを確保し、関係者間の紛争を最小限に抑えるための重要な手続きです。裁判所の判断に基づいて行われることもありますが、関係者間で協議によって行われることもあります。


 財産分与に関する財産の中に不動産がある場合、当該不動産の名義の変更手続きが必要となります。


2.財産分与に関する先例

 離婚又は婚姻の取り消しをした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます。(民法749条、768条、771条)


 分与される財産に不動産が含まれる場合、「財産分与」を登記原因とする所有権移転登記ができる場合があります。


※登記原因とは、「売買」「贈与」「相続」といった、権利移転が発生した原因のことを指し、申請書類に記載する事項です。


 内縁解消をし、「被告は原告に対しA不動産につき、年月日財産分与を原因として所有権移転登記手続きをせよ」との判決製本を添付して所有権移転登記を申請する場合、登記原因を「財産分与」とすることができる。(先例 昭47.10.20民三559号)


※本来、「内縁解消」は対象ではなところ、判決文に記載されている内容が財産分与である場合には、財産分与を登記原因として使ってもよいという先例です。




有責配偶者が相手方に財産分与とは別に慰謝料として不動産を給付する場合の所有権移転登記の登記原因は、「代物弁済」である。(登研531号)


※財産分与とは、婚姻している期間に夫婦共同で作り上げた財産を分与することを言います。一方、離婚の慰謝料は、離婚に伴う精神的苦痛や損害の補償を目的として支払われる金銭です。支払う側が債務者となり、受け取る側が債権者となります。つまり、お金の貸し借りに似ていますよね。で、その債務を不動産というもので支払うということで、代物弁済という原因になります。


 この辺りの詳しい話は、必ず専門家にご相談ください。知り合いの法律に詳しい人では、誤った判断をするかもしれません。


3.離婚手続きの違いによる添付書類と原因日付

 まずは、司法書士に依頼する場合の添付書類から、各離婚の手続きの違いごとに必要書類をまとめていきます。


 ①協議離婚の場合


 (財産を分与する側)


  ㋐不動産の登記済権利証(または、登記識別情報通知)


  ㋑印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)


  ㋒印鑑(実印)


  ㋓固定資産評価証明書(紛失されている場合には、固定資産税評価証明書でも可)


  ㋔離婚の記載のある戸籍謄本


  ※財産分与する方の登記簿上の住所(氏名)が、印鑑証明書の住所(氏名)と異なる場合、財産分与による所有権移転登記に先立ち、所有権登記名義人住所(氏名)変更の登記が必要です。その際は、住所変更の経緯が分かる住民票(戸籍附票)、氏名変更が分かる戸籍謄本などが必要です。


 (財産を受ける側)


  ㋐住民票


  ㋑印鑑(認め印)


上記の他に、登記原因証明情報、および司法書士への委任状(権利者、義務者の双方)が必要ですが、どちらも司法書士が作成したものに署名押印をいただくのが通常です。


 もらう側も受け取る側も、名義変更に参加するため「共同申請」となります。


 ➁調停、審判、訴訟など裁判上の離婚の場合


 こちらは、裁判所の手続きにより決まるのですが、「単独申請(もらう側のみで登記手続きができる)」でできる場合と、協議離婚の場合のように「共同申請」でする場合とがあります。


 ポイントは、調停調書等に「申立人は、相手方に対し、離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を譲渡することとし、本日付け財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」というような記載がある場合には、「単独申請」でできます。理由としては、調停調書等の文言に分与する側の意思擬制が働くためです。


 しかし、この文言に「申立人と相手方は協力して所有権移転登記をする」というような記載の場合には単独申請ができず、協議離婚と同じ「共同申請」になってしまいます。文言に2人で手続きをしなさいと書いているためです。


  共同申請の場合には、協議離婚と同じ添付書類に加え、判決書正本(確定証明付)、調停調書(確定証明付) 、審判書(確定証明付) も必要です。


 (単独申請の場合の添付書類)財産を受け取る側だけのものになります。


  ㋐登記原因証明情報(調停調書、審判書、和解調書など)


  ㋑住民票


  ㋒認め印


  ㋓固定資産評価証明書(紛失されている場合には、固定資産税評価証明書でも可)


  ㋔離婚の記載のある戸籍謄本


  ※財産分与する方の登記簿上の住所が、調停調書記載の現住所と異なる場合、財産分与による所有権移転登記に先立ち、所有権登記名義人住所変更の登記が必要ですが、この住所変更の登記についても、分与する方の協力を得ずにおこなうことができます(代位による登記)。


4.住宅ローン債務者の変更について(重要)


 住宅ローンが残っている不動産を財産分与する場合、財産分与による所有権移転登記をしても、住宅ローンの債務者は変更されません。


 たとえば、夫が所有者で、かつ住宅ローン債務者である不動産を妻に財産分与し、それに伴う所有権移転登記をしたとします。この場合、所有者は妻となりますが、住宅ローン債務者は夫のままです。もしも、債務者の変更をするならば、借入先(銀行等)の承諾を得る必要がありますが、なかなか難しい場合も多いでしょう。


※債権者の承諾を得ていなくても、財産分与による所有権移転登記をしてしまうことは可能です。しかし、借入先に無断で名義変更をするのは、住宅ローン契約に違反する可能性が高いため注意が必要です。必ず、ローンの融資先の金融機関と話し合って決めるようにしてください。また、そこでは保証人の方も考慮する必要性が出てくるかもしれません。


4.まとめ

今回は「財産分与」による不動産の名義変更手続きと、融資を受けた住宅ローンの手続きについてお話をしてきました。離婚は当人同士の協議、調停・審判、裁判で片が付きます。特に協議書による場合には、今後の養育費等の取り決めをより実行してもらうために、「公正証書」によることをお勧めしております。


 不動産の所有権の名義の変更は、上記の書類があればできるのですが、当該不動産についている住宅ローンの債権を担保している抵当権の変更まで考慮する必要があります。


 財産分与による所有権移転の手続きをする前に、まずは、融資先の金融機関の担当者に相談をしてください。


 また、所有権の名義変更をする際に、現名義人の方がすでに別居されていて住所が異なる場合や、氏名が変更になっている場合には、所有権移転登記の前に、名義人の氏名・住所の変更登記が必要になります。


 詳しくは、専門家にご相談ください。


デジタル遺言制度が一歩前進

デジタル遺言制度が一歩前進

先日、「デジタル遺言制度」について、毎日新聞記事「遺言状もデジタルで 全文手書きの見直しを法制審に諮問へ」という記事を見つけましたのでご紹介いたします。


目次


1.デジタル遺言制度とは(令和6年2月13日 毎日新聞記事引用)

2.デジタル遺言で最も重要な点

3.まとめ

デジタル遺言制度が一歩前進

1.デジタル遺言制度とは(令和6年2月13日 毎日新聞記事引用)


「小泉龍司法相は13日の閣議後記者会見で、デジタル技術を活用して本人が遺言を作成できるようにする民法の見直しについて、15日に法制審議会(法相の諮問機関)に諮問すると明らかにした。現行は、遺言の全文を自書する必要があるが、デジタル化によって負担を軽減し、相続トラブルの防止につなげる狙い。小泉法相は「国民にとってより利用しやすいものにする必要がある」と述べた。

民法は、本人が遺言を作成する「自筆証書遺言」の場合、自ら全文と日付、氏名を手書きし、押印しなければならないと定める。

財産目録については2018年の民法改正で、パソコンでの作成・添付が認められたが、本文は対象とされていない。本人の真意に基づくことを担保するためだが、本文の全文手書きは作成時の負担が大きいとの指摘があった。

法制審では、パソコンをはじめとするデジタル機器を使った遺言書の作成方式が検討される。手書きと違って本人が書いた遺言と確認しづらくなるため、電子署名を活用したり、入力する様子を録音・録画したりする案も取り上げられる見込み。押印する必要性の検証やデジタル機器を使える範囲も議論されるとみられる。」(引用終わり)


今回の諮問で、具体的な案が浮上するかもしれませんね。


以前の日経新聞では、「法務省が年内に有識者らで構成する研究会を立ち上げ、2024年3月を目標に新制度の方向性を提言する。法相の諮問機関である法制審議会の議論を経て民法などの法改正をめざす。」(令和5年5月5日 日経新聞)」とありましたが、2024年3月って、法改正や制度の構築を考えると時間的に間に合いそうにはないですね。

デジタル遺言制度が一歩前進

2.デジタル遺言で最も重要な点


①フォーマットに沿って入力するので、形式的な理由で無効になることがない。

すでに、いろいろなサービスでフォームへの入力方式をとられていますが、今回のデジタル遺言制度も同様にフォーマットが用意されており、そこに入力する形で作成するみたいですので、自筆証書遺言のように自分なりの文章で書いたためにその内容が効力を生じないとはなり辛いと思います。

全くないとは、現段階ではどのような仕組みを使ってするのかがわかりませんので、あえて全くないとは言い切れません。


➁紛失がなく、ブロックチェーン技術を使えば、改ざん防止も可能。

デジタル空間で一番気になるのが、なりすましや改ざんといった不正行為のチェック機能だと思います。

そこは、どうもブロックチェーン技術を使うみたいですね。

ブロックチェーン技術とは、デジタル通貨ですでに実績のあるの技術ですね。改ざんがないことや所有者本人であることの証明をするための技術になります。


この2つの中でも、本人の特定を技術的にどのようにするのかが、一番重要になってくると思います。

第三者が勝手に作成・変更できるようでは、制度そのものが崩壊しますからね。

デジタル遺言制度が一歩前進

3.まとめ


デジタル技術を使った、「紙」媒体の法制度をデジタル化する流れは、もう止められないでしょうね。

会社の設立に関しても、電子証明書を獲得して、これを使うことで、印鑑の登録がない会社も出てきています。

私の周りでは、すごく少ないですが、すでに法制度として確立されています。

また、戸籍の取得も、各自治体管理から法務省一括管理となります。

こうなることで、最寄りの自治体窓口で、管轄外の戸籍も取得できるようになります。

相続に関連する手続きを円滑にするための施策は、今後も出てくると思います。期待したいところです。


備忘録)独立行政法人 住宅金融支援機構の抵当権抹消について

備忘録)独立行政法人 住宅金融支援機構の抵当権抹消について

昨年、一度、地元の金融機関からの依頼で「独立行政法人 住宅金融支援機構」の抵当権抹消登記の依頼があったのですが、県外から当該記事を見て問い合わせがあり、前回の抵当権抹消と少し異なる内容でしたので記録しておきたいと思います。


目次

1.令和5年に受けた住宅金融支援機構の抵当権抹消

2.今回、問い合わせがあった住宅金融支援機構の抵当権抹消

3.まとめ

1.令和5年に受けた住宅金融支援機構の抵当権抹消

(前提の状況)


 もともと、地元金融機関が3分の2、住宅金融支援機構の融資が3分の1であり、それぞれ独立した抵当権が2つある状態でした。抵当権抹消の対象は、地元金融機関の抵当権と住宅金融支援機構の抵当権、2つの抹消依頼でした。


 当然ですが、「解除証書」「委任状」は、地元金融機関のものと住宅金融支援機構のものの2種類ありました。その中の住宅金融支援機構の依頼主である方のお名前の肩書が「代理人」となっており、住宅金融支援機構の理事長の名前とも異なる方でしたので、代表者の名前と代表理事の肩書を申請データに入れ申請したところ、補正が入り、肩書「代理人」、氏名は解除証書と委任状に記載のある名前を記載するように指導がありました。


2.今回、問い合わせがあった住宅金融支援機構の抵当権抹消

 今回県外からの問い合わせは、住宅金融支援機構が100%融資し、その窓口(取扱店)が地元の金融機関といった構成になっていました。令和5年に受けた抵当権抹消とは少し条件が異なっています。つまり、本来であれば、抵当権者である「住宅金融支援機構」からの「解除証書」「委任状」となるはずが、取扱店の地元金融機関の代表印しかない「解除証書」と「委任状」だったという内容でした。


 私が連絡を差し上げたときには、管轄法務局に連絡した後だったそうですが、やはり抵当権者である住宅金融支援機構の押印がある「解除証書」と「委任状」でなければだめということだったそうです.


3.まとめ

 それでは、令和5年に私が抹消する前の抵当権の登記簿の記載は、以下の通りでした。

そして、私が住宅金融支援機構から預かった「解除証書」と「委任状」にあった記載については、以下の通りでした。(画像)

しかし、今回問い合わせがあった住宅金融支援機構の登記簿の記載は、上記と全く同じでしたが、「解除証書」「委任状」の記載は以下の通りでした。(画像)

こ取扱店の金融機関は抵当権者ではないので、これでは、登記は受け付けてもらえません。


 画像の記載では、取扱店である信用金庫の解除の意思はしていますが、抵当権者である住宅金融支援機構の解除の意思は、押印がないため表示されていません。


 この点が前回の申請の書類と大きく異なる点です。


 このように、抵当権の抹消にも、権利者の解除の意思表示がなければ登記申請の書類としては不適切です。「解除証書」「委任状」に記載されている名称とその代表の氏名、そして名称の法人の印鑑の押印により、解除の意思表示を確認します。ですので、住宅金融支援機構の押印がなければ、法務局側では、解除の意思表示とは見ていただけませんので注意が必要です。

相続登記義務化のポイント

相続登記義務化のポイント

令和6年4月1日に始まる「相続登記義務化」、すでにご存じの方も多いと思うのですが、法務局や司法書士会が、様々な場所で無料相談会を実施しています。

アイリスでも、随時無料相談を受け付けております。

義務化の影響として、相談件数は増加してきております。相談の内容として、相続登記義務化のポイントをお話したいと思います。


目次

1.相続登記義務化

2.相続登記義務化の罰則

3.相続登記義務化の対象範囲

4.まとめ

相続登記義務化のポイント

1.相続登記義務化

2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。

不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。

また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)


というのが概要です。


改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。

このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。

この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。

相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。

自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。

相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。


2.相続登記義務化の罰則


正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。


3.相続登記義務化の対象範囲


相続相談で、すでに相続が発生しているものについてのご質問がよくありますのでご説明いたします。

結論から言いますと、「過去の発生した相続についても今回の改正は適用」になります。


「(附則案 経過措置)第五条六項 新不動産登記方第七六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。(以下省略)」

「(附則 経過措置)第五条六項 施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日②施行日のいずれか遅い日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」


つまり、相続登記義務化前に、すでに相続が発生し相続による名義変更の登記をしていない不動産についても、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記をする義務が発生することになります。


また、相続登記義務化の不動産の対象は、土地・建物です。

相続登記義務化のポイント

4.まとめ


相続登記の義務化については、罰則があり「最大10万円以下の過料」に科される可能性があります。

対象範囲は、土地・建物ともに相続が発生した場合、相続登記が必要です。

土地だけではないので、注意してください。

また、過去に発生している相続についても対象となります。

相続登記を放置している場合には、速やかに専門家に相談してください。

アイリスでは、随時、相続に関する無料相談会を実施しております。

要予約となりますので、下記電話番号に連絡してください。

【電話番号】 087-873-2653(平日9時から19時30分の間)☆土日祭日も可 

相続対策について詳しく解説

相続対策について詳しく解説

相続対策をしているのとしていないのでは、大きな差が出てくる場合があります。特に、相続対策をしていなかったばかりに、相続発生後に遺産分割協議がまとまらないであるとか、相続税が思った以上にかかって大変といったことがあるかもしれません。今回は、一般的な相続対策についてご紹介いたします。相続税対策にも通じる部分もありますが、法律と税法は、似て非なる部分がありますので、法律面について解説いたします。


目次

1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか

2.相続対策①生前贈与

3.相続対策➁生命保険

4.相続対策③公正証書遺言

5.相続対策④養子縁組

6.まとめ

相続対策について詳しく解説

1.相続対策の必要性といつまでにすればいいのか


相続対策をする必要性は、周りで起こっている相続の問題をみればよくわかると思います。

やったらいいのはわかっているけど、まだ早いよと思いの方も多いのではないでしょうか。

この後、解説する相続対策について、自身が動けるうちにしておいた方が良いものもあります。今元気でも、相続対策を思いったった時も元気であるとは限りませんからね。

客観的な指標で言いますと、「平均寿命」と「健康寿命」があります。

「平均寿命とは「0歳における平均余命」のことで、2019(令和元)年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳です。 

一方、健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいい、2019(令和元)年の健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています。」(厚生労働省e-ヘルスネット記事引用)


どうでしょうか?意外と健康寿命の年齢が若いことに気づかれるかもしれません。


そうなんです。相続対策については、元気なうちに仕込んでおかないと、それ以上になりますと、気力的に持たないことが多いです。

無料相談会に参加された方たちの中にも、高齢になってから対策を考えて相談に来られる方も少なくないのですが、対策の手続きの話をすると「そんなに大変なら、やっぱりいいです。」となる方もいらっしゃいます。元気で、自身が動ける間に対策を始めることが大事です。


2.相続対策①生前贈与


生前贈与の効果は、亡くなった時点での個人財産を目減りさせておくことが目的です。

資産として現金が多い方は、現金での贈与でも構わないのですが、現金が少ない場合には、土地や建物、動産なども有効な手段です。

名義が記録としてきっちり残るものとして、土地、建物の不動産で、実際に生前贈与されている方もいらっしゃいます。

暦年贈与の110万円の控除額を念頭に入れ、税理士と相談をしながら「持分」形式で少しずつ所有権を子供又は孫に移転していく方法です。

今回は、対象ではありませんが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与制度」は、組み戻し期間が、3年から7年へ、大幅に延長され、対策が遅れてしまいますと、せっかくした生前贈与が無駄になってしまうかもしれません。早めの対策が必要になってきます。


相続時精算課税制度の110万円の控除を使った手法もありますが、こちらは税務署への届出が必要となります。専門家と相談しながら、進めてください。


3.相続対策➁生命保険


こちらも、現預金が多い方向けの相続対策となります。

生命保険に加入することで、その額を相続財産から減少させることができます。

ただし、保険に加入すればいいだけではなく、ここで重要となるのは「受取人を本人以外にしておくこと」です。

受取人を「子供」にしておいた場合、法律上、その支払われる保険金は、「子供の財産」となります。

税法上では、保険金は「みなし相続財産」となり、500万円×法定相続人の数を超える者についてのみ、相続財産とみなされます。

それでは、資産が全て現預金だけで、全額生命保険にしておけば、相続財産0じゃないの?と考える方もいるかもしれませんが、裁判所の判例では、半分を超える金額については、認められないものもありますし、30%しか認めていないものもあります。

その額と、状況によると思うのですが、あまりにもたくさんの財産を保険に切り替えるのはお勧めできません。


4.相続対策③公正証書遺言


遺言でもめた場合、争点は遺言者の意思能力に及びます。

自筆証書遺言(仏壇から出てきた手書きの遺言書など)は、作成された年月日によっては、認知症が疑われた時期などに重なっている場合には、問題となるケースが多いです。

そこで、アイリスでも、できる限りおすすめ割いているのが「公正証書遺言」の活用です。

自筆証書遺言と異なり、遺言者は(予約を取って)公証役場に出向くか、公証人に来訪していただくかの形になり、どの場合でも、公証人が読み聞かせ、「2人の証人」がいることは要件となっています。この場合、本人の意思能力について、全くないとは言えませんが、争点になることは少ないです。

アイリスで行う公正証書遺言サポートでは、専門家の司法書士が承認の一人となりますので、仮に裁判になった場合でも、証人として証言することも可能です。

また、元気な間に第1回目の遺言書を作成しておくことで、後にやっぱり変えたいと思ったときにも、変更することは可能です。


5.相続対策④養子縁組


これは、法律上では「遺留分対策」、そして、税務上では「相続税対策」として有名です。

法定相続人を増やすことで、各法定相続人に割り当てる相続分を少なくする方法です。

ここでも、法律上と税法上の違いがあります。


法律上では、養子にした場合でも、法定相続人の数え方は、全員「子供」としてカウントされますが、税法上では、①被相続人に実の子供がいる場合「1人まで認められます」、➁被相続人に実の子供がいない場合「2人まで認められます」となります。


法定相続人の人数の影響は、以下の場合に影響します。


 ①相続税の基礎控除額

 ➁生命保険金の非課税限度額

 ③死亡退職金の非課税限度額

 ④相続税の総額の計算


税法上は、5人養子にして基礎控除額を増やそうとしても、実子がいる場合は1人のみ、いない場合は2人までしか認められませんので注意が必要です。

相続対策について詳しく解説

6.まとめ


まとめると、相続対策は健康寿命を考え、元気なうちから対策を始めること、そして、大部分の対策が、相続財産の目減り効果を利用したものですので、専門家に相談の上、きっちり対策を講じていくことが重要となります。

アイリスでは、随時、無料相談を受け付けております。

また、相続について法律・税務無料相談会を月1で実施しております。

相続対策は、遅れると遅れるほど、採れる対策の種類が減少してきますので、是非ご活用ください。


一件一申請情報主義の原則とその例外について

一件一申請情報主義の原則とその例外について

連件申請に規定がないことはすでに述べましたが、登記には「一申請情報申請」「同時申請」「連件申請」というものが存在しています。

一つの申請に複数の申請をする場合などの例外的な扱いの要件について解説したいと思います。


目次

1.一件一申請情報主義と位置情報申請の例外

2.一申請情報申請の要件

3.一申請情報申請の可否

 3-1.一つの申請情報によって申請することができる場合

 3-2.一申請情報申請が法定されている場合

 3-3.一つの申請情報によって申請ができない場合

4.まとめ

一件一申請情報主義の原則とその例外について

1.一件一申請情報主義と位置情報申請の例外

一つの申請で複数の申請を登記申請する場合として「一申請情報申請」「同時申請」「連件申請」があります。


 ①一申請情報申請

同一登記所管轄区域内の数個の不動産につき同一の申請情報で登記申請することが認められるもの。同一の申請書に複数の登記申請情報が記載できるものをいいます。


 ➁同時申請

同一の不動産に関して同時に数件の登記申請がされ、同一の受付番号が記載されるもの。申請書は別になりますが、同じ申請で複数の申請を同一順位で登記されるものです。


 ③連件申請

連続して数件の登記申請がされ、連続した受付番号が付されるもの。別々の申請書を一つの申請でおこなうものです。

一件一申請情報主義の原則とは、登記の申請は、1個の不動産ごとに、格別の申請情報を作成すべきであるという原則をいいます。しかし、申請人の負担軽減と登記事務の迅速処理のため、一定の場合に一の申請の申請情報によって申請することが認められています。


「不動産登記令4条(申請情報の作成及び提供)

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」とあります。


しかし、この規定は「一申請情報申請」(一つの申請書に一つの申請情報)について述べています。


2.一申請情報申請の要件


 登記の一申請情報申請をするには、原則として次の要件を充たさなければなりません。


 (一申請情報申請の要件)

 ①管轄登記所が同一であること

 ➁登記の目的が同一であること

 ③登記原因及びその日付が同一であること

 ④申請人が同一であること


一件一申請情報主義の原則とその例外について

3.一申請情報申請の可否


一の申請情報によって申請ができる場合、できない場合、そして一申請情報申請が法定されているケースについて、具体例を例示します。


3-1.一つの申請情報によって申請することができる場合


①共同(根)抵当権の設定・変更、更正、抹消(昭39.3.7民甲588号)

(所有者を異にする場合も同様に一つの申請情報で可能です)(明32.6.29民刑1191号)(昭41.4.21民甲1119号)(昭42.3.12民甲305号)

➁共有者AB(別住所)が、同一の住所に変更する場合(登研575号)


  ③仮登記及びこれに基づく本登記を解除を原因として、その抹消登記を申請する場合

  (登記の目的:〇番所有権本登記及び仮登記抹消 となります)(昭36.5.8民甲1053号)

  ④A所有の土地すべてをBに売却。その中に権利証がなく事前通知による申請をする場合(昭37.4.19民甲1173号)


などが挙げられます。


 3-2.一申請情報申請が法定されている場合


  ①信託による不動産の所有権移転の登記と信託の登記(不動産登記令5条2項)

  ➁受託者が信託財産である不動産を処分・受託者の固有財産・信託終了などした場合の所有権移転登記と信託登記の抹消登記(不動産登記令5条3項、不動産登記法104条1項)

  ③公売処分による登記の嘱託(不動産登記法115条)

  ④民事執行法の強制競売による売却、又は担保権の実行による売却に基づく所有権移転と、それに付随する各種の抹消登記の嘱託(民事執行法82条1項)

  ➄民事保全法の処分禁止の仮処分の登記と、保全借り登記の嘱託(民事保全法53条2項)

  ※法定のものについては、「信託登記」と「裁判所の嘱託登記」であることが分かります。


 3-3.一つの申請情報によって申請ができない場合


  ①所有者が異なる数個の不動産を、同時に取得した場合(明33.8.21民刑1176号)

  ➁未登記不動産及び既登記不動産を同一の登記原因(売買、贈与など)により取得した場合(明33.12.28民刑2044号)

  ③単有名義から共有名義への所有権移転登記と、当該共有者間で定めた共有物分割禁止の定めがされた場合の共有物分割禁止の定めの登記を申請する場合(昭49.12.27民三6686号)

  ④根抵当権の相続による債務者の変更登記と指定債務者の合意の登記


 などが挙げられます。


4.まとめ


今回は、一申請情報申請について解説してきました。それでは、他の「同時申請」や「連件申請」についてはどうなのかと言いますと、「同時申請」については、登記の順位番号を同一にしてほしいというものですが、登記簿中の甲区の所有権ではありえず、乙区の担保権(抵当権など)で、使われる場合が多いです。

この場合の表記は、「1番(あ)抵当権、一番(い)抵当権」と記載されます。

そして、「連件申請」ですが、その中身は別々の登記であり、受付番号も申請順に割り当てられますので、一申請情報申請とは異なります

別々に登記することもできるのですが、便宜1つの申請で行うものです。

しかし、連件申請には、明確な規定がありません。不動産売買の決済などでは、「①名義変更」「➁担保権抹消」「③所有権移転」「④担保権設定」の順序で連件申請をします。なぜなら、④担保権設定には、金融機関の融資が新しい所有者になされており、登記申請後に発行される受付番号を迅速に知らせなければならないためです。

このように実務上、連件で行う必要の者もあれば、数次相続で祖父の土地と父親の建物を子が相続する場合、連件でなくてもいいのですが、添付する書類に共通する資料が多い場合には連件で申請することもできます。

ただし、全く性質の異なる複数の登記申請を連件申請した場合、一方を却下される場合もありますので、注意が必要です。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記の連件申請)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記の連件申請)

遺贈(相続人以外の方に遺言書で財産を贈与すること)発生時に被相続人の住所が異なる場合、数次相続発生の場合など、一つの相続に付随する登記があったり、複数の相続登記がある場合などに連件申請を行います。連件申請をする場合、共通する書類を1つの申請でできるのでよく使いますが、連件申請には要件はあるのでしょうか。お話をしたいと思います。


目次

1.連件申請とは

2.連件申請の要件

3.相続登記で連件申請が発生する場合

4.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記の連件申請)

1.連件申請とは

連件申請とは、複数の登記手続きを同時に行う事を言います。

基本的に相続登記をする場合には相続による所有権の移転などを登記することになります。

遺言書で法定相続人以外の方に遺贈をする場合など登記簿上の住所が異なると、事前に住所変更の登記がある場合はそれを行ってから登記をする必要があります。

相続後に不動産を売却した場合には相続登記後に売却の登記もする必要が出てくることがあるのです。

このような場合に複数の登記申請を同時に行う事を連件申請と言います。


2.連件申請の要件


連件申請の規定は、おそらくありません。不動産登記令4条に規定には

「不動産登記令4条(申請情報の作成及び提供)

申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」

と規定されており、これは、「一申請情報申請」(一つの申請書に複数の登記を記載する場合)についてに書かれたものです。

つまり、連件申請には明確な規定はありません。

連件申請についての規定がないのであれば、なんでも複数登記を1つの申請に連権で入れればいいじゃないかというと、そうではありません。

例えば、「氏名や住所の変更・更正登記」が挙げられます。「氏名や住所の変更・更正登記」を先順に位置付けて「所有権の移転登記」を行うわけです。

なぜなら、所有権を移転するには、登記名義人が義務者となり、印鑑証明書が必要となりますが、そこに記載される「住所」や「氏名」が変わっていた場合、いきなり所有権移転登記はできません。

却下事案となってしまいます。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記の連件申請)

3.相続登記で連件申請が発生する場合


相続関連の遺言書による遺贈の所有権移転についても、名義人の氏名又は住所が、登記簿上の氏名又は住所と異なる場合には、氏名又は住所の変更・更正登記をしなければ遺贈の所有権移転登記はできません。

 一方で、法定相続人間で遺産分割協議をして協議を基に相続登記を実施する場合には、登記名義人である被相続人の氏名及び住所と公的文書(除籍謄本、戸籍謄本、除票、戸籍の附票)から確認します。

ですので具体的な変更登記は不要となります。

2.で説明した通り、連件申請には具体的な規定がないため、3.の事例以外のケースでは、制限は少ないです。

例えば、祖父名義の土地と、父親名義の建物があった場合で、祖父も父親も死亡しているケース(祖父の次に父親が亡くなっているとします)では、連件申請できるのでしょうか?

結果から言えば、連件申請できます。連件申請のメリットは、共通する添付書類をまとめることができる点です。後順番の相続登記の添付書類の欄に、「前件添付」とすればいいからです。ただし、すべての書類が「前件添付」記載でできるわけではないので注意が必要です。


4.まとめ


連件申請には具体的な規定が存在していないので、基本出来ますが、事案によっては、その順番が重要になってくる場合がある点には注意が必要です。

また、連件申請のメリットである添付書類をまとめることができる点についてですが、それぞれの申請の内容を見て判断をする必要があります。

全く同じ書類をすべて前の申請の添付書類を参照してほしい場合には、後順番の添付書類の後に「(前件添付)」と記載します。

一方で、上記事例のように祖父の相続登記の書類の一部を父親の相続登記の資料として参照してほしい場合には、「(一部前件添付)」という記載になります。具体的には


(祖父の相続登記の添付情報の記載)

 登記原因証明情報(一部原本還付)

 住所証明情報(原本還付)

 代理権限証明情報


(父親の相続登記の添付情報の記載)

 登記原因証明情報(一部前件添付)

 住所証明情報(原本還付)

 ※祖父の相続も父親の相続も同じ相続人が引き受ける場合には(前件添付)

 代理権限証明情報


という記載になります。


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令和6年4月1日相続登記義務化(実印に関する話)

実印に関する話

先日、遺産分割協議書を作成し署名と実印による押印を実施したのですが、印鑑証明書と照合すると、明らかに印影がかけた状態のものがありました。他の書類も確認したのですが、すべて印影の丸枠のほとんどが出ていない状態でしたので、実印の現物を確認すると、完全に欠けている状態でした。このような場合、どのような対応をすればいいのか、実体験をもとにお話をいたします。


目次

1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)

2.印鑑がかけている場合の対応

3.まとめ

1.登録する印鑑の印影の制限(香川県高松市役所)

これは、私が香川県の高松市役所HPの内容と、今回の事案の問い合わせについての話をしたいと思います。


 香川県高松市役所での取り扱い


  まずは印鑑を登録できるのは、高松市に住民登録がある15歳以上の方


※意思能力のない方は、印鑑登録をすることができません。


  ※成年被後見人の方は、本人が窓口にお越しになり、法定代理人(成年後見人)が同行している場合に限り、申請することができます。


  そして、登録できる印鑑は一人1つです。


  住民票に旧姓(旧氏)併記を申請し、記載された方は、旧姓(旧氏)でも印鑑登録ができます。


  一方で、登録できない印鑑については、


  ①住民登録している氏名と異なるもの


➁職業、資格など、氏名以外の事項を表しているもの


③自己流のくずし文字、極端な図案化などで、本人の氏名を表してないもの


④印影の大きさが、一辺の長さ8ミリメートルの正方形に収まる小さなもの


➄印影の大きさが、一辺の長さ25ミリメートルの正方形に収まらない大きなもの


⑥ゴム印など変形しやすいもの


⑦輪郭がないもの又は30%以上欠損しているもの


⑧竜紋や唐草模様等を外郭としたもの


⑨押印すると文字が白くなるもの(逆さ彫り印)


⑩同一世帯内の方が既に登録しているもの


 ※⑦輪郭が仮に20%あれば登録できるのかと言いますと、高松市役所では、登録を控えていただくように話をしているようです。(問い合わせで確認)


2.印鑑がかけている場合の対応

 高松市への問い合わせで、輪郭部分がかなりかけた印鑑でしたので、かけた状態での登録はできないと言われました。そこで、印鑑屋に同行し、新たに印鑑を購入いただき、その足で市役所窓口に行き、買った印鑑を登録し印鑑証明書を取得しました。


 本人が行った場合、数十分で印鑑証明書まで発行されますが、本人以外の代理人の場合、


「登録者ご本人宛に郵送による照会をしますので、登録までに1週間程度かかります。


 窓口には、申請時と回答書持参時の2回、お越しいただくことになります。」とのことで、すぐに印鑑証明書を取得することはできません。注意が必要です。


3.まとめ

 相続で必要となる添付書類である遺産分割協議書には、実印で押印の上、印鑑証明書を添付します。もちろん、印影と実印が異なる場合には、相続登記はできません。


 ご高齢になられ、「もう必要ないだろう」と、実印がかけたままにされている方もいらっしゃるようですが、相続は、いつ発生するかわかりません。かけた実印を所有されている方は、今のうちに印鑑登録のやり直しをすることをお勧めいたします。

令和6年4月1日相続登記義務化(「相続登記しなくてもバレませんよね?」)

令和6年4月1日相続登記義務化(「相続登記しなくてもバレませんよね?」)

先日、とある方から質問を受けました。「相続登記をしなくてもバレませんよね?」。話を聞くと、ずいぶん長く相続登記を放置した不動産がある様子でした。専門家としては、相続登記はできるだけ早く済ましておかないと、時間の経過で相続関係が複雑になると、コストが跳ね上がるので、相続人が把握できている段階で相続登記をしましょうというのですが。本当にばれないんでしょうか?

目次

1.長期相続登記未了土地についての国土交通省及び法務局の対応

2.根拠となる法令等

3.いつから対応しているのか

4.通知書が届いたら

5.まとめ


1.長期相続登記未了土地についての国土交通省及び法務局の対応


「登記官は、起業者(土地収用法第8条第1項)その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求めに応じて調査した結果、当該事業を実施しようとする土地が「特定登記未了土地※」に該当し、かつ、所有権の登記名義人の死亡後政令で定められた期間超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地(「長期相続登記等未了土地※1」といいます。)の所有権の登記名義人となり得る者を探索しています(法第44条。所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和4年法律第38号)により、第40条から改正。)。

法第44条では、死亡後の期間を10年から30年とされていますが、令第13条では10年と定められています。」となっています。


※1特定登記未了土地とは

所有権に係る相続登記等がされていない土地であって、収用適格事業の実施その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るために、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものを言います(法2条4項)。

また、令和4年4月1日より、民間が行う事業のうち、法律上の根拠(土地区画整理法・都市再開発法等)のある事業であり、公共性の高いもの(土地区画整理事業・市街地再開発事業等)についても要望受け入れの対象となっています。

これらの土地で、長期相続登記がなされていない特定登記未了土地が存在した場合には、各法務局は入札を経て(司法書士が対応することが多い)、法定相続人の調査を実施し、法定相続人情報を作成して戸籍とともに納品する手順になっています。

法定相続人情報には作成番号が付されて法務局で保管されます。そして登記官は、職権で「所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨」の付記登記※2を行います。

法務局は調査対象区域の事前調査により同一登記名義人の土地を把握しており、同一登記名義人が所有(共有)する土地には全て付記登記がなされることになります。


※2長期相続登記未了土地である旨の付記登記


(画像)

令和6年4月1日相続登記義務化(「相続登記しなくてもバレませんよね?」)

この付記登記だけでは、法定相続人の方は認知できませんので、「通知書」が送付されることになります。

この通知書により、法務局の窓口に相談、法定相続情報を取得して、相続登記をすることになります。


2.根拠となる法令等


 法 :所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

 令 :所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令


 省令:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等に規定する不動産登記法の特例に関する省令

 通達:所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達)


上記法令等により国土交通省及び法務省が対応をしております。


3.いつから対応しているのか


 法務省・法務局における所有者不明⼟地問題の解消に向けた取組として、⻑期相続登記未了⼟地の解消に向けた仕組みの創設を平成30年11⽉15⽇から施⾏されています。


4.通知書が届いたら


法務局から任意の相続人に対して「長期相続登記等がされていないことの通知」が届くことがあります。

この「長期相続登記等がされていないことの通知」が届いたら、その通知を持って管轄法務局へ行き、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)やすでに調査により判明している法定相続人情報を閲覧することをお勧めします。

この法定相続人情報の閲覧には、通知に記載されている法定相続人情報の「作成番号」、運転免許証などの本人確認書類、閲覧手数料(450円)が必要となります。

また法定相続人情報があれば、本来相続登記で必要となる戸籍謄本を省略して相続登記をすることができます。

令和6年4月1日相続登記義務化(「相続登記しなくてもバレませんよね?」)

5.まとめ


このように、相続登記を放置していても、行政、民間で公共性の高い開発をする際には、長期相続登記未了土地が存在する場合には、相続人の調査が入り通知書が送付されます。

長い間、相続登記が放置されたことによって相続人が増え、今まで聞いたことがなかった親戚の名前が載っているかもしれません。

そのような場合には、お近くの司法書士事務所、または法務局へぜひご相談ください。

分かりやすく説明されることで気持ちも軽くなると思います。

令和6年4月1日相続登記義務化(法定単純承認とは)

法定単純承認とは

熟慮期間(相続開始を知った時から原則3ヵ月以内)に相続人が相続放棄または限定承認の手続きをしなかった場合や、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに、相続人が当然に相続を単純承認(被相続人の権利義務を無制限かつ無条件に承継)したものとみなされる制度となります。知らない間に、せっかく手続きをした相続放棄や限定承認が無駄になります。そうならないためにも、判例等の事例を解説いたします。


目次

1.法定単純承認とは

2.相続財産の処分とされた判例等

3.民法921条3号の問題とは

4.まとめ

1.法定単純承認とは

法定単純承認とは、熟慮期間(相続開始を知った時から原則3ヵ月以内)に相続人が相続放棄または限定承認の手続きをしなかった場合や、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに、相続人が当然に相続を単純承認(被相続人の権利義務を無制限かつ無条件に承継)したものとみなされる制度と、熟慮期間(相続開始を知った時から原則3ヵ月以内)を徒過した場合に「法定単純承認」により、単純承認(財産も債務もすべて引き受ける)したものとみなされます。


①相続財産の処分


「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。(民法921条1号本文)」


 「ただし、保存行為や短期賃貸借は除かれる。(民法921条1号但し書き)」


 ➁考慮機関の徒過


 「相続人が民法915条1項の考慮機関内に限定承認または放棄をしなかった場合、単純承認したものとみなされます。(民法921条2号)


そもそも➁のケースでは、考慮期間中に、相続放棄も限定承認もしなかった場合ですが、①のケースでは、すでに相続放棄や限定承認を認められていても、その効力を失う場合がありますので、相続財産の処分には、注意が必要です。

2.相続財産の処分とされた判例等

①処分とは、限定承認又は相続放棄をする以前の処分に限られ(大判昭5.4.26)、それ以後に処分したときは、民法921条3号の問題となります。(この点については3.で述べます)

 ➁相続人が相続財産である「金銭債権を取り立てこれを消費する行為」は、法定単純承認事由である「相続財産の一部を処分したとき」(民法921条1号本文)に該当する。(最判昭37.6.21)

 ③法定単純承認事由である「相続財産の処分」は、相続人が被相続人の「死亡の事実を知った後」か、「確実に死亡を予想しながら」したものでなければならない。(最判昭42.4.27)


 ④処分には、「法律的処分」だけでなく「事実的処分」も含む。


  放火は「処分」に含まれますが、失火・過失で滅失させた場合は含まれません。


 ➄保存行為。短期賃貸借は含まない。


  ㋐保存行為について、修繕・時効更新手続き等・不法登記の抹消請求が例として挙げられています。


  ㋑短期賃貸借は管理行為に該当するが、相続財産の管理人としての立場がある(民法918条)ので、その行為をもって単純承認とすることはできない。


 ⑥未成年である相続人の親権者が相続財産を処分した場合は該当する。


  未成年者=法定代理人(親権者)とみています。つまり、「処分」について法定代理人で見ているということになります。


 ⑦一部について処分があれば、他の相続財産についても放棄はできなくなります。


3.民法921条3号の問題とは

 「相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。 ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」となっています。


 詳しく言いますと、相続人が限定承認または放棄をした後に、相続財産の一部を隠匿し、私に(自分勝手にほしいままに)消費し、悪意で財産目録に記載しなかったとき、原則として、単純承認したものとみなされてしまいます。


 相続人が限定承認をする場合に、債務の引き当てとなるべき財産を明確にするために作成する財産目録を作成しますが、現金や預金、動産、不動産といった積極財産だけでなく、消極財産(債務など)も記載しなかった場合にも民法921条3号の適用がありますので注意が必要です。(最判昭61.3.20)


4.まとめ


 基本、相続財産の処分は、限定承認または放棄を申請する前の話をしていますが、限定承認又は放棄を受けたのちも、処分する行為をしないようにしないと、法定単純承認となり、単純承認(財産も債務もすべて引き受ける)とみなされてしまいますので、相続財産について何もしないことが大事です。


 かつて、予備校講師の司法書士先生が話していた内容になるのですが、被相続人の「形見」を財産目録に記載していなかったために、限定承認が取り消されたと話をしていました。これくらいは、という気持ちにはなるかもしれませんが、それ相応のリスクを伴います。


 不明な点は、専門家に必ず相談するようにしましょう。

令和6年4月1日相続登記義務化(根抵当権の相続登記の申請)

令和6年4月1日相続登記義務化(根抵当権の相続登記の申請)

先日、収益物件の相続登記の際に、債務者を被相続人とする共同根抵当権が被相続人の個人債務者として設定されていました。当然土地・建物の相続登記はする必要がありますが、根抵当権の場合どのように対応をすればいいのでしょうか。解説していきます。


目次

1.根抵当権と抵当権の違い

2.相続発生後6ケ月以内にできる対応

3.相続発生後6か月経過後にできる対応

4.まとめ


1.根抵当権と抵当権の違い


(抵当権)

抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。

担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。

つまり、「借入金=抵当権で担保する債権」ということになります。

抵当権の債務者に相続が発生した場合には、相続による債務者の変更の登記が必要になります。


(根抵当権)

根抵当権とは抵当権の一種であり、複数回の貸付・借入を行う契約において利用されます。根抵当権では、担保となる目的物から貸付の限度額を定め、その範囲内で貸付・借入を行います。

抵当権は、一度の貸付・借入ごとに設定する必要があり、同じ債務者・債権者同士で契約を行う場合でも、その都度、抵当権を設定しなければなりません。

しかし、根抵当権であれば、貸付限度額の範囲で何度でも貸付・借入を行えます。カードローンの借り入れに似ています。

要は、借入金も担保されますが、それ以外に借りた借入金も担保でき、発生消滅を繰り返しても、根抵当権の効力は継続します。


抵当権の場合、借入金を全額返済した場合、抵当権はその担保権としての効力が無くなり抵当権を抹消することができます。

一方で、根抵当権の場合には、元本確定事由が発生しない限り、債務を全額返済しても根抵当権の効力は無くなりません。この点が一番抵当権と異なる部分です。勿論、債務者が債権者である金融機関等と話をして、根抵当権がもう必要なければ、「解除」により抹消することは可能です。

令和6年4月1日相続登記義務化(根抵当権の相続登記の申請)

2.相続発生後6ケ月以内にできる対応


(元本を確定させないための登記)

元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。

金融機関と相談した上、指定債務者を選び登記するように指定があった場合、指定債務者の合意の登記をするためには、その前提として被相続人の相続人全員を債務者とする債務者の変更登記をしなければなりません。

つまり、①相続人全員の債務者変更登記、➁指定債務者の合意の登記、の2回の登記が必要となります。債務者の変更の登記となりますので、登録免許税は、共同根抵当権が設定されている物件の数×2回分×1000円となります。


 また、相続発生から合意までの間の各相続人が承継した債務を担保するためには、さらに③債権の範囲の変更登記も必要になります。


(事例)

 根抵当権者X銀行、債務者Yの根抵当権があり、Y所有の不動産があったとします。Yの相続人はA,Bで、Aが不動産を遺産分割協議で相続登記をしているものとします。


 ①相続人全員の債務者変更登記

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  変更後の事項 債務者(被相続人 甲) A B


 ➁指定債務者の合意の登記

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  指定債務者 A


 ③債務者及び債権の範囲の変更登記

 「登記権利者 X銀行

  登記義務者 A

  変更後の事項

  債務者 A

  債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権

        ○年○月○日債務引受(旧債務者B)にかかる債権

        ○年○月○日相続によるAの相続債務のうち変更前根抵当権の被担保債権の範囲に属するものにかかる債権


AがYの相続により承継した債務及びBが相続した債務を免責的に引き受けたものにかかる債務は根抵当権によって担保されませんので、特定債権として追加する必要があります。債務者をAとする変更登記は交替的変更となりますので、変更前に生じたXのAに対する債権の範囲に属するものにかかる債権も根抵当権によって担保されることになります。


 元本確定前の根抵当権において、債務者が変更した場合、新たな債務者の債権は担保するものの、今までの債権は外れてしまいますので、このような特定債権として、根抵当権の債権の範囲を変更することで、根抵当権の担保範囲に加えることができます。


3.相続発生後6か月経過後にできる対応


先にも書いた通り、元本確定前の根抵当権の債務者が亡くなったときは、相続開始後6カ月以内に指定債務者の合意の登記をしないと担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされます。

元本が確定すると、その後は通常の抵当権のように相続時の債権を担保する抵当権と同じになりますが、極度額まで「利息」「遅延損害金」を担保することができます。当然、相続後に発生した債権については、当該根抵当権では担保できなくなってしまいます。そして、確定後の債務を全額返済すれば、根抵当権は効力を失います。


それでは、具体的にどうなるのかと言いますと、以前のブログの抵当権の債務者の相続と同じ手順で行うことになります。

金融機関から指定があると思うのですが、①遺産分割協議による相続登記を行う方法と、➁相続登記後に免責的債務引受による債務を承継する相続人の債務引受けの登記の2種類となります。


これらの登記は、元本が確定していないとできませんので、相続発生から6か月経過後に行うことができます。

令和6年4月1日相続登記義務化(根抵当権の相続登記の申請)

4.まとめ

以上が、根抵当権の債務者の相続による変更登記の内容です。

抵当権と比較すると、元本確定前の「指定債務者の合意の登記」が特殊ですね。

また、債権が発生消滅を繰り返しているので、相続発生時を基準に「債務者と債務の範囲の変更登記」も必ず考えなければなりません。

一方で、元本が確定してしまった場合、通常の抵当権と同じ扱いになっていることが分かります。

前回実務で、相続不動産に個人債務者の共同根抵当権が設定されており、相続人と金融機関との話し合いで、元本確定する方向で決まりましたので、6か月経過後に債務引受の遺産分割協議により登記原因証明情報を作成し登記を実行いたしました。

このように根抵当権の債務者の相続は、かなり複雑ですので、金融機関とご相談の上、専門家に相談することをお勧めいたします。

アイリスでは、「アイリスDEいい相続」の無料相談会を随時実施しております。また、ワンストップの相談会「相続法律・税務無料相談会」を月に1度実施しておりますので、是非ご活用ください。

令和6年4月1日相続登記義務化(抵当権の債務者の相続登記)

住宅ローンが残った状態で亡くなった場合の相続登記として、土地・建物の名義変更は当然なのですが、住宅ローンの借入金を担保している抵当権の債務者の変更登記も必要となります。この辺りについて解説したいと思います。

目次

1.抵当権とは

2.債務者の変更する2種類の登記

3.まとめ

1.抵当権とは

抵当権とは、住宅ローンで融資を行う金融機関が、借入を受ける人が購入する不動産などをローンの担保として設定する権利のことです。


担保となる不動産などは債務者が利用できますが、もしローンを返済できなくなった場合は、代わりに担保に設定された不動産を金融機関に差し押さえられます。


 つまり、「借入金=抵当権で担保する債権」ということになります。


 抵当権の債務者に相続が発生した場合には、相続による債務者の変更の登記が必要になります。この登記を実現するためには、2通りのやり方があります。ほとんどの場合、債権者である金融機関から指定があると思います。


2.債務者の変更する2種類の登記

①遺産分割協議による方法


 債権者(金融機関)の承諾を得て、遺産分割協議によって相続人の一人が債務を承継する、抵当権変更登記のやり方です。登記申請書は、1件で済みます。


具体的には、「債務は、相続人全員が法定相続分によって承継し、遺産分割協議の対象とはならない」とされていますが、これは債権者保護を考えてのことなので、債権者が承諾するのであれば、債務の遺産分割協議も有効にすることができます。


遺産分割協議の効果は相続開始時にさかのぼるため(民法第909条)、債務を引き受けた相続人は、被相続人の死亡日にさかのぼって債務を承継することになります。


抵当権変更登記申請のやり方ですが、「〇年〇月〇日相続」を原因として、1件の登記申請によって、債務者を特定の一人の相続人に変更できます。


「〇年〇月〇日相続」の日付は、被相続人の死亡日です。


「変更後の事項」は、「債務者」として、債務を承継することになった相続人の住所氏名を記載します。


登記申請の添付書類としては、報告形式の登記原因証明情報があれば、相続を証する戸籍謄本や遺産分割協議書の添付は必要ありません。


➁免責的債務引受による方法


 第1に、相続を原因として、債務者を共同相続人全員に変更する抵当権変更登記を行い、その次に、相続人の一人が免責的債務引受を行ったことによる抵当権変更登記を行うやり方です。登記申請書は、2件必要です。


1件目の抵当権変更登記申請で、「〇年〇月〇日 相続」を原因として、債務者を相続人全員(ここではABCの3人)に変更します。


2件目の抵当権変更登記申請で、「〇年〇月〇日 B及びCの債務引受」を原因として、債務者をAに変更します。この2件目の免責的債務引受については、債権法改正により、法務省より通達(令和2年3月31日付法務省民二第328号)が出ています。


 ※免責的債務引き受けをする場合には、次の4パターンが考えられます。ここでは(X債権者、Y債務者、Z引受人)とします。当然その債務の性質は、「他人が変わって履行することができる債務であること」です。住宅ローンのような金銭債務の場合は対象となります。さて、契約のパターンと、効力が生じる要件についてお話をいたします。その内容は、


(免責的債務引受契約の契約当事者と契約が有効になる要件)


 ①XYZの三者間の契約


  問題なく有効となります。


 ➁X(債権者)Z(引受人)間の契約


  (民法472条2項)により、Y(債務者)の意思に反しても可能です。ただし、X(債権者)からY(債務者)に対して「通知」した時に効力を生じます。


 ③Y(債務者)Z(引受人)間の契約


  (民法472条3項)により、X(債権者)の承諾があれば有効です。


 ④X(債権者)Y(債務者)間の契約


  Z(引受人)の意思に反してはできません。


債務を引き受ける契約はこれでいいのですが、実際に担保権(ここでは抵当権)を移転する場合の注意点は、


 ①引受人への担保権の移転


  債権者は、免責的債務引受によって債務者が免れる債務に設定された担保権(抵当権)を移転することができます。(民法472条の4第1項)ただし、当該担保権を設定した者が引受人以外の場合の者である場合には、その者の承諾(担保権移転の意思表示)を得なければならない。(民法472条の4第1項但書)


 ➁引受人に対する意思表示


  担保権の移転は、免責的債務引き受けを行うよりも前に又は同時に、引受人に対する意思表示によって行わなければならない。(民法472条の4第2項)


 ③保証人の承諾


  債務者の債務に付された保証債務を引受人の債務を担保するものとして移すためには、保証人の承諾を要する。(民法472条の4第3項)保証人の承諾は、書面又は電磁的記録でしなければならない。(民法472条の4第4、5項)


※令和2年の債権法改正の論点になります。詳しくは専門家にご相談ください。


3.まとめ

 このように、免責的債務引受けの場合、単純に債務を引き受けてもらうだけの契約をしてその内容を登記するだけ、とはなりません。相続が発生した場合、金融機関への相談及び専門家に相談を必ずするようにしてください。 


令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の対象範囲)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の対象範囲)


相続登記義務化の施行日に近づくごとに、問い合わせが増えています。その中で、ご質問が多い「義務化の対象範囲」について、再度、解説をしたいと思います。


目次

1.相続登記義務化の発端

2.相続登記義務化の対象範囲

3.まとめ



1.相続登記義務化の発端


Q1.知りませんでした!不動産(土地・建物)の相続登記が義務化されるのはなぜですか?


 「相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や公共工事の訴外など、社会問題になっています。この問題解決のため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。」(法務省パンフレット引用)


東日本大震災後の復興作業の際、土地の所有者を特定するために大変苦労したということがあったみたいです。

実際に、仙台などで各地の司法書士を臨時の公務員として雇い、相続人の調査を行い所有者を特定していったという話を聞きました。そのため、復興作業が大幅に遅れたそうです。この時問題になったのが、任意である相続登記の放置です。現在、所有者不明土地の面積は、九州と同じ面積だそうです。

これが原因となり、今回の相続登記義務化の流れになっています。


2.相続登記義務化の対象範囲


 Q2.相続登記の義務化とは、どういう内容ですか?


 「相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得できたことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。

  正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

  遺産分割の話し合いで不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に、登記をする必要があります。」(法務省パンフレット引用)


 Q3.義務化が始まるのはいつからですか?始まった後に、対応すれば大丈夫でしょうか?


 「「相続登記の義務化」は、令和6年4月1日から始まります。ただ、今から備えておくことが重要です。

  また、令和6年4月1日より以前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります(3年間の猶予期間があります。)ので、要注意です。」(法務省パンフレット引用)


 これらの質問で、不動産の対象範囲が土地だけだと勘違いされている方が、意外に多いです。おそらく、相続登記義務化の発端となったのが「所有者不明土地問題」だからだと思いますが、相続登記義務化の対象範囲は、不動産(土地・建物)です。


質問内容にもあったのですが、義務化が始まってからやればいいというお話がありましたが、今元気な方でも、時間の経過により状況は変わってきます。

亡くなった場合には、さらに相続人が増えるケースや、認知症などになってしまい、遺産分割協議の際に成年後見人の申請が必要になったりする場合があります。

相続人の調査や成年後見人を就けるにも、それなりのコストが発生してしまいます。早めの対処が、「安心」をもたらしてくれます。

早めに相続の対応をするように心がけてください。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の対象範囲)

3.まとめ


「相続登記義務化」のキーワードを知っていても、その中身まで詳しく知っている方はなかなか見たことがありません。

アイリスでも、相続無料相談や相続法律・税務無料相談会、無料セミナーなどを通じて、啓蒙活動を実施しております。

身近の人や親せきの方で専門家以外の方は、専門家ではありません。

以前、ご相談を受けた際、かたくなに相続登記は土地だけでいいとおっしゃる方がいました。どうして、土地だけなのか聞いてみますと、「詳しいおじさんが、土地の名義だけ変更すれば義務は免れると言っていた。」とおっしゃっていました。そこで、法務局が出しているパンフレットを見せて、相続登記義務化の範囲が不動産(土地・建物)であることを伝えると、両方相続登記をしてくださいという話になりました。

このように、情報ソースを誤ると誤った判断のもとに行動してしまう恐れがありますので、必ず専門家への相談をするようにしてください。


令和6年4月1日相続登記義務化(名義人の住所の表記について)

先日、住民票の住所に「○〇方」という表記がありました。相続登記のような名義人を変更する場合、申請の際に住民票を添付するのですが、果たして住民票に記載されている表記すべてを名義人の住所として記載する必要があるのかについて解説したいと思います。


目次

1.住民票の表記

2.アパート・マンション・〇〇方

3.まとめ

1.住民票の表記

  最近、住所に関する質問や間違いが多いので、少し解説したいと思います。

「〇丁目」の表記ですが、「一丁目(漢数字)」「1丁目(アラビア数字)」のどちらで登記すればいいのでしょうか?この場合は、必ず漢数字になります。たまに、住民票上の住所は「1丁目」なのに間違っているとおっしゃる方がいらっしゃいますが、「××〇丁目」は固有名詞と解されている(例えば「錦町二丁目」)ので漢数字を使うようです。


 ここ何年かで町名がアラビア数字で表記されている住民票や印鑑証明書をたまに見かけることがありました。確かに、役所の文書の表記が正しいと思ってしまうのは、当然と言えば当然なのかもしれませんね。


2.アパート・マンション・〇〇方

 マンションの住民票の住所の表記は、少し特徴があります。住所の表記として、「〇番〇号××マンション101号」「〇番〇-101号××マンション」のように、「号」が来る位置が違ったり、マンション名があったりなかったり、部屋番号があったりなかったりしています。現に私の住まいも「〇番〇-101号××マンション」という表記になっています。


これがアパートと呼ばれる建物になりますと、「〇番〇号××アパート」という表記が一般的です。過去に登記した資料を確認すると、アパートの場合は確かにこのような表記になっています。


それでは、マンションやアパートの名義変更の際に登記すべき住所の表記はどのようなものになるのでしょうか。実務では、「~号」までは必ず登記しなければならず、それ以下は任意で登記できることになっています。ですので、「〇番〇-101号」なのに「〇番〇号」と登記することはできません。必ず部屋番号まで含めた〇―101号と登記しなければならないわけです。末尾のマンション名は登記してもしなくても構いません。


最後に、「○〇方」という表記の場合には、どのようにすればいいのかお話をしたいと思います。この「○〇方」ですが、役所への申し出によって表示することや表示しないことができます。そのため、住所としては必ず表記しなければならないものではありません。よって、登記も同じということになりますので、住民票に(住所)○〇方の場合、(住所)のみの表記で登記申請しても受理されます。


3.まとめ

 まとめますと、


 ①「〇丁目」の表記は、不動産登記を申請する場合は漢数字での表記となります。


 ➁「〇番〇号」までが不動産登記の住所表記しなければならない範囲となるため、アマパート、マンション名の表記は省略することができます。ただし、部屋番号が号の表記に含まれる場合には、部屋番号までが登記の際に表記しなければならない範囲となります。


 ③(住所)「〇〇方」の場合、「〇〇方」の表記は任意となります。


 住民票や印鑑証明書に記載されている住所を全部登記に反映しなければならないと思われている方もいますが、実は上記のように、省略することも可能な部分もあります。

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。すでに相続が発生している場合も対象になります。義務化されますので、罰則も規定されています。アイリスでは、「相続の不安」を少しでも軽減するために、セミナー、無料相談会を通じて情報を発信してまいります。


目次

1.相続登記義務化の概略

2.相続登記義務化の罰則

3.相続登記義務化の対象範囲

4.相続法律・税務無料相談会のご案内

5.生前対策についてのご相談


令和6年4月1日から相続登記が義務化されます

1.相続登記義務化の概略


2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。

 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)

というのが概要です。


2.相続登記義務化の罰則


 先にも記載しましたが、法令で相続登記が義務化されましたので、「罰則」が存在します。

 罰則の内容は、「正当な理由なく相続登記を怠った場合、最大10万円の過料」が科せられます。過料を支払ったからと言って、相続登記の義務を免れるわけではありません。ご自身で相続調査を行い相続登記を行うか、専門家である司法書士に依頼するかの選択に迫られます。

司法書士に依頼する場合、10万円から15万円ほどの手数料がかかります。(相続による所有権移転登記に必要な登録免許税は、専門家に頼んでも、ご自身で登記を申請してもかかる必要な税金となります。手数料は登録免許税額を除いています。)

 早めに専門家に相談をして、義務化に備えるようにしてください。


3.相続登記義務化の対象範囲


すでに相続が発生している場合についてのご質問が多く寄せられていますが、過去の発生した相続も、この度の相続登記義務化の対象となります。

誤った情報を聞いて相談される方が多くいます。法律に詳しい親戚や近所の方は専門家ではありません。

必ず、専門家(司法書士等)や行政の無料相談会等をご活用いただき、正しい情報を得てください。

また、数代にわたり相続登記が実施されておらず、相続人がどなたかわからないケースもよく見ます。この場合、相続人の調査が広範囲にわたる場合には、専門家に必ず相談をして、相続人を特定するようにしましょう。費用は掛かりますが、自分で判断するのはかなり難しいです。

 なぜ相続人の特定が必要なのかと言いますと、「遺産分割協議」を行い、将来処分することも含めて、当該不動産を管理可能な相続人に所有権を移すために必要となります。遺産分割協議の要件は、相続人全員で協議することです。そのため、相続人が全員特定できていない遺産分割協議は無効となりますので、必ず専門家に相続人調査の依頼をしてください。

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます


4.相続法律・税務無料相談会のご案内


 アイリスでは、ワンストップで相続を解決するために、相続登記などの法律・相続税などの税務について、合同の無料相談会を月1(第三水曜日)に開催しております。

時間帯は3つで、すべて予約制となりますので、事前に電話でご予約ください


ご予約・詳細はこちらをクリック!

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相続無料相談会

令和6年4月1日から相続登記が義務化されます

5.生前対策についてのご相談


 アイリスでは、相続登記に関するご相談以外にも、相続の生前対策のご相談を受け付けております。こちらも予約制となっておりますので、電話で確認の上、アイリス国際司法書士・行政書士事務所まで来訪ください。


(生前対策として)


①遺言書作成サポート

➁家族信託

③生命保険活用の相続対策


などについて、ご案内させていただいております。


また、介護施設様、金融機関様でのセミナー開催も受け付けております。ぜひ、ご活用ください。

セミナー開催の場合、参加者には「相続登記義務化について」「生前の遺留分対策」についてのテキストをお渡ししております。


令和6年4月1日相続登記義務化(未帰還者に関する特別措置法)

令和6年4月1日相続登記義務化(未帰還者に関する特別措置法)

先日相続登記を受任し、戸籍を集める中で、とても悲しい記載がありました。それは、戦後外国から未帰還のため行政が、未帰還者に関する特別措置法に基づいて死亡宣告をしているというものでした。ちょうど戦後の混乱で日本国本土に帰還できなかった方に出す死亡宣告です。この内容について、お話をしたいと思います。


目次

1.満州国における戸籍の取り扱い

2.未帰還者に関する特別措置法の戦時死亡宣告(せんじしぼうせんこく)

3.まとめ



1.満州国における戸籍の取り扱い


満州国(または満洲国)は、かつて存在した国家で、1932年から1945年まで存在しました。

正式名称は「満洲帝国」で、日本によって中国東北部の満洲地域に建国されました。

第二次世界大戦が進む中、1945年の敗戦に伴い、満州国は崩壊し、溥儀は戦犯として起訴されました。中国東北部は再び中華民国(中華人民共和国の前身)の統治下に戻りました。

満州国に駐在した日本人は、本土に本籍地を置いたまま活動をしていた ため、「満州の戸籍」というのは実はないのです。 当時は、満州国の全権大使に出生を届けると、本土のその家の役場に通知がいき、その家 の戸籍に入る手続きが取られていました。

つまり、日本に置いていた本籍地で、満州国で生まれた方の戸籍も取得可能です。

実務上でも、特に問題なく戸籍を取得することができました。

戸籍には、「昭和〇年〇月〇日満洲国東安省東安市東安陸軍官舎〇の〇で出生父A届出同年〇月〇日在満洲国特命全権大使受附同月〇日送付入籍」と記載されていました。

令和6年4月1日相続登記義務化(未帰還者に関する特別措置法)

2.未帰還者に関する特別措置法の戦時死亡宣告(せんじしぼうせんこく)


「戦時死亡宣告(せんじしぼうせんこく)とは、未帰還者に関する特別措置法2条1項に基づき未帰還者(未帰還者留守家族等援護法2条1項に規定する未帰還者)について厚生労働大臣の請求により行われる失踪宣告(未帰還者に関する特別措置法2条3項参照)。

太平洋戦争終結後、旧満州など、海外に行ったまま日本に帰って来ない未帰還者の整理を進めるために設けられた制度。1959年に成立した未帰還者に関する特別措置法により、生死不明の未帰還者が戸籍上は死亡したものとして扱われることとされた。」(Wiki引用)

厚生労働大臣の請求により、戦地からの未帰還者に関しては、戸籍上死亡宣告をすることで、死亡みなしという取り扱いになっています。

「敗戦後に旧満州や中国、南方(東南アジアやオセアニア)などから引き揚げた軍人軍属と民間人は計約630万人にのぼり、混乱の中、消息不明の人が数多く残された。1959年、7年間以上生死不明の未帰還者に戦時死亡宣告ができる「未帰還者に関する特別措置法」が成立。厚生労働省社会・援護局によれば、2万583人が宣告を受けた。2012年3月末時点で336人が未帰還とされている。戦死した日本人は約310万人で、うち約240万人が外地で死亡した。」(Wiki引用)


帰還できなかった方で、死亡宣告を受けた方が数多くいることがわかりました。


3.まとめ


司法書士業務をしていると、このような場面に遭遇することは、少なくありません。

実務上では、死亡という扱いになり、相続人もいなければ、その方は当該相続には関係がなくなります。

しかし、何でしょうね、この複雑な気持ちになるのは・・・・。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記を急ぐ意味)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記を急ぐ意味)

相続登記義務化を控えて、相談件数、ご依頼の件数が増加しております。そんな中で、相続登記を急ぐ意味がよく分からないという方がいらっしゃいました。被相続人の方や相続人の状況によっては一刻を争う事態であることも少なからずありますので、解説していきたいと思います。


目次

1.民法177条の意味

2.遺言・遺産分割協議と債権者の関係

3.まとめ

1.民法177条の意味


民法177条では


「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されています。


 つまり、正当な所有者であることを明示したいのであれば、不動産登記をしなければ第三者に対抗することはできないということです。商業登記(会社法人の登記)は、登記をすることは義務ですが、不動産登記については、現状では義務ではありません。その代わり、所有権を争う第三者が先に登記を具備してしまった場合、もう対抗する手段はないというわけですので、自己の権利主張のために登記を入れなさいというのが建前です。


 その結果、第三者をあまり意識する必要のない相続登記について放置しているケースが横行し、結果、東日本大震災の復興において、大きな妨げになったため、今回の相続登記義務化の流れができたと言われています。義務化になっても相続を知ってから3年以内に登記をすれば、罰則である過料はかかりません。それでは、3年間放置しておいても問題ないのかと言われると、実はそうではないケースも多く存在します。

2.遺言と債権者の関係

相続人の債権者(相続人の一人が借金をしている先)がおり、借金も相当額ある場合、債権者には債務を取り立てる正当な権利があります。その場合、代位登記で法定相続分にて相続登記を代位で行い、さらに債務者である相続人の持分を差し押さえることができてしまいます。

 特定財産承継遺言(民法1014条2項)、民法改正前に「相続させる旨の遺言」と呼ばれていた遺言です。従前はこの遺言をした場合、第三者が登記を入れた場合でも、遺言で指定されている相続人が所有権の全部を主張できていましたが、現在では変わっております。上記のような状況になった場合、仮に当該不動産全部の遺言指定がなされていたとしても、債権者の登記が先の場合、指定された相続人は債権者に対して、法定相続分の権利しか主張できません。つまり、取り戻すために債権者と交渉し、債務者である相続人の持分を取り戻すしか方法が亡くなります。先に指定相続人が相続登記をしておけば、債権者は代位で相続登記ができません。

 相続登記を急ぐ意味は、十分あります。


3.まとめ

このように、状況次第とはなりますが、相続登記を遅らせたために、正当な権利を持つ第三者により登記されてしまいますと、自身の法定相続分の持分の権利しか主張できなくなってしまいます。特定財産承継遺言がある場合には、司法書士に早めの相談をした方がいいと思います。

令和6年4月1日相続登記義務化(住民票除票・戸籍の附票が取得できない場合

令和6年4月1日相続登記義務化(住民票除票・戸籍の附票が取得できない場合)

相続登記に必要な書類の一つに、亡くなった不動産名義人の「住民票の除票の写し」又は「戸籍の附票」が必要です。

しかし、令和元年6月19日までは、「住民票の除票」の保存期間が、少女された日から5年間とされていたため、長年相続登記を放置した場合、取得できないケースも発生することがあります。

この場合の対処法として、どのようにすればいいのでしょうか。


目次

1.法定相続情報証明制度を申請する場合

2.相続登記に必要な場合

3.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(住民票除票・戸籍の附票が取得できない場合)

1.法定相続情報証明制度を申請する場合

法定相続情報証明制度を利用する場合、戸籍全部事項証明書、除籍謄本、改正原戸籍謄本などを取得する必要があります。

多いときで10通を有に超える場合もあります。この戸籍の束をもって、各金融機関に名義変更や解約の手続きに持参するのは、非常に手間であるため、法定相続情報証明制度が、平成29年5月29日に実施されました。

 この法定相続情報証明制度で証明されるのは、原則「戸籍類」の法定相続関係の証明です。住所は任意での申請になりますが、申請人の本人確認として、住民票の写しが必要になってきますので、少なくとも申請人に関しては住民票が必要になります。

 任意で住所も法定相続情報証明に記載してもらうためには、それぞれ相続人の住民票、被相続人の除票が必要となります。

ここで注意しなければならないのは、申請人の本人確認のために提出する住民票を原本でかねてしまいますと、法務局に申請人の住民票を取得されてしまいますので、コピーに原本に相違ない旨を記載し署名押印したものも併せて提出する点です。

 先ほども書きましたように、法定相続情報証明制度で証明できる内容は、戸籍に記載されている法定相続情報がメインとなりますので、被相続人の除票や戸籍の附票がない場合、「最後の本籍」の項目で事足ります。


2.相続登記に必要な場合


それでは、相続登記の必要書類としての住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合どのようにすればいいのでしょうか?


登記官が不動産の所有者の名義の同一性を確認するために「氏名」「住所」で特定します。

つまり、被相続人の最後の住所と不動産名義の住所が一致しており、氏名も同じであれば同一人物との判断をしてもらえます。

しかし、住所が異なる場合には注意が必要です。最後の住所の一つ前の住所であれば、住民票の除票に「前住所の表記」で確認をすることができます。

しかし、それより前の住所が登記簿に記録されている場合、住民票の除票が使えません。その場合は、戸籍の附票を使って特定していきます。

しかし、令和元年6月20日以前に廃棄された場合、「除票」も「戸籍の附票」も取得はできません。この場合、以下の方法で登記官に同一性を認めていただく必要があります。


 ①権利証(登記済証)

権利証は、不動産に権利があることを証明する書類だからです。通常、相続登記では権利証を提出する必要はありません。

相続は、相続の発生という事実の発生によって登記申請をします。不動産の持ち主は死亡した被相続人なので意思確認をしたくてもできません。

ですので、不動産の持ち主の意思を確認する必要がなく、権利証を用意する必要がないのです。

権利証を提出不要にする代わりに、事実の発生を証明する戸籍謄本等を提出する必要があります。

被相続人の住所の移り変わりを証明することができない場合、権利証を提出して登記簿に書いてある人であると証明することができます。

被相続人の権利証を提出した場合、被相続人の住所の移り変わりを証明していませんが、権利者であると証明したことになります。


 ➁上申書

権利証は紛失しても再発行されません。通常は大切に保管して簡単に人目にさらしたりしないものですが、相続など大切な場面で見つけることができなくなることは多々あります。

被相続人が保管していた場合、保管場所を共有していない家族が見つけられなくなるのです。権利証が見つけられない場合、権利証を提出して権利者であることを証明することはできません。

権利証を提出することができない場合、相続人全員からの印鑑証明書付き上申書を提出します。

上申書は「不動産の所有者は被相続人に間違いありません」という法務局宛てのお願いです。相続人全員とは、遺産分割協議に参加するべき人全員です。

その財産を相続する人だけではありませんので、注意が必要です。

その財産を受け取らないけど他の財産を相続する人など遺産分割協議に参加するべき人全員から上申書を提出します。

遺産分割協議に参加するべき人全員が、実印で押印し印鑑証明書を添付します。印鑑証明書について期間制限はないので、古いものでも差し支えありません。


法務局によっては、上申書の他に不在住証明書や不在籍証明書が必要になります。固定資産税の納税証明書の提出が求められる場合があります。

固定資産税は、一般的に所有者が負担するものだからです。固定資産税を負担していた場合、所有者であったと認めてもらいやすくなります。

住所がつながらない場合などイレギュラーな場合の取り扱いは、管轄の法務局によって異なる場合があります。必ず、管轄法務局に確認をするようにしてください。


③被相続人の本籍と登記上の住所が一致する場合は住民票の除票は不要

 本籍地と登記上の住所が一致する場合、法務局は同一人物と認めてくれます。あらためて、住民票の除票を提出する必要はありません。


3.まとめ


このように、相続登記を長年放置した場合、相続登記に必要な書類がすでに廃棄されているケースが少なくありません。

令和6年4月1日から相続登記義務化が始まります。アイリスでは、予約制で、相続登記のご相談を無料で受け付けております。

また、月に一度「相続法律・税務無料相談会」を実施しております。相続登記、相続税についてお悩みの方は、是非ご活用ください。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の過料の要件)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の過料の要件)


2024年4月1日より始まる相続登記義務化について、法務省よりその過料の運用方針が示されました。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」について解説します。


目次

1.はじめに

2.相続登記義務化による過料の要件

3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン

4.①過料通知およびこれに先立つ催告

5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

6.③「正当な理由」があると認められる場合

7.まとめ


1.はじめに


 2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。

不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。

今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。


2.相続登記義務化による過料の要件


 相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。


 ①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」

 ➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」


 ※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。


 正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。


3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン


 2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。

 相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。


 ①過料通知およびこれに先立つ催告

 ➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

 ③「正当な理由」があると認められる場合


が定められています。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の過料の要件)

4.①過料通知およびこれに先立つ催告


 相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。

 しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。


5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法


 登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。


 ➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき

 ➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき


 ※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。


6.③「正当な理由」があると認められる場合


 ③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合


 ③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合


 ③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合


 ③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合


 ③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合


 ※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。


7.まとめ


相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。

また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。

これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。

登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。

相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。

詳しくは司法書士までご相談ください。

アイリスでは、無料相談を随時受け付けております。まずは、ご予約をお願いいたします。


令和6年4月1日相続登記義務化

相続登記義務化

令和6年4月1日より始まる相続登記義務化ですが、「義務化」の文字で漠然と不安になる方もいらっしゃるかもしれませんが、相続登記をすれば問題ありません。ただし、「義務化」により罰則である10万円以下の過料もあります。長年放置していた相続登記も義務化には含まれます。早めの対応をしていただくために解説をいたします。


目次

1.はじめに

2.改正前の相続登記について

3.相続登記義務化の内容について

4.相続人申告登記について

5.過去の相続については?

6.相続登記に係る実費

7.まとめ(司法書士への報酬等)

1.はじめに

 2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。


 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)


というのが概要です。


2.改正前の相続登記について

 改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。


3.相続登記義務化の内容について

 相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。


 「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。


  相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。


  また、遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続分での登記が必要となりますが、この場合、法定相続分による相続登記を免れる方法がありますので、次に述べます。

4.相続人申告登記について

 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。

 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。

この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。


5.過去の相続については?

 相続相談で、すでに相続が発生しているものについてのご質問がよくありますのでご説明いたします。


 結論から言いますと、「過去の発生した相続についても今回の改正は適用」になります。


「(附則案 経過措置)第五条六項 新不動産登記方第七六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。(以下省略)」


「(附則 経過措置)第五条六項 施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日②施行日のいずれか遅い日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」


 つまり、相続登記義務化前に、すでに相続が発生し相続による名義変更の登記をしていない不動産についても、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記をする義務が発生することになります。


6.相続登記に係る実費

 ①登録免許税


  登記する際に、不動産の評価額の1000分の4の収入印紙をが必要です。


 ➁登記情報閲覧


  システムから、現状の登記簿の内容を確認します。不動産の数×332円


 ③登記事項証明書


  登記完了後、取得して変更を確認します。不動産の数×600円


 ④戸籍謄本・住民票等


  役所に支払います。価格は役所により異なります。(金額は香川県高松市役所の場合)


※郵送で取得する場合、定額小為替で請求いたしますので、発行手数料1枚200円及び郵送費用(レターパック520円×2※1役所に対し)が必要となります。


 ➄公図、名寄帳


  相続対象の不動産に漏れがないかを確認するために取得することがあります。


  公図 1枚664円(システムから司法書士が取得)、名寄帳(役所で取得) 1通350円(高松市役所)


 ⑥評価証明書


  相続登記をするための登録免許税の計算のために評価額を使用します。


  評価証明書(役所で取得) 1通350円(高松市役所)

7.まとめ


 2024年4月1日から相続登記が義務化になり、相続登記を怠った者には、10万円以下の過料に処されます。遺産分割協議が長引くなどの理由がある場合には、「相続人申告登記制度」を利用して、3年以内の相続登記義務を回避することはできますが、そのままでは処分等ができないため最終的には遺産分割協議を経て(または法定相続分の共有で)相続登記をすることになります。

生前贈与(親から未成年者への贈与契約)

生前贈与(親から未成年者への贈与契約)

法上、未成年者は制限行為能力者という扱いになっております。未成年者へ生前贈与として不動産を贈与契約することは可能なのか?という点が問題になってくると思われます。贈与契約はどのようにすればいいのか、そして、不動産登記の際に未成年者を権利者として名義変更をすることができるのかについてお話をしていきたいと思います。


目次

1.未成年者への贈与契約はできるのか

2.贈与契約書は作成しなければならないのか

3.名義を変更する登記の際に必要な書類

4.まとめ


1.未成年者への贈与契約はできるのか

細かい点にはなるのですが、「贈与」と「贈与契約」は法律上別物です。

贈与とは、贈与者が一方的に財産を譲渡するものであり、受贈者の合意、承諾などは不要です。

これに対し、贈与契約とは、贈与者が贈与することを約束し、受贈者がこれに合意することによって成立します。

贈与契約には、受け取る側にも「意思表示」が必要となります。しかし、民法上未成年者は制限行為能力者なので親権者の同意が必要となります。

未成年者の意思表示については、親権者である法定代理人が同意することで贈与契約も可能になるということです。

2.贈与契約書は作成しなければならないのか

未成年者でも贈与契約はできることは先にもお話をしました。

贈与は、贈与者の「あげます」という意思表示に対し、受贈者の「もらいます」という意思表示が合致すれば成立する契約だからです。

最低限このことが理解できる年齢であれば、契約自体は成立します。

しかし、親権者の同意を得るか、親権者を代理として契約を結ばなければ後から親権者によって贈与契約が取り消される可能性があります

そのため、契約書を交わす際は、親権者の署名押印も要れた方がいいでしょう。未成年者が署名できるなら署名押印し、それに加えて親権者も署名押印します

 意思表示の合致だけでは、親権者代理人の意思がわかりません。

また、生前贈与の場合は、贈与者の死後、相続人間でトラブルが起こることや、税務署から本当に贈与がされたか、もしくは譲渡されたのが本当に贈与によるものかについて指摘を受ける可能性があるので、このようなリスクを回避するためにも、契約書を交わしておくことが大切です。


3.名義を変更する登記の際に必要な書類


さて、贈与契約書まで作成できましたら、次は登記の手続きが必要です。贈与を原因とする所有権移転登記を申請することになります。


通常の贈与による所有権移転登記の添付書類は


①贈与者(譲渡人)に必要な書類

  ㋐利証書(登記済証又は登記識別情報)

  ㋑印鑑証明書(有効期限3か月)

  ㋒固定資産税評価証明書等の評価額がわかる書類

  ㋓実印

  ㋔身分証明書(運転免許証・パスポート) 本人確認資料のため


以上が基本的な必要書類です。また住所変更・氏名変更がある方は、その変更登記が事前に必要となるため、住民票・戸籍の附票・戸籍謄本等が必要になります。また、事案によっては上記以外の書類等が必要になる場合があります。


②贈与を受けられる方に必要な書類

  ㋐住民票

  ㋑印鑑(認印でも可能です)

  ㋒身分証明書(運転免許証・パスポート) 本人確認資料のため


 未成年者に贈与する場合は、契約は未成年者の親権者だけでなく、未成年者自身が締結できますが、登記申請においては、親権者が未成年者に代わって申請する事が一般的です。

この場合通常の必要書類に加えて、以下の書類が必要となってきます。


➁贈与を受けられる方に必要な書類(受贈者が未成年である場合の追加資料)

  ㋓親権者と未成年者の親子関係が分かる戸籍謄本(有効期限3か月)

  ㋔親権者及び未成年者の本籍地入りの住民票


基本的に、親権者の戸籍謄本及び本籍地入りの住民票(家族全員)を取得すれば良いと思われます。なお上記㋓にも記載していますが、戸籍謄本には3か月以内の有効期限がありますので、ご注意ください。


4.まとめ


親から未成年の子への贈与をする場合、贈与を原因とする所有権移転登記をする場合、通常の贈与による所有権移転登記に必要な添付書類に加えて、親子関係がわかる戸籍謄本(3か月以内のもの)と親権者及び未成年者の本籍入りの住民票が必要になります。

また、重要な点としては、「贈与税」が発生する場合があるという点です。税金につきましては、税理士先生への相談が必要となります。

アイリスでは、ワンストップで法律上の問題と税務上の問題を解決すべく「法律・税務無料相談会」を定期的に開催しております。ぜひご活用ください。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続放棄について)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

相続放棄は、家庭裁判所の手続きを踏まなければ効力を生じません。相談会などで「他の相続人は皆、放棄したから私が相続することになります。」とおっしゃる方がいますが、単に相続人間の決め事なのか、家庭裁判所の手続きを経た相続放棄なのかわからない場合がよくあります。相続放棄の手続きなどについて、お話をしたいと思います。


目次

1.相続放棄をする場面

2.相続放棄の手続きと注意点

3.相続放棄手続きに必要な書類など

4.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

1.相続放棄をする場面


 相続放棄は、ある財産や遺産を受け継ぐ権利を放棄することを指します。相続放棄を選択する理由はさまざまで、負債や相続税の問題、家族関係の複雑さなどが挙げられます。相続を放棄すれば、法的にはその財産を受け継ぐ資格(初めから相続人ではなかったことになる)を失います。


 ここでは、被相続人(亡くなった方)に多額の借金がある場合を考えていきます。

2.相続放棄の手続きと注意点


 亡くなった方に借金があった場合、相続を知ったときから3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きをすることになります。


 相続放棄を進めていくうえで、第1に注意すべき点は、「被相続人の財産の処分をしないこと」です。被相続人の財産の処分をできるのは、相続人だけです。つまり、被相続人の財産を処分する行為は、自らが相続人であることを認める行為となります。財産の処分行為はいろいろあるのですが、「相続人間の遺産分割協議に参加して、署名押印をした場合」が該当します。この遺産分割協議で、財産をもらわなかったから、相続放棄をしたとおっしゃる方もいますが、それは相続放棄ではありません。それどころか、自らの法定相続分を処分しているわけですから、相続放棄はできない状態になってしまいます。相続放棄の手続きで得られる効果は、初めから相続人ではなかったことになるので、財産も負債も放棄したことになります。遺産分割協議で財産をもらわなかったとしても、借金の債権者にとっては関係のない話になるのです。以前、形見のロレックスの時計を財産目録に入れていなかったばかりに、相続放棄をできなくなったという事例を聞いたことがあります。遺産の処分行為については、特に注意が必要です。この場合、「みなし単純相続」とされてしまいます。


 第2に、相続放棄の申述期間である3か月を超過しないことです。借金が多き被相続人の場合には特に重要となります。相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行う必要があります。


この期間を熟慮期間といいますが、熟慮期間については判例上(最判昭和59年4月27日)以下のとおり考えられています。


「原則として、相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から起算する。


ただし、相続人が、上記事実を知つた時から3か月以内に相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人においてこのように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算する。」とあります。


 つまり、自らが相続人であることと、その相続で自身に相続財産が存在していたことの認識の2点がそろったタイミングが起算点(相続放棄の3か月の計算の開始点)とされています。が、死亡から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出す他方が望ましいです。(安全のため)


 加えて、相続人の順位があります。第1順位 子供、第2順位 直系尊属(親)、第3順位 兄弟姉妹 となっております。先順位の相続人が全員相続放棄をした場合、字順位の相続人が相続放棄ができる期間は「先順位の相続人が相続放棄をしたために相続人をなった場合、その相続放棄をしてから3か月」となります。


 第3に、相続放棄した後も「相続財産を隠す」「相続財産を勝手に消費する」もしてはいけません。せっかく取得できた相続放棄も取り消される可能性があるためです。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

3.相続放棄手続きに必要な書類など

 家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する場合の注意点。

 ①管轄の家庭裁判所:亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所

 ➁印紙、郵券:収入印紙800円、郵券とは切手のことです。裁判所ごとに異なります。高松家庭裁判所での相続放棄手続では、84円切手が2枚と、10円切手が1枚(合計178円分)が必要です。

 ③相続放棄申述受理証明書発行手数料の印紙:1通につき150円分必要です。

 ④配偶者や子が相続放棄する場合の必要書類


  (1)申述人の戸籍謄本


  (2)被相続人の住民票の除票(戸籍の附票)


  (3)被相続人の死亡の旨の記載のある戸籍謄本

  (4)※代襲相続人の場合 被代襲者(本来の相続人)の死亡の胸の記載のある戸籍謄本


 ※配偶者・子以外の相続人が相続放棄をする場合の書類につきましては専門家にご相談ください。


4.まとめ

 相続放棄の注意点や、相続放棄申述の手続きについて解説をしてきました。被相続人の借金が多い場合には、相続放棄申述の手続きを必ず相続発生から3か月以内にすることが必要です。よくわからない場合には、専門家にご相談ください。



変わる生前贈与(暦年贈与と相続時精算課税)

変わる生前贈与(暦年贈与と相続時精算課税)

相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わるそうです。同じ「110万円」というキーワードでも、制度が全く異なってきます。令和6年1月1日より先日、セミナーで伺った内容についてまとめてみました。詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。

目次

1.暦年贈与と相続時精算課税

2.令和6年1月1日以降何が変わったのか

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

4.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)


 暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。


 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。


 上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。


2.令和6年1月1日以降何が変わったのか

ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。

 改正される内容は、以下の通りです。


①暦年贈与制度

 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。


➁相続時精算課税

 (令和5年12月31日までに計算式)


  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 (令和6年1月1日以降の計算式)


  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)


            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率

 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。


 ※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。


3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

 キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。


 セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。


 また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。


4.まとめ


(まとめ画像)

認知症対策(任意後見契約と家族信託契約)

認知症対策(任意後見契約と家族信託契約)

認知症対策として、「任意後見契約」と「家族信託契約」があります。先の家族信託万能論の罠でも解説している通り、同じ「財産管理」であっても、その内容は大きく異なります。こんな筈ではなかったとならないために、比較解説していきます。

目次

1.はじめに

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

3.結局どちらの制度がいいのか?

4.まとめ


1.はじめに

認知症対策として「任意後見制度」と「家族信託」という2つの制度があります。

「どちらの制度がいいの?」、認知症対策相談の時、相談者様からよく質問を受けます。どちらの制度も一長一短があります。

制度の内容を要理解せずに、表面的なメリットのみとらえて選択してしまうと、「こんなはずではなかった。」ということにもなりかねません。内容をよく理解した上で選択することが重要になります。

なぜなら、この2つの制度は、性質が異なるものだからです。ご家族の置かれた状況からどちらの制度を選択すればよいか見えてくると思います。それでは解説してまいります。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

 (事例)母は既に亡くなっており、父親が最近少し物忘れが多くなってきており、長男夫婦と次男夫婦がいる事例で見ていきます。

このような事例で、長男が「財産管理」をしていきたい場合を考えていきます。

 ※父親に判断能力がまだあることが前提条件となります。すでに判断能力を失われている場合には、法定の成年後見制度を利用することになります。


 ※2つの制度共に詐欺被害などにあった場合の「取消権」がないので対応はできません。法定の成年後見制度にはありますので、ここでも選択の判断が分かれます。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

3.結局どちらの制度がいいのか?

事例から見ますと、父親に「身上監護まで必要」であるなら任意後見制度を利用し、必要なければ「家族信託」という選択になります。

しかし、家族信託のみで対応していたがために、父親の認知症が進み、要介護認定の申請手続きや、介護施設への入所契約など発生した場合、「法定の成年後見制度」を利用しなければならなくなります。

そこで、大きな財産については「家族信託」で財産管理をして、それ以外の財産と身上監護を「任意後見制度」を併用する方法もあります。

また、併用だとコスト面で大きくなるのであれば、どちらがいいのかの選択が必要となってきます。この場合は、ご家族でよく話し合ったうえで決めていただきます。


4.まとめ


 ①積極的な財産管理を行いたいのであれば「家族信託」

 ➁身上監護が必要なら「任意後見」

 ③裁判所の関与を避けたいのであれば、「家族信託」

 ④どちらの制度もご要望になじむのであれば、費用で比較する


「任意後見制度」も「家族信託」もどちらかを選択すれば完ぺきといった制度ではありません。

それぞれの制度の趣旨が異なるためです。どちらもご要望に馴染まない場合がありますので、制度をよく理解して決めなければなりません。

専門家と相談しながら進めていくのがいいと思います。


生前の相続対策(遺言書作成)

生前の相続対策(遺言書作成)

最近の相談者の年齢と希望するサービスの内容について、いろいろと考えることがあります。ライフステージごとに、できること・しなければならないことをまとめてみました。そして、遺言書を積極的に考える理由についても解説しています。

目次

1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)

2.遺言書を作成する意味

3.相続財産が相続人に帰属するタイミング

 3-1.遺言書がある場合

 3-2.遺言書がない場合

4.遺産分割協議でもめてしまうことも

                                                                                                                      5.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)


 早めに遺言書を作成することのメリット


遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。


 ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

また、遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。


※ご本人の状態により、使える法律行為や制度が異なる点にもご注意ください。特に認知症発症後は、法定後見制度一択になります。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

2.遺言書を作成する意味


 遺言書を作成することで、家族や親族間でのトラブルを防ぐこともできます。遺言書がない場合、相続財産は法定相続分に従って、それぞれの相続人の持ち分となりますが、不動産のように物理的に分けられないものも存在します。不動産を取得したがために、現金が手に入らず生活に困窮する相続人が発生したのでは、具合が悪いことになってしまいます。

 また、相続関係が複雑で、専門家に調査を依頼しなければわからないケースも何度も見てきました。

 そこで、遺言書を書いておくことで、相続財産の帰属先を相続発生時に決めることができます。


3.相続財産が相続人に帰属するタイミング

 3-1.遺言書がある場合


  遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。


 3-2.遺言書がない場合

  相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。

※遺留分の問題があるから遺言書は進めないという方もいらっしゃるようですが、相続発生時の相続財産の帰属先は一端は決まる点がメリットだと考えますので、アイリスでは遺言書の作成についてお勧めをしております。


4.遺産分割協議でもめてしまうことも

 遺言書がなく亡くなられた被相続人の相続人全員で遺産分割協議をする場合、もめるケースがあります。一旦もめてしまうとなかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。

 こうなった場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。それでもまとまらない場合には、家庭裁判所による審判で遺産分割を決定することとなります。

 ここまで行ってしまいますと、家族関係は完全に悪くなってしまいます。一度悪くなった家族関係は、もう元には戻らないでしょう。このようなことからも、遺言書作成の意義は、とても大きいと考えます。


5.まとめ

 最後に、遺言書は遺言者の意志を尊重するものであるため、遺言者自身が最も納得できる内容を記載することが大切です。しかし、遺言書が法律に反する内容を含んでいる場合などは、遺言書は無効となることがあります。遺言書を作成する際には、法律に基づいた内容であるかどうか専門家に相談し、確認するようにしましょう。


アイリスからのご提案、健康年齢を考慮して「70歳を過ぎれば、遺言書の検討を」です。

相続土地国庫帰属制度の統計データ

相続土地国庫帰属制度の統計データ

法務省HPにて、令和5年12月28日に令和5年11月30日現在の「相続土地国庫帰属制度の統計」が出ていましたので、ご紹介いたします。令和5年4月27日に始まった制度ですが、負動産である土地を国に引き取ってもらい管理してもらう制度です。相続登記義務化と併せて、所有者不明土地発生の抑止のための制度となります。


目次

1.相続土地国庫帰属制度とは

2.令和5年11月30日現在の状況(速報値)

3.まとめ

1.相続土地国庫帰属制度とは


 2021年4月に成立した法律です。 相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を手放して、国庫に帰属させることができる制度です。

 つまり、「相続した不要な土地の所有権を国に対して返すことができる制度」です。


 なんでもかんでも引き取ってくれるわけではなく、一定の要件があります。


 結論から言うと「抵当権等の設定や争いがなく、建物や樹木等がない更地」です。通常の管理や維持に必要以上の費用や労力を要する土地に関してはだめというわけです。


 それでは、具体的な該当してはいけない要件についてみていきましょう。


 ①建物がある土地


 ➁担保権又は使用収益及び収益を目的とする権利が設定されている土地


 ③通路など他人によって使用されている土地


 ④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地


 ➄境界が明らかでない土地、その他所有権の存否、帰属や範囲に争いのある土地


 ⑥崖のある土地など、通常の管理にあたり過分の費用又は労力を要する土地


 ⑦工作物や樹木、車両が地上にある土地


 ⑧除去が必要なものが地下にある土地


 ⑨隣接する土地の所有者などと争訟をしなければ使えない土地


 ⑩その他、管理や処分をするにあたり過分の費用又は労力がかかる土地


 になります。建物や樹木、放置車などある場合、とりあえず撤去しなくてはいけません。


 上記10項目すべてに該当しなければ、晴れて本制度を利用することができるわけです。


2.令和5年11月30日現在の状況(速報値)

 ①申請件数 1349件


  (地目別)


    田・畑:522件


    宅地 :487件


    山林 :198件


    その他:142件


 ➁帰属件数 48件


  (種目別)


    宅地 :25件


    農用地:10件


    森林 : 2件


    その他:11件


③帰属土地が所在する都道府県

    北海道、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、


    富山県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、


    岡山県、広島県、徳島県、 香川県、愛媛県、佐賀県、熊本県、


    宮崎県、鹿児島県


 ④却下件数 0件


 ➄不承認件数 4件


 ⑥取下げ件数 92件


  ※ 取下げの原因の例


    ㋐自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した


    ㋑隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった


    ㋒農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった


    ㋓審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した


3.まとめ

制度発足から順調に推移しているように見えます。


 統計データから見えてくるのは、相続土地国庫帰属制度に申請しつつ、負動産の処分について、隣地所有者への処分や農業委員会の農地のあっせんなどにも登録をしておき、うまくいけば取下げをして、ダメなら審査を待っているように見えました。


 このように負動産の処分の選択肢が増えたことで、並行して処分方法を実施していくことが、早期の処分につながるものと考えます。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続対策の生命保険について)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の生命保険について)

生命保険(契約者は亡くなった被相続人とする)は法律上では、相続財産を生命保険に切り替え、相続人の一人に受取人指定すれば、相続財産から外すことができます。一方、税務の面では、生命保険は「みなし相続財産」として取り扱われるため、控除枠(法定相続人×500万円)を除いた残りが相続財産となります。生命保険の活用は、比較的メジャーですので、注意点についてお話ししたいと思います。

目次

1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか

2.受取人は誰が一番いいのか

3.まとめ


1.どんな生命保険が相続対策として活用できるのか


 被相続人が保険金を支払っている契約者であり、保障の対象となる被保険者である場合、保険金の受取人が「妻」や「子」である(相続人)ときには、亡くなった場合にみなし相続財産の非課税枠を利用することができます。

 注意しないといけない点は、その生命保険の契約の内容です。若いころから入っている生命保険があると思われている方もいるかもしれませんが、多くの場合「定期付終身保険」の可能性があります。「定期付終身保険」とは、3000万円の保険金となっていても、100万円の終身保険(主契約)に2900万円の定期保険(特約)が組み合わされた保険で、一定の年齢を超えてから亡くなると主契約の100万円分しか受け取れない契約になっていて、非課税枠を十分に活用できない可能性があります。

 保険会社に現状の保険の契約内容を必ず確認しておくようにしましょう。

 これから契約をしようとしている方も、終身保険の金額と自身の推定相続人の数を把握して、税理士などの専門家と相談しながら進めるといいかもしれません。


2.受取人は誰が一番いいのか


 前提として「契約者」と「被保険者」が被相続人(夫)である場合のケースで考えていきます。※被保険者が妻(配偶者)の場合などにつきましては、複雑化しますので、税理士に確認をするようにしてください。


 ①配偶者(妻)を受取人とした場合

  配偶者は、必ず相続人にカウントされるため生命保険の非課税枠は当然使うことができます。しかし、相続税申告をする際に配偶者控除枠1億6千万円を使うことができるため有効活用できるかというと微妙かもしれません。


 ➁子供を受取人とした場合

  一番効果が出るケースです。


 ③孫を受取人とした場合

  子供が存命の場合、生命保険の非課税枠は利用できません。代襲相続や養子となっている場合では、非課税枠を利用できるケースもあります。

  厄介なのが、子供が存命で孫を受取人とした場合、相続税額2割が加えられて計算されるという仕組みが適用される場合があります。この辺につきましては、税理士にご相談ください。


3.まとめ


 生命保険を活用した相続対策を考える場合には、まずは、生命保険の契約内容について確認をすること。契約内容が主契約の終身保険の額ではなく、特約の額が多い場合には、相続税対策には効果が薄い場合があります。

 次に、受取人を誰にするのかという点。保険に加入する際に、妻が受取人でないことで文句を言うケースもあるようですので、なぜ妻(配偶者)にしないのかについては、専門家の税理士などを交えて、しっかりと事前に話し合いをしておく必要があると思います。



令和6年4月1日相続登記義務化(死亡保険金の取り扱い(法律・税務))

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料)死亡保険金の取り扱い(法律・税務))

相続が発生し、死亡保険金が受取人(相続人の一人)によって受け取られたときに、それは相続財産として遺産に含むものなのでしょうか。当然、相続人以外のどなたかに、死亡保険金の受取人とした場合には贈与税の対象に、また、亡くなった被相続人本人が受取人の場合には、相続財産として取り扱われることになります。今回は、相続人の一人が受取人に指定されていた場合について、法律面と税制面の両面から解説していきます。

目次

1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか

2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合

3.死亡保険金の税制面での取り扱い

4.まとめ


1.死亡保険金は相続財産に含まれるのか


 保険契約に基づき受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又は、これを行使して取得した死亡保険金は、民法903条第1項に規定する遺贈又は、贈与に係る財産には原則的には当たりません

 つまり、法律上、死亡保険金は、相続財産とはなりません。ですので、相続の生前対策として生命保険(死亡保険)が活用されるケースがあります。相続財産となりうる額の一部をを生命保険契約をすることで、目減りさせることができるためです。それでは、相続財産のほとんどを生命保険に切り替えても相続財産とはならないのかというと、そういうわけではありません。どのような基準があるのかを次の項目で解説をいたします。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

2.死亡保険金が相続財産に含まれる場合


(最判平16.10.29)

「法律上、生命保険金は原則的には相続財産に該当しませんが、当該保険料が被相続人が生前に保険者に支払ったものであり、それにより保険金受取人である相続人に保険金請求権が発生することなどに鑑みると、保険金受取人である相続人とその他の相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是正することができないほどに著しいものであると評価すべき「特段の事情」が存する場合には、民法903条の類推適用により、当該保険金請求権を特別受益に準じて持戻しの対象となると解する。


 この「特段の事情」の有無の判断は以下のような点などの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断する。」とあります。


 それでは、判例で言っている特段の事情とはどういった内容なのでしょうか。


 ①保険金の額

 ➁保険金の額の遺産の総額に対する比率

 ③同居の有無

 ④被相続人の介護等に対する貢献の度合い


以上、4つの内容を考慮したうえで判断されます。➁の比率については、明確な基準はないですが、平成17年の判例では、遺産総額のほぼ全額(99%超)を保険金が占めており、また、平成18年の判例では61%を保険金が占めていて、相続とみなされました。

他の要件も加味されますので、50%を超える場合には注意しておいた方がいいかもしれません。


3.死亡保険金の税制面での取り扱い


「被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象となります。

この死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。


500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額


なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。


(注1) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。

(注2) 法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。」

(国税庁HPより引用)


4.まとめ


死亡保険金は、法律上では原則、相続財産とはなりませんが、 

①保険金の額、➁保険金の額の遺産の総額に対する比率、③同居の有無、④被相続人の介護等に対する貢献の度合い

といった内容を考慮して特別受益と認められる場合があります。特別受益と認められた場合、その死亡保険金は相続財産に組み入れられてしまいます。

また、税法上は、死亡保険は「みなし相続財産」とされ、基礎控除を超える額は相続財産とされます。

詳しい内容につきましては、各専門家への相談をお勧めいたします。


アイリスでは、ワンストップでの相続のお悩みを解決する場として「相続法律・税務無料相談会」をご紹介しております。

法律のお悩みのみの場合につきましては、「アイリスDEいい相続」の無料相談会にて対応をいたします。ぜひ、この機会にご活用ください。



令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(寄与分・特別寄与料))

今まで遺産分割時の相続分の修正として、特別受益についてお話をしてきましたが、今回は寄与分・特別寄与料について解説いたします。こちらも、遺産分割を公平にするための規定です。算出方法については、特別受益と比較してお話をいたします。


目次

1.寄与分とは

2.特別寄与料とは

3.特別受益と寄与分の算出方法の比較

4.まとめ


1.寄与分とは


 被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした共同相続人(寄与分権利者)があるとき、その者の本来の相続分(法定相続分又は推定相続分)に一定の加算をして、相続人間の実質的衡平を測ろうとする制度です。要件は以下の通りです。

 ①共同相続人であること。

  ※内縁の妻、相続欠格者、非廃除者については、該当しません。

 ➁被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者であること。

  ※通常の寄与(一緒に生活をして身の回りの世話をすること)では足りず、特別の寄与(本来施設で介護をすべきところ、自宅で介護をすることなど)。こうすることで、本来、被相続人が支払うべき施設利用料を払わなくてよくなっているので、その分、特別の寄与をしたということになります。

 寄与分の確定手続きについては、原則として、共同相続人間の協議で行われます。(民法904条の2第1項)

 そして協議が整わない場合又は協議をすることができない場合には、家庭裁判所が、寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めることになります。(民法904条の2第2項)


2.特別寄与料とは


 被相続人に対して無償で療養看護等をした特別受益者は、その貢献を考慮するために方策として、相続人に対して寄与に応じた金銭の支払いを請求することができます。この金銭のことを特別寄与料と言います。ただし、誰でも特別寄与者になることはできず要件があります。


 ①被相続人の親族であること。

  ※相続人、相続放棄者、相続欠格者、非廃除者は該当しません。

   (長男の配偶者などが該当します。)

 ➁無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたこと。


 特別寄与料の価額の確定は、原則として、特別寄与者と相続人間の協議により行われます。(民法1050条第2項)

 協議が整わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、特別寄与者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料を定めることになります。(民法1050条第3項)

※寄与分の請求と特別寄与料の請求の相違点の一つとして、「請求に期間制限」がある点があります。寄与分には期間制限は設けられていないのですが、特別寄与料には期間制限があります。


 ①特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6か月を経過

 ➁相続開始の時から1年を経過したとき

この時を経過してしまいましたら、特別寄与料の請求をすることはできません。

 ただし、寄与分も遺産分割協議の期間制限(5年・10年)ができましたので、こちらを過ぎた場合、相続人全員の合意がない限り請求できないことになります。


3.特別受益と寄与分の算出方法の比較



4.まとめ


 このように、遺産分割協議において相続分の修正には「特別受益」と「寄与分」があることを解説してきました。今まで制限がなかった遺産分割協議の期間が2023年4月1日より以下の内容で変更されましたので、特別受益・寄与分を考慮した遺産分割ができる期間が制限されます。



また、2020年4月1日の民法改正で新たに規定されました「特別寄与料」は、相続人以外の被相続人の親族対象で、被相続人の寄与をした方にも、その請求権を認めるものですが、相続及び相続人を知ったときから6か月、相続発生から1年と比較的短期間の請求が認められていますので、該当する方は請求を検討することができるようになりました。

分からない場合には、専門家の無料相談を活用することをお勧めいたします。    

 

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(特別受益))

令和6年4月1日相続登記義務化(相続分の修正(特別受益))

遺産分割をする際に、遺産の範囲を定める必要性があります。その時、生前に贈与を受けていた場合、その期間によっては遺産に含めるといった基準が存在します。また、被相続人の財産の維持または増加につき特別の寄与をした共同相続人には寄与分が認められています。これら規定は、公平に遺産を分割するための基準となります。今回は、特別受益(生前贈与など)について解説いたします。

目次

1.特別受益者の意義

2.特別受益者の相続分

3.算定の基礎となる相続財産の推定

4.受贈者の行為とは?

5.法定相続分又は指定相続分による算定と特別受益者に関する修正

6.特別受益の確定手続

                                                                                                                                 7.持戻しの免除(民法903条第3項)

                                                                                                                                 8.夫婦間における持戻しの免除の意思表示推定規定(民法903条第4項)

                                                                                                                                 9.まとめ


令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

1.特別受益者の意義

 共同相続人の中で被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者のことを指します。それでは、どのような基準に基づき遺贈・生前贈与の財産を相続財産に算入するのでしょうか?


2.特別受益者の相続分

「(民法903条)

 1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。


 2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。


 3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。


 4.婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」


それでは、具体的にみていきましょう。

3.算定の基礎となる相続財産の推定

  被相続人が相続開始時に有した財産の価額に特別受益たる贈与の価額を加える(みなし相続財産)。

  このような処理を特別受益の持戻しと言います。贈与がされた後、相続開始までの間に、受贈者の行為によって、贈与の目的財産が滅失し又はその価格の増減があったとしても、現状(受贈当時の状態)のままであるとみなして計算します。

  ※(事例)相続人が特別受益の期間内に家の贈与を受け、相続開始時には火事で滅失していても、受贈者の行為によるもので滅失したのであれば、その価格を相続財産に加算するということです。


4.受贈者の行為とは?

 ①故意の場合はもちろん過失の場合も含むと一般に解されています。


 ➁家裁による滅失・取り壊し等の事実行為による物理的滅失のほか、贈与・売買等による法律行為による経済的な滅失も含まれます。


 ③受贈者の行為によらず、転載その他の不可抗力によって滅失した場合は含みません。


5.法定相続分又は指定相続分による算定と特別受益者に関する修正


 2.の価額に、各共同相続人の法定相続分又は指定相続分の割合を乗じた値を算出します。


 そして、特別受益者については、上記算出した値から特別受益である遺贈又は贈与の価額を控除したものが相続分となります。


 何を言っているのかよくわからないと思いますので、図で示します。


(特別受益者の具体的相続分の計算)

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

つまり、今現存していない・価額が減少していても、贈与時の価額を相続財産に加算し、そこから相続分を乗じて自身の取得できる財産の価額を算出し、そこから受けた贈与の価額を減じることで産出されます。

 仮に、その計算結果がゼロ又はマイナスの場合には、特別受益者が相続で取得する財産は有りません。マイナスの場合でも、他の相続人にその価額を返還する必要はないことに注意が必要です。

 贈与・遺贈の価額≧相続分の価額:具体的な相続分はありません。


6.特別受益の確定手続

 持戻しを適正に行うためには、特別受益である贈与の有無や目的物の価額を確定する必要があります。これは、原則として、共同相続人間の協議でされます。


(最判平7.3.7)


 「ある財産が特別受益財産にあたるかどうかは、遺産分割申立て事件、遺留分侵害額請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の各手を必要とする侵犯事件又は訴状事件における前提問題として審理判断されるのであり、それらの事件を離れて、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」


 遺産分割事件・遺留分侵害額請求の訴訟で審理判断されるから、特別受益かどうかの判断を別の確認訴訟ですることは不適法であると言っています。


7.持戻しの免除(民法903条第3項)

 被相続人が特別受益の持戻しに関する民法規定と異なる意思表示(方式は問わない)をした時は、その意思表示に従うとあります。遺言書などに、これらの事項が記載されている場合などが該当します。


8.夫婦間における持戻しの免除の意思表示推定規定(民法903条第4項)

 長年連れ添った配偶者に対する持戻し免除の推定規定があります。


 次の3つの要件を満たした場合、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

 ①婚姻期間が20年以上の夫婦であること。


 ➁①の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対する遺贈又は贈与であること。


 ③遺贈又は贈与の対象物が、居住の用に供する建物またはその敷地であること。


持戻し免除推定規定では、婚姻期間・遺贈、贈与の対象物について制限を設けています。


※推定規定とみなし規定の違い


 推定規定は、裁判になった場合に推定はされるものの、相手方の証拠などにより覆る可能性がある規定です。一方、みなし規定は、裁判になった場合でもみなされますので、相手方の証拠などにより覆ることがありません。


9.まとめ

特別受益者の相続分についてお話をしてきました。その算出方法と、関連する持戻しの内容について理解を深めることで、共同相続人間の遺産分割を公平に実施することができます。特に、配偶者の要件に該当する場合、持戻しの免除の推定規定があります。有効に活用することで、配偶者の相続発生後の生活の基盤を失うことなく生活することができます。


 細かい内容になっておりますので、専門家に相談して遺産分割をスムーズに実施しましょう。

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議前に預金を下せるの?)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議前に預金を下ろせるの?)

遺産分割前に、預貯金の口座が凍結されてしまい、相続発生後の生活に困ってしまうといった事態が、実際に起こっていました。そこで、2019年7月1日の民法改正により、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」についての規定が盛り込まれています。どのような内容になっているのか確認していきましょう。

目次

1.そもそも何が問題なのか

2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点

3.事例で考える

4.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

1.そもそも何が問題なのか

 前のブログでも書きましたが、相続発生を金融機関が確認した場合、被相続人の口座は凍結されます。これは、金銭(現金・預金)について、当然には分割されません。遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。これが、2019年7月1日より前の民法の取り扱いでした。


 私がまだ司法書士資格の受験生だった時に、予備校の講師(司法書士)が言っていたのですが、子供のいない夫婦の夫が亡くなり、すべて夫名義の預金しかなく、夫の入院費用や葬儀代を支出してしまったのち、手持ちの現金が底を尽き、預貯金も凍結されている状態で日々の生活にも困る状態で相談に来られた方がいたそうです。いろいろ手を尽くしたのですが、結局ダメで、相続人との遺産分割協議をするにも、夫の兄弟姉妹は遠方に住んでいて、すぐにできる状態ではなかったそうで、とても大変な思いをしたということでした。


 こういったことを踏まえて、民法が改正されています。


2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点

「(民法909条の2)

 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」

 前段の部分が重要で、遺産分割が成立する前であっても一定額の預貯金については、各共同相続人が単独でその権利を行使できる旨が規定されています。その一定額とは、「法定相続分の3分の1」です。

 それでは、夫の預貯金が90億円あるので「法定相続分の3分の1」なら、億単位のお金の引き出しができるのかというとそうではなく、上限が定められています。


「民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令


 民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。」


つまり、150万円が上限として定められています。これは、各金融機関ごとに150万円が限度となり、一つの金融機関内に複数の口座があっても、その合計額は150万円が限度となります。


3.事例で考える

 例えば、夫婦と子供一人がいましたが、子供は行方不明で連絡がつかない状態です。預貯金の口座はすべて夫名義で900万円の残高があったとします。この時妻は、自分の法定相続分2分の1の3分の1、つまり150万円までなら、遺産の一部分割みなしとして金融機関からの引き出しが可能となります。ただし、各金融機関の手続きが必要となりますので窓口にお問い合わせください。


4.まとめ

今回は、相続発生後、遺産分割までの間の預貯金の「いわゆる仮払い制度」の取り扱いについて解説いたしました。


 相続が発生して、手持ちの現金がない場合の手段として有効かと思います。遺産分割に時間がかかりそうな場合にはぜひ活用してみてください。

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議を解除するには)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議を解除するには)

相続発生後、遺産分割協議をして一度は決まった遺産分割。長男が母親を扶養するということで、他の相続人より多くの分割を受けていたのに、長男はその義務を尽くさないときに、他の相続人から、当該遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。そもそも、一度決まった遺産分割協議を解除することはできるのでしょうか。この辺りについて解説していきます。

目次

1.遺産分割協議の解除

2.事例で遺産分割協議の解除について考える

3.どうすれば遺産分割協議を解除できる

4.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

1.遺産分割協議の解除

 遺言の中に負担付遺贈というものがあります。財産を特定の人に遺贈する代わりに、相続が発生するまで、残された奥様の世話をしてほしいという条件付きだった場合、受遺者が世話をしなかった場合、相続人は相当の期間を定めてその履行の催告をすることができます。 この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができることになっています。


 それでは、相続発生後に、相続人全員が集まり協議して遺産の分割方法を決めた場合、その相続人の一人から当該遺産分割協議を解除できるのかといった問題があります。各家族において事情は様々ありますが、特定の相続人に遺産を多く分割したのに、その時に付加した条件を履行しない場合、負担付遺贈のように解除できるのでしょうか?


2.事例で遺産分割協議の解除について考える


 父親が亡くなり相続が発生しました。遺産分割協議の際、残された母親の面倒を見る(扶養する)という条件で、長男が他の相続人より多くの遺産をもらうことで合意しました。

 ところが、その長男が母親の扶養義務を尽くさない・・・・。

 業を煮やした次男が、遺産分割の解除を言い始めましたが、果たして解除することはできるのでしょうか?

 結論から言いますと、上記の場合ですと解除することができません。

「(最判平元.2.9)

 遺産分割協議において、共同相続人の一人が他の相続人に対して負担した債務を履行しないことを理由に当該遺産分割協議を解除することはできない。」

 この理由は、遺産分割協議はもともと遺産の分割そのものを目的とするもので、それは協議の成立とともに終了しています。解除の原因となるべき不履行が概念できないということです。解除を認め、遺産を再分割するということになると法的安定性が著しく害されてしまうことが理由です。

 それでは、一度成立した遺産分割協議は、解除することはできないのでしょうか?


3.どうすれば遺産分割協議を解除できる

 上記のように法定解除(債務不履行解除)はすることができませんが、合意解除はできます。(共同相続人全員で合意して、新たに遺産分割協議を行うこと)

 当事者間の新たな契約となるので問題がないということです。

 そもそも当事者全員が合意しているのだから、法的安定性は害さないということなのでしょう。


4.まとめ

 遺産分割協議において、共同想像人の一人が他の相続人に対して負担した債務を履行したことを理由に当該遺産分割協議を解除することができないとする判例により否定されています。この解除を認め遺産の再分割を許すことは、法的安定性が著しく害されることが理由です。

 遺産分割協議を契約とみて法定解除(民法541条)を相続人の一人から相当期間を定めて催告後、期間経過での解除ということはすることはできませんが、共同相続人全員の合意により解除することができるということです。

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議前に遺産の一部を処分された場合)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議前に遺産の一部を処分された場合)

遺産分割前に共同相続人の一人が、遺産の一部を使ってし待った場合の取り扱いはどのようになるのでしょうか。長男が両親と同居しており、次男が帰省の際に目にしていた財産が、遺産分割の時に無くなっていた、なんて場合がこれにあたると思います。遺産分割協議の時にもめる原因ともなりますので、その取扱いについて解説したいと思います。


目次

1.遺産分割前に遺産に属する財産を処分された場合の遺産の範囲

2.事例から考える

3.まとめ


1.遺産分割前に遺産に属する財産を処分された場合の遺産の範囲


「民法906条の2

 1.遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる

 2.前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。」


 とあります。


 つまり、すでに見当たらない財産について、遺産分割の対象に含めるか含めないかは、共同相続人全員の合意でできるということです。もちろん、所在不明の財産についても全員の同意があれば含めることができます。


 一方、共同相続人のうちの一部の者が処分した場合には、その者の同意は不要になるということです。

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

2.事例から考える


 両親と長男の家族があったとします。父親が亡くなったときの財産は

 ①土地家屋 500万円

 ➁現金   200万円

 だったとします。


 しかし、父親が亡くなった後に調べてみると、仏壇の中にしまってあった現金200万円がないことに母親が気付きました。母親は長男が使ったと疑っていますが、確たる証拠はありません。もちろん、母親が長男に尋ねましたが、長男は200万円の現金の持ち出しには、否定しています。民法906条の2の第2項では、共同相続人の一部がその財産を処分した場合について規定しています。このような場合にはどのようにすればいいのでしょうか?


 もし、母親、長男共に現金200万円を遺産に含まれることに争いがなければ、現金200万円は遺産分割の対象とすることができます。長男が200万円の盗難を否定していても、遺産分割に含めることについて同意すれば問題ないということです。


 もちろん、長男が持ち出したことを認めている場合には、長男の同意がなくても、遺産分割の対象とすることができます。


 この規定の制度趣旨は、遺産を持っているものが遺産分割前に処分して自分の利益としても、それがまかり通らないようにすることです。公平な遺産分割をするための規定と言えます。


3.まとめ


 なぜ、このような論点が重要になってくるのかと言いますと、遺産分割で法定相続分での分割をした場合、2の事例では、母親2分の1、長男2分の1となります。

 不動産は物理的に分けることはできないので、代償分割(長男が取得する持ち分を現金で埋め合わせる分割方法)でした場合、長男に渡す現金は、

①現金200万円を含めた場合:代償金額は、150万円

➁現金200万円を含めなかった場合:代償金額は、250万円

となり、含めた場合と比較すると100万円多く、母親が長男に渡すことになります。現金が少ない場合には、もめる原因となります。

 しかし、現状では「配偶者居住権」や「相続分の修正にかかる夫婦間における持ち戻しの意思表示推定」などが規定されており、より配偶者が被相続人と暮らした不動産を取得しやすいように改正がなされました。

※特別受益:相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた者がいる場合に、その相続人の受けた贈与等の利益のこと。

※特別受益の持ち戻し:被相続人から特定の相続人に対し生前贈与等が行われた場合には、特別受益があるわけですが、特別受益分を遺産の中に入れて具体的相続分を計算すること。


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(注意喚起)詐欺SMSの状況

(注意喚起)詐欺SMSの状況

本日、私の携帯にSMSメッセージが届きました。内容は、簡単なアルバイトで毎日6千円から1万2千円を稼ぐことができるそうです。外出不要でコミッションを稼ぐことで報酬が得られるというもの。怪しさ満点のメッセージでした。そこで、気になったのが、このようなSMS詐欺の動向。調べると2020年から2022年までのまとめたものがありましたのでお話をしたいと思います。


目次

1.きっかけのSMSメッセージ

2.世界の詐欺レポート2022年(2023年3月31日whoscall株式会社)

3.まとめ

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

1.きっかけのSMSメッセージ


(←写真)

2万円以上の金額ではなく、なんとなく働けば一日で稼げるような金額設定にしている点が、胡散臭さを醸し出していますよね。SMSメッセージを使った一種のフィッシング詐欺のことを「スミッシング」と呼ぶみたいですね。コロナ中は運送会社の宅配を装ったSMSなんかもよく来ていましたね。この時は、呼び込むサイトのサーバーがどの国にあるのか調査したことがありました。Ducksdnsという台湾のDNSを使い、自身の作成した詐欺サーバーに誘導して個人情報などを抜き取る仕組みをとっていました。


※司法書士になる前には、大手IT企業でネットワークエンジニアをしていましたから、特定はお手の物ですよ。



2.世界の詐欺レポート2022年(2023年3月31日whoscall株式会社)


「(世界で4億件以上の詐欺電話・SMSが横行!さらにSMSが詐欺事件の"最初の接触"として使用される傾向も判明)


新型コロナウイルスの流行によりオンラインサービスがさらに普及して以来、詐欺行為は2年以上にわたり各国で加速しています。

Whoscallは、世界のユーザーを対象に2022年の詐欺電話・SMSを調査したところ、4億540万件以上に上りました。

前年比13%減となりましたが、詐欺件数はパンデミック以前よりも圧倒的に多い結果となり、重要な問題であることを示唆しています。

さらに今回の調査では、詐欺師は普及率が高くコストが低いSMSを優先的に使用するため、詐欺事件における「最初の接触」の76%をSMSが占め、これまでで最も高い数値となりました。

また国別で比較すると、日本では95%、台湾、韓国、マレーシアでは80%以上の詐欺事件がSMSを通して発生し、日本では他国と比べ、圧倒的に詐欺SMSの割合が高いことがわかりました。

また、詐欺SMS以外にも、詐欺電話の手口である「ワン切り詐欺」携帯電話を1回だけコールして着信履歴を残すワン切りの電話をかけ、折り返しかけてきた電話を有料サービスへ接続して高額な料金を請求する詐欺)が横行しています。

Whoscallは台湾で、前年比3倍の件数となる年間最大46万件のワン切り詐欺電話をブロックしました。

またVoIPシステム(インターネット回線を利用して音声データを送受信する技術)を使った詐欺電話は、書店や社会福祉団体を装うものが多いこともわかりました。

また日本においては、スリランカからの「ワン切り詐欺電話」を検知しました。

このような、海外からのワン切り着信は「国際ワン切り詐欺」と呼ばれています。万が一折り返してしまった場合、高額な通話料金が請求されるほか、詐欺の「カモリスト」に載せられてしまい、新たな詐欺ターゲットになってしまう可能性があるので注意が必要。

また、万が一電話に出てしまった場合は、すぐに電話を切ることをお勧めします。


(個人情報漏えいにおいて、日本で最も流出した情報は名前、ログインパスワード、電話番号であることが判明)


個人情報保護法は、氏名、生年月日、指紋、性生活、医療歴、犯罪歴など、直接または間接的に特定可能な個人情報を保護する法律です。

しかし、官公庁や民間企業で保管されている個人情報は、管理が行き届かず、第三者がアクセスすることで流出することがあります。

Whoscallを開発するGogolook(本社・台湾)では、各国の市場で、どのような個人情報の漏えいが多いかを調べ、情報漏えいのリスクに注意を払うように促しています。


日本と韓国では上位3項目が、名前、ログインパスワード、電話番号です。

4位から8位は、国籍、メールアドレス、住所、誕生日、ID番号となり同順です。

また台湾、タイ、マレーシアでは、上位にログインパスワード、電話番号、氏名が占めており、4位から8位は、国、住所、誕生日、Emailがそれぞれ3つの国で順番が若干異なっています。


流出した情報は、それぞれ異なる"リスクシナリオ"(起こりうるリスク)につながります。

例えば、パスワードが流出した後、オンラインバンキングやソーシャルネットワークのアカウントが盗まれることがあります。

また詐欺師が、名前、電話番号のほか、支払いや買い物の記録にアクセスすると、簡単に電話やSMSによる詐欺を開始することができます。

さらに名前や住所が流出すると「到着時に代引きで支払いを要求される身に覚えのない荷物」が届く可能性があります。


(各国別の漏洩した情報順位)

」(引用終わり)


3.まとめ


 SMSメッセージを使った詐欺を防止するには、登録された連絡先以外からのメッセージに貼られたリンク(HPなどを表示させるアドレス)をクリックしたり、その電話番号には絶対に返信しないことが重要です。どうしても興味を持ってしまいますが、何もしないのが一番の対策です。特に電話番号に「+○〇」と数字が記載されている電話番号は、国番号が指定されているというもので、外国からのメッセージです。怪しいと思ってください。

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議で財産をもらわなかったので相続を放棄した?)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議で財産をもらわなかったので相続放棄した?)


相談者の中で「相続放棄をしたから、債務は私には来ませんよね。先生。」とおっしゃられる方がいます。私が「家庭裁判所に相続放棄申述書を出されたんですか?」と尋ねると、出していないと答えられ、「遺産分割協議で遺産をもらわなかったから、相続放棄した。」と言ってました。これって相続放棄なのでしょうか?


目次

1.遺産分割前の相続財産についての法律関係

2.相続財産の遺産分割についての関連判例

3.遺産分割の効力

4.まとめ


1.遺産分割前の相続財産についての法律関係


相続財産の個々の財産の上に持ち分がある状態です。(共有と同じ状態)

そして、遺産分割前におけるその持分の譲渡は有効となります。

ですので、不動産の相続登記を法定相続分で行う場合には、遺産分割協議書と印鑑証明書を求められてはいません。

それでは、被相続人の債権(貸金など)・債務(借金など)は、どのようになるのでしょうか?

これは、各相続人に当然に分割されます

この部分が、今回の議論の上で考慮しなければならない箇所になります。それでは、具体的にみていきましょう。


2.相続財産の遺産分割についての関連判例


 ①最判昭29.4.8:金銭債権

  金銭債権(被相続人の貸金など)について、当然に分割される。つまり遺産分割の対象とはならないとあります。

  他の財産の遺産分割前でも債務者にその相続分に相当する金銭の支払いを求めることができるということになります。

 ※ただし、これをしてしまうと、単純承認となり相続放棄はできなくなりますので、相続放棄を考えている場合には、請求してはいけません。


 ➁最判平4.4.10:金銭

 金銭(現金・預金)について、当然には分割されない

 遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません

 ※このために、金融機関は被相続人の預金を凍結するわけです。


 ③最判昭52.9.19:特定不動産売却

 共同相続人の全員の合意により遺産を構成する特定の不動産を第三者に売却した場合、その代金債権は、各相続人にその持分に応じて帰属し、各相続人は、遺産分割をすることなく、個々にこれを請求することができます。

 なぜなら、特定の不動産(共有状態)のものを相続人全員の同意で売却し、①の金銭債権にしたため、分割前に各相続人の持ち分に応じた請求が可能になるわけです。

 判例は、金銭・金銭債権といったプラスの財産についてその基準を示しています。

 それでは、被相続人の債務はどう考えればいいのでしょうか?

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

3.遺産分割の効力


「民法909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」

 遺産分割協議がまとまれば、その内容で相続開始時にさかのぼって効力を生じます。しかし、この内容は、被相続人の債権者のような第三者の権利を害することはできません。

 例えば、債務を長男が全部背負う代わりに、長男が財産を多くもらう遺産分割協議が成立したとします。この内容は、相続人全員の間では有効ですが、亡くなった父親の借金の債権者の権利は害せないと言っているのです。

「遺産分割協議で遺産をもらわなかったから、相続放棄した。」というのは、父親の借金の請求者の権利は害せないということになり、「相続放棄」ではないということになります。単に、相続人間で合意しただけの内容ということになります。

 誤解されていた方もいたのではないでしょうか。


4.まとめ


 ①遺産分割前の金銭は当然には分割されない。

 ➁遺産分割前の金銭債権は当然に分割される。

 ③遺産分割協議で財産をもらわなくても、第三者の権利を害することはできないので「相続放棄」ではない。


以上です。

注意していただきたいのは、遺産分割協議をして相続登記をした場合、自身の相続分を処分したものとみなされて、たとえ相続放棄を期間内に申述しても相続放棄はできなくなるので注意が必要です。

必ず、相続放棄をしたい場合には、専門家のアドバイスを受けてください。


令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議がまとまらないとき)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議がまとまらないとき)

相続が発生し、遺言書もないときに相続人全員で遺産分割協議をして遺産を分割していきます。この時に、どうしても協議がまとまらない場合にどのような手段があるのでしょうか。その点について、解説していきます。


目次

1.遺産分割の方法

2.遺産分割協議がうまくいかなかった場合

3.遺産分割調停の手続き

4.どこの家庭裁判所に申立てをするのか

  5.遺産分割調停の申立てに必要な書類等  

 6.遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合どうなるの?

7.最後に


1.遺産分割の方法


 ①遺言による指定分割

  「民法第908条前段

  被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定め(遺産分割方法の指定)、もしくはこれを定めることを第三者に委託すること(遺産分割方法の指定の委託)ができます。」


 ➁協議分割

  「民法第907条第1項 遺産分割自由の原則

  共同相続人は、遺言による遺産分割方法の指定又は指定の委託がない限り、いつでも協議で遺産の全部または一部の分割をすることができます。」


  ※令和5年4月1日から施行される「遺産分割新ルール 10年・5年の猶予期間」になり、遺産分割協議はいつでもできるわけではなくなるので注意が必要です。期間を過ぎた場合には、法定相続による遺産分割協議しかできなくなります。


 ③裁判分割


  「民法第907条第2項

  協議がととのわないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、家庭裁判所にその全部または一部の分割を請求することができる。

   民法第907条第2項但し書き

  ただし、遺産簿一部分割をすることにより他の共同相続人の利益を害する恐れがある場合には、一部分割を請求することはできない。」

 つまり➁の協議(話し合い)でまとまらないなら、家庭裁判所の遺産分割調停によることとなります。

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

2.遺産分割協議がうまくいかなかった場合

遺産分割協議は、相続人の全員が参加し、全員の同意がなければなりません。ですので、時として、協議がうまくまとまらないケースもあります。そんな時は、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」を申立することとなります。


3.遺産分割調停の手続き


 相続人全員で遺産分割の内容を裁判所で行うための手続きとなります。遺産分割調停では、裁判所の調停委員にサポートしていただきながら手続きを進めていくことになります。顔を合わせたくない相続人との話し合いも、裁判所の配慮により調停委員が間に入り顔を合わせることなくスムーズに進めていくことができます。調停委員が間に入ることによって、相続人同士が冷静に話し合うことができます。


 調停の手続きでまとまった内容は、調停調書にまとめられます。その後、調停調書の内容に従って遺産の分配を進めていくことになります。


4.どこの家庭裁判所に申立てをするのか?(管轄裁判所)

遺産分割調停は、相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てをすることができます。相手方とは、申立てをする相続人以外の相続人の方のことです。また、申立人とそれ以外の相続人との合意によって決めた家庭裁判所に対しても申立てをすることができます。


5.遺産分割調停の申立てに必要な書類等


 例)被相続人:夫、相続人:妻、子供の場合


 ①被相続人(亡くなられた方)1人に対して1,200円分の収入印紙と切手

  (必要な額と枚数が家庭裁判所ごとに異なるので事前に確認が必要です。)

 ➁遺産分割調停申立書

 ③被相続人(亡くなられた方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本

 ④相続人全員の戸籍謄本・住民票

 ➄相続関係説明図

 ⑥遺産を証明するもの(固定資産評価証明書、預金通帳の写し等)

 ※必要書類は、相続の内容により異なりますので、専門家への相談をお勧めいたします。


6.遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合どうなるの?


 遺産分割調停は、話し合いによって解決を目指す手続きです。相続人の全員が合意しなければ成立はしません。1人でも納得しない人がいると成立しないのです。調停が不成立になると「自動的に審判手続きに移行」します。


 遺産分割調停では、調停委員が間に入り話し合いにより解決する手続きですが、審判では「話し合いは行われません」。裁判と同じように証拠に基づいて裁判官が審判を下します。つまり、調停のように話し合いではなく、裁判官が審判を下して遺産の分割方法を決めるということになります。そして、この審判には強制力がありますので、必ず従わなければなりません。相続人の希望に沿った結論ではない場合もありますが、どうしても解決できなかった場合の解決手段と考えてください。


 遺産分割により取得した不動産については、この遺産分割調停調書、審判書を基に登記をすることとなりますが、すでに家庭裁判所で相続関係を確認しているために、再度戸籍等の添付が不要となります。


7.最後に


 相続に関する相談で遺産分割協議に応じてくれない、そもそも遺産分割協議に参加してくれないといった相談を受けることがありますが、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の手続きを話し、それでもダメな場合は実際に手続きに入っていただくようにアドバイスしております。

 極力家庭裁判所の手続きを避ける理由としては、その後の家族関係の悪化です。できる限り話し合いで解決したほうが良いと考えております。

 遺産分割調停や審判の話をすると、たいていの場合、遺産分割協議に応じてくれるケースが多いです。ただし、応じてくれない場合も当然あるので、上記手続きの内容を参考にしてみてください。


令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議を「円満」に行うには)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議を「円満」に行うには)


相続が発生し遺言書がなかった場合、相続人全員による協議をして特定の財産を度の相続人の所有にするのかを定める「遺産分割協議」をする必要性が出てきます。遠方に住んでいる相続人が亡くなった父親の土地家屋の持ち分を相続しても管理は難しいですからね。当然、相続人全員にとって財産価値的に平等にするのがいいのですが、不動産はあるが現金預金が少ない場合などは協議が紛糾する可能性があります。これを円満に行うためのコツについて、解説していきます。


目次

1.遺産分割協議書とは

2.遺産分割協議を円満に終わらせるコツ

3.遺産分割協議でもめた場合

4.裁判所の調停、審判による遺産分割協議について

 5.まとめ


1.遺産分割協議書とは


 遺産分割協議書は、相続人たちが相続に関する紛争を解決し、遺産を分割するために作成される書類です。

 遺産分割協議書には、以下のような内容が記載されます。


  ①遺産の資産価値や内容

  ➁相続人の氏名や続柄

  ③相続人が受け取る遺産の内容、受け取る割合、受け取る時期など

  ④遺産分割に関する約束事やルール、決定事項など


 遺産分割協議書は、相続人全員が合意した内容をまとめた書類となります。この書類に署名及び実印での押印をすることで、相続人全員がこの内容に同意し、それぞれの権利や義務が確定することになります。


 また、遺産分割協議書は、民法上の契約書として法的な効力を持ちます。そのため、遺産分割協議書に記載された内容は、相続人たちの間での紛争が起こった場合に、裁判所での審判材料として利用されることがあります。


2.遺産分割協議を円満に終わらせるコツ


遺産分割は、相続人間で紛争が起きることがあるため、円満に終わらせるためには以下のようなコツがあります。


  ①話し合いの場を設ける

 遺産分割協議は、相続人全員が集まって話し合いをすることが望ましいです。相続人全員が同じ場所に集まることで、話し合いがスムーズに進むことが期待できます。


  ➁適切なタイミングで話し合う

 遺産分割協議は、葬儀や葬式などの精神的負担が大きな時期に行うことが多いですが、そのようなタイミングで話し合うことは避けるべきです。適切なタイミングで話し合いをすることが大切です。


  ③専門家のアドバイスを仰ぐ

 遺産分割協議は、専門的な知識が必要です。弁護士や税理士などの専門家に相談することで、遺産分割協議が円滑に進むことが期待できます。


  ④相続人の意見を尊重する

   遺産分割協議は、相続人全員の意見を尊重しなければなりません。相続人全員が満足できる遺産分割協議を目指し、お互いの気持ちを理解することが大切です。

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

  ➄感情的にならない(一番大事)

 遺産分割協議は、相続人間で感情的になることがあるため、冷静な対応が求められます。相手の言い分を聞いた上で、冷静な判断をすることが大切です。

  ⑥部外者を協議に参加させない

 以前、兄弟の配偶者で「法律に詳しい方」にお願いして協議を進めようと思います、という話を聞いたことがあります。これ、全くの間違いです。まずは、「法律に詳しい方」は専門家ではありません。しかも、相続人の配偶者は第三者ではなく「利害関係人」です。その相続人の取り分が大きくなれば間接的に、その方の懐も潤う関係になるからです。もめる原因になりますので、必ず相続人だけで話し合いをするようにしましょう。


 以上のようなコツを意識しながら、相続人全員が満足できる遺産分割協議を目指すことが重要です。


3.遺産分割協議でもめた場合


 遺産分割協議でもめた場合は、以下のような手続きが考えられます。


 ①仲裁や調停の申立て

  まず、専門家に相談して、仲裁や調停の申立てを行うことができます。調停は、調停員と呼ばれる専門家の仲介のもとで、双方が話し合いをし、解決することを目的とした手続きです。調停が成立すれば、遺産分割協議書を作成し、解決を図ることができます。


 ➁裁判の提起

   調停の手続きでは遺産分割協議書を作成することができない場合、法的な手続きで解決を図る必要があります。この場合、裁判を提起することになります。裁判所には、相続に関する法律に基づき、遺産分割を決定する権限があります。裁判所での審判は、公正かつ公平な判断を下すことが期待されます。


 ③相続放棄

  遺産分割協議がまったく成立しない場合、相続放棄という手続きをとることができます。相続放棄とは、相続人が自らの相続権を放棄することです。相続放棄を行えば、その相続人に関しては遺産分割の問題がなくなります。(相続人ではなくなってしまうため)相続放棄には相続が発生したのち3か月以内という期間制限があります。また、相続放棄をした場合、相続人ではなくなるため、当該相続での相続分を受け取ることはできません。


 遺産分割協議でめぐりめぐって紛争が起きた場合には、弁護士に相談したり、調停や裁判などの手続きを行うことで解決を図ることができます。


4.裁判所の調停、審判による遺産分割協議について

 遺産分割協議において、相続人たちの合意が得られない場合には、裁判所による調停や審判が行われることがあります。

 調停は、裁判所に申し立てをし、専門家による仲介のもとで相続人たちが話し合い、解決を図る手続きです。調停によって解決が図れれば、遺産分割協議書を作成し、その内容に基づいて遺産分割が行われます。

 一方、審判は、裁判所による判断で、法的な手続きが行われます。裁判所は、相続に関する法律に基づき、相続人たちが主張する内容や証拠を審査し、遺産分割の判断を下します。審判の結果、遺産分割が行われる場合は、その内容が裁判所の決定として確定します。

 調停や審判は、裁判所による手続きであるため、法律の知識を持った弁護士の支援が必要となる場合があります。遺産分割協議で紛争が生じた場合には、弁護士に相談し、適切な手続きを行うことが重要です。


5.まとめ


 遺産分割協議書の作成において、相続人全員の協力なしでは完結することは困難です。協議をするうえで、感情的にならないということが重要になってきます。

 また、相続税も遺産の分け方により、その額が大きく異なる場合が出てきます。

 出来上がった「遺産分割協議書」「遺産分割調停書」「遺産分割審判書」は、相続した不動産の名義の書き換え登記に必要となります。「遺産分割協議書」には、各相続人の印鑑証明書の添付が必要となりますが、調停書や審判書には不要です。

 つまり、遺産分割が終わらない限り、当然ですが不動産の名義の変更はできないということになりますので、専門家のアドバイスを受けながら、円満な遺産分割を目指すようにしましょう。


令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議の期間制限)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議の期限制限)

令和5年4月1日の民法改正により、遺産分割協議のルールが変更になっています。ルール変更に伴い、期間制限が発生しています。この期間制限と他の法令の期間制限を比較しながら解説していきます。


目次

1.遺産分割協議の改正内容

2.他法令の期間制限

3.まとめ



1.遺産分割協議の改正内容


 遺産分割協議には、法律上の期限はありません。つまりいつ行っても問題はないということです。しかし、2021年4月の民法改正により、「特別受益」と「寄与分」の内容が変更されたことにより、影響が出ています。

 ①特別受益とは

  相続開始後10年が経つと、被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益

 ➁寄与分とは

  相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分

 これらの特別受益・寄与分について、相続開始後10年経過すると、その権利を主張できなくなってしまいました。

 そのために、遺産分割協議を10年以内にする必要があると言われるようになりました。

 民法改正は、2023年4月1日から施行されます。また、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用され、その場合、施行日から5年間の猶予期間となっていますので注意が必要です。

 ※期間経過した場合、原則、法定相続分での分割となるのですが、相続人全員の同意があれば、法定相続分以外の分割も可能です。

2.他法令の期間制限


 それでは、今回の民法改正で10年以内に遺産分割協議をすれば安心・・・というわけではありません。他にも法令による期間制限を受ける場合があります。


 ①不動産登記法の改正

  2024年4月1日より、不動産登記法が改正され「相続登記義務化」が始まります。

  相続が発生し、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすることが義務づけられました。また、②遺産分割協議が成立したときは、成立した日から3年以内に名義変更登記をすることが義務づけられています。これらの義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。

  3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、この過料を免れるためには、いったん法定相続分による相続登記をするか、相続人全員の「相続人申告登記」をしておく必要があります。法定相続分による登記は、登録免許税等が発生しますし、「相続人申告登記」をしたとしても、そのまま不動産を売却することはできませんし、その間に新たな相続が発生するリスクも抱えています。


 ➁相続税申告

  相続税申告が必要な場合、相続が発生したことを知った日から10カ月以内に申告し、納税しなければいけません。申告期限内に申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。

  また、10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など相続税額を低くする特例が使えません。相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、その後遺産分割が成立した際に更正請求を行うことで、特例の適用を受けて納めすぎた金額の還付を受けることはできます。ただし、更正請求の手間が増える、相続税申告時の納税額が高くなり納税資金を確保する必要が生じるため、できるだけ期限内に遺産分割協議を済ませておいた方が、手間はかかりません。


3.まとめ


 遺産分割協議自体には法律上の期限はありませんが、特別受益や寄与分の主張が制限される期限、相続登記期限、相続税申告期限、といった期限があります。

 これらの期限近くになり、焦ることのないよう、早めに専門家に相談し、期限内に遺産分割協議をまとめることをお勧めいたします。

 ご相談者の中でも、収益物件を所有されている夫が亡くなり相続登記をしておらず、奥様の方も最近認知症気味で、どうすればいいのかというご相談を受けます。相続人が認知症になった場合には、遺産分割協議をするには、成年後見人を就けるしか方法はなくなってしまいますので、事前の対策を早急に検討してみてください。


令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議書とりまとめ)

令和6年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議書とりまとめ)

相続が発生した場合に、被相続人の遺言書がなかった場合、遺産分割協議を相続人全員でしなければ具体的な相続分を定めることはできません。その遺産分割協議書の様式や記載内容などについて解説いたします。

目次

1.遺産分割協議書の書式

2.遺産分割協議書作成のポイント

3.財産別に作成した遺産分割協議書

4.相続人ごとに作成した遺産分割協議書                             5.まとめ


1.遺産分割協議書の書式

 遺産分割協議書は、相続人全員で相続財産をどのように分割するのかを話し合い、同意した内容を書面にまとめたものですが、法的に必ず作成しなければならない書面ではありません。 そのため、決まった書式もありません。

 しかし、適当に書けばいいのかというとそうではありません。各項目において、今まで問題なく遺産分割の協議の内容の効力を有効にするコツみたいなものがあります。


2.遺産分割協議書作成のポイント


 遺産分割協議書の各文言には、細心の注意が必要です。記載内容によっては、遺産分割協議書そのものが使えなくなってしまう場合がありますので、注意が必要です。

 ①一部の相続人の印鑑証明書の交付を渋っている場合

  その者に対する「遺産分割協議書真否確認の勝訴判決」をもって、その者の印鑑証明書変えることができます。(昭56.11.20民三6726号)

 ➁相続人の一部が遺産分割協議書への実印での押印を拒んでいる場合

  右遺産分割により、特定の不動産を単独で相続することとなった者は、押印を拒んでいる者に対する「所有権確認訴訟の勝訴判決」及び当該遺産分割協議書(他の相続人等の印鑑証明書付)を添付して、単独で遺産分割による相続の登記を申請することができます。(平4.11.4民三6284号)


 また、以前取り扱った遺産分割裁判の判決書を添付しての相続登記をする際、当該遺産分割裁判時の不動産から漏れていた建物がありました。裁判の内容とは異なる物件になりますので、「すべての相続人は、個々に記載された以外の財産又は債務があった場合は、相続人Aに相続させることに異議はないものとする。」という漏れた財産の帰属先を決めておきます。しかし、その判決書には「改めて協議することとする。」と記載していました。もめているから裁判をしたのに協議なんてできるわけありませんよね。本当にこの時は困りました。


令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

3.財産別に作成した遺産分割協議書

こちらも依頼の際にニーズがある話なのですが、遺産分割協議書は一般的には、不動産、預貯金等の相続財産をどのように分けるのかを相続人全員で協議し合意して成立します。

つまり、相続財産全てについて記載があるわけなのですが、この遺産分割協議書は、各種相続手続きに使用しますので、それぞれの手続きをする際に遺産分割協議書を提出すると、不動産をどれだけ持っているかなどの手続き先以外の財産の状況も、手続き先に全て知られてしまいます。

これを嫌う方もおり、不動産登記には不動産の遺産分割内容だけなど財産ごとに作成する場合もあります。もちろん、このような形の遺産分割協議書も、各財産について、相続人全員の署名と実印の押印があれば成立することになります。


「遺産分割協議書は必ず1通で作成しなければならないという制限はない。(昭35.12.27民甲3327号)」


4.相続人ごとに作成した遺産分割協議書


 遺産分割協議書が相続人ごとに作成されている場合であっても、遺産分割協議書の内容が同一であり、相続人全員が合意できている事実が書類上で確認できるものであれば、遺産分割協議書として取扱うことができます。

 つまり、このような遺産分割協議書を有効に成立すると認めてもらうには


 ①遺産分割協議書の内容が同一

 ➁相続人全員が合意できている事実が書類上でわかる


ことが要件になります。


 不動産登記の実務上も、遺産分割協議書と同一の内容を、相続人の人数分「遺産分割証明書」として作成し、当該証明書に相続人全員が署名(記名)と実印を押印することで相続登記が可能です。

 可能であれば、1枚の遺産分割協議書に連署・押印する形が望ましいですが、時間が限られている場合や、一部の相続人が海外に居住している場合などは、前述の遺産分割証明書の形が適しているケースもあります。例えば、相続人の一人が海外に住んでいる場合などがこれにあたると思います。


「(『登記研究』170号・100頁・質疑応答)

質問:同一内容の遺産分割協議書を、共同相続人が各人別に夫々作成(連署せず)した場合は、遺産分割の協議を証する書面といえないか。

回答:同一内容の遺産分割協議書を数通作成し、それに各自が各別に署名捺印したものであっても、その全部の提出があるときは、遺産分割の協議書とみて差しつかえないものと考えます。」


5.まとめ


 相続登記義務化に伴い、相続発生後の相談件数が増加しております。その中で、とりまとまった遺産分割協議の内容を反映した遺産分割協議書作成の依頼も多数ありました。

 専門家に依頼した場合、こういった細かい内容についても必ずチェックしています。

 インターネットにも各種雛形が掲載されていますが、どのケースでも利用できるとは限りませんので、ご自身に合った内容にすることが重要です。少しでも不安がある場合には、専門家への相談をお勧めいたします。

 また、遺産の分け方によっては、相続税が変わってくる場合がございますので、「相続法律・税務無料相談会」もご活用ください。


終活支援サポート(尊厳死宣言公正証書とは)

終活支援サポート(尊厳死宣言公正証書とは)

先日、岡山県倉敷市の倉敷公証役場に出張したとき、面談室内の机に「尊厳死宣言公正証書」の記載サンプルがありました。内容を確認すると、終末医療での延命措置の禁止についてなど、細かく内容を記載してありました。7年程前まで介護施設の施設長をしていたので、興味がわき拝見させていただきました。この「尊厳死宣言公正証書」についてお話をしたいと思います。


◆目次◆

1.「尊厳死宣言公正証書」とは

2.どのような内容を記載できるのか

3.まとめ


令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

1.「尊厳死宣言公正証書」とは


「過剰な延命治療を打ち切って、自然の死を迎えることを望む人が多くなってきており、事実実験の一種として、「尊厳死宣言公正証書」が作成されるようになってきました。

「尊厳死」とは、一般的に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え、または中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいう。」と解されています。

 近代医学は、患者が生きている限り最後まで治療を施すという考え方に忠実に従い、生かすべく最後まで治療を施すことが行われてきました。しかし、延命治療に関する医療技術の進歩により、患者が植物状態になっても長年生きている実例等がきっかけとなって、単に延命を図る目的だけの治療が、果たして患者の利益になっているのか、むしろ患者を苦しめ、その尊厳を害しているのではないかという問題認識から、患者本人の意思(患者の自己決定権)を尊重するという考えが重視されるようになりました。

 「尊厳死」は、現代の延命治療技術がもたらした過剰な治療を差し控え、または中止し、単なる死期の引き延ばしを止めることであって、それは許されると考えられるようになりました。

近時、我が国の医学界等でも、尊厳死の考え方を積極的に容認するようになり、また、過剰な末期治療を施されることによって近親者に物心両面から多大な負担を強いるのではないかという懸念から、自らの考えで尊厳死に関する公正証書の作成を嘱託する人も出てくるようになってきました。

「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、または中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするものです。

ところで、尊厳死宣言がある場合に、自己決定権に基づく患者の指示が尊重されるべきものであることは当然としても、医療現場ではそれに必ず従わなければならないとまではいまだ考えられていないこと、治療義務がない過剰な延命治療に当たるか否かは医学的判断によらざるを得ない面があることなどからすると、尊厳死宣言公正証書を作成した場合にも、必ず尊厳死が実現するとは限りません。

 もっとも、尊厳死の普及を目的としている日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果によれば、同協会が登録・保管している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる医師の尊厳死許容率は、近年は9割を超えており、このことからすると、医療現場でも、大勢としては、尊厳死を容認していることがうかがえます。いずれにしろ、尊厳死を迎える状況になる以前に、担当医師等に尊厳死宣言公正証書を示す必要がありますので、その意思を伝えるにふさわしい信頼できる肉親等に尊厳死宣言公正証書をあらかじめ託しておかれるのがよいと思われます。」(公証人連合会HPより引用)

 公証役場で尊厳死宣言の公正証書を作成する場合には、宣言をされる方の印鑑登録証明書または運転免許証などの顔写真付きの官公署発行の身分証明書を用意していただき、あらかじめ電話で日時を予約して、相談、打合せにお越しください。 宣言の内容等について、公証人が十分な打合せをさせていただいた上で公正証書作成の準備をしていただけます。


2.どのような内容を記載できるのか


 例文の中で一番に目を引いたのは、「延命措置」の否定と、「緩和ケア」の要望です。治る見込みのない状況での延命措置を否定し、死に至るまでに機関の中で痛みを伴う場合には、緩和措置を積極的にしてほしいという内容でした。

 これを施設に入所するときに施設の責任者に見せて、意思表示をしておく必要があります。


3.まとめ


 以前、介護施設の施設長の経験がありますが、施設に入所してくる利用者の方の状態は様々で、意思表示をしっかりできる方もいれば、すでに認知症が進み意思表示できない方もいらっしゃいます。

 意思表示できれば問題ないですが、意思表示できない場合、ご家族の意思表示が優先されていたように思います。はじめに医師に係る段階で自身の意思表示を公正証書をもってしておけば、ご自身の意思が優先されます。

 元気なうちに、ご自身の延命治療などについての意思表示として「公正証書」で残しておくこともできます。近いうちに私自身も作成しようと思っております。その時についてもお話をしたいと思います。


令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

令和6年4月1日相続登記義務化(会社経営者が亡くなった場合の相続について)

複数の会社経営をしていたAさんが亡くなり、配偶者と子供2人いました。さて、どのように相続すればいいのか、という問題になってきます。一般の方であれば、遺産分配を遺産分割協議を経て決めていただく必要があるのですが、経営者が保有する「株式の評価」によっては、様々な問題が発生してきます。また、不動産が経営者の個人名義であった場合にも、事業継続そのものに問題が発生するケースもあります。

◆目次◆

1.会社経営者Aさんの相続発生

2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)

3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点

4.まとめ


1.会社経営者Aさんの相続発生


 まずは、遺言書の有無の確認が必要です。遺言書があれば、その内容に従って遺産を分割することになります。しかし、遺言書がなかった場合、遺産の範囲を見ていかなければなりません。

遺言書の有無にかかわらず、遺産の範囲とその額の確定作業は、専門家に任せた方がいい場面です。総合的に課税される相続税を想定しながら、遺産をどのように配分すればいいのかを相続専門の税理士先生に確認し、Aさん名義の預金、有価証券、保険、保有株式、不動産、動産の額を確定していきます。特に時間を要するのが、経営者Aさんの保有する自社の株式の1株当たりの純資産の評価のために、3期分の決算書などが必要となってきます。

 そして、遺言書の内容又は遺産分割協議の内容に従って、遺産を分配することになるのですが、不動産の名義の変更や法人の代表者の変更は、司法書士が対応することになります。

2.会社継続に留意しなければならない理由(株式の分散防止)


 法人の役員変更の内容については相続人の方に決めていただく必要があります。法人の事業を引き継ぐ意思の確認やその素養なんかも踏まえて決めていただく必要があります。

 事業を引き継ぐ意思があっても素養がなければ、事業を承継しても経営ができない可能性があるからです。ここはじっくり話し合って決めていただくようにしています。

 そして一番の問題は、経営者が保有していた株式を誰に引き継がせるかという点。特に株式会社では、「所有」と「経営」が分離しています。「経営」の面は、先ほど話した事業を引き継ぐ相続人の意思と素養なのですが、株式は株式会社の「所有」を意味しています。

例えば、定款の目的の内容を変えて、新規事業を始めたいと思った場合、「株主総会の特別決議」が必要となりますが、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が要件となります。経営者が保有していた株式を分散させてしまいますと、意見の対立が起こった場合、この要件を充たすことができず、定款変更すらできない状態に陥るリスクがあります。


3.建物は法人所有だが土地が経営者個人名義の場合の問題点


 以前、県外の方で、酒造会社の経営者が亡くなり、工場は法人名義でしたが、土地が経営者の個人名義でした。会社を弟が引き継ぐことになったことに対して相続人間(子供である兄弟)で争いになり、結局、法定相続分(各2分の1)で土地名義を変更することになりました。その後、兄の方から「共有物分割請求」をされてしまい、土地の価額の半分を支弁できなかった弟は、工場を撤去して土地を現物分割することになってしまいました。つまり、事業継続できなかったということになります。


4.まとめ


 経営者の相続に関してお話をしてきました。ポイントは「自社の保有株式の分散防止」と会社の工場などに関連する不動産で、「個人名義の不動産を生前に法人名義に変えておく」などの対処法を考える必要があるかと思います。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続人に行方不明者がいる場合)

令和6年4月1日相続登記義務化(相続人に行方不明者がいる場合)



今までに何度か相続人が音信不通となっているケースがありました。

音信不通と言っても、住所や居住場所が特定されている場合には、何とか連絡をする方法はあるのですが、中には戸籍などからは追えず、他の相続人も今まで何の連絡もないと話している場合には、どのように遺産分割協議を進めていけばよいのでしょうか。




◆目次◆

1.遺産分割協議を成立する要件

2.住所・連絡先が分からない場合

3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)

4.完全に行方不明の場合

5.まとめ


1.遺産分割協議を成立する要件


 相続財産の分配方法を決めるためには遺産分割協議が必要です。

 この遺産分割協議は法定相続人全員で行わなければならず、誰か一人でも欠けた状態で行われた協議は無効となります。

 相続登記においても法定相続人全員が記名し実印にて捺印した遺産分割協議書と印鑑証明書の添付が必要となります。

 つまり「相続人全員」でなければ、遺産分割協議は無効となります。ですが、行方不明など連絡がつかなかったり所在がわからない場合にはどうすればいいのでしょうか。


2.住所・連絡先が分からない場合


 疎遠になった相続人の住所を調べる方法として、戸籍の附票を確認することで確認できる場合があります。ただし、本籍地で取得ができますので、調査が必要となるかもしれません。相続人の調査として、弁護士、司法書士、行政書士にお願いすると、「職務上請求」をすることにより調査が可能です。勿論、調査を要する他の相続人の方でも窓口で取得することができます。

 所在が明らかとなっても、その方が応じてくれるかどうかはわかりません。


3.連絡をしても何も返信がない場合(拒否している場合を含む)

 何かしらの理由で連絡しても応答してもらえない、または話し合いを拒否されてしまう場合には家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるという手段があります。調停を申し立てると家庭裁判所から呼び出し状が送達されるので、家庭裁判所で話し合いを行い、遺産分割を成立させることになります。

 しかし、いきなり家庭裁判所に調停を申し立てると、「なぜ返信しないのか」「なぜ拒否するのか」といったことが、法廷での話し合いの場で明らかになるので、話し合いがこじれるかもしれません。このケースではトラブルに発展する場合が多いので、自身でもしくは代理人として依頼した弁護士に内容証明郵便で、調停の手続きに入る前に解決できるかどうか探ってみた方がいいと思います。


4.住居すらわからない行方不明の場合


戸籍の附票などに記載された住所には存在せず、どこで暮らしているかも分からず、連絡手段もない状態になってしまっている場合、遺産分割協議は法定相続人全員で行う必要があるので、相続人の中に不在者がいる場合にはこれを行うことができません。

この場合には、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てることで、その管理人を含めて遺産分割協議をすることができます。不在者財産管理人の申立ては、利害関係人または検察官が家庭裁判所に対して行いますが、相続人の一部が不在者の場合には他の相続人が利害関係人に該当するのでこの申立てを行うことができます。

家庭裁判所が介在するので、仮に行方不明者をないがしろにしたような遺産分割協議の場合、家庭裁判所が許可を出さない可能性もありますので、注意が必要です。

また、失踪宣告を活用する場合もあります。失踪宣告とは、不在者についてその生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。


5.まとめ


 このように、行方不明でもその状況次第で対応する手法が変わってきます。

 連絡が着く状態であれば、できる限り穏便に話を進めることを心掛けてください。

 また、どの状況にあるのかわからない場合には、専門家に相談をすることをお勧めいたします。どのような資料を取得して調査するのか、相続専門の専門家なら答えを持っているはずです。そしてその後の対応についてもアドバイスをしていただけると思います。



令和6年4月1日相続登記義務化(収益物件の相続について)

2024年4月1日相続登記義務化(収益物件の相続について)

例えば、相続税対策として、個人名義で賃貸マンションを購入し、金融機関から融資を受けているケースについての相続を考えてみます。物件価格が高額で融資額が大きいと「相続税対策」として、事前に税理士などのアドバイスを受けて購入している場合が多いです。このような収益物件がある場合について、お話をしていきたいと思います。

目次

1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?

2.収益物件の相続手続き

3.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点

4.ローンが残っている時の注意点  

 5.まとめ

1.個人名義で賃貸不動産を購入すると相続税対策になる?

 アパートのような収益物件は、相続税評価額がかなり低くなる点が大きなメリットです。アパート等の不動産の相続税評価額は一定のルールに基づいて計算され、時価(実際の価値)の30~50%程度になるので、節税になります。

 新築の場合でも、金融機関からの融資を受けた場合、新築の収益物件とローンが残りますので、その差額で相続税対策をしているケースもあります。


2.収益物件の相続手続き

 まずは大きく以下の手順が必要です。

①相続登記する。

 名義を亡くなった方から、相続人のどなたかに名義を変更する必要があります。


➁管理会社に連絡し、入居者に通知する。

 管理契約の当事者が亡くなっていますので、基本的に物件を引き継いだ相続人と管理契約を取り交わす必要があるためです。また、アパートの所有者が変わったことを入居者に通知し、賃料の支払先を変更する必要がある場合があります。


③アパートローンがある場合は金融機関に相談する。

 アパートローンに「団体信用生命保険」が付いている場合には、借りた人が亡くなると保険金でローンが返済されます。

相続税の節税目的で建てられたアパートの場合には、借入金があれば相続税評価額を圧縮できるので、団体信用生命保険は付けていないことが多いです。団体信用生命保険なしのアパートローンで、ローン残高が残る場合には、今後の支払いについて金融機関と相談し、契約を引き継ぐ手続きを行います。


④準確定申告を4ヶ月以内に行う

 亡くなった人の不動産収入について、相続人が代わりに申告・納税を行う必要があります。これを準確定申告といいます。通常の確定申告は、1年分を翌年の2月16日から3月15日までに手続きしますが、準確定申告は特別に、相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があるのでご注意ください。


➄相続税を10ヶ月以内に申告する

 相続税がかかる場合には、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税します。


.収益物件が相続発生年内に新築されている場合の注意点

 2①の相続登記をする場合、亡くなった年の新築物件は、固定資産税評価証明書には記載されません。固定資産税の評価額は、その年の1月1日時点の物件について評価額が記載されるためです。それでは、どのように新築物件の評価額を出せばいいのかと言いますと、「○〇法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」を参照します。建物を新築した場合も、所有権保存登記の登録免許税の計算に使用される価格基準になります。物件の登記簿の「種類」「構造」から、1㎡あたりの単価を見つけて、登記簿の床面積を乗じた数値を評価額として計算します。


4.ローンが残っている時の注意点

 アパートのローンを残したまま親が亡くなってしまった場合、遺産分割協議の前に連帯保証人が誰か確認します。連帯保証人の銀行の審査基準は、法定相続人であること、または事業継承ができる見込みのある人である場合が多いです。やはり、資力のない方への変更は、金融機関側が拒否する可能性があります。


また、連帯保証人が相続人であった場合、ローンが残っているアパートの相続放棄ができません。当該相続人の方は、亡くなった主債務者と同等の責任をもって、ローンを返済する必要があるためです。どうしても、アパートの経営やローンの返済をやめたい場合は、該当のアパートを売却するしかないでしょう。


5.まとめ

 このように、収益物件を相続する際には、様々な手続きや注意点が存在します。

令和6年4月1日相続登記義務化(「相続人申告登記」とは? 過料は免れても問題はないのか)

2024年4月1日相続登記化(「相続人申告登記」とは?過料は免れても問題はないのか)

相続登記義務化は、所有者不明土地問題から議論され出てきたものです。義務化されたことで罰色である「過料」が設定されました。一定の要件を充たすことで、過料を免れることとはなるのですが、その後、相続登記の義務まで免れるわけではありません。他にどのような手段があるのでしょうか。

目次

1.相続登記義務化

2.過料を免れるための「相続人申告登記」

3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・

4.まとめ

1.相続登記義務化


 2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


 「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用


2.過料を免れるための「相続人申告登記」


「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。


(画像)相続人申告登記の登記簿のイメージ

この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


3.相続人申告登記で相続登記は免れるが・・・


  この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。


4.まとめ


 「相続人申告登記」は、相続登記義務化の過料を免れるためには、有効な手段となりますが、相続登記自体を免れるわけではないので、注意が必要です。


 相続登記自体を免れないとは、例えば、相続した不動産が、すでに誰もすまなくなってしまっているような場合、「売却」を考えている方もいらっしゃると思いますが、こういった不動産の処分をするためには、相続登記を経て行わなければならなくなるためです。


 早めの対策・対応をとることが相続を円滑に進めるコツだと考えます。

会社の辞め方

会社の辞め方

先日、とある方とお会いする機会があり、その方が独立して事業を始めるということで、会社に退職願を申し出たところ、経営者の方にめちゃくちゃ切れられた、というお話を聞きました。私自身も、いままで様々な業種を渡り歩いてきて、会社を辞めるときにドライな感じだったり、恫喝に近いような脅しを受けたりと両手以上の経験がありますのでお話をしたいと思います。


目次

1.法律上いつまでに退職願を出すべきなのか

2.なぜ、辞めると経営者は怒るのか

3.恫喝された場合の対処法

4.まとめ


1.法律上いつまでに退職願を出すべきなのか


 期間の定めのない雇用、つまり正社員として雇われている一般的な正社員の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。

また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項)。

ただし、期間の定めのある雇用、契約社員などの場合は別です。

雇用契約を結んでから1年以内は、やむを得ない事情がないかぎり退職できません。

「(民法627条)

第1項 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

第2項 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

第3項 6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、3箇月前にしなければならない。」となっております。


2.なぜ、辞めると経営者は怒るのか

 この点については、人によってさまざまな見解があると思うのですが、総じて言えることは、退職願を出した方が重要なポジションにあるなど、経営者が「当てにしていた」方なのではないかなと思います。私も多くの経験をしてきましたが、組織の規模が大きくなると、結構ドライで、退職願を出せば問題なく辞められます。逆に組織規模が小さいと、引き留め工作がうっとうしかったり、経営者に切れられる場面が多かったような気がします。


3.恫喝された場合の対処法


 すぐに「労働基準監督署」に相談します。「労働基準監督署」に連絡するのは、「そうかそうか、大変だね。うちが解決してあげるよ。」なんてことにはまずはなりません。労働同基準監督署は労働基準法に違反している明確な証拠がないと深く相談にのってもらえません。ただ、嫌みを言われただけでは、まだ相談に乗ってくれるレベルではありませんから。それではなぜ、連絡する必要があるのかと言いますと、「後でもめたときの証拠づくり」です。公的な機関なので、相談すればその記録は保管されます。なので、恫喝を言われたらすぐに相談の連絡をしておくべきだと考えます。

 私の場合の恫喝は、「街を歩けなくしてやる。」的なことを言われました。勿論労働基準監督署にすぐに連絡をして、その後は退職願を出し普通に仕事をして、引継ぎの打診があったので引継ぎをしましたが、退職日ぎりぎりに行い、引継ぎの最後には「解らないことがあったら、またお願いします。」と言われたので、「私、退職後は絶対に来ませんよ、ここに。」と言いました。

※その後、町を定期的に散歩するようにしました。だって癪じゃないですか、そんな恫喝されて。たまに、商店街であったときは鬼の形相でにらんできましたが、私は丁寧にお辞儀をして通り過ぎました。

 また、とある会社を退職した後、以前所属していた部署から「お前が導入したシステムで問題が起こっているから、今すぐ来てくれ。」と言われましたので、「業者に連絡してください。私は既に退職した人間なので雇用関係はありません。それでも来いという根拠がわかりません。仮に、どうしても必要な人材であるなら、なぜ辞めるときに反対しなかったんですか?」と質問すると電話を切りました。ご都合くんで使おうとしたのでしょうか?それはルール違反だと思います。一度でも対応したなら、次も次もと要求が増加していきます。給料ももらっていないのに要求にこたえる義理はありませんから、きっちり断るのが筋だと思います。


4.まとめ


 今回は、雇用者目線での「退職」についてお話をしてきました。経営者の方も話し合いでは解決できない事情が退職者にはあるということを理解しておいた方がいいかもしれませんね。私のケースでいうと、会社を辞めるタイミングは、「将来」を考えて行動している場合が多いです。「お金」の面だけなら話し合いも通用するかもしれませんが、その人の未来まで奪う権利は、誰にもありませんからね。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の罰則、過料を免れる方法)

2024年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の罰則過料を免れる方法)

令和6年4月1日に始まる「相続登記義務化」ですが、罰則である最大10万円以下の過料を免れる場合と、このケースに該当しない場合の回避方法を解説いたします。もちろん、相続登記を早期に済ませておけば、過料の対象とはなりませんので、ご安心を。


目次

1.相続登記義務化とは

2.相続登記義務化の過料が科される場合

3.相続登記義務化の過料を免れる場合

4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法

 5.まとめ

1.相続登記義務化とは


 相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。

 また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)


2.相続登記義務化の過料が科される場合


 正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。


3.相続登記義務化の過料を免れる正当事由とは


 ※正当な理由の例


 (1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース

 (2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース

 (3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース

 (4)経済的に困窮している場合


 などが挙げられています。


4.3の場合に該当しない場合に過料を回避する方法


 「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。

 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。

 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。

この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。


5.まとめ


 最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。

相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、


①相続発生後、3年以内に相続登記を実施する

➁相続人申告登記を実施する


がありますが、①の遺産分割をしない法定相続分での登記は共有関係となるためお勧めできません。➁の相続人申告登記も相続登記義務化は免れますが、この後売買する場合には相続登記が必要となります。


 司法書士が、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。


 今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の罰則、過料の要件)

2024年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化の罰則過料の要件とは)

令和6年4月1日より始まる相続登記義務化について、罰則である過料。法務省よりその過料の運用方針が示されています。相続登記義務に違反した場合の過料の運用方法や、免れるための「正当な事由」について解説します。

目次

1.はじめに

2.相続登記義務化による過料の要件

3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン

4.①過料通知およびこれに先立つ催告

5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法    6.③「正当な理由」があると認められる場合

7.まとめ


1.はじめに


 2024年4月1日より相続登記義務化がスタートします。不動産を取得した相続人に、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を義務化するものであり、正当な理由がないのに申請を怠ると10万円以下の過料の可能性があります。今回の解説は、2023年3月23日、法務省が過料の運用方針を発表しましたので、その内容となります。


2.相続登記義務化による過料の要件


 相続登記義務化により、以下の2つの要件を満たす必要があります。


 ①「相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならない。」

 ➁「遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない。」


 ※①で法定相続分で登記を入れた共有状態で、その後遺産分割により当該相続人の一人に相続させ、移転登記をする場合でも、遺産分割から3年間以内にその登記をしなければならないということになります。


 正当な理由がないのに、①又は➁の申請を怠ったときは、10万円以下の過料の適用多少になります。


3.相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン


 2023年3月23日、法務省が、相続登記義務化に際して、予定している運用上の取扱い等を「相続登記の申請義務化に向けたマスタープラン」として発表されました。


 相続登記の申請義務化の運用方針の決定したものであり、以下の内容があります。


 ①過料通知およびこれに先立つ催告

 ➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法

 ③「正当な理由」があると認められる場合


が定められています。

4.①過料通知およびこれに先立つ催告


 相続登記を怠っている者を登記官が把握し、まず、法務局から当該相続人に対し催告が(相続登記を促す手紙)なされます。これに応じて相続登記をした場合は、「過料事件」の裁判所への通知はされません。

 しかし、催告があっても相続登記をしなかった場合、法務局から裁判所へ過料事件の通知がなされます。そして、裁判所で要件に該当するか否かを判断して、過料を科する旨の裁判することになります。


5.➁登記官による相続登記の義務化に違反したものの把握方法


 登記官が登記審査の過程等で把握した情報により行うこととなります。

 ➁―1相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権に浮いても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき

 ➁―2相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産を所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨の記載がされていたとき


 ※つまり、相続登記申請時に添付する「遺言書」「遺産分割協議書」に他の不動産の帰属先が記載されていた場合に、それを参考にして判断するということを言っています。


6.③「正当な理由」があると認められる場合


 ③―1数次相続が発生して相続人が極めて多数に上がり、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

 ③―2遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合

 ③―3相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

 ③―4相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶ恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

 ③―5相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合


 ※正当な理由の判断について、これらの場合に限定されないということです。


7.まとめ


 相続登記等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。また、遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。

 これらの義務を怠った場合には、10万円以下の過料の適用対象になります。

 登記官の催告に応じて相続登記を申請すれば過料事件とはなりません。

 相続登記の申請義務化は、2024年4月1日から施行されますので、正当な理由がない場合、早めの相続登記の申請をお願いいたします。

 詳しくは司法書士までご相談ください。


 アイリスでは、無料相談を随時受け付けております。まずは、ご予約をお願いいたします。


令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記義務化をわかりやすく解説)

2024年4月1日相続登記義務化(相続発生後、手続きのまとめ)

ここに文章を入令和6年4月1日より始まる相続登記義務化ですが、「義務化」の文字で漠然と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、司法書士がわかりやすく解説いたします。相続登記義務化の概要と、今回の義務化の対象範囲、罰則である10万円以下の過料と罰則を免れる条件などについてお話をしていきたいと思います。

目次

1.はじめに

2.改正前の相続登記について

3.相続登記義務化の内容について

4.相続人申告登記について

5.過去の相続については?

6.相続登記に係る実費

7.まとめ(司法書士への報酬等)力してください

1.はじめに

 2024年(令和6年)4月1日に、相続登記が義務化されます。不動産を相続したことを知ったときから、3年以内に相続登記をしなければ、「10万円以下の過料」が科せられます。

 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。(法務局2022年12月27日発表では、施行日は今後決定されます。)

というのが概要です。


2.改正前の相続登記について

 改正前だと相続登記は義務ではありませんでした。このため、相続登記が放置され何世代にもわたり相続が発生した場合、相続人の人数が増え特定するために相当の時間を費やす、もしくは特定できないといった状態が発生しています。この状態になりますと、不動産を処分や管理しようと思っても、それができないといったことが発生してしまうことになります。


3.相続登記義務化の内容について

 相続登記が実施できていない不動産について相続登記を推進するために今回の改正となりました。

 「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知ったときから3年以内に相続登記」となっています。

  相続人に対する遺贈・相続させる旨の遺言がある場合でも同様に3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となります。

  また、遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続分での登記が必要となりますが、この場合、法定相続分による相続登記を免れる方法がありますので、次に述べます。


4.相続人申告登記について

 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。

この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。


5.過去の相続については?

 相続相談で、すでに相続が発生しているものについてのご質問がよくありますのでご説明いたします。

 結論から言いますと、「過去の発生した相続についても今回の改正は適用」になります。

「(附則案 経過措置)第五条六項 新不動産登記方第七六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。(以下省略)」

「(附則 経過措置)第五条六項 施行日前に所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は①自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日②施行日のいずれか遅い日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならない」

 つまり、相続登記義務化前に、すでに相続が発生し相続による名義変更の登記をしていない不動産についても、施行日(2024年4月1日)から3年以内に相続登記をする義務が発生することになります。


6.相続登記に係る実費

 ①登録免許税

  登記する際に、不動産の評価額の1000分の4の収入印紙をが必要です。

 ➁登記情報閲覧

  システムから、現状の登記簿の内容を確認します。不動産の数×332円

 ③登記事項証明書

  登記完了後、取得して変更を確認します。不動産の数×600円

 ④戸籍謄本・住民票等

  役所に支払います。手数料の価格は役所により異なります。

 ➄公図、名寄帳

  相続対象の不動産に漏れがないかを確認するために取得することがあります。

  公図 1枚664円(システムから司法書士が取得)、名寄帳(役所で取得) 1通350円(高松市役所)

 ⑥評価証明書

  相続登記をするための登録免許税の計算のために評価額を使用します。

  評価証明書(役所で取得) 1通350円(高松市役所)※所有の場合と共有の場合は、それぞれに発行されます。


7.まとめ

 2024年4月1日から相続登記が義務化になり、相続登記を怠った者には、10万円以下の過料に処されます。遺産分割協議が長引くなどの理由がある場合には、「相続人申告登記制度」を利用して、3年以内の相続登記義務を回避することはできますが、そのままでは処分等ができないため最終的には遺産分割協議を経て(または法定相続分の共有で)相続登記をすることになります。

令和6年4月1日相続登記義務化(相続発生後、手続きのまとめ)

2024年4月1日相続登記義務化(相続発生後、手続きのまとめ)

無料法律相談で内容を確認するのですが、一番多いのは、「何をしていいのかわからない。」という内容です。相続に必要な手続きを一通りご説明すると、そこから手続きが必要になる場合には、こちらからどのくらいの費用が掛かるのかをお話しするのですが、不動産がなく、相続税の基礎控除内の相談の場合、相談だけで済みケースも多くありませんので、今回まとめてみました。

目次

1.2週間以内にすべきこと

2.3か月以内にできること

3.90日以内にすべきこと

4.4か月以内にすべきこと

5.10か月以内にすべきこと

6.まとめ

1.2週間以内にすべきこと


 ①死亡診断書の受け取り


  医師が「自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡した」と認められる場合には「死亡診断書」


  上記以外の場合には、「死体検案書」


 ➁死亡届・火葬許可申請書の提出(7日以内)


  ※葬儀社によっては、書類一式を用意・代行していただける場合もあります。


  死亡届(死亡診断書と一緒の用紙についている)については、記入したものを数枚コピーを何枚かとっておくことをお勧めいたします。死亡保険の請求に使用する場合があるためです。


 ③世帯主変更届(14日以内) 市町村役場


 ④健康保険・介護保険の手続き(14日以内)


  (国民健康保険の場合)


 国民健康保険に加入していた方の場合、亡くなった方の住所地の市町村役場に「資格喪失届」を提出。


 亡くなられた方が75歳以上の場合、「後期高齢者医療資格喪失届」を提出します。


 返却物として「国民健康保険被保険者証」「国民健康保険高齢受給者証(対象者)」「後期高齢者医療被保険者証(対象者)」


 葬祭費の申請をする場合、葬儀の領収書や喪主の通帳などが必要となります。


   ※通常葬祭費の申請は、窓口で説明があります。3万円から5万円の支給がありますので忘れないようにしましょう。


  (健康保険の場合)


   会社や公務員の場合、5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出しますが、会社側で手続きをしていただける場合が多いので会社に相談してみてください。


   亡くなった方の健康保険の扶養に入っていた場合、自分で国民健康保険に入るか、会社員である他の家族の扶養にはいる必要があります。


  (介護保険について)


   14日以内に「介護保険資格喪失届」を市町村役場に提出し、介護保険被保険者証を返却します。


 ➄年金受給停止の手続き(厚生年金の場合10日以内、国民年金の場合には14日以内)


手続の際には、本人確認や押印を求められることがありますので、運転免許証又はマイナンバーカード、認印を所持しておいてください。


   未支給年金の請求


   亡くなった月の分までの年金を受け取っていないものがある場合、生計を同じくしていた遺族が受け取れます。この請求権の時効は、5年です。


   また、「遺族年金の受取」について、年金事務所に相談しましょう。こちらの債権も時効期間は5年となります。


2.3か月以内にできること


 相続放棄・限定承認などの手続きの期間となります。


 「民法第915条


  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」


 ※限定承認の場合、民法第924条で第915条を準用していますので同じ期間になります。


3.90日以内にすべきこと


 もし、相続財産の不動産に地目が「森林」となっているものがある場合、森林法に基づく「森林の土地の所有者届出書」を当該不動産の所在地である市町村役場に届出書を提出する義務がある可能性があります。指定の森林が対象となるので、事前に市町村役場に、当該不動産の森林が対象であるがどうかの確認をしてください。相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日から90日以内に、法定相続人の共有物として届出をする必要があります。届出をしない、又は虚偽の届出をしたときは、10万円以下の過料が課されることがあります。


 ※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。


4.4か月以内にすべきこと


 所得税の「準確定申告」をすることになります。「準確定申告」とは、被相続人の所得にかかる「所得税」についての手続きで、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得が生じた場合において、そ族の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行う確定申告のことです。


  ※詳しくは、税理士の方に相談してください。アイリスでは、税理士のご紹介も可能です。


5.10か月以内にすべきこと


 ①農地法第3条の3第1項の規定による届出書


  相続財産の不動産の地目が「田」・「畑」等の農地である場合、届出が必要になります。


  「第六十九条


   第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」となりますので、忘れないように届出をしましょう。


  ※アイリスでは、行政書士として本届出を代理することができます。


 ➁相続税の申告・納付


  相続税申告の要否について、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額を相続財産の合計額が超える場合には、相続税の申告が必要となります。


  詳しくは、税理士に相談していただきます。香川県高松市の税理士であれば、取引先である税理士の紹介も可能です。


6.まとめ


なかなか、期間別でまとまっている資料が少なかったので、まとめてみました。


相続が発生して、死亡届出等は葬儀社がサポートや代行してくれますが、それ以外の手続きについては、ご自身で行えない場合には、専門家への相談をしてください。


アイリスでは、「相続法律・税務無料相談会」に参加しております。法律相談は、アイリスの代表が致しますが、税務関連につきましては、祖図億専門の税理士先生に対応をお願いしております。月に一度(第三水曜日)に実施しております。ぜひご活用ください。

令和6年4月1日相続登記義務化(夫婦共有名義の不動産、夫が死亡でどうなる?)

2024年4月1日相続登記義務化(夫婦共有名義の不動産、夫が死亡でどうなる?)

ここに文ここに文章を不動産購入時に、夫婦で購入代金を別々で支払う場合も少なくありません。これは、代金をそれぞれ払っているのにもかかわらず、共有名義にせず単独名義にした場合、名義人以外の者から名義人に対する「贈与税」を負わされてしまうためです。新築の家屋の場合、出した金額に応じて共有持分を決めて保存登記をするケースが多いです。その後、夫婦どちらかに相続が発生した場合、もう一方に持分の権利が自動的に移転するわけではありません。詳しく解説していきます。

目次

1.共有者と法定相続人の関係

2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか

3.まとめ入力してください章を入力してください

1.共有者と法定相続人の関係


 共有者と法定相続人の関係が、ここでは問題になってくると思います。亡くなった共有者の財産(遺産)の権利は、いったい誰のものになるのでしょうか。


 まず一番初めにしなければならないのは、亡くなった共有者が「遺言書」を作成していたかどうかです。遺言書は、遺言者が亡くなることで効力を生じ、その内容が有効になります。つまり、夫婦で購入し、夫が亡くなった際に、遺言書で「不動産の持分を妻に相続させる」旨の記載があれば、妻が夫の持分を取得することになります。当然、他の相続人の遺留分を侵害していた場合には、遺留分侵害額請求権を行使されることはあるかもしれませんが、ここでは想定しないことにいたします。


 遺言書がなかった場合、亡くなった共有者の持分の権利は、亡くなった方の法定相続人が民法規定の法定相続分で共有している状態になります。仮に、亡くなった以外の共有者が、法定相続人ではない第三者(内縁の妻等)の場合には、そもそも相続権はありませんので、取得することは困難でしょう。


 また、内縁の妻の場合、相続人が不存在である場合に特別縁故者として家庭裁判所が認定してもらえれば、その持分を取得する可能性はあります。認めてもらえるかどうかは、家庭裁判所の判断次第ということになります。

2.共有名義の片方に持分を移転するには、どのような手続きが必要なのか


 ①他の共有者のみが相続人であった場合


  問題なく、その亡くなった共有者の持分の権利は、他の共有者に移転します。


 ➁他共有者が相続人の1人であった場合


  他の相続人全員と「遺産分割協議」により、帰属先を協議しなければなりません。協議を経なければ、法定相続人の法定相続分の割合で持分権利をさらに共有している状態になります。協議がこじれた場合には、「遺産分割調停・審判」の手続きを要します。協議等を経て帰属先が他の共有者だとなれば、その持分の権利は、他の共有者のものになります。


 ③他共有者が全くの第三者であった場合


  相続人ではないので、遺産分割協議への参加はできません。ですので、相続人の中からどなたかが持分を取得し、共有状態は解消されないことになります。もっとも、相続人間で持分の売却等の提示もしくは、こちらからの意思表示を受け入れてくれれば、持分を取得することは可能です。


3.まとめ


 まとめると、共有者だからと言って、相続発生時に必ず持分を取得できるとは限らないということが言えます。夫婦である場合でも、他に相続人がいる場合、「遺産分割協議」を経て持分の帰属先を他の共有者にしないと持分の取得はできません。内縁の妻の場合、そもそも相続人ではないので、相続人の遺産分割協議への参加する権利はありません。


 対処法としては、共有者から生前に持分を生前贈与(不動産評価額が大きい場合、何回かに分けて贈与)することが挙げられます。


 また、共有者の生前に「遺言書」を作ってもらうことも有効な手段です。遺言書の場合、持分の権利は、他の共有者に必ず移転します。ただし、第三者の場合には、税金がかかってくるかもしれませんが、相続人から「共有物分割請求」をされて、住む場所を失ってしまうリスクも否定はできないからです。


今回は、わかりやすくするためにできるだけ簡単な事例で紹介いたしました。詳しい内容に関しましては、専門家に相談することをお勧めいたします。

【遺言書作成サポート】遺言書の未来

【遺言書」作成サポート】遺言書の未来

 令和7年ごろ、公正証書遺言がビデオ通話で作成可能になるということが発表されました。

 現状、公正証書遺言を作成するためには、公証人とじかに合う必要があります。私が受任した公正証書遺言書の作成も、施設や病院に入院されている場合で面会謝絶状態だった時には大変苦労いたしました。このような状況でもビデオ通話で公証人と会うことが許されれば、飛躍的に活用しやすくなりますね。

 それでは解説していきます。また、遺言もパソコンやスマホで作成できるようになるかもしれません。この辺りを詳しく説明いたします。 


◆目次◆


1.公正証書遺言について

2.現状の公正証書遺言書作成の流れ

3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成

4.「公証人が相当と認めるとき」とは

5.デジタル遺言制度創設検討開始

6.デジタル遺言制度のメリット

7.デジタル遺言の偽造防止策として

8.まとめ


1.公正証書遺言について


 公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことです。費用は掛かってしまいますが、自分で書く遺言書(自筆証書遺言書)より、以下の点でお勧めです。

 ①公証人が関与するので形式面での無効になる可能性がまずありません。

 ➁内容が不明瞭で相続手続きに支障が出る可能性も低いです。

 ③公証役場委に返本が保管されているので、紛失リスクがありません。

 ④相続開始後に家庭裁判所の検認手続きが不要。


2.現状の公正証書遺言書作成の流れ


 ①公証役場で相談する。(士業等にサポートを依頼する場合は士業等に相談して下さい。士業が代理人として公証役場との打ち合わせ等をいたします。)

 ➁必要書類意を取得する。

 ③予約の上、公証役場に実印をもって臨む。(実印での証明には、印鑑証明書が必要となります。)

  ※証人2人が必要。(士業サポートの場合、士業の方で証人をそろえていただくことも可能です。また、公証役場にお願いをすれば、証人の手配をしていただけます。)


 ※ここからは、公証役場で当日実施する内容です。

 ④遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述(証人以外は同席することはできません。)

 ➄公証人が遺言者の現行を読み聞かせを実施。

 ⑥遺言者と証人が署名押印(遺言者は実印で押印)

 ⑦公証人が署名押印

 ⑧公証人手数料を支払って、公正証書遺言の正本・謄本をもらう。


3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成


令和5年6月6日、改正法が成立し、令和5年6月14日公布されております。そして、公布から2年6か月以内の政令で定める日が施行日となりますので、おそらく令和7年ごろからの開始となりそうです。

 改正後は、公証人の面前での手続きについて、遺言者が希望し、公証人が相当と認めるときは、ビデオ通話を利用できるということになっています。この場合の本人確認は、マイナンバーカードの電子証明書が利用されることになっております。


4.「公証人が相当と認めるとき」とは


 公証人が相当と認めるときとは、いったいどんな時なのかという疑問がわいてきますね。こちらについては、「法務省 公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会」の資料によると、「必要性と許容性とを総合的に勘案して判断」するそうです。これまた、よくわからない表現になっています。


 必要性とは?(必要性で問題とならない場合)


 ①心身の状況や就業状態等により公証役場に出向くのが難しい場合

 ➁公証役場委に行くのが困難な地域

 ③感染予防のため施設や病院に外部の人が入れない状態


などが挙げられます。


 許容性とは?(許容性で問題となる場合)


 ①本人確認、意思確認をビデオ通話でも問題なくできない。

 ➁遺言能力について問題となりやすい高齢者。

 ③遺言能力に影響を及ぼす可能性のある病気・症状の診断を受けている。

 ④合理的な理由なく一部の相続人に全財産を相続させる遺言内容。

 ➄公証人への事前相談が遺言内容に利害関係を有する一部の親族を通じてされている。


このような場合には、公証役場も後々にもめることを考慮して慎重に許容性を判断することになります。


5.デジタル遺言制度創設検討開始

これまで紙でしか認められなかった遺言が、ついにパソコンやスマホからでも作成が可能になるというニュースがでましたね。(令和5年5月5日 日本経済新聞)

 今までだと、自筆証書遺言ですと財産目録以外は、原則紙に直筆で書き込み、自署・押印が成立の要件となっていました。公正証書遺言も、公証人及び証人2名と自身で、書面上で書かれた内容について確認する作業が必要で、保管も書面での保管となっています。

 デジタル化されることにより、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。


6.デジタル遺言制度のメリット


 ①フォーマットに沿って入力するので、形式的な理由で無効になることがない。

  すでに、いろいろなサービスでフォームへの入力方式をとられていますが、今回のデジタル遺言制度も同様にフォーマットが用意されており、そこに入力する形で作成するみたいですので、自筆証書遺言のように自分なりの文章で書いたためにその内容が効力を生じないとはなり辛いと思います。全くないとは、現段階ではどのような仕組みを使ってするのかがわかりませんので、あえて全くないとは言い切れません。


 ➁紛失がなく、ブロックチェーン技術を使えば、改ざん防止も可能。

  デジタル空間で一番気になるのが、なりすましや改ざんといった不正行為のチェック機能だと思います。そこは、どうもブロックチェーン技術を使うみたいですね。

  ブロックチェーン技術とは、デジタル通貨ですでに実績のあるの技術ですね。改ざんがないことや所有者本人であることの証明をするための技術になります。

7.偽造防止策として


 いくらブロックチェーン技術を使っていても、作成の段階で成りすましていたらその信頼性が揺らいでしまいます。そこで、どうも偽造防止策として、「ネット上で顔撮影」+「電子署名」などで対応するみたいです。海外などでは、証人2名という事例もあるそうですので、今後の議論に注目ですね。


8.まとめ


 遺言書があれば、多くの相続手続きにて、相続人の負担を軽減できることは前にも書きましたが、そう遠くない未来に、遺言書作成のハードルは下がる施策が多く出てきます。現状では、今までと同じ手順を踏まなければなりませんが、遺言書の優位性は変わりません。


 残されたご家族の負担軽減のためにも、遺言書作成を検討してみることをお勧めいたします。


【遺言書作成サポート】遺言書があれば相続登記がスムーズに?

【湯言書作成サポート】遺言書があれば相続登記がスムーズに?)

 相続手続きで遺言書があった場合、なぜ相続人の負担が軽減されスムーズに手続きを進めることができるのかについて解説したいと思います。

 遺言書があったおかげで、揉めた話もよく聞くのですが、揉める事例(相続人以外の第三者に全財産を遺贈する)などについても解説しております。


◆目次◆

1.相続手続きに遺言書があった場合の「スムーズになる」とは

2.遺言書がなかった場合の相続手続き

3.亡くなったからが、全財産を愛人等(第三者)に遺贈した場合

4.遺留分とは

5.遺言書で相続財産の帰属先が決まる

1.相続手続きに遺言書があった場合の「スムーズになる」とは


 「楽」という表現は、相続手続きにおいて遺言書があった場合に、手続きがスムーズかつ簡単に進むことを意味しています。遺言書がある場合、遺された人々や財産の分割方法が明確に示されており、法的手続きの際に問題が生じることが少なくなります。また、遺言書によっては、相続人間の紛争を回避するために、明確な規定がなされていることもあります。このため、遺言書がある場合は、遺産分割や手続きのトラブルを避けることができるため、「スムーズに手続きができる」と表現されることがあります。

 それでは、遺言書がなかった場合、どうなるのでしょうか。


2.遺言書がなかった場合の相続手続き


 遺言書がない場合には、相続人全員で相続財産を遺産分割協議により分割しなければなりません。そんなの、家族みんな仲がいいから大丈夫という方もいるかもしれません。しかし、今仲が良くても相続財産の話し合いになったとき、少しでも公平でなさそうな場合には、文句を言う相続人が出てくるとも限りません。また、離婚した前妻の子供も相続人になります。こうなってくると、一気にハードルが高くなってきます。もし、前妻の子供を入れないでなされた遺産分割協議は「無効」です。なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員参加が条件だからです。文句を言っている相続人を外しても同じ結果になります。


 遺産分割協議がうまくまとまらない場合、遺産分割調停を経て審判まで行きますと、家族の関係はかなり険悪になります。


3.亡くなったからが、全財産を愛人等(第三者)に遺贈した場合


 遺言書はすべてを解決する万能なツールなのかというとそうではありません。内容次第で、前向きにも後ろ向きにもなってしまう可能性があります。なぜなら、遺言書は、遺言者の一方的な意思表示により作成され(もちろん法廷の要件はありますが)、遺言者の死亡によりその遺言書は効力を生じます。その内容が「すべての財産を愛人に遺贈する」でもです。ただし、この遺言が、愛人契約をするために作成されたなどの事情(公序良俗違反)がある場合は、相続人から無効を主張することができますが、主張・立証が困難な場合もあるかもしれません。それでは、残された相続人たちは、遺言書の効力のために相続財産を全くもらえないのでしょうか。


4.相続人の遺留分とは


  遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。

 こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。ネガティブな遺言書の内容であった場合、相続人の遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額請求権を行使することができます。

 ※遺留分は、相続人の相続の権利を守る最後の砦となります。


5.遺言書で相続財産の帰属先が決まる


 遺言書がない場合、「遺産分割協議」を経なければ、相続財産の帰属先は決まりません。

 遺産分割協議が固まるまでは、遺産が宙に浮く形になってしまうわけです。遺産分割協議をまとめるために、専門家に依頼したとしても、費用・時間・手間が残された相続人の方に負担となってしまうわけです。

 一方で、遺言書を作成し相続財産の帰属先を決めておくことで、相続発生時に遺産の帰属先は、一応決まるわけです。その後に、相続人全員の協議により変更はできるものの、宙に浮く状態を避けることができます。

 先ほど解説した遺留分も、帰属先が気に食わないから、最低限、私(相続人)の取り分をくださいと請求するものです。つまり、相続財産の帰属先が決まった後の話になります。


6.まとめ


 相続財産の帰属先の話をしてきましたが、遺言書を作成することで、遺言者の「想い」を形にすることができるというだけでなく、その後に発生する遺産分割協議がなくても相続財産の帰属先が決まるという利点があります。つまり、相続登記や預金の名義変更の手続きが、遺言書があればスムーズに進めることができます。

 欧米では遺言書は紳士のたしなみと言われるくらい一般的ですが、日本では約10%ほどの利用しかありません。

 遺言であなたの「想い」を形にしておくことで残されたご家族の負担が減ることも大きな利点です。

 ぜひ遺言書の作成をご検討されてはいかがでしょうか。


【遺言書作成サポート】遺言書作成のタイミング

【遺言書作成サポート】遺言書作成のタイミング

 最近の相談者の年齢と希望するサービスの内容について、いろいろと考えることがあります。ライフステージごとに、できること・しなければならないことをまとめてみました。

 そして、遺言書を積極的に考える理由についても解説しています。


◆目次◆

1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)

2.遺言書を作成する意味

3.相続財産が相続人に帰属するタイミング

 3-1.遺言書がある場合

 3-2.遺言書がない場合

4.遺産分割協議でもめてしまうことも

5.まとめ

1.早めの遺言書作成(健康年齢と認知症)

 早めに遺言書を作成することのメリット

 遺言書は、健康な状態で作成することが望ましいです。一度病気になってしまうと、判断力が低下したり、医療処置によって精神状態が変化する可能性があります。

 早めに遺言書を作成することで、自分の望む財産分配方法を明確にし、遺言執行者の指名や葬儀の方法なども記載することができます。


 ご高齢の相談者様の中には、遺言書の手続きについて説明すると「そんなに大変なら、考えます。」と言って、相談を打ち切られる場合がよくありますが、健康で元気である間に、遺言書を作成することが重要になってきます。

また、遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。


※ご本人の状態により、使える法律行為や制度が異なる点にもご注意ください。特に認知症発症後は、法定後見制度一択になります。

2.遺言書を作成する意味


 遺言書を作成することで、家族や親族間でのトラブルを防ぐこともできます。遺言書がない場合、相続財産は法定相続分に従って、それぞれの相続人の持ち分となりますが、不動産のように物理的に分けられないものも存在します。不動産を取得したがために、現金が手に入らず生活に困窮する相続人が発生したのでは、具合が悪いことになってしまいます。

 また、相続関係が複雑で、専門家に調査を依頼しなければわからないケースも何度も見てきました。

 そこで、遺言書を書いておくことで、相続財産の帰属先を相続発生時に決めることができます。


3.相続財産が相続人に帰属するタイミング


 3-1.遺言書がある場合

  遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。


 3-2.遺言書がない場合

  相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。

※遺留分の問題があるから遺言書は進めないという方もいらっしゃるようですが、相続発生時の相続財産の帰属先は一端は決まる点がメリットだと考えますので、アイリスでは遺言書の作成についてお勧めをしております。


4.遺産分割協議でもめてしまうことも


 遺言書がなく亡くなられた被相続人の相続人全員で遺産分割協議をする場合、もめるケースがあります。一旦もめてしまうとなかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。

 こうなった場合には、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。それでもまとまらない場合には、家庭裁判所による審判で遺産分割を決定することとなります。

 ここまで行ってしまいますと、家族関係は完全に悪くなってしまいます。一度悪くなった家族関係は、もう元には戻らないでしょう。このようなことからも、遺言書作成の意義は、とても大きいと考えます。


5.まとめ

 最後に、遺言書は遺言者の意志を尊重するものであるため、遺言者自身が最も納得できる内容を記載することが大切です。しかし、遺言書が法律に反する内容を含んでいる場合などは、遺言書は無効となることがあります。遺言書を作成する際には、法律に基づいた内容であるかどうか専門家に相談し、確認するようにしましょう。

アイリスからのご提案、健康年齢を考慮して「70歳を過ぎれば、遺言書の検討を」です。


【遺言書作成サポート】公正証書遺言とその手続きについて

【遺言書作成サポート】公正証書遺言とその手続きについて

 自筆証書遺言のほかに、公正証書遺言があります。

 公正証書遺言は、公証人と証人2名立ち合いの中で、公証人が読み聞かせる遺言書を内容を確認する遺言です。公証人が読み聞かせ、ご本人が承諾する手続きとなります。事前に公証役場で担当公証人と打ち合わせます。その際に、相続人への遺贈なら関係がわかる戸籍(他の相続人も含めて)、第三者への遺贈の場合も相続人全員がわかる戸籍を要求されます。理由は、遺言執行者が、相続人全員に遺言書の内容を通知(民法1007条第2項)の確認のためです。


◆目次◆

1.公正証書遺言とは?

2.公正証書遺言で作成する意味とは?

3.公正証書遺言に必要な書類

4.公証役場での遺言書作成の手続き

5.公正証書遺言にかかる手数料

6.まとめ


1.公正証書遺言とは?

公正証書遺言は公証人に作成してもらう遺言書のことです。下記のメリットがあることから、費用はかかるものの、自筆証書遺言よりも公正証書遺言の作成がおすすめです。

①公証人が関与することから、方式不備で無効になるおそれがない

➁公証役場で原本を保管するため、紛失・隠蔽等のおそれがない

③相続人が遺言を発見することも容易(遺言検索サービス)

④家庭裁判所での検認が不要

➄文字を書けなくても作成できる


2.公正証書遺言で作成する意味とは?

 わざわざ遺言書を公正証書で作成する意味合いとしては、第三者である『公証人』が作成することで、公文書として扱われることにあります。

 相続発生後に遺産分割が整いそうにないような場合に、遺言を公正証書で作成しておくことで、文書の真正を担保することができます。

 また、紛争の可能性が少ない家族構成であったとしても、公正証書の遺言で予め遺産の分け方を確定しておくことで、紛争予防としての効果も発揮します。

 もし自筆証書で遺言を作成しておいたとしても、それが本当に遺言者本人の真意であるかどうか疑った相続人が争いを起こすことも想定されますので、公文書として作成された公正証書遺言は絶対的に「強い」のです。

(さらに大きなメリットとして)公正証書では本人の意思能力が争点となりにくいという点が挙げられます。遺言書が残された遺産相続の紛争事案の多くは、「遺言作成当時の意思能力」が問題となります。しかし、もしその遺言書が公証人及び証人2名の立会いのもと正式に作られた公正証書であるなら、あえて意思能力で争うことは考えないはずです。

 たとえいま現時点で仲が良い兄弟だとしても、相続発生時に揉める可能性はないとは言えないと思います。余計な争いを防ぐ目的としても公正証書で遺言を作る意味合いは非常に大きいのではないかと考えています。


3.公正証書遺言に必要な書類

 公正証書遺言を作成するために必要な書類


 ①遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの)又は運転免許証等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)

 ※公証役場では基本的に印鑑証明書による本人確認をしております。

 ➁遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本

 ③財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書)

 ④財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

 ➄財産の中に株式等の有価証券や預貯金がある場合には、その種別とだいたいの金額を書いたメモ

 ⑥遺言書の方で証人を用意する場合には、証人予定者の名前、住所、生年月日及び職業を記載したメモ

 

※証人には欠格事由があります。(民法第974条)

 ①未成年者

 ➁推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

 ③公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

 証人は、アイリスでご紹介することも可能です。その際には、証人への日当が発生いたします。

 必要書類は遺言内容によって異なります。また、公証役場によって若干運用も異なるので、事前に公証役場に確認するのが確実です。こちらも、アイリスが確認しサポートいたします。


4.公証役場での遺言書作成の手続き(日本公証人連合会HPより)

 ① 公証人への相談及び依頼

 ➁相続内容のメモ及び必要資料の提出

  3.の書類を郵送または持参等して公証人に提出します。

 ③遺言者公正証書の案の作成と修正

  公証人が提出された資料を基に、遺言公正証書の案を作成しメール等により提示されますので、内容を確認し修正する個所についてコミュニケーションを図りながら遺言公正証書の案を修正していきます。この時のサポートもアイリスで実施いたします。

 ④遺言公正証書の作成日時の打合せと確定

  遺言公正証書の案が確定した場合には、いよいよ公証役場での面談を予約いたします。

  ※確定時に手数料も決まりますので、公証役場から公証人への手数料が決まります。

 ➄遺言公正証書の作成当日

  作成当日には、遺言者本人から、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げていただき、公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上、確定した遺言公正証書の案に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらいます(内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。)。

内容に間違いがない場合には、遺言者及び証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をすることになります。

そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書は、完成します。


5.公正証書遺言にかかる手数料


①公証役場で手続きをする場合

 ※注意点として、上記財産額ごとの手数料は、相続人1人毎の金額になります。


 つまり、妻に300万円分の財産、長男に700万円分の財産の場合、妻の手数料は11,000円、長男の手数料は17,000円の合計金額となります。


(加算)

 (1)遺言加算:全体の金額が1億円以下の場合、11,000円を加算

 (2)枚数加算:遺言書の枚数が4枚目から1枚250円加算

 (3)正本・謄本加算:1冊につき250円加算

 (4)祭祀主宰者の指定:11,000円加算

 (5)遺言の取消:11,000円加算


➁出張してもらう場合の手数料

 遺言者が高齢あるいは病気などのため、公証役場に出向くことが難しい場合には、公証人に遺言者の自宅や老人ホーム、病院などに出張してもらい遺言書を作成することができます。ただし、この場合は、前記の「公正証書遺言作成の手数料」記載の表の手数料が1.5倍になります。

また、公証人の日当(1日2万円、4時間まで1万円)と、現地までの交通費がかかります。

公証人出張の場合、現場で遺言書の内容の変更など対応ができませんので、利用時には確定した内容に固めておくことが重要です。


6.まとめ

 多少の費用はかかっても、トラブルを防止し、自分の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成することを第一に考えるべきです。公正証書遺言を作成するにはいろいろと手間もかかりますので、円滑に手続きが進むようアイリスのサポートをご検討ください。


 公正証書遺言サポート費用(公証役場への手数料とは別)110,000円(税込)~内容により変わります。相続関係・不動産調査等も含まれます。

 証人サポート日当 1人11,000円(税込)※司法書士が証人として入ります。

 後日、裁判等になった場合、証人として証言いたします。専門家を証人に入れておくことのメリットだと考えます。

 アイリスでは、手続きに入るまでのご相談は、無料で行っております。ぜひご利用ください。


【遺言書作成サポート】自筆証書遺言と民法上の要件について

【湯言書作成サポート】自筆証書遺言と民法上の要件について)

遺言書作成で最も手軽にできる自筆証書遺言ですが、遺言は民法の要式に合致していなければ効力を生じません。保管場所なども苦慮するところですし、相続発生後相続人が遺言書を発見した場合、家庭裁判所で検認の手続きが必要でしたが、令和2年7月10日より法務局の保管制度が開始されました。法務局保管制度を利用した場合、改ざん防止や検認手続を省略することができます。

目次

1.自筆証書遺言とは

2.要件:遺言書前文の自筆

3.要件:日付の自書

4.要件:氏名の自書

5.要件:押印

6.自筆証書遺言の法務局保管制度の手順

7.まとめ

1.自筆証書遺言とは

 自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、これを押印することによって成立する遺言です。(民法968条第1項)


 つまり、要件は全文、日付、氏名を自書し、押印すれば成立するということです。

 ただし、各条項については他にも要件がありますので、専門家への相談をお勧めいたします。


 なぜならせっかく作成した遺言書の効力が、この要件に合致していないために無効になるリスクがあるためです。


2.要件:遺言書前文の自筆

 ①タイプライターやワープロなどの危機を用いて作られた遺言は無効です。


 ➁財産目録は、自書することを要しない(民法968条第2項前段)が、財産目録のすべてのページに署名・押印することを要します。(民法968条第2項後段)


 ③他人によって代筆された遺言も無効。


 ④「病気その他の理由により運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、遺言者が証書作成時に自書能力を有し、遺言者は添え手をした他人から、単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡の上で判定できる場合には、「自書」の要件を充たすものとして、有効であると解するのが相当である。」


  (最判昭62.10.8)


3.要件:日付の自書


 ①「年月」だけでなく「日」も特定できるような記載をしなければ、遺言は無効となります。

  ※「令和5年5月29日」のような具体的な年月日のほかに、「満何歳の誕生日」などでも認められる場合があります。しかし、無効になってしまう危険がありますので、普通に記載したほうがいいです。


4.要件:氏名の自書

 氏又は名の一方だけの記載や、ペンネーム・通称などの記載であっても、遺言者を特定できる場合には、遺言は有効となります。


5.要件:押印


 ①「拇印その他の指印も適法である。」


  (最判平元.2.16)


➁一通の遺言書が数葉に渡る場合でも、その数葉が一通の遺言書として作成されたものであることが確認されれば、その一部に日付・署名拇印がされていれば有効であり(最判昭36.6.22)また、その間に契印がなくても有効である。(最判昭37.5.29)


6.自筆証書遺言の法務局保管制度の手順

 ①自筆証書遺言書を作成(こちらは自筆し記名押印が必要となります)、必要な財産目録等(パソコンで作成したものや通帳、登記簿謄本のコピーなど)を添付します。


  様式につきましては、画像保存する上で、「余白の確保」が必要です。

  ※上部5ミリ、下部10ミリ、左部20ミリ、右部5ミリとなっています。法務局ホームページから参考書類をダウンロードして余白は必ず確認してください。


 ➁遺言書保管の申請をする法務局を選択する

  自筆証書遺言書の保管ができる法務局は、以下の3つとなります。


㋐遺言者の住所地


㋑遺言者の本籍地


㋒遺言者の所有する不動産の所在地


 ③申請書の作成

  法務局ホームページから申請書をダウンロードして申請書を作詞いたします。


  ※記載例もダウンロードできますので、その記載内容に従って項目を埋めてください。


 ④法務局に遺言書を預けるための予約

  ➁の自筆証書遺言を保管できる法務局に、電話もしくはネットで予約を入れます。


  予約は、必ず「一人一枠」という指示が出ていますので、ご夫婦で予約される場合には、お一人ずつ予約をとってください。


  ※予約は、予定する日の30日前から前々営業日の午前中までできます。


   当日予約はできないので注意してください。


7.まとめ

 自筆証書遺言について解説してきましたが、現時点で、デジタル遺言の検討が始まっており、今まで以上に遺言は利用しやすくなりますので、是非、検討してみてはいかがでしょうか。


※自筆証書遺言保管制度につき、令和5年10月2日より、指定者通知の範囲が、1名、相続人・受遺者・遺言執行者とされていたところ、3名、対象者に制限なしと改正されます。すでに登録されている方も届けることにより、指定者通知先を増やすことがでるようになっています。 


 アイリスでは、遺言書の作成サポートを受け付けております。自筆証書遺言・公正証書遺言共に対応しておりますので、遺言書作成を検討されている方は、まずは「相続無料相談」までご予約ください。 

地獄への道は「善意」で舗装されている

地獄への道は「善意」で舗装されている

 ローマ時代にできた諺「地獄への道は善意で舗装されている」 。同調圧力も関係ある話なのですが、何らかの意図をもって「あなたのためだから」というキーワードを使ってすり寄ってくる方に、私は今までたくさん出会ってきました。

 この善意が本物の善意なのかそうでないのか、今となれば見分けるのは簡単ですし、その対処法も持ち得ています。全く無視をすればいい話なのですが、相手が近しい人の場合、ついつい、自分の意見をぶつけて話し合いをされようとするかもしれませんが、これは全くもって無駄な努力です。

 岡田斗司夫ゼミで話している内容で、理由付けができましたので掲載いたします。

目次

1.地獄への道は善意で舗装されている

2.「善意」とは何か?

3.事例など

4.まとめ

1.地獄への道は善意で舗装されている

「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉は、人間関係においても使われることがあります。これは、善意や親切心からくる行動が逆にトラブルや問題を引き起こす場合を指しています。以下は、この言葉が人間関係においてどのように適用されるかを説明した例です。


例えば、ある人が他の人に対して過度に関心を寄せ、手助けをしようとする場合、相手がそれを歓迎せずにストレスを感じることがあります。また、善意からくるアドバイスや干渉が、相手のプライバシーを侵害したり、自由を奪うこととなる可能性があります。これが続くと、関係が緊張し、争いが生じる可能性があります。


この表現は、善意や思いやりがあるというだけでなく、相手の感情や境界を尊重し、バランスを取ることの重要性を示唆しています。善意が過ぎてしまうと、逆に良い関係が悪化する可能性があるという教訓を含んでいます。

2.「善意」とは何か?

「地獄への道は善意で舗装されている」という表現において、「善意」は一般的に「良い意図や思いやりがあること」を指します。つまり、他者に対して良い行動や利益をもたらそうとする気持ちや行為を指します。例えば、誰かの助けになりたい、他者を励ます、社会に貢献するなどが善意の表れとされます。



ただし、この表現が警告として用いられる場合、善意が逆効果となってしまう可能性があることを示唆しています。時には、善意が過度になりすぎると相手がその意図を理解せず、または善意が相手にとって不適切である場合には、問題が生じることがあります。

善意をもって行動することは大切ですが、相手の意向や状況を考慮し、適切なバランスを保つことが重要です。行動や言葉が善意から生まれる場合でも、相手のニーズや境界を尊重することが、健全な人間関係の構築に寄与します。


もし本当にすべての人がここまで配慮することができれば、ローマ時代にできた諺「地獄への道は善意で舗装されている」は、生まれなかったと思いますね。

3.事例など

 価値観や考え方が全く異なる方の善意は果たして他人にとって善意なのか?腹を割って話し合ったり、お互いの理解を求める行為が果たして必要なのか?ここらあたりの考え方が重要になってくると思います。

極端な例でいうと、自分を付け回しているストーカーに、「私の立場をわかっていただいて、適切な距離をとってお付き合いしたい。」といったところで、同じことを繰り返してきますよね。はっきり言って意味がないんですよ。こちらが嫌な思いをするだけなんです。(岡田斗司夫ゼミ引用事例)

これが親族関係や近しい友人となってくると、考え方が揺るぎがちになると思うのですが、事象は同じだと私は考えています。

行き過ぎた環境活動や宗教勧誘、毒親なんかはこれに当たると思います。


4.まとめ

押しつけの善意は、時として相手の自由を奪ったりすることもあります。私自身も気を付けないといけない部分もあるのですが、意図せず押しつけになってしまっているケースもあります。日ごろから自分自身注意をしないと、自分も相手にとってそのような形になってしまうかもしれませんからね。家族関係もしかりです。

令和6年3月1日施行「戸籍の一部を改正する法律」(戸籍が最寄の役場で取得できるようになる)

令和6年3月1日施行「戸籍の一部を改正する法律」(戸籍が最寄の役場で取得できるようになる)

現状、本籍地の役場でなければ取得できない戸籍ですが、令和6年3月1日より、コンピュータ化されている戸籍については、最寄りの役場、例えば本籍地は東京にあり、住所は香川県だった場合、香川県の最寄りの役場で自身の東京の戸籍を取得できます。これを「広域交付制度」と呼ばれています。

目次

1.広域交付制度とは

2.広域交付で請求できる方

3.広域交付で取得できる戸籍の種類

4.まとめ

1.広域交付制度とは

 「令和6年3月1日から、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行され、以下のことができるようになります。 本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになります(広域交付)。」(法務省HP引用)


 例えば、本籍地が婚姻や転籍で変わっていった場合、それぞれの市町村で戸籍が作成されています。今までですと、それぞれの戸籍を取得しようと思った場合、それぞれの市町村役場の窓口又は郵送請求でしか行うことができませんでした。


 戸籍などのデータは、当初各市町村役場が独自で管理していたものを法務省で一元管理することにより、広域交付を実現することができました。


 この広域交付制度により、自身が現住している市町村の役場の窓口で、他の市町村役場に存在する戸籍の取得が可能になります。隣町で近いと言っても、それなりに時間がかかることから、最寄りの市町村役場で取得できるようになると利便性が上がります。


2.広域交付で請求できる方

 ①本人


 ➁配偶者


 ③直系尊属(自身の父母・祖父母)


 ④直系卑属(自身の子供や孫)


となっています。自身の兄弟姉妹につきましては、対象外になっているので注意が必要です。


 注意事項として、戸籍証明書等を請求できる対象者は、市町村の戸籍担当窓口に行って請求する必要があります。近くの役場で取得できるので、今まであった「郵送請求」はできなくなります。「代理人による請求」もできなくなります。また、窓口に訪れた対象者の方の本人確認のため、以下の顔写真付きの身分証明書の提示が必要です。(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)


3.広域交付で取得できる戸籍の種類

 取得できる戸籍として、コンピュータ化されている戸籍・除籍証明情報が対象となります。コンピュータ化されていない戸籍、除籍証明書は対象外となります。また、一部事項証明書、故人事項証明書は請求できなくなっています。


4.まとめ

 令和6年3月1日から本籍地が遠くにある場合でも、近くの市町村役場の窓口で戸籍証明書の取得が可能になります。ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍は取得できません。


 本人、配偶者、直系尊属(父母・祖父母)、直系卑属(子・孫)の戸籍証明書等が取得できます。広域交付制度を利用する場合、最寄りの役場の窓口に行く必要があります。


 今後の予定として、


 ①マイナンバー制度の活用による戸籍証明書等の添付省略


  例えば、児童扶養手当認定手続において、申請書と併せて申請人等のマイナンバーを申請先の行政機関に提示することにより、申請先の行政機関が戸籍関係情報(マイナンバーの提示を受けた者に関する親子関係、婚姻関係等の情報)を確認することができるようになりますので、戸籍証明書等の添付が不要となります。


 ➁戸籍電子証明書の活用による戸籍証明書等の添付省略


  例えば、パスポートの発給申請において、申請書と併せて戸籍電子証明書提供用識別符号を申請先の行政機関に提示することにより、戸籍電子証明書(電子的に戸籍情報を証明したもの)を確認することができるようになりますので、戸籍証明書等の添付が不要となり、オンラインで手続が完結されます。


 利便性が上がると不安になるのがセキュリティーの問題ですが、法務省で一元管理されていますので、一極集中でセキュリティーを施せばかなり堅牢なシステムができると思います。この辺りは、法務省に期待ですね。

ネットニュースで見た生前贈与の間違い

ネットニュースで見た生前贈与の間違い

先日、ニュースの記事を読んでいて、生前贈与について書かれているものがありました。その中で、生前贈与について、「相続人への贈与は令和6年1月1日で持ち戻しが7年に引き上げられるので、相続人以外の孫に贈与すれば問題ない」と書かれていました。以前、法律・税務相談の際に「相続人でない方への生前贈与の問題点」を指摘されていたことを思い出しましたが、その点については全く触れられていませんでした。その問題点について触れたいと思います。


目次

1.令和6年1月1日から生前贈与が変わる

2.確かに生前贈与変更の対象は相続人だが・・・・・

3.まとめ

1.令和6年1月1日から生前贈与が変わる

 令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。


 改正される内容は、以下の通りです。


①暦年贈与制度

 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。


➁相続時精算課税


 (令和5年12月31日までに計算式)


  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 (令和6年1月1日以降の計算式)


  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)


            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。


 また、暦年贈与と相続時精算課税を比較すると、その要件が異なります。いかに比較表を示します。


(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)


2.確かに生前贈与変更の対象は相続人だが・・・・・

 暦年贈与制度には、比較表を見てもわかるように、誰から誰にという要件が、相続時精算課税制度と異なり、ありません。


 今回の暦年贈与の変更である7年持ち戻しについては、相続人が対象となるので、相続人以外にあげればいいんじゃないのか?というご質問がありますが、以前、相続相談時に税理士先生がこの問題に答えていた内容を引用して、問題点を考えてみます。


 税理士先生「確かに、相続人以外の配偶者やお孫さんのように、贈与時点で相続人ではない方に贈与するのも一つの手だと考えるのもわかります。しかし、まず、配偶者に関してですが、現状円満な家族関係であっても、離婚するかもしれないというリスクがあります。また、お孫さんへの贈与も、お子様が贈与者より先に亡くなったのでは、お孫様は相続人になってしまいます。それに、お孫様が未成年の場合、贈与財産を管理するのが親になりますので、通帳などを実質両親が管理していた場合、お子様の名義預金となってしまい、結局相続人への贈与と税務署に判断されてしまうかもしれません。・・・・」


 横で聞いていて「なるほど」と聞き入ってしまいました。


3.まとめ

 先日、暦年贈与制度と相続時精算課税制度が変わる記事を書きましたが、その辺りから意識していたせいか、ネット記事の情報の内容を確認するようになりました。その中には今回のように、問題点を論じずにメリット部分のみを記載したものも少なくありません。


 生前贈与の対策をご検討の方は、相続専門の税理士のアドバイスを必ず受けることをお勧めいたします。

令和6年4月1日相続登記義務化 【相続放棄をしたから、もう関係ないよ】

2024年4月1日相続登記義務化(相続放棄をしたからもう関係ないよ?)

令和6年4月1日に開始する相続登記義務化ですが、法定されている制度として「相続放棄」があります。自分が相続人であること、相続財産があることを知ったときから、3か月以内という期限付きの制度なのですが、果たして相続放棄をすれば遺産の不動産について放棄するわけなので、関係なくなるのか?その点について、解説していきたいと思います。


目次

1.相続放棄とは

2.相続放棄のデメリット

3.相続財産の管理義務が残る場合

4.まとめ

1.相続放棄とは

 相続放棄(そうぞくほうき)とは、ある遺産や相続財産に対して、法定相続人が自らその相続権を放棄することを指します。相続放棄をすることで、その人は相続人としての権利や義務を放棄し、遺産を受け継がないことを意味します。


相続放棄をする場合、法定相続人が法定の手続きを踏む必要があります。通常は、裁判所に届出を経て、相続放棄の手続きが完了します。相続放棄が認められると、その人は相続人としての地位を喪失(初めから相続人ではなかったこととなる)し、他の相続人だけが法定相続人となります。その分の遺産は法定相続人の次の順位の者に分割相続されることとなります。


相続放棄の理由としては、債務超過による負担を避けるため、相続財産に対する不安定なリスクを回避するため、または家族や他の相続人との関係を考慮しての決断などが挙げられます。

4.まとめ

 以上のように、相続人が全員相続放棄した場合など、清算人を申し立てない限り、被相続人の財産の管理義務をずっと負うことになります。


 相続放棄の手続き自体は、それほど難しいものではありませんし、家庭裁判所に出向くこともほぼありません。郵送のみの手続きが一般的です。


ただし、相続放棄をするにしても、すでに遺産分割協議に参加していた場合、自分の相続人としての権利を処分したということで、相続放棄自体出来なくなる場合があります。被相続人に多額の借金がある場合など、特に注意が必要です。


 相続が発生して、相続放棄を検討されている方は、専門家に相談して、相続放棄制度の利用に可否や、その後に管理義務が生じるかどうか確認することをお勧めいたします。

令和6年4月1日相続登記義務化 【法定相続証明情報一覧図の取得方法】

2024年4月1日相続登記義務化(法定相続証明情報一覧図の取得方法)

「法定相続情報証明制度」を活用し、預金の名義変更・解約、相続登記に添付する戸籍の代わりに提出することができます。すでに制度が始まり数年が経過していますが、改めて、取得方法についてまとめてみたいと思います。

目次

1.法定相続情報証明制度とは

2.法定相続情報証明一覧図の申請書

3.申請書に添付する書類について

4.申請窓口

5.注意する点

1.法定相続情報証明制度とは

法定相続情報証明制度(ほうていそうぞくじょうほうしょうめいせいど)は、日本の相続手続きにおいて、相続人が相続財産についての情報を証明するための制度です。この制度は、相続人が法務局に提出する「法定相続情報証明書」に基づいています。


法定相続情報証明書は、相続人が相続財産の内容や詳細な情報を記載した文書であり、これによって相続手続きが円滑に進むことが期待されています。


2.法定相続情報証明一覧図の申請書

 ①被相続人の表示(氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日)


 ➁申出人の表示(住所、氏名、連絡先、被相続人との続柄)


 ③代理人の表示(住所(事務所)、氏名、連絡先、申出人との関係)


 ④利用目的(不動産登記、預貯金の払い戻し、相続税の申告、年金等手続、その他 から選択)


 ➄必要な写しの通数・交付方法


 ⑥被相続人名義の不動産の有無(有・無、有の場合には不動産の所在又は不動産番号)


  ※不動産は、申請書を提出する法務局の管轄内にある不動産であることが必要です。記載する不動産は、複数ある場合は、そのうちの一つの未記載で大丈夫です。


 ⑦申し出先登記所の種別(被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地 のいずれかを選択)


3.申請書に添付する書類について

 (必ず用意する書類)


 ①被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸除籍謄本


 ➁被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票


 ③相続人の戸籍謄抄本


 ④申出人の氏名。住所を確認することができる公的書類


  (運転免許証の表裏面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票の写し)


  ※これらのコピーには、「原本と相違ない旨」を記載し、申出人の記名をしなければなりません。


  (必要となる場合がある書類)


 ➄法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合(任意です)各相続人の住民票の写し


 ⑥委任による代理人が申し出の手続きをする場合


  ㋐委任状


  ㋑(親族が代理をする場合)申出人と代理人が親族関係にあることがわかる戸籍謄本


  ㋒(資格者代理人が代理する場合)資格者代理人団体所定の身分証明書の写し等


 ⑦➁の住民票の除票を取得することができない場合の戸籍の附票


4.申請窓口

 申請窓口は、被相続人の本籍地、被相続人の最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかに該当する管轄法務局に提出をします。


 申請後、法定相続情報一覧図の再発行を申請する場合、利用しやすい申出人の住所地の法務局に申請することをお勧めいたします。


5.注意する点

 注意する点として2点あります。


 まず一点目は、提出する相続情報一覧図(申請人もしくは代理人が作成するもの)で、相続人が縦に記載されている場合、一番下の相続人の下部に「以下余白」の文字を記載することが必要です。私が使っている作成ソフトでは、この「以下余白」の記載が出力されませんので、ワード出力後に編集をしています。


 次に、相続人の情報に住所を記載するために「住民票の写し」を添付することになるのですが、申出人の氏名・住所を確認しることができる公的書類にも「住民票の写し」が含まれており、兼用することも可能なのですが、兼用した場合、申出人の住民票の写しが証明情報として法務局に取得されてしまい還付されません。この場合、申出人の住民票の写しのコピーを作成し、「原本と相違がない旨」を記載し、氏名、押印をして添付することで、原本の申出人の住民票の写しが還付されることになります。返却されなかった場合、せっかく取得した申出人の住民票の写しを再度市役所等で取得しなければならなくなりますので、注意が必要です。

令和6年4月1日相続登記義務化 【満州国・北方領土・樺太で生まれた方の戸籍】

2024年4月1日相続登記義務化(満州告・北方領土・樺太で生まれた方の戸籍)

先日、満州国で生まれた方の戸籍を調査することがあり、その際に調査した内容についてお話をしたいと思います。北方領土や樺太で出生された方についても調べましたので、記録として残しておきたいと思います。


目次

1.満州国出生の方の戸籍調査

2.北方領土・樺太出生の方の戸籍調査

3.まとめ

1.満州国出生の方の戸籍調査

 満州国(または満洲国)は、かつて存在した国家で、1932年から1945年まで存在しました。正式名称は「満洲帝国」で、日本によって中国東北部の満洲地域に建国されました。


第二次世界大戦が進む中、1945年の敗戦に伴い、満州国は崩壊し、溥儀は戦犯として起訴されました。中国東北部は再び中華民国(中華人民共和国の前身)の統治下に戻りました。


満州国に駐在した日本人は、本土に本籍地を置いたまま活動をしていた ため、「満州の戸籍」というのは実はないのです。 当時は、満州国の全権大使に出生を届けると、本土のその家の役場に通知がいき、その家 の戸籍に入る手続きが取られていました。


つまり、日本に置いていた本籍地で、満州国で生まれた方の戸籍も取得可能です。


実務上でも、特に問題なく戸籍を取得することができました。


戸籍には、「昭和〇年〇月〇日満洲国東安省東安市東安陸軍官舎〇の〇で出生父A届出同年〇月〇日在満洲国特命全権大使受附同月〇日送付入籍」と記載されていました。

2.北方領土・樺太出生の方の戸籍調査

 ①北方領土


  戦前、北方領土で保管されていた戸籍・除籍の一部及び戸籍・除籍の副本の一部などにつきましては、現在、釧路地方法務局根室支局で保管されていますので、こちらに請求することで取得可能です。ちなみに無料で取得できるみたいです。

※地図を見ると、なぜ根室に保管されていたかがわかりますね。


 ➁樺太


  戸籍のほとんどが戦乱により滅失しているみたいです。一部については、「外務省アジア大洋州局地域政策課」に保管されており、その写しを請求することができます。また、保管されていない旧樺太の戸籍については、「保管していない旨の証明」を交付してもらうことができます。

実務としては、旧樺太に本籍があった被相続人について遡る必要があるときは、外務省に戸籍を申請し、戸籍が保管されていないときは、「保管していない旨の証明」を取得します。こちらも無料で取得できます。保管していないことの証明に加え、他の内地の戸籍滅失同様に、相続人全員の「他に相続人がいないことの証明書(遺産分割協議書に併記可)」と印鑑証明書を添付することになります。



3.まとめ


 初めに被相続人の戸籍に「満州国出生」の文字を見たときは、いったいどのように調査をすればいいのかわかりませんでしたが、調べていくうちに、戸籍の記録方法について詳細がわかりましたので、何とか調査を終えることができました。普通の戸籍の調査とあまり差はありませんでした。


 以前、以前戦時中に疎開した先で爆撃にあい、戸籍そのものが滅失している場合があり、この時は、「滅失証明書」を市役所から発行していただき、その後の登記の際には、「他に相続人がいないことの証明」書と印鑑証明書を添付して登記をした経験があります。


 樺太や北方領土で戸籍がない場合にも、同じような手順で添付書類を作成することになることがわかりました。北方領土については、釧路法務局根室支局で保管されていますので、おそらく北海道の根室に保管されてあったのかもしれませんが、樺太の方は、その土地で保管していたため、戦争後のソビエトの侵攻で滅失してしまったのでしょう。


 戸籍をたどれば、改めて歴史を垣間見ることができます。その土地では、その方たちの普通の生活があったという痕跡がよくわかりました。

令和6年4月1日相続登記義務化 【相続登記のツボ「遺産不動産の範囲」「添付書類」】

令和6年4月1日相続登記義務化(相続登記のツボ「遺産不動産の範囲」「添付書類」)

相続登記義務化に伴い、簡単な相続登記については自分でできるように法務省HPなどに、ひな形が例示されています。そこに書かれている内容で相続登記ができるのかと言われれば「?」となります。なぜ、相続登記が簡単ではないのかについてお話をしていきたいと思います。


目次

1.相続登記の申請書作成について

2.相続登記のツボ

3.相続登記を専門家に相談・依頼するメリット

4.まとめ

1.相続登記の申請書作成について

 申請書類のひな形は、法務省HPに掲載されています。しかし、そのひな形に記載されている注意書きを読んでも、すぐに理解できる方は少ないかと思います。申請書の書き方については、それほど難しくはないのですが、ポイントは各個人により、その内容が同じではないという点です。申請書類を作成し、注意書きなどから添付書類を判断して、いざ申請ということで法務局窓口で、不足している書類や申請書の記載の誤りなどを指摘され、何度も足を運ばれた方も多いかと思います。


 相続登記で気を付けなければならない点がいくつかありますので、お話をしていきたいと思います。


2.相続登記のツボ

 相続登記の注意すべきポイントは、まずは「被相続人(亡くなっている不動産の名義人の方)」と、申請する方の関係を証明するための公的書類が足りているのか、という点です。何代にもわたって相続登記が放置されており、戦後の現行民法から相続人の調査が始まります。自分が思っていた相続人以外の方が存在した場合には、遺言書がない場合、その方も遺産分割協議に参加しなければなりません。例としては、被相続人の方が再婚されていて、前婚の相手との間に子供がいた場合などです。


 次に、「遺産である不動産の範囲」です。こちらも調査を要しますが、評価証明書などから判断ができます。しかし、登録免許税を計算する場合には、さらに細かいルールが存在します。単純に評価証明書に記載されている価格を基準とできない場合があります。


3.相続登記を専門家に相談・依頼するメリット

 以上、2点指摘しましたが、戸籍が足りなかったり、登録免許税を計算する算定基準が誤っていると、納める登録免許税を正しく計算できません。さらに、対象不動産が漏れていた場合、後日、再度相続登記の申請を要することにもなります。


 窓口に何度も足を運んだり、公の相談会に何度も参加して質問をしても、はっきりした回答が得られなかったりと、いろいろと不安は募るばかりです。まだ、年齢的に活動的であれば、苦にはならないかもしれませんが、ご高齢の方や、平日お仕事で忙しい方は、なかなか対応が難しくなってきます。つまり、「体力・手間」「時間」が問題となります。頑張って相続登記をできたとしても、一生の間に何度もあることでもありません。


 このような事情を踏まえると、専門家に相談して一括で相続登記を行ってもらうのも選択肢にあると思います。専門家に相談することで「手間」「時間」は省くことができます。そして一番感じるのは「不安の軽減」だと思います。

令和6年1月1日から変わる相続税対策(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

令和6年改正 変わる相続税対策(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)


令和6年4月1日より、相続登記が義務化されますが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わるそうです。同じ「110万円」というキーワードでも、制度が全く異なってきます。令和6年1月1日より先日、セミナーで伺った内容についてまとめてみました。詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。いよいよ、雑誌の記事でも取り上げられ始めました。アイリスでは、香川県内の方を対象に、相続税無料相談会へのご案内をしております。ぜひご利用ください。


目次

1.暦年贈与と相続時精算課税

2.令和6年1月1日以降何が変わるのか

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

4.まとめ


1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)

 暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。


 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。


 上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。


2.令和6年1月1日以降何が変わるのか

 ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。


 改正される内容は、以下の通りです。


①暦年贈与制度


 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。


➁相続時精算課税


 (令和5年12月31日までに計算式)


  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 (令和6年1月1日以降の計算式)


  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)


            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。


 ※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。


3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

 キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。


 セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。


 また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。


4.まとめ

いよいよ、ネットニュースに載り始めました。3年持ち戻しの暦年贈与は今年で最後です。検討されている方はお早めに。

令和6年4月1日相続登記義務化 【義務化の罰則の過料について】

2024年4月1日相続登記義務化(義務化の罰則の過料について)

令和6年4月1日に始まる相続登記義務化ですが、「義務化」というくらいですので、罰則が用意されています。罰則は「最大10万円以下の過料」となりますが、相続登記が発生してから、いつまでにすれば過料は免れるのか、また、法務局が示した過料を免れる基準などをお話ししたいと思います。

目次

1.相続登記義務化とは

2.義務化の罰則

3.最大10万円以下の過料の適用基準

4.まとめ

1.相続登記義務化とは

2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用


3年間という猶予期間は設けられていますが、遺産分割をその間していないリスクとして、相続発生後にさらに相続人のどなたかが亡くなった場合には、相続関係が複雑化することなどが挙げられます。早めに相続登記をしておくことが重要と考えます。

4.まとめ

 相続登記義務化の過料を免れる方法としては、まずは法務省が例示しているような事情がある場合が考えられます。つまり、遺産分割や遺言内容で争っている場合と、経済的に困窮している場合が挙げられていました。


 他にも、「相続人申告登記」をすることが考えられます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。

 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。

この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

登記簿上の持分の一部を移転する場合の注意点(順位番号指定する場合)

登記簿上の持ち分の一部を移転する場合の注意点(順位番号指定する場合)

生前贈与の手法の一つである暦年贈与制度を使った「持分の一部移転」について、今回調査してわかった内容をまとめたいと思います。贈与者の持ち分が、一つの順位番号であった場合、その順位からしか一部移転ができないので、持分さえ特定しておけばいいのですが、順位番号が複数あり、特定の順位番号から一部移転してほしいとのリクエストがあった場合、登記の目的の記載をどのように書けばいいのか?この点について、お話をしたいと思います。

目次

1.1つの順位からの持ち分の一部移転

2.複数順位がある場合の持分一部移転

3.順位番号を指定しなかった場合の持分一部移転

4.まとめ

1.1つの順位からの持ち分の一部移転

 そもそも、共有持分とは、不動産が1人の名義(単有)ではなく、2人以上の名義で登記されていることを「共有」といい、共有持分とは、それぞれが持っている所有権の割合のことを指します。複数人で、一つの不動産を所有していますので、それぞれの権利について名義を変更する場合、「共有者A持分全部移転」となります。


 しかし、時には、その持分の全部ではなく、一部を移転したいという事情もあると思います。例えば、生前贈与の暦年贈与制度を利用する場合です。全部の持分を贈与したのでは、贈与税が基礎控除額を大きく超えてしまい、生前贈与のメリットが薄くなりますので、「持分の指定」のリクエストがある訳です。


 その場合、登記簿謄本中、ある一つの順位番号で持分の記載がある場合の申請書の登記の目的は、「A持分一部移転」とし、受贈者(権利者)に渡る持分を記載することとなります。


2.複数順位がある場合の持分一部移転

 (事例)以下、登記簿謄本の権利部の所有権について


  権利部(甲区)


1番 所有権移転    持分2分の1 A,持分2分の1 B


2番 B持分全部移転 持分4分の1 A,持分4分の1 C 


 

 事例にて、Aが自信の持分のうち、4分の1をCに移転する場合、登記の目的は「A持分一部移転」でいいのでしょうか?


 実は、この登記の目的では、1番の持分の一部を移転するのか、2番の持分を移転するのか判断が付きません。ですので、「A持分一部(順位1番で登記した持分一部)移転」と記載する必要があります。


 実際に依頼のあった内容は、平成5年に登記した持分と平成25年に登記した持分を対象に、平成5年の持分を全部使ったうえで残りの持分から一部を移転してほしいとの内容でした。仮に平成5年の順位が1番、平成25年の順位が25番だっとすると、


「A持分一部(順位1番で登記した持分全部及び順位25番で登記した持分の一部)移転」


という記載になります。


※法務局に確認したところ、ある程度どの持分を移転するのかがわかれば、登記の目的はシステムに適合した形に修正して、入力していただけるみたいです。


気になるのが、システムに適合した登記の目的ですが、「A持分一部(順位1番で登記した持分全部)移転.A持分30分の6(順位25番で登記した持分の一部)移転」という表記が正しいようです。30分の6は実際に移転する持分になります。


 なぜ、平成5年と平成25年に分けたのかと言いますと、平成17年から、添付資料として必要な権利証から登記識別情報に変わっています。権利証でも登記識別情報でも、いいのですが、暦年贈与のように何度も繰り返し利用する場合には、権利証の持分から処分していった方が、後の登記の際に、登記識別情報(パスワード入力)のみで申請ができますので、申請が楽になるといったことが挙げられます。勿論、次回も順位1番の平成5年の持分が残っていれば、次回も権利証が必要になりますが。


3.順位番号を指定しなかった場合の持分一部移転


 おそらく、申請書提出時、若しくはオンライン申請後に「補正」の対象になるかもしれません。どの順位の持分を一部移転するのかの法務局側からヒアリングがあると思います。


4.まとめ

 今回のように、複数順位に同一人物の持分がある場合の「登記の目的」の記載方法について、お話をしてきました。


 どの順位の持分を処分したいのか「A持分一部移転」では、登記官の方たちには伝わりません。こちら側の意思を伝える方法として、「A持分一部(順位1番で登記した持分一部)移転」とすることが必要であると考えます。

令和6年4月1日相続登記義務化 【令和5年4月1日遺産分割協議の期間制限】

2024年4月1日相続登記義務化(遺産分割協議の期限制限)

令和5年4月1日より、民法が改正されたことにより、遺産分割協議のルールが変更になっています。ルール変更に伴い、期間制限が発生しています。この期間制限と他の法令の期間制限を比較しながら解説していきます。


目的

1.遺産分割協議の改正内容

2.他法令の期間制限

3.まとめ

1.遺産分割協議の改正内容

 遺産分割協議には、法律上の期限はありません。つまりいつ行っても問題はないということです。しかし、2021年4月の民法改正により、「特別受益」と「寄与分」の内容が変更されたことにより、影響が出ています。


 ①特別受益とは


  相続開始後10年が経つと、被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益


 ➁寄与分とは


  相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分


 これらの特別受益・寄与分について、相続開始後10年経過すると、その権利を主張できなくなってしまいました。


 そのために、遺産分割協議を10年以内にする必要があると言われるようになりました。


 民法改正は、2023年4月1日から施行されます。また、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用され、その場合、施行日から5年間の猶予期間となっていますので注意が必要です。


 ※期間経過した場合、原則、法定相続分での分割となるのですが、相続人全員の同意があれば、法定相続分以外の分割も可能です。


2.他法令の期間制限

 それでは、今回の民法改正で10年以内に遺産分割協議をすれば安心・・・というわけではありません。他にも法令による期間制限を受ける場合があります。


 ①不動産登記法の改正


  2024年4月1日より、不動産登記法が改正され「相続登記義務化」が始まります。


  相続が発生し、不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすることが義務づけられました。また、②遺産分割協議が成立したときは、成立した日から3年以内に名義変更登記をすることが義務づけられています。これらの義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。


  3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合、この過料を免れるためには、いったん法定相続分による相続登記をするか、相続人全員の「相続人申告登記」をしておく必要があります。法定相続分による登記は、登録免許税等が発生しますし、「相続人申告登記」をしたとしても、そのまま不動産を売却することはできませんし、その間に新たな相続が発生するリスクも抱えています。


 ➁相続税申告


  相続税申告が必要な場合、相続が発生したことを知った日から10カ月以内に申告し、納税しなければいけません。申告期限内に申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。


  また、10カ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、配偶者控除の特例や小規模宅地の特例など相続税額を低くする特例が使えません。相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、その後遺産分割が成立した際に更正請求を行うことで、特例の適用を受けて納めすぎた金額の還付を受けることはできます。ただし、更正請求の手間が増える、相続税申告時の納税額が高くなり納税資金を確保する必要が生じるため、できるだけ期限内に遺産分割協議を済ませておいた方が、手間はかかりません。


3.まとめ

 遺産分割協議自体には法律上の期限はありませんが、特別受益や寄与分の主張が制限される期限、相続登記期限、相続税申告期限、といった期限があります。


 これらの期限近くになり、焦ることのないよう、早めに専門家に相談し、期限内に遺産分割協議をまとめることをお勧めいたします。


 ご相談者の中でも、収益物件を所有されている夫が亡くなり相続登記をしておらず、奥様の方も最近認知症気味で、どうすればいいのかというご相談を受けます。相続人が認知症になった場合には、遺産分割協議をするには、成年後見人を就けるしか方法はなくなってしまいますので、事前の対策を早急に検討してみてください。

敷地権付き区分建物(マンション)に係る租税 「課税標準たる不動産の価額」の取扱い

敷地権月区分建物(マンション)にか係る租税「課税標準ある不動産の価額」の取り扱いについて

敷地権付き区分建物(マンション)の相続について、租税特別措置法第 84 条の2の3第2項(土地につき、評価額が100万円以下の場合は非課税となる規定)の取り扱いについて、周知文が出ていましたのでお知らせいたします。マンションでの土地は、敷地権となっていますので、評価額を専有部分の割合に応じて、登録免許税を計算することになります。


目次

1.敷地権付き区分建物とは

2.敷地権の評価額の出し方

3.今回の周知分について

4.まとめ

1.敷地権付き区分建物とは

敷地権付き区分建物(しきちけんつきくぶんたてもの)は、日本の不動産取引や建築に関連する用語の一つです。以下に、それぞれの要素について説明します。


①敷地権(しきちけん):


敷地権とは、土地の使用や収益権を指すものです。通常、土地所有権は永続的である一方で、敷地権は期間を定めた権利です。敷地権を持つ者は、一定の期間内で土地を利用する権利を有します。期間が終了すると、権利は消滅します。


➁区分建物(くぶんたてもの):

区分建物とは、マンションやアパートなどの共同住宅や施設を指します。複数の住戸や区画に分かれており、それぞれが独立して所有されることが一般的です。区分建物では、建物全体が共有されつつも、各住戸や区画が別々に所有され、管理されます。


したがって、「敷地権付き区分建物」は、土地の使用権(敷地権)が建物と一体となって取引される形態を指します。具体的には、土地の所有者が敷地権を切り離して他者に譲渡し、その土地に建てられた区分建物の各部分(住戸や区画)が別々に所有されます。この構造により、土地と建物が分離された取引が可能となります。


敷地権付き区分建物は、特に都市部や土地が限られている地域で見られる形態であり、土地所有者が土地を有効活用する一方で、建物の所有者が区画ごとに独立して利用できるというメリットがあります

2.敷地権の評価額の出し方


 まずは、登記簿謄本を見てみましょう。「一棟の建物の表示」から、「敷地権の目的である土地の表示」で地積を確認します。

さらに、「専有部分の建物の表示」から、「敷地権の表示」から、その割合(例の場合だと4分の1)を確認します。


「固定資産税評価証明書」もしくは、「納税通知書の課税明細」に記載されている価格を確認します。今回仮に、評価額が「100万円」だったとします。「敷地権の表示」から、その割合は4分の1ですので、100万円に4分の1を乗じて、その敷地権の評価額は、25万円となります。租税特別措置法第 84 条の2の3第2項(土地につき、評価額が100万円以下の場合は非課税となる規定)なので、非課税となります。

3.今回の周知文について

 例えば敷地権が2筆以上にわたって存在する場合には、評価額につき、租税特別措置法第 84 条の2の3第2項の適用を個々で判断するのか、まとめて判断するのかという部分が、少し曖昧になっていますので、この点を法務省民事局民事第二課から国税庁に照会をかけた回答が以下の引用文です。


 「複数の敷地権付き区分建物について、相続による所有権の移転の登記を一の申請情報により申請する場合において、敷地権付き区分建物の敷地権の目的たる土地に同一の土地があるとき(被相続人が敷地権付き区分建物A及びB(敷地権の目的はいずれも土地C及びD)の所有権の登記名義人となっているケース)の非課税措置の適用の可否を判断するに当たっての課税標準たる不動産の価額については、敷地権の地権の持分の割合を個別に乗じて得た金額(上記の例で、Aに係るCを目的とした敷地権の価額、Aに係るDを目的とした敷地権の価額、Bに係るCを目的とした敷地権の価額及びBに係るDを目的とした敷地権の価額を個別に算出した金額)を課税標準たる不動産の価額として、それぞれ非課税措置の適用があるかどうか(100 万円以下であるか)を判断するのが相当である。」(引用終わり)


4.まとめ

 敷地権付き区分建物(マンション)に係る租税特別措置法第 84 条の2の3第2項の「課税標準たる不動産の価額」の取扱いについて、敷地権1つ1つの評価額で非課税の判断をするということでした。

令和6年4月1日相続登記義務化へ 【さぁ、準備を始めよう】

令和6年4月1日相続登記義務化へ(さあ、準備を始めよう)

相続登記は、従前義務ではありませんでしたが、2024年4月1日施行より、義務化されます。

相続を知ってから3年以内に相続登記を正当な理由なくしない場合には、罰則である最大10万円以下の過料が課せられます

。対象の相続は、施行日以前の過去に発生した相続についても適用されます。

この罰則の要件や回避する方法について、わかりやすく解説をしております。

問い合わせが、令和5年4月の5倍ほどに急増しております。さあ、準備を始めましょう。

目次

1.相続登記が義務化された背景とその内容

2.罰則である最大10万円以下の過料を免れる正当な理由

3.他の過料の回避方法

4.まとめ

1.相続登記が義務化された背景とその内容

2024年4月1日より、「相続登記義務化」が始まります。いままで、相続登記は義務化されていませんでした。それにより、東日本大震災後の復興の際、所有者が不明の土地があるため、復興作業が難航したということがあり、法改正も含め、「相続登記義務化」の検討が始まりました。義務化という言葉通り、罰則が存在します。


「(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。


(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。


(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。」法務省HP引用


3年間という猶予期間は設けられていますが、遺産分割をその間していないリスクとして、相続発生後にさらに相続人のどなたかが亡くなった場合には、相続関係が複雑化することなどが挙げられます。早めに相続登記をしておくことが重要と考えます。




2.罰則である最大10万円以下の過料を免れる正当な理由

 ※正当な理由の例


 (1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース


 (2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース


 (3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース


 (4)経済的に困窮している場合


 などが挙げられています。


3.他の過料の回避方法


 (相続人申告登記)


 「相続人申告登記」を法務局に申請することで過料は回避することができます。


 「相続人申告登記」とは、登記官に対し、「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」 もしくは「自らが当該所有権の登記名義人の相 続人である旨」を申し出ることにより、登記官 が職権(登記官が登記をすること)で当該申し出をした者の氏名および住所 等を所有権の登記に付記する制度です。


 実際に、相続人申告登記をした場合の登記簿では、以下のように表示されることになります。


 この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。


 この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、相続登記義務化の過料を免れることはできますが、当該不動産を売買で処分することはできませんので注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。

4.まとめ

 2024年(令和6年)4月1日より、相続登記が義務化されます。義務化には罰則があり、正当な理由なく相続登記をしなかった場合には、最大10万円以下の過料が課されることとなります。対象の相続は、義務化以後のものだけでなく、義務化以前に発生している相続にも及びます。過料を免れる正当な理由がある場合を除き、「相続人申告登記」でこの罰則を免れることはできますが、権利関係を確定できる制度ではないので、遺産の不動産を処分(売買など)される場合には、遺産分割協議などを経て、後日相続登記が必要になってきます。


 現在、法務省(法務局)、市役所などの役場において、相続登記義務化のアナウンスが出ていると思います。法務局、司法書士会、役場などの機関では、法律無料相談会を定期的に実施されておりますので、ご活用ください。


 また、アイリスでも予約をいただければ、法律無料相談を実施しております。アイリスでは「ワンストップ」事務所として、法律相談以外に税務相談の場合には税理士先生を、争いが生じている場合には弁護士先生をご紹介しております。勿論、紹介費用はいただいておりません。ただし、ご紹介先の相談には、費用が発生する場合がございます。

令和6年1月1日、生前贈与が変わる 【暦年贈与制度と相続時精算課税制度】

令和6年1月1日生前贈与が変わる!(暦年贈与制度と相続時精算課税制度)

令和6年4月1日より、相続登記が義務化されますが、相続税対策として一般的だった「暦年贈与」と「相続時精算課税」について、令和6年1月1日より、大きく変わります。

同じ「110万円控除」というキーワードでも、制度が全く異なってきます。

令和6年1月1日より先日、セミナーで伺った内容についてまとめてみました。


詳しい内容につきましては、税理士にご確認ください。

目次

1.暦年贈与と相続時精算課税

2.令和6年1月1日以降何が変わるのか

3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

4.まとめ

1.暦年贈与と相続時精算課税(令和5年12月31日までの取り扱い)

 暦年贈与(れきねんぞうよ)とは、年間贈与額から基礎控除額「110万円」を使い、相続発生時まで贈与を毎年重ねて総ぞ億財産を目減りさせていく相続税対策です。基本、贈与者、受贈者の要件はなく、誰でも使えます。現状では相続人への贈与について、相続発生前3年分の贈与は、相続財産に組み戻されます。


 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、贈与者の生涯において2500万円を特別控除として、相続発生時にこの2500万円を相続財産に全額組み込む仕組みの制度です。特徴として、この暦年贈与精算課税制度を選択した場合、税務署への届出が生じ、暦年贈与との併用は禁止されていますので、途中で暦年贈与に変更できなくなります。


 上記を見てわかるように、今までは圧倒的に暦年贈与の利用が一般的でした。なぜなら、暦年贈与制度は、毎年の控除額110万円は、組み戻される財産以外は控除されたままの状態となるためです。相続時精算課税は、2500万円の枠で使った額がそのまま組み戻されますので、暦年贈与制度の利用が多かったのもうなづけます。


2.令和6年1月1日以降何が変わるのか

 ところが、令和6年1月1日より、暦年贈与・相続時精算課税の取り扱いが変わります。


 改正される内容は、以下の通りです。


①暦年贈与制度


 暦年贈与制度の内容自体は変わらないのですが、組み戻される期間が、現状の3年から7年に拡大いたします。何が問題なのかと言いますと、今まで相続税対策で、毎年少しづつ暦年贈与制度を使い、財産を目減りさせることで相続税っ対策としていたましたが、期間が拡大したことで贈与期間が短いと、対策した財産全てが相続財産に組み入れられてしまう点です。対策を始めてから7年以上かけないと、意味がなくなってしまうというわけです。


➁相続時精算課税


 (令和5年12月31日までに計算式)


  {(受贈財産の価額)-(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 (令和6年1月1日以降の計算式)


  {(受贈財産の価額)-(毎年基礎控除110万円)


            ―(特別控除額2500万円※生涯通算)}×税率


 新しい相続時精算課税制度を選択した場合、毎年の基礎控除110万円分が相続税対策として効力が出てくるというものになっています。


 ※ただし、現状ではその取扱いは明確ではありません。今後、通達等で取り扱いが明確になってくると思われますので、本制度をご利用の際は、税理士に事前に確認をするようにしてください。


3.同じ「110万円控除」だが、意味が異なる

 キーワードとして「110万円の基礎控除」とありますが、暦年贈与でも、相続時精算課税制度でも出てきます。単純に、110万円の基礎控除を使って相続税対策と言っても、どちらの制度のものか理解していないと、効果が出ないということも考えられます。


 セミナーの中で講師の方が言っていたのが、「同じ110万円の控除でも、7年以上生きないと使えない暦年贈与制度の110万円控除と、節税効果抜群の相続時精算課税制度の110万円控除」という表現をされていました。


 また、講師からの注意事項として、税務署は暦年贈与制度を廃止したいと考えており、相続時精算課税制度への移行を促している傾向が見受けられますが、今後、今の暦年贈与制度のように大きく変更される可能性もあり得るとのこと。ご存知の通り相続時精算課税制度は一端選択してしまうと、暦年贈与制度は利用できなくなりますので、慎重に判断をする必要があるとのことです。


4.まとめ

(まとめ画像)



「デジタル遺産の管理」できていますか?

「デジタル遺産の管理」できていますか?

「デジタル遺産」、つまり被相続人が使用していたパソコン、スマホの中にあるデータやアプリといったものを指します。

このデジタル遺産について、終活における対象の一つになっています。

これらのデジタル遺産の管理、そして、自身が亡くなったときのための準備は、できていますか?

本日は、この点について、お話をしていきたいと思います。

目次

1.デジタル遺産とは

2.デジタル遺産管理をしなければいけない理由

3.終活においてデジタル遺産の取り扱い

4.まとめ


1.デジタル遺産とは

 ①金融口座


  ㋐ネットバンク・非通帳口座


  ㋑仮想通貨


  ㋒FX取引のアカウント


 ➁ポイント


  ㋐各種サービスポイント


  ㋑マイレージ


 ③有料会員サービス


  ㋐オンラインサロン


  ㋑動画サブスク


  ㋒音楽サブスク


 ④その他


  ㋐電子マネー


  ㋑通販サイトのアカウント等


 などが挙げられます。


※生前の写真データやデジタル文書等も含みます。


2.デジタル遺産管理をしなければいけない理由

 以前、遺言書作成のセミナーを開催したときに、この「デジタル遺産」についても解説をしました。皆さん、その場ではよく話を聞いてくれるのですが、実際に対策をその後したかというと、多くの方が実行されていませんでした。その時、セミナーに参加された方にお話を聞く機会がありましたので、なぜ対策をしないのか聞いてみました。


 「先生、私は元気です。まだまだ早いですよ。今はやる必要ないでしょう。」とおっしゃられました。その方は、78歳です。果たして、まだ早いのでしょうか。あまり無理強いはできませんので、これ以上はお話はしませんでした。遺言書のブログでもお話をしましたが、平均寿命は80歳を超えていますが、健康寿命というものは70歳中盤から急激に衰えてきます。つまり、何事をするにも、ある程度体力を使いますので、70歳を超えた方には、遺言書作成を進めております。このデジタル遺産も「エンディングノート」などを活用して、残されたご家族に知らせておくのが、本当は良いのですが。


 今まで、様々な方を見てきましたが、その中でこういった生前の対策を70代前半で実施されている方をあまり見かけません。相続税対策の「暦年贈与」についても、令和6年1月1日から、巻き戻し期間が3年から7年に引き伸ばされ、早めに対策をしないと、せっかく贈与しても、その効果は薄くなってしまいます。この理由も、まだまだ元気だからとおっしゃる方が多いです。病気になってから対策をしても、最初のアクションが一番体力を使います。途中であきらめたり、できたとしても漏れがあったりします。


 終活の基本は、先延ばしにせずに、初めの一歩を早めに作成しておくことです。その後、修正の作業は、格段に楽になります。


3.終活においてデジタル遺産の取り扱い

 デジタル遺産の中でも、財産的価値のあるものについては、当然に相続財産の対象になります。ですので、パソコンやスマホのパスワードを家族と共有するか、エンディングノートに書いておく必要があると考えます。しかし、多くの方が、生前に家族とパスワードを共有したくないとおっしゃる方が大半です。これに加えて、エンディングノートなども作成していなければ、何かあった場合、電子機器のパスワードがわからず、必要な手続き(サブスク契約の解除等)が取れなくなるといったことが想定されます。パスワードロック解除に多額の費用を要したり、株式やFX、仮想通貨などの取引をされている場合には、ロック解除に時間を要すると、下落局面などでは、多額の損をしてしまう可能性もあります。


4.まとめ

 相続対策でいうところの生前とは、かなり長い期間が想定されます。多くの方が、亡くなるもしくは、認知症などの意思能力が亡くなる前と思っている方が大半を占めていますが、元気な今こそ、終活の絶好の機会であることを周知いたしたく、今回の記事を書きました。


 遺言書やエンディングノートなどの記録の作成は、第一弾がハードルが高いです。その後、加筆や修正については、格段にハードルは低くなります。完成形でなくてもいいので、まずは第一弾の記録を残してみてはいかがでしょうか。

「死因贈与契約書をもって窓口に預金を下ろしに来た」預金の払い戻しは?

「死因贈与契約書をもって窓口に預金を下ろしに来た」預金の払い戻しは?


とある金融機関様より、窓口に死因贈与契約書(公正証書ではない)をもって窓口に来た方に、預金の払い戻しができるかどうかという、問い合わせがありました。勿論、最終的には、その金融機関様の本部の判断によるところとなると思うのですが、東京地裁令和3年8月17日判決を参考に説明をさせて頂きました。

預金を払い戻す側として、死因贈与契約がいいのか、遺言がいいのかの判断にもつながると思いますので、ご紹介したいと思います。

目次

1.死因贈与契約とは

2.遺言書による遺贈と死因贈与契約の違い

3.東京地裁令和3年8月17日判決の事例

4.まとめ


1.死因贈与契約とは

 「死因贈与」とは、自分が亡くなったときに、指定した財産を特定の人へ渡すことを約束した契約行為です。 贈与者(財産を渡す人)が生きている間に、受贈者(財産を受け取る人)と合意していたことが条件です(契約なので両当事者の合意により成立する)。 贈与者が亡くなった時点で、死因贈与の効力が発生します。この点だけ見ると、遺言書による遺贈にもよく似ていると思いますが、異なる点もあります。


2.遺言書による遺贈と死因贈与契約の違い

 遺言は「単独行為」です。遺言者が財産を受け取る者を指定し遺言書を作成しておき、遺言者の死亡により効力を生じます。


 一方で、死因贈与は「契約行為」です。贈与者と受贈者との間で「契約」により、贈与者の死亡を条件に財産を贈与するという契約になります。


 一見、どちらも同じように見えますが、比較してみました


似て非なるものであることがわかると思います。


3.東京地裁令和3年8月17日判決の事例

 死因贈与契約でも遺贈と同様に個別の銀行預金を譲ることは可能です。銀行預金を譲渡する場合には死因贈与が契約として有効かどうか以外に、払い戻しが問題なくできるのかどうかという点も問題となります。仮に、この贈与が相続人ではない第三者だった場合、相続人との関係も、金融機関としては考慮しなければならないからです。


 東京地裁令和3年8月17日判決の事例では、財産を受けた側から金融機関に払い戻しを要求したところ、金融機関側が「相続人全員の同意書」を求めたことから端を発しています。


 金融機関の預金には、譲渡制限特約は必ず盛り込まれています。(譲渡制限特約がなければ、自分の預金口座を第三者に事由に譲渡できることになり、特殊詐欺の振込先の預金に使われてしまうため)。そして、仮に受贈者がその特約は知らないと言っても、重過失になり認められません。


 法律上、死因贈与契約には遺贈にかかわる法律の規定が準用されると規定されています。遺贈については譲渡禁止の対象となる債権譲渡というものには当たらないとされています。


一方で、遺贈は遺言で遺言者が単独で行うものであるのに対し、死因贈与は契約で譲る方と譲り受ける方の合意によって権利を移すものです。遺贈と同等に考えるとなると禁止の対象にならない、つまり払い戻しは可能となります。他方、契約での移転なのだから禁止の対象となると考えれば、払い戻しはできないことになります。判決では、契約である以上は禁止の対象になると判断しています。


4.まとめ

 事例は地裁の判決なので何とも言えない部分はありますが、金融機関側が二重払いリスク回避や「譲渡制限特約」を主張して、相続人全員の同意書が必要となりました。東京地裁では金融機関側の主張が認められています。


 今回の死因贈与契約による預金の払い戻しに関して、遺言のように執行者を選任しても、預金に関しては、譲渡禁止特約の対象になる点には注意が必要です。


 そもそも、遺言で遺贈を行えば、遺言執行者を遺言書で指定又は家裁に選任を申立して就任した場合、遺言執行者は「相続人全員に遺言の内容を通知」しなければなりません。死因贈与には、このような規定がありませんので、一見、相続人に知らせずに預金の払い戻しができるように見えますが、預金の譲渡制限特約により、契約書だけでは預金の払い戻しはできないということになりますね。


令和6年4月1日相続登記義務化 【③遺留分の生前対策について】

2024年4月1日相続登記義務化(③遺留分の生前対策について)

遺言書を作成するにあたり、ある相続人に集中して遺産を相続させようとしたときに遺留分の問題が発生する可能性があります。

この場合、ご依頼者から具体的に対策をしたいと相談された場合、どのように対策をするのかについて解説していきたいと思います。

目次

1.遺留分対策のアプローチ

2.遺留分対策①早期の生前贈与

3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄

4.遺留分対策③遺留分の生前放棄

5.遺留分対策④生命保険の活

6.遺留分対策➄養子縁組制度の活用

7.まとめ

1.遺留分対策のアプローチ

 まずは、各相続人に遺留分侵害額がどのくらいになるのかを予め試算します。


 その時に取るべき対策のアプローチとして以下の5点が考えられます。


  ㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる


※遺留分侵害額の算定で、減産の額を増加させることにより「パターン➁」の状況に持ち込む方法です。


  ㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう


  ㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする


  ㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる


  ㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる


 具体的な対策についてみていきたいと思います。

2.遺留分対策①早期の生前贈与

 遺留分侵害額請求の対象となるのは遺贈と贈与になります。贈与とは遺言書で財産を引き継がせることであり、遺贈は必ず遺留分を計算するうえで対象財産となります。一方、生前贈与は一定の期間制限があります。この期間制限外での贈与については、遺留分侵害額請求の対象財産とはなりません。


 つまり、「一定期間内に行われた贈与が遺留分の対象となる=期間外の贈与は遺留分侵害額請求の対象から除かれる」となります。


 この「一定期間」については、相続人と相続人以外で異なってきます。(民法第1044条)


 (遺留分算定のための財産の価額に算入される贈与)


※特別受益:自宅購入資金、事業資金、不動産をもらう等の扶養の範囲を超えた資金的援助を受けることを言います。


  例えば、12年前に長男が自宅購入資金として2千万円、父親から援助を受けその後相続が発生した場合、この2千万円は、特別受益に該当する贈与とはなりません。


 また、遺留分権利者を害すると知ってなされた贈与については、期間制限はなくなりますので注意が必要です。これに該当するかどうかの要件は、


  ①その贈与が、個人の財産が増加しないという予見があること


  ➁将来、個人の財産が増加しないという予見があること


   →「全く収入が立つ予定がないのに贈与する行為=損害を与えることを知っていた」


    と、判断される可能性があります。


 ご高齢で定職がない状態での贈与は、該当する可能性があります。


 相続はいつ発生するかわかりませんので、できるだけ早期の対策が必要となります。



3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄

 遺留分権利者とは、「配偶者」「子供」「直系の親」が該当します。つまり、相続人が対象になります。そこで、「相続放棄」を検討していきます。相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったと扱われます。そうなると、相続人以外の贈与の対象となりますので、相続発生前1年以内のものでなければ遺留分侵害額請求の対象財産ではなくなります。


 ただし、この場合も遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である場合には、この1年という期間制限はなくなってしまいますので注意が必要です。


 遺留分権利者により裁判となった場合、この「遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である」ことの立証責任は遺留分権利者側になりますので、相当困難にはなると思われますので、権利行使されないことが多くあると思われます。


4.遺留分対策③遺留分の生前放棄

 相続放棄は、被相続人の生前にはすることができません。相続を相続人が知ったのち3か月以内にすることができます。しかし、遺留分の放棄は、被相続人の生前であってもすることは可能です。


 遺留分対策として、「最も確実な方法」として、生前に相続人となる方と話し合い遺留分を放棄していただく方法があります。


 遺言書の相談で最も多い内容が、「どうやって、対象の相続人の方に遺留分を放棄してもらうか」です。「念書」を書いてもらっていたら大丈夫なのかというお話をされる方もいらっしゃいますが、生前の遺留分放棄の手続きとしては、民法1049条にある通り、「家庭裁判所の許可」がなければ、当該念書に法的な効力はありません。


 家庭裁判所の許可を要する理由としては、被相続人による不当な圧力によって、不本意に遺留分の放棄が行われてしまう可能性があるためです。


 遺留分権利者が不当に権利を奪われることがないようにとのことで、家庭裁判所で許可を得る要件として次の事項が挙げられます。


  ①遺留分権利者の自由な意思によること(強制的な遺留分の放棄は不可)


  ➁遺留分放棄の必要性や合理性が認められること


  ③遺留分権利者へ十分な代償が行われていること(遺留分に相当する程度の贈与を行うこと)


 なお、遺留分を放棄した相続人は、相続人として遺産を相続することができます。この点が相続放棄と大きく異なる点です。ですので、遺言書を書いて当該相続人への遺産の相続をしないように意思表示しておかなければ、遺留分放棄者は法定相続人として相続財産を相続することとなってしまいます。


5.遺留分対策④生命保険の活用


 あらかじめ相続財産に現金・預金が多くある場合には、「生命保険」の活用が考えられます。生命保険の活用は、相続税対策においても有効ですが、遺留分対策においても有効です。


 相続対策に活用する保険は、終身型の死亡保険となります。被保険者が亡くなったときには、「受取人」に死亡保険金が支払われることになります。相続対策の生命保険活用する場合の保険料は、一時払いで現金・預金を保険金に変えることができます。


 この死亡保険金の大きな特徴は、相続財産として取り扱われないという点があります。


 ①相続税法上は相続財産とされるので、相続税の課税対象となりますが、「相続人の人数×500万円」の控除の枠があります。


 ➁相続する上では相続財産から除外されています。つまり、相続財産ではありません。


  つまり、死亡保険金は、受取人である相続人固有の財産ということになり、遺産分割協議などなくても、保険証書をもって死亡保険金の受け取りができます。


  相続財産ともされていないため、遺留分の対象ともなりません。


  生命保険の活用も、過度の利用(遺産総額に対して50%程度)となりますと、相続財産と扱われて、遺留分の対象となる可能性が高いため、利用する割合については注意が必要です。

6.遺留分対策➄養子縁組

 養子縁組は、相続税対策にも活用されていますが、遺留分対策にも有効です。養子縁組によって各相続人の遺留分も減少します。


(事例)

事例で、父親が何もしていない場合、相続分は長男、次男それぞれ2分の1ずつとなり遺留分はそれぞれ4分の1となります。

 父親が、長男の配偶者と孫を養子とした場合、各相続分は4分の1となり、それぞれの遺留人は8分の1となります。

 相続税の側面でも、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)で相続人の数が4人としたいところですが、

 ①実子がいる場合は、養子は1人まで


 ➁実子がいない場合は、養子は2人まで

この基礎控除の相続人の人数に加えることができます。


 一方で、遺産を相続する側面では、人数制限はありません。


 相続税の考え方と相続の考え方では、違いがありますので詳しくは各専門家に相談してください。


7.まとめ

 遺留分対策のアプローチとして挙げた5つについて、


 ㋐遺留分権利者の特別受益・遺贈する額を増加させることで、遺留分侵害額を減少・消滅させる


 ㋑遺留分権利者の権利を相続前又は相続後に遺留分を放棄してもらう


  ③遺留分の生前放棄(家庭裁判所の許可が必要)、相続発生後は家庭裁判所の許可は不要。


 ㋒相続人である受遺者の特別受益を対象外にする


  ①早期の生前贈与、➁生前贈与と相続放棄


 ㋓遺産そのものを減らし遺留分侵害額を減少・消滅させる


  ④生命保険の活用


 ㋔法定相続分を減少させることで遺留分侵害額を減少させる


  ➄養子縁組活用


位置づけることができます。㋐については、遺言書内又は、遺産分割協議書内で遺留分額と同等額の財産を分与することで達成することができます。テクニカルなことは以上ですが、各検討されている方たちの個別の状況に応じて、手段は選ぶべきだと考えております。テクニカル面ばかり重視しすぎると、家族関係がその後おかしくなったりすることがあります。「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、各専門家への相談をお勧めいたします。


※内容でも少し触れましたが、「相続」と「相続税」についての考え方が異なる個所があります。専門家に相談しながら、対策を進めていくことをお勧めいたします。


令和6年4月1日相続登記義務化 【②遺留分侵害額請求権について】

2024年4月1日相続登記義務化(②遺留分侵害額請求権について)

「①遺留分について」で、遺留分の算定から遺留分侵害額の算定まで解説しております。遺留分侵害額が算定出来ましたら、


遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の請求ができることになります。その効力範囲などを解説していきます。


目次

1.遺留分侵害額請求権とは

2.遺留分侵害額の請求順

3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲

4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効

5.まとめ

1.遺留分侵害額請求権とは

 被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し,遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合,遺留分権利者は,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分を侵害されたとして,その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。 これを遺留分侵害額の請求といいます。(民法1046条)


 遺留分侵害額請求権の法的性質は形成権であることから、受遺者又は受贈者に対する具体的な金銭請求権は、遺留分侵害額請求権を行使して初めて発生することになります。


※形成権:権利者の一方的な意思表示によって現存の権利関係に一定の変更を生じさせる権利のことです。


2.遺留分侵害額の請求順

 ①受遺者と受贈者がある場合


 (受遺者:遺言で遺産を受けた場合、受贈者:生前に贈与を受けた場合)


  先に受遺者が負担することとなります。(民法1047条第1項第1号)


 ➁受遺者が複数ある場合又は、贈与者が複数あるときで贈与が同時に行われた場合


  原則:受遺者。受贈者は遺贈・贈与の目的の価額の割合に応じて負担


  例外:遺言者がその遺言に別段の意思表示をした時は、その意思に従う


  (民法1047条第1項第2号)


 ③受贈者が複数あるとき(上記➁を除く)


  後の受贈者から順次前の受贈者が負担(民法1047条第1項第3号)


※贈与を先にした場合、明確にならない場合があるので、遺贈が先の順位となります。


 遺贈は遺言者の死亡により効力を発生するので同時になり、贈与も同時なら価額の割合になります。贈与の場合は、前後関係があるので新しい後の贈与から順番に負担することがルールとして定められています。


※受遺者又は受贈者が無資力(請求時に財産がない状態)で遺留分権利者が満足を得ることができない(金銭債権を回収できない)場合の損失の負担は、遺留分権利者が負担することになります。(民法1047条第4項)つまり、請求しても請求先が無資力なら、次の順位の受遺者、受贈者が負担するのではなく、遺留分権利者自身が負担することになるということです。


3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲

 ①金銭債権の発生(民法1046条第1項)


  ※金銭債権が発生するものの、いきなり受遺者に支払えと請求しても、遺贈されたものが不動産などすぐに金銭に変換できないもので、受遺者に資力が乏しかった場合には、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、金銭支払債務の支払いに係る期限の許与をすることができます。(民法1047条第5項)


 ➁受遺者又は受贈者が、第三者弁済等により遺留分権利者が負担すべき相続債務を消滅させた場合、遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務の額の限度において、遺留分侵害額請求権によって負担する債務の消滅を請求することができます。(民法1047条第3項)


 ※受遺者、受贈者が、遺留分権利者が負うはずだった債務を消滅させたのだから、その分減額してと言える権利です。これも遺留分権利者に受遺者又は受贈者が減額又は消滅させてと意思表示しなければ効力は生じません。


4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効

 遺留分侵害額請求は、遺留分権利者から相手方に対する意思表示によって行います。そして、この意思表示は、「裁判上」でも「裁判外」でも構いません。


 つまり、単純に相手方に請求すれば、遺留分侵害額請求をしたことになりますので、請求時に金銭債権が発生することになります。


 ここで、いつまでも侵害額請求することができるとすると、受遺者や受贈者にとって、いつ請求されるかわからないという不安がずっと続くことになりますので、民法上遺留分侵害額請求権の消滅時効が設けられています。


 ①遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年(民法1048条前段)


  ※単に相続開始・贈与・遺贈があったことを知るのみでなく、それが遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求を市うべきものであることを知ったときである。(最判昭57.11.12参照)


 ➁相続開始の時から10年(民法1048条後段)(除斥期間-多数説)


  ※つまり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときが相続開始から10年経過していた場合には、もはや請求することはできません。


5.まとめ

 遺留分侵害額請求権を行使した場合のルールについて解説してきました。遺留分侵害額請求権は、各相続人に残された最終的に行使できる権利です。他の相続人たちから妨害されないような仕組みになっていますが、権利ですのでいつまでも行使しないと時効にかかってします仕組みもあります。


 また、遺留分侵害額請求権の行使につきましては、裁判上、裁判外共に行使することができます。

令和6年4月1日相続登記義務化 【①遺留分について】

2024年4月1日相続登記義務化(①遺留分について)

遺言書の相談内容、遺産分割協議でしばしば出てくる「遺留分」。


いったい誰が主張でき、どのように具体的な遺留分の価額を算出するのかを解説していきます。


目次

1.遺留分とは

2.遺留分を主張できる相続人とは

3.遺留分の割合

4.遺留分の算定

5.遺留分侵害額の算定

6.まとめ

1.遺留分とは

 遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。


 遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。


 こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。


2.遺留分を主張できる相続人とは

 兄弟姉妹以外の相続人、すなわち、①子(代襲相続を含む)、➁直系尊属(両親又は祖父母など)、③配偶者です。(民法1042条第1項)


 包括受遺者及び、相続欠格・排除・相続放棄により相続権を失った者は、相続人ではないので、遺留分の主張はできません。


3.遺留分の割合

 ①総体的遺留分として


  (1)直系尊属のみが相続人の場合、被相続人の財産の3分の1(民法1042条第1項第1号)


  (2)その他の場合、被相続人の財産の2分の1(民法1042条第1項第2号)


 ➁個別的遺留分とは


  遺留分権利者が2人以上いる場合、各人の遺留分を個別的遺留分と呼び、その算定方法は民法1042条第2項が準用する民法900条及び901条の法定相続分になります。


 小難しく書いておりますが、①は全体に適用する遺留分割合で、➁が実際、各相続人が主張できる遺留分の割合(法定相続分×総体的遺留分割合)になります。つまり、実務で必要なのは➁になります。


 (事例)もし、配偶者と子供2人のうち長男が遺留分を主張する場合、①総体的遺留分は2分の1となります。そして長男の法定相続分は4分の1となるので2分の1×4分の1で8分の1が長男の遺留分になります。

4.遺留分の算定

 被相続人が相続開始時に有していた積極財産(不動産、預貯金、動産など)の価格を確定します。


 次に加算をすべき項目があります。いわゆる「特別受益」と呼ばれる財産で


 (1)相続人以外の者が被相続人から相続開始前1年以内に贈与で受け取った財産


 (2)相続人が被相続人から相続開始前10年以内に贈与で受け取った財産


 ※もし、贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合には、期間制限がなくなることに注意が必要です。


  具体的に「贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってなされた場合」とは、贈与者に収入がないにもかかわらず多額の財産を贈与する行為などが挙げられます。遺留分対策をする場合には注意が必要です。


 ※遺留分対策として、相続放棄を利用するケースがあるのも、この特別受益の期間を相続人ではなくなることで、特別受益の算入の期間を10年から1年に短縮できる点にあります。当然こちらも、遺留分権利者を害する行為としてなされたと判断された場合、期間制限はなくなりますので、注意が必要です。

5.遺留分侵害額の算定

 遺留分の侵害額の計算


 遺留分額から


 ①減算対象項目


   ㋐遺留分権利者が受けた特別受益の価額


   ㋑遺留分権利者が取得すべき遺産の価額


 ➁加算対象項目

   遺留分権利者が承継する債務の額

 を調整することで、遺留分侵害額の算定ができ、これが遺留分侵害額請求権の額となります。

 ※遺留分権利者が実際に受けた特別受益と遺産については減算し、引き受けた債務については加算とします。

 債務を加算すると言われると、遺留分額の算定と逆になっており、なにかこう抵抗感がありますが、遺留分権利者の立場で見ると、自信がもらったものは減算して、負担したものは加算すると考えれば、納得がいくと思います。


6.まとめ

 今回は、遺留分について、遺留分を主張できる者と、遺留分の算定方法について解説をいたしました。

 相続開始前では、相続後相続人間で争いが起こらないようにするために「遺留分を侵害しない額」までの生前贈与や、この額を想定した遺産分割を記した遺言書の作成などの手法が考えられます。

 相続開始後では、遺産分割協議の際に「遺留分侵害額請求」がなされる場合があります。民法改正により、不動産などの分割など行わなくても、金銭によりその額を支払うことになります。

 遺留分は相続人に残された最後の権利であるので、侵害した場合には「遺留分侵害額請求権」の行使が認められています。

 専門家に相談をして、対策をしましょう。次回は、遺留分の侵害額の計算方法の解説をいたします。

令和6年4月1日相続登記義務化 【不動産の日アンケート結果について】

2024年4月1日相続登記義務化(不動産の日アンケートの結果について)

令和5年9月23日の不動産の日に公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)および公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)は、20歳から65歳の全国男女5151名を対象に「住まいに関する定点/意識調査」を実施し、結果を「2023年住宅居住白書」としてまとめていましたので、ご紹介をいたします。

目次

1.住居は所有派?賃貸派?

2.空き家問題に関する現状調査

3.2022年に実施されていた「相続登記義務化の認知度」

4.まとめ





1.住居は所有派?賃貸派?


法律関連とは全く関係がない話です。「持ち家派」が67.5%となり、昨年度から10pt以上減少、定点調査を開始してから初の60%台に突入しました。


法律関連とは全く関係がない話です。「持ち家派」が67.5%となり、昨年度から10pt以上減少、定点調査を開始してから初の60%台に突入しました。


こちらは、個々の考え方にもよりますので、どちらがいい悪いということは言えません。本当に欲しい方は、持ち家を持つべきだと思いますし、ローンの負債を負いたくないや、自然災害のリスクを避けたいのであれば、賃貸の方がいい様にも見えます。答えなんて出ませんよね。


2.空き家問題に関する現状調査


「既に空き家を所有している、将来空き家になるになる可能性がある物件を所有しているとの回答が約4割となりました。


 地域別に見てみると、「空き家」「空き家になる可能性のある物件」がある地域として、四国が最多となり、最小の北海道と21.0pt差になっています。


また、空き家になる可能性のある物件について「話し合いの必要を感じつつもまだ行っていない」との回答が34.9%で最多となり、緊急性を感じている人が多くないということがわかりました。」


 四国のどの県までかはわかりませんが、空き家の増加が目立つようです。私も相続登記を受任して、相続登記完了後にそのまま住む方は、6割ぐらいです。空き家になってしまうケースもありますので、その場合は、活用するか売却するかで、取引をさせて頂いている業者にお繋ぎをするようにしております。

3.2022年に実施されていた「相続登記義務化の認知度」


 1年前のアンケートにはなるのですが、相続登記義務化の認知度の結果が出ていましたのでご紹介いたします。


「相続登記義務化(令和6年4⽉開始)は「知らない」が43.8%」


以前、法務省と全国司法書士会連合会の実施したアンケートでは、4分の1から3分の1の方が知らない結果であったことを踏まえると、約半数の方が認知しているという部分で差が出ています。残念ながら、2023年に関しては、相続登記義務化に関するアンケート項目がありませんでしたので、比較はすることはできないのですが、私たち専門家含め、積極的に啓蒙活動に参加しているところです。


4.まとめ

 今回の全宅連・全宅保証が実施いたしましたアンケート結果についてご紹介いたしました。


 空き家問題について、「緊急性を感じていない方が多い」「四国の空き家が多い」部分について、ショックを受けると同時に、やっぱりそうかとなにか納得してしまいました。高松市内も空き家が増えてきていますからね。国・行政もいろいろ策は出していますが、まだまだ進んでいないのが現状です。そうしている間にも、人間は有限の生き物ですから、相続が発生し、空き家となる物件が発生してきます。


 法律面では「相続登記義務化」「相続土地国庫帰属制度」「所有者不明・管理不全土地(建物)管理命令制度と共有関係解消の制度」の3本柱で取り組んでいます。相続登記義務化で所有者を特定することで、再開発や収用などを短期間で行うことができるようになりますし、相続土地国庫帰属制度により不要な土地を国に管理してもらえるようにもなり、初めての適用事例も出てきています。


 しかし、一番大事なのは、各個人が意識しておくこと、できれば早期に対策しておくことだと考えます。しかし、各個人で対応するには、専門的な部分も多くあるため、まずは専門家に相談することをお勧めいたします。

令和6年4月1日相続登記義務化 【相続登記未了の過去分について】

2024年4月1日相続登記義務化(相続登記未了の過去分について)

令和6年4月1日相続登記義務化について、過去分の相続登記未了の物件についてのご質問がありましたので、わかりやすく解説したいと思います。

結果から言いますと、今回の相続登記義務化は、過去分も対象となります。

未登記建物についての問い合わせもありましたので、併せて確認します。それでは見ていきましょう。

目次

1.相続登記義務化について

2.過去に発生した相続で相続登記未了の物件

3.未登記不動産について

4.まとめ





1.相続登記義務化について


 相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行) 相続により(遺言による場合を含みます。) 不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。


 また、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記の申請をしなければならないこととされました。(法務省HP引用)


2.過去に発生した相続で相続登記未了の物件

 過去に発生した相続で相続登記未了の物件も、令和6年4月1日開始の相続登記義務化の対象となります。


 実際に、このような物件の相続登記を受任する場合があるのですが、相続人の調査が長引く恐れがあります。戦前の旧民法と戦後の民法では、相続人の考え方が大きく異なるため、登記簿に掲載されている名義人及び名義人から家督相続をした方の亡くなるタイミングによっては、膨大な数の相続人との遺産分割協議となってしまうケースが多いです。


 相続登記義務化は令和6年4月1日施行ですが、このような物件をお持ちの方は、早めに専門家に相談をすることをお勧めいたします。


3.未登記不動産について

 この未登記不動産の所有者が変更となった場合(相続により所有者が変更になった場合を含みます)の届出先は、高松市役所では「資産税課」が担当窓口になっています。当然ですが、登記簿が法務局に存在しませんので、相続登記義務化の対象ではありません。


 また、届け出期間は高松市HP上では、この届出は義務化されており、


(1)固定資産(土地・家屋)の登記簿上の所有者が死亡した場合、現所有者であることを知った日から3か月以内に現所有者申告を提出しなければなりません。


(2)現所有者の申告を正当な理由がなくて申告しなかった場合は、10万円以下の過料に処せられます。


と、罰則付きのものになっています。


 しかし、3か月以内に遺産分割をして帰属先を決めるのは困難ですので、その場合には、相続人全員の同意書の添付で受け付けていただけます。


(未登記建物の申告の添付書類)


 ①遺産分割協議前


  亡くなられた方の除籍謄本


  相続人の戸籍謄本


  全員の同意書及び印鑑証明書


 ➁遺産分割協議後


  遺産分割協議書


  相続人全員の印鑑証明書


 ※高松市役所では、コピー可となっていますが、自治体によっては原本を要求され、自治体でコピーする場合もございます。また、添付書類も異なる場合がありますので、あらかじめ担当窓口にご確認ください。


 未登記不動産を取り壊す場合、役所への届出をしないでいると、いつまでも固定資産税を支払い続けることになりますので、窓口に行き「未登記建物を取り壊したので届出がしたいのですが」と言っていただければ、対応してくれます。


 この未登記物件の届出につきましては、罰則もあります。


  未登記不動産の役所への届出は、義務化されています。正当な理由なしに3か月間届出を怠ると10万円以下の過料に課せられます。


 相続放棄をする相続人がいるなどして、3か月以内に遺産分割協議ができない場合には、予め窓口に相談をしておいた方がいいと思われます。


4.まとめ


 令和6年4月1日相続登記義務化では、過去分の相続についても対象になります。相続登記未了期間が長いと、相続人の調査が膨大になる可能性があります。


 未登記物件については、令和6年4月1日相続登記義務化の対象とはなりません。しかし、役場に所有者の変更を届ける必要があります。これを怠ると罰則もあります。


令和6年4月1日相続登記義務化 【遺言書と遺産分割協議、どちらが優先】

2024年4月1日相続登記義務化(遺言書と遺産分割協議、どちらが優先)

ご相談者から、「遺言書と遺産分割協議書、どっちが偉いんだ。」という質問を受けました。どちらが偉いか、偉くないかの議論はさておき、遺言書がある場合、遺産分割協議は必要なのでしょうか。

そして、その内容として、遺産分割協議と遺言書、どちらが優先されるのでしょうか。

目次

1.遺言書・遺産分割協議どちらが優先

2.遺産分割協議をしたのちに遺言書が出てきた場合

3.遺言書があったら遺産分割協議はできないの

4.遺言と異なる遺産分割協議の効果

5.まとめ



1.遺言書・遺産分割協議どちらが優先

 結論から言えば、遺言書の内容が優先されます。遺言者の遺志が優先されるわけです。


2.遺産分割協議をしたのちに遺言書が出てきた場合

 例えば、遺産分割協議を終えて、数年たったある日、仏壇の中から父親の遺言書が出てきた場合どのようにすればいいのでしょうか。

 まずは、その遺言書の封を切らずに家庭裁判所に相続人全員で持ち込み、「検認」の手続きが必要です。誤解されている方も多いのですが、検認手続きは、遺言書の中身を確認する作業であり、遺言書の真贋を判断する手続きではありません。ですので、どうしてもその遺言書の内容がおかしいという相続人の方は、別途、裁判で遺言書の真否について判断してもらう必要性があります。

 その遺言書の内容が、遺産分割協議書の内容と異なっていた場合、どうなるのでしょうか?次のセクションで述べたいと思います。


3.遺言書があったら遺産分割協議はできないの

 こちらも結論から言いますと、遺言書があっても遺産分割協議は原則可能です。

 しかし、以下の場合には、遺産分割協議により遺言書の内容と異なる遺産分割はできなくなります。

 ①遺言で遺産分割が禁止されていないこと

  遺言書に遺言の内容以外の遺産分割を禁止する旨の記載があった場合、遺産分割協議による遺言内容と異なる遺産分割はできません。

 ➁相続人全員の合意がない

  相続人全員の合意が得られない場合には、遺産分割協議は成立しませんので、遺言書の内容での分割ということになります。

 ③遺言執行者がいる場合

  遺言執行者がおり、その者の同意が得られない場合にも遺産分割協議によることはできません。

 ④相続人でない受遺者がいる場合

  相続人以外の者に遺産を分ける遺言書の内容であった場合、本来であれば利益を受けられる受遺者の同意が得られない場合にも、遺産分割協議によることはできません。


4.遺言と異なる遺産分割協議の効果

「(平成14年2月7日 さいたま地方裁判所 平成11(ワ)2300)

 特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がなされた場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じたとき)に直ちに当該不動産は当該相続人に相続により承継される。

 そのような遺言がなされた場合の遺産分割の協議又は審判においては、当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることは言うまでもないとしても、当該遺産については、上記の協議又は審判を経る余地はない。」

(最判平成3年4月19日第2小法廷判決・民集45巻4号477頁参照)


「しかしながら、このような遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は、相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから、これと異なる内容の遺産分割が善相続人によって協議されたとしても、直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。


被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別、そうでなければ、被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく、むしろ全相続人の意思が一致するなら、遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。


法的には、一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが、このような遺産分割は、相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが可能であるし、その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。


また従前から遺言があっても、全相続人によってこれと異なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり、ただ事案によって遺産分割協議が難航している実情もあることから、前記判例は、その迅速で妥当な紛争解決を図るという趣旨から、これを不要としたのであって、相続人間において、遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず、その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。」


難しくいっていますが、最高裁では、遺言書の内容を優先するがあまり、不要な相続トラブルを起こしたんじゃ本末転倒。だから、遺産分割協議によってもいいですよと言っており、さいたま地裁では、「相続させる旨の遺言」(特定財産承継遺言 民法1014条第2項)の場合は、遺言が優先されると言っています。


5.まとめ

 原則として、遺言書が残されている場合は遺産分割協議をせずに、その内容に沿って遺産を分配しなければなりません。とはいえ、遺言の内容とは違う方法で遺産を分けたい、という方もいらっしゃるかと思います。そのような場合、次の条件を満たしていれば、遺言書があったとしてもその内容と異なる遺産分割協議を進めることが可能です。


 ①遺言書で遺産分割を禁止していない


 ➁相続人全員の合意がある


 ③遺言執行者の同意がある


 ④受遺者の同意がある


以上です。よくわからない場合には、専門家への相談をしてください。

令和6年4月1日相続登記義務化 【負動産発生抑制に関する法令まとめ】

2024年4月1日相続登記義務化(負動産発抑制に関する法令まとめ)

所有しているだけで負の不動産になっているものを負動産と呼ばれています。

所有者不明の土地だけに関していえば、九州の面積に匹敵するぐらいのものがあるそうです。

今後、こういった負動産を活用できる形にするための法整備が進んでいます。これらをまとめて解説していきます。

目次

1.負動産発生のメカニズム

2.負動産を放置することによるリスク

3.近年の法改正による負動産対

4.まとめ

5.追記

1.負動産発生のメカニズム

 負動産とは、価値が減少する傾向にある不動産のことを指します。負動産が発生するメカニズムは以下のようなものがあります。


 ①地価の下落:不動産価格は、地価に依存しています。地価が下落すると、その地域の不動産価格も下落する可能性が高くなります。地価が下落する原因としては、不況や過剰な供給などが考えられます。


 ➁建物の老朽化:建物が老朽化すると、修繕や改修が必要になります。修繕費用がかさむ場合や、改修が難しい場合には、不動産の価値が下落する可能性があります。


 ③周辺環境の悪化:不動産の価値は、周辺環境にも依存しています。周辺環境が悪化すると、その地域の不動産価格も下落する可能性があります。例えば、騒音や公害、治安の悪化などが挙げられます。


 ④法規制の変化:政府の法規制が変化すると、不動産の価値にも影響を与えることがあります。例えば、建築基準法の改正や地価税の見直しなどが挙げられます。


 これらの要因が重なることで、不動産の価値が減少し、負動産が発生することがあります。


 これらに加えて、「相続登記の放置」も原因の一つと考えられます。あまりにも長い期間放置してしまいますと、当初の相続人にさらに相続が発生してしまい、権利関係が複雑になってしまうからです。


2.負動産を放置することによるリスク

 負動産を放置することによるリスクは以下のようなものがあります。


 ①価値が下落する可能性がある:負動産は、不動産市場で売却することができても、その価格が元の購入価格よりも低くなる可能性が高いです。価値が下落することで、投資元本が回収できなくなる可能性があります。


 ➁維持費用がかかる:負動産を放置することで、建物や敷地の維持費用がかかることがあります。建物が老朽化している場合は、修繕や改修費用がかさむことがあります。また、空き家になっている場合は、管理費用や固定資産税などの費用がかかります。


 ③周辺環境の悪化:負動産が周辺環境の悪化の原因となることがあります。建物が放置されている場合、周辺住民にとっては目障りな存在となり、治安や衛生面の問題を引き起こすことがあります。


 ④規制違反のリスク:負動産を放置していると、建築基準法や建築物維持管理法などの法律に違反する可能性があります。違反が発覚すると、罰金や強制的な解体命令などの法的措置を受けることがあります。


以上のようなリスクがあるため、負動産を放置することは避けるべきです。負動産を放置している場合は、早期に売却や解体などの対策を行うことが重要です。


 とはいえ、①から➄に共通して言えることは、「放置された負動産」の権利関係を特定することが非常に困難になっている場合が多いです。権利関係を調査するにも多額の費用を要する場合があります。仮に、権利関係が明確になっていても、建物老朽化に対する維持管理費用が支払えずに放置しているケースもあります。一人暮らしをしていた父親の建物は既に傷みが激しいから、リフォームか取り壊して土地だけでも売りたいが、「旗地」で、建築基準法上建て替えの規制が厳しく断念したというケースもありました。


3.近年の法改正による負動産対策

今後、負動産対策の法令が増えるかもしれませんが、現状、確認できる関連法は以上の通りです。


4.まとめ

 空き家問題は、他人事ではありません。少子高齢化が進み、相続する不動産があった場合、子供の数が減少している状況では、相続しても不要となってしまっている不動産も実際多く存在します。行政も対応しているのですが、本来、所有者がある不動産は、その所有者に責任があります。相続登記を放置することで、ある日、自分が負動産を相続する可能性もあります。

 放置は解決策にはなりません。放置はさらなる被害を周辺に及ぼす可能性があります。早めの専門家や行政への相談をお勧めいたします。


5.追記

 所有者不明土地(建物)管理命令・管理不全土地(建物)管理命令について、民法条文を確認すると以下の通りです。

「(所有者不明土地管理人の権限)

第二百六十四条の三 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。


1. 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」

「(管理不全土地管理人の権限)

第二百六十四条の十 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。


2. 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為


3. 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。」


 以上のように、財産管理人を選任申し立てをした後、その財産管理人と交渉して、裁判所の許可を条件に隣地を買い取ることができるため、いろいろと考えて本制度を利用しようとする方もいらっしゃると思います。


管理不全の場合は、所有者が明確に存在するので、隣人(利害関係人として)からのご依頼でも受けることはできるのですが、所有者不明の場合は、登記簿から現所有者名義の方を探し出し、そこから戸籍をたどるのですが、相続人がいた場合、そこからの調査は難航します。


仮に、市役所で全員相続放棄していることをつかんでいても、相続放棄した番号がわからなければ、これ以上は踏み込めません。直接相続人に連絡をした場合、トラブルとなり懲戒請求される恐れもあるからです。市役所は、特別な権限があるため照会をすることが可能ですが、一切情報はいただけません。ですので、現状アイリスでも本制度を活用した案件はございません。

令和6年4月1日相続登記義務化 【今までのアンケート結果から見える認知度】

2024年4月1日相続登記義務化(今までのアンケート結果から見える認知度)

法務省が令和4年7月に実施した「相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度等調査調査結果の概要」のアンケート結果(約1年前)と日本司法書士連合会が令和5年3月頃に実施した相続登記義務化のアンケートを比較してみました。


日本司法書士会連合会のアンケートは、1年前の令和4年3月にも同じ条件で実施しています。これらのアンケート結果を見ていくことで、相続登記義務化の認知度の変化がわかると思います。


目次

1.令和4年9月法務省実施のアンケート結果

2.令和5年3月日本司法書士会連合会実施のアンケート結果

3.まとめ

1.令和4年7月法務省実施のアンケート結果

 令和4年7月に法務省が実施した相続登記義務化のアンケートの結果として、「よく知らない」「全く知らない」と答えたのは、約66%にも上りました。また、「詳しく知っている」「大体知っている」と答えた年代の多くが20代で、よく知らない」「全く知らない」と答えた年代の多くが40代であるという結果になっていました。


 また、相続登記義務化の罰則である過料を免れる「相続人申告登記」について、よく知らない」「全く知らない」と答えたのは、全体の約81%にまでのぼっていました。


※さすがに、今から1年以上前のアンケートですので、相続登記義務化の認知度について、まだまだよくわかっていない方が多いといった印象を受けます。


2.令和5年3月日本司法書士会連合会実施のアンケート結果

 令和5年3月日本司法書士会連合会実施(株式会社日本経済社実施)のアンケートについて、相続登記義務化の認知率は、27.7%(令和4年3月の調査では、24.3%)でした。今年の3月時点での相続登記義務化の認知率は、4人に1人しか認知していないということになります。また、相続登記義務化施行時期・対象の認知率に関しては、相続登記義務化が1年ふぉに迫っていることを認知している方は、16.8%。また、現在相続登記されていな不動産も対象になる(過去の相続登記未了も対象になる)ことを認知している方は、19.3%とかなり低い水準でした。


 相続登記義務化により相続発生後3年以内に相続登記しなければならなくなることを認知している方は、12.3%。相続登記義務化後、罰則である最大10万円以下の過料についての認知は、10.8%でした。


 さらに、日本司法書士会連合会が全国50か所の無料相談窓口「相続登記相談センター」があることを知っている方は、6.5%にとどまりました。




3.まとめ

 令和5年3月時点での相続登記義務化の認知度は、非常に低いと言えます。その後、法務省は、相続登記義務化を認知してもらうために、広告宣伝の予算を設けて、かなり大々的に実施をしています。民間のサイト運営会社が自社のユーザー対象に相続登記義務化のアンケートを令和5年8月頃に実施した結果は、「知らなかった」が53.4%となっていました。