皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、事業承継に関するお話です。
中小企業経営者の高齢化が進むなか、政府は事業承継支援を重要課題の一つと位置付け、ガイドラインの策定やM&A支援制度の整備など様々な施策に取り組んでいます。
しかし10月に中小企業基盤整備機構から提出された報告では、相談件数と成約件数は過去最高を記録しましたが、一部では目標未達が目立ち、地域間でのばらつきが見られました。
1.事業承継を巡る状況
中小企業白書(2024年版)によると、中小企業経営者の平均年齢は上昇を続け、全国平均で63.8歳と過去最高を更新、とりわけ地方圏における高齢化が顕著になっています。
また、2023年の休廃業・解散件数は49,788件とコロナ禍の影響が大きかった2020年を上回る高水準で、経営者の高齢化と後継者不在が大きな要因となっています。特に70歳以上の経営者による休廃業・解散の割合は年々増加し、黒字廃業の割合も高い状況が続いています。
後継者の有無については後継者不在率は改善傾向にあるものの、2023年は54.5%と依然として高い水準です。経営者の年代が上がるほど、親族内外を問わず事業承継を検討する割合は高まっていますが、70歳代以上でも3割弱が「未定・分からない」と回答しています。
事業承継を円滑に進められなかったことを起因とする後継者難倒産も増加、2023年度は586件(前年度20.3%増)と過去最多を大幅に更新し、業種別では建設業が約20%を占め、小売業、卸売業の順となっています。
2.政府の取り組みについて
政府は平成27年度に「事業引継ぎガイドライン」を策定、M&Aの活用促進に取り組み、 令和2年3月に「中小M&Aガイドライン」を公表、後継者不在の中小企業向けにM&Aのプロセスを示しました。
同年7月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」には、第三者承継支援と親族内承継支援のワンストップ体制の構築などが明記され、更に令和3年6月の「成長戦略実行計画」では、中小企業の円滑な事業承継の後押しと、M&Aを適切に活用できる環境整備が提示されました。
同年4月に「中小M&A推進計画」を取りまとめ、今後5年間の官民の取り組みロードマップを示し、8月に中小M&Aの安心感醸成のため「M&A支援機関登録制度」を創設。民間でもM&A仲介業者による自主規制団体が設立されています。
令和4年3月には円滑な事業承継をより一層推進するため、「事業承継ガイドライン」を改訂、令和5年9月に「中小M&Aガイドライン」も改訂し、M&A専門業者との契約条項や手数料、支援の質の確保などが追記されました。
3.令和5年度の具体策とは
事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)では、令和5年度に以下の事業に取り組んでいます。
(1)情報収集・情報発信強化に向けた取り組み
前年度に比べて案件の紹介件数が大幅に増加、連携が強化されました。また、中小企業・小規模事業者への周知・啓発活動として、積極的に情報を発信、ダイレクトメール、PR誌発行、ホームページ運営、動画作成、新聞広告などを実施し、事業承継フォーラムもオンラインで開催しています。
(2)掘り起し支援の強化
地域の事業承継ネットワークを構築し、プッシュ型の事業承継診断などで掘り起こしを実施。令和5年度の事業承継診断件数が前年比107%の230,907件、エリアコーディネーターが対応した相談件数が前年比110%の10,507件と前年度を上回る実績でした。
また弁護士会との連携により14地域で覚書等を締結し、弁護士が支援した71件中35件が成約。中小企業診断協会とも連携し、M&A後の統合作業を中心に9地域で協力体制を築きました。
(3)事業承継・引継ぎ支援の充実
①民間M&Aプラットフォーマーとの連携強化のため、二次対応の取扱を開始し、センター専門家向けに職能別研修やオンライン研修を実施。
②親族内承継支援体制を構築するため、コーディネーターやマネージャーを適切に配置し体制を強化した結果、親族内承継の相談件数と成約件数が過去最高に。
③事業承継・引継ぎ支援事業のためのデータベースに、セキュリティ向上のため多要素認証を導入、情報量の充実に向けて入力項目の拡充等を実施。
④登録民間支援機関やマッチングコーディネーターの増加に取り組み、前年度比で1,503機関に増加、優秀な人材も一般公募など。
⑤後継者人材バンクを積極的に活用、前年度から大幅に成約件数が増加。
4.令和5年度の実績と評価
令和5年度の事業引継ぎ成約件数は過去最高の2,023件(前年比 120%)となり、累計では10,174件に達しました。譲渡側の企業規模を見ると、売上高1億円以下の中小企業が6割超を占めており、従業員10名以下の小規模事業者も7割強に上ります。業種別では製造業、卸売・小売業、建設工事業が上位を占めています。
一方で譲受側は譲渡側より大規模な企業が多く、売上高1億円超が約6割、従業員21名以上が約4割で、全体の構成比は前年度から大きな変化がありませんでした。
各センターの事業評価は14センターがA評価でしたが、一部では目標未達が目立つなど地域間で取り組みにばらつきがあり、今後さらなる努力が求められています。
参考資料:令和5年度に認定支援機関等が実施した事業承継・引継ぎ支援事業に関する事業評価報告書(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
令和6年10月26日にネクスト飯田様にて「相続税まるわかりセミナー」を開催いたしました!
「どのような時に相続税がかかってくるのか」など最近の税務調査状況を含めて、基本をしっかりと分かりやすくお伝えしました。
また、気になる土地や家屋の評価額の相場についても、周辺の資料を参考にお伝えしました。
当日は、相続税のエキスパートである税理士・坂田先生や、相続関連のことにも精通していらっしゃる司法書士の橋本先生にも同席していただき、受講者の方の様々な質問に専門家の視点から答えていただきました。
◆参加者の方からの感想◆
・理解しやすくとても良かったです。
・とても親しみやすく、丁寧に説明してくださって分かりやすかったです。
・大変参考になりました。
・個別対応もしてくださり、とてもありがたかったです。
・参加者も多く、質疑もあり、参考になる点が色々ありました。
・今後どうすべきか、早くすべきことは何か、と考えさせられる内容でした。
・資料が分かりやすく、とても良かったです。皆さんの質問も大変参考になりました。
・質疑応答の時間で皆さんの質問への回答が具体的に想像しやすく参考になりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
【当日の様子】
皆様こんにちは。
北野税理士事務所の北野です。
今回は、日本の税制の現在の財政状況や今後の課題などを説明していきたいと思います。
日本の税制は、課税対象や課税主体、実質負担者などの観点から多様な種類に分類されます。
平成以降、税負担の公平性確保や社会保障財源確保を目的に、所得税の軽減と消費税率の引上げなどの改革が進められてきました。
しかし近年、社会保障関係費の増大などから財政赤字が拡大し、現行の税制では将来の歳出を賄えない状況となっています。そこで、今一度、税制の現状と課題について考えてみましょう。
1.税の種類と分類について
税には様々な種類があり、分類の仕方も複数あります。
まず、課税対象から見ると、所得に対する税、消費に対する税、資産等に対する税の3つに大別できます。次に、課税主体から見ると、国が課す国税と、都道府県や市町村が課す地方税の2つに分けられます。国税と地方税を合わせると40種類以上の税目があります。
さらに、実質的な負担者と納税義務者の関係から見ると、両者が一致する直接税と、異なる間接税の2つに分類され、所得税は直接税、消費税は間接税に当たります。
このように、税には様々な分類の仕方があり、それぞれの性質を理解する必要があります。
2.税制の変遷を振り返る
税収は、景気動向や税制改革等の影響を受けて変動してきました。
バブル景気の平成2(1990)年度には60兆円台に達しましたが、その後の低迷やリーマンショックの影響で平成21(2009)年度には38.7兆円にまで落ち込みました。
しかし、景気回復に加え、社会保障財源確保のため平成26(2014)年に消費税率が5%から8%に、令和元(2019)年には8%から10%に引き上げられたこと等で増加に転じ、令和4(2022)年度には71.1兆円と高水準となりました。
このように税収は経済情勢や税制によって大きく変動してきたことがわかります。
3.財政状況と課題
近年の一般会計歳出では、社会保障関係費や国債費の割合が増加し、その他の政策経費の割合は縮小傾向にあります。
近年の予算では、社会保障関係費と国債費と地方交付税交付金等で歳出全体の約4 分の3 を占めています。
また、令和6(2024)年度予算では、歳出全体の約3分の2しか税収等で賄えておらず、残りは公債金すなわち借金に依存している状況です。
4.財政赤字と国債発行による将来世代への負担先送り
財政状況は前述の通り、一般会計歳出と一般会計税収との差が大きく、その差額のほとんどが国債の発行で賄われています。このため、借金である国債の返済負担を将来世代に先送りしてしまっています。
また、新型コロナウイルス対策や物価高騰対策として、過去に例を見ない規模の補正予算を組んだため、歳出が大幅に増加しました。一方、現行の税制では財源を十分に確保できていません。
5.給付と負担のバランスについて
諸外国と比較すると、税収水準は対GDP比で国際的に低い一方、社会保障支出は中程度の水準にあります。高齢化の進展に伴い、今後社会保障給付は更に増加することが見込まれますが、現行の税制では十分な財源を確保できない可能性があります。
このため、社会保障の給付と国民の負担のバランスについて、国民的な議論を重ねていく必要があるでしょう。
■給付と負担のバランス
(出所)OECD “National Accounts”、“Revenue Statistics”、内閣府「国民経済計算」等
(注)オーストラリア、エストニア、ドイツについては推計による暫定値。それ以外の国は実績値。
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
令和6年10月14日にネクスト仏生山様にて、令和6年10月20日にネクスト林様にて「相続税まるわかりセミナー」を開催いたしました!
「どのような時に相続税がかかってくるのか」など最近の税務調査状況を含めて、基本をしっかりと分かりやすくお伝えしました。
また、気になる土地や家屋の評価額の相場についても、周辺の資料を参考にお伝えしました。
当日は、相続税のエキスパートである税理士・坂田先生や、相続関連のことにも精通していらっしゃる司法書士の橋本先生にも同席していただき、受講者の方の様々な質問に専門家の視点から答えていただきました。
◆参加者の方からの感想◆
・相談できる人を決めることが大事だということを知りました。
・とても分かりやすかったです。
・今まで自分には関係ないことのように感じていましたが、身近に感じることができました。
・大変満足しました。
・専門の先生方のお話を聞くことができてよかったです。
・とても勉強になりました。
・土地や家屋の評価額についてよく分かりました!
・相続に関して勉強しているつもりでしたが、更に知識を深めることができました。
・友人が前回参加して勧めてくれて参加しました。来てよかったです。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
次回は
◆令和6年10月26日(土) 10:00~11:00 ネクスト飯田(高松市飯田町)
にて開催いたします。
ご予約等詳細はこちらをご覧ください。
【当日の様子】
皆様こんにちは。
北野税理士事務所の北野です。
今回は、今月から引き上げられた最低賃金に関する話題です。
1.2024年最低賃金の動向
2024年10月から全国の都道府県で最低賃金が順次、引き上げられています。
全国平均で過去最高の51円引き上げられ、時給の平均は1055円となります。引き上げ額は都道府県により異なり、最大は徳島県の84円、最小は20都道府県の50円です。最も高い東京都は1163円、最も低い秋田県は951円のように、都道府県間で大きな開きがあり、地域による最低賃金の格差が一層拡大することになります。
なお、都道府県別の最低賃金改定額は以下の通りとなっています。
2.最低賃金引き上げの影響
最低賃金の引き上げにより、企業には以下のように様々な影響が生じるでしょう。
①人件費の増加
最低賃金が引き上げられると、最低賃金に満たない給与の従業員の賃金を引き上げる必要があります。これにより、企業の人件費が増加することになります。人件費の増加分は企業の収益を圧迫する要因となるため、対策が必要不可欠です。
②採用活動への影響
最低賃金の引き上げにより、賃金総額が高くなるため、企業の採用コストが増加します。採用予算に余裕がない場合、計画していた募集人数を減らさざるを得なくなる可能性があります。
③従業員のモチベーション低下リスク
最低賃金の引き上げにより、最低賃金労働者と熟練労働者の賃金格差が縮小します。その結果、熟練労働者の賃金が相対的に低くなると受け止められ、モチベーション低下のリスクが高まります。
このように、最低賃金の引き上げは企業経営に大きな影響を与えます。人件費の増加分を製品価格に転嫁するか、生産性向上に取り組むなどの対策が求められます。
3.最低賃金の計算方法
最低賃金額を遵守しているかどうかは、雇用形態や給与体系によって計算方法が異なります。時給制の場合は時給が最低賃金額以上であれば適法となりますが、日給制や月給制では所定労働時間数を加味した計算が必要です。
詳細は都道府県労働局や労働基準監督署にご確認ください。なお、日額と時間額の両方が定められている特定(産業別)最低賃金については、適用される額が異なりますのでご留意ください。
最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金なので、最低賃金を計算する場合には、実際に支払われる賃金から以下の賃金を除外したものが対象となります。
【最低賃金の対象とならない賃金】
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
①時間給の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)
②日給の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、 日給≧最低賃金額(日額)
③ 月給の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
④出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額≧最低賃金(時間額)
⑤上記1〜4の組み合わせの場合
例えば基本給が日給制で各手当(職務手当等)が月給制などの場合は、それぞれ上の②、 ③の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)と比較します。
4.賃金引上げを支援する業務改善助成金の活用
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が生産性向上のための設備投資等を行い、併せて事業場内最低賃金を引き上げた場合に、その費用の一部を助成する制度です。
助成金の支給には、最低賃金引上げと設備投資の計画を立て、実施後に結果を報告する必要があります。助成額は設備投資費用に助成率を乗じた金額と助成上限額のいずれか低い方となります。
ただし、最低賃金引上げや設備投資は今後実施するものに限られ、従業員がいない事業者は対象外となります。
対象事業者は中小企業・小規模事業者で、地域別最低賃金との差額が50円以内、解雇や賃金引下げがないことが条件です。全従業員の賃金を新たな事業場内最低賃金以上に引き上げ、引上げ人数に応じて助成上限額が変動します。
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
令和6年10月8日、ネクスト舟岡様において「相続税まるわかりセミナー」を開催いたしました。
「どのような時に相続税がかかってくるのか」など最近の税務調査状況を含めて、基本をしっかりと分かりやすくお伝えしました。
また、気になる土地や家屋の評価額の相場についても、周辺の資料を参考にお伝えしました。
当日は、相続税のエキスパートである税理士・坂田先生や、相続関連のことにも精通していらっしゃる司法書士の橋本先生にも同席していただき、受講者の方の様々な質問に専門家の視点から答えていただきました。
参加者の方からは、
・とても参考になりました。
・資料がすごくわかりやすかったです。
・具体的なお話を聞けてよかったです。もっと聞きたかったです。
・これから何をしていけばいいのかが明確になりました。
・相続が発生した時には専門家に依頼したいと思いました。
等たくさんのご感想をいただき、今後もこのようなセミナーを開催してほしいとのご要望も数多く寄せられました。
お越しくださった皆様、ありがとうございました!
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
2024年10月から一部パート・アルバイトの方の社会保険加入が義務化され、より多くの非正規雇用の方々が社会保険の適用を受けられるようになります。
対象企業は制度改正の詳細を確認し、適切な準備を行う必要があります。
社会保険料の負担増加が見込まれるため、事業主向けの相談窓口や助成金制度などの支援策についても確認しましょう。
1.対象企業及び対象となる従業員の要件
2024年10月から、従業員数が51人から100人の企業において、パート・アルバイト従業員が新たに社会保険の適用対象となります。一般に「従業員数」といえば、その企業で雇用される労働者数となりますが、社会保険の適用の要件を判断する「従業員数」をカウントする場合には、その企業の「厚生年金保険の適用対象者数(被保険者数)」で判断します。
具体的には、フルタイムの従業員数と、週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員数を合計した数で判定を行います。(週労働時間がフルタイムの4分の3以上であれば、雇用形態を問わずカウントします)
この制度改正により、より多くの非正規雇用の従業員が社会保険に加入できるようになりますが、企業側としては対象となる従業員を適切に把握し、説明を行う必要があります。従業員の把握方法としては、既存の給与計算システムや表計算ツールを活用するなどして、各従業員の状況を一覧で管理することが有効でしょう。
また、企業年金(企業型確定拠出年金、確定給付企業年金)を実施している場合は、厚生年金保険の適用拡大に伴い、加入要件の整理が必要となる可能性がありますので、顧問の社会保険労務士や金融機関などに相談しましょう。
2.社会保険適用拡大への対応準備と留意点
企業は社会保険適用拡大に向け、漏れのない準備が重要です。主な準備ステップとして、①加入対象者の把握、②社内周知、③従業員とのコミュニケーション、④届出書類の作成があります。
①では、新たに社会保険の加入対象となるパート・アルバイト従業員を適切に把握しましょう。社会保険料の増加額をシミュレーションし、事業主としての対応方針を決める必要があります。
②では、加入対象者への法改正内容の周知が不可欠です。社内インフラやメールなどを活用し、内容を確実に伝えましょう。
③では、説明会や個人面談を実施し、加入のメリットや配偶者扶養から外れることなどについて、従業員に丁寧に説明します。
最後に④で、加入対象者の「被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出します。電子申請による提出が便利です。
企業は、この一連の準備を着実に進め、万全の体制で臨むことが求められます。従業員への影響にも十分配慮し、スムーズな制度移行を心がけてください。
3.助成金や専門家活用支援などを活用
社会保険の適用拡大に伴い、企業には新たな準備や対応が求められますが、国や自治体には様々な支援策が用意されています。まずは「キャリアアップ助成金」の活用が有効でしょう。「社会保険適用時処遇改善コース」では、パート・アルバイトの社会保険加入に合わせて、手取り収入を減らさない取組を実施すれば、対象従業員1人当たり最大50万円の助成を受けられます。
また、無料で専門家に相談できる窓口も複数あります。「専門家活用支援事業」では、社会保険労務士が対応方針の検討や従業員への説明をサポートします。
「よろず支援拠点」では、社会保険適用拡大に留まらず、経営全般についてワンストップで相談できます。さらに「働き改革推進支援センター」では、労務管理の専門家が助成金の活用法なども含めてアドバイスいたします。
このように、社会保険適用拡大に伴う企業の負担を軽減するための支援策がありますので、ぜひ有効活用しスムーズな対応を心がけてください。
■参考資料
社会保険の適用が拡大!従業員数51人以上の企業は要チェック(政府広報オンライン)
皆様こんにちは。
北野税理士事務所の北野です。
今回は、今話題の「2024年問題」に関連して、36協定に関する話です。
2018年に「働き方改革」の一環として労働基準法を改正、時間外労働の上限規制が法律で規制され、大企業(2019年4月~)、中小企業(2020年4月~)で導入されました。
また、今年4月にドライバーや医師などに猶予されていた5年間が終了、いわゆる「2024年問題」として話題になっています。
そこで、時間外労働・休日労働を定める際に必要な36(サブロク)協定をおさらいしてみましょう。
1. 36(サブロク)協定とは
36(サブロク)協定とは、労働者に時間外労働及び休日労働をさせる場合に、労働者と結ぶ労使協定のことです。労働基準法第36条に基づいていることから、通称「36協定」と呼ばれています。
法定の労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて超えて労働させたり、休日に労働させる場合には、36協定の締結と所轄労働基準監督署長への届出が必要です。
法律上、時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がない場合は、これ超えることができません。
2. 36協定締結で留意すべき事項について
①時間外労働、休日労働は必要最小限にとどめる
法律上、時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がない場合は、これ超えることができません。
②労働者に対する安全配慮義務
36協定の範囲内であっても、労働契約法第5条の安全配慮義務を負います。40時間を超える週労働時間が月45時間を超えると、業務と脳・心臓疾患の発症リスクが徐々に高まるとされています。
③時間外労働・休日労働を行う業務の区分と範囲を明確化
業務の区分を細分化し、時間外労働、休日労働を行う業務を明確化します。
④時間外労働は、限度時間にできる限り近づける
時間外労働はできる限り具体的に定め、「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」などの恒常的な表現は認められません。また、限度時間を超える場合は25%を超える割増賃金率とするように努めなければなりません。
⑤短期労働者の時間外労働は、目安時間を守る
1か月未満の期間で労働する労働者の時間外労働は、1週間:15時間、2週間:27時間、4週間:43時間の目安時間を超えないように努める必要があります。
⑥休日労働の日数、時間数をできる限り少なく
業務の区分を細分化し、時間外労働、休日労働を行う業務を明確化しま休日労働の日数および労働時間を、できる限り少なくするように努めなければなりません。
⑦労働者の健康・福祉を確保
時間外労働が長いほど過労死の関連性が高まることに留意し、以下の協定を確保しなければなりません。
(1)医師による面接指導、(2)深夜業(22時~5時)の回数制限、(3)終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)、(4)代償休日・特別な休暇の付与、(5)健康診断、(6)連続休暇の取得、(7)心とからだの相談窓口の設置、(8)配置転換、(9)産業医等による助言・指導や保健指導
⑧限度時間が適用除外・猶予されている事業・業務について
36協定の限度時間が適用除外または猶予されている業務においても、労働者の健康と福祉を確保するため、限度時間を勘案し、時間外労働を行う場合は健康確保措置を協定するよう努めなければなりません。
3. 労働基準監督署に届け出をする際のポイント
労働基準監督署に36協定の締結を届け出るための書類は「協定届」です。法定労働時間外に働かせるためには、36協定を締結し労働基準監督署に届け出る必要があります。
●36協定協定届の作成に必要な情報
■時間外労働や休日労働をする従業員の対象範囲
人数と業務の種類を具体的に記載。業務の区分を細分化し、時間外労働、休日労働を行う業務を明確化します。
■時間外労働や休日労働をする期間
時間外労働や休日労働を認める期間を規定する必要があります。この期間は最長1年間までとなっており、超えることはできません。
■時間外労働や休日労働をする具体的な理由
時間外労働や休日労働を行う場合、36協定に具体的な理由を記載する必要があります。
■時間外労働や休日労働をすることができる時間、日数
臨時的な事由で上限を超える労働が必要な場合は、「特別条項付き36協定」を締結する必要があります。違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
●特別条項付き36協定の上限
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計が2~6か月の平均で月80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
※特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内にしなければなりません。
※例えば時間外労働が45時間以内に収まって特別条項にはならない場合であっても、時間外労働=44時間、休日労働=56時間、のように合計が月100時間以上になると法律違反となります。
※ドライバー・医師の時間外労働の上限規制は上記と異なります。
■時間外労働や休日労働を適正なものとするため厚生労働省令で定める必要事項
36協定には、労働基準法施行規則第17条で定められた以下の7つの必要事項を記載しなければなりません。
1.36協定の有効期間
2.対象期間の起算日(対象期間の始期)
3.特別条項付き36協定(限度時間を超える場合)の上限規制を満たしていること
4.36協定の上限規制を超えて労働を課すことができる場合
5.限度時間を超えて労働させる労働者の健康福祉を確保するための措置
6.限度時間を超えた労働に係る割増賃金率
7.限度時間を超えて労働させる場合の手続き
■参考資料
8月8日に発生した日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震を受け、気象庁は大規模地震が発生する可能性が高まっているとして「南海トラフ地震臨時情報」を発表しました。その1週間後、期間は終了しましたが、今後も巨大地震の発生に備える必要があります。
1.南海トラフ地震とは
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけてのフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界で発生するプレート境界型地震です。南海トラフ地震は、概ね100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回は1944年と1946年におこりました。
地震調査研究推進本部の長期評価によると、マグニチュード8~9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は70~80%(令和4年1月1日現在)とされています。
国の被害想定では、最悪の場合、津波による死者が22万4千人に上る恐れがあります。しかし、住民の早期避難や情報伝達の改善により、被害は8割軽減できる可能性があります。
2.地震に備えた事前の対策
大規模地震発生時に被害を最小限に抑えるには、事前の備えが重要です。日頃から、地域の自治体で作成されているハザードマップの確認、避難場所・避難経路、家族との連絡手段などを決めておきましょう。また地震に備えて、以下の3点を心がけましょう。
①家具の固定
揺れによる家具の転倒や落下は、大きな危険要因になります。特に高さのある家具は注意が必要です。
②非常用持ち出し袋の準備
避難時に最低限必要となる物資を、バッグに常備しておきます。
【非常用持ち出し袋の例】
・飲料水、食料(缶詰、レトルト等)
・携帯ラジオ、懐中電灯、予備電池
・救急セット、常備薬 ・衣類、タオル、ビニール袋 など
③避難経路・場所の確認
自宅から最寄りの避難場所までの経路を、地図などで確認しておきましょう。また、避難場所の場所や設備についても、あらかじめ把握しておくと良いでしょう。
3.地震発生時の行動
地震発生時は、まず身を守ることが最優先です。揺れを感じたら頭を保護し、落下物に注意しましょう。津波が予想される場合は、すぐに指定の避難場所へ迅速に避難する必要があります。
避難の際は、車は使わず、事前に確認した経路を徒歩で移動しましょう。避難所では、持ち出し袋を活用し、節水・節電に協力しながら秩序ある生活を心がけましょう。
①揺れを感じたらまず身を守る
地震の際は、強い揺れに見舞われます。 揺れを感じたら、まず身の安全を守ることが最優先です。揺れがおさまったら、すぐに外に飛び出さず、落ち着いて行動しましょう。
・テーブルの下に隠れるなど、頭を保護する
・窓ガラスから離れ、落下物に注意する
・火の始末をし、ガスの元栓を締める
②津波から避難する方法
南海トラフ地震では、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸で、10mを超える大津波の襲来が想定されています。津波から命を守るため、迅速に避難することが不可欠です。
・津波が来る前に、指定の避難場所へ避難する
・避難場所への経路は、事前に確認しておく
・避難の際は、エレベーターは使わず階段を使う
・車での避難は渋滞に巻き込まれる危険があるため避ける
③避難所での過ごし方
避難所では、トイレや水、食料の確保などが課題になります。避難所での生活は過酷なものですが、落ち着いて行動し、助け合うことが大切です。
・非常用持ち出し袋を事前に用意しておく
・節水・節電に留意する
・避難所運営に協力し、秩序ある生活を心がける
4.地震後の対応
地震発生直後は、まず家族の安否確認を最優先に行います。避難所に分散した場合は、あらかじめ決めておいた連絡方法で安否を確かめ合います。 次に、ライフラインの復旧状況を確認しましょう。
【主なライフライン】
・電気 :停電の場合、非常用電源の準備が必要
・ガス :マイコンメーターが遮断
・水道 :断水の場合、貯水を備蓄
・通信 :不通の場合は災害伝言ダイヤル活用
これらのライフラインが復旧するまでは、最低限の生活が余儀なくされます。避難所での集団生活にも備える必要があります。生活再建に向けては、被災者生活再建支援金の請求を行います。また、り災証明を取得し、生活の建て直しを図りましょう。
いざという時に落ち着いて対処できるよう、日頃から社員や家族で話し合い、地震対策を怠らないことが何より大切です。備えあれば憂いなしです。
令和6年度税制改正で、所得税と個人住民税の合計で1人当たり4万円の定額減税が実施されています。所得税については、給与所得者は6月給与から源泉徴収税額が減税され、事業所得者等は確定申告時や予定納税額から減税されます。
1.定額減税の対象者と定額減税の金額
この減税は、国民の所得を支え、官民連携で「賃金上昇と所得増加」を確実に実現し、社会に「賃金が上がることは当たり前」の意識を定着させることを目的としています。
定額減税の適用を受けられるのは、、令和6年分所得税の納税者である居住者で、所得税の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合、給与収入が2,000万円以下。一部例外あり)の人が対象となります。減税額は以下の通りです。ただし、減税額が所得税額や住民税額を上回る場合は、それぞれの税額が上限となります。所得税額や住民税額から減税額を控除しきれない場合、残額は市区町村から給付されます。
<定額減税額> | <所得税> | <個人住民税> |
---|---|---|
本人分 | 3万円 | 1万円 |
同一生計配偶者又は扶養親族 | 1人につき3万円 | 1人につき1万円 |
※ 本人、同一生計配偶者及び扶養親族はいずれも、居住者である方に限る。
2.給与所得者の定額減税の仕組みと実施方法
給与所得者の定額減税は、令和6年6月1日以後に支払われる給与等から源泉徴収される所得税額から減税されています。なお、定額減税額は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等に基づき決定、減税しきれない額があれば以後の給与から順次減税されます。
また、個人住民税は6月分は徴収せず、7月以降の11カ月で均等に特別徴収、定額減税の適用状況は給与明細で確認できます
■給与所得者の場合の定額減税の流れ
3.事業所得者等の定額減税の仕組みと実施方法
事業所得者等の定額減税は、原則として令和6年分の確定申告時に所得税額から減税されます。ただし予定納税対象者は、6月以降に通知される第1期分予定納税額から本人分が減税され、7月31日が減額申請期限、9月30日が納付期限です。同一生計配偶者や扶養親族分は、簡易な減額申請で減税可能です。第1期分で減税しきれない額は第2期分から控除されます。
<減額申請の期限> | <納期限(振替日)> | |
---|---|---|
第1期分予定納税 | 令和6年7月31日(水) | 令和6年9月30日(月) |
第2期分予定納税 | 令和6年11月15日(金) | 令和6年12月2日(月) |
4.公的年金等受給者の定額減税の仕組みと実施方法
公的年金等受給者の定額減税は、令和6年6月1日以後に支払われる公的年金等から源泉徴収される所得税額から減税されます。企業年金は源泉徴収時は対象外ですが、確定申告で減税可能です。減税しきれない額は以後の公的年金から順次減税されます。なお、公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合、計算の結果、納税額があっても所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告が必要な場合があり、市区町村に確認が必要です。
2024年7月3日に、日本の一万円札、五千円札、千円札が20年ぶりに改刷されました。新札は、150年以上の歴史の中で培われた偽造防止技術を結集した最新のもので、偽造対策の強化だけでなく、視覚的にも識別しやすいデザインが施されています。
新札の「肖像」は3つの観点から選定
お札の肖像の選び方に法令上の制約はありませんが、主に3つの観点から選定されています。1つ目は偽造防止のため精密な写真が入手できること、2つ目は品格のある肖像であること、3つ目は国民に広く知られた人物であることです。こうした観点から、現在のお札の肖像は明治以降の人物から選ばれており、人の顔や表情のわずかな違いに気づきやすい人間の目の特性を活かしています。
●新一万円札の肖像:渋沢 栄一(1840~1931)埼玉県深谷市出身
江戸時代末期に農民出身で武士となり、徳川家に仕えた。明治維新後は静岡に商法会所を設立。その後、明治政府に招かれ、造幣・戸籍・出納など政策立案に携わった。退官後は実業界で活躍し、500社以上の企業や団体を設立・経営。また、600以上の教育機関や公共事業、研究機関の設立・支援に尽力した。肖像画は60歳代前半の姿にリメイクされている。
●新五千円札の肖像:津田梅子(1864~1929)東京出身
6歳で日本初の女子留学生としてアメリカに渡り、11年間の留学後に帰国。華族女学校教授を経て、女性の地位向上のため再渡米。この際、英国の学術雑誌に論文が掲載され、日本人女性として初の快挙を成し遂げた。1892年帰国後、女子高等教育に尽力し、1900年に女子英学塾(現・津田塾大学)を創設。生涯を通じて女性の地位向上と女子高等教育振興に力を注ぎ、日本の女性教育発展に大きく貢献した。肖像画は、女子英学塾創設時の30歳代の姿をとらえたもの。
●新千円札の肖像:北里 柴三郎(1853~1931)熊本県小国町出身
細菌学の権威として知られる医学者。18歳で古城医学所兼病院(現・熊本大学医学部)に入学し医学の道を歩み始めた。その後、東京医学校(現・東京大学医学部)へ、卒業後は内務省衛生局に勤務、1885年にドイツ留学を命じられ、破傷風菌の培養や抗毒素の発見など画期的な業績を残した。帰国後は伝染病研究所を創立し、ペスト菌の発見にも貢献。その後も慶應義塾大学医学部創設や、日本医師会などの医学団体や病院の設立など医学の発展に尽力した。肖像画は50歳代で学者として確立した姿を描いている。
新札は偽造防止技術の結晶
新札には、偽造を困難にするための新しい様々な技術が採用されています。また、年齢、国籍、障害の有無にかかわらず、誰もが使いやすいようなユニバーサルデザインが施されています。
●高精細すき入れで偽造がより困難に
すき入れ(すかし)は、お札を光にかざすと浮かび上がる透かし入れの技術です。新札では、肖像の背景に小さな菱形の模様「高精細すき入れ」を入れているため、偽造をより困難なものにしています。
●お札に「3Dホログラム」が導入されたのは世界初
ホログラムは、光の当たり具合で模様が変わる金属光沢の技術です。新札では一万円札、五千円札、千円札の3種類全てに、お札を傾けると肖像が左右に回転するデザインの「3Dホログラム」を採用しています。
●額面のアラビア数字を拡大
新札では、額面の数字が大きく拡大されています。表面では2倍から3倍、裏面では5倍ほど大きくなり、見やすさが向上しています。また、色使いの工夫により五千円札と千円札の識別性も高くなっています。千円札の中央部分に橙色を配置し、グラデーションをつけることで五千円札の紫色とは異なる見え方になっています。
●識別マーク
識別マークは、お札の種類を指で触って識別できるように設けられた凹凸のマークです。新札では、すべての銘柄で11本の斜線という同一の形状に統一されました。その上で配置を銘柄ごとに変え、識別のしやすさが向上しています。
旧札はもちろん使えます
お札には法律で定められた無制限の強制通用力があり、古くても21種類のお札は現在も使えます。
またお札を破損した場合でも、日本銀行の定める基準を満たせば交換してもらえます。全体の3分の2以上残っていれば全額、5分の2以上3分の2未満なら半額の交換が可能ですが、5分の2未満では交換できません。ただし、故意の汚損・損傷の場合は交換に応じられない可能性があります。
ちなみに日本銀行によると、寿命は一万円札で4~5年、五千円札・千円札で1~2年程度とされています。市中で流通したお札は、金融機関を経由して日本銀行に戻り、再流通に適さないものは裁断されます。裁断くずは住宅用の建材や固形燃料などにリサイクルされたり、焼却処分されています。
平成28年の税制改正で、相続または遺贈により取得した空き家や解体後の土地を令和9年12月31日までに譲渡した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例が設けられました。この特例は空き家の発生を抑制することを目的としています。
1.被相続人居住用家屋(空き家)の要件
被相続人居住用家屋とは、相続の開始直前に被相続人が居住していた家屋のうち、以下の3つの要件をすべて満たすものをいいます。
①昭和56年5月31日以前に建築されたこと
②区分所有建物登記がされている建物でないこと
③相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
なお、被相続人が要介護認定等で老人ホーム等に入所していた場合は、入所前に居住していた家屋(従前居住用家屋)も被相続人居住用家屋に該当します。
2.被相続人居住用家屋の敷地の要件
被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続開始直前に被相続人居住用家屋の敷地として使われていた土地や、その土地上の権利をいいます。複数の建物がある場合は、被相続人居住用家屋(主屋)の床面積の割合に応じた土地の部分が対象となります。
被相続人居住用家屋の敷地が対象となるためには、相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないことが必要です。
3.譲渡要件と特別控除額
この特例を受けるには、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に以下などの譲渡をする必要があります。一定の要件を満たした際には、譲渡所得から最高3,000万円(一定の場合は2,000万円(注) )を控除できます。
(注)令和6年1月1日以後に行う譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円まで。
①被相続人居住用家屋を売る、または被相続人居住用家屋と敷地を売る
②被相続人居住用家屋を取り壊した後に敷地を売る
③一定の耐震基準を満たす、または取り壊す予定である被相続人居住用家屋と敷地を売る
上記のほか、この特例を受けるには、相続開始から3年以内に譲渡すること、売却代金が1億円以下であること、他の特例と重複適用しないこと、同一被相続人からの財産についてこの特例を重複適用しないこと、特別の関係者に対する譲渡でないことなどの要件を満たす必要があります。
4.特例の適用を受けるための手続き
この特例の適用を受けるには、確定申告時に一定の書類を添付する必要があります。主な添付書類は、「譲渡所得内訳書」(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]、「登記事項証明書等」、売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」、「耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し」、売却代金が1億円以下であることを明らかにする「売買契約書の写し」などです。提出先は所轄税務署となります。
以上のように、被相続人の居住用財産(空き家)を売却する際の特例については、対象となる家屋や敷地、譲渡方法、手続きなど、様々な要件がありますので、それらを確認の上、適切に手続きを行う必要があります。
スマートフォンの普及が進む中、国民生活や経済活動に不可欠な特定ソフトウェア(モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンの総称)の利用に関して、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに関する競争の促進についての法律案」が、6月12日に参議院本会議で可決され、成立しました。
スマホソフトウエア競争促進法の目的
スマートフォンの利用に必須の特定ソフトウェアの提供事業者は、特定の有力事業者による寡占状態にあります。これらの事業者による競争制限的な行為によって公正な競争が阻害されており、市場機能による自発的是正や独占禁止法による対応では解決が困難です。
そこでこの法律は、セキュリティやプライバシー等を確保しつつ、競争によってイノベーションの活性化し、消費者の選択肢を拡大を図り、競争環境を整備することを目的として導入されました。
法律の骨子と公正取引委員会の役割
この法律の骨子は、①規制対象事業者の指定、②禁止事項及び遵守事項の整備、③違反に対する措置等(指定事業者を含むステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを通じた競争環境の整備)です。
公正取引委員会が特定ソフトウェアの提供事業者のうち一定規模以上の者を指定し、禁止事項や遵守事項を課すとともに、遵守状況の報告徴収や是正命令、課徴金納付命令などの権限を設けることで、規制の実効性を確保する枠組みとなっています。
アプリストア間の競争、課金システムの利用等を制限
法律では、アプリストア間の競争制限、指定事業者以外の課金システムの利用制限、アプリ内でのユーザーへの情報提供制限、アプリ事業者への不公正な取扱い、指定事業者以外のブラウザエンジンの利用禁止、指定事業者のサービスのデフォルト設定、検索における自社サービスの優先表示、指定事業者による不当なデータの使用、OSで制御される機能への他社アクセス制限などの行為を規制しています。また、データ管理体制の開示やポータビリティツールの提供、OS・ブラウザ仕様変更の開示なども義務付けられます。
コミュニケーションを継続的に行い競争環境を整備
従来の独占禁止法執行とは異なり、この法律では指定事業者やアプリ事業者等のステークホルダーと継続的な対話を行いながら、ビジネスモデルの改善を求めていく新たな規制の枠組みとなっています。
公正取引委員会は、関係事業者からの情報提供や関係省庁との連携、外国競争当局との連携を通じて、規制遵守状況を監視します。違反行為があれば排除措置命令や課徴金納付命令(算定率20%)を発動できるほか、問題となる行為が改善されない場合も同様の対応を取ることができます。
6月26日(土)国分寺会館にて相続税の申告についてのセミナーを開催しました。
今年1月、相続税の税制改正が行われたことによって相続税に関して関心をお持ちの方が多くいらっしゃいます。
そこで今回のセミナーでは、相続税申告の流れや納付期限、相続人や相続財産に関することまで具体的な事例を挙げながらイラスト入りのわかりやすい資料を使って説明いたしました。
当日は、ボランティアの手話通訳の方にもお越しいただき、多くの方にセミナー内容をお伝えすることができました。
参加者の皆様からは「全く知らないことでも事例を交えてわかりやすく説明してもらえたため大変わかりやすかった。」「相続について今まで考えていなかったが今回のセミナーをきっかけに準備していきたい。」とご好評をいただきました。
セミナーの内容
・相続税の申告期限はいつまで?
・相続税がかかるかどうかを調べよう!
(遺産の種類、基礎控除額の計算、法定相続人)
・相続税申告の手続きの流れ
・相続人の確定、相続財産の確定について
(遺言書、財産の評価、遺産分割協議)
・相続税の計算について
◆日時 6月29日(土) 10時半から12時
◆会場 高松市国分寺会館2F大会議室
◆参加費 無料
◆講師 北野純一
◆主催 国分寺町ボランティア協会
令和5年の相続税改正で、相続時精算課税制度に大きな変更がありました。年間110万円までの贈与に対する基礎控除が新設され、それを超える部分は相続時に加算課税されます。一方、暦年贈与は相続財産に加算される期間が長くなる点が異なります。制度選択は、贈与財産の額面や時期によって有利・不利が分かれます。不可逆な制度変更なので、専門家に相談し、手続きの複雑さも踏まえた上で慎重に判断する必要があります。
1.相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度とは、贈与税の負担を大幅に軽減して財産の早期移転を促進するために設けられた制度です。この制度の特徴は以下の通りです。
・贈与者が60歳以上の直系尊属に限られる
・受贈者は18歳以上の推定相続人および孫に限られる
・年間110万円の基礎控除額がある
・贈与者ごとに2,500万円の特別控除がある
・非課税限度額を超えた場合も一律20%の軽減税率が適用される
つまり、相続時精算課税制度は、一定の範囲内の親族間で節税を図りながら生前贈与による財産移転を促進することを目的とした制度なのです。
2.相続時精算課税制度の改正ポイント
改正ポイントは、年間110万円までの贈与に対する新たな基礎控除の創設と、それを超える部分への累進課税が導入されたことです。これにより、一定額までの贈与は非課税となり、親から子への資産移転がより円滑になる一方、高額な贈与には重い課税がかかります。
①年間110万円までの贈与に対する基礎控除の新設
年間110万円までの贈与について、新たに「基礎控除」が設けられました。 この基礎控除の範囲内の贈与であれば、贈与税・相続税の申告は不要で、非課税となります。
②基礎控除を超える部分への課税ルール
基礎控除(110万円)を超える贈与については、従来通り特別控除(2,500万円)の対象となります。 特別控除を超えた部分に対しては、20%の贈与税が課されます。
3.暦年贈与との違いについて
暦年贈与と相続時精算課税では、以下の3点で違いがあります。
①贈与財産の相続財産加算期間
暦年贈与の場合、相続開始前7年以内の贈与財産は相続財産に加算されます。一方、相続時精算課税の場合は、贈与者の死亡時に全額相続財産に加算されます。
②贈与税の計算方法
暦年贈与は累進課税で最高55%となりますが、相続時精算課税は一律20%です。
③申告手続き
暦年贈与は110万円を超えると毎年申告が必要ですが、相続時精算課税は初年度のみ選択届出書の提出が必要です。
4.制度選択のポイント
制度選択のポイントは、資産の多寡や贈与財産の種類、相続人の状況などを総合的に勘案する必要があります。相続時精算課税制度は累積課税が軽減されるメリットがある一方で、一度選択すると変更できません。
生前贈与の制度は複雑で、さまざまな選択肢があります。 暦年贈与と相続時精算課税のどちらを選ぶべきか、一概に言えません。ご自身の資産状況や今後の生活設計などを総合的に勘案し、 最適な生前贈与の方法を選択する必要があります。税理士などの専門家に相談し、アドバイスを受けることが賢明です。
参考資料:令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(国税庁)
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は振込手数料のお話です。
企業間の決済方法
アメリカン・エキスプレスの『企業間決済白書2022』には、日本企業の企業間決済の実態が報告されています。
「顧客企業に請求し支払いを受ける際の決済方法」のトップが銀行振込です。実に89.4%に上ります。複数回答のため合計は100%を越えますが、第2位の手形・小切手が30.3%、第3位の現金が23.6%なので、銀行振込が断トツであることが分かります。
「取引先へ支払いをする際の決済方法」も同様で、銀行振込は94.1%に上ります。
振込手数料はどちらが負担?
さて、銀行振込の際の手数料。代金を支払う側が負担するものなのか、それとも代金を受け取る側が負担するものなのか。
前者の場合は、支払う側の負担は「代金+手数料」であり、受け取る側は代金がそっくりもらえます。後者の場合は、支払う側の負担は代金分だけであり、受け取る側は手数料分が少ない金額をもらうことになります。
どちらが本来の支払い方でしょうか。実は、当事者間で合意がある場合とない場合とで扱いが違います。
取り決めがある場合
私人間の決め事については、「契約自由の原則」によって、公序良俗に反する内容でない限り自由に決めることができます。
ただし、当事者どうしが対等平等な関係のなかで契約が結ばれることが前提です。
民法第521条
何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
企業間で「振込手数料は代金を支払う側の負担とする」、または「振込手数料は代金を受け取る側の負担とする」などと決めていれば、その合意によってどちらが振込手数料を負担するかが決まります。つまり、契約次第ということです。
取り決めがない場合
一方、当事者間で振込手数料をどちらが負担するかの取り決めがない場合はどうでしょうか。この場合、法律では「代金を支払う側が負担する」と決めています。
民法第484条
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。(後略)
民法第485条
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。(後略)
これらの条文では、別段の意思表示がない場合、債務者(代金を支払う側)が債権者(代金を受け取る側)の住所(口座)に金銭等を持参する(振り込む)、そのための費用(振込手数料)については債務者が負担すると決めています。
「振込手数料を差し引く」という商慣行
とはいえ、「代金を受け取る側が負担する」という商慣行が続いてきたのも事実です。
下請け業者からは「取り決めはしていないけど、元請け業者が勝手に引いてくる」という声も聴かれます。これは本来のあり方からすれば、おかしなことです。
パッとしない景気のなか、今後は、振込手数料をどちらが負担するかについて、あらためて取引先と相談をおこなう事業者が増えるのではないでしょうか。
振込手数料と下請法
なお、振込手数料を差し引いて支払う場合、下請法(下請代金支払遅延等防止法)との関係で注意が必要です。下請法は、第4条1項3号において「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,下請代金の額を減ずること」を禁止しています。
この「減ずること」には、「下請代金を下請事業者の金融機関口座へ振り込む際の手数料を下請事業者に負担させることを書面で合意している場合に、下請代金の額から金融機関に支払う実費を超えた額を差し引くこと」が含まれます。
書面で合意がない場合に、振込手数料を下請代金の額から差し引くことは、もちろん「下請代金の減額」に該当します。
振込手数料を下請事業者が負担する旨の書面での合意がある場合であっても、親事業者が負担した「実費」の範囲を超えた額を当該手数料として差し引いて下請代金を支払うことは、下請代金の減額にあたり、禁止されています。
実費よりも多く差し引くのはアウト
ここでいう「実費」とは、振込手数料として実際に銀行等に支払っている額のことです。
たとえば、親事業者がインターネットバンキング等を利用することによって、実際に負担する振込手数料が窓口振込のときより少なくなっているにもかかわらず、従来の窓口振込手数料相当額を差し引くことは、下請法が禁止する「下請代金の減額」にあたります。
上記のような「下請代金の減額」を行ったとして、公正取引委員会が令和2年6月に下請法違反で東京都の事業者に勧告を行い、その社名を公表したケースがあります。振込手数料を差し引く場合は、下請法にご注意を。
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今年初めになかなか衝撃的なニュースがありました。
「令和7年1月から申告書等の控えに収受日付印を押さない」という国税庁の発表です。
これまで税務署は書面で提出された申告書等(申告書、申請書、届出書などのすべての文書)について、受け取った証しとして控えの文書に収受日付印を押していました。
令和7年1月からはその印は押されません。
◆収受日付印の役割
納税者にとって、申告書等の収受日付印には大きな役割がありました。
まずは、申告書等を税務署に提出したことの証しです。申請書や届出書などは「あれ、出してあったかな?」となることがたまにあります。そんなとき、収受日付印のある文書が保存してあれば、出したことは容易に確認できます。
これは税務署に対しても有効です。ベテラン税理士が言うには、「文書を出した」「いや、もらっていない」という納税者⇔税務署間のトラブルがたまに起こるそうです。そこでも収受日付印のある文書があれば、出したことは一目瞭然です。
次に、収受日付印のある申告書等の提出を求められる機会があることです。自営業者の場合、現状では、金融機関で融資を受けるとき、行政機関に助成金や補助金の申請をするとき、保育園の入園手続きをするときなどに、収受日付印の押してある確定申告書の提出が求められます。収受日付印が「ある」と「ない」では、文書としての役割に大きな違いがあるのです。
令和5年から水面下で
ところで、いつの間にこんな話が進んでいたのでしょうか。これは伝聞情報ですが、令和5年春ごろ、国税局(税務署)から各税理士会に「令和6年1月から書面で出された申告書等に収受日付印を押さない」という方針が示されたそうです。
納税者の申告実務を担っている税理士会は「賛成できない」という立場を取ったため、当局との間で相当もめたようです。しかし、結果として「実施を一年遅らせ、その間に納税者に周知を行う」ということで、押し切られてしまったとのことでした。
どうやら、この話は国税庁のさらに上、政府(デジタル庁)に端を発しているようです。
書面提出は200万人超(令和4年)
e-Taxが普及したとはいえ、まだそれなりに書面での申告がされています。
国税庁によれば、「令和4年度のe-Tax利用率は、所得税申告で65.7%」であり、同年の「申告納税者数は653万人」ということなので、約224万人(653万人×34.3%)が所得税申告を書面で行っています。
令和6年分の確定申告(押印廃止後)では、書面提出はさらに減ると思われますが、それでも100万人を下回らないのではないでしょうか。
「国税庁Q&A」の説明では
国税庁「申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A」(令和6年2月1日)には、「納税者等が申告書等を提出した事実を確認したい場合はどのようにすればよいか」「金融機関や行政機関等から収受日付印の押なつされた控えを求められる場合がある」などの問いについての回答が書かれています。
前者への回答にはいくつかの方法が書かれていますが、どれも納税者には手間や費用がかかるものです。
後者への回答には、「収受日付印の押なつされた申告書等の控えを求めないよう、事前説明やお願いをした」と書かれています。金融機関や行政機関側がどうするかはこれからの話ですが、前者の回答にあるような方法が代替措置になる可能性があります。
誰にとっての利便性?
この「Q&A」で一番突っ込みたくなるのは、「今般の見直しの趣旨を教えてほしい」という問いへの回答中の「納税者の利便性の向上等の観点から…」という文言です。前節で述べたように、書面で申告書等を提出する納税者は不便になるとしか考えられないからです。高齢などを理由に書面で提出せざるを得ない人への配慮が欠けているように感じます。
ちなみに、税務署が受け取った申告書等の正本には、これまでどおりに収受日付印が押されます。それは、いつ受け取ったかの証しが必要だからです。同じ理由が出した側にもあるのですが、そちらには押さないというのは、なかなか理解ができません。
「むりやりにでも電子申告を普及させるために、わざわざ書面提出の方を不便にしたのではないか」と思われても仕方ないのではないかと思います。
参考:国税庁「申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A」
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、青色専従者のダブルワークについてお伝えしていきたいと思います。
AとBは夫婦です。個人事業を営んでいるA(個人事業主)の青色専従者として給与をもらいながら、Bが外に働きに行くことはできるのでしょうか。もしくは、もともと外でパートをしながらAの事業を手伝っていたBは、税務署に届け出をすれば専従者給与をもらうことができるのでしょうか。
夫婦合わせての収入を増やしつつ節税のことも考えれば、上記のように考えるのは十分あり得る話です。実態として二か所で仕事をしていれば、それぞれから仕事に見合った給与を受け取るのは、社会的には当たり前のことです。
◆青色事業専従者給与は特例措置
しかし、ここで問題になるのが所得税法に残されている家族単位課税の考え方です(参照:コラム『事業主が同一生計の親族に支払う対価について(所得税法第56条)』2023年11月14日)。
事業主が同一生計の親族に支払う対価については原則経費として認めず、青色事業専従者給与等については特例で必要経費として認めるというものです。
特例なのでいろいろと制限がついており、青色事業専従者のダブルワークはそれに引っかかってしまうのです。
◆ダブルワークは条件付きで可能
今回のテーマの結論を先に述べましょう。
青色事業専従者として給与をもらいながら、パートやアルバイトなどで他から給与をもらうことは条件付きで可能です。
青色専従者給与は「事業に専従する」親族に対する給与です。
「事業に専従する」の判定に直接関係するのは、所得税法施行令165条1項と2項です。少し長いですが、抜粋します。
(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)
第百六十五条 法第五十七条第一項又は第三項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて六月をこえるかどうかによる。ただし、同条第一項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその二分の一に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りるものとする
一 当該事業が年の中途における開業 、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。
二 当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。
2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。
一 学校教育法第一条(学校の範囲)、第百二十四条(専修学校)又は第百三十四条第一項(各種学校)の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第百二十四条又は同項の学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
三 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者
上記の条文をごく簡単にまとめれば、以下の通りです。
①1年であれば6か月以上「専ら従事する」(または、従事可能期間の半分以上を「専ら従事する」)ならOK。
②学生や生徒だったり、他に仕事をしていたりすれば「専ら従事する」とはいえない。ただし、昼は学校に行って夜は事業に従事する、他の仕事の時間が短いなどの理由で「専ら従事することが妨げられないと認められる者」は、例外的にOK。
◆簡単には考えるのはNG
A、Bの夫婦の場合、実際にBがAの事業に専ら従事しており、他の仕事がその妨げになっていないなら、青色事業専従者のダブルワークは可能であるといえます。
しかし、簡単に考えてはいけません。
他に仕事を持つ妻に支払った青色専従者給与の可否について争われた裁判では、上記まとめ②の「専ら従事することが妨げられないと認められる者」という例外に当たるかどうかが問題になりました。
そして、この例外に該当するかどうかは他の職業に従事する期間が短く、その事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかであるかどうか、実質的にその事業に専ら従事することが妨げられないと認められるかどうかによって判断するのが相当という考えが示されました。
この裁判では、妻の本業の就業時間を裏付ける資料はなく、供述だけでした。
また、本業の給与よりも他の業務の報酬の方が高額でした。
裁判所は、本業とそれ以外の仕事について、業務の性質、内容、従事の態様その他の事情を検討し、「専ら従事することが妨げられないと認められる者には該当しない」としたため、妻への青色専従者給与は認められませんでした。
◆「本業を妨げてはいない」という客観的証拠
以上のようなことを考慮すれば、青色事業専従者がダブルワークをする場合、他の仕事が「本業に専ら従事することを妨げてはいない」という客観的証拠を残しておくべきでしょう。
具体的にはタイムカードや業務日報などで業務時間や業務内容を明確にしておくことです。
さらには、本業と他の仕事の業務時間や報酬のバランスなども不自然にならないように気を付ける必要があります。
こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、パワハラ防止措置についてお伝えしたいと思います。
◆ハラスメント防止と法律
「ハラスメントは良くないよね」という意識は、今の日本社会におおむね根付いているように思います。
振り返ってみれば、従業員を雇用する企業にハラスメント防止措置を義務づける法律は以下のように拡充されてきました。
・1999年4月 男女雇用均等法で女性労働者に対するセクハラ防止のための配慮義務
・2007年4月 「男女労働者に対するセクハラ防止の措置義務」に改正される
・2017年1月 「マタニティハラスメント(マタハラ)防止の措置義務」が追加される
・2020年6月 労働施策総合推進法で大企業にパワハラ防止のための措置義務
・2022年4月 中小企業にパワハラ防止のための措置義務
◆ドラマ「不適切にもほどがある!」にも
つい最近話題になったTVドラマ「不適切にもほどがある!」には、ハラスメント問題も登場していました。
このドラマの起点である1980年代には、そもそも「パワハラ」という概念はありませんでした。
そんな時代から現代にタイムスリップした主人公たちの引き起こすドタバタ社会派コメディーに多くの人が引き付けられました。「ハラスメント=良くないこと」という大まかな合意がベースにありつつも、ハラスメントをめぐる問題を具体的にどうとらえるべきか、人々の意識レベルではまだすっきりとはしていないことを、このドラマは描き出したように思います。
さて、前述のように、個人・法人を問わず従業員を雇用するすべての企業に、具体的なパワハラ防止措置が義務付けられて、この4月で2年が経過しました。
あらためて、職場のハラスメント防止措置が掛け声だけでなく実効性のあるものになっているかどうか、点検する必要があります。
◆ハラスメントは人権侵害
2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「過去3年間でパワーハラスメントを受けたことがある」と回答した人は、実に全体の31.4%に上りました。これは、「ハラスメントが起きない企業はない」と考えるべき数字であるような気がします。
ハラスメントは人権侵害であり、本来許されることではありません。
被害者は、精神的、肉体的に理不尽な苦痛を被ることで、心身に不調をきたすことさえあります。
さらには、ハラスメントを見聞きした周囲の人々にも悪影響を与えます。労働意欲やモラルが低下するなど、職場環境を悪化させます。
パーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」(2022年)によれば、2021年には全国で86.5万人がハラスメントを理由として離職しています。
人手不足のおり、「ハラスメントが原因で離職」というのは、企業にとっても大きな損失です。
◆ハラスメント防止措置
事業主に義務付けられているハラスメント防止措置は、以下のとおりです。
① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
④ 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
※妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについては、その原因や背景となる要因を解消するための措置も含まれる
事業主は、これらの措置を必ず講じなければなりません。リンク先を参照して、その詳細をご確認ください。
これらの措置は、決めて周知してそれで終わりというものではありません。
「ハラスメント防止宣言」を出しても、実際にハラスメントが見過ごされていれば、その宣言は効力を発揮していません。
相談窓口を作っても、その人選に問題があったり必要な教育が行われていなかったりすれば、窓口としてふさわしい役割を担うことはできません。
これらの防止措置に実効性を持たせるには、点検・啓発・教育などを継続しておこなう必要があります。
【リンク】
厚生労働省 パンフレット「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕」p.19-30
「5棟10室基準」は、不動産所得の確定申告でよく耳にする言葉です。賃貸物件が建物の場合、その不動産事業が「事業的規模であるかどうか」を形式的に判定する基準として使われています。
一戸建てなら5棟、またはアパート・マンションなら10室。この基準以上の貸付であるなら、その不動産賃貸業は「事業的規模」であるいうわけです。なお、一戸建てとアパートの両方ある場合、一戸建て1棟をアパート2室として、合計10室あれば事業的規模と考えます。事業に至らない場合は「事業以外の業務」といいます。
事業的規模になると、資産損失、貸倒損失、専従者給与の必要経費算入、青色申告控除などが認められるので、事業的規模か業務的規模かの判定は重要です。
所得税基本通達26-9
さて、この「5棟10室基準」の根拠は、所得税基本通達26-9です。
(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2)独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること
「原則はその貸付けが社会通念上事業といえる程度の規模かどうか(実質基準)で判定すべきだが、事実として5棟または10室以上(形式基準)の貸付けであれば事業的規模として扱う」という内容であり、形式基準が先ではないことが分かります。
この文章の作りからは、「形式基準を満たしていれば、事業的規模である」といえますが、「形式基準を満たしていないから、事業的規模にはならない」とまではいえません。
実質基準である「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」の内容が分かりにくいことに加え、形式基準にも「おおむね」が付いています。納税者と税務当局との見解が違うことになっても、そう不思議ではないように思います。
国税不服審判所の裁決事例
実際、納税者と税務当局との間で事業的規模かどうかの争いになり、国税不服審判所で裁決が出た事例をみてみましょう。実質的にどのように判断されたかを確認することができます。
このケースの賃貸物件は、形式基準未満(3階建て1棟)であり、年間賃貸料収入は約950万円でした。
平19.12.4裁決(裁決事例集No.74 37頁)
〇事業とは、自己の計算と危険において営利を目的として対価を得て継続的に行う経済活動のことである。
〇不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか否かは、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、④取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥取引の目的、⑦事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。
審判所では上記の諸点について検討を行い、①②⑤については事業性を認めたものの、③④については希薄であるとし、①~⑦を総合的に勘案した結果、「社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められない」と判断しました。下記のリンク先を参照すると詳しくみることができます。
形式基準の今後
裁決文のなかには「事業であるか否かの基準は必ずしも明確ではなく、その事業概念は、最終的には社会通念に従ってこれを判断するほかはないというべきである」と書かれています。納税者が判断するのが難しいのも当然であり、ある程度は形式基準に頼らざるを得ないのが実態でしょう。
なお、税務大学校の研究活動では、所得税基本通達26-9について、昭和45年7月の制定時から見直しが行われていないこと、その基準の根拠も明確ではないこと、現時点においては課税上問題と考えられるケースがあることなどから、この通達を再考する必要性に言及する論考が紹介されています。
LINK
再調査の請求・審査請求・訴訟
税務調査で追徴と言われたけど、どうしても納得できない。そんなときは、その処分の取消しや変更を求める「不服申立て」を行うことができます。不服申立ては行政上の救済制度であり、税務署長に対して行う「再調査の請求」と、国税不服審判所長に対する「審査請求」があります。
また、司法上の救済制度として、裁判所に対して訴訟を提起し処分の是正を求めることもできます。ただし、税務行政では「不服申立前置主義」が取られているため、国税不服審判所長に対する審査請求の裁決を経たあとで、訴訟を起こすことになります。
1.再調査の請求
税務署長が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税務署長に対して再調査の請求を行うことができます。
税務署長は、その処分が正しかったかどうか、改めて見直しを行い、その結果を「再調査決定書」により納税者に通知します。この再調査の請求に係る決定により、納税者に不利益となるような変更がされることはありません。
なお、納税者の選択により、直接国税不服審判所長に対して審査請求を行うこともできます。
◆令和4年度の再調査の請求
再調査の請求の発生件数は1,533件で、前年度より37.0%増加しました。また、処理件数は1,371件でした。そのうち、何らかの形で納税者の主張が受け入れられた件数(認容件数)は63件(4.6%)でした。なお、再調査の請求については標準審理期間を3か月と定めており、3か月以内に処理された件数の割合は99.5%でした。
2.審査請求
税務署長が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができます。また、再調査の請求を行った場合であっても、再調査の請求についての決定を経た後の処分になお不服があるときは、再調査決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内に審査請求を行うことができます。
国税不服審判所長は、税務署長の処分が正しかったかどうかを調査・審理し、その結果を「裁決書」により納税者と税務署長に通知します。裁決は、税務署長が行った処分よりも納税者に不利益となるような変更がされることはありません。
◆令和4年度の審査請求
審査請求の件数は3,034件で、前年度より22.2%増加しました。また、処理件数は3,159件でした。処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は225件(7.1%)でした。なお、審査請求については標準審理期間を1年と定めており、1年以内の処理件数割合は95.4%でした。
3.訴訟
国税不服審判所長の裁決を受けた後、なお処分に不服があるときは、裁決の通知を受けた日の翌日から6か月以内に裁判所に訴訟を起こすことができます。
◆令和4年度の訴訟
訴訟の発生件数は173件で、前年度より8.5%減少しました。訴訟の終結件数は186件でした。このうち、何らかの形で納税者側が勝訴した件数は10件(5.4%)でした。
参考資料:
今回は、政治資金と税金についてお伝えします。
政界を大きく揺るがしている自民党の政治資金パーティーをめぐる事件。国会議員が派閥パーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を、派閥が議員にキックバックし、派閥側も議員側も政治資金収支報告書に記載していなかった問題です。東京地検特捜部の捜査では、自民党の安倍派、二階派、岸田派が、おととしまでの5年間で合わせて9億7000万円余りのパーティー収入を政治資金収支報告書に記載していなかったことが明らかになっています。
会社でも個人でも何らかの利益を得たら、普通は税金がかかります。「記載しなかったお金」を手に入れた団体や個人に、税金はかからないのでしょうか。
この事件に登場するのは、政治団体と議員個人です。それぞれごとに政治資金と税金との関係をみる必要があります。
1.政治団体と税金
政治団体のうち、法人格を取得した政党と政党の指定する政治資金団体だけが「法人」です。これら以外の政治団体は法人格を持っていないため、「人格なき社団」に該当します。政策研究団体(いわゆる派閥)、資金管理団体(議員が代表となり、その政治資金を取り扱う団体)、国会議員関係政治団体などが「人格なき社団」として扱われます。
◆寄付収入に対する課税
法人税法では、人格なき社団について、収益事業から生じた所得以外の所得については法人税を課さないこととされています。したがって、政治団体が受けた寄附収入について法人税は課税されません。法人格を有する政党等も同様です。
相続税法では、公益を目的とする事業を行う者が受けた贈与財産について、公益を目的とした事業に供することが確実なものについては、贈与税を非課税とする措置がとられています。政治団体が受けた政治活動に関する寄付は、一般的にはこれに該当するという扱いで非課税になっています。
法人格を有する政党等についても、法人は贈与税の納税義務者となっていないため、贈与税は課税されません。
◆事業収入に対する課税
法人格の有無にかかわらず、収益事業による所得があれば法人税が課税されます。例えば、政治団体が、広く社会に向けて対価を得て機関紙等を発行するなどの出版事業を行なっている場合は、法人税も消費税もかかります。
2.政治家個人と税金
政治家個人が政治資金を受けとった場合の税金はどうでしょうか。実は、毎年1月に国税庁が出す「確定申告の手引き―政治資金に係る『雑所得』の計算等の概要-」という文書(以下、「概要」)に、その説明が載っています。令和6年1月の「概要」には、政治資金に係る雑所得の計算について、以下のように書かれています。
政党から受けた政治活動費や、個人、後援団体などの政治団体から受けた政治活動のための物品等による寄附などは「雑所得」の収入金額になりますので、所得金額の計算をする必要があります。 令和5年分の「政治資金に係る『雑所得』」の金額は、年間の「政治資金収入」から「政治活動のために支出した費用」を控除した差額であり、課税対象となります。
式で書けば次の通りです。
【政治資金に係る雑所得(課税対象)= 政治資金収入 - 政治活動のために支出した費用】
つまり、政治資金についても事業所得の計算方法と同じように、収入から支出を差し引いて残った分があれば、それは雑所得であり課税対象になります。
3.政治資金収支報告書の訂正
今年1月から2月にかけて、政治資金収支内訳書の訂正が相次いで行われました。2月8日のNHK WEB「自民 収支報告書訂正の72人 派閥からの寄付約70%が『繰越額』」によれば、2月8日正午までに72人の国会議員がホームページ上で訂正後の収支報告書(おととしまでの3年間分)を公表しています。NHKはその内容を以下のように報道しています。
・派閥側の訂正で新たに判明した議員側への寄付の総額3億7749万円
・議員側の訂正で追加された支出の総額は28%にあたる1億592万円
政治資金収支報告書は、政治団体が作るものです。それを訂正するということは、「記載しなかったお金は政治団体が受け取った」ということを意味しますが、それを鵜呑みにしてもいいのでしょうか。「政治資金収支報告書に記載しなくてもよい」と言われていたお金を、わざわざ政治団体(=収支報告書への記載が必要)に入れるでしょうか。そちらの方が不自然な感じがするのですが…。
もし、政治家個人に渡っていたとしたら、前述のとおり、それは政治家個人の雑所得のもとになる収入です。同額以上の支出がなければ、おそらく納税が必要になるはずです。それをはっきりさせるには、派閥・資金管理団体・政治家個人の口座の動きを追うなどして、お金の流れを解明する必要があります。もちろん、国会議員自身が自主的に「雑所得の申告を漏らしていました」ということで、修正申告し納税すればたいしたものです。
◆1966年 政界の「黒い霧事件」
同事件は、国会議員に対する税務調査まで発展しました。申告漏れなどにより修正申告、更正決定した国会議員は「現職議員が181名、前議員が22名、合計203名で、金額はトータル2億1800万円。当時の衆参両院の定数の3割近くに申告漏れがある計算だった」(東京新聞WEB 2024年2月20日)とのことです。
はたして、今回の事件ではどこまで追求が行われるでしょうか。
参考資料:
こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、電子帳簿保存法の猶予措置についてお伝えします。
◆対応完了は3割にとどまる
昨年12月の帝国データバンクのアンケート結果によれば、電子帳簿保存法への対応が完了した企業は3割弱(!)とのこと。
それも企業規模が小さいほど対応に遅れがみられるなど、まだまだ対応ができていない事業者が多いのです。
◆データの保存方法が面倒
電子帳簿保存法への対応を困難にしている理由の一つに、「電子取引データの保存方法」があります。
同法によれば、保存したデータについて、①改ざん防止の措置をとる、②「日付・金額・取引先」で検索できるようにする必要があります。
①改ざん防止の措置をとる
データにタイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステム等を利用して授受・保存をするなどの方法があります。また、専用のシステム等の費⽤をかけずに「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」という方法もあります。
②「日付・金額・取引先」で検索できる
こちらも専⽤のシステム等の導入で対応する方法があります。それ以外にも、表計算ソフト等で索引簿を作成する方法や、データのファイル名に「日付・金額・取引先」を付けることで、検索機能が利用できるようにする方法があります。
電子帳簿保存法に対応したシステム等を導入すれば、一定の費用がかかりますが、手間はかかりません。
費用をかけずに対応しようとすれば、手間をかけるしかありません。
「どっちにしても困る!」と思っている間に1月1日が来てしまった、というのが対応できていない事業者の本音でしょう。
◆改正により、厳しい要件が大幅に緩和
さて、令和5年度税制改正では、令和6年1月からの電子取引データ保存についても改正が行われています。
ここまで述べたような状況を予測したうえでの改正であり、①検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し、②新たな猶予措置の整備がされています。
①検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し
イ.検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。
ロ.対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。
つまり、基準期間の売上高が5000万円以下なら、データの検索機能がなくてもかまいません。また、電子取引データをプリントアウトした書面を、整然とした状態で提示・提出することができる場合も同様です。
②新たな猶予措置の整備(改ざん防止も検索機能も不要)
次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、データの改ざん防⽌や検索機能などは不要となり、電子取引データを単に保存しておくだけでよいとされました。
イ.保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
ロ.税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合
◆「相当の理由」とは
ところで、②のイにある「相当の理由」とはなんでしょうか。
国税庁は「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」問61の回答として、次のように書いています。
したがって、経済的な余裕がなく電帳法対応ソフトを導入できていないとか、人手不足で電帳法対応にあたる従業員が確保できないなども「相当の理由」にあたると考えられています。
電子帳簿保存法への対応ができていない事業者のみなさん。とりあえず、電子取引データの保存だけはしておきましょう。改ざん防止や検索機能については、それができるよう目指しつつ…。
参考資料:
国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年4月)」
電子帳簿保存法関連のテレビCMをよく視ます。
とりわけインパクトの強いR社のCMでは、こんなセリフが展開されます。
「おっと〇〇!?取引先から電子発行された請求書を印刷!? ファイルに保存したぞ!?イエローカード!電子発行された請求書を紙で保存することは電子帳簿保存法に違反しています!」
さて、この表現を言葉通りに受け取っていいのでしょうか。視聴者がミスリードするのではないかと、筆者はずっと引っ掛かりを感じています。
1.「紙で保存してはならない」という条文はない
結論から言えば、同法にそのような趣旨の条文はありません。電子データの保存について定めているのは第7条です。
電子取引(※)の取引情報に係る電磁的記録の保存
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。
※「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、EDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等です。
2.重要なのは電子取引データの保存
第7条では「電子取引を行った場合は、そのデータ(電磁的記録)を保存しなければならない」と決めています。
この場合、何が違反になるのでしょうか。それは「電子取引データを保存しない」ことです。「紙に印刷して保存する」ことは違反ではありません。
電子帳簿保存法では「電子取引のデータを保存すること」が重要なのであり、紙での保存が良いとかダメとか言っているわけではありません。
にもかかわらず、「紙で保存することは違反です」と表現するのはおかしな話であり、筆者がミスリードを心配する理由もそこにあります。
国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」では、令和6年からの電子取引のデータ保存について以下のような記述をしています。
「データを保存せよ」が主眼であり、紙の保存がダメというものではないことがわかります。
個人事業者・法人の皆さまへ
請求書・領収書・契約書・見積書などの関する電子データを送付受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。
令和5年12月31までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査の際に」提示・提出できるようにしていれば差し支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。
1月16日(火)に国分寺にある某介護施設で施設の利用の親族様向けに相続税の申告についての研修会を開催しました。
相続税の具体的な解説や申告、納付期限等をイラストを入れつつわかりやすく説明いたしました。当事務所の相続相談会を担当している坂田税理士にも同席してもらい、専門性が高い研修になりました。
参加者の皆様からは「相続についてほとんど知らない者にとっては、分かりやすかったです。」「かみ砕いてのお話がわかりやすかったです」とご好評いただきました。
セミナーの内容
1.相続税の申告期限はいつまでか
2.相続税がかかるかどうかを調べる
3.守らないといけない期限
4. 相続人の確定・相続財産の確定をする
5.相続税の計算
6.質疑応答
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
開催日:2024年1月16日(水)
講師:北野純一税理士事務所
代表 税理士 北野 純一
この度の令和6年1月1日に発生しました「令和6年能登半島地震」により被害に遭われた皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復興そして被災された皆様の生活が1日も早く平穏に復することをお祈り申し上げます。
今回は、災害に遭ってしまった時に所得税を軽減できる方法をお伝えしたいと思います。
地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で
(1)「所得税法」による雑損控除の方法、(2)「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法のどちらか有利な方法を選ぶことにより、所得税の全部又は一部を軽減することができます。
1.雑損控除
災害によって、住宅や家財を含む生活に通常必要な資産(※1)について損害を受けた場合には、雑損控除を受けて課税所得を減額することができます。
その年の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間(※2)に繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。
雑損控除の金額は、以下の①と②のうちいずれか多い方の金額です。
(※1)
棚卸資産や事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産は、雑損控除の対象にはなりません。なお、生活に通常必要でない資産とは、別荘や競走馬、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とうなどです。対象となる資産は、納税者自身、または納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族(その年の総所得金額等が48万円以下の人)が所有する資産です。
(※2)
特定非常災害として指定された災害により、住宅や家財などについて生じた損失について、その年分の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後5年間になります。
(※3)
「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。その資産が減価償却資産である場合には、取得価額から非業務用資産として計算した減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎として損害金額を計算することもできます。
(※4)
「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額です。
(※5)
「保険金等の額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額です。保険金等の額は、まず、損害金額から差し引き、保険金等の額が損害金額を超える場合には、災害関連支出の金額から差し引きます。
2.災害減免法
災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く)がその時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下のときにおいて、その災害による損失額について雑損控除の適用を受けない場合は、災害減免法によりその年の所得税が次のように軽減または免除されます。
なお、減免を受けた年の翌年分以降は、減免は受けられません。
北野税理士事務所の北野です。
いよいよ年の瀬が迫りました。この時期、駆け込みでふるさと納税をした人も多いはず。総務省によれば、2022年度のふるさと納税寄附額は約9,654億円、納税寄附件数は約5,184万件、利用者数も約891万人と過去最高を更新しています。今回は、ふるさと納税に焦点をあてます。
自治体に寄付をして減税を受ける
ふるさと納税は2008年から始まった制度です。
居住地ではない自治体に一定額を寄付すると、その年の所得税と翌年の住民税の減税が受けられ、さらにその自治体から返礼品をもらうことができます。
つまり、「減税が受けられる寄付金」です。以前は確定申告が必要でしたが、2015年から「ワンストップ特例制度」が始まり、サラリーマンは寄付先の自治体に所定の申請書を出せば手続きが完了し、使い勝手がよくなりました。ワンストップを利用した場合、所得税の減税分も加えた金額が、住民税から減税されます。
2,000円の負担で、それ以上の返礼品
人気が出た一番の理由は、寄付金が一定額までならば、「実負担額2,000円(=寄付金マイナス減税額)で、それ以上の価値の返礼品がもらえる」ことでしょう。
ただし、そもそもは「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という問題提起から始まった制度です。総務省は、ふるさと納税には「三つの大きな意義」があるとして、以下のように説明しています。
①納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度である。
②生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度である。
③自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進む。
いかがでしょうか。納税者の意図と政府が掲げる意義の間には、なかなかの隔たりがあることがわかります。
ふるさと納税の困った点
さて、人気のふるさと納税ですが、良いことづくめというわけではありません。
過度な返礼品競争が問題になり、総務省が手綱を引き締めたのはご存じの通りです。
特産品のある自治体にはたくさんのふるさと納税が集まる一方、そうでない自治体には集まらないばかりか税収が減ってしまうという問題点があります。
ここで、ワンストップ納税を利用したサラリーマンAさんに登場してもらいます。
Aさんの住んでいる自治体はX、ふるさと納税をした自治体はYです。Xにはこれといった特産品がありません。
Aさんは、ちょうど2,000円の負担で済むよう計算し、Yに50,000円のふるさと納税をしました。
総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度)」、読売新聞「ふるさと納税…結局誰が得をして、誰が損をしているのか」(2022.2.18)を参考に、50,000円がどう配分されるかを考えてみます。
Aさん…Xから48,000円の住民税減税を受け、実負担は2,000円。
自治体X…48,000円の税収減。
自治体Y…50,000円の寄付を受ける。返礼品の販売業者に13,900円(27.8%)、それ以外に諸費用(送付・広報・決済・事務)として9,500円(19.0%)を支出。実収益は26,600円(53.2%)。
(注)カッコ内のパーセンテージは、総務省の資料「ふるさと納税の募集に要した費用(全団体合計額)」による。ふるさと納税サイトへの支払いは諸費用に含まれる。
矛盾を抱える制度
自治体Xが大都市で、もともと財政が豊かならばまだしも、規模の小さな自治体で特産品がない場合は、X自身が受ける寄付金はそれほど多くありません。
ふるさと納税を利用する住民が増えるほど税収減となり、結果として住民サービスの低下につながりかねません。
単純計算で人口比7.4%の利用率なので、それなりの税収減となることもあり得ます。
総務省の意義③に「自治体間の競争」とありますが、土台となる条件が自治体ごとに違っており、そもそも競争として成り立たないのではないでしょうか。
良かれと思ってすることが、実は自分の首を絞めることにつながるのでは困ります。
一方で自治体Yにとっては寄付された金額の半分近くに減るとはいえ、財政難を支える確かな収入源となっており、非常に助かっているという声が出されています。
ふるさと納税は、引き続き矛盾を抱えた制度であり、そもそもの趣旨や自治体財政への影響の検証も含め、さらなる制度変更が必要ではないでしょうか。
北野税理士事務所の北野です。
相続税法及び租税特別措置法の令和5年度改正により、来年1月1日から、暦年課税や相続時精算課税の制度が変わります。
重要ポイントについて、最終確認をしておきましょう。
1.暦年課税…生前贈与加算の対象期間が7年に
「暦年課税」とは、1月1日から12月31日までの一年間に贈与された財産の合計額に応じて10~55%の税率で贈与税が課税される計算方法のことです。
年110万円の基礎控除があるため、それ以下の贈与額であれば贈与税はかからず、税務署への申告も不要です。
「生前贈与加算」とは、被相続人(亡くなった人)から生前に贈与を受けた財産がある場合、その財産を死亡時の財産に加算し、相続税の課税対象にする制度です。
基礎控除額以下で贈与税がかからなかった財産も加算の対象です。
改正前は死亡前3年間の贈与財産が対象でしたが、改正によりその期間が7年間に延長されました。
とはいえ、いきなり7年になるわけではありません。2024年1月1日以後の贈与について、下記のように加算対象期間が長くなっていき、最終的に7年になります。
なお、死亡前3年間の贈与財産については全額を加算しますが、今回延長された4~7年分については、その間の贈与財産の合計額から100万円を差し引いた残額を加算します。
2.相続時精算課税
「相続時精算課税制度」とは、一定の要件に該当する贈与者と受贈者間で財産の贈与を行った場合に選択できる贈与税の計算方法のことです。
この制度を選択すると、贈与財産の累計が2500万円(特別控除)までは贈与税がかかりません。累計が2500万円を超えると、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。
その後相続が発生したときは、それまでの相続時精算課税の贈与財産と死亡時の相続財産を合算し、相続税の計算を行います。
すでに支払った贈与税がある場合には、その贈与税を差し引いて残りの相続税を納めます。なお、ある贈与者について一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことはできません。
相続時精算課税は、贈与時の税負担を抑えることができますが、相続時には贈与財産も相続税の対象になるため、「課税の繰り延べ」であるといえます。
3.年110万円の基礎控除の創設
今回の改正により、相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者(相続時精算課税の対象である贈与者)ごとに、一年間に贈与された財産の合計額から基礎控除110万円を差し引くことができるようになりました。
相続時精算課税の対象になるのは110万円を差し引いた残りの金額です。以下のような点が変わってきます。
●贈与税
①年110万円以下の贈与なら、贈与税の申告は不要
相続時精算課税を選択すると、改正前はたとえ1万円を贈与した場合でも申告が必要でした。
しかし改正後は、110万円以下の贈与なら基礎控除を差し引いて0円になるため、贈与税が課税されず、申告も不要になります。
②贈与税がかからないかたちで、2500万円以上の財産が贈与できる
例えば、特定贈与者からある年に500万円の贈与を受けた場合、改正前は500万円全額が相続時精算課税の対象になりました。
改正後は、基礎控除110万円を差し引いた390万円が相続時精算課税の対象になります。
その翌年200万円の贈与を受けたとしたら、基礎控除110万円を差し引いた90万円が相続時精算課税の対象になります。
20%課税の基準となる「2500万円」は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額の累計で計算するため、実質的に2500万円以上の財産が無税で贈与できるようになります。
●相続税
相続財産に加算する相続時精算課税の贈与財産は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額の累計になります。
贈与財産が110万円以下だった年については、加算する財産がないことになります。
このようにみてくると、相続時精算課税についてはメリットを増やし、納税者にとって使い勝手がよくなる方向での改正となっています。
令和5年度改正により、今後この制度を選択する人が増えていくことが予想されます。
北野税理士事務所の北野です。
今回は、オンラインゲームと消費税の関係についてお話します。
オンラインゲームが人気です。スマホでゲームを楽しむ人の姿は、すっかり日常生活に溶け込んでいます。
『ファミ通ゲーム白書2023』によると、2022年の国内のゲーム市場規模は2兆316億円でした。そのうちの約8割(1兆6568億円)を占めたのが、スマートフォン、タブレットやパソコンなどを利用した「オンラインプラットフォーム」でした。
オンラインゲームはゲーム市場の主流といえます。
1.海外ゲーム事業者への支払い
さて、人気のオンラインゲーム。
ゲームアプリそのものが有料の場合はもちろん、アプリは無料でもゲーム内で課金をすれば、当然お金の支払いが発生します。
ゲームアプリの開発業者が国内にいるか国外にいるかは関係なく、その支払いには消費税が課税されます。
「国外の事業者との取引は、そもそも消費税の課税対象外」というのは過去の話。
たしかに2015年9月までは、国外の事業者からインターネット等を通じて受けたサービスには消費税が課税されませんでした。
しかし、同年10月からは消費税がかかるようになりました。
2.「国外取引」から「国内取引」へ
同年の税制改正では、インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などの役務の提供を、消費税法上「電気通信利用役務の提供」と位置付けました。
そのうえで、その役務の提供が国内取引に該当するかどうかの内外判定基準を、役務の提供を行う者の事務所等の所在地ではなく、役務の提供を受ける者の住所等としました。
その適用が同年10月1日からだったため、海外発のオンラインゲームを利用者が購入したり、課金したりした場合、9月までは「国外取引として不課税」、10月からは「国内取引として課税」という扱いになったのです。
3.消費税30億円の申告漏れ
ところで、消費税の納税義務は事業者が負っています。消費税をもらった海外ゲーム事業者は、日本に消費税を納めているのでしょうか。
残念ながらそう上手くはいきません。
つい先日も、人気オンラインゲームを配信するルクセンブルクの会社が、東京国税局から3年間で消費税約30億円の申告漏れを指摘されていた、とのニュースが報道されました。
このゲームは無料で遊べますが、アイテムを購入するためには課金が必要で、その課金の一部である約300億円の売上を申告から漏らしていたとのことです。
4.大手プラットフォーム企業に代行納税を
このケースは幸いにも明らかになりましたが、国内に拠店がない海外ゲーム事業者も多く、その場合は国税当局も実態の把握や徴収が難しいというのが現実です。
つまり、利用者が消費税を支払っても、国に届かず事業者のふところに入ったままになっているのです。
日本政府はこの事態を重くみており、利用者と海外ゲーム事業者のやり取りを介在するグーグルやアップルなどの大手プラットフォーム企業に、消費税の代行納税をさせる制度を検討しています。
10月19日(木)と11月21日(火)に金融機関の職員様向けに相続税・贈与税の改正についての研修会を開催しました。
相続税及び贈与税の改正の具体的な解説や令和5年度税制改正の目玉の一つである110万円贈与の改正についても事例を紹介しつつわかりやすく説明いたしました。
参加者の皆様からは「資料も見やすく、今後のポイントがよく分かりました。」「これからのお客様応対に役立てていきたいです。」とご好評いただきました。
【セミナーの内容】
1. 相続にまつわる件数(家事調停等の件数など)
2. 法人相続税と法定相続分
3. 生前贈与と贈与税
4. 相続税の計算方法
5. 相続税及び贈与税の税制改正
6. R6年1月以降の暦年課税制度と相続時精算課税制度
7. 暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらがよいのか
8. 質疑応答
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
開催日:2023年10月19日(木)、2023年11月21日(火)
講師:北野純一税理士事務所
代表 税理士 北野 純一
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は事業主が同一生計の親族に支払う対価について説明したいと思います。
父親が廃業して、同居の息子であるAさんが事業(製造業)を引
き継ぐことになりました。父親名義の工場や機械があり、Aさん
はそれらを父親から借りて事業をスタートすることに。相場よ
りも若干低めの賃借料を父親に支払い、事業の必要経費にしよ
うと考えていたのですが…。
同居の父親に支払う賃借料は必要経費にできない
結論から言えば、Aさんが考えたような単純な話にはなりません。所得税法第56条によれば、同一生計の父親に支払う賃借料は必要経費にできないのです。条文そのものは読みづらい文章なので、同条をできるだけ簡単に書き換えると以下のようになります。
① 事業主が同一生計の親族に対して事業に関連する対価を支払っても、事業主の必要経費にはできない。
② その親族が事業主から対価をもらうのに必要な経費は、事業主の必要経費とする。
③ その親族が事業主からもらう対価は親族にとって収益でないとみなすし、その対価をもらうのに必要な経費も親族にとって費用でないとみなす。
つまり、Aさんの場合は以下のようになります
① Aさんが同居の父親に賃借料を支払っても、それをAさんの必要経費にすることはできない。
② 父親が支払う工場の固定資産税や工場や機械の減価償却費は、Aさんの必要経費になる。
③ 父親がAさんから対価をもらっても父親の収益でないとみなすし、父親が対価をもらうための経費を払っても父親の費用でないとみなす。
なんとなく違和感を覚える人もいるのではないでしょうか?
課税される「単位」は何か
明治20年に創設された所得税法は、課税の単位を「家族」においていました(同居の家族の所得はすべて「戸主」の所得に合算されていました)。それが、第二次世界大戦後のシャウプ勧告を受けて、課税の単位は基本的に「個人」におかれるようになりました(昭和25年改正)。
しかし、事業所得については、その特例として家族単位課税の考え方が残されました。所得税法第56条はその流れの延長線上にあるといえます。そのように決められた理由として、当時の個人事業は家族全体で営むのが普通であり、家族構成員に対価を支払うような慣行があるとはいえなかったこと、家族構成員への対価を必要経費として認めてしまうと、恣意的な所得分割が行われてしまうこと、家族構成員への適正な対価の認定や支払いの事実の確認が困難であることなどが挙げられています。
なお、特例である56条のさらに特例として、第57条では「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」については、必要経費への算入を認めています。
第56条の「廃止」・「見直し」の意見書
実は、所得税法56条はその合理性について以前から疑問が投げかけられてきました。それは、制定から何十年も経過し、個人事業のあり方や家族関係が大きく変化してきたからです。また、白色申告者にも平成26年から記帳とその保管が義務づけられました。第56条が必要とされた理由そのものが、時代の変化とともに揺らいできているのです。
実際、第56条の「廃止」や「見直し」の決議・意見書を採択した自治体は、2022年9月の時点で500を越えています。いくつかの税理士会や日弁連も同様の意見書を採択しています。
それらのなかでは、「世界の主要国で、家族従業員への給与を必要経費として認めている」「白色申告者にも記帳義務が課されたのに、事業専従者控除が少額すぎて不合理である」「第56条は戦前の家制度の名残であり、日本国憲法と矛盾する」などの意見が述べられています。
このような声がさらに大きくなれば、この条文にもきっと変化が訪れることでしょう。第56条についての各地方自治体の意見書は、インターネットで検索すれば容易に確認できます。なお、国税庁の『税務大学校論叢30号』(1998年)には、研究活動としてではありますが、同条の廃止に触れた論文が掲載されています。
参照:「親族が事業から受ける対価の取扱いについての一考察」(国税庁)
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は、税務署から届く「お尋ね」文書についてお伝えしたいと思います。
1.税務署から届く「お尋ね」とは
税務署から「~についてのお尋ね」という文書が届くことがあります。
普段目にすることがないため、なかには驚く人もいます。
この「お尋ね」にはさまざまな種類があり、例えば、以下のようなものです。
・所得税(及び復興特別所得税)の確定申告についてのお尋ね
・譲渡所得の申告についてのお尋ね
・事業内容等についてのお尋ね
・お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね
・消費税還付申告の内容についてのお尋ね
・インターネット取引内容等についてのお尋ね
・国外送金等についてのお尋ね
・相続についてのお尋ね
これらは、所得税、消費税、相続税、贈与税などにかかわる「お尋ね」です。
2.税務調査ではなく、行政指導
「お尋ね」は行政指導として行われるものであり、税務調査ではありません。
「お尋ね」の主な目的は、申告の内容が正しいかどうかの確認、無申告の場合には申告の督促、申告が必要かどうかの情報収集などにあります。
法的拘束力がないため、届いた「お尋ね」に回答する義務はありません。
しかし、回答せずにいると、次に電話での問い合わせや税務署への呼び出しへと発展していくことがあります。
そのような場合は、本来行われるべき申告についての情報を税務署側がすでに持っていることが考えられます。
行政指導は比較的軽微な案件について行われるものですから、「お尋ね」が届く理由に心当たりがある人は、無視せず正確なデータをもとに回答をした方が無難です。
3.不動産を売ったあとに届く「お尋ね」
例えば、不動産を売ったあとに届く「お尋ね」は、譲渡所得について正しく申告がされているかどうかを尋ねるものです。
数か月から一年後など、届くまでの期間はまちまちです。
そこには売却した不動産の情報や、その不動産をどうやって手に入れたか、その不動産をいくらで売ったかといったことについての質問が書かれています。
ところで、なぜ税務署は不動産を売ったことを知っているのでしょうか。
それは、所有権移転に関する情報を法務局から定期的に手に入れているからです。
その情報では「いつ、誰と誰との間で、どんな理由で所有権が移転したか」は把握できますが、売ったことで利益が出ているかどうかまではわかりません。そのため「お尋ね」を送って、利益の有無を確認するわけです。
「利益が出ていないように装っておけば…」などと考えてはいけません。
不動産を買った人にも別の書式の「お尋ね」が送られているからです。
また、一定の金額以上の不動産を法人が買ったり、個人の不動産業者が買ったりした場合は、買い手が「不動産の譲受けの対価の支払調書」を作成し、税務署に送ります。
それらによっても「誰からいくらで買ったか」を、税務署は把握します。
4.「インターネット取引内容等についてのお尋ね」
はじめに書いたように、さまざまな税目についての「お尋ね」が送られています。
なかでも最近増えているのは、「インターネット取引内容等についてのお尋ね」です。
昨今、ネット通販やネット広告、暗号資産取引などの経済活動が活発化しています。
ネット上での売買で利益を得ている人の無申告が目立つようになり、税務署もその対策にかなり力を入れています。
心当たりのある人は、この「お尋ね」にも正確なデータをもとに回答することをお勧めします。
10月17日(火)に金融機関の職員様向けに相続税・贈与税の改正についての研修会を開催しました。
相続税及び贈与税の改正の具体的な解説や令和5年度税制改正の目玉の一つである110万円贈与の改正についても事例を紹介しつつわかりやすく説明いたしました。
参加者の皆様からは「具体例もありわかりやすかったです。」「暦年課税制度は前から知っていましたが、注意点や相続時精算課税制度との比較が分かりやすかったです」と大変好評でした!
◆セミナーの内容◆
1. 相続にまつわる件数(家事調停等の件数など)
2. 法人相続税と法定相続分
3. 生前贈与と贈与税
4. 相続税の計算方法
5. 相続税及び贈与税の税制改正
6. R6年1月以降の暦年課税制度と相続時精算課税制度
7. 暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらがよいのか
8. 質疑応答
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
日にち:2023年10月17日(火)
講師:北野純一税理士事務所
代表 税理士 北野 純一
皆様こんにちは。
北野税理士事務所の北野です。
インボイスの登録申請を行った免税事業者は、9月15日時点で111万者になったとの報道がありました。
新たに消費税の課税事業者になった事業者の多くは、簡易課税や小規模事業者の2割特例を使っての申告が予想されますが、それらを選ばない場合は本則課税での申告になります。
今回は、免税事業者が課税事業者になった場合で、かつ本則課税で申告をおこなう場合の消費税申告にかかわる話です。
1.10月1日から課税事業者になったAさん
例として、インボイス登録を機に、10月1日から消費税の課税亊業者となり、本則課税で申告をするAさんがいるとします。
Aさんはこれまで免税事業者だったため、使っている会計ソフトに消費税の設定をしていませんでした。
10月1日以後の取引について消費税計算ができるよう会計ソフトを設定すると、同日以後の課税取引は「課税売上」や「課税仕入」などと認識されます。
本則課税なので、基本的に事業年度終了時までの課税売上にかかる消費税額から、課税仕入にかかる消費税額を差し引いた残りの金額が納付税額になります。
2.免税期間に仕入れて、課税期間に売り上げた
商品Bは、Aさんが9月20日に仕入れて、10月15日に売り上げた商品です。
9月20日時点の仕入は免税事業者であるため、「課税仕入」になりません。
しかし、10月15日の時点の売上は課税事業者なので、「課税売上」となります。
このまま消費税計算をすると、商品Bについては課税売上だけ計上されることになります。もらった消費税をそっくり納付することになってしまい、消費税の趣旨にも合いません。
そこで、このような場合、「免税事業者が課税事業者となった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整」を行います。
3.棚卸資産にかかる消費税額の調整
Aさんの場合、9月30日時点で所有していた棚卸資産のうち、免税事業者であった期間に仕入れたものの課税仕入の消費税額を、課税期間の課税仕入の消費税額とみなして仕入税額控除に含めます。
「調整」とはこのことを指します。なお、棚卸資産とは、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品等で、現に所有しているものを指します。棚卸資産の取得価額には、その棚卸資産の購入金額のほかに、引取運賃や荷造費用、そのほかこれを購入するために要した費用の額などが含まれます。
4.逆パターンの場合も調整が必要
ところで、ここまで述べたこととは逆に、課税事業者が免税事業者となった場合にも、棚卸資産に係る消費税額の調整が必要になります。翌事業年度が免税事業者となる場合、課税事業者としての課税期間の末日に所有している棚卸資産の課税仕入の消費税額は、その課税期間における仕入控除税額に含めることはできません。
国税庁タックスアンサー:免税事業者が課税事業者となった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整
皆様こんにちは。
北野税理士事務所の北野です。
10月1日から消費税のインボイス制度が開始されます。
影響を受ける事業者は、税務署への登録申請やインボイス対応の事務・経理処理の準備が大詰めになっています。一方、社会全体を見渡せば、この制度についての反対意見が引き続き出されています。
インボイス登録申請をしたものの「できればやりたくなかった。元請けからの要請でやむを得ず…」という免税事業者も少なくありません。税の専門家として反対を表明する税理士もいます。つい先日(9月1日)も、全国青年税理士連盟が「インボイス制度に対する反対声明」を出しました。
1.消費税 導入して34年が経過
税の制度は永久不変のものではありません。それは消費税も同じです。
日本の消費税は1989年4月1日から税率3%で始まった新しい税制です。導入時の免税点は課税売上高が年間3000万円以下、簡易課税制度が選択できる課税売上高は年間5億円以下でした。両方とも、今よりかなり広い範囲であり、多くの事業者が含まれていました。
その後、何回もの改定を経て、現在の制度になっています。
日本社会にとってどのような税制が望ましいかは、永遠の課題です。
インボイス制度も、今後の検証が必要な制度であることは間違いありません。
2.インボイス制度 賛成の立場
開始直前ではありますが、ここでインボイス制度の賛成(推進)意見と反対意見を簡単に整理してみましょう。
導入後にインボイス制度の検証をする際、導入前にどのような意見が出されていたかは重要な視点となります。
まずは、賛成(推進)の立場の意見です。
政府はこの制度が必要な理由として、次の2つを挙げています。
①「益税」をなくす(=国の税収を増やす)
②複数税率に対応する
このうち②は請求書等の記載方法の問題であり、より本質的な理由は①であると考えられます。
「益税」とは、免税事業者が売上先から消費税を「預かった」にもかかわらず、経費に含まれる消費税を差し引いた「残りの消費税」を国に納付していないのは「利益を得ている」というものです。財務省は、インボイス制度導入により約2480億円程度の税収増を見込んでいます(2019.2.26国会答弁)。
3.インボイス制度 反対の立場
次に反対の立場の意見です。これは主に、免税事業者から出されているものです。
①売上先から値下げを要求される。応じなければ取引から排除される
②課税事業者になることで税負担が増える
③消費税の申告のための経理事務負担が増える
免税事業者は基準期間の売上高が年間1000万円以下ですから、零細な事業者です。
売上先との力関係は相対的に弱く、取引価格に口をはさむことができない事業者も少なくありません。
その場合、そもそも利益を出すのに必要な取引価格が設定できません。そのうえ、さらに値下げを迫られたり、納税が必要になったりしたら、事業が立ち行かなくなるという主張です。
4.社会全体への影響も
インボイス制度に賛成する側は、税収増と「益税」という不公平感の是正を主張しています。
反対する側は、経済活動において免税事業者は不利な立場にあり、多くが適正価格から値下げした取引価格になっているため、消費税が実質的には転嫁できていないこと、納税の負担が過大であること、取引から排除されるリスクがあることを主張しています。
両者の着眼点は異なっており、その対立は今後も続くと考えられます。
免税事業者は法人・個人を合わせて約500万者とされています。
今後、これらの事業者がどのような選択をするか。それによっては免税事業者だけの問題にとどまらず、日本社会や産業構造に影響が出る可能性も大いにあります。
インボイス制度の行方をよくよく注視する必要があるでしょう。
事業区分の目安として、国税庁は「事業区分のフローチャート」を示しています。スタートから始めて、「Yes」「No」の選択をしながら進んでいくことで、どの事業区分に該当するかを判定することができます。
3.迷いやすい事例
①製造業、建設業(原則は第3種事業)
第3種事業は、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定します。しかし、前述の「事業区分の表」で、第3種事業の前半部分「農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい」だけで判定してしまうと間違いが起きます。後半の「第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます」に注意が必要です。
ポイントは、製造業なら主要な材料を、建設業なら主要な建設資材を自己負担しているかどうかです。それらを自己負担していれば第3種事業、元請けから無償支給されていれば第4種事業になります。元請けから有償支給を受けるのは、自己負担と同じですから第3種事業です。
また、とび工事、はつり・解体工事、足場組立工事などは建設業に分類されていますが、第4種事業になります。これらは「モノを作って引き渡す」というより、「役務の提供」という性質の工事だからです。
②自動車関連業
新車や中古車、タイヤやオイルなどの商品を仕入れ、そのまま事業者に販売するのは第1種事業です。それらの商品を消費者に販売すれば、第2種事業になります。
自動車の板金塗装等はどうでしょうか。この事業区分について国税不服審判所で争われた事例では、板金塗装等の本質は「つくろい直す、造り直す及び交換等をする」という「サービスの提供」であるから、第5種事業にあたるという裁決が出ています。
自動車の整備(部品交換含む)やタイヤ・オイル交換等の工賃、車検等の代行手数料は、すべて第5種事業です。タイヤ・オイル交換等の販売代金と工賃が区分されていない場合には、販売代金を含めた全額が第5種事業になります。
③固定資産の譲渡
事業者が、自己が使用していた固定資産等を譲渡した場合は、自己の本業の事業の種類のいかんを問わず、第四種事業に該当することになります。固定資産等については、建物、建物付属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、無形固定資産のほかゴルフ場利用株式等も含まれます。
参照
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は消費税の仕入税額控除と帳簿の記載事項についてお話します。
日々の実務が忙しいと、帳簿の記載についてもつい省略しがちになってしまいます。しかし、消費税法は仕入税額控除の適用を受けるために必要な事項を帳簿に記載するよう求めています。杓子定規に解釈すれば、「必要事項が記載されていなければ仕入税額控除ができない」ことになります。また、消費税の税率は現在、軽減税率8%と標準税率10%の複数税率であるため、税率ごとに区分して帳簿に記載する必要もあります。
あらためて、仕入税額控除の要件を満たす帳簿についておさらいをしてみましょう。
1.仕入税額控除の要件となる帳簿への記載事項(課税仕入の場合)
イ 相手方の氏名または名称
ロ 資産または役務の提供を行った年月日
ハ 資産または役務の内容
(軽減税率の対象となる資産の場合は、資産の内容および軽減税率対象である旨)
ニ 支払対価の額(消費税額および地方消費税額に相当する額を含む)
2.帳簿への記載方法
(1)帳簿と請求書等の記載内容の対応関係
請求書等に一品ごとに詳しく記載(たとえば、鮮魚店であれば、「あじ○匹」、「いわし○匹」など)されていても、帳簿には商品の一般的な総称(「魚」または「食料品」)でまとめて記載するなど、仕入控除税額を計算できる程度の記載であれば差し支えありません。
ただし、課税商品と非課税商品がある場合(たとえば、ビールと贈答用ビール券)は、区分して記載する必要があります。
また、商品が軽減税率の対象品目である場合にはその旨を記載する必要があります。具体的には、税率や税率コードを記載する、軽減税率の適用対象を示す記号等を記載するなどの方法があります。
(2)一取引で複数の種類の商品を購入した場合
複数の一般的な総称の商品を2種類以上購入した場合、例えば、文房具と雑貨を購入したときのように、それが経費に属する課税仕入である場合には、「文房具等」などと記載することで差し支えありません。
ただし、課税商品と非課税商品がある場合、標準税率対象商品と軽減税率対象商品がある場合には区分して記載する必要があります。コンビニで食品とそれを入れるビニール袋を買ったときは、教科書的に言えば、区分して帳簿に記載しなければなりません。
(3)一定期間分の取引のまとめ記載
1か月分の取引について、請求書等をまとめて作成する場合には、請求書等に記載すべき課税仕入の年月日については、「○月分」でよいとされています。このような請求書等に基づいて作成する帳簿の課税仕入の年月日は、やはり「○月分」という記載で差し支えありません。
1か月の間に、区分が同一となる商品を複数回購入しているような場合で、その1か月分の請求書等に一回ごとの取引の明細が記載(または添付)されているときには、帳簿の記載にあたって、課税仕入の年月日を「○月分」と記載し、取引金額もその請求書等の合計額を記載することで差し支えありません。
(4)帳簿に記載すべき氏名または名称
課税仕入の相手方については、その「氏名または名称」を帳簿に記載することとされています。たとえば、個人事業者であれば「田中一郎」、法人であれば「株式会社鈴木商店」と記載することが原則です。
ただし、正式な氏名または名称およびそれらの略称が記載されている取引先名簿が備え付けられていることなどにより課税仕入の相手方が特定できる状況にある場合には、「田中」、「鈴木商店」のような略称による記載であっても差し支えありません。 また、屋号等による記載であっても、電話番号が明らかであること等により課税仕入の相手方が特定できる場合には、正式な氏名または名称の記載でなくても差し支えありません。
参照
No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項
査察と税務調査、何が違う?
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は、国税局による査察についてお話します。
税務調査は所轄の税務署が行います。所得税や法人税等に規定されている「質問検査権」に基づく任意の調査です(実施には納税者の同意が必要です)。主な目的は納税者の申告漏れの調査です。通常は、事前に「○月○日に調査にうかがいたいのですが、よろしいですか」と税務署から連絡が入ります。
一方、査察は国税局査察部が行います。「国税犯則取締法」に基づく強制的な調査であり、悪質な脱税や脱税額が大きなケースを中心に摘発することが目的です。強制的な臨検、捜索、差押等の権限があり、納税者の同意を必要としないため、事前連絡はありません。
令和4年度 査察の概要
国税庁は、毎年「査察の概要」を報道発表しています。今年も6月に令和4年度分が発表されました。それによると、着手件数145件、処理件数139件。
処理件数のうち、検察庁に告発した件数は103件(告発率74.1%)でした。脱税総額(告発分)は100億円で、1件当たりの平均脱税額は9700万円でした。
一審判決が61件出ていて、すべてが有罪判決でした。うち、3人は実刑判決でした(執行猶予は付かず)。
「査察の概要」から、事案ごとの特徴的なケースをみてみましょう。
■消費税事案
34件が告発されました。そのうち不正受還付事案は16件でした。
<ケース>
・輸出物品販売場を営む法人が、国内で仕入れた化粧品を外国人観光客に販売したように装い、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上げを計上し、消費税の還付を受けた。
・パワーストーンの仕入れがあったように装い、架空の課税仕入れを計上し、消費税の還付を受けようとした(未遂犯)。
■無申告事案
15件が告発されました。
<ケース>
・ウェブサイト上で競艇の予想情報を販売する個人事業者が、所得税の申告義務を認識していたにもかかわらず、確定申告書を申告期限までに提出せず、所得税を免れた。
・相続財産である現金を複数の場所に隠したうえで、相続税の申告書を申告期限までに提出せず、多額の相続税を免れた。
■国際事案
25件が告発されました。
<ケース>
・外国法人に対する架空の支払手数料等を計上することで、法人税を免れた。
・暗号資産の譲渡の主体を自分ではなく外国法人に仮装することで、所得税を免れた。
■その他の事案
<ケース>
・トレーディングカード販売業者が虚偽の領収書を作成し、架空仕入高を計上するなどの方法により所得を隠し、法人税を免れた。
・SNSを利用して多数の給与所得者を勧誘し、架空の事業所得の損失を計上して給与所得と損益通算することで所得税の還付を受ける不正手段を指南。そのうえで、虚偽の内容の所得税の確定申告書を作成して交付し、多数の給与所得者の所得税を免れさせた。
・大手企業の従業員という立場を利用して、親族主宰の法人名の架空請求書を下請け業者に送付し、自身が管理する借名預金口座に資金を振り込ませていた。その所得を隠したうえで、所得税の確定申告書を申告期限までに提出せず、多額の所得税を免れた。
参照
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は、「男女賃金の格差」についてお伝えしたいと思います。
1 男女賃金格差のデータ公表
2022年7月に「女性活躍推進法」改正省令・告示が施行され、常用労働者301人以上の企業には自社の男女賃金格差のデータを把握・公表することが義務付けられました。公表は事業年度終了後3か月以内と決められています。今年3月決算の対象企業のデータは出そろったことになります。
このデータは、全労働者、正規労働者、非正規労働者という三つの区分で、それぞれ男性労働者の平均賃金に対する女性労働者の平均賃金の割合を示すものです。
「男女の賃金の差異70%」であれば、男性の平均賃金100に対して女性の平均賃金が70であることを意味します。
2 男女賃金格差が大きい日本
男女賃金格差は、世界各国の問題でもあります。国によってその是正の進み方は違っており、日本はなかなか進まない国の一つです。格差を示すデータをみると、主要7か国(G7)のなかでは最下位、OECDの調査では下から3~4番目のあたりです。もともと日本政府は、男女賃金格差について「我が国の男女間賃金格差は国際的に見て大きい状況にある」と認めつつも、「企業の負担になる」という理由で賃金格差を把握の必須項目にすることにも消極的でした。
しかし、世界経済フォーラムが発表するジェンダー・ギャップ指数で日本の総合順位が低迷(2021年…156か国中120位)を続けていること、SDGsの目標とターゲットに男女差別撤廃や同一労働・同一賃金が掲げられていること、国内において男女差別を争う労働裁判や運動が続いていることなどから、格差是正に向けて実効性のある第一歩を踏み出したものと考えられます。
3 格差の要因と是正の方向
実際、どれくらいの男女賃金格差があるのでしょうか。内閣府・男女共同参画局は、「令和3年の男性一般労働者の給与水準を100としたときの女性一般労働者の給与水準は75.2となっています」としています。厚生労働省は「男女間賃金格差の要因で最も大きいのは、役職の違い(管理職比率)であり、次いで勤続年数の違いとなっています」と分析しています。
つまり、賃金制度そのものの問題というよりも、むしろ昇格制度、業務の与え方、出産・育児休暇の利用しやすさ、性別による正規・非正規の人数の違いなどが格差を生み出す要因になっているようです。データ公表により、男女賃金格差の大きい企業は、労働環境や人事制度、社風などの見直しを迫られることになるでしょう。
しかし、そのことは結果として、企業や社員にとってプラスとなり、企業価値を高めることにつながります。厚生労働省は、女性の活躍に関する取り組みの実施状況が優良な企業に対して「えるぼし認定」を行っています。この認定を受けると、企業のPRに役立つとともに、公共調達で優遇を受けたり、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」を通常より低金利で利用したりすることができます。
4 資金調達や経済成長につながる
男女賃金格差の是正は、単に人道的な意味からだけ主張されているのではありません。日経産業新聞(2022. 8.12)は、「男女間賃金格差は、多様な人材が能力を最大限発揮できる組織かどうかを測る重要な指標の1つになる」として、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資を推進する機関投資家にとっては、投資の判断材料になると指摘しています。つまり、資金調達にも関係してきます。
また、国際通貨基金(IMF)は、『ファイナンス&ディベロップメント』2019年3月号において、男女の格差縮小が企業にも社会にもプラスに働き、経済成長を押し上げるというレポートを出しています。
参照
厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
日経産業新聞「男女賃金格差の開示始まる ESG投資の判断材料に」(2022.8.12)
IMF「男女格差の解消をさらに前へと進める」『ファイナンス&ディベロップメント』2019年3月号
4 2023年問題への対策
国土交通省は、物流業界への影響を「物流の効率化などの対策を講じない場合、2024年度はおよそ14%の輸送能力が不足し、2030年には全国の約35%の荷物が運べなくなる」と試算しています。これは国民生活にも大きな影響を与える数字です。
個々の企業での対策はもちろんですが、それだけでは限界があります。下請け企業やその従業員にしわ寄せが来てしまうような悪しき取引慣行については改善が必要です。業界を挙げての、また、発注者や消費者も含めた国を挙げての大きな取り組みが求められます。
参照
国土交通省「『建設業働き方改革加速化プログラム』を策定~官民一体となって建設業の働き方改革を加速~」(2018.3.20)
国土交通省「『物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン』を策定しました」(2023.6.2)
国土交通省「トラック運送業に係る標準的な運賃を告示しました ~持続可能な物流の実現に向けて、取引の適正化・労働条件の改善を進めます~」(2020.4.24)
(荷主・元請運送事業者の都合による「長時間の荷待ち」に関する情報提供窓口)
全日本トラック協会「2024年問題(働き方改革)特設ページ」
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は、「2024年問題」についてお伝えしたいと思います。
1 2024年問題とは
最近よく耳にする「2024年問題」。これは、働き方改革にかかわる話です。2018年7月に成立した改正労働基準法には、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得促進などが盛り込まれ、すでに2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。
しかし、建設や物流、医師などの分野については、時間外労働の上限についての適用が5年間猶予、また、一部特例つきでの適用となりました。猶予期間は2024年3月で終わるため、今年はその後に向けての準備が急がれています。なお、5年間の猶予は、業務の特性や取引慣行の課題があることなどを理由にしたものです。
2 時間外労働の上限
改正労働基準法で規制された時間外労働の上限は、以下の通りです。これらの規制に違反すると、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。
●時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間。
臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできない。
●臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・時間外労働・・・年720時間以内
・時間外労働+休日労働・・・月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
とする必要がある。
●原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月まで。
3 猶予期間終了後はどうなる?
猶予期間終了後(2024年4月~)の取り扱いは、以下のようになります。
<建設業界>
●災害の復旧・復興の事業を除き、上記2の上限規制がすべて適用される。
●災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休⽇労働の合計について、
・⽉100時間未満
・2〜6か⽉平均80時間以内
とする規制は適用されない。
<物流業界>
●特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限は、年960時間。
●時間外労働と休⽇労働の合計について、
・⽉100時間未満
・2〜6か⽉平均80時間以内
とする規制は適用されない。
●時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは年6か⽉までとする規制は適用されない。
4 2023年問題への対策
国土交通省は、物流業界への影響を「物流の効率化などの対策を講じない場合、2024年度はおよそ14%の輸送能力が不足し、2030年には全国の約35%の荷物が運べなくなる」と試算しています。これは国民生活にも大きな影響を与える数字です。
個々の企業での対策はもちろんですが、それだけでは限界があります。下請け企業やその従業員にしわ寄せが来てしまうような悪しき取引慣行については改善が必要です。業界を挙げての、また、発注者や消費者も含めた国を挙げての大きな取り組みが求められます。
参照
国土交通省「『建設業働き方改革加速化プログラム』を策定~官民一体となって建設業の働き方改革を加速~」(2018.3.20)
国土交通省「『物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン』を策定しました」(2023.6.2)
国土交通省「トラック運送業に係る標準的な運賃を告示しました ~持続可能な物流の実現に向けて、取引の適正化・労働条件の改善を進めます~」(2020.4.24)
(荷主・元請運送事業者の都合による「長時間の荷待ち」に関する情報提供窓口)
全日本トラック協会「2024年問題(働き方改革)特設ページ」
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は、失業給付を受給する際、健康保険の被保険者になれるのかどうかについてご説明したいと思います。
退職後の健康保険
会社を退職後の健康保険については、次の3つのいずれかに加入の手続きを取ることになります。
それは、1.任意継続健康保険、2.国民健康保険、3.ご家族の健康保険(被扶養者)です。このうち、3の健康保険の被扶養者になるには、一定の要件を満たす必要があります。
社会保険の被扶養者
社会保険の被扶養者とは、以下のアまたはイに該当する人です。
ア.被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、
主として被保険者に生計を維持されている人(必ずしも同居している必要はない)
イ.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
(同居して家計をともにしていることが必要)
① 被保険者の三親等以内の親族(1に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
被扶養者自身に収入がある場合
被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入により生計を維持されていることが必要であり、その収入については以下のように定められています。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
失業給付の受給が始まるまで、始まってから
失業給付は、税金上は非課税です。しかし、社会保険の扶養判定では、収入とみなされます。失業給付の待期期間及び給付制限期間など、受給を受けていない期間は、社会保険の被扶養者となることができます。しかし、受給が始まると、「雇用保険受給資格者証」に記載の基本手当日額が、3,612円以上(60歳以上、または障害年金受給要件該当者は5,000円以上)の場合は、社会保険の被扶養者となることができません。被扶養者となることができなくなる日は、実際に失業給付が入金した日ではなく、支給対象期間の初日です。
なお、失業給付の総額がいくらになるかは関係ありません。あくまで上記の基本手当日額のみで被扶養者になるかどうかが判定されます。上記の金額以下の場合は、引き続き被扶養者であり続けることができます。
参照
関東信越厚生局/健康保険制度に関係するよくあるご質問Q&A(一般の方向け)
日本年金機構/従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
北野純一税理士事務所の北野です。
フリーランスと呼ばれる働き方が増えています。ランサーズ株式会社の調査発表(2021.11.12)によれば、「広義のフリーランス」の人口は1577万人(※)にも達しています。調査を開始した2015年と比較して、約640万人も増えているそうです。ということは、フリーランスを活用する企業も増えているはずです。
※「フリーランス」は法令上の用語ではないため、確立した定義がありません。調査機関ごとに定義が違っています。2020年の内閣官房「フリーランスの実態調査結果」では、フリーランス人口を462万人としています。
発注側に対して立場が弱い
そんなフリーランスですが、個人で業務を受注して生計を立てるという性質から、多くが発注側に対して弱い立場に置かれています。企業に雇用される労働者ではないため、労働基準法などの労働法は適用されません。したがって、取引上の不公平や不利益を被ることも少なくありません。内閣官房「フリーランスの実態調査結果」では、「収入の少なさ」と「取引先とのトラブル」が大きな課題として挙げられています。
フリーランスの保護については、すでに「下請代金支払遅延等防止法」「独占禁止法」などがありますが、それらでは対象外となるケースも多くありました。そこで、2021年3月には、内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の4省庁の連名で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されました。それでも上記のような課題の解決には至りませんでした。
一方で、日本政府は「働き方改革」の一環として、兼業・副業に加え、フリーランスを推奨する立場です。フリーランスの保護に実効性を持たせるためには、この問題についての新しい法律が必要になりました。
5月12日、「フリーランス新法」公布
正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、1年6か月以内(2024年11月まで)に施行されます。「特定受託事業者」とは、個人や一人会社という立場で業務委託を受ける事業者のことです。「フリーランス=個人事業主」という思い込みは禁物です。なお、委託者の定義も定められています。
「業務委託」については、「事業者がその事業のために、他の事業者に物品の製造(加工を含む)または情報成果物の作成を委託すること」「事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること」と定義されています。業種が限られているわけではないので、零細事業者の多くが受託事業者に該当することになると考えられます。
取引の適正化、就業環境の整備など
フリーランス新法第2章では「取引の適正化」について定められています。委託者は受託者に対して、業務の内容や報酬の額、支払期日その他の事項を書面等で明示しなければなりません。報酬については原則として成果物や役務を受領した日から60日以内に支払わなければなりません。委託者は、正当な理由なく受領を拒否したり、報酬を減額したり、返品したりなどの不当な行為をしてはなりません。
同法第3章では、「就業環境の整備」について定められています。委託者は、募集情報の的確な表示や育児・介護をしている受託者への配慮、ハラスメントが起きないような体制の整備等を行わなければなりません。
ほかにも、行政側の対応や違反した場合の罰則等について定められています。1年6か月以内に施行されます。フリーランスを活用している企業では、今のうちに同法の内容や前述のガイドラインを参照してください。両方とも、下記のサイトで確認することができます。
参照先:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省)
皆さま、こんにちは。北野税理士事務所です。
4月27日より『相続土地国庫帰属制度』がスタートしました。
土地を相続したからといって良いことばかりではありません。「遠いところにあって利用する予定はない」「処分しようにも、借り手も買い手もつかない」「未使用なのに管理が必要で大変」など、不動産ならぬ「負動産」になっているケースも少なくありません。
このような土地が管理されないまま長期に放置されていると、将来、「所有者不明土地」となってしまうおそれがあります。それを予防するために創設されたのが、「相続土地国庫帰属制度」です。この制度を利用することで、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることが可能になりました。
◆この制度のポイント
①相続等によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者等は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請することができます。
②法務大臣は、承認の審査をするために必要と判断したときは、職員に調査をさせることができます。
③法務大臣は、承認申請された土地が、「通常の管理又は処分をするに当たり、過分の費用又は労力を要する土地として法令に規定されたもの(国が引き取ることのできない土地)」に当たらないと判断したときは、土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。
④土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた者が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。
◆申請ができる人
この制度の申請ができるのは、相続又は相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。相続等により、土地の共有持分を取得した共有者は、共有者の全員が共同して申請を行うことによって、この制度を利用することができます。
◆申請先・相談先
申請先は、帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)です。
制度の利用に関する相談先は、全国の法務局・地方法務局です。個別の具体的な相談をする場合は、事前予約制で、対面相談または電話相談のどちらかになります。相談予約は、インターネット上の「法務局手続案内予約サービス」で行います。事前予約なしの相談の場合は、制度の概要の説明に限られます。
国が引き取ることのできない土地
国が引き取ることのできない土地の要件については、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に定められています。
◆以下のような土地が該当します。
ア.申請をすることができない土地(却下事由)(法第2条第3項)
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
イ.承認を受けることができない土地(不承認事由)(法第5条第1項)
・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
◆負担金
審査手数料として、土地一筆当たり14,000円が必要です。申請時に、申請書に審査手数料額に相当する額の収入印紙を貼って納付します。申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認となった場合でも、手数料は返還されません。
<参考>
北野純一税理士事務所の北野です。
「コロナの影響で資金繰りが厳しいので、支払いを待ってほしい」。
普段から付き合いのあった売上先からそう言われ、取引をストップ。
そうこうするうちに一年以上経ってしまった!
そんなときに使えるのが「形式上の貸倒れ」です。
◆「形式上の貸倒れ」が使える債権とは
売掛債権の相手先に一定の事実が発生した場合、備忘価額(通常は1円)を差し引いた残りの金額を
貸倒損失として損金算入することができます(法人税基本通達 9-6-3 一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)。
あくまで売掛債権やそれに準ずる債権だけが対象で、貸付債権で使うことはできません。
また、「法律上の貸倒れ」と違い、損金経理が要件となっています。
◆どんなことが起きたら使えるか
相手先に発生した「一定の事実」には、以下の2種類があります。
ア.取引を停止してから一年以上が経過した場合
イ.売掛債権の額がその取立てのために要する旅費その他の費用よりも少ない場合に、支払いを督促したけれども弁済してもらえないとき
アの場合、以下のような点に注意する必要があります。
①継続的な取引を行っていた相手先に限られる※
②相手先の資産状況、支払能力等が悪化したため取引を停止した場合であって、営業上の紛争などを理由に取引を停止した場合は含まれない
③「一年」の起点は、「取引を停止した時」・「最後の弁済期」・「最後の弁済の時」のうち、最も遅い時である
④その売掛債権について担保物がある場合は、貸倒損失をできない
※例外として、「通信販売により生じた売掛債権の貸倒れ」があります。
これは、通販業者などが継続・反復して販売することを期待してその顧客情報を管理している場合には、結果として一回だけの取引だったとしても、
その取引先を「継続的な取引を行っていた債務者」として扱ってもよいというものです。
◆備忘価額はいつまで残す?
最後に備忘価額です。
最初の方で「通常は1円」と書きましたが、1円と決まっているわけではありません。
10円や100円でもいいのですが、単に覚えのためだけなので通常は1円にします。
さらに、「備忘価額をいつまで残すか?」という問題があります。
これについて「回収できないことが明らかになったときまで」というのが、教科書的な回答です。
つまり、法人税法基本通達9-6-2「回収不能の金銭債権の貸倒れ」が適用できるようになったときに落とすというものです。
ただし、「債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないこと」を明らかにするには、それなりの労力が必要な場合もあると思われます。
1円を落とすための費用対効果を考えると、ちょっとどうかという気がします。
参考資料
2月27日(月)に中古車販売業を営む社長様及びその従業員様向けにインボイスセミナーを開催しました!
インボイスという言葉を聞いたことはあるけど、何がどう変わるのか具体的に分からないという方の為に、事例を紹介しつつ分かりやすく解説を行いました。
参加者の皆様からは「知らないことを知ることができて、とても良かったです。」と大変好評でした!
セミナーの内容
1、適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要
2、適格請求書の記載事項・記載の留意点
3、売手の留意点(適格請求書発行事業者の義務等)
4、買手の留意点(仕入税額控除の要件)
5、税額計算の方法等
6、適格請求書発行事業者の登録申請手続
7、国税庁適格請求書発行事業者公表サイト
8、質疑応答
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
日にち:2023年2月27日(月)
講師:北野純一税理士事務所
代表 税理士 北野 純一
成年後見人制度の概要
成年後見人制度は、判断能力の不十分な方を成年被後見人・被保佐人・被補助人に分けて保護する制度です。成年後見制度には、法定後見と任意後見の2つの制度があります。
法定後見は、配偶者・子供・孫などが後見人の選任を家庭裁判所に対して申立てを行います。任意後見制度は、本人があらかじめ任意後見人となる人と任意後見契約を結び、本人の判断能力が不十分になった後に、後見人として契約を結んだ人が家庭裁判所に対し申立てを行います。
税理士と成年後見人
税理士は、任意後見人になることができるだけでなく、税理士会が行っている研修を受講し名簿に登録されるなどの条件をみたすことで、法定後見人になることができます。2022年3月より税理士法施行規則が改正され、税理士法人が成年後見人等の事務を行うことができるようになりました。
税理士は、日頃から事業者の経営内容を知るとともにアドバイスをしていますし、個人の方にとっても相続などの相談ができる身近な存在です。また、財産管理の知識が豊富です。今後、高齢化社会が進んでいくと、成年後見人制度がますます重要となってくると思われます。専門知識と職業的倫理観を持つ税理士に、成年後見人になってほしいとの依頼があるかもしれません。
税理士を成年後見人とするメリット・デメリット
通常は、親族が成年後見人になるケースが多いでしょう。財産が多い方だと、日頃から財産管理や相続の相談を税理士に依頼していて、親族より第三者である税理士のほうが信頼できるというケースもあります。第三者である税理士に依頼するメリットは、税理士には財産管理の知識があり、依頼者の意向を尊重した客観的な判断が可能であることです。デメリットは、基本的に利用をやめることができないことや、専門家に依頼する場合には費用がかかることがあげられます。
成年後見人を引き受ける場合には、制度をよく理解し、依頼者にはデメリットがあることを認識したうえで、誠実な対応が求められます。個人で成年後見人を引き受けると、引き受けた者が何かの事情により事務を行うことができなくなった場合に困りますが、税理士法人であれば個人の事情に左右されません。
税理士や税理士法人が成年後見人制度と積極的にかかわっていくことは理にかなっていることではありますが、高齢化社会の問題点や税理士の在り方について考えさせられることでもあります。
1月の償却資産税の申告と法定調書の提出が終わり、いよいよ確定申告時期です。国税庁の確定申告書作成コーナーはスマホでも利用することができ、自分で確定申告を行う方も増えています。しかし、分かりやすく説明はしてあるものの、知識のない一般の方には理解しづらい項目もあります。
今回は、譲渡所得の申告について、どのようなことに注意しなければならないかをまとめました。
譲渡所得がある場合
不動産などの資産を売却したときに、譲渡所得として確定申告が必要な場合があります。土地や建物の譲渡は、棚卸し資産に分類される場合などを除いて、分離課税制度となっています。さらに、所有期間で税率が異なります。譲渡所得金額は、収入金額から取得費や譲渡費用を差し引き、特別控除額を引いて計算します。譲渡所得は所得税の計算ではありますが、資産課税の側面があり複雑です。
譲渡所得の相談を受けた場合には、まず、取得費、取得時期、特例が活用できるかどうかの注意が必要です。
取得価額・取得時期を確認する
譲渡した不動産の取得費が書類で確認できて、それが売却価額より高く、損失が発生している場合には、そもそも確定申告が不要なケースもあります。逆に、相続で取得した先祖代々受け継がれている土地ということであれば、取得価額がわからず、5%の概算価額で計算することになり譲渡益が高額になってしまうケースもあります。
まず、いくらで売却し、取得価額を確認できる書類が保存してあるかどうかを確認する必要があります。また、取得時期により長期譲渡所得か短期譲渡所得かに分類され、税率が大きく異なるため、取得時期を聞く必要があります。
特例が適用できるかどうかを確認する
不動産を売却した場合、ケースによっては特別控除の適用が可能です。特別控除を受けることで、結果的に譲渡所得に対する税額がゼロになることもあるので、しっかりと確認をする必要があります。居住用の土地・建物を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から3,000万円までの控除が可能です。相続した不動産を売り、3,000万円の控除を受けることができるケースもあります。
特例の適用を受けることができそうな場合、要件をみたすかどうかのチェックと必要書類の確認が必要です。駆け込み確定申告依頼の場合には、特例適用を受けるためには申告が必要なケースかどうかを確認し、依頼人にいそいで必要書類をそろえてもらうようにしなければなりません。 譲渡所得の申告方法は国税庁からアナウンスされており、チェックリストもありますので活用していきましょう。
他の所得を確認する
よくある事例として、サラリーマンで普段は年末調整を行っている方に譲渡所得が発生し、確定申告が必要になるケースがあります。普段は年末調整のみの方だと、確定申告について理解していないこともあり、譲渡所得の申告のみを行えばいいと考えている方もいます。
譲渡所得の申告の際には、源泉徴収票が保存してあるかどうかや、ふるさと納税、医療費など一般的な確定申告で必要な事項についてもしっかりと確認しておく必要があります。譲渡所得の書類をそろえ、確定申告をしようという段階になって、源泉徴収票を紛失していて再発行の時間がかかり申告期限ぎりぎりになってしまうこともあります。
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
1月の法定調書や償却資産税の申告が終わると、いよいよ確定申告ですね。所得税・贈与税の申告・納付は令和5年3月15日まで、個人事業業者の消費税等の申告・納付は令和5年3月31日までです。計画的に業務を進めていきましょう。
確定申告時期に先立ち、令和4年分の確定申告で確認すべきことをまとめました。
様式の統一・簡素化
昨年までは、確定申告書AとBがありましたが、Aは廃止されBのみとなり、名称からA・Bの表記がなくなりました。Aは、給与所得・公的年金等・その他の雑所得などがある方を対象とするもので、簡易的なものでした。確かに、今までは確定申告書を作成する際に、まずAかBかを考えなければならず、分かりにくかったと思います。
修正申告で使用していた第5表も廃止され、第1表に修正申告欄が追加されました。修正申告の際に税務署側で過去のデータは把握しているため、簡素な欄に記入するのみで足りますよね。そのほかにも、2023年1月1日以降の納税地の変更等について、確定申告書の記載内容で確認可能であるため届出書の提出が不要となるなど、簡素化に関する変更がされています。
雑所得の変更点
働き方改革の一環として副業が注目されていますが、副業の税務上の取り扱いについて、さまざまな議論がされています。この流れの中で、2022年度分から副業収入について取り扱いが明らかにされています。
副業収入が事業所得か雑所得かによって取り扱いが大きく異なるため、その判断基準が問題となっていました。原則として副業が社会通念上事業といえるかどうかで判断し、取引記録のある帳簿書類が保存されていない場合には、収入金額の規模が300万円を超えていないと雑所得となります。
なお、2023年度からは収支内訳書の提出などが予定されており、これからの改正点も注目されています。
適格請求書を確認しよう
令和5年10月からインボイス制度の開始が予定されていますが、登録期限が令和5年3月31日までとなっており確定申告の時期と重なります。個人事業を行っているクライアントやかけこみ確定申告のケースで、インボイス制度の登録について確認することを忘れないようにしましょう。
個人事業者の場合、屋号は記載せず氏名のみ記載し、屋号の公表を希望する場合は、適格請求書発行事業者の公表(変更)申出書を提出する必要があるなど細かい注意点もありますので、国税庁のWebサイトで確認するようにしましょう。
北野純一税理士事務所の藤田です!
1月23日(月)に企業の若手職員向け研修として、
【消費税インボイス制度 ここだけは、気をつけたい】をテーマに、
セミナーを行いました!
今年の10月1日からインボイス制度が始まるけれど、インボイスという名称くらいしか聞いたことない。自分には関係がなさそう・・・
ところが、会社に勤めて働いている以上は、知らないでは済まされないことがあります。
そんな、あまり詳しいことは分からないという方の為に、インボイスについてわかりやすく説明いたしました。
セミナーの内容
1、適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要
2、適格請求書の記載事項・記載の留意点
3、売手の留意点(適格請求書発行事業者の義務等)
4、買手の留意点(仕入税額控除の要件)
5、税額計算の方法等
6、適格請求書発行事業者の登録申請手続
7、国税庁適格請求書発行事業者公表サイト
8、質疑応答
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
日時:2023年1月23日(月) PM4:00~PM5:30
会場:北野純一税理士事務所会議室 高松市檀紙町1648−6 カヘイビル1F
講師:北野純一税理士事務所
代表 税理士 北野 純一
~ご参加頂いたお客様の感想~
・分かりやすく大変参考になりました。
・具体的な内容で話がとてもわかりやすかったです。
・今日学んだ知識を仕事でも生かしていきたいです。
北野純一税理士事務所の藤田です!
1月12日(木)に金融機関職員研修セミナーを開催しました!
講師に行政書士の宮川譲氏をお招きし、金融機関の職員研修の為に、
【認知症などになる前にできること】をテーマに、セミナーを行いました!
認知症などによって意思確認が取れない人の資産がどうなるのか、
そうなってしまう前に今のうちにできる事をわかりやすく説明いたしました。
セミナーの内容
1、どんな方法があるの?
ー特徴・できる事・できない事ー
⑴任意後見制度
⑵民事信託
⑶遺言書
2、質疑応答
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
日時:2023年1月12日(木) PM4:00~PM5:30
会場:北野純一税理士事務所 高松市檀紙町1648−6 カヘイビル1F
講師:宮川譲行政書士事務所 代表 行政書士 宮川 譲 氏
~ご参加頂いたお客様の感想~
・分かりやすく大変参考になりました。自分で詳しく調べてお客様へ提案できるようにしたいです。
・認知症対策にもいろいろあることを知ったので、客様に提案できるようにもっと勉強をしたいと思います。
・今まで成年後見人制度しか知らなかったので、委任契約や家族信託という方法があるという事を知れて良かったです。
・家族信託の話がわかりやすかったです。
・深く理解ができました。参加して良かったです。
2022年も終わりに近づき、年末調整の山もあと少しという会計事務所も多いのではないでしょうか。忙しいときほど、発送や連絡漏れがないように細心の注意を払って仕事を進めていきましょう。
12月16日に、令和5年度与党税制改正大綱がまとめられました。閣議決定と国会審議を経て、順調にいけば2023年3月末までに公布されます。今回の税制改正大綱は、どのような点にポイントがおかれているのでしょうか。
個人所得課税の見直しで投資促進のねらい
所得税については、NISAの抜本的な拡充や恒久化が前面におしだされているのと同時に、高所得者の優遇とならないような配慮がされています。これにより、貯蓄から投資への流れを加速させたいねらいです。
クライアントから資産形成の相談を受けた際には、NISAを検討材料にするのもよいかもしれません。
相続税・贈与税の一体化に向けた動き
現行の贈与税の制度では、贈与者の死亡前3年間に行われた贈与財産額は相続財産額に合算され、相続税の課税対象となっています。これが、今回の税制改正大綱では、2024年1月1日以後の贈与では7年間となることが記載されています。これにより、2023年に駆け込み贈与が増えるのではないかと予想されます。
一方、相続時精算課税を適用する場合、現行の基礎控除とは別に、基礎控除110万円を控除できる制度が新設されます。これにより、相続時精算課税制度を選択したとしても毎年110万円以下の贈与については贈与税の申告が不要となり、相続時精算課税制度が利用しやすくなります。相続税と贈与税の一体化に向けて、徐々に制度が整備されていこうとしています。
消費税
2023年10月から、いよいよインボイス制度がはじまります。インボイス制度がはじまると、今まで免税事業者だった人が課税事業者となることにより、負担が増えることが懸念されていました。これを緩和する措置として、2023年10月1日から3年間の納税額を、売上税額の2割に軽減することが盛りこまれています。売上の消費税から80%の控除が可能となることにより、事務処理を軽減することができ、ケースにもよりますが消費税の負担も減らすことができます。
ただし、多くの消費税申告を手がける会計事務所にとっては、消費税計算のパターンが増えることとなるため、より一層の注意が必要となるでしょう。
税制改正大綱では、ほかにも各税目について、さまざまな取り組みがまとめられています。これを読むことで、国がどのような方向に進もうとしているのかもみえてきます。正式な決定ではありませんが、ぜひ参考に読んでみてください。
北野純一税理士事務所の藤田です。
12月も半ばとなり年末調整で忙しく、年明けにも法定調書の提出や償却資産税の申告が待っていますが、新型コロナの新規感染者数も増えてきています。体調管理やいざというときにテレワークに移行できる備えも忘れないようにしましょう。
1月末までに申告を行う償却資産税は、固定資産税の一種です。償却資産税は、土地や建物と違い毎年の申告が必要となりますが、事業者側で税額を計算するわけではなく、市町村側が計算を行い納付書が送付されます。このため、償却資産税の申告をしていても、税金の仕組みが分からないケースも多いのではないでしょうか。今回は、償却資産税の仕組みについてまとめました。償却資産税が高いと感じたときや、市町村側が行った計算の確認の際の参考にしてください。
償却資産税の課税
償却資産には、土地や建物と違い、登記という制度がありません。課税対象となる償却資産の存在や状況などを把握するために、償却資産税の申告が義務付けられています。課税対象となる償却資産は、土地、家屋以外の事業用の資産のうち、減価償却費が法人税や所得税の計算にあたり、損金や必要な経費に算入されるものをいいます。
ただし、その性質上、特許権やソフトウェアなどの無形固定資産、牛・馬・果樹などの生物は課税対象となりません。また、いわゆる少額の減価償却資産や一括償却資産、取得価額が20万円未満のリース資産も課税対象となりません。二重課税を避けるために、自動車税・軽自動車税の対象となる資産も対象外となります。反対に、減価償却は行っていなくても、休止中であっても事業用にすることが可能な遊休・未稼働の資産、耐用年数が経過して償却済みの資産、赤字決算のために減価償却を行っていない資産、帳簿に記載されていない簿外資産など、課税対象となるものもありますので注意してください。エアコンなどで家屋と構造上一体となっている設備(附帯設備)は原則として家屋となるのですが、事業用に取り付けたものは償却資産となる場合がありますので、建物を借りていてエアコンを事業用に取り付けているケースなどで注意が必要です。
償却資産の申告
償却資産の申告先は、東京都の場合は都税事務所、そのほかの地域は市町村となります。償却資産の所在地ごとに申告する必要があるので、支店が各地にある場合には所在地ごとに資産を分けて提出する必要があります。
償却資産の申告書は簡易的な一般方式のほか、すべての資産について事業者側で評価額などを計算したうえで申告する電算処理方式もあり、償却資産の増減が多い法人などでは電算処理方式のほうが作成しやすい場合もあります。中小企業では、初年度に申告対象のすべての償却資産を申告し、2年目以降は償却資産の増加や減少についてのみ申告する一般方式で申告することが多いでしょう。したがって、償却資産の申告をするために資産台帳の情報を利用することになりますが、会計ソフトには資産台帳から自動的に申告書が作成できる機能があるものもあります。その場合でも、課税対象があっているかどうか、新規の資産がないかどうかのチェックをする必要があります。なお、市町村から送付される固定資産税の課税明細書には償却資産税の明細が記載されません。
償却資産税の税額計算
償却資産税は、法人税や所得税の減価償却に比べて簡単に計算が可能です。償却資産の評価額は1月1日時点の時価となりますが、これは取得価額か前年度評価額から、減価率を乗じたものを引くことで計算できます。計算方法は減価償却の定率法と同じです。ただし、初年度について法人税や所得税では月割計算を行いますが、固定資産税においては月割りではなく2分の1となります。
償却資産税には免税点という制度があり、課税標準額の合計が150万円未満の場合には課税されません。しかし、150万円未満であるかどうかにかかわらず申告書の提出義務があるため、償却資産が少なくても申告する必要があります。
北野純一税理士事務所の藤田です!
12月10日(土)に『認知症などになる前にできること』セミナーを開催しました!
講師に行政書士の宮川譲氏をお招きし、自分や家族が認知症などにかかった時の為に、
【認知症などになる前にできること】をテーマに、セミナーを行いました!
実務の経験も踏まえ、遺言書作成、任意後見、家族信託についてわかりやすい内容で解説いたしました。
セミナーの内容
1、どんな方法があるの?
ー特徴・できる事・できない事ー
⑴任意後見制度
⑵民事信託
⑶遺言書
2、質疑応答
事前にお聞きした悩みに回答します!!
主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一
日時:2022年12月10日(土) PM2:00~PM3:30
参加費:無料(定員10名様)
会場:北野純一税理士事務所会議室 高松市檀紙町1648−6 カヘイビル1F
講師:宮川譲行政書士事務所 代表 行政書士 宮川 譲 氏
~ご参加頂いたお客様の感想~
・今回のセミナーで認知という事も考えなければいけないと感じました。
・大変参考になりました。
・今後契約等が必要になってくる中で、現時点で準備できる対策を詳しく知ることができて良かった。
・非常にわかりやすかったです。
・自分に合った制度を調べて対策していきたいと思います。勉強になりました。ありがとうございました。
北野純一税理士事務所の藤田です。
円安の進行に伴い、海外から訪れる人が増えただけでなく、日本の不動産を海外の人が買い求めているとメディアで報道されたことがありました。不動産関係の税金といえば、固定資産税や不動産収入がある場合の所得税です。所得税を納付するには、確定申告が必要になります。海外に住んでいる場合は、これらの税金はどうなるのでしょうか?
今回は、海外の居住者が日本国内の不動産を所有することになった場合の税務について、まとめました。
非居住者のための納税管理人制度
日本国内の不動産を非居住者が購入した場合でも、日本人が購入した場合と同様に、不動産取得税・登録免許税・印紙税・固定資産税などが課税され、申告書の提出など税金に関する事項を処理する必要があります。
納税者が海外にいる場合には納税事務を行うことができませんので、代わりに納税事務を行う人が必要となります。納税に関する一切の事項を処理するための代理人のことを、納税管理人といいます。不動産所得がある場合には、出国までに確定申告をする必要がありますが、これができない場合も納税管理人に依頼します。
税金を納める先は、市町村、都道府県、国とさまざまです。たとえば固定資産税が発生する場合は固定資産が所在する市町村、不動産収入があり所得税が発生する場合には税務署で、それぞれ手続きを行う必要があります。近年、海外に居住する方が日本国内の不動産を所有するケースが増え、納税管理人制度の理解と協力が呼びかけられています。
納税管理人はどのような人がなるのか
納税管理人は、日本国内に居住していれば誰でもなることができ、個人でも法人でもなることができます。
固定資産税の場合は、納税管理人になる人が固定資産所在の市町村に住所があるかどうかで、手続きが異なります。固定資産税など普通徴収の方法がとられている税金の場合は、親族など身近な人が日本国内に居住していれば、その人を納税管理人にしても問題ないでしょう。しかし、不動産から収入がある場合には確定申告が必要となり、税理士が必要となります。このため、税理士が納税管理人となることも多いです。納税管理人を解任したい場合には、解任届出書を提出することで、いつでも解任することができます。
納税管理人の業務
納税管理人は、納税に関する一切の事項の処理を代理することとなります。具体的には、確定申告書提出と各種税金の納付、還付金の受け取り、税金に関係する各種書類の受け取りを指します。納税代理人は、納税に問題が生じた場合でも連帯責任を負うことはありません。
納税管理人を税理士にすれば、確定申告書の作成のほか、節税に関する相談やアドバイスを受けることも可能となりますので、納税管理人の選択肢として税理士を検討してみてはどうでしょうか。
北野純一税理士事務所の藤田です。
さまざまな問題でニュースなどで取り上げられることの多い岸田政権ですが、内閣支持率が低いと国会への影響が気になります。税法の改正も、国会で改正案が通るかどうかが関係するために、支持率や税法改正動向には注意しておきたいですね。
今後の改正動向が注目されている税金のトピックスの1つに、相続税と贈与税の一体化があげられます。相続対策に大きくかかわるため、どのような方法で相続税と贈与税を一体化しようとしているのかが注目されています。相続税と贈与税の一体化が進むと、相続対策として生前贈与を活用するという節税対策ができなくなる可能性もあります。 今回は、相続税と贈与税の一体化が実現した場合の相続対策はどうしたらよいのかなど、関連項目について考えてみます。
現在の相続対策としての生前贈与
相続対策としての生前贈与は、生前贈与により将来の相続税を減らすことで行われています。贈与を行うと贈与税がかかり、相続税率より贈与税率のほうが高くなります。しかし贈与税では、贈与を受ける人1人あたり年間110万円の基礎控除があるため、この基礎控除を適用しながら長期にわたって贈与を行う対策を行うことで、贈与税がかからない範囲で贈与を行うことが可能となっています。
そのほか、扶養義務者からの生活費や教育費で通常必要と認められるもの、香典など社会通念上相当と認められるものの贈与も、贈与税の対象とはなりません。また、贈与税は個人間にかかる税金であるため、法人から贈与を受けた場合には贈与税ではなく所得税の対象となります。さらに、財産の状況や金額によって相続時精算課税制度を活用する方法などもあります。
相続税と贈与税の一体化とは?
現在、相続開始前3年以内の贈与については、相続税を計算する際に加算する制度がとられており、生前贈与加算とよばれています。これは、いわゆる駆け込みの相続対策を回避するための制度です。相続税と贈与税の一体化は、この3年の期間を延ばす方法が考えられており、10年、15年と期間を区切る方法のほか、その期間を一生涯とする方法も考えられています。日本では3年となっていますが、他の先進諸国ではもっと長い期間で計算する制度がとられており、特にアメリカでは一生涯とされています。
また、日本でも相続時精算課税制度を適用すると、制度選択時から2,500万円まで非課税となるかわりに、相続発生時に適用を受けた贈与金額を相続税の計算に加算することとなっています。この制度も、相続税と贈与税が一体化制度であると考えることができます。相続税と贈与税を一体化する方法として、すべてを相続時精算課税制度にするという方法も考えられています。
相続税と贈与税の一体化された場合の節税対策は
相続時精算課税制度では、将来値上がりする財産は贈与時の価格で課税されるため、時価が下がっている間に贈与するとメリットがあります。たとえば株式や事業承継時の自社株について、時価が値下がりしているタイミングで贈与するという方法が考えられます。また、賃貸収入がある不動産を早めに贈与すると、贈与した後の不動産からの収入が相続財産に加算されないためメリットがあります。相続税と贈与税が一体化された場合には、相続時精算課税制度と同じように、将来値上がりする可能性のある財産を時価の低いうちに贈与する、収益不動産を早めに贈与するという節税対策が考えられます。
贈与税の非課税枠の範囲内で少しずつ資産を移転するという方法は、相続税と贈与税の一体化が実現されると難しそうです。しかし、相続税と贈与税が一体化することで、ある程度、財産移転時期を自由に選択することができ、贈与か相続かによって税金が変化しないことにより生前に財産を移転しやすいというメリットがあります。
北野純一税理士事務所の藤田です。
原材料価格やエネルギー価格が上昇しており、経営が苦しい中小企業も多くなっています。このような環境の中、中小企業のために、さまざまな取組みが提言されています。中小企業庁は、大企業と下請中小企業の取引を適正化するための5つの取組みを実施しようとしています。この中で、気になるのが「2026年の手形交換所における約束手形の廃止」です。経済産業省は2026年に約束手形を廃止する方針を決定していますが、業種によっては約束手形での取引が多いケースもあります。
今回は、約束手形が廃止されるメリットとデメリット、約束手形の代替方法をまとめました。約束手形の取引が多い事業者の方は参考にしてください。
廃止されると困る?約束手形のメリット
約束手形は、決済手段の多様化や電子化などで流通量が減っていますが、製造業や建設業を中心に今でも多くの中小企業が利用しています。約束手形の大きなメリットは、支払いの先延ばしです。一時的に資金繰りが苦しい場合などの利便性が高い決済方法といえます。また、金融機関の審査を通過した企業しか約束手形を振り出すことができないため、約束手形を受け取る企業にとって安心感を得ることができます。不渡りを2回出した企業は銀行取引などが停止され、事実上の倒産とみられて信用力をなくすため、不渡りを避けるための努力がされることを想定されることも、約束手形を受け取る企業の安心感につながっています。
約束手形を受け取った企業は、手数料を払い手形を割り引くことで、期日よりも早く資金を回収することも可能です。
廃止される理由は?約束手形のデメリット
利便性が高い約束手形ですが、なぜ廃止されるのでしょうか?約束手形は決済期間が30日(1か月)から120日(4か月)と長いものが多く、約束手形を受け取った企業の資金繰りが困難になるケースが多いことがあげられます。約束手形は、30日(1か月)から120日(4か月)以内を期日として振り出されることが一般的です。手形割引をする方法もありますが、手数料がかかるというデメリットがあります。また、約束手形は紙で発行され、第三者への譲渡が可能で有価証券としての性質を持ちます。このため、印刷・郵送のほか管理・保管のためのコストがかかります。紛失した場合のリスクも大きいです。
中小企業の資金繰りの負担を少なくするために2026年までに約束手形を廃止し、約束手形にかわりペーパーレスの決済手段である電子記録債権(通称でんさい)へ移行することが推奨されています。
約束手形の代替方法として推奨される電子記録債権(でんさい)とは?
電子記録債権(でんさい)は手形代わる新しい決済方法で、電子債権記録機関である「でんさいネット」の記録原簿に債権の発生や譲渡を電子記録することで、効力が発生します。ペーパーレスであることからコスト削減につながり、自動入金されることで回収の手間が不要となります。分割返済が可能なことのほか、紙を使用しないため印紙税がかからないというメリットがもあります。
電子記録債権(でんさい)は紙での約束手形に比べるとメリットは多いですが、受取側企業の資金繰りから考えると、なるべく手形ではなく即時入金してほしいところです。約束手形廃止をきっかけとし、なるべく期日の短い決済手段をお願いするのもよいでしょう。ただし、どうしても約束手形を利用しなければならないようなケースもあります。このような場合には、電子記録債権(でんさい)は約束手形と同じように審査や支払不能時のペナルティなど安全策があり、譲渡や割引も可能なため、比較的安心して利用できるのではないでしょうか。
北野純一税理士事務所の南田です。
政府の副業促進施策に関連して、国税庁は年間300万円以下の副業などによる収入を雑所得とする改正案を発表し、パブリックコメントの募集を行いました。しかしながら、意見公募を受けて、10月7日に改正案の修正が発表されました。反対意見の多かった所得税の改正案が修正され、帳簿書類の保存の有無で所得区分を判定するという修正が入りました。
では、副業を求める人を受け入れたい企業側では、どのような問題が生じるのでしょうか。人材を受け入れる方法として、外注か雇用かという問題が生じます。今回は、外注と雇用の違いが経営や税務にどのように影響するのか、税務上の注意点をまとめました。
外注費と給与の違い
外注費とは、自社の業種の一部を外部に委託したときに発生する費用です。したがって、外注費は幅広い意味を持ちます。例えば、清掃業務を外部に委託した場合には外注費ともいえますし、福利厚生の一環であれば福利厚生費、清掃に対する手数料と考えるなら支払手数料と考えることもできます。源泉徴収の発生しない支払いであれば、どの勘定科目に入れたとしても税務上の違いはなく、選択した勘定科目で継続して処理を行っていけば問題ないでしょう。
これに対し、給与とは、社内の従業員に支払われる報酬をいいます。同じ仕事に対して支払われる報酬であったとしても、社内か社外かによって、給与で処理するか外注費として処理するのかが変わり、税務上での取り扱いも変わってきます。
外注費と給与の判断基準と税務上の注意点
外注費と給与は、社外の外注先に支払うのか、社内の従業員に支払うのかで変わりますが、実際には契約と業務実態の観点から判断されます。原則として、請負契約であれば外注費、雇用契約であれば給与として処理することとなります。しかし、近年は多様な働き方が認められ、請負契約も業務委託契約や派遣契約などさまざまなものがあります。契約内容では判断が困難な場合、業務実態で判断することになります。たとえば、請求書発行を行っているかどうか、時間的な拘束があるかどうか、成果物を完成させるための費用の負担は誰なのか、といった観点です。
外注費の場合は、消費税がかかり、消費税の仕入税額控除の対象となります。給料の場合は、消費税はかかりませんが、仕入税額控除の対象とならず、また、源泉徴収税額が発生します。外注費でも原稿料など一定の場合には、源泉徴収税額が発生します。
外注費は、税務調査で注目されやすい勘定科目です。給与とすべき支払いを外注費にしていることを税務調査で指摘されると、源泉徴収の追徴課税が発生してしまいます。税務調査では、外注先がしっかりと確定申告をしているかどうかの調査をされることもあります。確定申告がない場合、給与として処理することを求められるケースや、外注費として認められても外注先の確定申告まで求められることもあります。
企業にとって外注と雇用、どちらがメリットがある?
企業が外注を行うメリットは、少ないコストで専門知識や技能のある人材に仕事をしてもらえる点です。必要なときにのみ仕事をしてもらえますが、その反面、緊密な連携や効率、継続的な仕事の依頼がしにくいというデメリットがあります。雇用のメリットは、企業内にノウハウが蓄積され人材育成につながり、企業の成長発展につながることです。その反面、管理の手間やコストがかかるというデメリットがあります。
税務面からみれば、外注費で計上することで消費税の仕入税額控除ができるという大きなメリットがあります。給与で処理すると、源泉徴収事務、年末調整、社会保険手続きなど、手間がかかります。外注費か給与で処理するか迷うような状況の雇用であれば、外注費で処理したほうが税金面ではメリットがあるといえるでしょう。しかし、税務調査では給与ではないかどうか厳しく調べられるため、外注費とするのであれば、契約書や業務形態についてしっかりと確認するようにしましょう。